(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】含フッ素縮環ピリミジン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
C07D487/04 144
C07D487/04 CSP
C07D487/04 140
C07D487/04 146
(21)【出願番号】P 2022528494
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021016976
(87)【国際公開番号】W WO2021246095
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020095719
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504931(JP,A)
【文献】特開2010-65024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、含フッ素縮環ピリミジン化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
【請求項2】
前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、請求項1に記載の含フッ素縮環ピリミジン化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
【請求項4】
下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)または(4)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Wは、ハロゲン原子、-OA
1、-SO
mA
1(mは0~3の整数である)または-NA
1A
2を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【請求項5】
前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、請求項3または4に記載の含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素縮環ピリミジン化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ピリミジン化合物は様々な薬理活性を有することが報告されており、なかでも、イミダゾピリミジンといった、ピリミジン環に対して複素環が縮環した化合物が注目されている。特に、イミダゾ[1,2-a]ピリミジン構造を有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。
【0003】
より具体的には、ピリミジン環の4位および6位に置換基を有するイミダゾ[1,2-a]ピリミジンについて研究されている。非特許文献1には、イミダゾ[1,2-a]ピリミジンが、サイクリン依存性キナーゼ2の阻害活性を示すことが報告されており、抗癌薬としての研究について開示されている。非特許文献2には、イミダゾ[1,2-a]ピリミジンがコルチコトロピン放出因子1型受容体の阻害活性を示すことが報告されており、うつ病、不安障害の治療薬としての研究について開示されている。
【0004】
このような観点から、生物活性等の有用な活性の向上を期待して、ピリミジン環の4位および6位に置換基を有するだけでなく、ピリミジン環の5位にも含フッ素置換基を有する含フッ素縮環ピリミジン化合物の開発に興味が持たれている。
【0005】
一方、4位および6位に置換基を有するピリミジン環の5位にトリフルオロメチル基を導入する方法として、例えば、非特許文献3~5および特許文献1~2に開示されている方法が知られている。具体的には、非特許文献3にはトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(Langlois試薬)を使用した方法、非特許文献4にはトリフルオロ酢酸誘導体を使用した方法、非特許文献5には無水トリフルオロメタンスルホン酸を使用した方法、がそれぞれ報告されている。また、特許文献1にはトリフルオロヨードメタンを使用した方法、特許文献2にはトリフルオロメチルトリメチルシラン(Ruppert-Prakash試薬)を使用した方法、がそれぞれ報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第108484508号明細書
【文献】中国特許出願公開第107286146号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2017年、60巻、1746~1767頁
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2011年、19巻、5955~5966頁
【文献】Science,2019年、365巻、360~366頁
【文献】ACS Catalysis,2018年、8巻、2839~2843頁
【文献】Angewandte Chemie International Edition,2018年、57巻、6926~6929頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、ピリミジン環の4位および6位に置換基を、5位に含フッ素置換基をそれぞれ有する含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造は、反応性および選択性の面から困難であり、このような含フッ素縮環ピリミジン化合物は報告されていなかった。該含フッ素縮環ピリミジン化合物は、様々な生物活性を有することが期待されていることから、ピリミジン環の4位および6位に置換基を有し、5位に含フッ素置換基を有する新規な含フッ素縮環ピリミジン化合物、およびその製造方法を確立することが望まれている。
【0009】
一方、非特許文献3~5および特許文献1に報告されている製造方法では光照射が必要なため、スケールアップが困難な場合がある。また、非特許文献3の製造方法では反応混合物中の酸素濃度を管理する必要があり、非特許文献4の製造方法ではトリフルオロ酢酸誘導体と反応させるペンタフルオロヨードベンゼンが高価であるため、管理や再利用に際して操作の煩雑化が懸念される。さらに、非特許文献5の製造方法では、トリフルオロメタンスルホン酸無水物の吸湿性や、吸湿により生じるトリフルオロスルホン酸の発煙性、腐食性が問題になる可能性がある。
【0010】
また、特許文献1の製造方法ではトリフルオロヨードメタンの変異原性に起因した安全上の問題を考慮する必要がある。さらに特許文献2に報告されている製造方法ではRuppert-Prakash試薬が高価であるため、スケールアップが困難な場合があり、実用には向かないと考えられる。
【0011】
そこで、本発明者らは、特定の原料を反応させることにより、縮環ピリミジン化合物において、ピリミジン環上の5位に含フッ素置換基を有し、4位および6位が所定の置換基によって置換された構造を簡易的に構築できるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ピリミジン環の4位および6位に置換基を、5位に含フッ素置換基を有する新規な含フッ素縮環ピリミジン化合物、および、該含フッ素縮環ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供する。
【0013】
本発明の実施形態に係る含フッ素縮環ピリミジン化合物は、
下記一般式(1)で表される。
【化1】
(上記一般式(1)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
【0014】
本発明の実施形態に係る含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法は、下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
【0015】
本発明の他の実施形態に係る含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法は、下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)または(4)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Wは、ハロゲン原子、-OA
1、-SO
mA
1(mは0~3の整数である)または-NA
1A
2を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【0016】
本発明の一実施態様において、前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ピリミジン環の4位および6位に置換基を、5位に含フッ素置換基を有する新規な含フッ素縮環ピリミジン化合物、および、該含フッ素縮環ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、以下に説明する具体例に限定されるものではない。
【0019】
(含フッ素縮環ピリミジン化合物)
本実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物は、下記一般式(1)で表され、ピリミジン環上の4位、5位および6位がそれぞれ特定の置換基(-OR、-CF3、-F)を有している。さらに、一般式(1)で表される含フッ素縮環ピリミジン化合物は、所定の環式成分が縮合された縮環構造を有しており、具体的には、ピリミジン環上の一方の窒素原子と2つの窒素原子の間に存在する炭素原子とともに環式成分が縮合されている。
【0020】
【0021】
Rは、炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、直鎖状炭化水素基であっても、分岐した鎖状炭化水素基であってもよい。Rが芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は合計の炭素数が6~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。Rが脂環式炭化水素基である場合、脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0022】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、ter-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0023】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0024】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0025】
Rは、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素縮環ピリミジン化合物の原料である一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0026】
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表す。また、XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q1を形成していてもよく、YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q2を形成していてもよい。XおよびYが環Q1を形成せず、YおよびZが環Q2を形成しない場合、X、YおよびZの少なくとも1つが窒素原子であることが好ましい。また、X、YおよびZがそれぞれ炭素原子である場合、各炭素原子は置換基を有しても、置換基を有さなくてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアリール基、F、Cl、Br、I,NO2、CF3、CN、NH2、OH、SH等が挙げられる。
【0027】
環Q1および環Q2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表す。ここで、π電子数は環中のπ電子数を意味し、単環または縮合環は、ヒュッケル則に基づくπ電子数が6個、10個または14個の芳香族性を示す環状化合物を意味する。このような単環および縮合環として、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。また、環Q1および環Q2の一方または両方がヘテロ原子を含む複素環であってもよい。ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子のいずれであってもよい。また、複素環はこれらのうちのいずれか1つのヘテロ原子を有していてもよく、同一のまたは異なる複数のヘテロ原子を有していてもよい。環Q1および環Q2の一方または両方が複素環である場合、このような複素環として、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、キノリン等が挙げられ、これらの異性体であってもよい。これらのうち、含フッ素縮環ピリミジン化合物の原料である一般式(3)で表される化合物またはその塩を容易に調製することができる観点から、環Q1および環Q2の一方または両方がベンゼンであることが好ましく、いずれか一方がベンゼンであることがより好ましい。
【0028】
本実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物は、ピリミジン環の4位、5位および6位上に特定の置換基(-OR、-CF3、-F)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができ、特に、所望の生物活性(例えば、各種酵素、細胞の阻害活性、各種菌の抗菌活性)を期待することができ、例えば、イネいもち病等の病原菌の防除活性を期待できる。また、ピリミジン環上の4位および6位の置換基は異なる基(-ORと-F)であるため、非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待できる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素縮環ピリミジン化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素縮環ピリミジン化合物を反応させることにより-Fを修飾して誘導体を得ることができる。さらに、本実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物は、例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野においても有用である。
【0029】
(含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法)
本実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法は、(a)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化5】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。)
【0030】
一般式(2)において、Rは、上述した一般式(1)で表される化合物において定義したものと同じであり、一般式(3)において、X、Y、Z、環Q1および環Q2のそれぞれは、上述した一般式(1)で表される化合物において定義したものとそれぞれ同じである。
【0031】
上記一般式(2)において、Rは、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。一般式(2)におけるRは、例えば、上述した一般式(1)で定義されるRの中で炭素数が1~10のアルキル基とすることができる。
【0032】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との上記(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化6】
【0033】
反応式(A)において、一般式(3)で表される化合物は、それぞれ塩の形態であってもよい。一般式(3)で表される化合物が塩の形態である場合、例えば、一般式(3)で表される化合物のアミノ基を構成する部分(-NH2および-NH-)のうち少なくとも一方の部分がカチオン化されて(-NH3
+)および(-NH2
+-)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0034】
本実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法では、例えば、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で上記(a)の反応を一段階で行うことができる。そのため、簡易的に上記一般式(1)で表される含フッ素縮環ピリミジン化合物を得ることができる。上記(a)の反応では、一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物のアミノ基との間で環状のピリミジン構造が形成されるともに、該ピリミジン構造に一般式(3)で表される化合物の環式成分が縮合されることにより、一般式(1)で表される縮環構造を有する含フッ素縮環ピリミジン化合物が合成される。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来する-OR、CF3およびFが位置する。
【0035】
ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)の反応式において一般式(3)で表される化合物中のアミノ基に由来する水素原子と、一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウム等の無機化合物、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセン、ジアザビシクロオクタン等の有機窒素誘導体、およびホスファゼン塩基等のリン誘導体を用いることができる。
【0036】
上記(a)の反応により含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われてもよい。一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤として、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムまたはテトラメチルアンモニウムのカチオンと、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸またはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸のアニオンとの塩の存在下で反応させることが好ましい。これらの中でも、カリウム塩またはナトリウム塩の使用が好ましく、ナトリウム塩の使用がより好ましい。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出されることで反応が促進され、これにより、高い収率で、一般式(1)で表される含フッ素縮環ピリミジン化合物を得ることができると考えられる。
【0037】
上記(a)の反応における反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。また、上記(a)の反応における反応時間は、0.5~48時間が好ましく、1~36時間がより好ましく、2~12時間がさらに好ましい。
【0038】
上記(a)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン等の非プロトン性極性溶媒、または、水等のプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエンおよびジエチルエーテル等の非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(a)の反応の触媒として、任意に、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0039】
他の実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法は、(b)下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素縮環ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化7】
(上記一般式(1)、(3)または(4)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Wは、ハロゲン原子、-OA
1、-SO
mA
1(mは0~3の整数である)または-NA
1A
2を表し、
X、YおよびZは、それぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表し、
XおよびYは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
1を形成していてもよく、
YおよびZは、互いに結合する炭素原子または窒素原子とともに環Q
2を形成していてもよく、
環Q
1および環Q
2は、構成するπ電子数が6個、10個または14個の、単環または縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【0040】
一般式(4)において、Rは、上述した一般式(1)で表される化合物において定義したものと同じであり、一般式(3)において、X、Y、Z、環Q1および環Q2のそれぞれは、上述した一般式(1)で表される化合物において定義したものとそれぞれ同じである。
【0041】
一般式(4)において、Rは、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。一般式(4)におけるRは、例えば、上述した一般式(1)で表される化合物において定義したRの中で炭素数が1~10のアルキル基とすることができる。
【0042】
Wにおいて、ハロゲン原子は、F、Cl、BrまたはIであり、FまたはClであることが好ましい。
【0043】
Wにおいて、-OA1、-SOmA1に含まれるA1は、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基である。A1が炭素数1~10の炭化水素基である場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。また、mは0~3の整数であり、0~1の整数であることが好ましい。
【0044】
Wにおいて、-NA1A2に含まれるA1およびA2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基である。A1およびA2は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。A1およびA2が炭素数1~10の炭化水素基である場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0045】
一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との上記(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化8】
【0046】
上記反応式(B)において、一般式(3)で表される化合物は、それぞれ塩の形態であってもよい。一般式(3)で表される化合物が塩の形態である場合、例えば、一般式(3)で表される化合物のアミノ基を構成する部分(-NH2および-NH-)のうち少なくとも一方の部分がカチオン化されて(-NH3
+)および(-NH2
+-)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0047】
他の実施形態における含フッ素縮環ピリミジン化合物の製造方法では、例えば、上記(b)の反応を一段階で行うことができる。そのため、簡易的に上記一般式(1)で表される含フッ素縮環ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記(b)の反応では、一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物のアミノ基との間で環状のピリミジン構造が形成されるともに、該ピリミジン構造に一般式(3)で表される化合物の環式成分が縮合されることにより、一般式(1)で表される縮環構造を有する含フッ素縮環ピリミジン化合物が合成される。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来する-OR、CF3およびFが位置する。
【0048】
上記(b)の反応における反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(b)の反応における反応時間は、0.5~48時間が好ましく、1~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。上記(b)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用してもよい。
【0049】
上記(b)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン等の非プロトン性極性溶媒、または、水等のプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエンおよびジエチルエーテル等の非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(b)の反応の触媒として、任意に、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。また、特に言及がない限り、室温とは20℃±5℃の範囲内であるとする。
【0052】
(実施例1)
5-フルオロ-7-メトキシ-6-(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-a]ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン40gに、2-アミノイミダゾール硫酸塩1.0g(3.8mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド9.7g(30mmol)を溶かし、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン2.1g(10mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン5.0g(39mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記の式(5)で示される化合物(化学式:C8H5F4N3O、分子量:235.14g/mol)0.7gを得た。得られた化合物の単離収率は39%であった。
【0053】
【0054】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):235([M]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:7.68(d,1H)、7.06(d,1H)、3.78(s,3H)
【0055】
(実施例2)
7-フルオロ-5-メトキシ-6-(トリフルオロメチル)-[1,2,3]トリアゾロ[1,2-a]ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン40gに、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール塩酸塩1.0g(8.3mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド9.7g(33mmol)を溶かし、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン2.1g(10mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン5.6g(43mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記の式(6)で示される化合物(化学式:C7H5F4N4O、分子量:236.13g/mol)0.5gを得た。得られた化合物の単離収率は25%であった。
【0056】
【0057】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):236([M]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:7.52(s,1H)、3.79(s,3H)
【0058】
(実施例3)
4-フルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ピリミド[2,1-a]イソインドールの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン50gに、1H-イソインドール-3-アミン塩酸塩1.0g(6.0mmol)を溶かし、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン1.3g(6mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン5.0g(39mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、中間体を得た。得られた中間体0.4g(1.2mmol)を、寒剤冷却下、テトラヒドロフラン10gに溶かし、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド0.8g(2.4mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにtert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン1.0g(3.1mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液5gを滴下した。約10時間後、内容物のカラム精製を行い、下記の式(7)で示される化合物(化学式:C13H8F4N2O、分子量:284.21g/mol)90mgを得た。得られた化合物の単離収率は5%であった。
【0059】
【0060】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):284([M]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:7.55(m,3H)、7.35(m,2H)、3.65(s,3H)
【0061】
(実施例4)
4-フルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン40gに、2-アミノベンズイミダゾール トリフルオロ酢酸塩1.0g(4.0mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド5.1g(16mmol)を溶かし、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン1.0g(4.6mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン2.7g(21mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記の式(8)で示される化合物(化学式:C12H7F4N3O、分子量:285.20g/mol)0.2gを得た。得られた化合物の単離収率は18%であった。
【0062】
【0063】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):285([M]+)
1H-NMR(400MHz、CDCl3) δppm:8.68(m,2H)、7.57(m,2H)、4.07(s,3H)
【0064】
(実施例5)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、5-フルオロ-7-メトキシ-6-(トリフルオロメチル)イミダゾ[1,2-a]ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン40gに、2-アミノイミダゾール硫酸塩1.0g(3.8mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド12g(38mmol)を溶かし、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン2.3g(10mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン6.4g(49mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0065】
(実施例6)
実施例2の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、7-フルオロ-5-メトキシ-6-(トリフルオロメチル)-[1,2,3]トリアゾロ[1,2-a]ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン40gに、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール塩酸塩1.0g(8.3mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド13g(42mmol)を溶かし、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン2.3g(10mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン7.0g(54mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0066】
(実施例7)
実施例4の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、4-フルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン40gに、2-アミノベンズイミダゾール トリフルオロ酢酸塩1.0g(4.0mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド6.4g(20mmol)を溶かし、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン1.1g(4.6mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン3.4g(26mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温させた。約16時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例4の生成物と同様であった。
【0067】
尚、実施例5~7では、得られた化合物の単離収率は算出していないが、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンから、系中で1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンを生成させる過程で発生し得る副生成物に起因して、不純物の種類およびその量の増加が予測される。そのため、実施例1、2および4の製法の方が、対応する実施例5、6および7の製法と比較して、得られた生成物の単離収率が高いと考えられる。
【0068】
<生物活性の試験例>
イネいもち病に対する評価試験
実施例4で作製した4-フルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピリミジンをアセトンに溶かし、100000ppmの濃度になるように溶液を調製した。次いで、このアセトン溶液1mlに滅菌水を加え50mlとし、濃度2000ppmの被験液を調製した。また、別途用意した濃度2000ppmの被験液10mlに滅菌水を加え20mlとし、濃度1000ppmの被験液を調製した。濃度2000ppmの被験液および濃度1000ppmの被験液を、別途作製したオートミール培地に1000μlそれぞれ滴下し、風乾させた。続いて、直径8mmのイネいもち病ディスクを、菌叢がオートミール培地の処理面に接するように設置した。その後、オートミール培地を25℃の恒温室に7日間静置した後、菌糸の伸長長さを調査した。その結果を表1に示す。なお、防除価は、下記式にしたがって算出した。下記式において「無処理」とは、被験液としてアセトン1mlを滅菌水で50mlに希釈したものを作製し、培地に滴下処理したことを表す。また、「処理済」とは、設定濃度に希釈調整処理を行った被験液を培地に滴下処理したことを表す。
【0069】
【0070】
【0071】
表1に示されるように、本発明における含フッ素縮環ピリミジン化合物は、イネいもち病の病原菌に対して除菌活性を示し、生物活性を示す化合物として有効であることがわかる。