(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】緩まない締結構造
(51)【国際特許分類】
F16B 39/10 20060101AFI20230213BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20230213BHJP
F16B 39/12 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F16B39/10 D
F16B35/00 T
F16B39/12 Z
(21)【出願番号】P 2021138423
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】514007069
【氏名又は名称】畠山 志郎
(72)【発明者】
【氏名】畠山 志郎
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/104767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/00-39/38
F16B 35/00
F16B 21/18
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
同軸上に右ネジと左ネジを交差させて形成されたボルトを締結する際に用いる、凹部(2ah)を有する左ネジナット(2h)と、回り止め突起(3ah)及び、舌部(3bh)を有する弾性部材(3h)と、この弾性部材(3h)との接触面にテーパーが施された面(4ah)及び、凹部(4bh)を有する右ネジナット(4h)で構成されて
おり、前記舌部(3bh)は前記右ネジナット(4h)に対して、径方向外側に突出することを特徴とする締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸上に右ネジと左ネジを交差させて形成されたボルト(以下、左右ネジ交差形成ボルトという。)を締結する際に用いる締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトとナットを用いた締結構造は、各種車両や航空機産業及び工作機器、各種建造物等において、部材等の締結に広く使用されている。しかし長年これらの締結構造は締結部分が緩む問題があった。
【0003】
一般的にボトルの軸上に一本の右ネジが形成されており、それに対して右ネジナットで締結するが、締結部分が振動などにより緩む問題があった。
【0004】
締結構造の一つに、上記の一般的なホルトとは異なり、左右ネジ交差形成ボルトを利用し、右ネジナットと左ネジナット同士を締結する方法でボルトと二つのナットを締結する方法が古くからある。特許文献1や特許文献2がそれらである。しかしながらこれらの文献にある技術は右回ネジナットと左ネジナット同士を締結する方法に摩擦を利用するなど、ネジの緩み防止上信頼性に欠ける。
【0005】
特許文献3も上記左右ネジ交差形成ボルトを使用し、右回ネジナットと左ネジナット同士を締結しているが構造が複雑すぎるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-307427号公報(段落番号0004)
【文献】
【0007】
【文献】特開2002-106534号公報(段落番号0004)
【文献】
【0008】
【文献】特願2009-554410(段落番号0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1に示す左右ネジ交差形成ボルト(1)を締結する場合、その締結構造が複雑過ぎず、緩むことがなく、再利用が可能で、さらに締結解除を簡単に行える締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる締結構造は
図1の左右ネジ交差形成ボルトを締結する際の締結構造である。
図1に示すのは被締結物5に左右ネジ交差形成ボルト(1)を通し、凹部(2a)を有する右ネジナット(2)にて被締結物を締め付け、次に
図2に示す回り止め突起(3a)、舌部(3b)を有する弾性部材(3)を、右ネジナット(2)の凹部(2a)と弾性部材(3)の回り止め突起(3a)とを噛み合わせる形で装着し、次に
図3に示すテーパー面(4a)と凹部(4b)を有する左ネジナット(4)で弾性部材(3)を締め付けていく。
この時左ネジナット(4)のテーパー面(4a)が弾性部材(3)を押し付けながら左回りで締め付けて行き、最終的に
図4に示すように締結が完了する。この時点で弾性部材(3)の舌部(3b)が左ネジナット(4)の右回り回転を阻止する。同時に右ネジナット(2)についても弾性部材(3)の回り止め突起(3a)が右ネジナット(2)の左回り回転を阻止することにより右ネジナットと左ネジナットが締結され、この締結体が左右ネジ交差形成ボルトを完全に締結する。
【0011】
本発明は段落番号0001から0010に示さるように、凹部(2a)を有する右ネジナット(2)と、回り止め突起(3a)及び舌部(3b)を有する弾性部材(3)と、この弾性部材(3)との接触面にテーパーが施された面(4a)及び凹部(4b)を有する左ネジナット(4)で構成されているが、この結合構造と同じ原理を用い、
図9に示すように前記の右ネジナット(2)の代わりに左ネジナット(2h)、弾性部材(3)の代わりに弾性部材(3h)、左ネジナット(4)の代わりに右ネジナット(4h)で構成する締結構造とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明において、左右ネジ交差形成ボルト(1)を凹部(2a)を有する右ネジナット(2)と、回り止め突起(3a)及び舌部(3b)を有する弾性部材(3)と、テーパー面(4a)及び凹部(4b)を有する左ネジナット(4)で構成する締結構造で構造が複雑過ぎず緩むことがなく、再利用が可能で、さらに締結解除を簡単に行える締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】 本発明に係るボルトに右ネジナットで締結した時の斜視図である。
【
図2】 右ネジナットの上に弾性部材を装着した時の斜視図である。
【
図3】 弾性部材の上から左ネジナットで締結していく時の斜視図である。
【
図4】 弾性部材を左ネジナットで更に締め付け、ナット同士がロックされた時の斜視図である。
【
図7】 締結構造をソケットレンチで締結もしくは解除する場合の斜視図である。
【
図8】 締結構造をソケットレンチで締結解除する場合の斜視図である。
【
図9】 上記右ネジナット(2)を左ネジナット(2h)に、上記弾性部材(3)を弾性部材(3h)に、上記左ネジナット(4)を右ネジナット(4h)とした時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る被締結物(5)に左右ネジ交差形成ボルト(1)を通し右ネジナット(2)でR1の回転方向で締結する時の図である。
図2は上記右ネジナット上の凹部(2a)に弾性部材(3)の回り止め突起(3a)が噛み合うように弾性部材(3)をS1の方向に装着する図である。
【0015】
図3は上記弾性部材(3)の上に左ネジナット(4)をR2の左回り方向に締め付け、左ネジナット(4)のテーパー面(4a)で弾性部材(3)を締め付けて行く時の図である。
図4は上記左ネジナット(4)がR2方向の回転で更に弾性部材(3)を押し下げ、最終的に弾性部材(3)の舌部(3b)が左ネジナット凹部(4b)の部分に跳ね上がり、締結のロック状態になった時の図である。
【0016】
本発明に係わる締結構造は一般に使用されるレンチ、ねがねレンチ、ソケットレンチを使用して締結や締結解除を簡単に行うことができる。
図8はソケットレンチで締結解除を行う場合の図である。この場合ソケットレンチでN方向に押し付けるだけでソケットレンチの先端の縁部分が弾性部材(3)の舌部(3b)を押し下げ、その状態を保ちながら右回りにソケットレンチを回転するだけて、ロック状態を解除することができる。
【0017】
ソケットレンチがない場合には
図7の左ネジナット(4)の凹部(4b)にマイナスのドライバーをP方向に差し込み、そのドライバーの柄をR3方向に押し下げ、その状態を保ちながら通常のレンチやねがねレンチをセットし右回転に回すことにより簡単に締結ロック状態を解除することができる。
【号の説明】
【0018】
1 左右ネジ交差形成ボルト
2 凹部(2a)を有する右ネジナット
2h 凹部(2ah)を有する左ネジナット
2a 右ネジナット凹部
2ah 左ネジナット凹部
3 回り止め突起(3a)と舌部(3b)を有する弾性部材
3h 回り止め突起(3ah)と舌部(3bh)を有する弾性部材
3a 弾性部材回り止め突起
3b 弾性部材舌部
3ah 弾性部材回り止め突起
3bh 弾性部材舌部
4 テーパー面(4a)と凹部(4b)を有する左ネジナット
4h テーパー面(4ah)と凹部(4bh)を有する右ネジナット
4a 左ネジナットテーパー面
4b 左ネジナット凹部
4ah 右ネジナットテーパー面
4bh 右ネジナット凹部
5 被締結物
6 ソケットレンチ
N1 弾性部材舌部押し付け方向
R1 右回り
R2 左回り
R3 マイナスネジ回しによる柄部分の押し下げ方向
S1 弾性部材装着方向