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特許7224574Ni-Zn-Cu系フェライト粉末、電子部品、アンテナ及びRFタグ
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  • 特許-Ni-Zn-Cu系フェライト粉末、電子部品、アンテナ及びRFタグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】Ni-Zn-Cu系フェライト粉末、電子部品、アンテナ及びRFタグ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/30 20060101AFI20230213BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20230213BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230213BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20230213BHJP
   H01F 1/36 20060101ALI20230213BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20230213BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C04B35/30
C01G49/00 E
C01G53/00 A
H01F1/34 140
H01F1/36
H01F27/255
H01F17/04 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019568974
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2019000916
(87)【国際公開番号】W WO2019150936
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018015929
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 吏志
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 純
(72)【発明者】
【氏名】西尾 靖士
(72)【発明者】
【氏名】中務 愛仁
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰彦
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078088(JP,A)
【文献】特開2008-117944(JP,A)
【文献】特開2013-133263(JP,A)
【文献】特開2015-074570(JP,A)
【文献】特開2002-134312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/20-35/46
C01G 49/00-49/08
C01G 53/00-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feを46~50mol%、NiOを30~40mol%、ZnOを1.0~10mol%、CuOを9.0~11mol%、及びCoOを0.01~1.0mol%含有し、含有するNiとZnとのモル比(Ni/Zn)が3.8~5.8であり、Biを含有しないことを特徴とするNi-Zn-Cu系フェライト粉末。
【請求項2】
構成相がスピネル型フェライトとNiOである請求項1に記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末。
【請求項3】
スピネル型フェライトの結晶子サイズが240nm以上である請求項2に記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末。
【請求項4】
60MHzでのμQ積が3500以上である請求項1~3のいずれかに記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末。
【請求項5】
請求項1又は2記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末と結合材料とを用いてシート状に成膜してなるグリーンシート。
【請求項6】
Feを46~50mol%、NiOを30~40mol%、ZnOを1.0~10mol%、CuOを9.0~11mol%、及びCoOを0.01~1.0mol%含有し、含有するNiとZnとのモル比(Ni/Zn)が3.8~5.8であるNi-Zn-Cu系フェライト焼結体。
【請求項7】
フェライトコアとコイルとで構成される電子部品であって、該フェライトコアが請求項6記載の焼結体である電子部品。
【請求項8】
請求項7記載の電子部品からなるアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ni-Zn-Cu系フェライト材料に関し、更に詳しくは、より高い周波数帯でも特性に優れたNi-Zn-Cu系フェライト材料を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用及び産業用等の電子機器の小型・軽量化が進んでおり、それに伴い、前述の各種電子機器に用いられる電子部品の小型化、高効率化、高周波数化のニーズが高まっている。
【0003】
例えば、パワーインダクタが高い周波数帯で作動することが想定されており、それに用いられるフェライト材料についても60MHzなどの高い周波数帯でも所望の特性が維持できることが要求されている。
【0004】
従来、高透磁率のコアに巻線した構造のインダクタンス部品において、特定組成のフェライトを用いることが記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-63826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載の技術では、数~数十MHzの比較的低周波数で使用するインダクタンス部品を得ることを目的とし実施例では120MHzのμ”が低いフェライトが記載されているが、60MHzの周波数帯では十分な特性が得られるものではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、60MHzなどの周波数帯でも所望の磁気特性を有するNi-Zn-Cu系フェライト粉末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0009】
すなわち、本発明は、Feを46~50mol%、NiOを30~40mol%、ZnOを1.0~10mol%、CuOを9.0~11mol%、及びCoOを0.01~1.0mol%含有し、含有するNiとZnとのモル比(Ni/Zn)が3.8~5.8であることを特徴とするNi-Zn-Cu系フェライト粉末である(本発明1)。
【0010】
また、本発明は、構成相がスピネル型フェライトとNiOである本発明1に記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末である(本発明2)。
【0011】
また、本発明は、スピネル型フェライトの結晶子サイズが240nm以上である本発明2に記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末である(本発明3)。
【0012】
また、本発明は、60MHzでのμQ積が3500以上である本発明1~3のいずれかに記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末である(本発明4)。
【0013】
また、本発明は、本発明1又は2記載のNi-Zn-Cu系フェライト粉末と結合材料とを用いてシート状に成膜してなるグリーンシートである(本発明5)。
【0014】
また、本発明は、Feを46~50mol%、NiOを30~40mol%、ZnOを1.0~10mol%、CuOを9.0~11mol%、及びCoOを0.01~1.0mol%含有し、含有するNiとZnとのモル比(Ni/Zn)が3.8~5.8であるNi-Zn-Cu系フェライト焼結体である(本発明6)。
【0015】
また、本発明は、フェライトコアとコイルとで構成される電子部品であって、該フェライトコアが本発明6記載の焼結体である電子部品である(本発明7)。
【0016】
また、本発明は、本発明7記載の電子部品からなるアンテナである(本発明8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、例えば、60MHzなどの高周波領域で優れた特性を示すので、パワーインダクタ用のフェライト粉末として好適である。
また、本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末を用いた電子部品は、μQ積が大きいので、高周波領域で優れた特性を示すので、各種電子部品として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る電子部品のコイル部分の構成図である。
図2】本発明に係る電子部品の積層構造を示す概念図である。
図3】本発明に係る電子部品の積層構造の別の態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末について述べる。なお、以下で説明する本発明のNi-Zn-Cu系フェライト粉末とは、粉末全体を定義するものであり、必ずしも粉末を構成するフェライトそのもののみを定義するものではない。Ni-Zn-Cu系フェライト粉末は、Ni-Zn-Cu系フェライトを主たる構成成分とするものであり、以下で説明するように、Ni-Zn-Cu系フェライトと他の成分との混合物であってもよい。
【0020】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、構成金属元素としてFe,Ni,Zn,Cu及びCoを含有する。構成金属元素それぞれを、Fe,NiO,ZnO,CuO及びCoOに換算したときに、Fe,NiO,ZnO,CuO及びCoOの合計(100%)を基準として、Feを46~50mol%、NiOを30~40mol%、ZnOを1.0~10mol%、CuOを9.0~11mol%及びCoOを0.01~1.0mol%含有する。
【0021】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末のFe含有量は、Fe換算で46~50mol%である。Fe含有量が46mol%未満の場合、μ’が小さくなり、Fe含有量が50mol%を超える場合は、焼結できなくなる。Feの含有量は好ましくは46.5~49.5mol%、より好ましくは47.0~49.0mol%である。
【0022】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末のNi含有量は、NiO換算で30~40mol%である。Ni含有量が30mol%未満の場合、60MHzなどの高周波領域でμ”が高くなり、μQ積が低下するため好ましくない。Ni含有量が40mol%を超える場合は、μ’が低下するため好ましくない。Ni含有量は好ましくは30.5~39.5mol%、より好ましくは31~39mol%である。
【0023】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末のZn含有量は、ZnO換算で1.0~10mol%である。Zn含有量が1.0mol%未満の場合、μ’が低下するため好ましくない。Zn含有量が10mol%を超える場合は、μ”が大きくなる。Zn含有量は好ましくは1.5~9.5mol%、より好ましくは2~9mol%である。
【0024】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末のCu含有量は、CuO換算で9.0~11mol%である。Cu含有量が9.0mol%未満の場合、焼結性が低下し、低温で焼結体を製造することが困難になる。Cu含有量が11mol%を超える場合は、μ’が低下するため好ましくない。Cuの含有量は好ましくは9.1~10.9mol%、より好ましくは9.2~10.8mol%である。
【0025】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末のCo含有量は、CoO換算で0.01~1.0mol%である。本発明においては、フェライトがCoを含有することによって、スネークの限界線が高周波数側にシフトするため、高周波数域(例えば13.56MHz)における複素透磁率の虚数部μ”に対する実数部μ’の比であるフェライトコアのQ(μ’/μ”)を向上させることが出来る。ただし、Co含有量が、CoO換算で1.0mol%を超えると、透磁率が低下し、フェライトコアのQも低下する傾向がある。Co含有量は好ましくは0.05~0.95mol%、より好ましくは0.10~0.90mol%である。
【0026】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、含有するNiとZnとのモル比(Ni/Zn)は3.8~5.8である。NiとZnとのモル比をこの範囲に調整することにより、60MHzなどの高周波領域で高いμQ積を得ることができる。好ましくはZnとNiのモル比が3.75~5.75、より好ましくは3.73~5.73、さらにより好ましくは3.70~5.70である。
【0027】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、含有するNiとCuとのモル比(Ni/Cu)は3.0~3.4であることが好ましい。NiとCuのモル比をこの範囲に調整することにより、60MHzなどの高周波領域で高いμQ積を得ることができる。より好ましくはNiとCuとのモル比が3.05~3.35、さらにより好ましくは3.10~3.30である。
【0028】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、含有するCuとZnとのモル比(Cu/Zn)は1.0~1.5であることが好ましい。CuとZnのモル比をこの範囲に調整することにより、60MHzなどの高周波領域で高いμQ積を得ることができる。より好ましくはCuとZnとのモル比が1.05~1.45、さらにより好ましくは1.1~1.40である。
【0029】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、その特性に影響を及ぼさない範囲で前記元素のほかに不純物レベルの種々の元素を含んでいてもよい。一般的に、Biを添加することはフェライトの焼結温度の低温化の効果があると知られている。しかし、本発明における低温化や結晶組織の制御についてはZnとNiのモル比(Zn/Ni)とCuの含有量により調整しているため、添加によって焼結温度のさらなる低温化の効果が期待できるが、結晶組織の微細化もさらに促進され、μ’の低下あるいは、μQ積の低下が起こる可能性が高く、積極的なBi添加は好ましくなく、0ppmであることが好ましい。
【0030】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、不可避的な不純物としてSiをSiO換算で300ppmを上限として含有してもよい。Snなどは含有しないことが好ましい(0ppm)。
【0031】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、その構成相が実質的にスピネル型フェライトとNiOのみであることが好ましい。すなわち、Fe,Ni,Zn,Cu及びCoそれぞれが1体化して形成されたスピネル型フェライトと、1体化して形成されたスピネル型フェライト以外に存在するNiOとの混合物であることが好ましい。本発明における組成において、構成相がスピネル型フェライトだけのものを得ることは60MHzなどの高周波領域でμ”が高くなり、μQ積が低下するため好ましくない。また、スピネル型フェライトとNiO以外の相、例えば、ヘマタイト(Fe)が存在する場合には60MHzなどの高周波領域でμQ積が低下するため好ましくない(すなわち、ヘマタイト(Fe)が存在しないことが好ましい)。
【0032】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末を構成するスピネル型フェライトとNiOのうち、スピネル型フェライトを90wt%以上含有する(NiOを10wt%以下で、0wt%を超えて含有する)ことが好ましい。スピネル型フェライトの含有量が90wt%未満では、所望の透磁率を得ることが困難となる。構成相の同定及び含有割合の確認はX線回折に基づいて後述する方法で算出した。
【0033】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、その構成相のうち、スピネル型フェライトについて測定した結晶子サイズが240nm以上が好ましい。本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末の結晶子サイズを前記範囲内に制御することによってμ’を高くすることができる。結晶子サイズは242~300nmであることがより好ましい。
【0034】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、その構成相のうち、スピネル型フェライトについて格子定数が8.365Å以上であることが好ましい。本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末の格子定数を前記範囲に制御することによってμ’を高くすることができる。格子定数は8.366Å以上がより好ましい。
【0035】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、その構成相のうち、スピネル型フェライトについて歪が0.325~0.400であることが好ましい。本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末の歪を前記範囲に制御することによってμ’を高くすることができる。歪は0.326~0.390であることがより好ましい。
【0036】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、13.56MHzでのμ’は20~50が好ましく、μ”は0.1~0.5が好ましく、Q値は100~300が好ましく、μQ積が4500~10000であることが好ましい。
また、60MHzでのμ’は20~60が好ましく、μ”は0.1~0.5が好ましく、Q値は40~200が好ましく、μQ積が3500以上、より好ましくは3800~10000であることが好ましい。
【0037】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末は、常法により、フェライトを構成する各元素の酸化物、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩等の原料を所定の組成割合で混合して得られた原料混合物、又は、水溶液中で各元素を沈殿させて得られた共沈物を、大気中において650~950℃の温度範囲で1~20時間仮焼成した後、粉砕することにより得ることができる。
【0038】
次に、本発明に係るグリーンシートについて述べる。
【0039】
グリーンシートとは、上記Ni-Zn-Cu系フェライト粉末を結合材料、可塑剤及び溶剤等と混合することによって塗料とし、該塗料をドクターブレード式コーター等で数μmから数百μmの厚さに成膜した後、乾燥してなるシートである。このシートを重ねた後、加圧することで積層体とし、該積層体を所定の温度で焼結させることでインダクタンス素子を得ることができる。
【0040】
本発明に係るグリーンシートは、本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末を100重量部に対して結合材料を2~20重量部、可塑剤を0.5~15重量部含有する。好ましくは、結合材料を4~15重量部、可塑剤を1~10重量部含有する。また、成膜後の乾燥が不十分なことにより溶剤が残留していても良い。更に、必要に応じて粘度調整剤等の公知の添加剤を添加しても良い。
【0041】
結合材料の種類は、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステル、エチレンセルロース、アビエチン酸レジン等である。好ましい結合材料は、ポリビニルブチラールである。
【0042】
結合材料が2重量部未満の場合はグリーンシートが脆くなり、また、強度を持たす為には20重量部を越える含有量は必要ない。
【0043】
可塑剤の種類は、フタル酸ベンジル-n-ブチル、ブチルフタリルグリコール酸ブチル、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ポリエチレングリコール、フタル酸エステル、ブチルステアレート、メチルアジテート等である。
【0044】
可塑剤が0.5重量部未満の場合はグリーンシートが固くなり、ひび割れが生じやすくなる。可塑剤が15重量部を越える場合はグリーンシートが軟らかくなり、扱いにくくなる。
【0045】
本発明に係るグリーンシートの製造においては、Ni-Zn-Cu系フェライト粉末100重量部に対して15~150重量部の溶剤を使用する。溶剤が上記範囲外である場合は、均一なグリーンシートが得られないので、これを焼結して得られるインダクタンス素子は特性にバラツキのあるものとなりやすい。
【0046】
溶剤の種類は、アセトン、ベンゼン、ブタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸n-ブチル、3メチル-3メトキシ-1ブタノール等である。
【0047】
積層圧力は、0.2×10~0.6×10t/mが好ましい。
【0048】
次に、本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト焼結体について述べる。
【0049】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト焼結体は、本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末を金型を用いて、0.3~3.0×10t/mの圧力で加圧する、所謂、粉末加圧成型法により得られた成型体、又は、本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト粉末を含有するグリーンシートを積層する、所謂、グリーンシート法により得られた積層体を850~1050℃で1~20時間、好ましくは1~10時間焼結することによって得ることができる。成型方法としては、公知の方法を使用できるが、上記粉末加圧成型法やグリーンシート法が好ましい。
【0050】
焼結温度が850℃未満であると、焼結密度が低下する為、焼結体の機械的強度が低くなる。焼結温度が1050℃を越える場合には、焼結体に変形が生じやすくなる為、所望の形状の焼結体を得ることが困難になる。より好ましい焼結温度は880~1020℃である。
【0051】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト焼結体は、所定の形状とすることによって、インダクタンス素子用の磁性材料として用いることができる。
【0052】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト焼結体は、板状にして用いることができる。
【0053】
本発明におけるフェライト焼結板の厚さは、0.01~1mmが好ましい。より好ましくは0.02~1mmであり、更に好ましくは0.03~0.5mmである。
【0054】
本発明におけるフェライト焼結板の少なくとも一方の表面には粘着層を設けることができる。粘着層の厚みは0.001~0.1mmが好ましい。
【0055】
本発明におけるフェライト焼結板の少なくとも一方の表面には保護層を設けることができる。保護層の厚みは0.001~0.1mmが好ましい。
【0056】
本発明におけるフェライト焼結シートのμ’は、80~300が好ましい。更に好ましくは90~290、更により好ましくは110~280である。
【0057】
本発明におけるフェライト焼結シートのμ”は、0.05~15が好ましい。更に好ましくは0.06~10である。更に好ましくは0.07~5.0である。
【0058】
本発明における粘着層としては、両面粘着テープが挙げられる。両面粘着テープとしては、特に制限されるものではなく、公知の両面粘着テープを使用し得る。また、粘着層として、フェライト焼結板の片面に粘着層、屈曲性且つ伸縮性のフイルム又はシート、粘着層および離型シートを順次積層したものであってもよい。
【0059】
本発明における保護層は、これを設けることによりフェライト焼結板を分割した場合の粉落ちに対しての信頼性及び耐久性を高めることができる。該保護層としては、フェライト焼結シートを屈曲させた場合に破断することなく伸びる樹脂であれば特に制限されるものではなく、PETフィルム等が例示される。
【0060】
本発明におけるフェライト焼結シートは、屈曲した部分に密着させて貼付する為と、使用時に割れることを防ぐ為に、予め、フェライト焼結板の少なくとも一方の表面に設けられた少なくとも1つの溝を起点としてフェライト焼結板が分割可能に構成されてもよい。前記溝は連続していても、断続的に形成されていてもよく、また、多数の微小な凹部を形成することで、溝の代用とすることもできる。溝は断面がU字型又はV字型が望ましい。
【0061】
本発明におけるフェライト焼結シートは、屈曲した部分に密着させて貼付する為と、使用時に割れることを防ぐ為に、予め、フェライト焼結板を小片状に分割しておくことが好ましい。例えば、予め、フェライト焼結板の少なくとも一方の表面に設けられた少なくとも1つの溝を起点としてフェライト焼結板を分割したり、溝を形成することなくフェライト焼結板を分割して小片状とする方法のいずれでもよい。
【0062】
フェライト焼結板は、溝によって任意の大きさの三角形、四辺形、多角形またはそれらの組合せに区分される。例えば、三角形、四辺形、多角形の1辺の長さは、通常1~12mmであり、被付着物の接着面が曲面の場合は、好ましくは1mm以上でその曲率半径の1/3以下、より好ましくは1mm以上で1/4以下である。溝を形成した場合、溝以外の場所で不定形に割れることなく、平面は勿論、円柱状の側曲面および多少の凹凸のある面に密着または実質的に密着することが出来る。
【0063】
フェライト焼結板に形成する溝の開口部の幅は、通常250μm以下が好ましく、より好ましくは1~150μmである。開口部の幅が250μmを超える場合は、フェライト焼結板の透磁率の低下が大きくなり好ましくない。また、溝の深さは、フェライト焼結板の厚さの通常1/20~3/5である。なお、厚さが0.1mm~0.2mmの薄い焼結フェライト板の場合、溝の深さは、焼結フェライト板の厚さの好ましくは1/20~1/4、より好ましくは1/20~1/6である。
【0064】
本発明に係るNi-Zn-Cu系フェライト焼結体は、所定の形状とすることによって、アンテナ用の磁性材料として用いることができる。
【0065】
本発明に係るアンテナは、例えば、RFIDタグ用途に用いられ、フェライトコアの13.56MHzにおける複素透磁率の実数部μ’が、80以上であることが好ましい。80を下回ると、所望のQ及びμQ積が得られず、アンテナにおいて優れた交信特性が得られない。より好ましくは100以上であり、さらにより好ましくは110以上である。
【0066】
また、本発明に係るアンテナは、フェライトコアの13.56MHzにおける複素透磁率の虚数部μ”が、2以下であることが望ましい。2を超える場合では、僅かな周波数のずれによりμ”が急激に増加するため、Qが低下し、アンテナにおいて優れた交信特性が得られない。より好ましくは1.5以下であり、さらにより好ましくは1.0以下である。
【0067】
本発明に係るアンテナは、フェライトコアの13.56MHzにおける複素透磁率の虚数部μ”に対する実数部μ’の比であるフェライトコアのQ(μ’/μ”)が50~170であることが好ましい。フェライトコアのQ(μ’/μ”)が50を下回る場合、アンテナの交信距離が短くなり、アンテナに適さなくなる。フェライトコアの13.56MHzにおけるQ(μ’/μ”)は、より好ましくは70~165であり、さらにより好ましくは80~160である。
【0068】
本発明に係るアンテナは、フェライトコアの13.56MHzにおける複素透磁率の実数部μ’とフェライトコアのQの積であるμQ積が、9000以上であることが好ましい。9000未満では、優れた交信特性を得られない。μQ積はより好ましくは10000以上であり、さらにより好ましくは12000以上である。
【0069】
本発明に係る電子部品は、フェライトコアの外側に、フェライトコアを巻回する導体からなるコイルを備えている。該コイルは、インダクタンスなどの電気特性のバラつきを抑えるため、あるいは生産性の観点からフェライトコアとなるフェライト基材とコイルとなる導電材料とが一体焼成されて導体がフェライトコアの外側に密着していることが好ましい。すなわち、本発明における電子部品はフェライトコアとコイルとを有する焼結体からなることが好ましい。
【0070】
コイルを構成する導体は、AgまたはAg系合金、銅または銅系合金等の金属を用いることができ、AgまたはAg系合金であることが好ましい。
【0071】
本発明に係る電子部品は、フェライトコアの外側に導体からなるコイルを備えている一方又は両方の外側面に絶縁層を備えていることが好ましい。絶縁層を設けることによってコイルが保護されて安定に動作する品質の均質な電子部品が得られる。
【0072】
本発明に係る電子部品は、絶縁層として、Zn系フェライトなどの非磁性フェライト、ホウケイ酸系ガラス、亜鉛系ガラス又は鉛系ガラス等のガラス系セラミック、あるいは非磁性フェライトとガラス系セラミックを適量混合したものなどを用いることができる。
【0073】
絶縁層に非磁性フェライトとして使用するフェライトには、焼結体の体積固有抵抗が10Ωcm以上になるようなZn系フェライト組成を選択するとよい。例えば、Fe が45.0~49.5mol%、ZnOが17.0~45.0mol%、CuOが4.5~15.0mol%である組成が好ましい。
【0074】
絶縁層がガラス系セラミックである場合、使用するガラス系セラミックには、線膨張係数が使用する磁性体の線膨張係数と大きく異ならない組成を選択するとよい。具体的には磁性体として用いる磁性フェライトの線膨張係数との差が±5ppm/℃以内の組成である。
【0075】
本発明に係る電子部品は、フェライトコア上のコイルの外側に絶縁層を介して導電層を備えていてもよい。導電層を設けることによってアンテナに金属物が近づいてもアンテナの共振周波数の変化が小さくなり、安定に動作する品質の均質なアンテナが得られる。
【0076】
本発明に係る電子部品は、導電層として、金属層を設けることができ、抵抗の低いAgまたはAg系合金による金属の薄層であることが好ましい。
【0077】
本発明に係る電子部品は、前記の絶縁層や導電層が、フェライトコアとなるフェライト基材と導体となる導電材料と共に一体焼成されてフェライトコアに密着した焼結体であることが好ましい。
【0078】
本発明によって得られるような、小型で高感度のアンテナは、ウェアラブル機器への適用が望まれており、その場合、アンテナのサイズは1cm角以下且つ高さ1cm以下である事が望ましい。
【0079】
本発明におけるRFタグは、前記アンテナにICチップを接続したものである。本発明におけるRFタグは、樹脂によって被覆されていても特性を損なうことなく、アンテナ及び接続されたICチップが保護されて、安定に動作する品質のRFタグが得られる。
【0080】
本発明に係る電子部品の製造方法について述べる。
【0081】
本発明に係る電子部品は、フェライトコアを巻回するようにコイルを設けることができる種々の方法によって製造することができる。ここでは、シート状のフェライト基材と導電材料とを所望の構成となるように積層した後に一体焼成して作る、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics、低温共焼成セラミックス)技術によるアンテナの製造方法について説明する。
【0082】
図1及び図2に示すようなアンテナの積層構成を例に説明する。
【0083】
まず、磁性粉末及びバインダーを混合した混合物をシート状にしたフェライト基材を形成する。
【0084】
磁性粉末としては、構成金属元素としてFe,Ni,Zn,Cu及びCoを含有し、構成金属元素それぞれを、Fe,NiO,ZnO,CuO及びCoOに換算したときに、Fe,NiO,ZnO,CuO及びCoOの合計を基準として、Feを46~50mol%、NiOを20~27mol%、ZnOを15~22mol%、CuOを9~11mol%、及びCoOを0.01~1.0mol%含有するフェライト仮焼粉を用いることができる。
【0085】
次に、フェライト基材からなる磁性層(5)を全体の厚みが所望の厚さとなるように積層する。図1に示すように、磁性層(5)の積層体に所望の数のスルーホール(1)を開ける。前記スルーホール(1)のそれぞれに導電材料を流し込む。また、磁性層(5)の積層体のスルーホール(1)と直角になる両面に、スルーホール(1)と接続してコイル状(巻き線状)となるように電極層(2)を形成する。スルーホール(1)に流し込んだ導電材料と電極層(2)によって、磁性層(5)の積層体が直方体のコアとなるようにコイル(4)を形成する。このとき、コイル(4)を形成する磁性層の両端が磁性回路上開放となる構成となる。
【0086】
スルーホール(1)に流し込む、又は電極層(2)を形成する導電材料としては、金属系導電性ペーストを使用することができ、AgペーストやAg系合金ペーストが適している。
【0087】
得られたシート状の積層体を、所望の形状となるように、スルーホール(1)を含む面とコイル開放端面(4-2)で切断して一体焼成する、又は一体焼成後にスルーホール(1)を含む面とコイル開放端面(4-2)で切断することによってフェライトコア(3)とコイル(4)とを有する焼結体からなる本発明のアンテナを製造することができる。
【0088】
前記積層体の焼成温度は800℃~1000℃であり、好ましくは850℃~920℃である。前述の範囲より温度が低い場合は、μ’やQなどにおいて望ましい特性が得られにくくなり、また高い温度の場合は、一体焼成が困難になる。
【0089】
また、本発明においては電極層(2)を形成した磁性層(5)の上下面に絶縁層(6)を形成することができる。絶縁層(6)を形成したアンテナの概略図を図2に示す。
【0090】
また、本発明におけるアンテナは、絶縁層(6)の表面に導電材料でコイルリード端子とICチップ接続端子を形成し、ICを実装してもよい。
【0091】
前記ICチップ接続端子を形成したアンテナは、電極層(2)を形成した磁性層(5)の少なくとも一方の面に形成された絶縁層(6)にスルーホールを設け、このスルーホールに導電材料を流し込み、コイル(4)の両端と接続し、該絶縁層(6)の表面に導電材料でコイルリード端子とICチップ接続端子を並列若しくは直列に接続できるよう形成して一体焼成して得ることができる。
【0092】
また、本発明に係るアンテナは、図3に示すように絶縁層(6)の外側に導電層(7)を設けてもよい。アンテナがコイル(4)を形成する磁性層(5)に絶縁層(6)を介して導電層(7)を備えることによって、金属面に貼り付けても共振周波数の変化が少なく、コイルが直接金属面に触れないことによって、安定に動作する品質の均質なアンテナが得られる。
【0093】
また、本発明に係るアンテナは、図3に示すように導電層(7)の外側面にさらに絶縁層(6)を設けてもよい。さらに、当該絶縁層(6)の外側面に、磁性層(5)又は磁性層(5)とその外側面に絶縁層(6)を設けてもよい。これによって、アンテナに金属物が近づいてもアンテナの特性変化がより小さくなり、共振周波数の変化をより小さくすることができる。
【0094】
導電層(7)はどのような手段で形成されても良いが、例えば、ペースト状の導電材料によって絶縁層(6)上に印刷、刷毛塗り等の通常の方法で形成することが好ましい。あるいは、金属板を絶縁層(6)の外側に貼り付けて同様の効果を付与することも出来る。
【0095】
導電層(7)を形成するペースト状の導電材料としては、金属系導電性ペーストを使用することができ、AgペーストやAg系合金ペーストが適している。
【0096】
導電層(7)を絶縁層の外側に形成する場合、導電層(7)の膜厚は焼成後の膜厚で0.001~0.1mmが製造上好ましい。
【0097】
また、本発明におけるアンテナは、コイル(4)の上下面を挟み込んだ絶縁層(6)の一方あるいは両方の外側面にコンデンサー電極を配置してもよい。
【0098】
なお、アンテナは、絶縁層(6)の上面に形成するコンデンサーを、平行電極若しくはくし型電極を印刷してコンデンサーとしてもよく、更に、該コンデンサーとコイルリード端子とを並列もしくは直列に接続してもよい。
【0099】
また、本発明に係るアンテナは、絶縁層(6)上面に可変コンデンサーを設ける端子を形成し、コイルリード端子とコイルリード端子とを並列若しくは直列に接続してもよい。
【0100】
また、絶縁層(6)上面にコンデンサー電極を配置した外側面にさらに絶縁層(6)を設け、該絶縁層(6)の外側面にICチップ接続端子を兼ねる電極層を形成して該絶縁層(6)を挟みこむようにコンデンサーを形成し、ICチップ接続端子と並列もしくは直列に接続してもよい。
【0101】
本発明に係るアンテナは、コイル(4)の下面の絶縁層(6)にスルーホール(1)を設け、そのスルーホールに導電材料を流し込み、コイル(4)の両端と接続し、その下表面に導電材料で基板接続端子を形成して一体焼成してもよい。その場合、セラミック、樹脂等の基板に容易に接合することができる。
【0102】
ICチップは、絶縁層上にICチップ接続端子を形成して接続しても良いし、アンテナの下面の基板接続端子に接続するように基板内に配線を形成して、基板内配線を介して接続しても良い。ICチップを接続することで、本発明におけるアンテナをRFタグとして利用することができる。
【0103】
また、本発明におけるRFタグは、ポリスチレン、アクリルニトリルスチレン、アクリルニトリルブタジェンスチレン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、塩化ビニル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂によって被覆されていても良い。
【0104】
<作用>
本発明に係るアンテナは、フェライトコアがFe,Ni,Zn,Cu及びCoを、それぞれ、Fe,NiO,ZnO,CuO及びCoOに換算したときに、Fe,NiO,ZnO,CuO及びCoOの合計を基準として、Feを46~50mol%、NiOを30~40mol%、ZnOを1.0~10mol%、CuOを9.0~11mol%、及びCoOを0.01~1.0mol%含有する磁性体であって、13.56MHz及び60MHzにおけるQ及びμQ積が高いものである。
【0105】
本発明に係るフェライト粉末を用いて作製したアンテナは、フェライト粉末が上記特性を有するので、アンテナの交信感度を向上させることができる。
【実施例
【0106】
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0107】
[フェライト組成の測定]
上述のフェライトコア用のフェライト仮焼粉の組成は、多元素同時蛍光X線分析装置 Simultix 14((株)リガク)を用いて測定した。
【0108】
[結晶相の同定・定量]
フェライトを構成する結晶相は、D8 ADVANCEを用いて評価した。
【0109】
[結晶子サイズ、格子定数]
フェライトの結晶子サイズ及び格子定数は、前記X線回折と同様にして、D8 ADVANCEを用いて、TOPASソフトウェアVer.4にて評価した。
【0110】
[フェライトコアの磁気特性の測定]
上述のフェライトコア用のフェライト仮焼粉15g及び6.5%希釈したPVA水溶液1.5mLを混合した粉末を、外径20mmφ、内径10mmφの金型に投入し、プレス機にて、1ton/cmで圧縮し、アンテナを製造する場合と同様の条件である900℃で2時間焼成する事で、初透磁率、Q、μQ積を測定するためのフェライトのリングコアを得た。
【0111】
リングコアの透磁率、Q、μQ積は、インピーダンス/マテリアルアナライザーE4991A(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いて13.56MHzの周波数において測定した。
【0112】
実施例1:
Ni-Zn-Cu-Coフェライトの組成が、所定の組成になるように各酸化物原料を秤量し、湿式混合を行った後、混合スラリーを濾別・乾燥して原料混合粉末を得た。該原料混合粉末を830℃で2時間焼成して得られた仮焼成物を振動ミルで粉砕し、本発明に係るNi-Zn-Cu-Coフェライト粉末を得た。
【0113】
得られたNi-Zn-Cu-Coフェライト粉末100重量部に対して、PVA(ポリビニルアルコール)10重量部を添加混合した後、該粉末3.5gを秤量し、金型を用いて外径20mm、内径12mm、高さ5mmに加圧成型(プレス圧1.0×10t/m )した。この成型体を焼結温度900℃において、2時間焼結して得られるフェライト焼結体の磁気特性を表1に記載した。
【0114】
得られたNi-Zn-Cu-CoフェライトのXRDによる評価では、スピネルフェライトを主相としNiOの存在も確認できた。その割合はスピネルフェライトが96.04%、NiOが3.96%であった。スピネルフェライトについての結晶子サイズは243nm、格子定数は8.36910Åであった。
【0115】
実施例2~4、比較例1~6
組成範囲を種々変更した以外は実施例1と同様にしてNi-Zn-Cu-Coフェライト粉末を得た。得られたNi-Zn-Cu-Coフェライト粉末の諸特性を表1、2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
[実施例5 アンテナの製造]
実施例3のNi-Zn-Cuフェライト仮焼粉100重量部、ブチラール樹脂8重量部、可塑剤5重量部、溶剤80重量部をボールミルで混合しスラリーを製造した。出来たスラリーをドクターブレードでPETフィルム上に150mm角で、焼結時の厚みが0.1mmになるようにシート成型して、磁性層(5)用グリーンシートとした。このグリーンシートを用い、焼成温度900℃で焼結して得られるフェライトコアの磁気特性については表1に記載した。
【0119】
また、Zn-Cuフェライト仮焼粉(Fe 46.5mol%、ZnO 42.0mol%、CuO 11.5mol%)100重量部、ブチラール樹脂8重量部、可塑剤5重量部、溶剤80重量部をボールミルで混合しスラリーを製造した。出来たスラリーをドクターブレードでPETフィルム上に磁性層(5)用グリーンシートと同様のサイズと厚みでシート成型して、絶縁層(6)用グリーンシートとした。
【0120】
次に、磁性層(5)用グリーンシート10枚の所定の位置にスルーホール(1)を開けその中にAgペーストを充填し、電極層(2)を設ける面にはAgペーストを用いて電極のパターンを印刷した。これら10枚のグリーンシートを積層し、導電材料が積層されたグリーンシートの外側にコイル状に形成された積層体を形成した。積層体の電極層となる導電材料が印刷された面の上に絶縁層(6)用グリーンシートを積層した。
【0121】
積層したグリーンシートをまとめて加圧接着させ、スルーホール(1)を分割する面とコイル開放端面(4-2)とで切断し、900℃で2時間一体焼成して、横10mm×縦3mmのサイズのコイル巻き数23ターンの、フェライトコアとコイルとを有する焼結体からなるアンテナを作成した(図2ではコイル巻き数は図の簡略化のため、7ターンで表示している。また、磁性層(5)の積層枚数は図の簡略化のため3層で表している。以下の他の図についても同様である。)。
【0122】
[交信距離の測定]
該アンテナのコイル両端にRFタグ用ICを接続してさらにICと並列にコンデンサーを接続して、交信距離が最大となるように共振周波数を調整してRFタグを作製し、出力100mWのリーダ/ライタ(株式会社タカヤ製、製品名TR3-A201/TR3-D002A)のアンテナを水平に固定し、RFタグのアンテナのコイルの中心軸がリーダ/ライタのアンテナの中心上に垂直に向くように位置させて、交信が可能な限り高い位置の時のリーダ/ライタのアンテナとRFタグの間の距離を最長交信距離とした。
【0123】
比較例2で製造したアンテナの最長交信距離を基準に、他の例のアンテナの最長交信距離の相対値を百分率で計算した。
【0124】
実施例1のNi-Zn-Cu-Coフェライト粉末を用いたアンテナでは103%、実施例2では104%、実施例3では109%、実施例4では113%であった。
【0125】
本発明の実施例及び比較例において、同じ大きさと構造を持つアンテナのフェライトコアの組成を種々変更した結果、本発明において規定する組成のとき、交信感度の向上が見られた。
【0126】
本発明におけるアンテナはフェライトコアに使用するフェライトコアのQ(μ’/μ”)が高く、小型化と交信感度の向上を両立させたアンテナであることが確認された。
【符号の説明】
【0127】
1 スルーホール
2 電極層(コイル電極)
3 コア(磁性体)
4 コイル
5 磁性層
6 絶縁層
7 導電層
図1
図2
図3