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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】フォトクロミック化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20230213BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C07D493/04 106C
C07D493/04 CSP
G02C7/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018244949
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105104
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000179306
【氏名又は名称】山田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高田 篤史
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-116565(JP,A)
【文献】ロシア国特許出願公開第02526176(RU,A)
【文献】米国特許第05464567(US,A)
【文献】米国特許第05702645(US,A)
【文献】Organic Letters,2003年,5(22),P.4153-4154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/
G02C 7/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(一般式(1)中、XとXは、酸素原子を表し、YとYは、CHを表し、R~Rは、一般式(2)を表し、R11~R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R15は、炭素数3以上のアルキル基を表す。*は、ピラン骨格との結合部位を表す。XとY、及び、XとYはそれぞれ、ナフタレン骨格を構成する炭素原子のうち隣り合う炭素原子に結合する。)
【請求項2】
前記一般式(1)が、下記一般式(3)~(9)のいずれかである請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
前記一般式(1)が、前記一般式(5)~(9)のいずれかである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
15が、炭素数3以上8以下のアルキル基である請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
15が、炭素数3又は4のアルキル基である請求項1~4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
20℃におけるトルエンに対する溶解度が3g/L以上であり、20℃における酢酸エチルに対する溶解度が0.5g/L以上である請求項1~5のいずれかに記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトックロミック化合物とは、特定の波長の光を受けると分子量を変えることなくその化学結合様式を変えて着色し、別の波長の光や熱反応により元の化学結合様式に戻り、消色する可逆性を有する化合物である。
【0003】
フォトクロミック化合物のなかでも、ナフトピラン化合物は、熱反応によって素早く消色するT型フォトクロミック化合物として注目されている。
【0004】
例えば特許文献1には、適切な消色速度を有する特定のナフトピラン化合物が記載されている。
また、例えば非特許文献1には、ナフトピラン化合物を優れた収率で得ることができるワンポット法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5464567号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Weili,Z.; Erick,M,C.Org.Lett.2003,5(22),4153-4154.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、フォトクロミック化合物は、有機溶剤等に溶解して塗布される。そのため、様々な有機溶剤に対して溶解性に優れる性質が求められている。
特許文献1及び非特許文献1では、有機溶剤に対する溶解性について検討されておらず、
改善の余地があった。
【0008】
本発明は、優れた溶解性を有するフォトクロミック化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、下記一般式(1)で表されるナフトピラン化合物が、優れた溶解性を有することを見出した。本発明者らは、この知見に基づきさらに研究を重ねて本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0011】
【化1】
【0012】
(一般式(1)中、XとXは、酸素原子を表し、YとYは、CHを表し、R~Rは、一般式(2)を表し、R11~R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R15は、炭素数3以上のアルキル基を表す。*は、ピラン骨格との結合部位を表す。XとY、及び、XとYはそれぞれ、ナフタレン骨格を構成する炭素原子のうち隣り合う炭素原子に結合する。)
【0013】
本発明においては、上記一般式(1)が、下記一般式(3)~(9)のいずれかであることが好ましい。
【0014】
【化2】
【0015】
本発明の化合物は、上記一般式(1)が、上記一般式(5)~(9)のいずれかであることがより好ましい。
【0016】
本発明の化合物は、上記一般式(2)におけるR15が、炭素数3以上8以下のアルキル基であることが好ましい。
本発明の化合物は、上記一般式(2)におけるR15が、炭素数3又は4のアルキル基であることが好ましい。
【0017】
本発明の化合物は、20℃におけるトルエンに対する溶解度が3g/L以上であり、20℃における酢酸エチルに対する溶解度が0.5g/L以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた溶解性を有するフォトクロミック化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0020】
【化3】
【0021】
(一般式(1)中、XとXは、酸素原子を表し、YとYは、CHを表し、R~Rは、一般式(2)を表し、R11~R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R15は、炭素数3以上のアルキル基を表す。*は、ピラン骨格との結合部位を表す。XとY、及び、XとYはそれぞれ、ナフタレン骨格を構成する炭素原子のうち隣り合う炭素原子に結合する。)
【0022】
一般式(1)におけるXとY、及び、XとYは、それぞれがナフタレン骨格を構成する炭素原子のうち隣り合う炭素原子に結合していれば、ナフタレン骨格の1位から8位のいずれに結合していてもよい。
なかでも、上記一般式(1)が、下記一般式(3)~(9)のいずれかであることが好ましく、下記一般式(5)~(9)のいずれかであることがより好ましく、下記一般式(7)~(9)のいずれかであることが特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、紫外線により発色して橙色から赤色を呈するため、所望の色に応じて下記一般式(1)で表される化合物の中から適宜選択することができる。
【0023】
【化4】
【0024】
一般式(2)におけるR11~R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表す。
一般式(2)におけるR11~R14は、水素原子が好ましい。
【0025】
11~R14におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0026】
11~R14におけるアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基等の直鎖状アルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、3-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルペンチル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、4-エチルオクチル基、4-エチル-4,5-ジメチルヘキシル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、4-ブチルオクチル基、6,6-ジエチルオクチル基、6-メチル-4-ブチルオクチル基、3,5-ジメチルヘプタデシル基、2,6-ジメチルヘプタデシル基、2,4-ジメチルヘプタデシル基、2,2,5,5-テトラメチルヘキシル基等の分岐状アルキル基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-シクロペンチル-2,2-ジメチルプロピル基、1-シクロペンチル-2,2-ジメチルプロピル基、1-シクロヘキシル-2,2-ジメチルプロピル基等の環状のアルキル基(シクロアルキル基);が挙げられ、置換基を有するアルキル基としては、フルオロメチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0027】
11~R14におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、カルボキシフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、N,N-ジメチルアミノフェニル基、ナフチル基、ニトロナフチル基、シアノナフチル基、ヒドロキシナフチル基、メチルナフチル基、フルオロナフチル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基等のアリール基が挙げられる。
【0028】
11~R14におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基が挙げられる。
アルコキシ基の水素原子の一部又は全部がハロゲンで置換されているものとしては、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、1,1,2-トリフルオロエトキシ基、1,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、1,1-ジフルオロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1-フルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロポキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロポキシ基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブトキシ基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブトキシ基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンチルオキシ基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-1-ヘキシルオキシ基、4,4,5,5,6,6,7,7,7-ノナフルオロ-1-ヘプチルオキシ基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-1-ヘプチルオキシ基、7,7,8,8,8-ペンタフルオロ-1-オクチルオキシ基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロ-1-オクチルオキシ基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1-ノニルオキシ基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-トリデカフルオロ-1-ノニルオキシ基、7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロ-1-デシルオキシ基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロ-1-デシルオキシ基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ペンタデカフルオロ-1-デシルオキシ基、7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-トリデカフルオロ-1-ドデシルオキシ基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘニコサフルオロ-1-ドデシルオキシ基、7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ヘプタデカフルオロ-1-テトラデシルオキシ基、1H,1H,2,5-ビス(トリフルオロメチル)-3,6-ジオキサウンデカフルオロ-1-ノニルオキシ基、6-(ペルフルオロ-1-メチルエチル)-1-ヘキシルオキシ基、2-(ペルフルオロ-1-メチルブチル)-1-エトキシ基、2-(ペルフルオロ-3-メチルブチル)エトキシ基、2-(ペルフルオロ-7-メチルオクチル)エトキシ基、2H-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1-プロポキシ基等が挙げられる。
【0029】
11~R14におけるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフトキシ基、2-ナフトキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、4-tert-ブチルフェノキシ基、2-メトキシフェノキシ基、4-イソプロピルフェノキシ基等が挙げられる。
置換基を有するアリールオキシ基としては、例えば、炭素数1~8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1~8の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基、アミノ基、モノ-又はジ-アルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~8)、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基等を有するアリールオキシ基が挙げられる。
【0030】
11~R14におけるアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、シンナモイル基、アニソイル基、ナフトイル基等が挙げられる。
【0031】
11~R14におけるアルコキシカルボニル基としては、例えば、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、1,2-ジメチル-プロピルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、1,3-ジメチル-ブチルオキシカルボニル基、1-イソプロピルプロピルオキシカルボニル基、1,2-ジメチルブチルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、1,4-ジメチルペンチルオキシカルボニル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピルオキシカルボニル基、1-エチル-3-メチルブチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、3-メチル-1-イソプロピルブチルオキシカルボニル基、2-メチル-1-イソプロピルオキシカルボニル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、メトキシメトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基、プロポキシエトキシカルボニル基、ブトキシエトキシカルボニル基、ジエチルアミノエトキシカルボニル基、メチルチオエトキシカルボニル基、メトキシプロピルオキシカルボニル基、γ-メトキシプロポキシカルボニル基、γ-エトキシプロポキシカルボニル基、メトキシエトキシエトキシカルボニル基、エトキシエトキシエトキシカルボニル基、ジメトキシメトキシカルボニル基、ジエトキシメトキシカルボニル基、ジメトキシエトキシカルボニル基、ジエトキシエトキシカルボニル基、(3,6,9-オキサ)デシルオキシカルボニル基、テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル基、ピランオキシカルボニル基、ピペリジノオキシカルボニル基、ピペリジノエトキシカルボニル基、テトラヒドロピロールオキシカルボニル基、テトラヒドロピランメトキシカルボニル基、テトラヒドロチオフェンオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0032】
11~R14におけるアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、4-ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4-ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2-クロロフェニルオキシカルボニル基、2-メチルフェニルオキシカルボニル基、2-メトキシフェニルオキシカルボニル基、2-ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3-クロロフェニルオキシカルボニル基、3-トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3-シアノフェニルオキシカルボニル基、3-ニトロフェニルオキシカルボニル基、4-フルオロフェニルオキシカルボニル基、4-シアノフェニルオキシカルボニル基、4-メトキシフェニルオキシカルボニル基等の置換又は無置換のフェニルオキシカルボニル基;1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基等の置換または無置換のナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(2)におけるR15は、炭素数3以上のアルキル基を表す。
炭素数3以上のアルキル基としては、例えば、上記R11~R14におけるアルキル基と同様の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
これらの中でも、優れた溶解性を付与する観点から、炭素数3以上8以下のアルキル基が好ましく、グラム吸光係数の観点から炭素数3又は4のアルキル基であるプロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、プロピル基、sec-ブチル基がより好ましく、sec-ブチル基がさらに好ましい。
【0034】
本発明の化合物は、有機溶媒に溶解する化合物であることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等)、エーテル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、エステル類(例えば、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル等)及びこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0035】
本発明の化合物の製造方法について、以下に合成方法の一例を挙げて説明するが、本発明の化合物の製造方法は下記方法に限定されるものではない。また、後述の反応を行う際に、当該部位以外の官能基については、必要に応じてあらかじめ適当な保護基により保護しておき、適当な段階においてこれを脱保護してもよい。
【0036】
本発明の化合物は、例えば、下記に示す一般式(10)と、一般式(11)及び(11′)とを反応させることにより製造することができる。
【0037】
【化5】
【0038】
上記一般式(10)中、ヒドロキシル基は、ナフタレン骨格の1位から8位のいずれに結合していてもよい。
上記一般式(10)で表される化合物は、市販のものを適宜用いることができる。
【0039】
上記一般式(11)及び(11′)中のR、R、R及びRは、それぞれ一般式(1)におけるR、R、R及びRと同義であり、それぞれ一般式(2)を表す。
【0040】
上記一般式(11)及び(11′)で表される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、特表2012-501326号公報、CN103936793A等に記載の方法で製造することができる。
【0041】
一般式(10)で表される化合物と、一般式(11)及び(11′)で表される化合物とを反応させる条件などは特に限定されない。反応は、通常、酸触媒下で、溶媒中で行われる。
【0042】
上記酸触媒としては、特に限定されない。例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホナート等の有機酸が挙げられる。
【0043】
上記溶媒としては、該反応に対して不活性な溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル等が挙げられる。
反応の際の温度は、20~100℃とすることができ、30~70℃が好ましい。反応時間は、1~24時間とすることができ、1.5~5時間が好ましい。
なお、反応系内に、オルトギ酸トリメチル等の脱水剤を添加することにより、反応効率を向上させることができる。
【0044】
上記の製造方法における生成物の単離や精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことができる。
【0045】
本発明の化合物は、20℃におけるトルエンに対する溶解度が3g/L以上であることが好ましく、5g/L以上であることがより好ましく、8g/L以上であることがさらに好ましく、10g/L以上であることが特に好ましい。また、本発明の化合物は、20℃における酢酸エチルに対する溶解度が0.5g/L以上であることが好ましく、1g/L以上であることがより好ましく、2g/L以上であることがさらに好ましく、3g/L以上であることが特に好ましい。
本発明の化合物が、トルエン及び酢酸エチルに対して上記範囲の溶解度を有していれば、上述した有機溶媒に対しても優れた溶解性を有しており、後述する用途に好適に用いることができる。
なお、上記溶解度は、例えば、本発明の化合物50mgを秤取ったガラス試験管に、20℃の溶媒(トルエン又は酢酸エチル)を加えていき、その溶液の状態を目視で観察し、完全に溶解した濃度を測定する等の方法により得ることができる。
【0046】
本発明の化合物は、例えば樹脂等と混合することにより、色素組成物とすることができる。色素組成物は、着色組成物として好適に用いられる。
上記樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を、着色組成物の用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
色素組成物における本発明の化合物の配合量は、例えば、色素組成物の総固形分に対して該化合物が0.001~50質量%であることが好ましく、0.01~40質量%であることがより好ましい。
【0048】
色素組成物は、その用途等に応じて、本発明の化合物及び樹脂以外の任意成分を含んでもよい。任意成分として、例えば、酸化防止剤、消泡剤、他の色素(染料、顔料等)、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、重合性単量体、重合開始剤、増感剤等が挙げられる。
色素組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の化合物及び樹脂、並びに、所望により配合される任意成分を混合すればよい。
【0049】
本発明の化合物を含む色素組成物は、適切な消色速度を有しており、溶解性にも優れることから、例えば、光学フィルタ用の色素、プリントシャツ等の繊維製品、印刷インク、装飾材、玩具、ディスプレイ材料、窓材、農業用フィルム、包装材料、文具等の製造に好適に用いられる。本発明の化合物を含む光学フィルタ、光学フィルタ用の色素、プリントシャツ等の繊維製品、印刷インク、装飾材、玩具、ディスプレイ材料、窓材、農業用フィルム、包装材料、文具等も本発明に包含される。光学フィルタ用の色素、プリントシャツ等の繊維製品、印刷インク、装飾材、玩具、ディスプレイ材料、窓材、農業用フィルム、包装材料、文具は、本発明の化合物を含むものであればよく、その構成は特に限定されない。
本発明の化合物を含む色素化合物は、サングラス、視力矯正用レンズを含む眼鏡レンズ用色素組成物として特に好適である。本発明の化合物を含む眼鏡レンズは、本発明の好ましい実施態様の一例である。
【0050】
光学フィルタは、本発明の化合物を含むものであればよく、例えば、従来のものと同様に、支持体を有し、必要に応じて、光学機能層等を有することができる。光学フィルタにおいて、本発明の化合物は、支持体又は光学機能層に含有されていることが好ましい。
【0051】
支持体及び光学機能層の構成も特に限定されない。例えば支持体は、通常、透明樹脂を用いて形成される。透明樹脂としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0052】
光学フィルタの製造方法は特に限定されない。例えば、支持体上に本発明の化合物を含む光学機能層を形成する方法として、溶媒中に本発明の化合物及びバインダー樹脂等を溶解又は分散させた後、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法等の塗工方法によって支持体上に塗膜形成する方法が挙げられる。上記溶媒としては、特に制限されないが、上述した有機溶媒等が挙げられる。
【0053】
また、本発明の化合物を含む光学機能層又は支持体の製造方法として、本発明の化合物と、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂並びに光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤とを混合した後、光照射及び/又は加熱処理により硬化膜を形成し、これを光学機能層又は支持体とすることもできる。
【0054】
光学フィルタの一例であるレンズを製造する方法としては、例えば、透明樹脂に本発明の化合物を混練し、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等により成形する方法や、上記の支持体上に本発明の化合物を含む光学機能層を形成する方法等の各種の方法を採ることができる。
【実施例
【0055】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
以下で、得られた化合物の物性を測定する際に使用した機器は次の通りである。
(LC/MS)
(株)島津製作所製 高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS-2010EV(ESI法)
(NMR)
日本電子(株)製 核磁気共鳴装置JNM-ECZ400S
【0057】
<実施例1>
以下の方法により、化合物1を得た。
4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の方法と同様にして、4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンを得た。
【0058】
1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0059】
化合物1の合成
温度計を付した200mlの反応フラスコに、1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オール11.7g、ジクロロエタン90ml、2,6-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)2.4g、オルトギ酸トリメチル(東京化成社製)6.4g(東京化成社製)を入れた。撹拌下、ピリジニウムp-トルエンスルホナート(東京化成社製)0.38gを加え、室温で2時間反応させた。取り出した結晶をメタノールで洗浄し、化合物1を3.5g得た。
LC-MS:m/z=773 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ1.30(d,24H),4.50(sep,4H),6.19(d,2H),6.80(d,8H),7.15-7.20(m,4H),7.34(d,8H),7.78(d,2H)
【0060】
<実施例2>
以下の方法により、化合物2を得た。
4,4’-ジプロポキシベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成において、臭化イソプロピルを臭化プロピルに変更した以外は同様にして、4,4’-ジプロポキシベンゾフェノンを得た。
【0061】
1,1-ビス(4-プロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジプロポキシベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-プロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0062】
化合物2の合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-プロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物2を得た。
LC-MS:m/z=773 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ1.01(t,12H),1.78(sext,8H),3.88(t,8H),6.19(d,2H),6.82(d,8H),7.14-7.20(m,4H),7.36(d,8H),7.77(d,2H)
【0063】
<実施例3>
以下の方法により、化合物3を得た。
4,4’-ジブトキシベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成において、臭化イソプロピルを臭化ブチルに変更した以外は同様にして、4,4’-ジブトキシベンゾフェノンを得た。
【0064】
1,1-ビス(4-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジブトキシベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0065】
化合物3の合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物3を得た。
LC-MS:m/z=829 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.96(t,12H),1.46(sext,8H),1.70-1.75(m,8H),3.92(t,8H),6.19(d,2H),6.81(d,8H),7.14-7.19(m,4H),7.35(d,8H),7.77(d,2H)
【0066】
<実施例4>
以下の方法により、化合物4を得た。
4,4’-ジイソブトキシベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成において、臭化イソプロピルを臭化イソブチルに変更した以外は同様にして、4,4’-ジイソブトキシベンゾフェノンを得た。
【0067】
1,1-ビス(4-イソブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジイソブトキシベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-イソブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0068】
化合物4の合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-イソブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物4を得た。
LC-MS:m/z=829 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ1.00(d,24H),2.05(sep,4H),3.68(d,8H),6.19(d,2H),6.82(d,8H),7.14-7.20(m,4H),7.35(d,8H),7.77(d,2H)
【0069】
<実施例5>
以下の方法により、化合物5を得た。
4,4’-ジ-sec-ブトキシベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成において、臭化イソプロピルを臭化-sec-ブチルに変更した以外は同様にして、4,4’-ジ(sec-ブトキシ)ベンゾフェノンを得た。
【0070】
1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジ-sec-ブトキシフェニルベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0071】
化合物5の合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物5を得た。
LC-MS:m/z=829 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.95(t,12H),1.27(d,12H),1.54-1.74(m,8H),4.25(sext,4H),6.20(d,2H),6.81(d,8H),7.15-7.20(m,4H),7.34(d,8H),7.78(d,2H)
【0072】
<実施例6>
以下の方法により、化合物6を得た。
4,4’-ジ-n-ヘキシルベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成において、臭化イソプロピルを臭化-n-ヘキシルに変更した以外は同様にして、4,4’-ジ-n-ヘキシルベンゾフェノンを得た。
【0073】
1,1-ビス(4-n-ヘキシルオキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジ-n-ヘキシルベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-n-ヘキシルオキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0074】
化合物6の合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-n-ヘキシルオキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物6を得た。
LC-MS:m/z=942 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.90(t,12H),1.28-1.47(m,24H),1.71-1.78(m,8H),3.91(t,8H),6.19(d,2H),6.81(d,8H),7.14-7.20(m,4H),7.35(d,8H),7.77(d,2H)
【0075】
<実施例7>
以下の方法により、化合物7を得た。
4,4’-ジ-n-オクチルベンゾフェノンの合成
特表2012-501326号公報に記載の4,4’-ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成において、臭化イソプロピルを臭化-n-オクチルに変更した以外は同様にして、4,4’-ジ-n-オクチルベンゾフェノンを得た。
【0076】
1,1-ビス(4-n-オクチルオキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の1,1-ビス(2-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成において、2,2’-ジメトキシベンゾフェノンを4,4’-ジ-n-オクチルベンゾフェノンに変更した以外は同様にして、1,1-ビス(4-n-オクチルオキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0077】
化合物7の合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-n-オクチルオキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物7を得た。
LC-MS:m/z=1054 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.89(t,12H),1.24-1.46(m,40H),1.71-1.78(m,8H),3.90(t,8H),6.18(d,2H),6.81(d,8H),7.14-7.19(m,4H),7.34(d,8H),7.77(d,2H)
【0078】
<比較例1>
以下の方法により、化合物Aを得た。
1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールの合成
CN103936793に記載の方法と同様にして、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
【0079】
化合物Aの合成
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物Aを得た。
【0080】
化合物1~6は、下記一般式(8)において、下記一般式(2)におけるR11、R12、R13及びR14がそれぞれ水素原子を表し、R15が表1に示す置換基である化合物である。表1に示す置換基において、*は一般式(2)との結合部位を表す。
【0081】
【化6】
【0082】
【表1】
【0083】
<実施例8>
化合物8の合成
実施例5と同様にして、1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更し、2,6-ジヒドロキシナフタレンを2,7-ジヒドロキシナフタレンに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物8を得た。
LC-MS:m/z=829 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.96(t,12H),1.27(d,12H),1.57-1.75(m,8H),4.26(sext,4H),6.02(d,2H),6.81(d,8H),7.02(d,2H),7.12(d,2H),7.38(d,8H),7.50(d,2H)
【0084】
<実施例9>
化合物9の合成
実施例5と同様にして、1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを得た。
化合物1の合成における1,1-ビス(4-イソプロポキシフェニル)-2-プロピン-1-オールを、1,1-ビス(4-sec-ブトキシフェニル)-2-プロピン-1-オールに変更し、2,6-ジヒドロキシナフタレンを2,3-ジヒドロキシナフタレンに変更した以外は、化合物1の合成と同様にして、化合物9を得た。
LC-MS:m/z=829 [M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.97(t,12H),1.29(d,12H),1.57-1.76(m,8H),4.27(sext,4H),6.23(d,2H),6.80(d,8H),7.20-7.32(m,4H),7.42(d,8H),7.86(d,2H)
【0085】
化合物8は、下記一般式(9)において、R、R、R及びRがそれぞれ下記一般式(2’)に示す置換基である化合物であり、化合物9は、下記一般式(7)において、R、R、R及びRがそれぞれ下記一般式(2’)に示す置換基である化合物である。
【化7】
【0086】
実施例及び比較例で得られた各化合物について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
<溶解度試験>
実施例及び比較例で得られた各化合物について、それぞれ20℃におけるトルエン及び酢酸エチルに対する溶解度(g/L)を以下の方法により測定した。
実施例及び比較例で得られた各化合物50mgを秤取ったガラス製試験管に、20℃のトルエン、又は、酢酸エチルを加えていき、その溶液の状態を目視で観察し、完全に溶解した濃度を測定して評価した。
【0087】
【表2】
【0088】
上記結果から、実施例1~9で得られた化合物1~9と、比較例1で得られた化合物Aとを比較すると、化合物1~9の方が溶解性に優れることが確認された。
また、R15がプロピル基、又は、sec-ブチル基である実施例2及び5では、トルエンに対する溶解度がより優れ、R15がsec-ブチル基である実施例5では、酢酸エチルに対する溶解度もより優れることが確認された。
さらに、R15がsec-ブチル基であり、上記一般式(7)及び(9)の骨格を有する実施例8及び9は、トルエンに対する溶解度及び酢酸エチルに対する溶解度のいずれにも特に優れていることが確認された。
なお、実施例6及び7では、トルエンに対する溶解度が優れていたが、炭素数3又は4のアルキル基を有する他の実施例と比較して、グラム吸光係数が低下するものと考えられる。