(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】圧縮機に用いるバッフル板、圧縮機及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F04B 39/04 20060101AFI20230210BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
F04B39/04 L
F04C29/02 351A
(21)【出願番号】P 2021569961
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 CN2019120826
(87)【国際公開番号】W WO2021056795
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】201910923601.2
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516265089
【氏名又は名称】広東美芝制冷設備有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】李洋
(72)【発明者】
【氏名】曹紅軍
(72)【発明者】
【氏名】朱松
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-202081(JP,A)
【文献】実開昭61-033988(JP,U)
【文献】特開2006-283607(JP,A)
【文献】特開平03-000997(JP,A)
【文献】実開昭61-062297(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1324865(KR,B1)
【文献】中国実用新案第203161550(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101684814(CN,A)
【文献】特開平2-215990(JP,A)
【文献】実開昭60-61494(JP,U)
【文献】実開昭58-178490(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04C 23/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、モーターと、前記シリンダと前記モーターとの間に設けられる消音器とを含む圧縮機に用いるバッフル板であって、
板体と、
前記板体に設けられた貫通穴と、
前記板体に
設けられ、前記板体を非回転部材に接続させるための接続部とを含み、
前記板体は内板と外板とを含み、前記内板は前記貫通穴の軸線から遠ざかる方向と前記貫通穴の軸線に平行な1つの方向の両方に向かって延在し、前記外板は前記貫通穴の軸線から遠ざかる方向に向かって延在し、
前記圧縮機に用いるバッフル板はさらに、
前記
外板の外縁に接続されたフランジと、前記
外板と前記フランジとの間に接続され、曲率半径の値の範囲は1mm~6mmで、中心角の値の範囲は35°~145°である円弧遷移部、及
び、
前記
内板に設けられた組立回避穴を含む圧縮機に用いるバッフル板。
【請求項2】
前記接続部が溶接部、かしめ部、接着部のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の圧縮機に用いるバッフル板。
【請求項3】
前記バッフル板の厚さの値の範囲は0.5mm~4mmである請求項1
または2に記載の圧縮機に用いるバッフル板。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の圧縮機に用いるバッフル板を含む圧縮機。
【請求項5】
シリンダと、
前記シリンダを貫通する回転軸と、
前記回転軸の前記シリンダから延出する部分に接続され、前記回転軸を連動して回転させるモーターと、
前記シリンダ、前記回転軸、前記モーター及び前記バッフル板が内部に配置される筐体とをさらに含み、
前記バッフル板は前記シリンダと前記モーターとの間に位置し、前記回転軸は前記バッフル板の貫通穴を貫通する請求項
4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記回転軸の軸線に垂直の平面を基準面とすると、前記モーターの回転子の前記基準面における投影は前記バッフル板の前記基準面における投影の外側の輪郭内に位置する請求項
5に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記バッフル板の外縁と前記筐体の距離は前記筐体の内径の20%以下である請求項
5又は
6に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記回転軸に嵌設され、前記シリンダの前記モーターに面した側に位置する主軸受と、
前記主軸受の、前記シリンダと反対の側に設けられ、前記回転軸が貫通する消音器とをさらに含み、
前記非回転部材は前記筐体、前記主軸受、前記消音器のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである請求項
5から
7のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記消音器に組立部が設けられ、前記消音器は前記組立部を介して前記主軸受に接続され、前記バッフル板の組立回避穴は前記組立部に面している請求項
8に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記バッフル板が前記消音器と前記モーターとの間に位置し、前記バッフル板の貫通穴の穴径は前記消音器の中心穴の穴径以上である請求項
8に記載の圧縮機。
【請求項11】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の圧縮機に用いるバッフル板、又は、
請求項
4から
10のいずれか一項に記載の圧縮機を含む冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年9月24日に中国特許庁に提出された、出願番号が201910923601.2であり、発明の名称が「圧縮機に用いるバッフル板、圧縮機及び冷凍装置」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容の全てを援用することにより本願に取り入れる。
【0002】
本願は、圧縮機の技術分野に関し、具体的には、圧縮機に用いるバッフル板、圧縮機及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術としての回転式圧縮機構造では、密閉した筐体の底部に冷凍機油又は潤滑油が貯蔵されている。圧縮機が動作する時は、回転子の回転による外乱で冷凍機油又は潤滑油に激しい波動が生じる。当該波動で冷凍機油又は潤滑油が高い位置まで移動し、回転子の貫通穴、モーターのギャップ及び固定子と筐体のエアギャップを経由してモーターの上部のスペースに移動する。冷凍機油又は潤滑油の大半が落下して圧縮機の底部に戻るが、残りの冷凍機油又は潤滑油は高温高圧の圧縮ガスと共に排出管を介して圧縮機から排出されて外部の管路に入る。例えば、エアコンの場合は、システムの管路に入って、システムの管路に油膜が形成され、熱抵抗が上がることによって、エアコンの熱交換効率と動作効果に影響が出る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、少なくとも従来技術又は関連技術における技術的課題の1つを解決することを目的とする。
【0005】
本願の第1の態様は、圧縮機に用いるバッフル板を提供する。
【0006】
本願の第2の態様は、圧縮機を提供する。
【0007】
本願の第3の態様は、冷凍装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の態様は、圧縮機に用いるバッフル板を提供する。バッフル板は板体と、貫通穴と、接続部とを含み、貫通穴は板体に設けられ、板体は貫通穴から、貫通穴の軸線から遠ざかる方向に向かって延在し、接続部は板体に接続され、板体を非回転部材に接続させるためのものである。
【0009】
本願の実施例に係る圧縮機に用いるバッフル板は、圧縮機の油プールの波動が激しく、吐油量が多いという関連技術の問題を解決することができる。圧縮機が動作する状態では、回転子が回転して下部のバランスウェイトを連動して回転させることで、圧縮機の下部のガスが不安定で激しく旋回して移動する状態になる。圧縮機に固定したバッフル板を、例えば、圧縮機のシリンダとモーターとの間に設けるとともに、バッフル板を非回転部材に接続させることによりバッフル板の回転を防ぎ、且つバッフル板の板体を貫通穴から、貫通穴の軸線から乖離する方向に向かって延在させ、つまりバッフル板が周方向全体において径方向に沿って延在するようにすることにより、気流の流動に物理的な遮断を形成することができる。バッフル板の油プールに対応する側に冷凍機油又は潤滑油を安定させるスペースが形成され、圧縮機が動作する時はモーターの回転による下部空間の渦の油プールに対する外乱を遮断し、つまり気流の高速移動による油プールに対する外乱を遮断することにより、油プールの安定性を向上させ、圧縮機の底部の油面の波動を緩和するために役立ち、ひいては波動による油滴の形成を減らし、油面の激しい波動で過剰な冷凍機油又は潤滑油が気流によってモーターの上部に運ばれることを防ぐ。これは圧縮機内のガスに混入される油滴を減らし、圧縮機の吐油量を低減し、管路中の油膜の体積を減らして、冷凍装置の管路の熱抵抗を低減し、冷却と加熱の効果を向上させ、圧縮機のエネルギー効率を高めるのに役立つ。また、圧縮機のモーターの上部に溜まる過剰な冷凍機油又は潤滑油を減らして、より大きなガスの緩衝スペースを提供して、圧力の脈動を緩和し、騒音を低減するために役立ち、冷凍装置の圧縮機内に流動する冷媒への抵抗を低減して、圧縮機の冷却能力と加熱能力を向上させて、圧縮機のエネルギー効率を高めるために役立つ。
【0010】
さらに、本願の上記技術的手段に係る圧縮機に用いるバッフル板は、次の追加の技術的特徴を有してもよい。
【0011】
1つの可能な設計では、接続部は溶接部、かしめ部、接着部のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0012】
当該設計において、接続部が溶接部、かしめ部、接着部のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含むと具体的に限定しているため、溶接、かしめ、接着によりバッフル板を圧縮機内の非回転部材に固定して接続させることで、バッフル板の確実な固定を実現している。
【0013】
1つの可能な設計では、板体は平板、円弧板、湾曲板、多段板のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである。
【0014】
当該設計において、バッフル板の板体は平板、円弧板、湾曲板、多段板のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせで、いずれも気流の流動に対する物理的な遮断を実現しており、気流の制御方式が豊かになる。
【0015】
1つの可能な設計では、板体は貫通穴の軸線に平行な1つの方向に向かって延在する。
【0016】
当該設計において、板体が貫通穴の軸線に平行な1つの方向に向かって延在すると具体的に限定し、特に板体が円弧板、湾曲板、多段板のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである場合に、板体は径方向に沿って延在するだけでなく、軸方向に沿って延在してもよい。この場合に2方向ではなく1つの方向に沿って延在させ、具体的には油プールのある方向に向かって延在させて、板体を傘状にすると、油面の波動の緩和効果を向上させるために役立つ。
【0017】
1つの可能な設計では、バッフル板の厚さの値の範囲は0.5mm~4mmである。
【0018】
当該設計において、バッフル板の厚さの値の範囲が0.5mm~4mmであると具体的に限定することにより、バッフル板の十分な厚さを確保して、油面の波動を効果的に抑えるだけでなく、剛性が十分で気流の衝撃で損傷することがなく、製品の信頼性が確保され、製品の耐用年数が延長するとともに、バッフル板の重量と材料の消費を抑えて、不要な重量増加と材料の使用を避けるために役立つ。
【0019】
1つの可能な設計では、バッフル板は板体の外縁に接続されたフランジをさらに含む。
【0020】
当該設計において、バッフル板は板体の外縁に設けられたフランジをさらに含み、フランジが気流を誘導する役割を果たすため、板体の外縁からフランジと逆の方向に流動する気流の流量を減らして、油プールの安定性を保つために役立つ。
【0021】
1つの可能な設計では、バッフル板は板体とフランジとの間に接続された遷移部をさらに含む。
【0022】
当該設計において、バッフル板は板体とフランジとの間に接続された遷移部をさらに含み、これによりバッフル板は段階的に折り曲がってフランジが形成される。いきなり折り曲げられて、折り曲がった箇所に応力集中点が形成されることを避けて、バッフル板の強度を高めるために役立つとともに、気流の流れ抵抗を低減して、誘導効果を向上させる。
【0023】
1つの可能な設計では、遷移部は円弧遷移部であり、円弧遷移部の曲率半径の値の範囲は1mm~6mmである。
【0024】
当該設計において、遷移部が円弧遷移部で、且つその曲率半径が1mm~6mmであると具体的に限定することにより、円滑な遷移が確保され、しかも加工しやすい。
【0025】
1つの可能な設計では、円弧遷移部の中心角の値の範囲は35°~145°である。
【0026】
当該設計において、円弧遷移部に対応する中心角が35°~145°であると具体的に限定することにより、板体からフランジが円滑に遷移し、しかも当該中心角の限定でフランジの延在方向を合理的に制御して、異なる誘導効果を実現することができる。
【0027】
1つの可能な設計では、バッフル板は、板体に設けられ、ガスを排出するための排気貫通穴をさらに含む。
【0028】
当該設計において、バッフル板が、板体に設けられ、圧縮ガスを排出するための排気貫通穴をさらに含むとさらに限定し、バッフル板が圧縮機の消音器の上方に設けられる場合には特に好適であり、この場合に排気貫通穴の設置位置は消音器の排気口の設置位置に対応してもよく、つまり排気貫通穴の圧縮機の軸方向の投影面における投影を消音器の排気口の軸方向の投影面における投影に対応させて、消音器の順調な排気を保証する。
【0029】
1つの可能な設計では、バッフル板は板体に設けられた組立回避穴をさらに含む。
【0030】
当該設計において、バッフル板が板体に設けられた組立回避穴をさらに含むとさらに限定し、組立回避穴の数量、大きさと位置は圧縮機の構造の組立要件に応じて設定し、バッフル板の近くに構造を設ける場合は、溶接作業スペース、ねじ取付けスペース、かしめ作業スペース、接着作業スペースを含むがそれらに限定されない組立作業スペースを十分に提供して、圧縮機の各構造の順調な組み立てを保証するために役立つ。
【0031】
本願の第2の態様は、上記いずれかの技術的手段に記載の圧縮機に用いるバッフル板を含む圧縮機を提供するため、上記バッフル板の全ての有益な技術的効果を備え、ここでは説明を繰り返さない。
【0032】
さらに、本願の上記技術的手段に係る圧縮機は、以下のような付加的な技術的特徴を有してもよい。
【0033】
1つの可能な設計では、圧縮機はシリンダと、回転軸と、モーターと、筐体とをさらに含み、回転軸はシリンダを貫通し、モーターは回転軸のシリンダから延出する部分に接続され、モーターは回転軸を連れて回転させ、シリンダ、回転軸、モーター及びバッフル板はいずれも筐体内に位置し、バッフル板はシリンダとモーターとの間に位置し、回転軸はバッフル板の貫通穴を貫通する。
【0034】
当該設計において、圧縮機が収容空間を提供する筐体と、筐体内に位置するシリンダ、回転軸及びモーターとをさらに含むとさらに限定して、ガス圧縮の機能を実現する。圧縮機が動作する状態では、回転子が回転して下部のバランスウェイトを連れて回転させることで、圧縮機の下部のガスが不安定で激しく旋回して移動する状態になる。前記バッフル板をシリンダとモーターとの間に設け、回転軸をバッフル板の貫通穴に貫通させることにより、バッフル板のモーターと反対の側に冷凍機油又は潤滑油を安定させるスペースは形成され、モーターの回転による下部空間の渦の油プールに対する外乱を効果的に遮断して、圧縮機の底部の油面の波動を緩和する。
【0035】
1つの可能な設計では、回転軸の軸線に垂直の平面を基準面とすると、モーターの回転子の基準面における投影はバッフル板の基準面における投影の外側の輪郭内に位置する。
【0036】
当該設計において、基準面とモーターの回転子とにより、バッフル板の径方向に延在する程度が限定される。回転子の基準面における投影がバッフル板の基準面における投影の外側の輪郭内に位置することにより、バッフル板が基準面内に回転子を完全に覆うことが保証され、回転子の回転による外乱への遮断効果が確保され、底部の冷凍機油の油面の波動を緩和するために役立つ。
【0037】
1つの可能な設計では、バッフル板の外縁と筐体の距離は筐体の内径の20%以下である。
【0038】
当該設計において、バッフル板の外縁と筐体の距離により、バッフル板の径方向に延在する程度が限定される。当該距離が常に筐体の内径の20%以下であるとすると、バッフル板の外縁と筐体との間のギャップでの流れ抵抗が大きく、気流量が小さくなり、下部の油プールの安定性が保たれる。
【0039】
1つの可能な設計では、圧縮機は主軸受と、消音器とをさらに含み、主軸受は回転軸に嵌設され、シリンダのモーターに面した側に位置し、消音器は主軸受の、シリンダと反対の側に設けられ、回転軸は消音器を貫通し、非回転部材は筐体、主軸受、消音器のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである。
【0040】
当該設計において、圧縮機がシリンダのモーターに面した側に位置する主軸受をさらに含むとさらに限定して、回転軸を支持して、回転軸の確実な回転を保証する。圧縮機は、主軸受に設けられた、シリンダの排気時の気流の騒音を遮断する消音器をさらに含む。バッフル板に接続された非回転部材は具体的には筐体、主軸受、消音器のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせであり、つまりバッフル板が3つのうちのいずれか1つ、2つ又は3つに固定して接続されることにより、バッフル板の確実な位置決めと固定を実現している。
【0041】
1つの可能な設計では、バッフル板の排気貫通穴は消音器の排気口のモーターに面した側に位置し、排気貫通穴は排気口に面している。
【0042】
当該設計において、バッフル板の排気貫通穴と消音器の排気口との位置関係を具体的に限定する。排気貫通穴が消音器の排気口のモーターに面した側に位置する場合に、排気貫通穴が排気口に面しており、つまり排気貫通穴の圧縮機の軸方向の投影面における投影を消音器の排気口の軸方向の投影面における投影に対応させて、消音器の順調な排気を保証する。
【0043】
1つの可能な設計では、消音器に組立部が設けられ、消音器は組立部を介して主軸受に接続され、バッフル板の組立回避穴は組立部に面している。
【0044】
当該設計において、消音器には組立部がさらに設けられて主軸受との接続を実現しており、バッフル板の組立回避穴を組立部に面するようにし、組立回避穴の数量、大きさと位置を組立部に対応させることにより、消音器の順調な組み立てを確保する。
【0045】
1つの可能な設計では、バッフル板は消音器とモーターとの間に位置し、バッフル板の貫通穴の穴径は消音器の中心穴の穴径以上である。
【0046】
当該設計において、バッフル板が消音器とモーターとの間に設けられると具体的に限定し、この場合に貫通穴の穴径を消音器の中心穴の穴径以上にすることにより、消音器の中心穴から排気が行われる時に消音器の順調な排気が保証され、圧縮機の確実な動作が確保される。
【0047】
本願の第3の態様は、上記いずれかの技術的手段に記載の圧縮機に用いるバッフル板、又は上記いずれかの技術的手段に記載の圧縮機を含む冷凍装置を提供するため、上記バッフル板又は上記圧縮機の全ての有益な技術的効果を備え、ここでは説明を繰り返さない。
【0048】
本願の付加的な態様及び利点は、下記の説明により明瞭になるか、あるいは本願を実施することで理解される。
【0049】
本願の上記及び/又は付加的な態様及び利点は、下記の図面を参照する実施例の説明から明瞭になり理解しやすいものになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は本願の実施例1のバッフル板の構造模式図である。
【
図2】
図2は本願の実施例1のA-A断面における断面図である。
【
図3】
図3は本願の実施例2のバッフル板の構造模式図である。
【
図4】
図4は本願の実施例3のバッフル板の構造模式図である。
【
図5】
図5は本願の実施例4のバッフル板の構造模式図である。
【
図6】
図6は本願の一実施例の圧縮機の構造模式図である。
【
図7】
図7は本願の一実施例の圧縮機のバッフル板があるとない場合の吐油量の比較図である。
【
図8】
図8は本願の一実施例の圧縮機のバッフル板があるとない場合のエネルギー効率比の比較図である。
【
図9】
図9は本願の別の一実施例の圧縮機のバッフル板があるとない場合の吐油量の比較図である。
【
図10】
図10は本願の別の一実施例の圧縮機のバッフル板があるとない場合のエネルギー効率比の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本願の上述した目的、特徴及び利点をよりよく理解するために、次に図面及び具体的な実施形態と結び付けて本願を一層詳細に説明する。なお、矛盾がない限り、本願の実施例又は実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。
【0052】
次の説明で本願の充分な理解のために多くの詳細が記載されているが、本願はここで説明されるものと異なる形態で実施されてもよく、本願の保護範囲は以下に開示される具体的な実施例に限定されない。
【0053】
次に、
図1から
図10を参照して本願のいくつかの実施例に係る圧縮機に用いるバッフル板100、圧縮機及び冷凍装置を説明する。
【0054】
図1から
図5に示すように、本願の第1の態様の実施例は、圧縮機に用いるバッフル板100を提供する。
図6に示すように、圧縮機が動作する状態では、回転子304が回転して下部のバランスウェイト(未図示)を連れて回転さることで、圧縮機の下部のガスが不安定で激しく旋回して移動する状態になり、油プールの波動が激しく、吐油量が多いという問題がある。本願の実施例に係るバッフル板100は板体102と、貫通穴104と、接続部(例えば、溶接穴106)とを含み、貫通穴104は板体102に設けられ、板体102は貫通穴104から、貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在し、接続部は板体102に接続され、板体102を非回転部材に接続させるためのものである。
【0055】
圧縮機に固定したバッフル板100を設け、例えば、圧縮機のシリンダ600とモーター300との間に設け、バッフル板100を非回転部材に接続させることによりバッフル板100の回転を防ぎ、且つバッフル板100が周方向全体において径方向に沿って延在することにより、気流の流動に物理的な遮断を形成することができ、バッフル板100の油プールに対応する側に冷凍機油又は潤滑油を安定させるスペースを形成させ、圧縮機が動作する時はモーター300の回転による下部空間の渦の油プールに対する外乱を遮断することにより、油プールの安定性を向上させ、圧縮機の底部の油面の波動を緩和するために役立ち、そして波動による油滴の形成を減らし、油面の激しい波動で過剰な冷凍機油又は潤滑油が気流によってモーター300の上部に運ばれることを防ぐ。これは圧縮機内のガスに同伴される油滴を減らし、圧縮機の吐油量を低減し、圧縮機のエネルギー効率を高めるとともに、圧縮機のモーター300の上部に溜まる過剰な冷凍機油又は潤滑油を減らして、圧力の脈動を緩和し、騒音を低減するために役立ち、冷凍装置の圧縮機内に流動する冷媒への抵抗を低減して、圧縮機の冷却能力と加熱能力を向上させて、圧縮機のエネルギー効率を高めるために役立つ。
【0056】
接続のほうからすれば、いくつかの実施例において、接続部は溶接部、かしめ部、接着部のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0057】
当該実施例において、接続部が溶接部、かしめ部、接着部のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含むと具体的に限定しているため、溶接、かしめ、接着によりバッフル板100を圧縮機内の非回転部材に固定して接続させることで、バッフル板100の確実な固定を実現している。具体的には、
図1に示すように、溶接部ははんだを入れる溶接穴106であってもよく、かしめ部はリベットを入れるリベット穴であってもよく、接着部は接着剤を設けやすい構造であってもよく、例えば、凹溝であり、又は別途構造を設けず、板体102の一部が接着部として機能してもよい。
【0058】
次に、板体102の形状の紹介である。
【0059】
全体的には、いくつかの実施例において、バッフル板100の厚さの値の範囲は0.5mm~4mmである。
【0060】
当該実施例において、バッフル板100の厚さの値の範囲が0.5mm~4mmで、さらには1mm~3mmであると具体的に限定することにより、バッフル板100の十分な厚さを確保して、油面の波動を効果的に抑えるだけでなく、剛性が十分で気流の衝撃で損傷することがなく、製品の信頼性が確保され、製品の耐用年数が延長するとともに、バッフル板100の重量と材料の消費を抑えて、不要な重量増加と材料の使用を避けるために役立つ。
【0061】
また、いくつかの実施例において、板体102は平板、円弧板、湾曲板、多段板のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである。
【0062】
当該実施例において、バッフル板100の板体102は平板、円弧板、湾曲板、多段板のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせであり、いずれも気流の流動に対する物理的な遮断を実現しており、気流の制御方式が豊かになる。例えば、
図1から
図3に示すように、板体102は平板で、
図4及び
図5に示すように、板体102は多段板である。
【0063】
さらに、いくつかの実施例において、
図4及び
図5に示すように、板体102は貫通穴104の軸線に平行な1つの方向に向かって延在する。
【0064】
当該実施例において、板体102が貫通穴104の軸線に平行な1つの方向に向かって延在すると具体的に限定し、特に板体102が円弧板、湾曲板、多段板のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである場合に、板体102は径方向に沿って延在するだけでなく、軸方向に沿って延在してもよく、この場合に2方向ではなく1つの方向に沿って延在させ、具体的には油プールのある方向に向かって延在させて、板体102を傘状にすると、油面の波動の緩和効果を向上させるために役立つ。
【0065】
さらに具体的な構造について、まずは、いくつかの実施例において、
図1及び
図2に示すように、バッフル板100は板体102の外縁に接続されたフランジ108をさらに含む。
【0066】
当該実施例において、バッフル板100は板体102の外縁に設けられたフランジ108をさらに含み、バッフル板100を圧縮機に取り付ける時は、具体的にはフランジ108をモーター300の位置する側に面するようにして、モーター300の下部空間の気流を上向きに誘導する役割を果たし、板体102の外縁から下向きに流動する気流の流量を減らして、油プールの安定性を保つために役立つ。
【0067】
さらに、いくつかの実施例において、
図1及び
図2に示すように、バッフル板100は遷移部(例えば、湾曲遷移部、多段遷移部のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせで、湾曲遷移部とは具体的には円弧遷移部110であってもよい)をさらに含み、遷移部は板体102とフランジ108との間に接続される。
【0068】
当該実施例において、バッフル板100は板体102とフランジ108との間に接続された遷移部をさらに含み、これによりバッフル板100は段階的に折り曲がってフランジ108が形成される。いきなり折り曲げられて折り曲がった箇所に応力集中点が形成されることを避けて、バッフル板100の強度を高めるために役立つとともに、気流の流れ抵抗を低減して、誘導効果を向上させる。
【0069】
具体的には、いくつかの実施例において、
図2に示すように、遷移部は円弧遷移部110であり、円弧遷移部110の曲率半径rの値の範囲は1mm~6mmである。
【0070】
当該実施例において、遷移部が円弧遷移部110で、且つその曲率半径rが1mm~6mmであり、さらには1mm~5mmであると具体的に限定することにより、円滑な遷移が確保され、しかも加工しやすい。
【0071】
いくつかの実施例において、
図2に示すように、円弧遷移部110の中心角αの値の範囲は35°~145°である。
【0072】
当該実施例において、円弧遷移部110に対応する中心角αが35°~145°で、さらには45°~135°で、例えば、90°であると具体的に限定することにより、板体102からフランジ108が円滑に遷移し、しかも当該中心角αの限定でフランジ108の延在方向を合理的に制御して、異なる誘導効果を実現することができる。
【0073】
次に、いくつかの実施例において、
図3及び
図5に示すように、バッフル板100は、板体102に設けられ、ガスを排出するための排気貫通穴112をさらに含む。
【0074】
当該実施例において、バッフル板100が、板体102に設けられ、圧縮ガスを排出するための排気貫通穴112をさらに含むとさらに限定し、バッフル板100が
図6に示す圧縮機の消音器900の上方に設けられる場合には特に好適であり、この場合に排気貫通穴112の設置位置は消音器900の排気口(未図示)の設置位置に対応してもよく、つまり排気貫通穴112の圧縮機の軸方向の投影面における投影を消音器900の排気口の軸方向の投影面における投影に対応させて、具体的には両者の数量が同じで、大きさが適合することで、消音器900の順調な排気を保証する。なお、
図6に示す消音器900は主軸受510を回避するための中心穴を有し、消音器900は排気口から排気してもよいし、中心穴から排気してもよく、後者の場合は、消音器900には別途排気口を設ける必要がなく、中心穴が排気口として機能し、これに応じて、バッフル板100の排気貫通穴112はその貫通穴104に統合されてもよく、つまり貫通穴104と排気貫通穴112は同一の構造で、果たす機能によって名称が異なるものである。
【0075】
そして、いくつかの実施例において、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、バッフル板100は板体102に設けられた組立回避穴114をさらに含む。
【0076】
当該実施例において、バッフル板100が板体102に設けられた組立回避穴114をさらに含むとさらに限定し、組立回避穴114の数量、大きさと位置は圧縮機の構造の組立要件に応じて設定し、バッフル板100の近くに構造を設ける場合は、溶接作業スペース、ねじ取付けスペース、かしめ作業スペース、接着作業スペースを含むがそれらに限定されない組立作業スペースを十分に提供し、例えば、組立回避穴114は消音器900のリベット穴に対応してもよく、圧縮機の各構造の順調な組み立てを保証するために役立つ。
【0077】
さらに、いくつかの実施例において、
図1に示すように、バッフル板100は板体102に設けられた位置決め部(例えば、位置決めノッチ116、位置決め突起又は位置決め印刷線)をさらに含む。
【0078】
当該実施例において、バッフル板100が回転構造である場合は、板体10に位置決め部を設けると、バッフル板100を取り付ける時には速やかに突き合わせを実現でき、組立効率を向上させ、誤取付け率を低減するために役立ち、圧縮機の確実な動作は保証される。
【0079】
上記の各技術的特徴をニーズに応じて組み合わせることができ、次に、バッフル板100が圧縮機の消音器900とモーター300との間に位置する場合について、4つの実施例でいくつかの例示的な組み合わせを紹介し、説明の便宜上、異なる実施例で同じ役割を果たす構造は同じ符号で示す。
【0080】
(実施例1)
図1及び
図2に示すように、バッフル板100は板体102と、貫通穴104と、接続部と、フランジ108と、円弧遷移部110と、組立回避穴114と、位置決めノッチ116とを含む。板体102は貫通穴104から、貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在する平板であり、貫通穴104は板体102に設けられ、接続部は貫通穴104を取り囲んで板体102に設けられた溶接穴106で、板体102を非回転部材に溶接するためのもので、この場合に非回転部材は具体的には圧縮機の主軸受510に設けられた消音器900であってもよく、板体102は消音器900の上面に溶接され、且つ消音器900はその中心穴から排気し、貫通穴104の穴径は中心穴の穴径以上であってもよく、つまり消音器の中心穴は排気口としても機能し、バッフル板100の貫通穴104は排気貫通穴112としても機能して、消音器900の順調な排気が保証され、組立回避穴114は消音器900のリベット穴に対応する。
【0081】
(実施例2)
図3に示すように、バッフル板100は板体102と、貫通穴104と、排気貫通穴112とを含む。板体102は貫通穴104から、貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在する平板であり、貫通穴104は板体102に設けられ、この場合には消音器900は中心穴から排気するのではなく、中心穴の近くに別途排気口が設けられ、これに応じて貫通穴104の穴径を小さく設定し、排気口に面した位置に排気貫通穴112を設け、当該実施例では別途接続部が設けられず、板体102が接続部として機能する。
【0082】
(実施例3)
図4に示すように、バッフル板100は板体102と、貫通穴104と、組立回避穴114とを含む。板体102は貫通穴104から、貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在する2段板で、しかも傘状であり、具体的には、2段板は内板と外板とを含み、内板は貫通穴104の軸線から遠ざかる方向と貫通穴104の軸線に平行な1つの方向の両方に向かって延在し、中空の円錐台状であり、外板は貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在し、円環状であり、貫通穴104は実施例1と同じように、排気貫通穴112としても機能し、且つ組立回避穴114が設けられて消音器900のリベット穴に対応し、具体的には組立回避穴114が内板に設けられ、実施例2と同じように、板体102が接続部として機能する。
【0083】
(実施例4)
図5に示すように、バッフル板100は板体102と、貫通穴104と、排気貫通穴112と、組立回避穴114とを含む。板体102は貫通穴104から、貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在する3段板で、しかも傘状であり、具体的には、3段板は内側から順に接続された円環内板、円錐台板及び円環外板を含み、円環内板及び円環外板は貫通穴104の軸線から遠ざかる方向に向かって延在する平板であり、円錐台板は実施例3の内板のようなもので、貫通穴104は実施例2と同じようなもので、貫通穴104の近くに消音器900の排気口に面した位置に排気貫通穴112が設けられ、且つ組立回避穴114が設けられて消音器900のリベット穴に対応し、具体的には排気貫通穴112が円環内板に設けられ、具体的には組立回避穴114が円錐台板に設けられ、実施例2及び実施例3と同じように、板体102が接続部として機能する。
【0084】
本願の第2の態様の実施例は、上記いずれかの実施例に記載の圧縮機に用いるバッフル板100を含む圧縮機を提供するため、上記バッフル板100の全ての有益な技術的効果を備え、ここでは説明を繰り返さない。
【0085】
図6に示すように、圧縮機は回転式圧縮機であってもよく、具体的にはダブルシリンダ回転式圧縮機であり、具体的には
図6に用いるのは前記実施例4のバッフル板100である。また、圧縮機は筐体200と、モーター300と、回転軸400と、主軸受510と、副軸受520と、シリンダ600と、環状のローリングピストン700と、ガス取込み管800と、消音器900とをさらに含む。筐体200は主筐体202と、主筐体202の両端に密封して接続された上部筐体204及び下部筐体206とを含む。モーター300は筐体200に固定された固定子302と、固定子302内で回転する回転子304とを含む。回転軸400は回転子304の中心に結合され、主軸部分402と偏心軸部分404とを含む。主軸受510は回転軸400の上部に、副軸受520は下部に支持される。シリンダ600は主軸受510と副軸受520との間に設けられ、回転軸400はシリンダ600を貫通し、その偏心軸部分404はシリンダ600内に位置すし、環状のローリングピストン700もシリンダ600内に位置し且つ偏心軸部分404に接続される。回転軸400、主軸受510、副軸受520、シリンダ600及び環状のローリングピストン700が圧縮機構を構成し、シリンダ600と環状のローリングピストン700との間に圧縮空間が形成され、シリンダ600の片端はガス取込み管800に接続されて、被圧縮ガスを圧縮空間に入れる。モーター300が回転軸400を駆動して回転させると、偏心軸部分404は環状のローリングピストン700を連れて回転させて、圧縮空間内のガスを圧縮する。消音器900は主軸受510の、シリンダ600と反対の、モーター300に面した側を覆ってもよいし、副軸受520の、シリンダ600と反対の側を覆ってもよく、シリンダ600の排気時の気流の騒音を遮断し、消音器900は回転軸400及び対応の軸頸が通る中心穴を有し、消音器900の排気に関しては、中心穴を利用して中部から排気してもよいし、別途排気口を設けてもよい。
【0086】
バッフル板100の設置位置のほうからすれば、いくつかの実施例において、バッフル板100はシリンダ600とモーター300との間に位置し、回転軸400はバッフル板100の貫通穴104を貫通する。
【0087】
当該実施例において、圧縮機が動作する状態では、回転子304が回転して下部のバランスウェイトを連れて回転させることで、圧縮機の下部のガスが不安定で激しく旋回して移動する状態になる。前記バッフル板100をシリンダ600とモーター300との間に設け、回転軸400をバッフル板100の貫通穴104に貫通させることにより、バッフル板100の、モーター300と反対の側に冷凍機油又は潤滑油を安定させるスペースは形成される。
【0088】
バッフル板100の径方向サイズのほうからすれば、いくつかの実施例において、回転軸400の軸線に垂直の平面を基準面とすると、モーター300の回転子304の基準面における投影はバッフル板100の基準面における投影の外側の輪郭内に位置する。
【0089】
当該実施例において、基準面とモーター300の回転子304とにより、バッフル板100の径方向に延在する程度が限定される。具体的には、延在するバッフル板100としてはその延在方向が貫通穴104の軸線から乖離する方向でさえあればよく、必ずしも貫通穴104の軸線に垂直でなくてもよく、バッフル板100の基準面における投影の外側の輪郭はバッフル板100自体の外側の輪郭とその貫通穴104の軸線の距離を反映するもので、バッフル板100の径方向に延在する程度を反映するものでもある。回転子304の投影がバッフル板100の投影の外側の輪郭内に位置することにより、バッフル板100が基準面内に回転子304を完全に覆うことが保証され、回転子304の回転による外乱への遮断効果が確保され、底部の冷凍機油の油面の波動を緩和するために役立つ。
【0090】
さらに、いくつかの実施例において、バッフル板100の外縁と筐体200の距離は筐体200の内径の20%以下である。
【0091】
当該実施例において、バッフル板100の外縁と筐体200の距離により、バッフル板100の径方向に延在する程度が限定される。当該距離が常に筐体200の内径の20%以下であり、つまりバッフル板100の外縁と筐体200の内壁面との最大距離が筐体200の内径の20%以下であり、さらには筐体200の内径の15%以下であるとすると、バッフル板100の外縁と筐体200との間のギャップでの流れ抵抗が大きく、気流量が小さくなり、下部の油プールの安定性が保たれる。バッフル板100のフランジ108と組み合わせれば、当該ギャップでの下向きの気流の流量をさらに低減することができる。
【0092】
バッフル板100に接続された非回転部材に関しては、いくつかの実施例において、非回転部材は筐体200、主軸受510、消音器900のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである。
【0093】
当該実施例において、バッフル板100に接続された非回転部材は具体的には筐体200、主軸受510、消音器900のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせであり、この場合に具体的には消音器900が主軸受510に接続され、つまりバッフル板100が3つのうちのいずれか1つ、2つ又は3つに固定して接続されることにより、バッフル板100の確実な位置決めと固定を実現している。
【0094】
具体的には、非回転部材が筐体200である場合は、バッフル板100が筐体200に接触するまで径方向に沿って延在し、且つ筐体200に取り付けられる。
【0095】
非回転部材が主軸受510である場合は、主軸受510は具体的には軸受ディスク512と、軸頸514とを含み、軸受ディスク512はシリンダ600に接触し、軸頸514は軸受ディスク512のシリンダ600と反対の側に接続され且つ回転軸400の長さ方向に沿って延在する。接続関係のほうからすれば、バッフル板100は貫通穴104を介して主軸受510に嵌設されてもよく、具体的には軸受ディスク512に嵌設されてもよいし、軸頸514に嵌設されてよい。設置位置のほうからすれば、さらにはバッフル板100は軸受ディスク512とモーター300との間に位置してもよく、これによりバッフル板100とシリンダ600との間には安定したスペースを形成するための十分な距離が確保され、外乱を遮断して、底部の冷凍機油の油面の波動を緩和するために役立つ。なお、バッフル板100が軸受ディスク512とモーター300との間に位置する場合は、具体的にはバッフル板100が主軸受510の軸頸514に接続され、例えば、
図6に示すように、バッフル板100はさらに消音器900とモーター300との間に上がって、軸頸514に接続される。また、バッフル板100が筐体200に接触するまで延在する場合は、バッフル板100は主軸受510にだけ接続されてもよいし、主軸受510と筐体200の両方に接続されてもよく、つまり非回転部材は筐体200、主軸受510である。
【0096】
非回転部材が消音器900である場合は、接続関係のほうからすれば、具体的にはバッフル板100は消音器900の上端に設けられて、消音器900の上面に接続されてもよいし、消音器900に嵌設されてもよく、この場合は消音器900の外面に接続されてもよい。消音器900の底部に設けられてもよく、例えば、消音器900と主軸受510との間に挟まれて設けられ、又は消音器900はバッフル板100と主軸受510との間に挟まれて設けられ、前記の場合は、バッフル板100は消音器900と主軸受510の両方に接続され、つまり非回転部材は消音器900及び主軸受510であり、階段状の消音器900である場合は、バッフル板100は消音器900の階段面に接続されてもよく、消音器900の階段面は上面に大略平行である。設置位置のほうからすれば、さらにはバッフル板100が消音器900とモーター300との間に位置すると、バッフル板100とシリンダ600の距離がさらに拡大して、底部の冷凍機油の油面の波動は緩和される。なお、この場合に具体的にはバッフル板100は消音器900の上面に接続される。同じように、バッフル板100が筐体200に接触するまで延在する場合は、バッフル板100は筐体200に接続されてもよく、つまり非回転部材は筐体200をさらに含む。
【0097】
排気に関しては、いくつかの実施例において、バッフル板100の排気貫通穴112は消音器900の排気口のモーター300に面した側に位置し、排気貫通穴112は排気口に面している。
【0098】
当該実施例において、バッフル板100の排気貫通穴112と消音器900の排気口との位置関係を具体的に限定する。排気貫通穴112が消音器900の排気口のモーター300に面した側に位置し、つまり排気口の上方に位置する場合は、排気貫通穴112を排気口に面するようにするとは、排気貫通穴112の圧縮機の軸方向の投影面における投影を消音器900の排気口の軸方向の投影面における投影に対応させることで、具体的には両者の数量が同じで、大きさが適合することで、消音器900の順調な排気を保証する。
【0099】
別のいくつかの実施例において、バッフル板100は消音器900とモーター300との間に位置し、バッフル板100の貫通穴104の穴径は消音器900の中心穴の穴径以上である。
【0100】
当該実施例において、設置位置のほうからすれば、バッフル板100は消音器900とモーター300との間に設けられ、この場合に貫通穴104の穴径を消音器900の中心穴の穴径以上にすることにより、消音器900の中心穴から排気が行われる時に消音器900の順調な排気が保証され、圧縮機の確実な動作が確保される。当該実施例は、排気貫通穴112と貫通穴104が統合されるという前記実施例の特殊な形態と見なされてもよい。なお、内外二重の消音器の構造である場合に、中心穴とは外側の消音器の中心穴である。
【0101】
組み立てに関しては、いくつかの実施例において、消音器900に組立部が設けられ、消音器900は組立部を介して主軸受510に接続され、バッフル板100の組立回避穴114は組立部に面している。
【0102】
当該実施例において、消音器900には、主軸受510との接続を実現するために組立部がさらに設けられ、組立部は具体的には、消音器900を主軸受510にかしめるリベット穴であってもよく、バッフル板100の組立回避穴114を組立部に面するようにし、組立回避穴114の数量、大きさと位置を組立部に対応させることにより、消音器900順調な組み立てを確保し、消音器900をバッフル板100に組み立てて接続させてから、消音器900を主軸受510に組み立てる場合には特に好適である。
【0103】
次に、本願の実施例に係る圧縮機の2つの試験のデータを示す。
【0104】
(試験1)
圧縮機に前記実施例1のバッフル板100、即ち
図1及び
図2に示すバッフル板100を用い、
図6の設置位置のとおり、バッフル板100を消音器900の上端に設けて、消音器900の上面に接続させた。圧縮機の周波数が60Hz、90Hz、120Hzである3つの状況について、それぞれバッフル板100の設置前後の吐油量及びCOP(Coefficient of performance、エネルギー変換効率比、エネルギー効率比と略称)を測定し、結果は表1に示すとおりである。
【0105】
【0106】
図7は圧縮機のバッフル板100があるとない場合の吐油量の比較図を示し、表1と
図7から分かるように、3つの周波数では、バッフル板100を設けると、圧縮機の吐油量がいずれも明らかに低減し、しかも周波数が低いほど、下げ幅が大きく、下げ幅はそれぞれ39%、24%、11%に達している。
図8は圧縮機のバッフル板100があるとない場合のCOPの比較図を示し、表1と
図8から分かるように、3つの周波数では、バッフル板100を設けると、圧縮機のCOPがいずれも高くなり、上げ幅はそれぞれ1.6%、1.3%、3.4%に達している。従って、圧縮機に前記実施例1のバッフル板100を用いると、吐油量が低減し、エネルギー効率比が向上するから、当該バッフル板100又は当該圧縮機を用いる冷凍装置の冷却と加熱の効果も向上する。
【0107】
(試験2)
圧縮機に前記実施例3のバッフル板100、即ち
図4に示すバッフル板100を用い、
図6の設置位置のとおり、バッフル板100を消音器900の上端に設けて、消音器900の上面に接続させた。圧縮機の周波数が60Hz、90Hzである2つの状況について、それぞれバッフル板100の設置前後の吐油量及びCOPを測定し、結果は表2に示すとおりである。
【0108】
【0109】
図9は圧縮機のバッフル板100があるとない場合の吐油量の比較図を示し、表2と
図9から分かるように、2つの周波数では、バッフル板100を設けると、圧縮機の吐油量がいずれも大幅に低減し、下げ幅はそれぞれ73%、64%に達している。
図10は圧縮機のバッフル板100があるとない場合のCOPの比較図を示し、表2と
図10から分かるように、2つの周波数では、バッフル板100を設けると、圧縮機のCOPがいずれも高くなり、上げ幅はそれぞれ0.8%、2.1%に達している。従って、圧縮機に前記実施例3のバッフル板100を用いると、吐油量が低減し、エネルギー効率比が向上するから、当該バッフル板100又は当該圧縮機を用いる冷凍装置の冷却と加熱の効果も向上する。
【0110】
本願の第3の態様の実施例は、上記いずれかの実施例に記載の圧縮機に用いるバッフル板100、又は上記いずれかの実施例に記載の圧縮機を含む冷凍装置を提供するため、上記バッフル板100又は上記圧縮機の全ての有益な技術的効果を備え、ここでは説明を繰り返さない。冷凍装置は具体的には冷蔵庫又はエアコンであってもよく、例えば、セントラルエアコンである。
【0111】
さらに、冷凍装置は、直接的に又は間接的に圧縮機に接続されて冷却回路又は加熱回路を形成している熱交換器及びスロットル弁をさらに含む。
【0112】
本願では、明確な限定がある場合を除き、用語「複数」とは2つ又は2つ以上を指す。用語「取り付ける」、「接続」、「固定」などは広義で理解されるもので、例えば、「接続」とは固定して接続されることであってもよいし、取り外し可能に接続されることであってもよいし、又は一体的に接続されることであってもよい。「接続」とは直接的に接続されることであってもよいし、中間の介在物を介して間接的に接続されることであってもよい。当業者は、状況に応じて本願での前記用語の意味を具体的に理解することができる。
【0113】
本明細書の説明で、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「具体例」などが用いられる場合には、当該実施例又は例で説明する特定の特徴、構造、材料又は利点が本願の少なくとも一実施例又は例に含まれることが意図される。本明細書で、前記用語に関する例示的な記述は必ずしも同じ実施例又は例が対象になるとは限らない。しかも、説明される特定の特徴、構造、材料又は利点を任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切な形態で組み合わせることができる。
【0114】
以上は本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するためのものではなく、当業者にとっては、本願に様々な変更や変化が可能である。本願の趣旨を逸脱せず補正や、同等な置き換え、改善などが行われる場合、そのいずれも本願の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
図1から
図6における符号と部品名称との対応関係は、次のとおりである。
100…バッフル板、102…板体、104…貫通穴、106…溶接穴、108…フランジ、110…円弧遷移部、112…排気貫通穴、114…組立回避穴、116…位置決めノッチ、200…筐体、202…主筐体、204…上部筐体、206…下部筐体、300…モーター、302…固定子、304…回転子、400…回転軸、402…主軸部分、404…偏心軸部分、510…主軸受、512…軸受ディスク、514…軸頸、520…副軸受、600…シリンダ、700…環状のローリングピストン、800…ガス取込み管、900…消音器。