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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】印判
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/52 20060101AFI20230213BHJP
   B41K 1/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B41K1/52 B
B41K1/02 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019025050
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020131480
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】影山 伴廣
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-245495(JP,A)
【文献】特開2019-006070(JP,A)
【文献】実開昭61-022652(JP,U)
【文献】特開2001-072153(JP,A)
【文献】米国特許第05123349(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/52
B41K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印面を昇降自在に収納するスライドと、前記印面の上部にセットされるインキカートリッジを備えた印判であって、前記インキカートリッジとスライドの間に、インキカートリッジが下動するのを防止するカートリッジ固定具を着脱自在に取り付けたことを特徴とする印判。
【請求項2】
インキカートリッジ側面に係合片、スライドに係合部をそれぞれ設け、カートリッジ固定具が、前記係合片及び係合部に係合することでインキカートリッジの下動を防止する請求項1に記載の印判。
【請求項3】
カートリッジ固定具が、インキカートリッジの搖動を防止する爪状のカートリッジ搖動防止片を備えている請求項1または2に記載の印判。
【請求項4】
インキカートリッジの下端開口部には密封用シールを設け、スライド又は印面の上部のいずれか一方であって、前記密封用シールと対向する位置に、前記密封用シールを破断する突起を設け、前記インキカートリッジの下動に際し、前記密封用シールを破断するように構成した請求項1~3のいずれかに記載の直液式の印判。
【請求項5】
インキカートリッジがインキ吸収体である請求項1~3に記載の吸収体式の印判。
【請求項6】
捺印の際に印面を押し下げるためのホルダを有し、該ホルダとインキカートリッジが一体化している請求項1~5のいずれかに記載の印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送中においてインキカートリッジが不用意に動くのを防止することができる印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、会社名や住所等を表示したり、製品名や品質等を表示したり、検査済みの検印を表示したりなど、様々な場所で印判が広く用いられている。この場合の印判は、インキを含浸させたインキ吸蔵体をスタンパ内に内蔵した吸収体式印判や、直液式インキカートリッジをスタンパ内に内蔵した直液式印判がある。
【0003】
近年、前記印判を販売する店頭などに設置したサーマル加工機を用いて、顧客がデザインした印面パターンをその場で加工し、これによりオリジナルの印判を手軽に受け取ることができるサービスが提供され評判を呼んでいる。
この種の印判は、印字体(ステンシル)が多孔質膜で形成される。印字体には、加工機のサーマルヘッドにより、インキ浸透率が大きい捺印部と、インキ浸透率が小さい非捺印部とが高精度に加工される。印字体の背面には、ケース体内のインキ吸蔵体或いは直液式インキカートリッジが当接し、これにより印字体にインキが供給される。
ところで、未加工の印字体にインキが含浸した状態では、熱加工制御が困難であるとともに、加工時にサーマルヘッドやフィルム等の部材を汚損する等の不具合が生じるおそれがある。このような不具合を防ぐため、印字体とインキカートリッジとが当接しない位置に保持され、印字体の枠に外力を加えこれらを嵌合させることで、印字体とインキカートリッジとを当接させるようにした印判及びその製造方法がある。しかし、印字体をケース体に嵌合する構成であるため、市場での流通時に不測の外力が加えられると、印字体とケース体とが嵌合し、その結果印字体へのインキの浸透が開始してしまう場合があった。
【0004】
また、特許文献1に示されるような直液式のインキカートリッジの場合は、インキカートリッジを予め装着した状態で出荷すると、空輸や陸送等の途中での急激な圧力・温度等の変化でカートリッジ内の内圧上昇が生じ、インキ漏れを生じるというおそれがあった。一方、それを避けるために、インキカートリッジと印判本体とを別々に出荷する方法もあるが、購入後に消費者が組み立てるのは手間がかかり面倒であるという問題や、出荷時に印判内に仮置きしてあるカートリッジに強い振動等が作用して不用意に下動すると、カートリッジの口部を密封するシールが破損してインキ漏れを生じる場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-22652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、インキカートリッジと印判本体(印面)とを互いに当接しない状態で出荷し、且つインキカートリッジの不用意な下動を制御することで、印面への不用意なインキ供給や、輸送中の環境変化に伴うインキ漏れが生じるのを確実に防止することができ、また消費者は購入後に簡単な操作でインキの含浸処理作業ができて優れた操作性発揮できる印判を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の印判は、印面を昇降自在に収納するスライドと、前記印面の上部にセットされるインキカートリッジを備えた印判であって、前記インキカートリッジとスライドの間に、インキカートリッジが下動するのを防止するカートリッジ固定具を着脱自在に取り付けたことを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、前記インキカートリッジ側面に係合片、スライドに係合部をそれぞれ設け、カートリッジ固定具が、前記係合片及び係合部に係合することでインキカートリッジの下動を防止するのが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記カートリッジ固定具が、インキカートリッジの搖動を防止する爪状のカートリッジ搖動防止片を備えているのが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記インキカートリッジの下端開口部には密封用シールを設け、スライド又は印面の上部のいずれか一方であって、前記密封用シールと対向する位置に、前記密封用シールを破断する突起を設け、前記インキカートリッジの下動に際し、前記密封用シールを破断するように構成したものが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記インキカートリッジがインキ吸収体であるのが好ましく、これを請求項5に係る発明とする。
【0012】
また、その他の好ましい実施形態によれば、捺印の際に印面を押し下げるためのホルダを有し、該ホルダとインキカートリッジが一体化しているのが好ましく、これを請求項6に係る発明とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、印面を昇降自在に収納するスライドと、前記印面の上部にセットされるインキカートリッジを備えた印判であって、前記インキカートリッジとスライドの間に、インキカートリッジが下動するのを防止するカートリッジ固定具を着脱自在に取り付けたものとしたので、インキカートリッジと印判本体とが別々の状態で出荷され輸送中等にインキ漏れが生じるのを防止することができる。また、使用に際して消費者は前記カートリッジ固定具を取り外して前記印面とインキカートリッジとを連通させるのみの簡単な操作で使用を開始することができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明では、前記インキカートリッジ側面に係合片、スライドに係合部をそれぞれ設け、カートリッジ固定具が、前記係合片及び係合部に係合することでインキカートリッジの下動を防止するものとしたので、カートリッジ固定具の着脱を容易に行うことができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明では、前記カートリッジ固定具が、インキカートリッジの搖動を防止する爪状のカートリッジ搖動防止片を備えているものとしたので、輸送中等におけるインキカートリッジの搖左右の搖動によるガタつきを防止することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明では、インキカートリッジの下端開口部には密封用シールを設け、スライド又は印面の上部のいずれか一方であって、前記密封用シールと対向する位置に、前記密封用シールを破断する突起を設け、前記インキカートリッジの下動に際し、前記密封用シールを破断するように構成したので、輸送中等にホルダに不測の力が加わったとしてもホルダが下動することがなく、印面とインキカートリッジとの連通を防ぎ、輸送中等にインキ漏れが生じるのを防止することができ、一方、使用開始に際しては、カートリッジの密封用シールを簡単に破断することができる。
【0017】
また、請求項5に係る発明では、インキカートリッジをインキ吸収体としたので、インキ吸収体式の印判にも適用してインキ漏れが生じるのを防止することができる。
【0018】
また、請求項6に係る発明では、捺印の際に印面を押し下げるためのホルダを有し、該ホルダとインキカートリッジが一体化しているものとしたので、前記ホルダにより持ち手が確保され捺印が容易となる。また、使用者はホルダを押し下げるだけでインキの供給ができ、優れた操作性を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態を示す側面図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図1のB-B断面図である。
図5】カートリッジ固定具を取り外した状態を示す斜視図である。
図6】インキカートリッジを示す正面図である。
図7】インキカートリッジを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は本発明に係る直液式印判の一例を示す斜視図、図2はその正面図、図3図1のA-A断面図、図4図1のB-B断面図である。図において、1はスライド、2はホルダであり、前記スライド1内には印面3が昇降自在に収納されている。そして、前記ホルダ2の押し下げ動作によってカバー4、4が開かれるのと同時に印面3が下降して露呈され、捺印可能な状態となる印判構造であるが、このような構造は従来のこの種の印判と基本的に同様である。尚、本発明において、ホルダ2は無くても動作上問題なく、その場合、インキカートリッジの一部がホルダの役割を果たす。
【0021】
本発明は、直液式のインキカートリッジを備えた直液式印判であり、前記ホルダ2とスライド1の間には、インキカートリッジ11が動くのを防止するためのカートリッジ固定具21が着脱自在に取り付けられている。ここでインキカートリッジとは、インキの貯蔵体と定義し、直液式のカートリッジのみならずインキ吸収体も含んでおり、本実施例では直液式インキカートリッジとして説明する。
本発明は、インキカートリッジ11と印判本体とを別々の状態で出荷することにより、輸送中等において印面3への不用意なインキ供給や、輸送中の環境変化に伴うインキ漏れが生じるのを防止しているが、前記カートリッジ固定具21は、インキカートリッジ11と印面3とを離れた状態に保持すること、および使用に際して消費者は前記カートリッジ固定具21を取り外して前記印面3とインキカートリッジ11とを容易に連通させて印判の使用開始ができるようにすることの二つを同時に解決することを技術的課題としている。そのために本発明では、前記カートリッジ固定具21を着脱自在に取り付けた構造としている。
【0022】
前記カートリッジ固定具21は、図5に示されるように、ホルダ2の下動を防止する板状のホルダ下動防止片22からなるものである。
即ち、この板状のホルダ下動防止片22を、ホルダ2の係合片2aとしての下端部とスライド1の係合部1aとしての段部との間に装着することで、ホルダ2を押し下げたとしても下方へ動くことができないようにするのである。この結果、インキカートリッジ11は押し下げられないので、口部の密封用シール12が突起5により破られることがなくインキ漏れは生じない。なお、前記突起5は印面3の上部に設けられた筒状管であり、先端が尖っていてインキカートリッジ11が下降した時には前記シール12を破り、インキを印面3へ導入させるインキ導入管を兼ねている。ここで、前記インキカートリッジ11は前記ホルダ2と一体化していても良く、その場合、前記ホルダ下動防止片22はインキカートリッジの下端部が係合片2aとなり、スライド1の係合部1aとしての段部との間に装着され、インキカートリッジの下動を防止できる。
【0023】
また、前記カートリッジ固定具21は、図5に示されるように、インキカートリッジ11の搖動を防止する爪状のカートリッジ搖動防止片23からなるものである。このカートリッジ搖動防止片23はインキカートリッジ11の軸方向に対して垂直方向から把持する2本の爪で構成されている。
前記カートリッジ搖動防止片23は、インキカートリッジ11の溝部13(図6図7を参照)に、前記2本の爪を挟み込むことでインキカートリッジ11を固定して、輸送中に衝撃等により不測の力が加わったとしても、インキカートリッジ11が左右に搖動するのを防止している。
【0024】
更に、前記カートリッジ固定具21は、図5に示されるように、ホルダ2の下動を防止する板状のホルダ下動防止片22と、インキカートリッジ11の搖動を防止する爪状のカートリッジ搖動防止片23の両方を備えているものとするのが好ましい。
この場合は、インキカートリッジ11は押し下げられないので、口部の密封用シール12がインキ導入管5により破られることがなくインキ漏れは生じない。また、インキカートリッジ11が搖動したり軸方向に移動等しないので、インキカートリッジ11のシール12が破損することがなくインキ漏れは生じないこととなり好ましい。
【0025】
以下に、本発明のインキカートリッジの着脱操作について説明する。
先ず、本発明の直液式印判を出荷する場合は、シール12で密封した状態のインキカートリッジ11を、ホルダ2内に仮セットした状態とし、このホルダ2をスライド1に組み込む。更に、カートリッジ固定具21を所定位置に装着して、板状のホルダ下動防止片22でホルダ2の下動を防止するとともに、爪状のカートリッジ搖動防止片23でインキカートリッジ11の搖動を防止する。これにより、輸送中におけるインキの漏れが確実に防止されることとなる。
【0026】
次に、消費者が直液式印判を購入後に前記使用する場合は、前記カートリッジ固定具21を取外して使用に供するが、このカートリッジ固定具2は引き抜くだけの簡単な操作で行える。次いで、ホルダ2を捺印するのと同様に押し下げると、インキカートリッジ11も下降して口部の密封用シール12がインキ導入管5により破られ、印面3にインキの供給が行われることとなる。その後は、通常の印判と同様、連続して捺印処理が行えることとなる。
【0027】
以上の説明からも明らかなように、本発明は面を昇降自在に収納するスライドと、前記印面の上部にセットされるインキカートリッジを備えた印判であって、前記インキカートリッジとスライドの間に、インキカートリッジが下動するのを防止するカートリッジ固定具を着脱自在に取り付けたものとしたので、インキカートリッジと印判本体とが別々の状態で出荷され輸送中等にインキ漏れが生じるのを防止することができる。また、使用に際して消費者は前記カートリッジ固定具を取り外して前記印面とインキカートリッジとを連通させるのみの簡単な操作で使用を開始することができる。更には、直液式印判の場合は、大量の捺印処理を行えることとなり、またインキカートリッジの交換も容易であり、コストパフォーマンスにも優れているという利点もある。
【符号の説明】
【0028】
1 スライド
1a 係合部
2 ホルダ
2a 係合片
3 印面
4 カバー
5 突起
11 インキカートリッジ
12 シール
13 溝部
21 カートリッジ固定具
22 ホルダ下動防止片
23 カートリッジ搖動防止片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7