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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】エアロゾル生成装置の電源ユニット
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/40 20200101AFI20230210BHJP
【FI】
A24F40/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022107935
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2021079881の分割
【原出願日】2021-05-10
(65)【公開番号】P2022174034
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2022-07-04
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 達也
(72)【発明者】
【氏名】川中子 拓嗣
(72)【発明者】
【氏名】長浜 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤木 貴司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特許第6865879(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第111262118(CN,A)
【文献】特開2012-230937(JP,A)
【文献】特開2020-150347(JP,A)
【文献】特開2010-243484(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111513365(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
+極と-極とを含み、前記電源から供給される電力を消費してエアロゾル源を加熱するヒータが前記+極と前記-極へ接続されるヒータコネクタと、
前記+極と前記-極のいずれか一方へ直列接続されるスイッチと、
前記+極と前記-極のいずれか一方へ直列接続され、前記ヒータコネクタへの電力の供給を制御する固定抵抗器と、
前記スイッチが実装される回路基板と、
前記スイッチがONの時、前記固定抵抗器又は前記ヒータコネクタに印加される電圧に基づき、所定の制御を実行するように構成されるコントローラと、を備え、
前記回路基板において前記スイッチが実装される領域である第1実装領域と前記回路基板の縁のうち最も前記スイッチに近い縁である第1最近接縁との間の距離は、前記第1実装領域と前記回路基板の中心の間の距離より短く、
前記回路基板上において前記第1最近接縁に最も近い電子部品は、前記スイッチであり、
前記スイッチと前記固定抵抗器は直列接続され
前記回路基板には、前記スイッチと前記ヒータコネクタとの間に、前記コントローラの制御により前記スイッチのON/OFFを制御するトランジスタが配置されている、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記固定抵抗器は、前記回路基板に実装され、
前記回路基板において前記固定抵抗器が実装される領域である第2実装領域と前記回路基板の縁のうち最も前記固定抵抗器に近い縁との間の距離は、前記第1実装領域と前記第1最近接縁との間の距離より長い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記スイッチは、前記+極へ直列接続され、且つ、Pチャネル型MOSFETを含み、
前記Pチャネル型MOSFETは、ソース端子と、ゲート端子と、ドレイン端子とを含み、
前記電源へ入力端子が接続され、且つ、前記ソース端子へ出力端子が接続される昇圧コンバータを備え、
前記コントローラは、前記ゲート端子へ接続される端子を含み、
前記コントローラの電源端子へ入力される電圧は、前記昇圧コンバータの出力端子から出力される電圧より低い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記スイッチは、前記ゲート端子と前記ソース端子との間に接続される過電圧保護ダイオードを含む、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記Pチャネル型MOSFETは、前記ソース端子側が高電位になるように前記ゲート端子と前記ソース端子の間へ印加される電圧の値が閾値を越えるとONになり、
前記コントローラは、前記Pチャネル型MOSFETのON状態において、前記ソース端子側が高電位になるように前記ゲート端子と前記ソース端子の間へ印加される電圧が所定電圧値を有するように、前記ゲート端子へ電圧を印加するように構成され、
前記ソース端子側が高電位になるように前記ゲート端子と前記ソース端子の間へ印加可能な電圧の最大定格値と前記所定電圧値の差の絶対値は、前記閾値と前記所定電圧値の差の絶対値より小さい、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記電源から出力される電圧を変換して前記ヒータへ出力可能な電圧変換器を備える、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記回路基板は、前記スイッチが実装されるA面と、前記A面の裏面且つ前記電圧変換器が実装されるB面と、を含む、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記固定抵抗器は、前記A面に実装される、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記電圧変換器は、前記B面に実装されるICと、前記A面に実装されるリアクトルとを含む、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記A面において前記固定抵抗器が実装される領域である第2実装領域と前記A面において前記リアクトルが実装される領域である第3実装領域の間の距離は、前記第1実装領域と前記第3実装領域との間の距離より短い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記第2実装領域は、前記第1実装領域と前記第3実装領域とを結ぶ直線上に存在する、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記回路基板は、前記スイッチ及び前記ヒータコネクタが実装されるA面を含み、
前記第1実装領域と前記ヒータコネクタとを結ぶ直線上に実装される電子部品を備える、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【請求項13】
請求項1に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
前記回路基板には、前記スイッチと、前記固定抵抗器と、前記ヒータコネクタとが同一面に実装されている、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル生成装置の電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エアロゾル源を加熱し且つ温度と電気抵抗値が相関を持つ負荷に印加される電圧に応じた出力を行うオペアンプと、上記出力に応じた電圧に基づく処理を行うように構成された制御部と、電源と上記負荷との間に並列に電気的に接続された第1回路及び第2回路と、を含み、第1回路及び第2回路は第1開閉器及び第2開閉器をそれぞれ含む、エアロゾル吸引器用の制御装置が記載されている。この制御装置は、第2開閉器がオン状態である間に、オペアンプの出力に応じた電圧を取得するように構成されている。
【0003】
特許文献2には、所定の抵抗値を有する加熱要素と、前記加熱要素に電力を供給する電源と、前記加熱要素と並列に接続される複数の抵抗と、制御部と、前記加熱要素のオン/オフを制御する第1スイッチと、前記電源と前記複数の抵抗との間に接続される第2スイッチと、前記複数の抵抗の間の配線と前記制御部との間に接続される第3スイッチとを備え、前記加熱要素の抵抗値を測定する際に、前記制御部は、前記第2スイッチと前記第3スイッチとをオンし、前記第1スイッチをオフするスイッチ制御を実行するように構成された非燃焼式吸引器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6613008号公報
【文献】国際公開第2020/217949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロゾルを吸引可能に構成したエアロゾル生成装置では、ヒータの抵抗値を利用して、ヒータの加熱制御等の所定の制御を行うことがある。ヒータの抵抗値の計測には、従来技術のように、バイポーラトランジスタやMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等のスイッチング素子が用いられる。所定の制御の精度を高め
るためには、こういったスイッチング素子をどのような位置に実装するかについての検討が必要になる。
【0006】
本発明の目的は、制御の精度を向上可能なエアロゾル生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のエアロゾル生成装置の電源ユニットは、電源と、+極と-極とを含み、前記電源から供給される電力を消費してエアロゾル源を加熱するヒータが前記+極と前記-極へ接続されるヒータコネクタと、前記+極と前記-極のいずれか一方へ直列接続されるスイッチと、前記+極と前記-極のいずれか一方へ直列接続され、前記ヒータコネクタへの電力の供給を制御する固定抵抗器と、前記スイッチが実装される回路基板と、前記スイッチがONの時、前記固定抵抗器又は前記ヒータコネクタに印加される電圧に基づき、所定の制御を実行するように構成されるコントローラと、を備え、前記回路基板において前記スイッチが実装される領域である第1実装領域と前記回路基板の縁のうち最も前記スイッチに近い縁である第1最近接縁との間の距離は、前記第1実装領域と前記回路基板の中心の間の距離より短く、前記回路基板上において前記第1最近接縁に最も近い電子部品は、前記スイッチであり、前記スイッチと前記固定抵抗器は直列接続され、前記回路基板には、前記スイッチと前記ヒータコネクタとの間に、前記コントローラの制御により前記スイッチのON/OFFを制御するトランジスタが配置されている
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御の精度を向上可能なエアロゾル生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非燃焼式吸引器の斜視図である。
図2】ロッドを装着した状態を示す非燃焼式吸引器の斜視図である。
図3】非燃焼式吸引器の他の斜視図である。
図4】非燃焼式吸引器の分解斜視図である。
図5】非燃焼式吸引器の内部ユニットの斜視図である。
図6図5の内部ユニットの分解斜視図である。
図7】電源及びシャーシを取り除いた内部ユニットの斜視図である。
図8】電源及びシャーシを取り除いた内部ユニットの他の斜視図である。
図9】吸引器の動作モードを説明するための模式図である。
図10】内部ユニットの電気回路の概略構成を示す図である。
図11】内部ユニットの電気回路の概略構成を示す図である。
図12】内部ユニットの電気回路の概略構成を示す図である。
図13】スリープモードにおける電気回路の動作を説明するための図である。
図14】アクティブモードにおける電気回路の動作を説明するための図である
図15】加熱初期設定モードにおける電気回路の動作を説明するための図である。
図16】加熱モードにおけるヒータの加熱時の電気回路の動作を説明するための図である。
図17】加熱モードにおけるヒータの温度検出時の電気回路の動作を説明するための図である。
図18】充電モードにおける電気回路の動作を説明するための図である。
図19】MCUのリセット(再起動)時の電気回路の動作を説明するための図である。
図20図10に示す電気回路のうち、ヒータの加熱と温度検出に用いられる主要な電子部品を抜き出して示した要部回路図である。
図21】加熱モードにおけるスイッチS3及びスイッチS4のゲート端子に入力される電圧変化の一例を示す図である。
図22】加熱モードの加熱制御時における電流の流れを示した図である。
図23】加熱モードの温度検出制御時における電流の流れを示した図である。
図24図21の駆動例EX2におけるスイッチS3とスイッチS4が共にオンしているときの電流の流れを示した図である。
図25】レセプタクル搭載基板を主面側から見た平面図である。
図26】レセプタクル搭載基板を副面側から見た平面図である。
図27図25に示す範囲Hの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明におけるエアロゾル生成装置の一実施形態である吸引システムについて図面を参照しながら説明する。この吸引システムは、本発明の電源ユニットの一実施形態である非燃焼式吸引器100(以下、単に、「吸引器100」ともいう)と、吸引器100によって加熱されるロッド500と、を備える。以下の説明では、吸引器100が、加熱部を着脱不能に収容した構成を例に説明する。しかし、吸引器100に対し加熱部が着脱自在に構成されていてもよい。例えば、ロッド500と加熱部が一体化されたものを、吸引器100に着脱自在に構成したものであってもよい。つまり、エアロゾル生成装置の電源ユニットは、構成要素として加熱部を含まない構成であってもよい。なお、着脱不能とは、想定される用途の限りにおいて、取外しが行えないような態様を指すものとする。または、吸引器100に設けられる誘導加熱用コイルと、ロッド500に内蔵されるサセプタが協働して加熱部を構成してもよい。
【0011】
図1は、吸引器100の全体構成を示す斜視図である。図2は、ロッド500を装着した状態を示す吸引器100の斜視図である。図3は、吸引器100の他の斜視図である。図4は、吸引器100の分解斜視図である。また、以下の説明では、互いに直交する3方向を、便宜上、前後方向、左右方向、上下方向とした、3次元空間の直交座標系を用いて説明する。図中、前方をFr、後方をRr、右側をR、左側をL、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
吸引器100は、エアロゾル源及び香味源を含む充填物などを有する香味成分生成基材の一例としての細長い略円柱状のロッド500(図2参照)を加熱することによって、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0013】
<香味成分生成基材(ロッド)>
ロッド500は、所定温度で加熱されてエアロゾルを生成するエアロゾル源を含有する充填物を含む。
【0014】
エアロゾル源の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質及び/又はそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル源は、固体であってもよいし、例えば、グリセリン、プロピレングリコールといった多価アルコールや、水などの液体であってもよい。エアロゾル源は、加熱することによって香味成分を放出するたばこ原料やたばこ原料由来の抽出物等の香味源を含んでいてもよい。香味成分が付加される気体はエアロゾルに限定されず、例えば不可視の蒸気が生成されてもよい。
【0015】
ロッド500の充填物は、香味源としてたばこ刻みを含有し得る。たばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知の材料を用いることができる。充填物は、1種又は2種以上の香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は特に限定されないが、良好な喫味の付与の観点から、好ましくはメンソールである。香味源は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、漢方、又はハーブ等)を含有し得る。用途によっては、ロッド500は香味源を含まなくてもよい。
【0016】
<非燃焼式吸引器の全体構成>
続いて、吸引器100の全体構成について、図1図4を参照しながら説明する。
吸引器100は、前面、後面、左面、右面、上面、及び下面を備える略直方体形状のケース110を備える。ケース110は、前面、後面、上面、下面、及び右面が一体に形成された有底筒状のケース本体112と、ケース本体112の開口部114(図4参照)を封止し左面を構成するアウターパネル115及びインナーパネル118と、スライダ119と、を備える。
【0017】
インナーパネル118は、ケース本体112にボルト120で固定される。アウターパネル115は、ケース本体112に収容された後述するシャーシ150(図5参照)に保持されたマグネット124によって、インナーパネル118の外面を覆うようにケース本体112に固定される。アウターパネル115が、マグネット124によって固定されることで、ユーザは好みに合わせてアウターパネル115を取り替えることが可能となっている。
【0018】
インナーパネル118には、マグネット124が貫通するように形成された2つの貫通孔126が設けられる。インナーパネル118には、上下に配置された2つの貫通孔126の間に、さらに縦長の長孔127及び円形の丸孔128が設けられる。この長孔127は、ケース本体112に内蔵された8つのLED(Light Emitting Diode) L1~L8から出射される光を透過させるためのものである。丸孔128には、ケース本体112に
内蔵されたボタン式の操作スイッチOPSが貫通する。これにより、ユーザは、アウターパネル115のLED窓116を介して8つのLED L1~L8から出射される光を検知することができる。また、ユーザは、アウターパネル115の押圧部117を介して操作スイッチOPSを押し下げることができる。
【0019】
図2に示すように、ケース本体112の上面には、ロッド500を挿入可能な開口132が設けられる。スライダ119は、開口132を閉じる位置(図1参照)と開口132を開放する位置(図2参照)との間を、前後方向に移動可能にケース本体112に結合される。
【0020】
操作スイッチOPSは、吸引器100の各種操作を行うために使用される。例えば、ユーザは、図2に示すようにロッド500を開口132に挿入して装着した状態で、押圧部117を介して操作スイッチOPSを操作する。これにより、加熱部170(図5参照)によって、ロッド500を燃焼させずに加熱する。ロッド500が加熱されると、ロッド500に含まれるエアロゾル源からエアロゾルが生成され、ロッド500に含まれる香味源の香味が当該エアロゾルに付加される。ユーザは、開口132から突出したロッド500の吸口502を咥えて吸引することにより、香味を含むエアロゾルを吸引することができる。
【0021】
ケース本体112の下面には、図3に示すように、コンセントやモバイルバッテリ等の外部電源と電気的に接続して電力供給を受けるための充電端子134が設けられている。本実施形態において、充電端子134は、USB(Universal Serial Bus) Type-C形状のレセプタクルとしているが、これに限定されるものではない。充電端子134を、以下では、レセプタクルRCPとも記載する。
【0022】
なお、充電端子134は、例えば、受電コイルを備え、外部電源から送電される電力を非接触で受電可能に構成されてもよい。この場合の電力伝送(Wireless Power Transfer
)の方式は、電磁誘導型でもよいし、磁気共鳴型でもよいし、電磁誘導型と磁気共鳴型を組み合わせたものでもよい。別の一例として、充電端子134は、各種USB端子等が接続可能であり、且つ上述した受電コイルを有していてもよい。
【0023】
図1図4に示される吸引器100の構成は一例にすぎない。吸引器100は、ロッド500を保持して例えば加熱等の作用を加えることで、ロッド500から香味成分が付与された気体を生成させ、生成された気体をユーザが吸引することができるような、様々な形態で構成することができる。
【0024】
<非燃焼式吸引器の内部構成>
吸引器100の内部ユニット140について図5図8を参照しながら説明する。
図5は、吸引器100の内部ユニット140の斜視図である。図6は、図5の内部ユニット140の分解斜視図である。図7は、電源BAT及びシャーシ150を取り除いた内部ユニット140の斜視図である。図8は、電源BAT及びシャーシ150を取り除いた内部ユニット140の他の斜視図である。
【0025】
ケース110の内部空間に収容される内部ユニット140は、シャーシ150と、電源BATと、回路部160と、加熱部170と、通知部180と、各種センサと、を備える。
【0026】
シャーシ150は、前後方向においてケース110の内部空間の略中央に配置され上下方向且つ前後方向に延設された板状のシャーシ本体151と、前後方向においてケース110の内部空間の略中央に配置され上下方向且つ左右方向に延びる板状の前後分割壁15
2と、上下方向において前後分割壁152の略中央から前方に延びる板状の上下分割壁153と、前後分割壁152及びシャーシ本体151の上縁部から後方に延びる板状のシャーシ上壁154と、前後分割壁152及びシャーシ本体151の下縁部から後方に延びる板状のシャーシ下壁155と、を備える。シャーシ本体151の左面は、前述したケース110のインナーパネル118及びアウターパネル115に覆われる。
【0027】
ケース110の内部空間は、シャーシ150により前方上部に加熱部収容領域142が区画形成され、前方下部に基板収容領域144が区画形成され、後方に上下方向に亘って電源収容空間146が区画形成されている。
【0028】
加熱部収容領域142に収容される加熱部170は、複数の筒状の部材から構成され、これらが同心円状に配置されることで、全体として筒状体をなしている。加熱部170は、その内部にロッド500の一部を収納可能なロッド収容部172と、ロッド500を外周または中心から加熱するヒータHTR(図10図19参照)と、を有する。ロッド収容部172が断熱材で構成される、又は、ロッド収容部172の内部に断熱材が設けられることで、ロッド収容部172の表面とヒータHTRは断熱されることが好ましい。ヒータHTRは、ロッド500を加熱可能な素子であればよい。ヒータHTRは、例えば、発熱素子である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。ヒータHTRとしては、例えば、温度の増加に伴って抵抗値も増加するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有するものが好ましく用いられる。これに代えて、温度の増加に伴って抵抗値が低下するNTC(Negative Temperature
Coefficient)特性を有するヒータHTRを用いてもよい。加熱部170は、ロッド500へ供給する空気の流路を画定する機能、及びロッド500を加熱する機能を有する。ケース110には、空気を流入させるための通気口(不図示)が形成され、加熱部170に空気が流入できるように構成される。
【0029】
電源収容空間146に収容される電源BATは、充電可能な二次電池、電気二重層キャパシタ等であり、好ましくは、リチウムイオン二次電池である。電源BATの電解質は、ゲル状の電解質、電解液、固体電解質、イオン液体の1つ又はこれらの組合せで構成されていてもよい。
【0030】
通知部180は、電源BATの充電状態を示すSOC(State Of Charge)、吸引時の
予熱時間、吸引可能期間等の各種情報を通知する。本実施形態の通知部180は、8つのLED L1~L8と、振動モータMと、を含む。通知部180は、LED L1~L8のような発光素子によって構成されていてもよく、振動モータMのような振動素子によって構成されていてもよく、音出力素子によって構成されていてもよい。通知部180は、発光素子、振動素子、及び音出力素子のうち、2以上の素子の組合せであってもよい。
【0031】
各種センサは、ユーザのパフ動作(吸引動作)を検出する吸気センサ、電源BATの温度を検出する電源温度センサ、ヒータHTRの温度を検出するヒータ温度センサ、ケース110の温度を検出するケース温度センサ、スライダ119の位置を検出するカバー位置センサ、及びアウターパネル115の着脱を検出するパネル検出センサ等を含む。
【0032】
吸気センサは、例えば、開口132の近傍に配置されたサーミスタT2を主体に構成される。電源温度センサは、例えば、電源BATの近傍に配置されたサーミスタT1を主体に構成される。ヒータ温度センサは、例えば、ヒータHTRの近傍に配置されたサーミスタT3を主体に構成される。上述した通り、ロッド収容部172はヒータHTRから断熱されることが好ましい。この場合において、サーミスタT3は、ロッド収容部172の内部において、ヒータHTRと接する又は近接することが好ましい。ヒータHTRがPTC特性やNTC特性を有する場合、ヒータHTRそのものをヒータ温度センサに用いてもよ
い。ケース温度センサは、例えば、ケース110の左面の近傍に配置されたサーミスタT4を主体に構成される。カバー位置センサは、スライダ119の近傍に配置されたホール素子を含むホールIC14を主体に構成される。パネル検出センサは、インナーパネル118の内側の面の近傍に配置されたホール素子を含むホールIC13を主体に構成される。
【0033】
回路部160は、4つの回路基板と、複数のIC(Integrate Circuit)と、複数の素
子と、を備える。4つの回路基板は、主に後述のMCU(Micro Controller Unit)1及び
充電IC2が配置されたMCU搭載基板161と、主に充電端子134が配置されたレセプタクル搭載基板162と、操作スイッチOPS、LED L1~L8、及び後述の通信IC15が配置されたLED搭載基板163と、カバー位置センサを構成するホール素子を含む後述のホールIC14が配置されたホールIC搭載基板164と、を備える。
【0034】
MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162は、基板収容領域144において互いに平行に配置される。具体的に説明すると、MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162は、それぞれの素子配置面が左右方向及び上下方向に沿って配置され、MCU搭載基板161がレセプタクル搭載基板162よりも前方に配置される。MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162には、それぞれ開口部が設けられる。MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162は、これら開口部の周縁部同士の間に円筒状のスペーサ173を介在させた状態で前後分割壁152の基板固定部156にボルト136で締結される。即ち、スペーサ173は、ケース110の内部におけるMCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162の位置を固定し、且つ、MCU搭載基板161とレセプタクル搭載基板162とを機械的に接続する。これにより、MCU搭載基板161とレセプタクル搭載基板162が接触し、これらの間で短絡電流が生じることを抑制できる。
【0035】
便宜上、MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162の前方を向く面を、それぞれの主面161a、162aとし、主面161a、162aの反対面をそれぞれの副面161b、162bとすると、MCU搭載基板161の副面161bと、レセプタクル搭載基板162の主面162aとが、所定の隙間を介して対向する。MCU搭載基板161の主面161aはケース110の前面と対向し、レセプタクル搭載基板162の副面162bは、シャーシ150の前後分割壁152と対向する。MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162に搭載される素子及びICについては後述する。
【0036】
LED搭載基板163は、シャーシ本体151の左側面、且つ上下に配置された2つのマグネット124の間に配置される。LED搭載基板163の素子配置面は、上下方向及び前後方向に沿って配置されている。換言すると、MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162それぞれの素子配置面と、LED搭載基板163の素子配置面とは、直交している。このように、MCU搭載基板161及びレセプタクル搭載基板162それぞれの素子配置面と、LED搭載基板163の素子配置面とは、直交に限らず、交差している(非平行である)ことが好ましい。なお、LED L1~L8とともに通知部180を構成する振動モータMは、シャーシ下壁155の下面に固定され、MCU搭載基板161に電気的に接続される。
【0037】
ホールIC搭載基板164は、シャーシ上壁154の上面に配置される。
【0038】
<吸引器の動作モード>
図9は、吸引器100の動作モードを説明するための模式図である。図9に示すように、吸引器100の動作モードには、充電モード、スリープモード、アクティブモード、加熱初期設定モード、加熱モード、及び加熱終了モードが含まれる。
【0039】
スリープモードは、主にヒータHTRの加熱制御に必要な電子部品への電力供給を停止して省電力化を図るモードである。
【0040】
アクティブモードは、ヒータHTRの加熱制御を除くほとんどの機能が有効になるモードである。吸引器100は、スリープモードにて動作している状態にて、スライダ119が開かれると、動作モードをアクティブモードに切り替える。吸引器100は、アクティブモードにて動作している状態にて、スライダ119が閉じられたり、操作スイッチOPSの無操作時間が所定時間に達したりすると、動作モードをスリープモードに切り替える。
【0041】
加熱初期設定モードは、ヒータHTRの加熱制御を開始するための制御パラメータ等の初期設定を行うモードである。吸引器100は、アクティブモードにて動作している状態にて、操作スイッチOPSの操作を検出すると、動作モードを加熱初期設定モードに切り替え、初期設定が終了すると、動作モードを加熱モードに切り替える。
【0042】
加熱モードは、ヒータHTRの加熱制御(エアロゾル生成のための加熱制御と、温度検出のための加熱制御)を実行するモードである。吸引器100は、動作モードが加熱モードに切り替わると、ヒータHTRの加熱制御を開始する。
【0043】
加熱終了モードは、ヒータHTRの加熱制御の終了処理(加熱履歴の記憶処理等)を実行するモードである。吸引器100は、加熱モードにて動作している状態にて、ヒータHTRへの通電時間又はユーザの吸引回数が上限に達したり、スライダ119が閉じられたりすると、動作モードを加熱終了モードに切り替え、終了処理が終了すると、動作モードをアクティブモードに切り替える。吸引器100は、加熱モードにて動作している状態にて、USB接続がなされると、動作モードを加熱終了モードに切り替え、終了処理が終了すると、動作モードを充電モードに切り替える。図9に示したように、この場合において、動作モードを充電モードに切り替える前に、動作モードをアクティブモードへ切り替えてもよい。換言すれば、吸引器100は、加熱モードにて動作している状態にて、USB接続がなされると、動作モードを加熱終了モード、アクティブモード、充電モードの順に切り替えてもよい。
【0044】
充電モードは、レセプタクルRCPに接続された外部電源から供給される電力により、電源BATの充電を行うモードである。吸引器100は、スリープモード又はアクティブモードにて動作している状態にて、レセプタクルRCPに外部電源が接続(USB接続)されると、動作モードを充電モードに切り替える。吸引器100は、充電モードにて動作している状態にて、電源BATの充電が完了したり、レセプタクルRCPと外部電源との接続が解除されたりすると、動作モードをスリープモードに切り替える。
【0045】
<内部ユニットの回路の概略>
図10図11、及び図12は、内部ユニット140の電気回路の概略構成を示す図である。図11は、図10に示す電気回路のうち、MCU搭載基板161に搭載される範囲161A(太い破線で囲まれた範囲)と、LED搭載基板163に搭載される範囲163A(太い実線で囲まれた範囲)とを追加した点を除いては、図10と同じである。図12は、図10に示す電気回路のうち、レセプタクル搭載基板162に搭載される範囲162Aと、ホールIC搭載基板164に搭載される範囲164Aとを追加した点を除いては、図10と同じである。
【0046】
図10において太い実線で示した配線は、内部ユニット140の基準となる電位(グランド電位)と同電位となる配線(内部ユニット140に設けられたグランドに接続される
配線)であり、この配線を以下ではグランドラインと記載する。図10では、複数の回路素子をチップ化した電子部品を矩形で示しており、この矩形の内側に各種端子の符号を記載している。チップに搭載される電源端子VCC及び電源端子VDDは、それぞれ、高電位側の電源端子を示す。チップに搭載される電源端子VSS及びグランド端子GNDは、それぞれ、低電位側(基準電位側)の電源端子を示す。チップ化された電子部品は、高電位側の電源端子の電位と低電位側の電源端子の電位の差分が、電源電圧となる。チップ化された電子部品は、この電源電圧を用いて、各種機能を実行する。
【0047】
図11に示すように、MCU搭載基板161(範囲161A)には、主要な電子部品として、吸引器100の全体を統括制御するMCU1と、電源BATの充電制御を行う充電IC2と、コンデンサ、抵抗器、及びトランジスタ等を組み合わせて構成されたロードスイッチ(以下、LSW)3,4,5と、ROM(Read Only Memory)6と、スイッチドライバ7と、昇降圧DC/DCコンバータ8(図では、昇降圧DC/DC8と記載)と、オペアンプOP2と、オペアンプOP3と、フリップフロップ(以下、FF)16,17と、吸気センサを構成するサーミスタT2と電気的に接続されるコネクタCn(t2)(図では、このコネクタに接続されたサーミスタT2を記載)と、ヒータ温度センサを構成するサーミスタT3と電気的に接続されるコネクタCn(t3)(図では、このコネクタに接続されたサーミスタT3を記載)と、ケース温度センサを構成するサーミスタT4と電気的に接続されるコネクタCn(t4)(図では、このコネクタに接続されたサーミスタT4を記載)と、USB接続検出用の分圧回路Pcと、が設けられている。
【0048】
充電IC2、LSW3、LSW4、LSW5、スイッチドライバ7、昇降圧DC/DCコンバータ8、FF16、及びFF17の各々のグランド端子GNDは、グランドラインに接続されている。ROM6の電源端子VSSは、グランドラインに接続されている。オペアンプOP2及びオペアンプOP3の各々の負電源端子は、グランドラインに接続されている。
【0049】
図11に示すように、LED搭載基板163(範囲163A)には、主要な電子部品として、パネル検出センサを構成するホール素子を含むホールIC13と、LED L1~L8と、操作スイッチOPSと、通信IC15と、が設けられている。通信IC15は、スマートフォン等の電子機器との通信を行うための通信モジュールである。ホールIC13の電源端子VSS及び通信IC15のグランド端子GNDの各々は、グランドラインに接続されている。通信IC15とMCU1は、通信線LNによって通信可能に構成されている。操作スイッチOPSの一端はグランドラインに接続され、操作スイッチOPSの他端はMCU1の端子P4に接続されている。
【0050】
図12に示すように、レセプタクル搭載基板162(範囲162A)には、主要な電子部品として、電源BATと電気的に接続される電源コネクタ(図では、この電源コネクタに接続された電源BATを記載)と、電源温度センサを構成するサーミスタT1と電気的に接続されるコネクタ(図では、このコネクタに接続されたサーミスタT1を記載)と、昇圧DC/DCコンバータ9(図では、昇圧DC/DC9と記載)と、保護IC10と、過電圧保護IC11と、残量計IC12と、レセプタクルRCPと、MOSFETで構成されたスイッチS3~スイッチS6と、オペアンプOP1と、ヒータHTRと電気的に接続される一対(正極側と負極側)のヒータコネクタCnと、が設けられている。
【0051】
レセプタクルRCPの2つのグランド端子GNDと、昇圧DC/DCコンバータ9のグランド端子GNDと、保護IC10の電源端子VSSと、残量計IC12の電源端子VSSと、過電圧保護IC11のグランド端子GNDと、オペアンプOP1の負電源端子は、それぞれ、グランドラインに接続されている。
【0052】
図12に示すように、ホールIC搭載基板164(範囲164A)には、カバー位置センサを構成するホール素子を含むホールIC14が設けられている。ホールIC14の電源端子VSSは、グランドラインに接続されている。ホールIC14の出力端子OUTは、MCU1の端子P8に接続されている。MCU1は、端子P8に入力される信号により、スライダ119の開閉を検出する。
【0053】
図11に示すように、振動モータMと電気的に接続されるコネクタは、MCU搭載基板161に設けられている。
【0054】
<内部ユニットの回路の詳細>
以下、図10を参照しながら各電子部品の接続関係等について説明する。
【0055】
レセプタクルRCPの2つの電源入力端子VBUSは、それぞれ、ヒューズFsを介して、過電圧保護IC11の入力端子INに接続されている。レセプタクルRCPにUSBプラグが接続され、このUSBプラグを含むUSBケーブルが外部電源に接続されると、レセプタクルRCPの2つの電源入力端子VBUSにUSB電圧VUSBが供給される。
【0056】
過電圧保護IC11の入力端子INには、2つの抵抗器の直列回路からなる分圧回路Paの一端が接続されている。分圧回路Paの他端はグランドラインに接続されている。分圧回路Paを構成する2つの抵抗器の接続点は、過電圧保護IC11の電圧検出端子OVLoに接続されている。過電圧保護IC11は、電圧検出端子OVLoに入力される電圧が閾値未満の状態では、入力端子INに入力された電圧を出力端子OUTから出力する。過電圧保護IC11は、電圧検出端子OVLoに入力される電圧が閾値以上(過電圧)となった場合には、出力端子OUTからの電圧出力を停止(LSW3とレセプタクルRCPとの電気的な接続を遮断)することで、過電圧保護IC11よりも下流の電子部品の保護を図る。過電圧保護IC11の出力端子OUTは、LSW3の入力端子VINと、MCU1に接続された分圧回路Pc(2つの抵抗器の直列回路)の一端と、に接続されている。分圧回路Pcの他端はグランドラインに接続されている。分圧回路Pcを構成する2つの抵抗器の接続点は、MCU1の端子P17に接続されている。
【0057】
LSW3の入力端子VINには、2つの抵抗器の直列回路からなる分圧回路Pfの一端が接続されている。分圧回路Pfの他端はグランドラインに接続されている。分圧回路Pfを構成する2つの抵抗器の接続点は、LSW3の制御端子ONに接続されている。LSW3の制御端子ONには、バイポーラトランジスタS2のコレクタ端子が接続されている。バイポーラトランジスタS2のエミッタ端子はグランドラインに接続されている。バイポーラトランジスタS2のベース端子は、MCU1の端子P19に接続されている。LSW3は、制御端子ONに入力される信号がハイレベルになると、入力端子VINに入力された電圧を出力端子VOUTから出力する。LSW3の出力端子VOUTは、充電IC2の入力端子VBUSに接続されている。MCU1は、USB接続がなされていない間は、バイポーラトランジスタS2をオンにする。これにより、LSW3の制御端子ONはバイポーラトランジスタS2を介してグランドラインへ接続されるため、LSW3の制御端子ONにはローレベルの信号が入力される。
LSW3に接続されたバイポーラトランジスタS2は、USB接続がなされると、MCU1によってオフされる。バイポーラトランジスタS2がオフすることで、分圧回路Pfによって分圧されたUSB電圧VUSBがLSW3の制御端子ONに入力される。このため、USB接続がなされ且つバイポーラトランジスタS2がオフされると、LSW3の制御端子ONには、ハイレベルの信号が入力される。これにより、LSW3は、USBケーブルから供給されるUSB電圧VUSBを出力端子VOUTから出力する。なお、バイポーラトランジスタS2がオフされていない状態でUSB接続がなされても、LSW3の制御端子ONは、バイポーラトランジスタS2を介してグランドラインへ接続されている。
このため、MCU1がバイポーラトランジスタS2をオフしない限り、LSW3の制御端子ONにはローレベルの信号が入力され続ける点に留意されたい。
【0058】
電源BATの正極端子は、保護IC10の電源端子VDDと、昇圧DC/DCコンバータ9の入力端子VINと、充電IC2の充電端子batと、に接続されている。したがって、電源BATの電源電圧VBATは、保護IC10と、充電IC2と、昇圧DC/DCコンバータ9とに供給される。電源BATの負極端子には、抵抗器Raと、MOSFETで構成されたスイッチSaと、MOSFETで構成されたスイッチSbと、抵抗器Rbと、がこの順に直列接続されている。抵抗器RaとスイッチSaの接続点には、保護IC10の電流検出端子CSが接続されている。スイッチSaとスイッチSbの各々の制御端子は、保護IC10に接続されている。抵抗器Rbの両端は、残量計IC12に接続されている。
【0059】
保護IC10は、電流検出端子CSに入力される電圧から、電源BATの充放電時において抵抗器Raに流れる電流値を取得し、この電流値が過大になった場合(過電流)に、スイッチSaとスイッチSbの開閉制御を行って、電源BATの充電又は放電を停止させることで、電源BATの保護を図る。より具体的には、保護IC10は、電源BATの充電時に過大な電流値を取得した場合には、スイッチSbをオフすることで、電源BATの充電を停止させる。保護IC10は、電源BATの放電時に過大な電流値を取得した場合には、スイッチSaをオフすることで、電源BATの放電を停止させる。また、保護IC10は、電源端子VDDに入力される電圧から、電源BATの電圧値が異常になった場合(過充電又は過電圧の場合)に、スイッチSaとスイッチSbの開閉制御を行って、電源BATの充電又は放電を停止させることで、電源BATの保護を図る。より具体的には、保護IC10は、電源BATの過充電を検知した場合には、スイッチSbをオフすることで、電源BATの充電を停止させる。保護IC10は、電源BATの過放電を検知した場合には、スイッチSaをオフすることで、電源BATの放電を停止させる。
【0060】
電源BATの近傍に配置されたサーミスタT1と接続されるコネクタには抵抗器Rt1が接続されている。抵抗器Rt1とサーミスタT1の直列回路は、グランドラインと、残量計IC12のレギュレータ端子TREGとに接続されている。サーミスタT1と抵抗器Rt1の接続点は、残量計IC12のサーミスタ端子THMに接続されている。サーミスタT1は、温度の増加に従い抵抗値が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタであってもよいし、温度の増加に従い抵抗値が減少するNTC(Negative
Temperature Coefficient)サーミスタでもよい。
【0061】
残量計IC12は、抵抗器Rbに流れる電流を検出し、検出した電流値に基づいて、電源BATの残容量、充電状態を示すSOC(State Of Charge)、及び健全状態を示すS
OH(State Of Health)等のバッテリ情報を導出する。残量計IC12は、レギュレー
タ端子TREGに接続される内蔵レギュレータから、サーミスタT1と抵抗器Rt1の分圧回路に電圧を供給する。残量計IC12は、この分圧回路によって分圧された電圧をサーミスタ端子THMから取得し、この電圧に基づいて、電源BATの温度に関する温度情報を取得する。残量計IC12は、シリアル通信を行うための通信線LNによってMCU1と接続されており、MCU1と通信可能に構成されている。残量計IC12は、導出したバッテリ情報と、取得した電源BATの温度情報を、MCU1からの要求に応じて、MCU1に送信する。なお、シリアル通信を行うためには、データ送信用のデータラインや同期用のクロックラインなどの複数の信号線が必要になる。図10図19では、簡略化のため、1本の信号線のみが図示されている点に留意されたい。
【0062】
残量計IC12は、通知端子12aを備えている。通知端子12aは、MCU1の端子P6と、後述するダイオードD2のカソードと、に接続されている。残量計IC12は、
電源BATの温度が過大になった等の異常を検出すると、通知端子12aからローレベルの信号を出力することで、その異常発生をMCU1に通知する。このローレベルの信号は、ダイオードD2を経由して、FF17のCLR( ̄)端子にも入力される。
【0063】
昇圧DC/DCコンバータ9のスイッチング端子SWには、リアクトルLcの一端が接続されている。このリアクトルLcの他端は昇圧DC/DCコンバータ9の入力端子VINに接続されている。昇圧DC/DCコンバータ9は、スイッチング端子SWに接続された内蔵トランジスタのオンオフ制御を行うことで、入力された電圧を昇圧して、出力端子VOUTから出力する。なお、昇圧DC/DCコンバータ9の入力端子VINは、昇圧DC/DCコンバータ9の高電位側の電源端子を構成している。昇圧DC/DCコンバータ9は、イネーブル端子ENに入力される信号がハイレベルとなっている場合に、昇圧動作を行う。USB接続されている状態においては、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENに入力される信号は、MCU1によってローレベルに制御されてもよい。若しくは、USB接続されている状態においては、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENに入力される信号をMCU1が制御しないことで、イネーブル端子ENの電位を不定にしてもよい。
【0064】
昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子VOUTには、Pチャネル型MOSFETにより構成されたスイッチS4のソース端子が接続されている。スイッチS4のゲート端子は、MCU1の端子P15と接続されている。スイッチS4のドレイン端子には、抵抗器Rsの一端が接続されている。抵抗器Rsの他端は、ヒータHTRの一端と接続される正極側のヒータコネクタCnに接続されている。スイッチS4と抵抗器Rsの接続点には、2つの抵抗器からなる分圧回路Pbが接続されている。分圧回路Pbを構成する2つの抵抗器の接続点は、MCU1の端子P18と接続されている。スイッチS4と抵抗器Rsの接続点は、更に、オペアンプOP1の正電源端子と接続されている。
【0065】
昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子VOUTとスイッチS4のソース端子との接続ラインには、Pチャネル型MOSFETにより構成されたスイッチS3のソース端子が接続されている。スイッチS3のゲート端子は、MCU1の端子P16と接続されている。スイッチS3のドレイン端子は、抵抗器Rsと正極側のヒータコネクタCnとの接続ラインに接続されている。このように、昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子VOUTとヒータコネクタCnの正極側との間には、スイッチS3を含む回路と、スイッチS4及び抵抗器Rsを含む回路とが並列接続されている。スイッチS3を含む回路は、抵抗器を有さないため、スイッチS4及び抵抗器Rsを含む回路よりも低抵抗の回路である。
【0066】
オペアンプOP1の非反転入力端子は、抵抗器Rsと正極側のヒータコネクタCnとの接続ラインに接続されている。オペアンプOP1の反転入力端子は、ヒータHTRの他端と接続される負極側のヒータコネクタCnと、Nチャネル型MOSFETにより構成されたスイッチS6のドレイン端子と、に接続されている。スイッチS6のソース端子はグランドラインに接続されている。スイッチS6のゲート端子は、MCU1の端子P14と、ダイオードD4のアノードと、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENと、に接続されている。ダイオードD4のカソードは、FF17のQ端子と接続されている。オペアンプOP1の出力端子には抵抗器R4の一端が接続されている。抵抗器R4の他端は、MCU1の端子P9と、Nチャネル型MOSFETにより構成されたスイッチS5のドレイン端子と、に接続されている。スイッチS5のソース端子は、グランドラインに接続されている。スイッチS5のゲート端子は、抵抗器Rsと正極側のヒータコネクタCnとの接続ラインに接続されている。
【0067】
充電IC2の入力端子VBUSは、LED L1~L8の各々のアノードに接続されている。LED L1~L8の各々のカソードは、電流制限ための抵抗器を介して、MCU
1の制御端子PD1~PD8に接続されている。すなわち、入力端子VBUSには、LED L1~L8が並列接続されている。LED L1~L8は、レセプタクルRCPに接続されたUSBケーブルから供給されるUSB電圧VUSBと、電源BATから充電IC2を経由して供給される電圧と、のそれぞれによって動作可能に構成されている。MCU1には、制御端子PD1~制御端子PD8の各々とグランド端子GNDとに接続されたトランジスタ(スイッチング素子)が内蔵されている。MCU1は、制御端子PD1と接続されたトランジスタをオンすることでLED L1に通電してこれを点灯させ、制御端子PD1と接続されたトランジスタをオフすることでLED L1を消灯させる。制御端子PD1と接続されたトランジスタのオンとオフを高速で切り替えることで、LED L1の輝度や発光パターンを動的に制御できる。LED L2~L8についても同様にMCU1によって点灯制御される。
【0068】
充電IC2は、入力端子VBUSに入力されるUSB電圧VUSBに基づいて電源BATを充電する充電機能を備える。充電IC2は、不図示の端子や配線から、電源BATの充電電流や充電電圧を取得し、これらに基づいて、電源BATの充電制御(充電端子batから電源BATへの電力供給制御)を行う。また、充電IC2は、残量計IC12からMCU1に送信された電源BATの温度情報を、通信線LNを利用したシリアル通信によってMCU1から取得し、充電制御に利用してもよい。
【0069】
充電IC2は、更に、VBATパワーパス機能と、OTG機能とを備える。VBATパワーパス機能は、充電端子batに入力される電源電圧VBATと略一致するシステム電源電圧Vcc0を、出力端子SYSから出力する機能である。OTG機能は、充電端子batに入力される電源電圧VBATを昇圧して得られるシステム電源電圧Vcc4を、入力端子VBUSから出力する機能である。充電IC2のOTG機能のオンオフは、通信線LNを利用したシリアル通信によって、MCU1により制御される。なお、OTG機能においては、充電端子batに入力される電源電圧VBATを、入力端子VBUSからそのまま出力してもよい。この場合において、電源電圧VBATとシステム電源電圧Vcc4は略一致する。
【0070】
充電IC2の出力端子SYSは、昇降圧DC/DCコンバータ8の入力端子VINに接続されている。充電IC2のスイッチング端子SWにはリアクトルLaの一端が接続されている。リアクトルLaの他端は、充電IC2の出力端子SYSに接続されている。充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)は、抵抗器を介して、MCU1の端子P22に接続されている。更に、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)には、バイポーラトランジスタS1のコレクタ端子が接続されている。バイポーラトランジスタS1のエミッタ端子は、後述のLSW4の出力端子VOUTに接続されている。バイポーラトランジスタS1のベース端子は、FF17のQ端子に接続されている。更に、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)には、抵抗器Rcの一端が接続されている。抵抗器Rcの他端は、LSW4の出力端子VOUTに接続されている。
【0071】
昇降圧DC/DCコンバータ8の入力端子VINとイネーブル端子ENには抵抗器が接続されている。充電IC2の出力端子SYSから、昇降圧DC/DCコンバータ8の入力端子VINにシステム電源電圧Vcc0が入力されることで、昇降圧DC/DCコンバータ8のイネーブル端子ENに入力される信号はハイレベルとなり、昇降圧DC/DCコンバータ8は昇圧動作又は降圧動作を開始する。昇降圧DC/DCコンバータ8は、リアクトルLbに接続された内蔵トランジスタのスイッチング制御により、入力端子VINに入力されたシステム電源電圧Vcc0を昇圧又は降圧してシステム電源電圧Vcc1を生成し、出力端子VOUTから出力する。昇降圧DC/DCコンバータ8の出力端子VOUTは、昇降圧DC/DCコンバータ8のフィードバック端子FBと、LSW4の入力端子VINと、スイッチドライバ7の入力端子VINと、FF16の電源端子VCC及びD端子
と、に接続されている。昇降圧DC/DCコンバータ8の出力端子VOUTから出力されるシステム電源電圧Vcc1が供給される配線を電源ラインPL1と記載する。
【0072】
LSW4は、制御端子ONに入力される信号がハイレベルになると、入力端子VINに入力されているシステム電源電圧Vcc1を出力端子VOUTから出力する。LSW4の制御端子ONと電源ラインPL1は、抵抗器を介して接続されている。このため、電源ラインPL1にシステム電源電圧Vcc1が供給されることで、LSW4の制御端子ONにはハイレベルの信号が入力される。LSW4が出力する電圧は、配線抵抗等を無視すればシステム電源電圧Vcc1と同一であるが、システム電源電圧Vcc1と区別するために、LSW4の出力端子VOUTから出力される電圧を、以下ではシステム電源電圧Vcc2と記載する。
【0073】
LSW4の出力端子VOUTは、MCU1の電源端子VDDと、LSW5の入力端子VINと、残量計IC12の電源端子VDDと、ROM6の電源端子VCCと、バイポーラトランジスタS1のエミッタ端子と、抵抗器Rcと、FF17の電源端子VCCと、に接続されている。LSW4の出力端子VOUTから出力されるシステム電源電圧Vcc2が供給される配線を電源ラインPL2と記載する。
【0074】
LSW5は、制御端子ONに入力される信号がハイレベルになると、入力端子VINに入力されているシステム電源電圧Vcc2を出力端子VOUTから出力する。LSW5の制御端子ONは、MCU1の端子P23と接続されている。LSW5が出力する電圧は、配線抵抗等を無視すればシステム電源電圧Vcc2と同一であるが、システム電源電圧Vcc2と区別するために、LSW5の出力端子VOUTから出力される電圧を、以下ではシステム電源電圧Vcc3と記載する。LSW5の出力端子VOUTから出力されるシステム電源電圧Vcc3が供給される配線を電源ラインPL3と記載する。
【0075】
電源ラインPL3には、サーミスタT2と抵抗器Rt2の直列回路が接続され、抵抗器Rt2はグランドラインに接続されている。サーミスタT2と抵抗器Rt2は分圧回路を構成しており、これらの接続点は、MCU1の端子P21と接続されている。MCU1は、端子P21に入力される電圧に基づいて、サーミスタT2の温度変動(抵抗値変動)を検出し、その温度変動量によって、パフ動作の有無を判定する。
【0076】
電源ラインPL3には、サーミスタT3と抵抗器Rt3の直列回路が接続され、抵抗器Rt3はグランドラインに接続されている。サーミスタT3と抵抗器Rt3は分圧回路を構成しており、これらの接続点は、MCU1の端子P13と、オペアンプOP2の反転入力端子と、に接続されている。MCU1は、端子P13に入力される電圧に基づいて、サーミスタT3の温度(ヒータHTRの温度に相当)を検出する。
【0077】
電源ラインPL3には、サーミスタT4と抵抗器Rt4の直列回路が接続され、抵抗器Rt4はグランドラインに接続されている。サーミスタT4と抵抗器Rt4は分圧回路を構成しており、これらの接続点は、MCU1の端子P12と、オペアンプOP3の反転入力端子と、に接続されている。MCU1は、端子P12に入力される電圧に基づいて、サーミスタT4の温度(ケース110の温度に相当)を検出する。
【0078】
電源ラインPL2には、MOSFETにより構成されたスイッチS7のソース端子が接続されている。スイッチS7のゲート端子は、MCU1の端子P20に接続されている。スイッチS7のドレイン端子は、振動モータMが接続される一対のコネクタの一方に接続されている。この一対のコネクタの他方はグランドラインに接続されている。MCU1は、端子P20の電位を操作することでスイッチS7の開閉を制御し、振動モータMを特定のパターンで振動させることができる。スイッチS7に代えて、専用のドライバICを用
いてもよい。
【0079】
電源ラインPL2には、オペアンプOP2の正電源端子と、オペアンプOP2の非反転入力端子に接続されている分圧回路Pd(2つの抵抗器の直列回路)と、が接続されている。分圧回路Pdを構成する2つの抵抗器の接続点は、オペアンプOP2の非反転入力端子に接続されている。オペアンプOP2は、ヒータHTRの温度に応じた信号(サーミスタT3の抵抗値に応じた信号)を出力する。本実施形態では、サーミスタT3としてNTC特性を持つものを用いているため、ヒータHTRの温度(サーミスタT3の温度)が高いほど、オペアンプOP2の出力電圧は低くなる。これは、オペアンプOP2の負電源端子はグランドラインへ接続されており、オペアンプOP2の反転入力端子に入力される電圧値(サーミスタT3と抵抗器Rt3による分圧値)が、オペアンプOP2の非反転入力端子に入力される電圧値(分圧回路Pdによる分圧値)より高くなると、オペアンプOP2の出力電圧の値は、グランド電位の値と略等しくなるためである。つまり、ヒータHTRの温度(サーミスタT3の温度)が高温になると、オペアンプOP2の出力電圧はローレベルになる。
なお、サーミスタT3としてPTC特性を持つものを用いる場合には、オペアンプOP2の非反転入力端子に、サーミスタT3及び抵抗器Rt3の分圧回路の出力を接続し、オペアンプOP2の反転入力端子に、分圧回路Pdの出力を接続すればよい。
【0080】
電源ラインPL2には、オペアンプOP3の正電源端子と、オペアンプOP3の非反転入力端子に接続されている分圧回路Pe(2つの抵抗器の直列回路)と、が接続されている。分圧回路Peを構成する2つの抵抗器の接続点は、オペアンプOP3の非反転入力端子に接続されている。オペアンプOP3は、ケース110の温度に応じた信号(サーミスタT4の抵抗値に応じた信号)を出力する。本実施形態では、サーミスタT4としてNTC特性を持つものを用いているため、ケース110の温度が高いほど、オペアンプOP3の出力電圧は低くなる。これは、オペアンプOP3の負電源端子はグランドラインへ接続されており、オペアンプOP3の反転入力端子に入力される電圧値(サーミスタT4と抵抗器Rt4による分圧値)が、オペアンプOP3の非反転入力端子に入力される電圧値(分圧回路Peによる分圧値)より高くなると、オペアンプOP3の出力電圧の値は、グランド電位の値と略等しくなるためである。つまり、サーミスタT4の温度が高温になると、オペアンプOP3の出力電圧が、ローレベルになる。
なお、サーミスタT4としてPTC特性を持つものを用いる場合には、オペアンプOP3の非反転入力端子に、サーミスタT4及び抵抗器Rt4の分圧回路の出力を接続し、オペアンプOP3の反転入力端子に、分圧回路Peの出力を接続すればよい。
【0081】
オペアンプOP2の出力端子には抵抗器R1が接続されている。抵抗器R1には、ダイオードD1のカソードが接続されている。ダイオードD1のアノードは、オペアンプOP3の出力端子と、FF17のD端子と、FF17のCLR( ̄)端子と、に接続されている。抵抗器R1とダイオードD1との接続ラインには、電源ラインPL1に接続された抵抗器R2が接続されている。また、この接続ラインには、FF16のCLR( ̄)端子が接続されている。
【0082】
ダイオードD1のアノード及びオペアンプOP3の出力端子の接続点と、FF17のD端子との接続ラインには、抵抗器R3の一端が接続されている。抵抗器R3の他端は電源ラインPL2に接続されている。更に、この接続ラインには、残量計IC12の通知端子12aと接続されているダイオードD2のアノードと、ダイオードD3のアノードと、FF17のCLR( ̄)端子と、が接続されている。ダイオードD3のカソードは、MCU1の端子P5に接続されている。
【0083】
FF16は、ヒータHTRの温度が過大となり、オペアンプOP2から出力される信号
が小さくなって、CLR( ̄)端子に入力される信号がローレベルになると、Q( ̄)端子からハイレベルの信号をMCU1の端子P11に入力する。FF16のD端子には電源ラインPL1からハイレベルのシステム電源電圧Vcc1が供給されている。このため、FF16では、負論理で動作するCLR( ̄)端子に入力される信号がローレベルにならない限り、Q( ̄)端子からはローレベルの信号が出力され続ける。
【0084】
FF17のCLR( ̄)端子に入力される信号は、ヒータHTRの温度が過大となった場合と、ケース110の温度が過大となった場合と、残量計IC12の通知端子12aから異常検出を示すローレベルの信号が出力された場合のいずれかの場合に、ローレベルとなる。FF17は、CLR( ̄)端子に入力される信号がローレベルになると、Q端子からローレベルの信号を出力する。このローレベルの信号は、MCU1の端子P10と、スイッチS6のゲート端子と、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENと、充電IC2に接続されたバイポーラトランジスタS1のベース端子と、にそれぞれ入力される。スイッチS6のゲート端子にローレベルの信号が入力されると、スイッチS6を構成するNチャネル型MOSFETのゲート-ソース間電圧が閾値電圧未満となるため、スイッチS6がオフになる。昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENにローレベルの信号が入力されると、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENは正論理であるため、昇圧動作が停止する。バイポーラトランジスタS1のベース端子にローレベルの信号が入力されると、バイポーラトランジスタS1がオンになる(コレクタ端子から増幅された電流が出力される)。バイポーラトランジスタS1がオンになると、充電IC2のCE( ̄)端子にバイポーラトランジスタS1を介してハイレベルのシステム電源電圧Vcc2が入力される。充電IC2のCE( ̄)端子は負論理であるため、電源BATの充電が停止される。これらにより、ヒータHTRの加熱と電源BATの充電が停止される。なお、MCU1が端子P22から充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)に対してローレベルのイネーブル信号を出力しようとしても、バイポーラトランジスタS1がオンされると、増幅された電流が、コレクタ端子からMCU1の端子P22および充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)に入力される。これにより、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)にはハイレベルの信号が入力される点に留意されたい。
【0085】
FF17のD端子には電源ラインPL2からハイレベルのシステム電源電圧Vcc2が供給されている。このため、FF17では、負論理で動作するCLR( ̄)端子に入力される信号がローレベルにならない限り、Q端子からハイレベルの信号が出力され続ける。オペアンプOP3の出力端子からローレベルの信号が出力されると、オペアンプOP2の出力端子から出力される信号のレベルに拠らず、FF17のCLR( ̄)端子にはローレベルの信号が入力される。オペアンプOP2の出力端子からハイレベルの信号が出力される場合には、オペアンプOP3の出力端子から出力されるローレベルの信号は、ダイオードD1によってこのハイレベルの信号の影響を受けない点に留意されたい。また、オペアンプOP2の出力端子からローレベルの信号が出力される場合には、オペアンプOP3の出力端子からハイレベルの信号が出力されたとしても、ダイオードD1を介してこのハイレベルの信号はローレベルの信号に置き換わる。
【0086】
電源ラインPL2は、MCU搭載基板161からLED搭載基板163及びホールIC搭載基板164側に向けて更に分岐している。この分岐した電源ラインPL2には、ホールIC13の電源端子VDDと、通信IC15の電源端子VCCと、ホールIC14の電源端子VDDと、が接続されている。
【0087】
ホールIC13の出力端子OUTは、MCU1の端子P3と、スイッチドライバ7の端子SW2と、に接続されている。アウターパネル115が外れると、ホールIC13の出力端子OUTからローレベルの信号が出力される。MCU1は、端子P3に入力される信号により、アウターパネル115の装着有無を判定する。
【0088】
LED搭載基板163には、操作スイッチOPSと接続された直列回路(抵抗器とコンデンサの直列回路)が設けられている。この直列回路は、電源ラインPL2に接続されている。この直列回路の抵抗器とコンデンサの接続点は、MCU1の端子P4と、操作スイッチOPSと、スイッチドライバ7の端子SW1と、に接続されている。操作スイッチOPSが押下されていない状態では、操作スイッチOPSは導通せず、MCU1の端子P4とスイッチドライバ7の端子SW1にそれぞれ入力される信号は、システム電源電圧Vcc2によりハイレベルとなる。操作スイッチOPSが押下されて操作スイッチOPSが導通状態になると、MCU1の端子P4とスイッチドライバ7の端子SW1にそれぞれ入力される信号は、グランドラインへ接続されるためローレベルとなる。MCU1は、端子P4に入力される信号により、操作スイッチOPSの操作を検出する。
【0089】
スイッチドライバ7には、リセット入力端子RSTBが設けられている。リセット入力端子RSTBは、LSW4の制御端子ONに接続されている。スイッチドライバ7は、端子SW1と端子SW2に入力される信号のレベルがいずれもローレベルとなった場合(アウターパネル115が外されており、且つ、操作スイッチOPSが押下された状態)には、リセット入力端子RSTBからローレベルの信号を出力することで、LSW4の出力動作を停止させる。つまり、本来はアウターパネル115の押圧部117を介して押し下げられる操作スイッチOPSが、アウターパネル115が外れた状態でユーザによって直接押し下げられると、スイッチドライバ7の端子SW1と端子SW2に入力される信号のレベルがいずれもローレベルになる。
【0090】
<吸引器の動作モード毎の動作>
以下、図13図19を参照して、図10に示す電気回路の動作を説明する。図13は、スリープモードにおける電気回路の動作を説明するための図である。図14は、アクティブモードにおける電気回路の動作を説明するための図である。図15は、加熱初期設定モードにおける電気回路の動作を説明するための図である。図16は、加熱モードにおけるヒータHTRの加熱時の電気回路の動作を説明するための図である。図17は、加熱モードにおけるヒータHTRの温度検出時の電気回路の動作を説明するための図である。図18は、充電モードにおける電気回路の動作を説明するための図である。図19は、MCU1のリセット(再起動)時の電気回路の動作を説明するための図である。図13図19の各々において、チップ化された電子部品の端子のうち、破線の楕円で囲まれた端子は、電源電圧VBAT、USB電圧VUSB、及びシステム電源電圧等の入力又は出力がなされている端子を示している。
【0091】
いずれの動作モードにおいても、電源電圧VBATは、保護IC10の電源端子VDDと、昇圧DC/DCコンバータ9の入力端子VINと、充電IC2の充電端子batに入力されている。
【0092】
<スリープモード:図13
MCU1は、充電IC2のVBATパワーパス機能を有効とし、OTG機能と充電機能を無効とする。充電IC2の入力端子VBUSにUSB電圧VUSBが入力されないことで、充電IC2のVBATパワーパス機能は有効になる。通信線LNからOTG機能を有効にするための信号がMCU1から充電IC2へ出力されないため、OTG機能は無効になる。このため、充電IC2は、充電端子batに入力された電源電圧VBATからシステム電源電圧Vcc0を生成して、出力端子SYSから出力する。出力端子SYSから出力されたシステム電源電圧Vcc0は、昇降圧DC/DCコンバータ8の入力端子VIN及びイネーブル端子ENに入力される。昇降圧DC/DCコンバータ8は、正論理であるイネーブル端子ENにハイレベルのシステム電源電圧Vcc0が入力されることでイネーブルとなり、システム電源電圧Vcc0からシステム電源電圧Vcc1を生成して、出力
端子VOUTから出力する。昇降圧DC/DCコンバータ8の出力端子VOUTから出力されたシステム電源電圧Vcc1は、LSW4の入力端子VINと、LSW4の制御端子ONと、スイッチドライバ7の入力端子VINと、FF16の電源端子VCC及びD端子と、にそれぞれ供給される。
【0093】
LSW4は、制御端子ONにシステム電源電圧Vcc1が入力されることで、入力端子VINに入力されたシステム電源電圧Vcc1を、出力端子VOUTからシステム電源電圧Vcc2として出力する。LSW4から出力されたシステム電源電圧Vcc2は、MCU1の電源端子VDDと、LSW5の入力端子VINと、ホールIC13の電源端子VDDと、通信IC15の電源端子VCCと、ホールIC14の電源端子VDDと、に入力される。更に、システム電源電圧Vcc2は、残量計IC12の電源端子VDDと、ROM6の電源端子VCCと、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)に接続された抵抗器Rc及びバイポーラトランジスタS1と、FF17の電源端子VCCと、オペアンプOP3の正電源端子と、分圧回路Peと、オペアンプOP2の正電源端子と、分圧回路Pdと、にそれぞれ供給される。充電IC2に接続されているバイポーラトランジスタS1は、FF17のQ端子からローレベルの信号が出力されない限りはオフとなっている。そのため、LSW4で生成されたシステム電源電圧Vcc2は、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)にも入力される。充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)は負論理のため、この状態では、充電IC2による充電機能はオフとなる。
【0094】
このように、スリープモードにおいては、LSW5はシステム電源電圧Vcc3の出力を停止しているため、電源ラインPL3に接続される電子部品への電力供給は停止される。また、スリープモードにおいては、充電IC2のOTG機能は停止しているため、LED L1~L8への電力供給は停止される。
【0095】
<アクティブモード:図14
MCU1は、図13のスリープモードの状態から、端子P8に入力される信号がハイレベルとなり、スライダ119が開いたことを検出すると、端子P23からLSW5の制御端子ONにハイレベルの信号を入力する。これにより、LSW5は入力端子VINに入力されているシステム電源電圧Vcc2を、システム電源電圧Vcc3として、出力端子VOUTから出力する。LSW5の出力端子VOUTから出力されたシステム電源電圧Vcc3は、サーミスタT2と、サーミスタT3と、サーミスタT4と、に供給される。
【0096】
更に、MCU1は、スライダ119が開いたことを検出すると、通信線LNを介して、充電IC2のOTG機能を有効化する。これにより、充電IC2は、充電端子batから入力された電源電圧VBATを昇圧して得られるシステム電源電圧Vcc4を、入力端子VBUSから出力する。入力端子VBUSから出力されたシステム電源電圧Vcc4は、LED L1~L8に供給される。
【0097】
<加熱初期設定モード:図15
図14の状態から、端子P4に入力される信号がローレベルになる(操作スイッチOPSの押下がなされる)と、MCU1は、加熱に必要な各種の設定を行った後、端子P14から、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENにハイレベルのイネーブル信号を入力する。これにより、昇圧DC/DCコンバータ9は、電源電圧VBATを昇圧して得られる駆動電圧Vbstを出力端子VOUTから出力する。駆動電圧Vbstは、スイッチS3とスイッチS4に供給される。この状態では、スイッチS3とスイッチS4はオフとなっている。また、端子P14から出力されたハイレベルのイネーブル信号によってスイッチS6はオンされる。これにより、ヒータHTRの負極側端子がグランドラインに接続されて、スイッチS3をONにすればヒータHTRを加熱可能な状態になる。MCU1の端子P14からハイレベルの信号のイネーブル信号が出力された後、加熱モードに移
行する。
【0098】
<加熱モード時のヒータ加熱:図16
図15の状態において、MCU1は、端子P16に接続されたスイッチS3のスイッチング制御と、端子P15に接続されたスイッチS4のスイッチング制御を開始する。これらスイッチング制御は、上述した加熱初期設定モードが完了すれば自動的に開始されてもよいし、さらなる操作スイッチOPSの押下によって開始されてもよい。具体的には、MCU1は、図16のように、スイッチS3をオンし、スイッチS4をオフして、駆動電圧VbstをヒータHTRに供給し、エアロゾル生成のためのヒータHTRの加熱を行う加熱制御と、図17のように、スイッチS3をオフし、スイッチS4をオンして、ヒータHTRの温度を検出する温度検出制御と、を行う。
【0099】
図16に示すように、加熱制御時においては、駆動電圧Vbstは、スイッチS5のゲートにも供給されて、スイッチS5がオンとなる。また、加熱制御時には、スイッチS3を通過した駆動電圧Vbstが、抵抗器Rsを介して、オペアンプOP1の正電源端子にも入力される。抵抗器Rsの抵抗値は、オペアンプOP1の内部抵抗値と比べると無視できるほど小さい。そのため、加熱制御時において、オペアンプOP1の正電源端子に入力される電圧は、駆動電圧Vbstとほぼ同等になる。
【0100】
なお、抵抗器R4の抵抗値は、スイッチS5のオン抵抗値よりも大きくなっている。加熱制御時にもオペアンプOP1は動作するが、加熱制御時にはスイッチS5がオンになる。スイッチS5がオンの状態では、オペアンプOP1の出力電圧が、抵抗器R4とスイッチS5の分圧回路によって分圧されて、MCU1の端子P9に入力される。抵抗器R4の抵抗値がスイッチS5のオン抵抗値よりも大きくなっていることで、MCU1の端子P9に入力される電圧は十分に小さくなる。これにより、オペアンプOP1からMCU1に対して大きな電圧が入力されるのを防ぐことができる。
【0101】
<加熱モード時のヒータ温度検出:図17
図17に示すように、温度検出制御時には、駆動電圧VbstがオペアンプOP1の正電源端子に入力されると共に、分圧回路Pbに入力される。分圧回路Pbによって分圧された電圧は、MCU1の端子P18に入力される。MCU1は、端子P18に入力される電圧に基づいて、温度検出制御時における抵抗器RsとヒータHTRの直列回路に印加される基準電圧Vtempを取得する。
【0102】
また、温度検出制御時には、駆動電圧Vbst(基準電圧Vtemp)が、抵抗器RsとヒータHTRの直列回路に供給される。そして、この駆動電圧Vbst(基準電圧Vtemp)を抵抗器RsとヒータHTRによって分圧した電圧Vheatが、オペアンプOP1の非反転入力端子に入力される。抵抗器Rsの抵抗値はヒータHTRの抵抗値よりも十分に大きいため、電圧Vheatは、駆動電圧Vbstよりも十分に低い値である。温度検出制御時には、この低い電圧VheatがスイッチS5のゲート端子にも供給されることで、スイッチS5はオフされる。オペアンプOP1は、反転入力端子に入力される電圧と非反転入力端子に入力される電圧Vheatの差を増幅して出力する。
【0103】
オペアンプOP1の出力信号は、MCU1の端子P9に入力される。MCU1は、端子P9に入力された信号と、端子P18の入力電圧に基づいて取得した基準電圧Vtempと、既知の抵抗器Rsの電気抵抗値と、に基づいて、ヒータHTRの温度を取得する。MCU1は、取得したヒータHTRの温度に基づいて、ヒータHTRの加熱制御(例えばヒータHTRの温度が目標温度となるような制御)を行う。
【0104】
なお、MCU1は、スイッチS3とスイッチS4をそれぞれオフにしている期間(ヒー
タHTRへの通電を行っていない期間)においても、ヒータHTRの温度を取得することができる。具体的には、MCU1は、端子P13に入力される電圧(サーミスタT3と抵抗器Rt3から構成される分圧回路の出力電圧)に基づいて、ヒータHTRの温度を取得する。
【0105】
また、MCU1は、任意のタイミングにて、ケース110の温度の取得も可能である。具体的には、MCU1は、端子P12に入力される電圧(サーミスタT4と抵抗器Rt4から構成される分圧回路の出力電圧)に基づいて、ケース110の温度を取得する。
【0106】
<充電モード:図18
図18は、スリープモードの状態でUSB接続がなされた場合を例示している。USB接続がなされると、USB電圧VUSBが過電圧保護IC11を介してLSW3の入力端子VINに入力される。USB電圧VUSBは、LSW3の入力端子VINに接続された分圧回路Pfにも供給される。USB接続がなされた直後の時点では、バイポーラトランジスタS2がオンとなっているため、LSW3の制御端子ONに入力される信号はローレベルのままとなる。USB電圧VUSBは、MCU1の端子P17に接続された分圧回路Pcにも供給され、この分圧回路Pcで分圧された電圧が端子P17に入力される。MCU1は、端子P17に入力された電圧に基づいて、USB接続がなされたことを検出する。
【0107】
MCU1は、USB接続がなされたことを検出すると、端子P19に接続されたバイポーラトランジスタS2をオフする。バイポーラトランジスタS2のゲート端子にローレベルの信号を入力すると、分圧回路Pfによって分圧されたUSB電圧VUSBがLSW3の制御端子ONに入力される。これにより、LSW3の制御端子ONにハイレベルの信号が入力されて、LSW3は、USB電圧VUSBを出力端子VOUTから出力する。LSW3から出力されたUSB電圧VUSBは、充電IC2の入力端子VBUSに入力される。また、LSW3から出力されたUSB電圧VUSBは、そのままシステム電源電圧Vcc4として、LED L1~L8に供給される。
【0108】
MCU1は、USB接続がなされたことを検出すると、更に、端子P22から、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)に対してローレベルのイネーブル信号を出力する。これにより、充電IC2は、電源BATの充電機能を有効化し、入力端子VBUSに入力されるUSB電圧VUSBによる電源BATの充電を開始する。
【0109】
なお、アクティブモードの状態でUSB接続がなされた場合には、MCU1は、USB接続がなされたことを検出すると、端子P19に接続されたバイポーラトランジスタS2をオフし、更に、端子P22から、充電IC2の充電イネーブル端子CE( ̄)に対してローレベルのイネーブル信号を出力し、更に、通信線LNを利用したシリアル通信によって、充電IC2のOTG機能をオフする。これにより、LED L1~L8に供給されるシステム電源電圧Vcc4は、充電IC2のOTG機能で生成されていた電圧(電源電圧VBATに基づく電圧)から、LSW3から出力されたUSB電圧VUSBに切り替わる。LED L1~L8は、MCU1によって内蔵トランジスタのオン制御がなされない限りは作動しない。このため、OTG機能のオンからオフへの過渡期における不安定な電圧がLED L1~L8に供給されるのは防がれる。
【0110】
<MCUのリセット:図19
アウターパネル115が外されてホールIC13の出力がローレベルとなり、操作スイッチOPSのオン操作がなされてMCU1の端子P4に入力される信号がローレベルになると、スイッチドライバ7の端子SW1と端子SW2が共にローレベルとなる。これにより、スイッチドライバ7は、リセット入力端子RSTBからローレベルの信号を出力する
。リセット入力端子RSTBから出力されたローレベルの信号はLSW4の制御端子ONに入力される。これにより、LSW4は、出力端子VOUTからのシステム電源電圧Vcc2の出力を停止する。システム電源電圧Vcc2の出力が停止されることで、MCU1の電源端子VDDにシステム電源電圧Vcc2が入力されなくなるため、MCU1は停止する。
【0111】
スイッチドライバ7は、リセット入力端子RSTBからローレベルの信号を出力している時間が既定時間に達するか、端子SW1と端子SW2のいずれかに入力される信号がハイレベルになると、リセット入力端子RSTBから出力する信号をハイレベルに戻す。これにより、LSW4の制御端子ONがハイレベルとなり、システム電源電圧Vcc2が各部に供給される状態に復帰する。
【0112】
<加熱制御と温度検出制御の詳細>
図20は、図10に示す電気回路のうち、ヒータHTRの加熱と温度検出に用いられる主要な電子部品を抜き出して示した要部回路図である。図20には、図10では図示又は符号を省略していた電子部品やノードとして、リアクトルLdと、抵抗器RS4と、npn型のバイポーラトランジスタTS4と、分圧回路Pbを構成している抵抗器RPb1及び抵抗器RPb2と、スイッチS5の寄生ダイオードD5と、ノードN1~N8と、MCU1に内蔵されたオペアンプOP4、オペアンプOP5、ADC(アナログデジタル変換器)1a、及びADC1bと、が示されている。図20に示した各種の抵抗器(抵抗器RS4、抵抗器Rs、抵抗器RPb1、抵抗器RPb2、及び抵抗器R4)は、既定の抵抗値を持つ固定抵抗器である。
【0113】
抵抗器RS4の一端は、スイッチS4のゲート端子と接続されている。抵抗器RS4の他端は、バイポーラトランジスタTS4のコレクタ端子と接続されている。バイポーラトランジスタTS4のエミッタ端子はグランドに接続されている。バイポーラトランジスタTS4のベース端子は、MCU1の端子P15に接続されている。
【0114】
リアクトルLdは、昇圧DC/DCコンバータ9から出力される駆動電圧Vbstのノイズ低減を目的に設けられている。リアクトルLdは、スイッチS4のソース端子と昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子VOUTの間に接続されている。なお、リアクトルLdに加えて、スイッチS4と抵抗器Rsの間に別のノイズ低減用の第1リアクトルを設け、抵抗器Rsと正極側のヒータコネクタCn(+)との間に更に別のノイズ低減用の第2リアクトルを設けてもよい。これら、リアクトルLd、第1リアクトル、及び第2リアクトルのうち、いずれか1つを省略したり、いずれか2つを省略したりしてもよい。また、これらのノイズ低減用のリアクトルは必須ではなく省略可能である。
【0115】
ノードN1は、スイッチS3のソース端子と、リアクトルLdの一端とを接続している。ノードN1は、昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子VOUTに接続されている。
【0116】
ノードN7は、正極側(+極)のヒータコネクタCn(+)と、オペアンプOP1の非反転入力端子とを接続している。
【0117】
ノードN2は、スイッチS3のドレイン端子と、ノードN7とを接続している。
【0118】
ノードN4は、ノードN2と、抵抗器Rsとを接続している。ノードN4は、スイッチS5のゲート端子に接続されている。
【0119】
ノードN5は、抵抗器R4におけるオペアンプOP1側の反対側端と、スイッチS5のドレイン端子とを接続している。ノードN5は、MCU1の端子P9に接続されている。
【0120】
ノードN3は、スイッチS4のドレイン端子と、抵抗器RsのノードN4側の反対端とを接続している。ノードN3は、オペアンプOP1の正電源端子と、抵抗器RPb1の一端とに接続されている。
【0121】
ノードN6は、抵抗器RPb1の他端と、抵抗器RPb2の一端とを接続している。ノードN6は、MCU1の端子P18に接続されている。抵抗器RPb2の他端はグランドに接続されている。
【0122】
ノードN8は、負極側(-極)のヒータコネクタCn(-)と、スイッチS6のドレイン端子とを接続している。ノードN8は、オペアンプOP1の反転入力端子に接続されている。
【0123】
寄生ダイオードD5は、アノードがスイッチS5のソース端子に接続され、カソードがスイッチS5のドレイン端子に接続された構成である。
【0124】
図20に示す回路において、スイッチS4をオンする際の流れは次の通りである。まず、昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子VOUTから駆動電圧Vbstが出力されている状態にて、MCU1は、バイポーラトランジスタTS4をオンする(バイポーラトランジスタTS4のエミッタ端子から増幅された電流が出力される)。これにより、スイッチS4のゲート端子が、抵抗器RS4、バイポーラトランジスタTS4のコレクタ端子、及びバイポーラトランジスタTS4のエミッタ端子を介してグランドに接続される。その結果、スイッチS4のゲート電圧がグランド電位(本実施形態では0Vとする)に近い値となり、スイッチS4のゲート・ソース間電圧の絶対値が、スイッチS4の閾値電圧の絶対値よりも大きくなって、スイッチS4はオンする。バイポーラトランジスタTS4をオフすると、スイッチS4のゲート・ソース間電圧の絶対値が、スイッチS4の閾値電圧の絶対値以下となるため、スイッチS4はオフする。
ゲート・ソース間電圧は、ゲート端子とソース端子の間に印加される電圧を指す。本実施形態におけるスイッチS4はPチャネル型のMOSFETであるため、スイッチS4をオンしようとすると、マイナスの値を持つゲート・ソース間電圧が必要となる。換言すれば、ソース端子の電位がゲート端子の電位から閾値電圧より低くなると、スイッチS4はオンされる。例えば、スイッチS4の閾値電圧を-4.5Vとした場合、ソース電位を4.9Vとし、ゲート電位を0Vにすると、ゲート・ソース間電圧は-4.9Vとなる。-4.9Vは、閾値電圧である-4.5Vより低いため、スイッチS4はオンされる。一方、ソース電位を4.9Vとし、ゲート電位を3.3Vにすると、ゲート・ソース間電圧は-1.6Vとなる。-1.6Vは、閾値電圧である-4.5Vより高いため、スイッチS4はオフされる。
本明細書においては理解を容易にするため、Pチャネル型のMOSFETのゲート・ソース間電圧と閾値電圧については、符号を無視した絶対値として説明する。
【0125】
なお、前述してきたシステム電源電圧Vcc2(MCU1の電源端子VDDに入力されるMCU1の電源電圧)と駆動電圧Vbstは、好ましくは下記に示す値である。
システム電源電圧Vcc2=3.3V
駆動電圧Vbst=4.9V
【0126】
次に、図21から図24を参照して、ヒータHTRの加熱制御と、ヒータHTRの温度検出制御の動作について説明する。
【0127】
図21は、加熱モードにおけるスイッチS3及びスイッチS4のゲート端子に入力される電圧変化の一例を示す図である。本実施形態においては、スイッチS3及びスイッチS
4はPチャネル型のMOSFETであるため、ゲート端子に入力される電圧がローレベルの時に、スイッチS3及びスイッチS4はオンされる点に留意されたい。図21には、駆動例EX1と駆動例EX2が示されている。図21の駆動例EX1では、MCU1は、スイッチS3及びスイッチS4のそれぞれのオンとオフを交互に繰り返す。つまり、駆動例EX1では、MCU1は、スイッチS3をオンしている間はスイッチS4をオフし、スイッチS3をオフしている間はスイッチS4をオンする。換言すれば、駆動例EX1では、スイッチS3のゲート端子に入力される電圧がローレベルである期間と、スイッチS4のゲート端子に入力される電圧がローレベルである期間が重複しない。駆動例EX2は、スイッチS3をオンする期間と、スイッチS4をオンする期間とを一部重複させている点が駆動例EX1と相違する。換言すれば、駆動例EX2では、スイッチS3のゲート端子に入力される電圧がローレベルである期間と、スイッチS4のゲート端子に入力される電圧がローレベルである期間が重複する。
【0128】
図21には、MCU1の制御周期Tcが示されている。MCU1は、この制御周期Tcにおいて、スイッチS4をオンする時間を一定とし、スイッチS3をオンする時間を制御する。つまり、MCU1は、加熱制御時には、PWM(パルス幅変調)制御によって、ヒータHTRへの電力の供給を行う。この制御周期Tcのうち、スイッチS4をオンしている一定時間を除いた時間が、スイッチS3をオンする時間の最大値である。スイッチS4をオンしている一定時間は、スイッチS3をオンする時間の最大値よりも十分に小さく、例えば、この最大値の10分の1以下である。なお、制御周期Tcのうち、スイッチS3を複数回オンしてもよい。この場合において、PWM制御によって算出されるデューティ比が100%未満ならば、制御周期TcのうちスイッチS4をオンしている一定時間を除いた時間において、スイッチS3は間欠的にオンされることとなる。
【0129】
駆動例EX1では、スイッチS3がオンからオフに切り替わるタイミングで、スイッチS4がオフからオンに切り替わるように、MCU1が制御している。つまり、MCU1は、スイッチS3をオフするタイミングは固定とし、スイッチS3をオンするタイミングを制御することで、スイッチS3のオン時間を変更している。なお、MCU1は、PFM(パルス周波数変調)制御によってヒータHTRへの電力の供給を行ってもよい。
【0130】
図22は、加熱モードの加熱制御時における電流の流れを示した図である。加熱制御時には、スイッチS3がオン且つスイッチS4がオフとなる。この状態では、ノードN1、スイッチS3、ノードN2、ノードN7、ヒータHTR、ノードN8、スイッチS6、及びグランドの順に電流が流れる第1加熱放電経路HR1と、ノードN1、スイッチS3、ノードN2、ノードN4、及びスイッチS5のゲート端子の順に電流が流れる第2加熱放電経路HR2と、ノードN1、スイッチS3、ノードN2、ノードN4、抵抗器Rs、ノードN3、及びオペアンプOP1の正電源端子の順に電流が流れる第3加熱放電経路HR3と、が形成される。
【0131】
第3加熱放電経路HR3の存在により、オペアンプOP1の正電源端子には、駆動電圧Vbstよりも低い電圧(駆動電圧Vbstの抵抗器Rsで降圧後の電圧)が供給されて、オペアンプOP1は動作可能になっている。つまり、加熱制御時には、第3加熱放電経路HR3の存在により、オペアンプOP1の正電源端子と負電源端子の間に印加される電圧は、駆動電圧Vbstよりも低い値(ただし、MCU1の電源電圧であるシステム電源電圧Vcc2よりは高い値)となる。この状態では、オペアンプOP1の差動入力値が駆動電圧Vbstよりも高くなると、オペアンプOP1の出力電圧は、オペアンプOP1の正電源端子に印加されている電圧に貼り付いてしまう。この電圧は、MCU1の電源電圧よりも高いため、この電圧がMCU1に入力されると、MCU1は正常に動作しなくなる虞がある。そこで、第2加熱放電経路HR2の存在によってスイッチS5がオンされるようになっている。これにより、オペアンプOP1の出力電圧は、抵抗器R4とスイッチS
5のオン抵抗によって分圧されてMCU1の端子P9に入力される。スイッチS5のオン抵抗値は抵抗器R4の抵抗値よりも十分に小さい。このため、抵抗器R4とスイッチS5によって分圧される電圧値は微小となる。したがって、スイッチS5は、オンすることで、オペアンプOP1の出力電圧をグランドレベルにクランプしていると見做すことができる。
【0132】
図23は、加熱モードの温度検出制御時における電流の流れを示した図である。温度検出制御時には、スイッチS3がオフ且つスイッチS4がオンとなる。この状態では、ノードN1、リアクトルLd、スイッチS4、抵抗器Rs、ノードN2、ノードN7、ヒータHTR、ノードN8、スイッチS6、及びグランドの順に電流が流れる第1検出放電経路MR1と、ノードN1、リアクトルLd、スイッチS4、抵抗器Rs、ノードN4、及びスイッチS5のゲート端子の順に電流が流れる第2検出放電経路MR2と、ノードN1、リアクトルLd、スイッチS4、ノードN3、及びオペアンプOP1の正電源端子の順に電流が流れる第3検出放電経路MR3と、が形成される。
【0133】
リアクトルLdの抵抗値とスイッチS4のオン抵抗値は十分に小さい。このため、第3検出放電経路MR3の存在により、オペアンプOP1の正電源端子には、駆動電圧Vbstとほぼ同じ電圧(基準電圧Vtemp)が供給されて、オペアンプOP1は動作可能になっている。このように、温度検出制御時には、オペアンプOP1の電源電圧が、加熱制御時よりも大きくなるため、オペアンプOP1の差動入力値の上限値を大きくすることができる。
【0134】
温度検出制御時には、オペアンプOP1の非反転入力端子に、ノードN3の電圧(基準電圧Vtemp)を、抵抗器RsとヒータHTRで分圧した電圧Vheatが入力される。なお、ノードN7は、配線抵抗を無視すれば、ノードN4の電位と一致する。このため、スイッチS5のゲート端子に入力される電圧も、電圧Vheatと同じになる。電圧Vheatは、スイッチS5の閾値電圧以下であるため、図23の状態では、スイッチS5はオフになる。このように、電圧VheatがスイッチS5の閾値電圧以下となるように、抵抗器Rsの抵抗値を決めておくことが好ましい。スイッチS5がオフになることで、オペアンプOP1の出力電圧VOUTは、分圧されることなく、MCU1の端子P9に入力される。なお、スイッチS5がオフの状態では、寄生ダイオードD5がツェナーダイオードのように振る舞う。このため、何らかの要因によってオペアンプOP1の出力電圧VOUTが過大となった場合でも、MCU1の端子P9に入力される電圧が高くなるのを防ぐことができる。本実施形態では、図23の状態において、MCU1の端子P9に入力される電圧がMCU1の動作電圧(システム電源電圧Vcc2)以下となるように、抵抗器R4や抵抗器Rsの抵抗値が決められている。
【0135】
オペアンプOP1の増幅率をAとし、ヒータHTRの抵抗値をRHTRとし、抵抗器Rsの抵抗値をRRSとし、オペアンプOP1の反転入力端子に入力される電圧を0Vとす
ると、オペアンプOP1の出力電圧VOUTは、以下の式(1)により表される。式(1)の右辺の増幅率Aを除く項が電圧Vheatに相当する。
【0136】
【数1】
【0137】
式(1)を抵抗値RHTRについて解くと、以下の式(2)が得られる。
【0138】
【数2】
【0139】
温度検出制御時において、MCU1は、端子P9に入力された出力電圧VOUTと、グランド電位(=0V)の差を内蔵のオペアンプOP5によって増幅し、増幅後の電圧を内蔵のADC1bでデジタル値(ADC_VOUTと記載)に変換する。また、MCU1は、端子P18に入力された基準電圧Vtempの分圧値(分圧回路Pbによって分圧された値)とグランド電位(=0V)の差を内蔵のオペアンプOP4によって増幅し、増幅後の電圧を内蔵のADC1aでデジタル値(ADC_Vtempと記載)に変換する。オペアンプOP4及び/又はオペアンプOP5の反転入力端子は必ずしもグランド電位に接続されていなくてもよく、他の基準電位に接続されていてもよい。この基準電位が十分に高い場合、基準電位が非反転入力端子に接続され、出力電圧VOUTや基準電圧Vtempの分圧値が反転入力端子に接続されてもよい。なお、ADC1a及びオペアンプOP4の出力は、MCU1内部の温度の影響による温度ドリフト誤差ε1を生じ、ADC1b及びオペアンプOP5の出力は、MCU1内部の温度の影響による温度ドリフト誤差ε2を生じる。つまり、ADC1aから出力されるデジタル値は、厳密には、ADC_Vtemp(1+ε1)となり、ADC1bから出力されるデジタル値は、厳密には、ADC_VOUT(1+ε2)となる。
【0140】
デジタル値ADC_Vtemp(1+ε1)を式(2)のVtempに代入し、デジタル値ADC_VOUT(1+ε2)を式(2)のVOUTに代入したものが、式(3)である。ADC1a及びオペアンプOP4と、ADC1b及びオペアンプOP5は、それぞれMCU1内部に設けられている。そのため、温度ドリフト誤差ε1と温度ドリフト誤差ε2はほぼ同じと見做せる。つまり、式(3)における(1+ε1)と(1+ε2)は同じ値となる。このため、式(3)において、温度ドリフト誤差は相殺される。MCU1は、この式(3)の演算により、ヒータHTRの抵抗値RHTRを導出する。ヒータHTRは、温度に応じて抵抗値が変化する特性を持つため、抵抗値RHTRが導出されることで、ヒータHTRの温度が取得可能となる。
【0141】
【数3】
【0142】
このように、式(3)の演算により、出力電圧VOUTに生じ得る温度ドリフト誤差(正確には、出力電圧VOUTに相当する情報を取得するために必要な電子部品(オペアンプOP5及びADC1b)の出力に生じ得る温度ドリフト誤差)と、基準電圧Vtempに生じ得る温度ドリフト誤差(正確には、基準電圧Vtempに相当する情報を取得するために必要な電子部品(オペアンプOP4及びADC1a)の出力に生じ得る温度ドリフト誤差)とを相殺することができ、ヒータHTRの抵抗値RHTRをより精度よく導出することができる。換言すれば、MCU1の温度の影響を受けずに、ヒータHTRの抵抗値RHTRが導出しやすくなる。
【0143】
図20の例では、MCU1内部に、オペアンプOP5及びADC1bと、オペアンプOP4及びADC1aと、が個別に設けられている。しかし、これらは共通化されていてもよい。つまり、出力電圧VOUTの情報を取得するためのオペアンプ及びADCと、基準電圧Vtempの情報を取得するためのオペアンプ及びADCとを共通化し、デジタル値ADC_Vtemp(1+ε1)と、デジタル値ADC_VOUT(1+ε2)を時分割
で得る構成としてもよい。この構成によれば、これら2つのデジタル値に生じる温度ドリフト誤差をより一致させることができ、ヒータHTRの抵抗値RHTRをより高精度に導出できる。
【0144】
なお、スイッチS4がオンの時におけるノードN3の電位は、ノードN1の電位とほぼ同じである。このため、MCU1は、スイッチS3がオフ且つスイッチS4がオンの時に、ノードN1の電位を基準電圧Vtempとして取得し、ヒータHTRの抵抗値の導出に用いてもよい。また、オペアンプOP1の正電源端子に電圧を常時供給して電力消費が増えるのを許容するのであれば、オペアンプOP1の正電源端子をノードN3ではなくノードN1に接続し、ノードN1と分圧回路Pbとを接続してもよい。
【0145】
図24は、図21の駆動例EX2におけるスイッチS3とスイッチS4が共にオンしているときの電流の流れを示した図である。図24の状態では、ノードN1、スイッチS3、ノードN2、ノードN7、ヒータHTR、ノードN8、スイッチS6、及びグランドの順に電流が流れる第1加熱放電経路HR1と、ノードN1、スイッチS3、ノードN2、ノードN4、及びスイッチS5のゲート端子の順に電流が流れる第2加熱放電経路HR2と、ノードN1、リアクトルLd、スイッチS4、ノードN3、及びオペアンプOP1の正電源端子の順に電流が流れる第3検出放電経路MR3と、が形成される。
【0146】
図24の状態では、ノードN3とノードN4がほぼ同電位となるため、抵抗器Rsにはほとんど電流が流れない。したがって、オペアンプOP1の電源電圧は、駆動電圧Vbstとなる。つまり、この状態では、オペアンプOP1の差動入力値の上限値が駆動電圧Vbstと等しくなる。このため、オペアンプOP1の出力電圧は図22の状態と比べて大きくなる。しかし、本実施形態では、図24の状態において、MCU1の端子P9に入力される電圧がMCU1の動作電圧(システム電源電圧Vcc2)以下となるように、抵抗器R4とスイッチS5のオン抵抗の抵抗比が決められている。このため、MCU1の端子P9に動作電圧以上の大きな電圧が入力されることはない。つまり、MCU1の動作が安定する。
【0147】
このように、吸引器100では、図22に示すように、スイッチS3がオン且つスイッチS4がオフの期間においては、第3加熱放電経路HR3によって、駆動電圧Vbstよりも小さい電圧をオペアンプOP1の電源電圧として供給することができる。また、図23に示すように、スイッチS4がオン且つスイッチS3がオフの期間においては、第3検出放電経路MR3によって、駆動電圧Vbstと同等の電圧をオペアンプOP1の電源電圧として供給することができる。したがって、図21に示したように、ヒータHTRの加熱を開始し、その加熱を終了して、ヒータHTRの温度検出を終了するまでの期間(スイッチ3のゲート電圧の立下りから、その直後のスイッチS4の立ち上がりまでの期間)において、オペアンプOP1に連続して電源電圧を供給できる。したがって、スイッチS3のオン期間(ヒータHTRの加熱期間)においてオペアンプOP1に電源電圧を供給しない参考例と比較すると、温度検出制御時において、オペアンプOP1の電源電圧が十分に立ち上がるまで待つ必要がなくなり、加熱制御と温度検出制御を効率的に実行することができる。
【0148】
特に、駆動例EX2によれば、加熱制御を行いながら、温度検出制御時に必要なオペアンプOP1の電源電圧の供給が可能になる。このため、加熱制御が終了したタイミングで、オペアンプOP1の電源電圧を十分に立ち上げた状態とすることができ、駆動例EX1と比べると、ヒータHTRの加熱終了後、より早いタイミングで、ヒータHTRの抵抗値を高精度に検出できるようになる。
【0149】
なお、図21に示す駆動例EX1及び駆動例EX2のどちらにおいても、スイッチS4
がオフになった後、次にスイッチS3がオンされるまでの期間は、オペアンプOP1に電源電圧が供給されない場合がある。しかし、この期間の直後に行われるのは加熱制御であり、オペアンプOP1の動作は必須ではない。このため、この期間においてオペアンプOP1に電源電圧が供給されなくても支障はない。しかも、この期間においてはオペアンプOP1による電力消費を無くすことができるため、吸引器100全体の省電力化に寄与することができる。
【0150】
以上のように構成された吸引器100において、図20に示したスイッチS3、スイッチS4、及びスイッチS6は、それぞれ好ましい構成がある。以下、各スイッチの好ましい例について説明する。
【0151】
<スイッチS3の好ましい構成>
スイッチS3は、ヒータHTRを加熱する際に、ヒータHTRにより多くの電流が流れるようにするために、オン抵抗値が小さい(換言すると、チップサイズが大きい)構成が好ましい。以下では、スイッチS3、スイッチS4、及びスイッチS6のそれぞれのオン抵抗値を比較する場合には、温度及び流れる電流が同じという条件下で比較を行うものとする。
【0152】
スイッチS3は、ヒータHTRを加熱する際に、PWM制御又はPFM制御等によって高速でオンオフされる。このため、瞬間的に出力可能な最大電流値(パルス状で出力可能な最大電流値)は、大きいことが好ましい。また、スイッチS3は、多くの電流をヒータHTRに流す観点と、スイッチS4よりもオン時間が長くなる観点とから、連続して出力可能な最大電流値は、スイッチS4よりも大きいことが好ましい。以下では、スイッチS3、スイッチS4、及びスイッチS6のそれぞれが出力可能な最大電流値を比較する場合には、温度が同じという条件下で比較を行うものとする。
【0153】
スイッチS3は、図20に例示したように、Pチャネル型MOSFETであることが好ましい。スイッチS3は、Nチャネル型MOSFETで構成することも可能である。しかし、スイッチS3をNチャネル型MOSFETで構成した場合には、スイッチS3をオンするために、MCU1の端子P16からスイッチS3のゲート端子に供給する電圧を、駆動電圧Vbstよりも大きい値にする必要があり、MCU1の電源電圧を高くする必要がある。これに対し、スイッチS3をPチャネル型MOSFETで構成すれば、MCU1の電源電圧を駆動電圧Vbstよりも下げることができるため、MCU1の消費電力を抑えることができる。
【0154】
<スイッチS4の好ましい構成>
スイッチS4は、抵抗器RsとヒータHTRの直列回路に十分な大きさの電圧を印加できるように、オン抵抗値を小さくすることが好ましい。ただし、オン抵抗値を小さくしすぎると、サイズが大きくなることから、回路面積を削減するために、スイッチS4のオン抵抗値は、スイッチS3のオン抵抗値よりも大きいことが好ましい。ヒータHTRの抵抗値を検出するための電流がヒータHTRの温度を変化させないためにも、スイッチS4のオン抵抗値は小さすぎないことが好ましい。具体的には、スイッチS4のオン抵抗値は、抵抗器Rsの抵抗値より小さく、スイッチ3のオン抵抗値よりも大きい値とすることが好ましい。
【0155】
図21に例示したように、ヒータHTRの抵抗値の検出は、ヒータHTRの加熱よりも短時間で行う必要がある。また、スイッチS6は加熱モードでは常時オンされることから応答性は高くなくてよい。このため、スイッチS4の応答性は、スイッチS3及びスイッチS6の応答性よりも高いことが好ましい。トランジスタの応答性を示す指標としては、ターンオン時間ton、ターンオン遅れ時間td(on)、上昇時間t、ターンオフ時
間toff、ターンオフ遅れ時間td(off)、及び下降時間tがある。
【0156】
ターンオン遅れ時間td(on)は、ターンオン時に、ゲート・ソース間電圧が設定値の10%に達してから、ドレイン・ソース間電圧が設定値の90%まで達するのに要する時間である。
上昇時間tは、ターンオン時に、ドレイン・ソース間電圧が設定値の90%から10%まで達するのに要する時間である。
ターンオン時間tonは、ターンオン遅れ時間td(on)と上昇時間tの合計値である。
ターンオフ遅れ時間td(off)は、ターンオフ時に、ゲート・ソース間電圧が設定値の90%に達してから、ドレイン・ソース間電圧が設定値の10%まで達するのに要する時間である。
下降時間tは、ターンオフ時に、ドレイン・ソース間電圧が設定値の10%から90%まで達するのに要する時間である。
ターンオフ時間toffは、ターンオフ遅れ時間td(off)と下降時間tの合計値である。
【0157】
ヒータHTRの抵抗値の検出は、ヒータHTRの加熱よりも短時間で行う必要がある。このため、スイッチS4のターンオン遅れ時間又は上昇時間は、スイッチS3及びスイッチS6のそれぞれのターンオン遅れ時間又は上昇時間より短いことが好ましい。同様に、スイッチS4のターンオフ遅れ時間又は下降時間は、スイッチS3及びスイッチS6のそれぞれのターンオフ遅れ時間又は下降時間より短いことが好ましい。
【0158】
スイッチS4は、図20に例示したように、Pチャネル型MOSFETであることが好ましい。スイッチS4は、Nチャネル型MOSFETで構成することも可能である。しかし、スイッチS4をNチャネル型MOSFETで構成した場合には、スイッチS4をオンするために、MCU1の端子P15からスイッチS4のゲート端子に供給する電圧を、駆動電圧Vbstよりも大きい値にする必要があり、MCU1の電源電圧が高くなる。これに対し、スイッチS4をPチャネル型MOSFETで構成すれば、MCU1の電源電圧を駆動電圧Vbstよりも下げることができるため、MCU1の消費電力を抑えることができる。
【0159】
<スイッチS6の好ましい構成>
スイッチS6は、ヒータHTRを加熱する際に、ヒータHTRにより多くの電流が流れるようにするために、オン抵抗値が小さい(換言すると、チップサイズが大きい)構成が好ましい。具体的には、スイッチS6のオン抵抗値は、スイッチS3のオン抵抗値と同等にすることが好ましい。
【0160】
スイッチS6は、加熱モードにおいて継続的に電流を流す必要がある。このため、スイッチS6が連続して出力可能な最大電流値は、スイッチS4及びスイッチS3より大きいことが好ましい。一方、スイッチS6は加熱モードにおいては常時オンされるため、スイッチS6が瞬間的に出力可能(パルス状で出力可能)な最大電流値は、オンオフが繰り返されるスイッチS3より小さくすることが好ましい。スイッチS6の用途に対して瞬間的に出力可能(パルス状で出力可能)な最大電流値を過大にしてしまうと、スイッチS6のチップサイズやコストが増大してしまう虞がある。
【0161】
また、スイッチS3は、回路上の高電位な箇所に接続されるため、安全性の観点からスイッチS6よりも応答性を向上させにくい。そこで、スイッチS6の応答性をスイッチS3よりも高めることが、回路全体の応答性を高めるうえで有効となる。具体的には、スイッチS6のターンオフ遅れ時間又は下降時間は、スイッチS3のターンオフ遅れ時間又は
下降時間より短いことが好ましい。同様に、スイッチS6のターンオン遅れ時間又は上昇時間は、スイッチS3のターンオン遅れ時間又は上昇時間より短いことが好ましい。
【0162】
スイッチS6は、図20に例示したように、Nチャネル型MOSFETであることが好ましい。スイッチS6は、Pチャネル型MOSFETで構成することも可能である。しかし、スイッチS6をPチャネル型MOSFETで構成した場合には、スイッチS6をオンするために、MCU1の端子P14からスイッチS6のゲート端子に供給する電圧を、グランドレベルよりも小さい値にする必要がある。グランドレベルよりも小さい電圧を生成しようとすると、負電源やレール・スプリッタ回路などの専用の回路が必要になってしまう。これに対し、スイッチS6をNチャネル型MOSFETで構成すれば、MCU1は自身の電源電圧相当の電圧をゲート端子へ入力すればスイッチS6をオンできるため、回路が複雑になることを抑えることができる。また、スイッチS6をNチャネル型MOSFETで構成すれば、スイッチS6のオンと同時に、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENにハイレベルの信号を入力して、昇圧DC/DCコンバータ9から駆動電圧Vbstを出力させることができる。スイッチS6をPチャネル型MOSFETで構成した場合には、昇圧DC/DCコンバータ9のイネーブル端子ENとスイッチS6のゲート端子の間に論理反転用のインバータを接続する必要がある。しかし、スイッチS6をNチャネル型MOSFETで構成することで、このようなインバータを不要にでき、回路規模の削減、製造コストの削減を実現できる。
【0163】
このように、スイッチS3、スイッチS4、及びスイッチS6は、それぞれ異なる構成とすることが好ましい。本明細書において、トランジスタを含んで構成されるスイッチの構成が異なるとは、トランジスタの種類が異なること、トランジスタの仕様(オン抵抗値及び応答性等)が異なること、の少なくとも一方を満たすことを言う。このような構成とすることで、3つのスイッチの全てが同種類及び同仕様である場合に比べて、各スイッチの種類及び仕様を、それぞれが接続される箇所に応じたものとすることができる。このため、吸引器100の性能を向上させることができる。
【0164】
なお、図20に示した回路において、スイッチS6を省略し、ノードN8をグランドに直接接続する構成とすることも可能である。この場合でも、スイッチS3とスイッチS4を異なる構成とすることで、2つのスイッチの全てが同種類及び同仕様である場合に比べて、各スイッチの種類及び仕様を、それぞれが接続される箇所に応じたものとすることができる。このため、吸引器100の性能を向上させることができる。
【0165】
<電子部品の好ましい配置>
次に、図20に示す回路における主要な電子部品のレセプタクル搭載基板162における設置箇所の好ましい例について説明する。
【0166】
図25は、レセプタクル搭載基板162を主面162a側から見た平面図である。図26は、レセプタクル搭載基板162を副面162b側から見た平面図である。図25に示すように、レセプタクル搭載基板162の主面162aには、図20に示した電子部品のうち、リアクトルLc、抵抗器Rs、スイッチS4、スイッチS6、及びヒータコネクタCnが設けられる。図26に示すように、レセプタクル搭載基板162の副面162bには、図20に示した電子部品のうち、昇圧DC/DCコンバータ9、スイッチS3、抵抗器RPb1、及び抵抗器RPb2が設けられる。
【0167】
副面162bにおいて、抵抗器RPb1と抵抗器RPb2は近接配置されている。抵抗器RPb1と抵抗器RPb2は、ノードN3の電位を分圧する分圧回路Pbを構成している。抵抗器RPb1と抵抗器RPb2の温度に差が生じると、分圧回路Pbの分圧比が変動し、ヒータHTRの抵抗値を導出するために必要なノードN3の電位の取得精度が低下
する。図26に示すように、抵抗器RPb1と抵抗器RPb2が、レセプタクル搭載基板162の同一面に実装され、更に、近接して配置されることで、抵抗器RPb1と抵抗器RPb2の温度に差が生じるのを防ぐことができる。この効果を高めるために、レセプタクル搭載基板162に実装される電子部品のうち、抵抗器RPb1に最も近い電子部品を、抵抗器RPb2とすることが好ましい。
【0168】
図25及び図26に示す電子部品のうち熱源又はノイズ源となり得るものとしては、スイッチS3、昇圧DC/DCコンバータ9、リアクトルLc、及びヒータコネクタCnが挙げられる。これらのうち、最も発熱量が大きいのはスイッチS3であり、その次に発熱量が大きいのは昇圧DC/DCコンバータ9である。図25及び図26の例では、発熱量の大きいスイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9と、スイッチS4、スイッチS6、及び抵抗器Rsとが同じ基板の別面に搭載されている。換言すれば、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9は副面162bに搭載され、スイッチS4、スイッチS6、及び抵抗器Rsは主面162aに搭載される。このようにすることで、スイッチS4、スイッチS6、及び抵抗器Rsが、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9から熱又はノイズの影響を受けるのを抑制できる。
【0169】
また、図25に示す例では、レセプタクル搭載基板162の素子搭載面(主面162a及び副面162b)に直交する方向に見た状態で、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9と、スイッチS4、スイッチS6、及び抵抗器Rsと、が重ならないように配置されている。このようにすることで、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9で発生した熱又はノイズが、スイッチS4、スイッチS6、及び抵抗器Rsへ基板を介して伝わりにくくなる。つまり、スイッチS4、スイッチS6、及び抵抗器Rsが、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9から熱又はノイズの影響を受けるのをより強く抑制できる。
【0170】
なお、図25及び図26に示す例において、例えば、スイッチS4又はスイッチS6を副面162bに実装する構成としてもよい。このようにすることでも、スイッチS4とスイッチS6のいずれかが、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9からの熱又はノイズの影響を受けるのを防ぐことができる。
【0171】
また、図20に示した回路の電子部品のうち、スイッチS4とスイッチS6の少なくとも一方は、レセプタクル搭載基板162とは別の基板(例えば、MCU搭載基板161等)に実装される構成としてもよい。このようにすることでも、スイッチS4とスイッチS6の少なくとも一方が、スイッチS3及び昇圧DC/DCコンバータ9からの熱又はノイズの影響を受けるのを防ぐことができる。
【0172】
図25には、主面162aにおいて抵抗器Rsが実装される実装領域と、主面162aにおいてリアクトルLcが実装される実装領域との間の距離DS4(2つの実装領域を最短距離で結ぶ直線の長さ)が示されている。また、図25には、主面162aにおいてスイッチS4が実装される実装領域と、主面162aにおいてリアクトルLcが実装される実装領域との間の距離DS5(2つの実装領域を最短距離で結ぶ直線の長さ)が示されている。そして、距離DS4は、距離DS5よりも短くなっている。
【0173】
抵抗器Rsの抵抗値は、スイッチS4のオン抵抗値と比べると、温度による変動の影響を受けにくい。したがって、温度変化の影響を受けにくい抵抗器Rsについては、スイッチS4よりもリアクトルLcの近くに配置することで、基板面積を有効活用することができる。
【0174】
更に、図25の例では、スイッチS4とリアクトルLcの間に抵抗器Rsが実装されて
いる。つまり、抵抗器Rsの実装領域は、スイッチS4の実装領域とリアクトルLcの実装領域とを結ぶ直線上に存在している。このようにすることで、抵抗器Rsが、リアクトルLcで発生する熱からスイッチS4を守る物理的な障壁となる。この結果、スイッチS4の温度が変化するのを強く抑制することができる。スイッチS4のオン抵抗値が変動してしまうと、ヒータHTRの抵抗値の計測精度に影響が出る。そのため、スイッチS4の温度変化を抑制することは特に重要である。
【0175】
図27は、図25に示す範囲Hの拡大図である。図27に示すように、レセプタクル搭載基板162の主面162aにおいて、スイッチS4の実装領域と、ヒータコネクタCnの実装領域とは離間しているが、これらの間には、図20に示した回路における抵抗器RS4及びバイポーラトランジスタTS4が実装されている。換言すると、スイッチS4の実装領域とヒータコネクタCnの実装領域とを結ぶ直線DL1及び直線DL2のそれぞれの上に、抵抗器RS4とバイポーラトランジスタTS4が実装されている。この構成によれば、抵抗器RS4とバイポーラトランジスタTS4が、ヒータコネクタCnで発生する熱からスイッチS4を守る物理的な障壁となる。この結果、スイッチS4の温度が変化するのを強く抑制することができる。
【0176】
また、図25及び図27に示すように、スイッチS4は、レセプタクル搭載基板162の主面162aにおける外縁の近傍に配置されている。具体的には、レセプタクル搭載基板162の主面162aにおいて、スイッチS4の実装領域と、主面162aの右方向の縁162eのうち最もスイッチS4の実装領域に近い縁である最近接縁162emとの間の距離DS1は、レセプタクル搭載基板162の主面162aにおける左右方向の中心とスイッチS4の実装領域との間の距離DS2よりも短くなっている。このように、スイッチS4は、レセプタクル搭載基板162の縁の近傍に配置されることで、他の電子部品が発生する熱の影響を受けにくくなっている。特に、図27に示すように、最近接縁162emとスイッチS4の間に他の電子部品が存在しないようにする、換言すると、レセプタクル搭載基板162上において最近接縁162emに最も近い電子部品をスイッチS4とすることで、スイッチS4の温度変化をより抑制することができる。
【0177】
また、図27に示す例では、レセプタクル搭載基板162の主面162aにおける抵抗器Rsの実装領域と、縁162eのうち最も抵抗器Rsの実装領域に近い縁162enとの間の距離DS3は、距離DS1よりも大きくなっている。前述したように、抵抗器Rsは、スイッチS4よりも温度変化の影響を受けにくい。そこで、抵抗器Rsについては、レセプタクル搭載基板162の中央に近づけて配置することで、基板面積を有効活用できる。
【0178】
<スイッチS4の好ましい形態>
スイッチS4は、オン時においてゲート・ソース間に印加される電圧VGS(絶対値)を、できるだけ高い値とすることが好ましい。つまり、スイッチS4がPチャネル型のMOSFETである場合には、オン時においてゲート・ソース間に印加される電圧VGSを、できるだけ大きな-の値とすることが好ましい。こうすることで、スイッチS4のオン抵抗値を下げることができ、オン時におけるジュール熱を減らして、スイッチS4の温度変動を抑制できるためである。具体的には、スイッチS4のゲート・ソース間に印加できる電圧の最大定格値(絶対値)を電圧VGSSとし、スイッチS4のゲート・ソース間の電圧の閾値(絶対値)を電圧Vthとすると、MCU1は、電圧VGS(絶対値)が、電圧VGSSと電圧Vthのうち、電圧VGSSに近い値となるように、スイッチS4のゲート端子に印加する電圧を制御することが好ましい。換言すると、電圧VGSSと電圧VGS(絶対値)の差の絶対値が、電圧Vthと電圧VGS(絶対値)との差の絶対値よりも小さくなるように、スイッチS4のゲート端子に印加する電圧を制御することが好ましい。
【0179】
このように、電圧VGS(絶対値)を高い値にするために、スイッチS4のゲート端子とソース端子の間に、バリスタ等の過電圧保護ダイオードを設けることが好ましい。この過電圧保護ダイオードがあることで、昇圧DC/DCコンバータ9におけるスイッチングにより生じ得るサージ電圧がスイッチS4に印加された場合でも、その値を最大定格値以下とすることができる。この結果、スイッチS4が故障しにくくなり、吸引器100の耐久性を向上できる。
【0180】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0181】
(1)
電源(電源BAT)と、
+極と-極とを含み、上記電源から供給される電力を消費してエアロゾル源を加熱するヒータ(ヒータHTR)が上記+極と上記-極へ接続されるヒータコネクタ(ヒータコネクタCn)と、
上記+極と上記-極のいずれか一方へ直列接続されるスイッチ(スイッチS4)と、
上記+極と上記-極のいずれか一方へ直列接続される固定抵抗器(抵抗器Rs)と、
上記スイッチが実装される回路基板(レセプタクル搭載基板162)と、
上記スイッチがONの時、上記固定抵抗器又は上記ヒータコネクタに印加される電圧に基づき、所定の制御を実行するように構成されるコントローラ(MCU1)と、を備え、
上記回路基板において上記スイッチが実装される領域である第1実装領域と上記回路基板の縁のうち最も上記スイッチに近い縁である第1最近接縁(最近接縁162em)との間の距離(距離DS1)は、上記第1実装領域と上記回路基板の中心の間の距離(距離DS2)より短い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0182】
スイッチは自身の温度によりON抵抗値が変動する特性を持つ。このため、スイッチが、回路基板に実装される他の電子部品などで生じた熱の影響を受けやすいと、ON抵抗値が変動してしまう。(1)によれば、他の電子部品などで生じた熱の影響を受けにくい回路基板の縁の近くにスイッチが配置される。このため、コントローラが取得する固定抵抗器又はヒータコネクタに印加される電圧値における誤差が少なくなり、所定の制御の精度が向上する。
なお、上記実施形態では、昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子と正極側のヒータコネクタCnの間に、スイッチS3と、スイッチS4及び抵抗器Rsと、が並列接続される構成であるが、グランドラインと負極側のヒータコネクタCnの間に、スイッチS3と、スイッチS4及び抵抗器Rsと、が並列接続される構成とすることもできる。このような構成とした場合、スイッチS6は、昇圧DC/DCコンバータ9の出力端子と正極側のヒータコネクタCnの間に接続される又は省略される。この構成とする場合でも、(1)の構成とすることで、コントローラが取得する固定抵抗器又はヒータコネクタに印加される電圧値における誤差が少なくなり、所定の制御の精度が向上する。
【0183】
(2)
(1)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記回路基板上において上記第1最近接縁に最も近い電子部品は、上記スイッチである、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0184】
(2)によれば、第1最近接縁の最も近くにスイッチが配置されるため、このスイッチが、他の電子部品などで生じた熱の影響を受けるのを極力避けることができる。したがっ
て、コントローラが取得する固定抵抗器又はヒータコネクタに印加される電圧値における誤差が少なくなり、所定の制御の精度が向上する。
【0185】
(3)
(2)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記固定抵抗器は、上記回路基板に実装され、
上記回路基板において上記固定抵抗器が実装される領域である第2実装領域と上記回路基板の縁のうち最も上記固定抵抗器に近い縁(縁162en)との間の距離(距離DS3)は、上記第1実装領域と上記第1最近接縁との間の距離(距離DS1)より長い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0186】
(3)によれば、スイッチのON抵抗よりも温度依存性が低い抵抗値を持つ固定抵抗器が、スイッチよりも基板の中央へ近づけて実装される。このため、基板面積を有効活用できるようになる。この結果、エアロゾル生成装置のコストやサイズを低減できる。
【0187】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記スイッチは、上記+極へ直列接続され、且つ、Pチャネル型MOSFETを含み、
上記Pチャネル型MOSFETは、ソース端子と、ゲート端子と、ドレイン端子とを含み、
上記電源へ入力端子(スイッチング端子SW)が接続され、且つ、上記ソース端子へ出力端子(出力端子VOUT)が接続される昇圧コンバータ(昇圧DC/DCコンバータ9)を備え、
上記コントローラは、上記ゲート端子へ接続される端子(端子P15)を含み、
上記コントローラの電源端子(電源端子VDD)へ入力される電圧は、上記昇圧コンバータの出力端子から出力される電圧より低い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0188】
(4)によれば、昇圧コンバータによってエアロゾルの生成効率が優れる高電圧をヒータに印加できるばかりか、低電圧で動作する省電力型のコントローラでも容易にスイッチのゲート/ソース間の電圧をONするための値にできる。このため、エアロゾル生成装置の高機能化と省電力化を同時に実現できる。
【0189】
(5)
(4)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記スイッチは、上記ゲート端子と上記ソース端子との間に接続される過電圧保護ダイオードを含む、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0190】
(5)によれば、昇圧コンバータにおけるスイッチングにより生じ得るサージ電圧がスイッチに印加されても、過電圧保護ダイオードにより、その値を最大定格値以下とすることができる。この結果、スイッチが故障しにくくなり、エアロゾル生成装置の耐久性を向上できる。
【0191】
(6)
(4)又は(5)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記Pチャネル型MOSFETは、上記ソース端子側が高電位になるように上記ゲート端子と上記ソース端子の間へ印加される電圧(電圧VGS)の値が閾値(電圧Vth)を越えるとONになり、
上記コントローラは、上記Pチャネル型MOSFETのON状態において、上記ソース端子側が高電位になるように上記ゲート端子と上記ソース端子の間へ印加される電圧が所定電圧値を有するように、上記ゲート端子へ電圧を印加するように構成され、
上記ソース端子側が高電位になるように上記ゲート端子と上記ソース端子の間へ印加可能な電圧の最大定格値(電圧VGSS)と上記所定電圧値の差の絶対値は、上記閾値と上記所定電圧値の差の絶対値より小さい、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0192】
(6)によれば、スイッチのゲート/ソース間に高めの電圧を印加することでON抵抗を低くし、ON抵抗によるジュール熱を少なくできる。これにより、ON時のスイッチの温度がより変化しにくくなるので、コントローラが取得する固定抵抗器又はヒータコネクタに印加される電圧値における誤差がより少なくなり、所定の制御のより精度が向上する。
【0193】
(7)
(1)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記電源から出力される電圧を変換して上記ヒータへ出力可能な電圧変換器(昇圧DC/DCコンバータ9)を備え、
上記回路基板は、上記スイッチが実装されるA面(主面162a)と、上記A面の裏面且つ上記電圧変換器が実装されるB面(副面162b)と、を含む、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0194】
(7)によれば、電圧を変換する際に少なからず熱を発生する電圧変換器がスイッチと同一面に実装されないため、電圧変換器で生じる熱の影響をスイッチが受けにくくなる。この結果、コントローラが取得する固定抵抗器又はヒータコネクタに印加される電圧値における誤差がより少なくなり、所定の制御の精度がより向上する。
【0195】
(8)
(7)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記固定抵抗器は、上記A面に実装される、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0196】
固定抵抗器であってもその抵抗値は、温度に応じて若干ではあるが変動する。(8)によれば、固定抵抗器が電圧変換器で生じた熱の影響を受けにくい位置に実装されるため、固定抵抗器の抵抗値が安定し、所定の制御の安定性を向上できる。
【0197】
(9)
(8)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記電圧変換器は、上記B面に実装されるIC(昇圧DC/DCコンバータ9)と、上記A面に実装されるリアクトル(リアクトルLc)とを含む、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0198】
電圧変換器を構成するICとリアクトルはいずれも大きい電子部品であるため、基板上における占有面積が大きい。(9)では、これらが別の面に実装されつつ、スイッチング素子を含まないことからICより発熱が少ないリアクトルがスイッチと同一面に実装される。これにより、基板の肥大化を回避しつつ、スイッチの温度が変化しにくくなるので、エアロゾル生成装置のコストやサイズを低減しつつ、所定の制御の精度を向上させることができる。
【0199】
(10)
(9)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記A面において上記固定抵抗器が実装される領域である第2実装領域と上記A面において上記リアクトルが実装される領域である第3実装領域の間の距離(距離DS4)は、上記第1実装領域と上記第3実装領域との間の距離(距離DS5)より短い、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0200】
固定抵抗器の抵抗値は、スイッチのON抵抗より温度依存性が低い。(10)によれば、固定抵抗器が、少なからず発熱するリアクトルへ近づけて実装されることで、基板面積を有効活用できるようになる。この結果、エアロゾル生成装置のコストやサイズを低減できる。
【0201】
(11)
(10)に記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記第2実装領域は、上記第1実装領域と上記第3実装領域とを結ぶ直線上に存在する、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0202】
(11)によれば、固定抵抗器が、リアクトルで発生する熱からスイッチを守る物理的な障壁となる。このため、スイッチの温度がより変化しにくくなり、所定の制御がより安定する。
【0203】
(12)
(1)から(11)のいずれか1つに記載のエアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
上記回路基板は、上記スイッチ及び上記ヒータコネクタが実装されるA面(主面162a)を含み、
上記第1実装領域と上記ヒータコネクタとを結ぶ直線(直線DL1、直線DL2)上に実装される電子部品(バイポーラトランジスタTS4及び抵抗器RS4)を備える、
エアロゾル生成装置の電源ユニット。
【0204】
(12)によれば、電子部品が、ヒータコネクタで発生する熱からスイッチを守る物理的な障壁となる。このため、スイッチの温度がより変化しにくくなり、所定の制御がより安定する。
【符号の説明】
【0205】
100 吸引器
1 MCU
9 昇圧DC/DCコンバータ
OP1 オペアンプ
Lc、Ld リアクトル
HTR ヒータ
BAT 電源
Cn ヒータコネクタ
S3、S4、S5、S6 スイッチ
Rs、R4、RPb1、RPb2 抵抗器
D5 寄生ダイオード
N1~N8 ノード
HR1 第1加熱放電経路
HR2 第2加熱放電経路
HR3 第3加熱放電経路
MR1 第1検出放電経路
MR2 第2検出放電経路
MR3 第3検出放電経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27