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特許7224605中空酸化グラフェンの潤滑添加剤及び超潤滑の水潤滑剤、及びその製造方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】中空酸化グラフェンの潤滑添加剤及び超潤滑の水潤滑剤、及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 125/02 20060101AFI20230213BHJP
   F16C 17/14 20060101ALI20230213BHJP
   C10M 149/12 20060101ALI20230213BHJP
   C10M 177/00 20060101ALI20230213BHJP
   C10M 173/02 20060101ALI20230213BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20230213BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230213BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20230213BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
C10M125/02
F16C17/14
C10M149/12
C10M177/00
C10M173/02
C10N70:00
C10N30:06
C10N20:06 A
C10N20:06 Z
C10N40:02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021535692
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2020103350
(87)【国際公開番号】W WO2021243825
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】202010503914.5
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518229179
【氏名又は名称】青▲島▼理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】車 清論
(72)【発明者】
【氏名】梁 森
(72)【発明者】
【氏名】張 建軍
(72)【発明者】
【氏名】呂 濱江
(72)【発明者】
【氏名】崔 寧
(72)【発明者】
【氏名】徐 洋
(72)【発明者】
【氏名】鄭 少梅
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110540190(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107164020(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105949861(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 125/02
F16C 17/14
C10M 149/12
C10M 177/00
C10M 173/02
C10N 70/00
C10N 30/06
C10N 20/06
C10N 40/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール型の中空構造であり、ボール型のハウジングは内から外へ順にポリドーパミン層と酸化グラフェン層である複合層構造或いは内から外へ順にポリドーパミン層、グラフェン層、ポリドーパミン層である複合層構造であり、複合層の層数は単層或いは多層であり、多層の構造は複数の複合層が重ね合わせてなることを特徴とする、中空酸化グラフェンの潤滑添加剤。
【請求項2】
ボール型の中空構造の直径は50~300nmであることを特徴とする、請求項1に記載の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤。
【請求項3】
1)塩酸ドパミン溶液、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液を添加し、さらにナノアルミナコロイド水溶液を添加して反応させ、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得るステップと、
2)得られたポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を酸化グラフェン溶液に添加して反応させ、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
或いは3)ステップ2)で得られた酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応と、ステップ2)における酸化グラフェンとの反応とを順次に繰り返して行うことで、多層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
4)単層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料或いは多層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料をHCl溶液と混合してエッチングを行い、中空のボール型の潤滑添加剤を得るステップと、を備えことを特徴とする、請求項1又は2に記載の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法。
【請求項4】
1)塩酸ドパミン溶液、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液を添加し、さらにナノアルミナコロイド水溶液を添加して反応させ、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得、
2)得られたポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を酸化グラフェン溶液に添加して反応させ、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得、
3)ステップ2)で得られた酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応を行い、単層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得、
或いは、4)ステップ3)で得られたポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ2)における酸化グラフェンとの反応と、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応とを順次に繰り返して行うことで、多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得、
5)単層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料或いは多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料をHCl溶液と混合してエッチングを行い、中空のボール型の潤滑添加剤を得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法。
【請求項5】
ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液、ナノAl、HCl溶液の比は0.05~0.15mL:8~12mL:2.2~2.7mL:0.05~0.25g:1mLであり
或いは、ステップ1)における塩酸ドパミンの濃度が2~5mg/mLであり、Tris溶液の濃度が0.05~0.15mol/lであり、HCl溶液の濃度が0.05~0.15mol/lであり
或いは、ステップ1)において、ナノアルミナ粉体或いはナノアルミナのコロイド溶液を添加し、添加されたナノアルミナコロイドの溶液の濃度が0.05~0.15g/mLであり
或いは、ステップ2)における酸化グラフェン溶液の濃度が0.5~2.5mg/mLであり、
或いは、酸化グラフェンの製造方法はHummer法であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法。
【請求項6】
ポリドーパミンとアルミナとが反応する時間は10~15hであり、
或いは、ステップ1)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得、
或いは、ステップ2)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得ることを特徴とする、請求項3又は4に記載の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法。
【請求項7】
ステップ3)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、単層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得、
或いは、ステップ4)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得、
或いは、ステップ5)において、HClでエッチングを行った後に得られた溶液を、遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して潤滑添加剤を得、
或いは、ステップ3)或いはステップ4)で反応に関与する塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液の体積比及び添加量はステップ1)と同じであり、ステップ4)で反応に関与する酸化グラフェン溶液の添加量及び濃度はステップ2)と同じであることを特徴とする、請求項4に記載の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法。
【請求項8】
水と請求項1に記載の潤滑添加剤とを含み、
超潤滑の水潤滑剤における潤滑添加剤の質量濃度が0.01%~0.8%であことを特徴とする、超潤滑の水潤滑剤。
【請求項9】
潤滑添加剤と水とを大気雰囲気で混合して超潤滑の水潤滑剤を得ることを特徴とする、請求項8に記載の超潤滑の水潤滑剤の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の超潤滑の水潤滑剤の機械部材における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料分野及び超潤滑の水潤滑剤の技術分野に属し、具体的に中空酸化グラフェンの潤滑添加剤及び超潤滑の水潤滑剤、及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この背景技術における情報開示は本発明の背景全体の理解を深めるためだけであり、当然この情報が当業者に周知された従来技術を構成することを承認又は如何なる形式で示唆するともみなされてはならない。
【0003】
機械部材は人々の生活や生産に万遍なく存在しており、機械運転中に、摩擦により一部のエネルギーが損失し、特に長時間で繰り返して運転する設備で目立っている。従って、生産過程に莫大の経済損失が生じるとともに、環境汚染や資源浪費も発生している。自動車やマイクロナノの機械部品など多くの大切な部材に関する潤滑技術は発展上のボトルネックに直面しており、摩擦摩耗を如何に認識や制御するかが重要なソリューションになっている。科学者は理論上で二つの原子レベルのなめらかで且つ非共度性接触であるファンデルワールス固体の表面(例えば、グラフェン、二硫化モリブデンなどの二次元材料の表面)間にほぼゼロ摩擦・摩耗が存在していることを予測し、超潤滑(superlubricity)現象の摩擦係数を0.01より小さいと定義しており、これは省エネや費用節約や環境安全においてその重要性が非常に大きい。様々な固体や液体の潤滑剤が開発・利用されているが、マクロ或いは工事基準で超潤滑の挙動の実現が滅多にない。
【0004】
潤滑剤は様々であるが、多くが環境にある程度で影響を与えており、環境課題への関心が深まるにつれて、水は潤滑剤としてトライボロジー領域で幅広く注目を浴びるようになっている。しかしながら、境界潤滑或いは混合潤滑状態において、純水そのものの潤滑性能が悪くなり、水膜が破裂しやすいので、金属の表面が直接接触し、即ち、固体と固体との接触になることで、運動部材や関節液潤滑分野での水の使用が極めて大きく制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術における問題点に鑑みて、本発明は中空酸化グラフェンの潤滑添加剤及び超潤滑の水潤滑剤、及びその製造方法並びに使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は以下の技術手段を提供する。
【0007】
本発明の第一形態である中空酸化グラフェンの潤滑添加剤は、ボール型の中空構造であり、ボール型のハウジングは内から外へ順にポリドーパミン層と酸化グラフェン層である複合層構造或いは内から外へ順にポリドーパミン層、グラフェン層、ポリドーパミン層である複合層構造であり、複合層の層数は単層或いは多層であり、多層の構造は複数の複合層が重ね合わせてなるものである。
【0008】
本発明により製造される潤滑添加剤は、酸化グラフェンとポリドーパミンを主成分とし、中空構造を有し、潤滑剤がより低い摩擦係数を備えるようにする。具体的な原理は以下通りである。
【0009】
酸化グラフェンは超潤滑の表面を有するが、従来で酸化グラフェンにより製造された潤滑剤は超潤滑特性を実現できず、本発明では、酸化グラフェンを中空球体に製造し、より優れたタフネスや超潤滑力を備えさせることで、表面摩擦中で摩擦係数がより小さくなる。
【0010】
従来の技術には、固体の酸化グラフェンの表面がゼロ摩擦を有することは記載されているが、マクロ或いは工事基準では、超潤滑性能の実現が滅多にないので、本発明で製造されたグラフェン或いは酸化グラフェン-ポリドーパミンの複合材料は超潤滑を実現し、マクロの視角から見れば、実際の機械摩擦過程で超潤滑を実現し、エネルギー消費を低減している。
【0011】
本発明は2種類の潤滑添加剤を含み、第1種類はボール型酸化グラフェン/ポリドーパミン或いはボール型の多層の酸化グラフェン/ポリドーパミンであり、多層とは酸化グラフェン/ポリドーパミン/酸化グラフェン/ポリドーパミンでもよいと意味しており、酸化グラフェンが最外層にあり、ポリドーパミンが最内層にある。
【0012】
第2種類は酸化グラフェンボール型のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン或いは多層のボール型のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンである。多層とはポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンでもよいと意味している。酸化グラフェンが最外層と最内層にある。
【0013】
ポリドーパミンは還元性を有し、ポリドーパミンを被覆する酸化グラフェンの面が還元されるが、最外層の酸化グラフェンがポリドーパミンと反応しないので、第1種類の潤滑添加剤における最外層の酸化グラフェンは内側が還元され、外側が還元されず、2層のポリドーパミン層間にある酸化グラフェンは実際には還元されたグラフェンである。第2種類におけるグラフェンは何れも2層のポリドーパミン層間にあるので、何れも酸化グラフェンが還元されたグラフェンである。
【0014】
ポリドーパミンの反応過程はすべて還元性を備え、例えば、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンの場合、酸化グラフェンの両面ともポリドーパミンに被覆され、全体で還元されているので、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンと記載されている。
【0015】
例えば、酸化グラフェン/ポリドーパミン/酸化グラフェン/ポリドーパミンとの構造の場合、最外層の酸化グラフェンがポリドーパミンと反応せず、還元されないが、ポリドーパミンを被覆する最外層の酸化グラフェンの面が還元されるので、酸化グラフェン/ポリドーパミン/酸化グラフェン/ポリドーパミンと記載されている。
【0016】
本発明の第二形態である上記中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法は、具体的に、
塩酸ドパミン溶液、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液を添加し、さらにナノアルミナコロイド水溶液を添加して反応させ、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得るステップと、
【0017】
得られたポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を酸化グラフェン溶液に添加して反応させ、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料をHCl溶液と混合してエッチングを行い、中空のボール型の潤滑添加剤を得るステップと、を含む。
エッチングした後、中間のナノアルミナがエッチングされて除去され、酸化グラフェンがポリドーパミンを保護する構造が残る。
【0018】
本発明では、ナノアルミナボールをキャリアボールとしており、その原因の一つとして、その形状を利用してアルミナボールに酸化グラフェンボール或いはグラフェンボールを生長させるためである。酸化グラフェン或いはグラフェンが自ら球形に形成できないことに対し、アルミナボールが製造しやすくて安値であるし、製造されたナノアルミナボールの表面には大量な水酸基グループが含まれるので、ポリドーパミンが球形のアルミナ表面にグラフトされやすく、且つ酸化グラフェンの表面における酸素含有グループ或いはπ-π結合がポリドーパミンと結合してボール型の酸化グラフェン或いはグラフェンに自己重合されることができるからである。もう一つの原因として、アルミナが汚染の少ない酸溶液にエッチングされやすいことが挙げられる。
【0019】
上記の中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法は、具体的に、
塩酸ドパミン溶液、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液を添加し、さらにナノアルミナコロイド水溶液を添加して反応させ、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得るステップと、
【0020】
得られたポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を酸化グラフェン溶液に添加して反応させ、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0021】
得られた酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を塩酸ドパミン、水及びTris溶液と混合して反応させ、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0022】
ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料をHCl溶液と混合してエッチングを行い、中空のボール型の潤滑添加剤を得るステップと、を含む。
【0023】
酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を塩酸ドパミン、水及びTris溶液と混合して反応させる過程において、ドーパミンが重合するとともに酸化グラフェンと結合し、酸化グラフェンを還元させ、グラフェンを得る。
本発明の第三形態である超潤滑の水潤滑剤は、水と上記潤滑添加剤とを含む。
本発明の第四形態である上記超潤滑の水潤滑剤の製造方法では、潤滑添加剤と水を大気雰囲気で混合して超潤滑の水潤滑剤を得る。
本発明の第五形態は、上記超潤滑の水潤滑剤が機械部材における使用である。
【発明の効果】
【0024】
1、本発明は脱イオン水を潤滑液とし、インサイチュアセンブリのボール型酸化グラフェン或いはグラフェン複合材料を潤滑添加剤とし、ボール型酸化グラフェン或いはグラフェンは、摩擦表面で転動可能であって、摩擦摩耗の低減が図れ、ポリドーパミンは大量の水酸基とアミノ基グループを含んで摩擦対偶の表面に吸着しやすく且つ水に分散しやすく、大気雰囲気条件下で添加剤の質量濃度が異なる超潤滑の水潤滑剤が製造され、製造が簡単である上に、操作もしやすく、プロセスが安定で、且つ品質が確実で、コストが安く、再生可能で無公害である。また、該添加剤は対偶の表面に吸着して転移フィルムを形成しやすいので、先端技術の潤滑剤材料として商業化の工事でのマクロの使用要求を満たしている。
2、本発明に係る超潤滑の水潤滑剤は沈殿現象が目立たずに6ヵ月~1年間保存することでき、有効寿命が長い。
【0025】
3、摩擦摩耗試験により本発明に係る水潤滑剤が超潤滑の潤滑挙動と耐摩耗性を備えることが表明され、大気雰囲気における機械作動部材の超潤滑の潤滑剤材料として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の一部を構成する明細書の図面は本発明を更に理解するために提供されるものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明の解釈に用いられ、本発明への不適切な限定を構成していない。
図1】は、酸化グラフェン/ポリドーパミンの製造フローチャートである。
図2】は、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンの製造フローチャートである。
図3】は、本発明の比較例1に係る純脱イオン水潤滑剤のボールオンディスクでの摩擦試験曲線である。
図4】は、本発明の実施例16に係る質量濃度0.20%の酸化グラフェンボール添加剤水潤滑剤のボールオンディスクでの摩擦試験曲線である。
図5】は、本発明の実施例20に係る質量濃度0.20%のグラフェンボール添加剤水潤滑剤のボールオンディスクでの摩擦試験曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明は例示であり、本発明を更に説明するためである。別に断っておかない場合、本文に使用される技術や科学の用語はすべて当業者の通常理解と同じ意味を持っている。
【0028】
なお、ここで使われる用語は発明を実現するための手段を記載するためだけであり、本発明に係る例示的な実施形態を限定するものではない。ここで使われる用語について、上下文に別に明記されていない場合、単数表現も複数の意味を含み、また、明細書に用語の「含有」及び/又は「含む」が使われる場合、特徴、ステップ、操作、デバイス、モジュール及び/又はそれらの組み合わせの存在を意味している。
【0029】
本発明の第一形態である中空酸化グラフェンの潤滑添加剤は、ボール型の中空構造であり、ボール型のハウジングは内から外へ順にポリドーパミン層と酸化グラフェン層である複合層構造或いは内から外へ順にポリドーパミン層、グラフェン層、ポリドーパミン層である複合層構造であり、複合層の層数は単層或いは多層であり、多層の構造は複数の複合層が重ね合わせてなるものである。
本発明の一実施形態において、ボール型の中空構造の直径は50~300nmである。
本発明の第二形態である上記中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法は、具体的に、

【0030】
1)塩酸ドパミン溶液、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液を添加し、さらにナノアルミナコロイド水溶液を添加して反応させ、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得るステップと、
【0031】
2)得られたポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を酸化グラフェン溶液に添加して反応させ、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0032】
或いは3)ステップ2)で得られた酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応と、ステップ2)における酸化グラフェンとの反応とを順次に繰り返して行うことで、多層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0033】
4)単層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料或いは多層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料をHCl溶液と混合してエッチングを行い、中空のボール型の潤滑添加剤を得るステップと、を含む。
エッチングした後、中間のナノアルミナがエッチングされて除去され、酸化グラフェンがポリドーパミンを保護する構造が残る。
【0034】
ステップ1)における塩酸ドパミン、Tris溶液と混合する反応を繰り返して行う過程において、塩酸溶液を添加し、塩酸でpH値を調整した後で、塩酸ドパミンがTris溶液と反応することができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、ステップ3)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、多層の酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得る。
本発明の一実施形態において、ステップ4)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、潤滑添加剤を得る。
【0036】
本発明の一実施形態において、ステップ3)において反応に関与する塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液の体積比及び添加量はステップ1)と同じであり、反応に関与する酸化グラフェン溶液の添加量及び濃度はステップ2)と同じである。
別の製造方法を提供する。
上記中空酸化グラフェンの潤滑添加剤の製造方法は、具体的に、
【0037】
1)塩酸ドパミン溶液、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液を添加し、さらにナノアルミナコロイド水溶液を添加して反応させ、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得るステップと、
【0038】
2)得られたポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を酸化グラフェン溶液に添加して反応させ、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0039】
3)ステップ2)で得られた酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応を行い、単層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0040】
或いは4)ステップ3)で得られたポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ2)における酸化グラフェンとの反応と、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応とを順次に繰り返して行うことで、多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得るステップと、
【0041】
5)単層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料或いは多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料をHCl溶液と混合してエッチングを行い、中空のボール型の潤滑添加剤を得るステップと、を含む。
【0042】
ステップ1)では、ナノアルミナを、塩酸により調整されたpH=8.5の塩酸ドパミン、水及びTrisの混合溶液に添加し、重合反応がアルミナの表面で行われ、ナノアルミナの表面にグラフトされる。
【0043】
酸化グラフェンの表面には、例えば水酸基、カルボキシル基、酸素含有基といった大量の親水基が含まれ、ポリドーパミンは水酸基或いはπ-π結合により酸化グラフェンの表面におけるグループと結合する。
【0044】
ステップ3)では、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応を行う過程において、ドーパミンが重合し、且つ酸化グラフェンと結合して、酸化グラフェンを還元させ、グラフェンを得る。
【0045】
ステップ4)では、酸化グラフェンの被覆とポリドーパミンのグラフトとを順次に繰り返して行うことで、多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を製造する。一般には、ポリドーパミン/グラフェンの複合層の層数が3~6層である。
【0046】
本発明の一実施形態において、ステップ1)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液、ナノAl、HCl溶液の比が0.05~0.15mL:8~12mL:2.2~2.7mL:0.05~0.25g:1mLである。
【0047】
本発明の一実施形態において、ステップ1)における塩酸ドパミンの濃度が2~5mg/mLであり、Tris溶液の濃度が0.05~0.15mol/Lであり、HCl溶液の濃度が0.05~0.15mol/Lであり、好ましくは、塩酸ドパミンの濃度が2mg/mLであり、Tris溶液の濃度が0.1mol/Lであり、HCl溶液の濃度が0.1mol/Lである。
【0048】
ステップ1)において、塩酸ドパミン、水及びTris溶液を混合した後、HCl溶液でpHを調整し、その後、ナノアルミナを添加して、塩酸ドパミンをナノアルミナの表面で重合させ、得られたポリドーパミンがナノアルミナの表面にグラフトされるようになり、ナノアルミナの粒径は50~300nmである。ナノアルミナはポリドーパミンがボールになるためのキャリアとなる。本発明の一実施形態において、ステップ1)では、ナノアルミナ粉体或いはナノアルミナのコロイド溶液を添加し、添加されたナノアルミナコロイドの溶液の濃度が0.05~0.15g/mLであり、0.1g/mLが好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態において、ステップ2)における酸化グラフェン溶液の濃度が0.5~2.5mg/mLである。ポリドーパミングラフトが酸化グラフェンの表面にグラフトする過程は常温で行われ、酸化グラフェンの表面には例えば水酸基、カルボキシル基、酸素含有基といった官能基が含まれ、ポリドーパミンは水酸基或いはπ-π結合により酸化グラフェンにグラフトする。
本発明の一実施形態において、酸化グラフェンの製造方法はHummer法である。
本発明の一実施形態において、ポリドーパミンとアルミナが反応する時間は10~15hである。
【0050】
本発明の一実施形態において、ステップ1)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、ポリドーパミンによりボール型ナノアルミナが被覆された複合材料を得る。
【0051】
本発明の一実施形態において、ステップ2)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得る。
【0052】
本発明の一実施形態において、ステップ3)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、単層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得る。
【0053】
本発明の一実施形態において、ステップ4)において、反応後の混合物を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、多層のポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得る。
【0054】
本発明の一実施形態において、ステップ5)において、HClでエッチングを行った後に得られた溶液を遠心分離して上清液を除去した後、凍結乾燥して、潤滑添加剤を得る。
【0055】
本発明の一実施形態において、ステップ3)或いはステップ4)で反応に関与する塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液の体積比及び添加量はステップ1)と同じであり、ステップ4)で反応に関与する酸化グラフェン溶液の添加量及び濃度はステップ2)と同じである。
本発明の第三形態である超潤滑の水潤滑剤は、水と上記潤滑添加剤とを含む。
【0056】
本発明の一実施形態において、超潤滑の水潤滑剤における潤滑添加剤の質量濃度が0.01%~0.8%であり、好ましくは0.01~0.5%であり、さらに好ましくは0.2%である。上記質量濃度範囲内の超潤滑の水潤滑剤は比較的に低い摩擦係数を有する。
本発明の第四形態である上記超潤滑の水潤滑剤の製造方法では、潤滑添加剤と水を大気雰囲気で混合して超潤滑の水潤滑剤を得る。
本発明の第五形態は、上記超潤滑の水潤滑剤が機械部材における使用である。
以下では、実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0057】
(1)Hummer改良法で酸化グラフェン溶液を製造する。まず、1000mLの乾燥フラスコを氷水浴で5min冷却した後で、濃硫酸を100mL添加し、攪拌過程で鱗片状黒鉛2g、硝酸ナトリウム1.2g、過マンガン酸カリウム8.0gを添加し、氷水浴の温度を5℃に制御し、磁気攪拌しながら2h反応させる。その後、フラスコを取り出し、定温加熱マグネチックスターラ上に置き、35℃の条件下で磁気攪拌しながら2h反応させる。最後、脱イオン水を150mL添加し、定温加熱スターラで反応温度を95℃にまで昇温させ、引き続き1h磁気攪拌し、濃度50mg/mLの酸化黒鉛溶液を得る。脱イオン水を添加して酸化黒鉛溶液を希釈し、超音波で2h振とうし、得られた酸化グラフェン水溶液を冷蔵庫に入れて完全に冷凍させた後、取り出して凍結乾燥機に入れ、真空凍結乾燥を行い、酸化グラフェン粉末を得る。
【0058】
(2)50mLのビーカーに脱イオン水を20mL添加し、塩酸ドパミン溶液(2.0mg/mL)0.2mLとTris溶液(0.1mol/L)5.0mLを脱イオン水に添加し、予め調製しておいたHCl溶液(0.1mol/L)2.0mLを上記溶液に添加し、溶液のpH値を8.5に調整し、そして、ナノAl粉末100mgを上記溶液に添加し、溶液全体を12h磁気攪拌し、ポリドーパミンがインサイチュグラフトされたボール型ナノAlの表面を得る。得られた上記溶液を遠心機にて10000回転/分で20分間遠心分離を行って上清を廃棄し、得られたポリドーパミンにより被覆されたナノAl粉末は、オーブン乾燥、遠心分離及び乾燥を行い、黒色粉末として得る。
【0059】
(3)(2)の黒色粉末を5mg取り、それぞれ濃度0.5mg/mLの酸化グラフェン溶液に添加してから、12h磁気攪拌し、単層の酸化グラフェンにより被覆されたポリドーパミン/Al複合材料を得る。
【0060】
(4)得られた酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料溶液に濃度0.1mol/LのHCl溶液(塩酸過剰)を5.0mL添加し、コアとしてのナノAlをエッチングすることで、少層の酸化グラフェンボール溶液を得、得られた溶液を遠心機にて10000回転/分で20分間遠心分離を行って上清を廃棄し、得られた少層の酸化グラフェンボールは、凍結乾燥機にて真空凍結乾燥を行い、黒色粉末として得る。
【0061】
図1は酸化グラフェン/ポリドーパミンの製造フローチャートを示し、ここで、aはボール型ナノアルミナであり、bはポリドーパミン/ナノアルミナであり、cは酸化グラフェン/ポリドーパミン/ナノアルミナであり、dは酸化グラフェン/ポリドーパミンである。
【実施例2】
【0062】
実施例1との相違点は、酸化グラフェン溶液の濃度が1.0mg/mLである。
【実施例3】
【0063】
実施例1との相違点は、酸化グラフェン溶液の濃度が1.5mg/mLである。
【実施例4】
【0064】
実施例1との相違点は、酸化グラフェン溶液の濃度が2.0mg/mLである。
【実施例5】
【0065】
実施例1との相違点は、酸化グラフェン溶液の濃度が2.5mg/mLである。
【実施例6】
【0066】
実施例1との相違点は、酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ポリドーパミンのグラフトとステップ(3)をもう一回行うことで、酸化グラフェン/ポリドーパミン/酸化グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得、ただし、ポリドーパミンの重合は塩酸ドパミン、水とTris溶液及びHCl溶液を混合して反応させることで行われ、塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液の体積及び濃度はステップ(2)と同じである。
【実施例7】
【0067】
(1)実施例1のステップ(1)と同じである。
(2)実施例1のステップ(2)と同じである。
【0068】
(3)ステップ(2)で得られた黒色粉末を5mg秤量し、それぞれ濃度0.5mg/mLの酸化グラフェン溶液に添加した後、12h磁気攪拌し、単層の酸化グラフェンにより被覆されたポリドーパミン/Al複合材料の表面を得る。
【0069】
(4)ステップ(3)で得られた単層の酸化グラフェンにより被覆されたポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ(2)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応を行い、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料を得る。
【0070】
(5)得られたポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料溶液に濃度0.1mol/LのHCl溶液(塩酸過剰)を5.0mL添加し、コアとしてのナノAlをエッチングすることで、少層のグラフェンボール溶液を得、得られた溶液を遠心機にて10000回転/分で20分間遠心分離を行って上清を廃棄し、得られた少層のグラフェンボールは、凍結乾燥機にて真空凍結乾燥を行い、黒色粉末として得る。
【0071】
図2はポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンの製造手順を示し、ここで、aはボール型ナノアルミナであり、bはポリドーパミン/ナノアルミナであり、cは酸化グラフェン/ポリドーパミン/ナノアルミナであり、dはポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/ナノアルミナであり、eはポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンである。
【実施例8】
【0072】
実施例7との相違点は、ステップ(3)における酸化グラフェン溶液の濃度が1.0mg/mLである。
【実施例9】
【0073】
実施例7との相違点は、ステップ(3)における酸化グラフェン溶液の濃度が1.5mg/mLである。
【実施例10】
【0074】
実施例7との相違点は、ステップ(3)における酸化グラフェン溶液の濃度が2.0mg/mLである。
【実施例11】
【0075】
実施例7との相違点は、ステップ(3)における酸化グラフェン溶液の濃度が2.5mg/mLである。
【実施例12】
【0076】
実施例7との相違点について、ステップ(4)で得られたポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/Al複合材料に対して、ステップ(3)とステップ(2)における塩酸ドパミン、水、Tris溶液及びHCl溶液と混合する反応とをもう一回行うことで、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミン潤滑添加剤を得る。
【実施例13】
【0077】
実施例1のステップ(4)で得られた黒色粉末1mgを、脱イオン水が加えているビーカーに添加し、該ビーカーの開口部を室温で密封し、超音波で2h振とうした後、質量濃度0.01%の均一の混合溶液が得られ、超潤滑の水系潤滑剤を得る。
【実施例14】
【0078】
実施例13との相違点は、黒色粉末の添加量が5mgであり、質量濃度0.05%の混合溶液が得られることである。
【実施例15】
【0079】
実施例13との相違点は、黒色粉末の添加量が10mgであり、質量濃度0.1%の混合溶液が得られることである。
【実施例16】
【0080】
実施例13との相違点は、黒色粉末の添加量が20mgであり、質量濃度0.2%の混合溶液が得られることである。前記多層の酸化グラフェンボール水溶液の超潤滑の水潤滑剤の大気雰囲気における摩擦摩耗試験曲線は図4に示す。
【実施例17】
【0081】
実施例13との相違点は、黒色粉末の添加量が30mgであり、質量濃度0.3%の混合溶液が得られることである。
【実施例18】
【0082】
実施例13との相違点は、黒色粉末の添加量が40mgであり、質量濃度0.4%の混合溶液が得られることである。
【実施例19】
【0083】
実施例13との相違点は、黒色粉末の添加量が50mgであり、質量濃度0.5%の混合溶液が得られることである。
【実施例20】
【0084】
実施例16との相違点は、実施例7のステップ(5)で得られた黒色粉末が添加されることである。前記多層のグラフェンボール水溶液の超潤滑の水潤滑剤の大気雰囲気における摩擦摩耗試験曲線は図5に示す。
【実施例21】
【0085】
実施例1との相違点は、ナノアルミナコロイド水溶液が添加されることである。具体的な操作手順は、以下の通りである。
【0086】
100mLのビーカーに、濃度0.1g/mLのナノAlコロイド水溶液を調製した後、塩酸ドパミンを5.0mg/mL調製する。50mLのビーカーに脱イオン水を20mL添加し、塩酸ドパミン溶液(2.0mg/mL)0.2mLとTris溶液(0.1mol/L)5mLを脱イオン水に添加し、予め調製しておいたHCl溶液(0.1mol/L)2.0mLを上記溶液に添加し、溶液のpH値を8.5に調整し、そして、ナノAlコロイド溶液(0.1g/mL)5.0mLを上記調製溶液に添加し、溶液全体を12h磁気攪拌する。
その他の操作手順は実施例1と同じであり、酸化グラフェン/ポリドーパミン潤滑添加剤が得られる。
実施例21は実施例1と比べると、ナノアルミナの添加方式、即ち操作方法が異なる。
(比較例1)
水潤滑剤は脱イオン水である。
(試験例1)
【0087】
大気雰囲気でボールオンディスク往復動摩擦摩耗試験機を利用してテスト(米国CETR社,UMT-3)を行う。なお、ステンレスディスクは下試料として平底ディスクに固定され、直径6.0mmの鋼球はサブボールとして上に固定され、上試料となる。テスト条件は、摺動時間が60min、摺動振幅が1mm、往復周波数が20Hz、負荷が1Nである。
【0088】
origin9.0ソフトウェアで製図された摩擦摩耗曲線図は図3図4図5に示し、それぞれが比較例1、実施例16、実施例20であり、結果により、純脱イオン水と比べると、インサイチュアセンブリのボール型酸化グラフェン水溶液潤滑剤の摩擦係数が0.006に低減され、マクロの大気雰囲気での超潤滑の挙動が実現され、摩耗率がほぼゼロであることが分かり、インサイチュアセンブリの複合材料がマクロ工事用の超潤滑の水潤滑剤添加剤として適用できることがさらに証明される。
【0089】
図4図5における曲線は曲線プロファイルが異なり、ポリドーパミン/グラフェン/ポリドーパミンは酸化グラフェン/ポリドーパミンと比べると、摩擦中で、超潤滑になるために必要な馴染み時間が短く且つ超潤滑の摩擦係数がより安定である。
実施例13~実施例20の摩擦係数は表1に示すとおりである。
【0090】
【0091】
上記は本発明の好適な実施例だけであり、本発明を限定するものではない。当業者が本発明について様々な変更や変化を行うことができると理解されうる。本発明の主旨や原則内で行ったいかなる補正、同等置換え、改良なども本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5