(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】造形用着色紙粉
(51)【国際特許分類】
G09B 23/40 20060101AFI20230213BHJP
D21H 11/14 20060101ALI20230213BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G09B23/40
D21H11/14
D21H15/02
(21)【出願番号】P 2021113160
(22)【出願日】2021-05-29
【審査請求日】2022-01-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521298791
【氏名又は名称】株式会社Rose Grace
(74)【代理人】
【識別番号】100202290
【氏名又は名称】山口 幸久
(72)【発明者】
【氏名】和田 惠美子
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-120724(JP,U)
【文献】特開2011-045866(JP,A)
【文献】特開2016-041396(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0124485(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
G09B23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記着色液として、前記インクを水とエタノールの混合液で希釈したものを用いる請求項1記載の造形用着色紙粉の製造方法。
【請求項3】
前記攪拌をハンドミキサーを用いて行う請求項1記載の造形用着色紙粉の製造方法。
【請求項4】
前記攪拌を手もみにより行う請求項1記載の造形用着色紙粉の製造方法。
【請求項5】
前記攪拌を、ハンドミキサーと手もみを併用して行う請求項1記載の造形用着色紙粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオラマの製作等に用いるための造形用着色紙粉に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオラマとは、情景模型とも呼ばれ、街並みや風景あるいは人々の暮らし振りなどをリアルに縮小表現した展示模型のことである。近年では、世界各国の著名な建造物などを精巧に再現したものや、鉄道模型を中心に昭和の風景をリアルに再現したものなどが展示されて人気を集めているが、趣味として個人的に精巧なジオラマを製作する愛好家も多い。所謂箱庭も、それが表現している対象にもよるが、一般にジオラマの一種ということができる。
【0003】
また、簡単なジオラマ作りは、図画や粘土細工などと同様に自己表現の一つとも考えられており、幼児教育や高齢者の認知症防止策の一環として取り入れられている例もある。上で例に挙げたような職人や愛好家が製作する精巧なジオラマは、一つの芸術作品として長期にわたって展示され鑑賞されるものであるが、幼児教育や高齢者の認知症防止策としてジオラマ製作が利用される場合などは、製作したものの鑑賞より製作過程そのものが重要なのであるから、製作されたジオラマが(必要なら写真撮影などで記録に残した後で)比較的短期間のうちに廃棄される場合も多い。
【0004】
ジオラマで山肌や樹木や草地を表現したり、砂利道や線路に敷くバラストなどを表現する場合、従来は、ターフと呼ばれる粒状のスポンジ材料を着色したものや天然の砂粒を用いたり、フォーリッジあるいはフォーリッジクラスターと呼ばれるシート状あるいは塊状に結合したターフを用いたりしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターフや砂粒は耐蝕性や耐候性にすぐれているため、長期間にわたって展示されるようなジオラマの製作には適しているが、ジオラマの製作と廃棄を繰り返すような用途においては、プラスチックや岩石でできているため、廃棄時の焼却処分にやや難がある。また、ターフは、初めから(特に展示を目的とするような精巧な)ジオラマの製作のために開発された専用の材料なので、簡単なジオラマの製作と廃棄を繰り返す用途に用いるには割高なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上に述べた課題を解決するために、粒径範囲が調整され所望の色彩を有する造形用着色紙粉、粒径範囲あるいは着色の異なる造形用紙粉のセット、及びそれらの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の造形用着色紙粉によれば、表現する対象に応じて選択された粒径範囲や色彩を有する紙粉を用いることにより、誰でも簡単にジオラマ等の製作を行うことができ、製作されたジオラマ等の廃棄処分も焼却等により容易に行うことができる。また、本発明の造形用着色紙粉は産業廃棄物を原料としており安価なので、製作と廃棄を繰り返すような使い方をする教材に適している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の造形用着色紙粉を製造する方法の一例を示す工程図である。
【
図2】
図1の工程(a)及び工程(b)において用いることができる篩別(しべつ)手段の一例を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す篩別手段を用いて原料紙粉を篩別する様子を示す模式図であり、
図3の(a)は篩別手段に原料紙粉を入れた状態を示し、
図3の(b)は篩の目開きより小さい紙粉粒子が篩別操作により落下する様子を示す。
【
図4】
図2に示す篩別手段について、篩の網を目開きの小さいものに交換する様子を示す模式図である。
【
図5】
図1の工程(c)において、篩別された紙粉に着色液を添加する様子を示す模式図である。
【
図6】
図1の工程(d)において、着色された紙粉をシートの上に広げて自然乾燥する様子を示す模式図である。
【
図7】本発明の着色紙粉を用いて製作したジオラマの一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<造形用着色紙粉>
本発明の造形用着色紙粉の原料は紙粉である。紙粉とは、紙の抄造・断裁・加工などの際に発生するパルプ繊維や填料、顔料等からなる粉塵のことである。紙粉が印刷用紙の表面に付着していると、それが印刷機のローラーや版面に転着して印刷物に白い点が生じる原因にもなるので、印刷前に用紙の表面から紙粉を除去する専用のマットなども販売されている。また、シート状の段ボールや板紙を切断・折り曲げ等により加工して紙器(保管・輸送用の段ボール箱や製品包装容器としての化粧箱など)を製造する際には、通常、製造された紙器に付着している紙粉が除去されるため、そうして除去された紙粉が産業廃棄物として大量に発生し、焼却等により処理されている。
【0010】
段ボールや板紙を紙器に加工する際に発生する紙粉は、比較的大きな切れカスや繊維状の断片(業界では「ヒゲ」と呼ばれる)といった異物を含むが、それらを除いた後の粉体の粒径(個々の粒子について長さが最大になる方向にとった粒径)は0.1~5mm程度である。ジオラマの製作に用いられる粉体の粒径は、ジオラマのサイズや表現する対象にもよるが、通常は0.1~2mm程度であるから、上記サイズの紙粉を表現する対象に応じて適宜篩別(大粒子の除去など)をすれば、ジオラマ製作に用いることは十分可能である。一方、コピー用紙の断裁等の際に発生する紙粉の粒径範囲はこれより小さい側にあり、通常は0.05~0.3mm程度であるが、こうした微細な紙粉もより細かい表現には使用できる場合がある。
【0011】
例えば、縮尺80分の1程度のジオラマを製作する場合、1)山肌や大きめの石等を表現するなら粒径2~6mm程度の粉体、2)道端の草地や枯草等を表現するなら粒径0.2~2mm程度の粉体、3)道路や線路に敷かれた砂利を表現するなら粒径0.2~0.5mm程度の粉体がよく用いられる。従って、異物を除去した原料紙粉を篩別してこれらの用途に適した紙粉を取得すればよいことになる。
【0012】
本発明の造形用紙粉は、上に述べたように、用途に即した所望の粒径範囲に篩別されているとともに、その用途に即した所望の色彩に着色されている。一般に、上記用途1の粉体であれば灰黒色系ないし茶褐色系、上記用途2の粉体であれば黄褐色ないし黄緑色系、上記3の粉体であれば灰白色系の所望の色彩に着色されているとよい。例えば、山肌を表現するにしても、いわゆる岩がむき出しになっているような崖を表現するのであれば黒に近い灰色系の色彩に着色されているのがよいであろうし、赤土や黒土が露出しているような所を表現するのであれば茶褐色系の色彩に着色されているのがよいであろうし、草付きの斜面を表現するのであれば緑がかった所望の色彩に着色されているのがよいであろう。なお、本発明の造形用紙粉の着色は、必ずしも均一でなくてもよく、多少のむらがあった方が好ましい場合もある。また、異なる色の紙粉を混ぜることにより、深い色や複雑な色を表現することできる場合もある。
【0013】
因みに、どのような色彩に紙粉を着色するかは、表現にかかわる問題なので画一的には決められない。特に、芸術作品として本格的に製作されるジオラマに用いるのであれば、予め表現対象別に紙粉の色を統一しておくことは至極困難であろう。そのようなジオラマは、基本的に作品ごとに個性があってよいものであるから、ジオラマ製作者が自己の感性に基づいて色彩を調整すべきものである。しかしながら、例えば幼児教育や高齢者の認知防止訓練として行うジオラマ製作のための教材として、本発明の造形用着色紙粉を用いるのであれば、ある程度まで用途別に標準色というものを用意しておくことができよう。本発明の造形用着色紙粉は、もちろん前者(芸術作品としての観賞用ジオラマ製作)のために用いられることも想定してはいるが、どちらかといえば、後者(教育ないし訓練目的のジオラマ製作)のために用いられることを主として想定している。
【0014】
<造形用着色紙粉の製造>
図1は、本発明の造形用着色紙粉を製造するための工程の一例を示すものである。最初の工程(a)では、原料紙粉に混入している切りカスや繊維状断片(ヒゲ)などの異物を取り除く。原料としては、上に述べたように、段ボール又は板紙の加工の際に発生した紙粉が好ましく用いられるが、そのような紙粉は、通常、段ボールシートや板紙シートをカットしたり、切り込みを入れたり、折り曲げたりする際に発生する切りカスやヒゲを含んでいるからである。そうした異物を除去するためには、目の粗い(例えば目開き5~10mm程度の)篩を用いて篩別を行えばよい。
【0015】
図2はそのような異物除去に用いることのできる篩別装置の一例(ロータシーブと呼ばれる回転式古土分別器)を示す。
図2の装置は、円形の枠1内に各種目開きの網2が張られた交換可能な篩と、その網の上面を撫でるように回転可能なスクレーパ3からなり、網の上に原料紙粉を置いてスクレーパをハンドル4で回転させれば、原料紙粉が網の上を移動する際に網の目より小さい粒子である紙粉自体は網の目を通過して下に落下し、原料紙粉中に異物として含まれる切れカスや繊維状断片は網の上に残ることになる。従って、網の目を通過して落下した紙粉を集めれば、異物が除去された原料紙粉が得られる。ロータシーブは、本体に付属する規格目(短径12.6mm×長径25.2mmの菱形目)の他、替え網として別売される、より目開きの小さい中目(短径8mm×長径16mmの菱形目)及び細目(短径5mm×長径10mmの菱形目)を取り付けることができるので、その中から適切な目開きの網を用いれば原料紙粉中の異物を除去することができる。
【0016】
異物が除かれた原料紙粉は、次いで、所望の粒径範囲を有するように調整される。それには、
図2に示した装置や他の篩別装置を用い、粒径範囲の上限と下限に当たる2種類の目開きの異なる網を用いて篩別すればよいわけであるが、
図2に示すロータシーブでは、最も細かい網目が細目であるから、これより細かいサイズの上限あるいは下限を有する粒径範囲の紙粉を得たい場合には、より目開きの小さい篩を用意する必要がある。すなわち、異物が除去された原料紙粉を、
図3の(a)に示すように、まず所望の粒径範囲の上限を超えるサイズの紙粉を除去できる網が張られた篩に乗せて篩別を行い、
図3の(b)に示すように、網の目を通過して落下した紙粉を集める。続いて、
図4に示すように、所望の粒径範囲の下限より細かいサイズの紙粉を通過させる目開きの網に変えて同様に篩別を行い、網の目の上に残った紙粉を集めれば、原理的には、それが所望の粒径範囲をもった紙粉ということになる。
【0017】
但し、上に述べたようにして篩別を行った場合、篩の目開きより大きい粒径の紙粉粒子は全て篩の網の上に残るが、篩の目開きより小さい粒径の紙粉粒子が全て網の目を通過するとは限らないので、所望の粒径範囲に調整した(はずである)紙粉が所望の粒径範囲より小さい紙粉粒子をある程度含むことはやむをえない。しかしながら、ジオラマ製作用の紙粉において重要なことは粒径範囲の上限であって、当該粒径範囲の下限より小さい紙粉粒子が含まれることは基本的に問題にならない。なぜならば、紙粉粒子はもともと完全な球体ではなく不規則な形状をしているのであり、製作後の紙粉は飛ばないように固定されるわけであるから、小粒径の紙粉粒子は大粒径の紙粉粒子に付着して一体化してしまい、大粒径紙粉粒子の表面形状の一部と化してしまうからである。例えば、山肌の岩や大きな石を表現する用途1に向けて所望の粒径範囲に調整した紙粉が、仮に所望の粒径範囲の下限より細かいサイズの紙粉粒子を多少含んだとしても、実際に使用した場合の違和感は殆どなく、当該用途に十分好適に使用することができる。すなわち、本発明においては、篩別された紙粉の粒径範囲の調整とは、その範囲の下限より小さい粒子をある程度含むことを許容するものである。
【0018】
所望の粒径範囲を有するように調整された紙粉は、次に、所望の色に着色される。紙粉を着色するには、各種色剤(染料、顔料など)を水または水と親水性有機溶媒(例えばエタノール)の混合溶媒に溶解または懸濁させた「インク」を適当な濃度に希釈したものを着色液として用いればよい。本発明の造形用着色紙粉の原材料はいわゆる「紙」であるから、そのような「インク」としては紙に印刷するためのインク(例えばインクジェットプリンタ用のインク)が好ましく用いられる。具体的には、
図5に示すように、着色する紙粉を容器に入れて、着色液を添加しながら攪拌する。着色液の濃度と添加量は適宜決めればよいが、市販のインクジェットプリンタ用インクを用いる場合は、水とエタノールの混合液で5倍~10倍程度に希釈したインクを着色液として用い、着色の様子を見ながら紙粉と同量程度の着色液を添加すればよい。着色工程の後は、着色液を切ってから2~3日ほどシートの上に広げて自然乾燥させれば、
図6に示すような着色紙粉が得られる。
【0019】
上に述べたようにして製造された、粒径範囲や色彩の異なる着色紙粉をそれぞれ個別に包装してセットにすれば、造形用着色紙粉のセットとなる。例えば、表現対象の異なる着色紙粉をそれぞれ別個に包装してセットにしてもよいし、ある表現対象を表現するのに粒径範囲や色彩が異なる複数の着色紙粉を適宜混合して用いることができるようにすれば、ジオラマ製作者の個性が発揮できるようになる。
【0020】
<造形用着色紙粉を用いたジオラマの製作>
ジオラマを製作するには、まず最初にベースを作る。通常、ジオラマのベースは、ベニヤ板などの平坦な木材プレート(フラットベース)の上に粘土や石膏などで地面の形状を形作ることが多いが、木材プレートの代わりに浅い段ボールを用い、粘土や石膏などの代わりに本発明の着色紙粉の原料となる未着色紙粉を用いて地面の形状を形作ることもでき、その場合には廃棄する際に不燃物が殆ど含まれないという利点がある。なお、未着色紙粉を用いて地面の形状を形作った場合には、表面に目の細かい網をかけて表面が崩れないように補強することが好ましい。
【0021】
次いで、地面を着色する。粘土や石膏で地面の形状を作った場合には、その表面の地面部分をアクリル塗料などで塗装するが、未着色紙粉で地面の形状を作った場合は、地面に近い色で着色された紙粉を敷き詰めて地面の色を表現することができる。この場合、異なる色の着色紙粉を混合して敷くことにより、地面表面の色むらを表現してもよい。例えば、土の地面であれば茶褐色系の着色紙粉を敷き詰め、石が多い所は灰色系の着色紙粉を混ぜて敷き詰め、雑草が生えている所は草色(緑黄色)系の着色紙粉を混ぜて敷き詰め、枯草の多い所は黄褐色系の着色紙粉を混ぜて敷き詰めることにより、それぞれの地面の色合いを表現することができる。
【0022】
山の斜面なども同様にして着色することができる。樹木に覆われた山の斜面を表現するには、草地などに比べて比較的大きなサイズの緑黄色系の着色紙粉を主体にして配合したものを用いて、斜面に盛り付けるようにするとよい。また、崖や大きな岩などが露出した箇所などは、茶褐色系の着色紙粉に大粒径の灰色系の着色紙粉を配合して盛り付けることで表現することができる。従来は、樹木を表現するのにコースターフやフォーリッジを使用し、岩を表現するのに砂や石を使用していたが、本発明の着色紙粉を使用すれば、そのような「異物」を用いなくてもこれらのものを表現することができる。
【0023】
川を表現するには、従来は、水色の透明樹脂を使用したり、土台に絵の具で着色するなどしていたが、本発明の着色紙粉を用いる場合には、水の色を模した青色系の着色紙粉を敷き詰めることで表現することができる。また、花が咲いている様子を表現するには、従来は、花を表現しているジオラマシートを貼り付けたりしていたが、本発明の着色紙粉を用いる場合には、好みの花の色を模した着色紙粉を点在させて表現することができる。
【0024】
なお、本発明の着色紙粉を用いてジオラマを製作した場合には、最後にスプレー糊を振りかけて固めることが好ましい。
図7は、本発明の着色紙粉を用いて作成したジオラマの一例を示す写真である。
【実施例】
【0025】
(例1)岩や大きな石を表現する着色紙粉の製造
今野梱包株式会社より提供していただいた廃棄予定の紙粉を原料紙粉として用いた。この原料紙粉を、本体に付属する規格目の網(12.6mm×25.2mm菱形目、目開き約11mm)を装着した手動の回転式古土分別器(商品名「まわるふるいロータシーブ」、小林金物製)に入れて篩別することにより、切りカスや繊維状断片などの異物を除去した。異物が除去された原料紙粉は0.1mm~10mm程度の広い粒径範囲を有していたので、これを中目の替え網(8mm×16mm菱形目、目開き約7mm)に変えた上記篩別器で再度篩別することで、粒径が6mmを超えるような紙粉粒子を除去した。更に、これを市販の園芸用篩(目開き約2mm)で篩って粒径が2mm未満の紙粉粒子の多くを落下させることにより、粒径範囲がほぼ2mm~6mm程度の紙粉粒子からなる紙粉を得た。
【0026】
次に、上で得た紙粉を採取して円形容器に入れ、市販のインクジェットプリンター用インク(グレー及びブラック)を水とエタノール(1:1混合液)で希釈混合して各種明度の灰色系インクを調合し、これらの灰色系インクを容器に少しずつ添加しながら、ハンドミキサー及び手もみにより紙粉を攪拌して希望する色あいになるまで灰白色ないし灰黒色に着色した。紙粉が希望する色合いに着色されたら、それをブルーシート上に広げ、直射日光を避けて2日間乾燥させた。なお、完全に乾燥した後は着色を行った直後に比べて紙粉の色が薄くなるので、そのことを考慮して着色を行った。また、ハンドミキサーを用いたときは紙粉がよく分散され、手で揉んだときは紙粉が互いに付着して固まる傾向があるため、そのことを利用して細かい砂利と大きな岩を作り分けることができた。
【0027】
(例2)露出した土を表現する着色紙粉の製造
例1と同じ原料紙粉を用い、同様の手順で粒径範囲の調整を行った。但し、異物を除去した紙粉を篩うための替え網として、中目ではなく細目の替え網(5mm×10mm菱形目、目開き約4mm)を用いて、粒径が3mmを超えるような大粒径紙粉粒子を除去した。また、例1で行ったような微小な紙粉粒子の除去は行わなかった。こうして得た粒径範囲0.2~3mm程度の紙粉を、市販のインクジェットプリンター用インク(マゼンタとイエローが主体、シアンとグレーを少々)を用いて調合した赤茶色(茶褐色)系の各種色合いの着色液で、例1と同様にして着色及び乾燥を行って着色紙粉を得た。なお、着色する際の攪拌にはハンドミキサーによる攪拌のみを行い、手もみは行わなかった。
【0028】
(例3)道端や空き地の雑草を表現する着色紙粉の製造
例1と同じ原料紙粉を用い、同様の手順で粒径範囲の調整を行った。但し、異物を除去した紙粉を篩うための替え網として、中目ではなく細目の替え網(5mm×10mm菱形目、目開き約4mm)を用いて、粒径が3mmを超えるような紙粉粒子を除去した。更に、市販の園芸用篩(目開き約1mm)で篩って粒径が1mm未満の紙粉粒子の多くを落下させた。こうして得た粒径範囲0.5~3mm程度の紙粉を、市販のインクジェットプリンター用インク(シアンとイエローが主体、グレーを少々)を用いて調合した緑黄色系の各種色合いの着色液で、例1と同様にして着色及び乾燥を行って着色紙粉を得た。例1と同様に、着色の際にはハンドミキサーによる攪拌と手もみを併用することで、大きさにばらつきをもたせた。
【0029】
(例4)枯草を表現する着色紙粉の製造
例1と同じ原料紙粉を用い、同様の手順で粒径範囲の調整を行った。但し、異物を除去した紙粉を篩うための替え網として、中目ではなく細目の替え網(5mm×10mm菱形目、目開き約4mm)を用いて、粒径が3mmを超えるような紙粉粒子を除去した。更に、市販の園芸用篩(目開き約1mm)で軽く篩って粒径が1mm未満の紙粉粒子の一部を落下させた。こうして得た粒径範囲0.2~3mm程度の紙粉を、市販のインクジェットプリンター用インク(シアンとイエローが主体、マゼンタを少々)を用いて調合した黄褐色~緑褐色系の各種色合いの着色液で、例1と同様にして着色及び乾燥を行って各種色合いの着色紙粉を得た。なお、着色する際の攪拌にはハンドミキサーによる攪拌のみを行い、また多色混合は避けて彩度の低下を抑えた。
【0030】
(例5)花を表現する着色紙粉の製造
例1と同じ原料紙粉を用い、同様の手順で粒径範囲の調整を行った。但し、異物を除去した紙粉を篩うための替え網として、中目ではなく細目の替え網(5mm×10mm菱形目、目開き約4mm)を用いて、粒径が3mmを超えるような紙粉粒子を除去した。更に、市販の園芸用篩(目開き約1mm)で篩って粒径が1mm未満の紙粉粒子の多くを落下させた。こうして得た粒径範囲0.5~3mm程度の紙粉を、市販のインクジェットプリンター用インク(シアン、イエロー、マゼンタ)を用いて多色混合せずに調合した各種色合いの着色液で、例1と同様にして着色及び乾燥を行って鮮やかな各種色合いの着色紙粉を得た。例1と同様に、着色の際にはハンドミキサーによる攪拌と手もみを併用することで、大きさにばらつきをもたせた。
【0031】
(例6)川を表現する着色紙粉の製造
例1と同じ原料紙粉を用い、同様の手順で粒径範囲の調整を行った。但し、異物を除去した紙粉を篩うための替え網として、中目ではなく細目の替え網(5mm×10mm菱形目、目開き約4mm)を用いて、粒径が3mmを超えるような紙粉粒子を除去した。更に、市販の園芸用篩(目開き約1mm)で篩って粒径が1mm未満の紙粉粒子の多くを落下させた。こうして得た粒径範囲0.5~3mm程度の紙粉を、市販のインクジェットプリンター用インク(シアンが主体、グレーとマゼンタが少々)を用いて調合した着色液で、例1と同様にして着色及び乾燥を行って水色を表す着色紙粉を得た。なお、着色する際の攪拌にはハンドミキサーによる攪拌のみを行って水の細かさを表現した。
【0032】
(例7)造形用着色紙粉を用いたジオラマの製作
例1-例6でそれぞれ製造した着色紙粉を用いて、別個に包装して造形用着色紙粉のセットとした。このセットを用いて、大きな岩が点在し、一部が雑草に覆われた空き地を表現したところ、リアル感のある空き地が表現できた。なお、水面に光が反射する部分には例6の着色紙粉に白を混合して着色したものを差し色に用いた。
図7は、モノクロではあるが、製作したジオラマの写真である。
【産業上の利用性】
【0033】
本発明の造形用着色紙粉は、ジオラマの製作に好適に用いることができる。特に、低コストで廃棄処理が容易なことから、幼児教育用や高齢者の認知症防止訓練用の教材として好ましく用いることができる。加えて、本発明の造形用着色紙粉は、ジオラマの製作のみならず、建材やタイル、美容(ネイル商材等)やアパレル用品、各種知育玩具等にも使用することが期待できる。
【符号の説明】
【0034】
1 篩の枠
2 篩の網
3 スクレーパ
4 ハンドル