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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】成形品処理システム
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/08 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
B30B11/08 B
B30B11/08 C
B30B11/08 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017196329
(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公開番号】P2019069459
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000141543
【氏名又は名称】株式会社菊水製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】島田 理史
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 智弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】楠 尚
(72)【発明者】
【氏名】綿野 哲
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104902(JP,A)
【文献】特開2016-203218(JP,A)
【文献】特開2003-186519(JP,A)
【文献】特開平10-185824(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181925(JP,U)
【文献】特公昭42-021489(JP,B1)
【文献】特開2011-095133(JP,A)
【文献】特表2012-525895(JP,A)
【文献】特開2006-043521(JP,A)
【文献】特開2003-063642(JP,A)
【文献】特開2004-012048(JP,A)
【文献】特開2017-164786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/08
A61J 3/10
G01N 21/85
B65G 47/80
B65G 49/00
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルに上下に貫通した臼孔が設けられ、臼孔の上下に上杵及び下杵が上下摺動可能に保持され、臼孔内に充填された粉体を上杵と下杵とで圧縮して成形品を成形する粉体圧縮成形機において成形された成形品に対して後工程の処理を実施するためのシステムであって、
複数個の成形品を前記粉体圧縮成形機において成形された順序を維持したまま整列させた状態で搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される成形品の移動経路に臨み、搬送される個々の成形品に対して所定の後工程の処理を実施する処理機構と
を具備するモジュールを要素とし、
上流側のモジュールと下流側のモジュールとを接続することで、上流側のモジュールである処理を実施した後の成形品を順次下流側のモジュールに受け渡して当該モジュールにて別の所定の処理を実施できるように構成され、
前記粉体圧縮成形機及び前記各モジュールがそれぞれ封じ込め容器内に収められ、
前記粉体圧縮成形機の封じ込め容器と、これに連結する前記モジュールの封じ込め容器との間に、両封じ込め容器の内部空間を連通させるとともに前者の封じ込め容器と後者の封じ込め容器とを任意に着脱できるジョイントを介設し、
また、上流側の前記モジュールの封じ込め容器と、これに連結する下流側の前記モジュールの封じ込め容器との間に、両封じ込め容器の内部空間を連通させるとともに前者の封じ込め容器と後者の封じ込め容器とを任意に着脱できるジョイントを介設し、
前記粉体圧縮成形機の封じ込め容器、前記上流側のモジュールの封じ込め容器、前記下流側のモジュールの封じ込め容器にそれぞれ、相互に接続可能な共通の前記ジョイントを設けてあり、
当該封じ込め容器内の雰囲気の外部への漏出を抑制するとともに、当該封じ込め容器内で成形品に対する後工程の処理を実施する成形品処理システム。
【請求項2】
前記モジュールが具備する前記搬送機構が、複数個の成形品を整列させた状態で略水平方向に移動させる請求項1記載の成形品処理システム。
【請求項3】
前記モジュールが具備する前記処理機構が、成形品を撮影するカメラを含み成形品の外面の状態を検査する外面検査機構、成形品に付着している粉塵を除去する粉塵除去機構、成形品の体積、重量若しくは含有成分を検査する品質検査機構、成形品への異物の混入の有無を検査する異物探知機構、成形品の外面に印刷若しくは刻印を施す印字機構、又は成形品を包装する包装機構のうち少なくとも何れか一つである請求項1又は2記載の成形品処理システム。
【請求項4】
前記粉体圧縮成形機が、複数の臼孔、上杵及び下杵の組を具備しており、
前記モジュールが具備する前記処理機構が、成形品を撮影するカメラを含み成形品の外面の状態を検査する外面検査機構、成形品の体積、重量若しくは含有成分を検査する品質検査機構、又は成形品への異物の混入の有無を検査する異物探知機構であり、
前記処理機構により成形品を検査した結果に係る情報を、当該成形品を成形した臼孔、上杵及び下杵の組を識別する情報と関連づけて制御装置の記憶デバイスに記憶させる請求項1、2又は3記載の成形品処理システム。
【請求項5】
前記モジュールが、前記処理機構による検査を得て不良であると判断された成形品を正常な成形品から選り分けて排除する排除機構を具備している請求項4記載の成形品処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体圧縮成形機において成形された成形品に対して任意の後工程の処理を実施する成形品処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転盤のテーブルに臼孔を設けるとともに、各臼孔の上下に上杵及び下杵をそれぞれ摺動可能に保持させておき、テーブル及び杵をともに水平回転させて、上杵及び下杵の対が上ロール及び下ロールの間を通過するときに臼孔内に充填された粉体を圧縮成形(又は、打錠)する回転式の粉体圧縮成形機が公知である。この種の成形機は、医薬品の錠剤や食品、電子部品等を製造するために利用される。
【0003】
成形品に対しては、種々の後工程の処理が実施される。例えば、成形品の外面の異常の有無の検査、成形品に付着した粉塵の除去、成形品の体積、重量若しくは含有成分の検査、金属の混入の有無の検査、成形品の外面への印刷若しくは刻印、成形品の包装、等である。近時では、下記特許文献にも開示されているように、後工程の処理を実施するための装置又は機器を粉体圧縮成形機の下流に連結し、成形品の成形から後工程までを一括して実行することが試みられている。
【0004】
粉体圧縮成形機の臼孔内で成形された成形品は、下杵によりテーブルの上面の高さまで押し上げられる。その後、成形品は、テーブルの上面に臨む位置に設置されたダンパ(又は、スクレーパ)により掻き取られ、下方に傾斜した樋状のシュートに導かれ、シュートを落下して後工程の装置又は機器に送り込まれる。ある処理を実施する装置又は機器と、次の処理を実施する装置又は機器との間も同様に、樋状のシュートを介して接続し、成形品を受け渡しすることが通例である。
【0005】
このような手法では、当然ながら成形品の高さ位置が徐々に下降してゆくため、途中で成形品を持ち上げるリフト装置を配置する必要が生じる。加えて、成形品がシュートに落とし込まれる際に、成形品がシュートの内壁や底壁に衝突したり成形品同士が衝突したりしてダメージ(割れ、欠け、摩損等)を受ける懸念もある。特に、成形品が硬度の低いOD錠(口腔内崩壊錠。口腔内で唾液又は少量の水で崩壊する錠剤)やチュアブル錠(咀嚼錠。口腔内で噛み砕かれる錠剤)等であると、落下によるダメージの問題が顕在化する。
【0006】
また、シュートを通じて成形品を流送する過程で、粉体圧縮成形機で成形品が成形された順序が保たれなくなる。そのため、粉体圧縮成形機の特定の臼または杵に、粉体が付着したまま残存して成形品に欠けが生じるスティッキングその他の打錠障害や、杵の杵先が欠損する等の金型異常が起こったときには、正常な成形品と不良な成形品とが区別できずに混交することになり、多数個の成形品をおしなべて廃棄せざるを得なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-164786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粉体圧縮成形機で成形した成形品に任意の後工程の処理を施すために好適な成形品処理システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、テーブルに上下に貫通した臼孔が設けられ、臼孔の上下に上杵及び下杵が上下摺動可能に保持され、臼孔内に充填された粉体を上杵と下杵とで圧縮して成形品を成形する粉体圧縮成形機において成形された成形品に対して後工程の処理を実施するためのシステムであって、複数個の成形品を前記粉体圧縮成形機において成形された順序を維持したまま整列させた状態で搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される成形品の移動経路に臨み、搬送される個々の成形品に対して所定の後工程の処理を実施する処理機構とを具備するモジュールを要素とし、上流側のモジュールと下流側のモジュールとを接続することで、上流側のモジュールである処理を実施した後の成形品を順次下流側のモジュールに受け渡して当該モジュールにて別の所定の処理を実施できるように構成された成形品処理システムを構成した。ここで、粉体とは、微小個体の集合体であり、いわゆる顆粒などの粒体の集合体と、粒体より小なる形状の粉末の集合体とを含む概念である。
【0010】
このようなものであれば、成形品が前記粉体圧縮成形機において成形された順序を維持したまま整列させた状態で搬送されるので、任意の処理機構を具備するモジュールを加除することで、成形品に対して任意の後工程の処理を実施することができる。
【0011】
前記粉体圧縮成形機及び前記各モジュールがそれぞれ封じ込め容器内に収められ、前記粉体圧縮成形機の封じ込め容器と、これに連結する前記モジュールの封じ込め容器との間に、両封じ込め容器の内部空間を連通させるとともに前者の封じ込め容器と後者の封じ込め容器とを任意に着脱できるジョイントを介設し、また、上流側の前記モジュールの封じ込め容器と、これに連結する下流側の前記モジュールの封じ込め容器との間に、両封じ込め容器の内部空間を連通させるとともに前者の封じ込め容器と後者の封じ込め容器とを任意に着脱できるジョイントを介設し、前記粉体圧縮成形機の封じ込め容器、前記上流側のモジュールの封じ込め容器、前記下流側のモジュールの封じ込め容器にそれぞれ、相互に接続可能な共通の前記ジョイントを設けてあり、当該封じ込め容器内の雰囲気の外部への漏出を抑制するとともに、当該封じ込め容器内で成形品に対する後工程の処理を実施するものであれば、中途で成形品の系外排出が生じず、粉体を含む雰囲気が外部に漏出しないコンテインメント(封じ込め)環境を実現することができ、特に高薬理活性物質を含有する成形品の生産において有用となる。また、成形品へのコンタミネーション(汚染)も抑制することができる。
【0012】
前記モジュールが具備する前記搬送機構は、複数個の成形品を整列させた状態で略水平方向に移動させるものであることが好ましい。さすれば、成形品の高さ位置の上下動を極力抑制することができ、成形品が重力により落下する際にダメージを受けるリスクを低減できる。また、成形品を持ち上げるリフト装置が必須ではなくなる。
【0013】
前記モジュールが具備する前記処理機構の具体例としては、成形品を撮影するカメラを含み成形品の外面の状態を検査する外面検査機構、成形品に付着している粉塵を除去する粉塵除去機構、成形品の体積、重量若しくは含有成分を検査する品質検査機構、成形品への異物の混入の有無を検査する異物探知機構、成形品の外面に印刷若しくは刻印を施す印字機構、成形品を包装する包装機構等を挙げることができる。
【0014】
前記粉体圧縮成形機が、複数の臼孔、上杵及び下杵の組を具備しており、前記モジュールが具備する前記処理機構が、成形品を撮影するカメラを含み成形品の外面の状態を検査する外面検査機構、成形品の体積、重量若しくは含有成分を検査する品質検査機構、又は成形品への異物の混入の有無を検査する異物探知機構であり、前記処理機構により成形品を検査した結果に係る情報を、当該成形品を成形した臼孔、上杵及び下杵の組を識別する情報と関連づけて制御装置の記憶デバイスに記憶させるものであれば、検査処理により不良が検知された成形品を特定して追跡することができる。粉体圧縮成形機において成形品の不良を生んだ臼及び杵の組を速やかに特定することもできる。
【0015】
前記モジュールが、前記処理機構による検査を得て不良であると判断された成形品を正常な成形品から選り分けて排除する排除機構を具備していれば、粉体圧縮成形機及び成形品処理システムの稼働を停止することなく不良の成形品のみを排除することができ、成形品の歩留まりもよくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粉体圧縮成形機で成形した成形品に任意の後工程の処理を施すために好適な成形品処理システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の回転式粉体圧縮成形機の側断面図。
図2】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機及び搬送機構の要部平面図。
図3】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の円筒図。
図4】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機のロール及びロードセルの構成を示す図。
図5】同実施形態の搬送機構の平面図。
図6】同実施形態の搬送機構の要部縦断面図。
図7】同実施形態の搬送機構の要部縦断面図。
図8】同実施形態の搬送機構及び処理機構の要部縦断面図。
図9】同実施形態の搬送機構の要部縦断面図。
図10】同実施形態の搬送機構の要部縦断面図。
図11】同実施形態の搬送機構の要部平面図。
図12】同実施形態の搬送機構の要部縦断面図。
図13】同実施形態の搬送機構及び処理機構の要部縦断面図。
図14】同実施形態の搬送機構及び処理機構の要部縦断面図。
図15】同実施形態の搬送機構の要部縦断面図。
図16】同実施形態の搬送機構及び処理機構の要部縦断面図。
図17】同実施形態の搬送機構及び排除機構の要部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、本実施形態における回転式粉体圧縮成形機(以下「成形機」という)Aの全体概要を述べる。図1に示すように、本成形機Aのフレーム1内には、回転軸となる立シャフト2を設立し、その立シャフト2の上部に接続部を介して回転盤3を取り付けている。
【0019】
回転盤3は、立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち自転する。回転盤3は、テーブル(臼ディスク)31と、上杵保持部32と、下杵保持部33とからなる。図2に示すように、テーブル31は上下方向から見た平面視において略円板状をなしており、その外周部に回転方向(周方向)に沿って所定間隔で複数の臼孔4を設けてある。臼孔4は、テーブル31を上下方向に貫通している。テーブル31は、複数のプレートに分割するものでもよい。また、テーブル31自体に直接臼孔4を穿ち形成するのではなく、テーブル31とは別体をなしテーブル31に対して着脱可能な複数個の臼部材をテーブル31に装着し、それら臼部材の各々に上下方向に貫通した臼孔を穿っている構成としてもよい。
【0020】
各臼孔4の上下には、上杵5及び下杵6を配置する。上杵5及び下杵6は、上杵保持部32及び下杵保持部33により、それぞれが個別に臼孔4に対して上下方向に摺動可能であるように保持させる。上杵5の杵先53は、臼孔4に対して出入りする。下杵6の杵先63は、常時臼孔4に挿入してある。上杵5及び下杵6は、回転盤3及び臼孔4とともに立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち公転する。
【0021】
立シャフト2の下端側には、ウォームホイール7を取り付けている。ウォームホイール7には、ウォームギア10が噛合する。ウォームギア10は、モータ8により駆動されるギア軸9に固定している。モータ8が出力する駆動力は、ベルト11によってギア軸9に伝わり、ウォームギア10、ウォームホイール7を介して立シャフト2ひいては回転盤3及び杵5、6を回転駆動する。
【0022】
圧縮成形品P、例えば医薬品の錠剤等の原材料となる粉体は、フィードシューXから臼孔4に充填する。フィードシューXの種類には、攪拌フィードシューとオープンフィードシューがあり、そのうちの何れを採用しても構わない。フィードシューXへの粉体の供給には、粉体供給装置を使用する。その粉体供給装置に対する粉体の供給は、ホッパ19から行う。ホッパ19は、成形機Aに対して着脱することができる。
【0023】
図2及び図3に示しているように、杵5、6の立シャフト2の軸回りの公転軌道上には、杵5、6を挟むようにして上下に対をなす予圧上ロール12及び予圧下ロール13、本圧上ロール14及び本圧下ロール15がある。予圧上ロール12及び予圧下ロール13、並びに本圧上ロール14及び本圧下ロール15は、臼孔4内に充填された粉体を杵先53、63の先端面を以て上下から圧縮するべく、上下両杵5、6を互いに接近させる方向に付勢する。
【0024】
上杵5、下杵6はそれぞれ、ロール12、13、14、15によって押圧される頭部51、61と、この頭部51、61よりも細径な胴部52、62とを有する。回転盤3の上杵保持部32は、上杵5の胴部52を上下に摺動可能に保持し、下杵保持部33は、下杵6の胴部62を上下に摺動可能に保持する。胴部52、62の先端部位即ち杵先53、63は、臼孔4内に挿入可能であるように、それ以外の部位と比べて一層細く、臼孔4の内径に略等しい直径である。杵5、6の公転により、ロール12、13、14、15は杵5、6の頭部51、61に接近し、頭部51、61に乗り上げるようにして接触する。さらに、ロール12、13、14、15は上杵5を下方に押し下げ、下杵6を上方に押し上げる。ロール12、13、14、15が杵5、6上の平坦面に接している期間は、杵5、6が臼孔4内の粉体に対して一定の圧力を加え続ける。
【0025】
本圧上ロール14及び本圧下ロール15による加圧位置から、回転盤3及び杵5、6の回転方向に沿って先に進んだ位置に、成形品取出位置16が存在する。成形品取出位置16までに、下杵6の杵先63の上端面が臼孔4の上端即ちテーブル31の上面と略同じ高さとなるまで下杵6が上昇し、臼孔4内にある成形品Pを臼孔4から押し出す。臼孔4から押し出された成形品Pは、成形品取出位置16において成形機Aに連結した成形品処理システム(以下「処理システム」という)Sに移送される。
【0026】
本実施形態の成形機A及び処理システムS(の各モジュールB、C、D)の制御を司る制御装置0は、プロセッサ、記憶デバイスであるメインメモリ及び補助記憶デバイス(例えば、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等)、入出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステム、パーソナルコンピュータ又はワークステーション、あるいはプログラマブルコントローラである。この制御装置0は、予め補助記憶デバイスに格納されているプログラムをメモリを介してプロセッサに読み込み、プロセッサにおいて解読して、成形機A及び処理システムSの制御を遂行する。
【0027】
図4に示すように、成形機Aの上ロール12、14には、ロール12、13、14、15が杵5、6を介して臼孔4内の粉体を圧縮する際の圧力を検出するためのロードセル100を付設してある。制御装置0は、ロール12、13、14、15に付帯するロードセル100が出力する信号を受信し参照することで、予圧ロール12、13が臼孔4内の粉体を圧縮する圧力(予圧圧力)の大きさや、本圧ロール14、15が臼孔4内の粉体を圧縮する圧力(本圧圧力)の大きさを知得することができる。ロードセル100からもたらされる信号は、一組の杵5、6が一つの臼孔4の粉体を圧縮する圧力が最大となる時点でピークを迎えるようなパルス信号列の形をとる。そのパルス列の数を計数すれば、成形機Aにおける単位時間あたりの成形品の製造数量を把握することができる。
【0028】
圧縮圧力が所定の適正範囲外の大きさとなったときには、今圧縮成形した成形品Pが不良であると解釈される。即ち、臼孔4に適正量よりも多量の粉体が充填されると、ロードセル100により計測される圧縮圧力が所定範囲を超えて大きくなる。逆に、臼孔4に適正量よりも少量の粉体が充填されると、ロードセル100により計測される圧縮圧力が所定範囲よりも小さくなる。何れにせよ、当該臼孔4内で圧縮成形される成形品の重量、密度及び硬度が所望の値から逸脱することとなり、不良の成形品Pとなる可能性が高い。
【0029】
また、成形機Aには、回転盤3の回転角度及び回転速度を検出するための角位置センサ(回転角センサ)、例えばロータリエンコーダを設置している。制御装置0は、このロータリエンコーダが出力する信号を受信し参照することで、回転盤3の回転の中心軸回りの周方向に沿って配列されている多数の臼4及び杵5、6の組の各々が現在どの位置にあるかを知得することができる。ロードセル100の出力信号を参照して成形品Pの不良を感知した場合には、その成形品Pが収まっている臼孔4の現在位置を認識してこれを追跡できるということになる。制御装置0は、ロードセル100を介して成形品Pを成形する際の圧縮圧力の適否を検査した結果に係る情報(対象の成形品Pが正常であるか不良であるかの判定結果)を、その対象の成形品Pを成形した臼4及び杵5、6の組を識別する情報、例えば何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0030】
図2及び図11に示すように、本実施形態において成形機Aに付帯する処理システムSは、成形品Pに対する何らかの後工程の処理を実施するためのモジュールB、C、Dを複数配列したものであり、各モジュールB、C、Dはそれぞれ、複数個の成形品Pを成形機Aにおいて成形された順序を維持したまま整列させた状態で搬送する搬送機構B1、C1、D1と、搬送機構B1、C1、D1により搬送される成形品Pの移動経路に臨み、搬送される個々の成形品Pに対して所定の処理を実施する処理機構B2、B3、C2、C3、D2とを具備している。
【0031】
搬送機構B1、C1、D1は、互いに同期して水平回転する回転体17、24、27を有し、その回転体17、24、27の外周縁に沿って、即ち回転体17、24、27の回転の中心軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に係合部171、242、272が設けられたものである。係合部171、242、272は、それぞれが一個の成形品Pと係合し、その成形品Pを回転体17、24、27に対し相対的に変位しないよう保定する。係合部171、242、272に係合した成形品Pは、回転体17、24、27の回転に伴い、水平回転の軌跡に沿って移動する。特に、成形機Aの下流に直結するモジュールBの搬送機構B1は、成形機Aにおいて成形品Pを成形した順番を維持したままで成形機Aから成形品Pを順次取り出す取出装置としての役割を担っている。よって、まず、このモジュールBの搬送機構B1に関して詳記する。
【0032】
搬送機構B1は、成形機Aにおいて成形した成形品Pを成形品取出位置16にて取り出し、成形品Pに対して次の工程を実施する処理機構B2、B3に向けて搬送する。図5ないし図8に示すように、搬送機構B1は、成形機Aのテーブル31と同期して水平回転する回転体17と、回転体17の直下にあって回転体17と対向する保持体18と、回転体17の外周部における保持体18と対向する下面から保持体18に向かって下方に突出する複数の突起171と、回転体17の外周部に近接し突起171と突起171との間の空隙を外側方から閉鎖する外側のガイド20と、回転体17の外周部よりも内方にあって突起171と突起171との間の空隙を内側方から閉鎖する内側のガイド21とを主たる構成要素とする。
【0033】
回転体17は、上下方向から見た平面視において略円板状をなしている。この回転体17に設けた複数の突起171は、回転体17の外周縁に沿って、即ち回転体17の回転の中心軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に配置されている。これらの突起171は、回転体17と一体となって回転することは言うまでもない。成形機Aが成形した成形品Pは、回転体17の突起171に捕捉され、突起171と突起171との間の空隙に収容された状態で移送される。つまり、突起171、又は突起171間の空隙が、搬送機構B1における成形品Pが係合する係合部として機能する。
【0034】
周方向に沿って隣り合う突起171と突起171との間の空隙の大きさWは、成形機Aが成形する成形品Pの最も長い外寸よりも大きい。ここに言う最も長い外寸とは、平面視において成形品Pの外縁(輪郭)上のある点から当該成形品Pの重心又は幾何中心に向かって伸び、同重心又は幾何中心を通過して成形品Pの外縁上の別の点に到達する線分の長さのうち、最も大きいものを指す。成形品Pが平面視楕円形状をなす場合には、その長軸又は長径が最も長い外寸に該当する。
【0035】
図6に示すように、回転体17の下面と、保持体18の上面とは、上下方向に沿って所定距離を隔てて対向している。回転体17の下面は、成形機Aのテーブル31の上面よりも高位置にある。その上で、回転体17の外周部の一部が、成形機Aのテーブル31に上方から重なる。回転体17の下面から突出する突起171の先端は、保持体18の上面及びテーブル31の上面に極近接する。テーブル31及び回転体17の同期回転に伴い、各臼孔4と、各突起171間の空隙とは、成形品取出位置16において一時的に重なり合う。
【0036】
回転体17と異なり、保持体18は回転せず、回転体17の外周部に下方から重なるように配置される。保持体18は、成形機Aのテーブル31に隣接し、その上面がテーブル31の上面と略等しい高さにある。回転体17の突起171間の空隙内に捕捉された成形品は、突起171とともに水平回転しながら、この保持体18の上面を摺動又は滑走する。つまり、保持体18は、移送される成形品を下方から支持する。テーブル31との干渉を避けるべく、保持体18における、テーブル31と回転体17とが平面視重なり合う成形品取出位置16に対応する部位は、テーブル31の外周縁に沿って円弧状に切り欠いてある。保持体18の当該部位の端縁は、テーブル31の外周縁に極近接しており、成形品Pが成形機Aのテーブル31の上面から搬送機構B1の保持体18の上面に円滑に移乗することができる。
【0037】
回転体17の下面と保持体18の上面との離間距離Hは、成形機Aが成形する成形品Pの上下方向に沿った厚みと同程度又はこれよりも大きく、なおかつ成形品Pの最も短い外寸よりも小さく設定する。ここに言う最も短い外寸とは、平面視において成形品Pの外縁上のある点から当該成形品Pの重心又は幾何中心に向かって伸び、同重心又は幾何中心を通過して成形品Pの外縁上の別の点に到達する線分の長さのうち、最も小さいものを指す。成形品Pが平面視楕円形状をなす場合には、その短軸又は短径が最も短い外寸に該当する。成形品Pの厚みは、成形機Aにおいて臼孔4内に充填された粉体の圧縮が完了するときの上杵5の杵先53と下杵6の杵先63との上下方向に沿った距離に略等しい。
【0038】
外側のガイド20は、回転体17の外周縁に隣接し、平面視回転体17を取り巻く略円弧状をなすように拡張している。このガイド20は、回転体17の径方向に沿った外側方に開口している突起171間の空隙を外側方より閉塞し、成形品が遠心力により空隙から外側方に飛び出すことを抑止する。外側のガイド20の始端部201は、成形機Aのテーブル31に向かって突き出し、テーブル31に上方から重なるようにして臼孔4の水平回転の軌跡の直上に位置しており、成形機Aのテーブル31の上面まで押し出された成形品を掻き取るダンパ(又は、スクレーパ)としての役割を担う。
【0039】
また、内側のガイド21は、回転体17の突起171の径方向に沿った内側方の端縁に隣接し、回転体17の外周部の内側で平面視略円弧状をなすように拡張している。このガイド21は、回転体17の径方向に沿った内側方に開口している空隙を内側方より閉塞し、成形品が意図せず内側方に変位することを抑止する。内側のガイド21は、保持体18に対して固定され、または保持体18と一体化していることがある。なお、回転体17における、内側のガイド21の上面が面する部位の下面は、回転体17の外周部の空隙に面する(即ち、突起171を設けていない箇所の)下面よりも若干上方に凹んでいる。そして、内側のガイド21の上面は、後述する粉塵除去機構B2が設けられている区域を除き、回転体17の外周部の空隙に面する下面よりも若干ながら高い位置にある。これにより、成形品Pが回転体17の下面と内側のガイド21の上面との間隙に入り込むことを防止する。
【0040】
既に述べた通り、成形品取出位置16までに、成形機Aの下杵6が上昇して成形品Pを臼孔4から押し出す。押し出された成形品Pは、成形品取出位置16においてテーブル31の回転に伴って外側のガイド20に当接し、外側のガイド20に沿って移動して、テーブル31上から保持体18上へと遷移する。このとき、成形品Pは、回転体17から下方に突出している突起171により捕捉され、回転体17と保持体18との間の領域における、突起171と突起171との間の空隙に入り込む。成形品Pは、一つ一つの空隙に一個ずつ収まる。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各空隙に一個ずつ成形品Pを順番に並べて収容することができる。しかも、成形機Aのテーブル31からモジュールBの搬送機構B1の回転体17への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。
【0041】
突起171間の空隙内に捕捉された成形品Pは、回転体17の回転方向に沿って後方にある突起171と当接し、この突起171に押されながら、突起171の回転の軌跡に沿って、保持体18上を摺動又は滑走しつつ移送される。各成形品Pは、各空隙内において、突起171に対する相対位置が略一定となる。成形品Pは、回転体17の回転により遠心力の作用を受け、空隙内で回転体17の径方向に沿った内側方から外側方へと変位する。だが、その成形品Pは、外側のガイド20の内側方の縁辺に当接してそれ以上の変位が阻まれ、空隙から外側方に飛び出すことはない。また、空隙の上方は回転体17により閉塞されているので、空隙内に捕捉した成形品Pが不意に跳ねて空隙から脱出してしまうこともない。
【0042】
回転体17には、突起171間の空隙を外部に連通せしめる連通孔172が穿たれている。連通孔172は、各空隙よりも回転体17の径方向に沿って内側方に所在し、回転体17を上下方向に沿って貫通し、回転体17の周方向に沿って拡張した長孔である。連通孔172の数は、空隙の数と同数である。
【0043】
回転体17の外周部における一部の区域には、モジュールBにおける処理機構の一つとして、粉塵除去機構B2を付設している。粉塵除去機構B2は、連通孔172、突起171間の空隙、及び回転体17と外側のガイド20との境界部位に上方から覆い被さり、回転体17の周方向に沿って拡張している。図8に示すように、粉塵除去機構B2は、連通孔172の直上に位置して連通孔172に向けて下方に圧縮空気Kを噴出させる噴出ノズル221と、回転体17と外側のガイド20との境界部位の直上に位置して上方に空気Kを吸引する集塵ダクト222とを具備している。圧縮空気Kは、予め除電器によりイオン化されていてもよく、またパルス状に噴出させてもよい。
【0044】
噴出ノズル221から供給される圧縮空気Kは、回転体17の下面と内側のガイド21の上面との間隙を通じて突起171間の空隙内に至り、この空隙に収容されている成形品Pの外面に吹き付けられて、成形品Pの外面に付着している粉塵を成形品Pから吹き飛ばして除去する。成形品Pに吹き当たった後の粉塵を含む空気Kは、回転体17と外側のガイド20との間隙から上方に漏出し、集塵ダクト222に吸引される。
【0045】
また、図8に示しているように、回転体17の外周部における所定の区域に、モジュールBにおける処理機構の一つとして、カメラを含む外面検査機構B3を付設することもできる。外面検査機構B3のカメラは、突起171間の空隙内に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば下面を撮影し、その画像を取得する。得られた画像は、成形品Pの外面の状態の検査に使用することができる。即ち、撮影した画像を解析し、又は正常な成形品Pの画像と比較する等して、成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかを判定することができる。
【0046】
回転体17の突起171に捕捉された成形品Pは、その移送の終端位置23まで移送される。保持体18における、終端位置23に対応する部位は切り欠いてある。終端位置23では、回転体17の外周部と保持体18とが平面視重なり合わない。従って、終端位置23に到達した成形品Pは、保持体18による下方からの支持を失い、突起171間の空隙から脱落して、モジュールBの下流に直結するモジュールCの搬送機構C1に順番を崩さずに受け渡される。
【0047】
本実施形態では、テーブル31に上下に貫通した臼孔4が設けられ、臼孔4の上下に上杵5及び下杵6が上下摺動可能に保持され、臼孔4内に充填された粉体を上杵5と下杵6とで圧縮して成形品Pを成形する成形機Aに付帯し、この成形機Aから取り出される成形品Pを移送するための搬送機構B1であって、水平回転可能な回転体17と、前記回転体17と所定距離を隔てて対向する保持体18と、前記回転体17の外周部における前記保持体18と対向する面から保持体18に向かって突出するとともに、回転体17の回転中心軸回りの周方向に沿って成形品の外寸よりも大きな間隔Wで配列され、各々が成形品を捕捉する複数個の突起171と、前記回転体17の外周部に近接し前記突起171間の空隙を外側方から閉鎖するガイド20とを具備する搬送機構B1を構成した。
【0048】
成形機Aにて成形される成形品Pは、回転体17から突出する突起171により捕捉される。そして、互いに対向する回転体17と保持体18との間の領域における、突起171と突起171との間の空隙に収容されて、突起171の回転の軌跡に沿って移送される。本実施形態によれば、寸法や形状の相異なる成形品Pに対し、同じ回転体17を使用してその取り出し及び移送を実行することができる。
【0049】
そして、前記成形機Aが、前記テーブル31、前記上杵5及び前記下杵6がともに水平回転しながら成形品を成形する回転式のものであり、前記外側のガイド20の始端部が、前記テーブル31に上方から重なるように配置されて前記臼孔4の水平回転の軌跡の直上に位置し、前記下杵6によりテーブル31の上面まで押し上げられた成形品Pを掻き取って前記突起171間の空隙へと導くため、成形機Aにおいて順次成形される成形品Pを一つずつ、順番に空隙に収容して移送することができる。
【0050】
前記回転体17と前記保持体18との離間距離Hを、成形品Pの厚みと同程度又はこれよりも大きく、かつ成形品Pの外寸よりも小さく設定していることから、移送している成形品Pが移送の最中に裏返ったり転がったりすることを防止することができる。
【0051】
加えて、前記回転体17の前記突起171間の空隙を内側方から閉鎖するガイド21を具備しているため、成形品Pが意図せず回転体17の径方向に沿った内側方に変位することを抑制することができる。
【0052】
前記回転体17に、前記突起171間の空隙を外部に連通せしめ、空隙内に侵入した粉塵又は空隙内に捕捉された成形品Pに付着している粉塵を吹き飛ばす気流Kを導入するための連通孔172が穿たれているため、成形品Pを移送する過程で成形品Pに付着している粉塵を除去することができる。
【0053】
また、前記突起171の水平回転の軌跡に臨む位置に設けられ、突起171間の空隙内に捕捉された成形品Pを撮影するカメラB3を具備しているため、搬送機構B1において成形品Pの外面の検査を実行することが可能となる。
【0054】
成形機Aで成形した成形品Pを傾斜した樋状のシュートに落とし込んで容器等に回収するようなものでは、成形品Pの順序も上下も維持することができず、多数個の成形品Pの混交が避けられない。だが、本実施形態の搬送機構B1を用いれば、成形機Aから取り出される複数個の成形品Pを一個ずつ、成形機Aにおいて臼孔4が並ぶ順に、即ち成形品Pを成形した順に取り出し、その順序を崩すことなく空隙に整列させて収容することができる。そして、成形機Aにおける成形品Pの製造の順序を維持したまま、搬送機構B1により成形品Pを回収位置16から終端位置23まで移送することができる。しかも、その移送の過程で成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。
【0055】
搬送機構B1は、成形品Pを成形機Aのテーブル31の上面と略同じ高さのままで水平方向に搬送することができる。シュートでは当然ながら成形品Pが落下するので、成形品Pに対して次の工程を実施する装置又は機器に受け渡すために、成形品Pを再び高位値に持ち上げる必要が生じるが、本実施形態の搬送機構B1によればそのような必要性から解放される。加えて、落下する成形品Pがシュートや容器等の内壁、又は既に容器等に貯留している成形品Pに衝突してダメージを受けるおそれも回避することができる。
【0056】
成形品を収容する突起171間の空隙の寸法が大きいので、成形機Aのテーブルから搬送機構B1の回転体17への成形品Pの受け渡しの位置精度が厳しくならない。つまり、搬送機構B1を据え付ける際の成形機Aに対する位置の精度が顕著に高くなくとも、適正に成形品Pの取り出し及び移送を実行することができる。
【0057】
成形機Aの側で回転盤3に組み付けられる臼4及び上下の杵5、6の対の数が変更されたときには、それに合わせて回転体17を(突起171及び空隙の数が臼4及び杵5、6の数に対応しているものに)を交換したり、成形機Aの回転盤3の回転速度に対する搬送機構B1の回転体17の相対的な回転速度を調整したりすることで対処することができる。
【0058】
成形機Aの回転盤3の回転と搬送機構B1の回転体17の回転とを同期させるためには、例えば、回転体17を回転させるモータをサーボモータまたはステッピングモータとし、かつロータリエンコーダ等の角位置センサを用いて回転盤3の回転角度及び回転速度を検出して、回転盤3の回転と回転体17の回転とが同期するように回転体17を回転させるモータの回転速度をフィードバック制御する。あるいは、回転盤3と回転体17とを、歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させるようにしてもよい。これにより、様々な種類、仕様、諸元の成形機Aに対して、本実施形態の搬送機構B1を適用することができる。
【0059】
成形機Aのテーブル31とモジュールBの搬送機構B1の回転体17とは、同期して回転する。制御装置0は、成形機Aの回転盤3又は搬送機構B1の回転体17に付随する角位置センサが出力する信号を参照することで、回転体17の回転の中心軸回りの周方向に沿って配列されている突起171間の空隙の各々が現在どの位置にあるのかを知得することができる。さらに言えば、成形機Aのテーブル31における何番目の臼孔4内で圧縮成形された成形品Pが、現在モジュールB内のどの位置にあるのかを知得することができる。これは、今外面検査機構B3のカメラの前を通過した、即ち外面検査を行った成形品Pが、何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかが分かるということを意味する。制御装置0は、外面検査機構B3を介して成形品Pの外面検査を行った結果に係る情報(対象の成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかの判定結果)を、その対象の成形品Pが何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0060】
いわゆるコンテインメント機では、成形品Pを随時取り出してその様子を観察することは困難であるが、搬送機構B1をコンテインメント機内に配置することで、成形品Pを系外排出せずとも、その搬送経路上の所定位置に設置したカメラB3で撮影することができる。従って、成形機Aによる成形品Pの製造及び搬送機構B1による成形品Pの移送を停止させることなく、成形品の外面を検査することができる。外面検査機構を組み込むことで、コンテインメント機においても製造過程で成形品を(成形品による打錠を止めずに、製造を続行しながら)観察することができる。
【0061】
移送の過程で成形品Pの順序が入れ替わらない、即ち各空隙内に捕捉されている成形品Pと、これを成形した臼4及び杵5、6の組とを紐付けできるので、粉体が臼4や杵5、6に付着したまま残り成形品に欠けが生じるスティッキングその他の打錠障害や、杵5、6の杵先53、63が欠損する等の金型異常が起こったことを成形品Pの外面検査を通じて検出したときに、問題のある臼4又は杵5、6を速やかに特定することができる。また、不良な成形品Pのみを廃棄し、正常な成形品Pを廃棄せずに済み、歩留まりがよくなる。
【0062】
突起171間の空隙に収容された成形品Pは、回転体17の回転方向に沿って後ろ側の突起171に押されながら搬送される。そして、各空隙内における成形品Pの、突起171及び空隙に対する相対的な位置が一定化する。このことは、成形品PをカメラB3で撮影して外面検査をする処理や、特定の空隙に収められた成形品Pに圧縮空気を噴射してこれを排除又は抽出する処理等のために有効である。
【0063】
本実施形態の搬送機構B1によれば、次の工程を実施する装置又は装置において成形品Pを整列させる手間を省略することができる。成形品Pを整列させるための機構が不要となるので、その分だけ装置全体の寸法をコンパクト化することができる。
【0064】
移送の過程で成形品Pの上面と下面とが裏返らないので、後続の装置又は機器、例えば成形品Pに対して印刷を行う印刷装置に搬入する前段階で、個々の成形品Pの表裏を判別したり、表裏を揃えたりする必要がなくなる。また、後続の装置又は機器において成形品Pを吸着して搬送するような場合においても、各成形品Pの表裏が揃っていることでその吸着が容易となる。成形品Pの中には、一方の面に大きな割線や刻印が形成されており、その面を吸引して成形品Pを吸着することが難しい場合がある。このような状況下において、搬送されてくる各成形品Pの表裏が揃っていないと、成形品Pの吸着が困難となるが、本実施形態の搬送機構B1によればそのような懸念を払拭することができる。
【0065】
加えて、搬送機構B1による搬送中に吸塵を実行することで、個々の成形品Pに確実に吸引の気流Kを当て、効果的に粉塵を除去することができる。
【0066】
なお、図9に示すように、突起171間の空隙を外部に連通せしめる粉塵除去用の連通孔172を保持体18に形成し、この連通孔172を介して突起171間の空隙内の空気Kを吸引し、又は空隙内に圧縮空気Kを送り込む粉塵除去機構B2を設置することで、空隙内に侵入した粉塵又は空隙内に捕捉された成形品Pに付着している粉塵を吹き飛ばすことも考えられる。
【0067】
また、図10に示すように、突起171間の空隙内の空気Kを吸引して負圧を発生させ、空隙内に収容した成形品Pを回転体17に吸着させるようにすれば、成形品Pが保持体18の上面から浮上し、成形品Pの移送の過程で成形品Pが保持体18上を摺動又は滑走する距離や期間を短縮することができる。これにより、成形品Pが摩耗しにくくなる。のみならず、成形品Pを構成している粉体の粒子が固い場合には、成形品Pと保持体18との摺動により保持体18が摩耗して粉塵が発生し成形品Pを汚損する可能性を完全には否定できないが、成形品Pを回転体17に吸着させることでそのような汚損の懸念を払拭することができる。
【0068】
モジュールBに後続するモジュールCの搬送機構C1は、モジュールBの搬送機構B1による成形品Pの搬送の終端位置23にて成形品Pを受け取り、成形品Pに対して次の工程を実施する処理機構C2、C3に向けて搬送する。図11及び図12に示すように、搬送機構C1は、搬送装置B1の回転体17と同期して水平回転する回転体24を主たる構成要素とする。
【0069】
回転体24は、上下方向から見た平面視おいて略円板状をなすとともに、その外周縁に沿って、当該回転体24の径方向に沿って外側方に張り出したフランジ241を有している。このフランジ241は、大きさの異なる二枚の円板体を(外径がより小さい円板体を外径がより大きい円板体の上に)重ね合わせ両者を剛結することによって形成することができる。その上で、フランジ241の上面に、若しくはフランジ241の上面から起立する回転体24の円筒状の外周面に、又はフランジ241の上面及び回転体24の外周面に跨って、複数の凹穴242を形成している。凹穴242は、回転体24の外周縁に沿って、即ち回転体24の回転の中心軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に配置されている。これらの凹穴242は、回転体24と一体となって回転することは言うまでもない。モジュールBの搬送機構B1から受け渡される成形品Pは、回転体24の凹穴242に係合し、凹穴242に捕捉された状態で移送される。つまり、凹穴242が、搬送機構C1における成形品Pが係合する係合部として機能する。
【0070】
図12に示すように、搬送機構C1の回転体24の外周部のフランジ241の上面は、モジュールBの搬送機構B1の回転体17の下面よりも低位置にあり、保持体18の上面と略等しい高さ位置にある。その上で、回転体24のフランジ241の一部が、回転体17に下方から重なる。回転体17の下面から突出する突起171の先端は、保持体18の上面及びフランジ241の上面に極接近する。回転体17及び回転体24の同期回転に伴い、各突起171間の空隙と、凹穴242とは、終端位置23において一時的に重なり合う。
【0071】
回転体24のフランジ241との干渉を避けるべく、保持体18における、フランジ241と回転体17とが平面視重なり合う終端位置23に対応する部位は、フランジ241の外周縁に沿って円弧状に切り欠いてある。保持体18の当該部位の端縁は、フランジ241の外周縁に極近接しており、成形品Pが搬送機構B1の保持体18の上面から搬送機構C1の回転体24のフランジ241の上面に円滑に移乗することができる。
【0072】
終端位置23では、回転体17の突起171間の空隙内に収まり、突起171に押されながら移送されている成形品Pが、回転体17の回転に伴って、保持体18上から回転体24のフランジ241上へと遷移する。このとき、成形品Pは、回転体24に形成されている凹穴242に捕捉され、凹穴242に入り込むようにして係合する。成形品Pは、一つ一つの凹穴242に一個ずつ収容される。これにより、搬送機構B1の回転体17の突起171間の空隙が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各凹穴242に一個ずつ成形品Pを順番に係合させることができる。搬送機構B1の回転体17から搬送機構C1の回転体24への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることはない。
【0073】
凹穴242に捕捉された成形品Pは、回転体24の回転に伴い、凹穴242の回転の軌跡に沿って移送される。各成形品Pは、各凹穴242内において、回転体24及び凹穴242に対する相対位置が略一定となる。成形品Pは、回転体24の回転により遠心力の作用を受けるが、凹穴242に係合してその変位が阻まれ、外側方に飛び出さない。また、成形品Pの移送の過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返らない。
【0074】
なお、凹穴242内の空気を吸引して負圧を発生させて、成形品Pを回転体24に吸着させるようにしても構わない。
【0075】
図11及び図13に示すように、回転体24の外周部に面する所定の区域には、モジュールCにおける処理機構の一つとして、異物探知機構C2を付設している。異物探知機構C2は、搬送機構C1が搬送する成形品Pの移動の軌跡と平面視重なり合う位置に設置した光源251及び分光分析用の受光センサ252を要素とする。光源251及びセンサ252は、成形品Pを挟んで上下に対向するように配置され、光源251から放たれた光のうち成形品Pを透過した透過光をセンサ252に入射させ、その透過光を分析することで、成形品Pに異物が混入していないかどうかを検査する。
【0076】
成形品Pを捕捉する凹穴242は、回転体24のフランジ24を上下に貫通しており、光源251とセンサ252とのうちの一方がフランジ24の直上に、他方がフランジ24の直下に位置している。このため、異物探知機構C2において、成形品Pを透過した信号光以外の迷光が回転体24及びフランジ24によって遮蔽され、センサ252に入射することが抑制される。
【0077】
また、図11及び図14に示しているように、回転体24の外周部における所定の区域に、モジュールCにおける処理機構の一つとして、カメラを含む外面検査機構C3を付設することもできる。外面検査機構C3のカメラは、凹穴242に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば上面を撮影し、その画像を取得する。取得した画像は、成形品Pの外面の状態の検査に使用することができる。即ち、撮影した画像を解析し、又は正常な成形品Pの画像と比較する等して、成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかを判定することができる。
【0078】
検査機構C3のカメラは、成形品Pの上面を撮影するに限らず、成形品Pの下面をも撮影するようにしてもよい。成形品Pの上面/下面を撮影した画像を解析し、成形品Pの幅、長さ、直径、面積等を測定することもできる。また、成形品Pの側面を撮影し、その状態が正常であるか不良であるかを判定することもできる。成形品Pの側面を撮影した画像を解析し、成形品Pの高さ(厚さ)を測定することもできる。あるいは、外検査機構C3に光切断法による3次元測定装置を採用すれば、成形品Pの3次元データを取得することができ、取得したデータを解析し、成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかを判定することができる。外検査機構C3における処理は、これらのうち何れかひとつを採用するに限らず、複数の処理を併合するようにしてもよい。
【0079】
成形機Aのテーブル31、モジュールBの搬送機構B1の回転体17、モジュールCの搬送機構C1の回転体24は、互いに同期して回転する。制御装置0は、成形機Aの回転盤3、搬送機構B1の回転体17又は搬送機構C1の回転体24に付随する角位置センサ(ロータリーエンコーダ等)が出力する信号を参照することで、回転体24の回転の中心軸回りの周方向に沿って配列されている凹穴242の各々が現在どの位置にあるのかを知得することができる。さらに言えば、成形機Aのテーブル31における何番目の臼孔4内で圧縮成形された成形品Pが、現在モジュールC内のどの位置にあるのかを知得することができる。これは、今異物探知機構C2の受光センサ252又は外面検査機構C3のカメラの前を通過した、即ち異物検査又は外面検査を行った成形品Pが、何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかが分かるということを意味する。制御装置0は、異物探知機構C2又は外面検査機構C3を介して成形品Pの外面検査を行った結果に係る情報(対象の成形品Pに異物が混入していないかどうか、対象の成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかの判定結果)を、その対象の成形品Pが何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0080】
凹穴242に係合する成形品Pは、回転体24の回転方向に沿って搬送されながらも、回転体24及び凹穴242に対する相対的な位置が一定化する。このことは、成形品Pに光を照射してその透過光を分析する処理や、成形品PをカメラC3で撮影して外面検査をする処理等のために有効である。
【0081】
回転体24の凹穴242に捕捉された成形品Pは、その移送の終端位置26まで移送される。終端位置26に到達した成形品Pは、モジュールCの搬送機構C1から、当該モジュールCの下流に直結するモジュールDの搬送機構D1に受け渡される。
【0082】
モジュールCに後続するモジュールDの搬送機構D1は、モジュールCの搬送機構C1による成形品Pの搬送の終端位置26にて成形品Pを受け取り、成形品Pに対して次の工程を実施する処理機構D2に向けて搬送する。図11及び図15に示すように、搬送機構D1は、搬送装置C1の回転体24と同期して水平回転する回転体27を主たる構成要素とする。
【0083】
回転体27は、上下方向から見た平面視おいて略円板状をなすとともに、その外周縁に沿って、当該回転体27の径方向に沿って外側方に張り出したフランジ271を有している。このフランジ271は、大きさの異なる二枚の円板体を(外径がより大きい円板体を外径がより小さい円板体の上に)重ね合わせ両者を剛結することによって形成することができる。その上で、フランジ271の下面に、若しくはフランジ271の下面から垂下する回転体27の円筒状の外周面に、又はフランジ271の下面及び回転体27の外周面に跨って、複数の凹穴272を形成している。凹穴272は、回転体27の外周縁に沿って、即ち回転体27の回転の中心軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に配置されている。これらの凹穴272は、回転体27と一体となって回転することは言うまでもない。モジュールCの搬送機構C1から受け渡される成形品Pは、回転体27の凹穴272に係合し、凹穴272に捕捉された状態で移送される。つまり、凹穴272が、搬送機構D1における成形品Pが係合する係合部として機能する。
【0084】
図15に示すように、搬送機構D1の回転体27の外周部のフランジ271の下面は、モジュールCの搬送機構C1の回転体24の外周部のフランジ241の上面よりも高位置にある。その上で、回転体27のフランジ271の一部が、回転体4のフランジ241に上方から重なる。回転体24及び回転体27の同期回転に伴い、凹穴242と凹穴272とは、終端位置26において一時的に重なり合う。
【0085】
終端位置26では、回転体24の凹穴242に係合して移送されている成形品Pが、回転体24の回転に伴って、フランジ241上から回転体27のフランジ271の直下へと遷移する。このときに、成形品Pが、回転体27に形成された凹穴272に捕捉されて、凹穴272に入り込むようにして係合する。成形品Pは、一つ一つの凹穴272に一個ずつ収容される。これにより、搬送機構C1の回転体24の凹穴242が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各凹穴272に一個ずつ成形品Pを順番に係合させることができる。搬送機構C1の回転体24から搬送機構D1の回転体27への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることはない。
【0086】
凹穴272に捕捉された成形品Pは、回転体27のフランジ271の下面側に保持される。そして、回転体27の回転に伴い、凹穴272の回転の軌跡に沿って移送される。各成形品Pは、各凹穴272内において、回転体27及び凹穴272に対する相対位置が略一定となる。成形品Pは、回転体27の回転により遠心力の作用を受けるが、凹穴272に係合してその変位が阻まれ、外側方に飛び出さない。また、成形品Pの移送の過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返らない。
【0087】
なお、凹穴272内の空気を吸引して負圧を発生させて、成形品Pを回転体27に吸着させるようにしても構わない。
【0088】
図11及び図16に示すように、回転体27の外周部に面する所定の区域には、モジュールDにおける処理機構の一つとして、カメラを含む外面検査機構D2を付設している。外面検査機構Dのカメラは、凹穴272に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば下面を撮影し、その画像を取得する。得られた画像は、成形品Pの外面の状態の検査に用いることができる。即ち、撮影した画像を解析し、又は正常な成形品Pの画像と比較する等して、成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかを判定することができる。
【0089】
成形機Aのテーブル31、モジュールBの搬送機構B1の回転体17、モジュールCの搬送機構C1の回転体24、そしてモジュールDの搬送機構の回転体27は、互いに同期して回転する。制御装置0は、成形機Aの回転盤3、搬送機構B1の回転体17、搬送機構C1の回転体24又は搬送機構D1の回転体27に付随する角位置センサ(ロータリーエンコーダ等)が出力する信号を参照することで、回転体27の回転の中心軸回りの周方向に沿って配列されている凹穴272の各々が現在どの位置にあるのかを知得することができる。さらに言えば、成形機Aのテーブル31における何番目の臼孔4内で圧縮成形された成形品Pが、現在モジュールD内のどの位置にあるのかを知得することができる。これは、今外面検査機構D2のカメラの前を通過した、即ち外面検査を行った成形品Pが、何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかが分かるということを意味する。制御装置0は、外面検査機構D2を介して成形品Pの外面検査を行った結果に係る情報(対象の成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかの判定結果)を、その対象の成形品Pが何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0090】
回転体27の凹穴272に捕捉された成形品Pは、通常、その移送の終端位置29まで移送される。しかしながら、特定の成形品P、例えば不良品やサンプリング品を、終端位置29まで移送する成形品P群から選り分けて排除または回収したいという要望も存在する。
【0091】
そこで、図11及び図17に示すように、モジュールDの搬送機構D1における、終端位置29へと至る凹穴272及び成形品Pの回転移動の軌跡の中途に、特定の成形品Pを排除するための排除機構D3を付設している。排除機構D3は、回転体27の凹穴272に係合している成形品Pに向けて圧縮空気Kを噴射する噴射ノズル281と、圧縮空気Kによって吹き飛ばされた成形品Pが落とし込まれるシュート282とを要素とする。噴射ノズル281及びシュート282は、成形品Pを挟んで上下に対向するように配置されており、噴射ノズル281から噴射した圧縮空気Kにより凹穴272に保持された成形品Pを凹穴272から脱離させ、回転体27のフランジ271から落下する当該成形品Pをシュート282で受けて回収する。
【0092】
成形品Pを捕捉する凹穴272は、回転体27のフランジ27を上下に貫通しており、噴射ノズル281がフランジ27の直上に、シュート282がフランジ27の直下に位置している。また、噴射ノズル281の先端は、フランジ27の上面の近傍まで伸びている。噴射ノズル281から下向きに噴射された圧縮空気Kは、凹穴272を通じて成形品Pに吹き当たり、成形品Pをフランジ27から剥落させる。この圧縮空気Kの噴射量(単位時間あたりの流量)及び噴射圧力は、僅かでよい。なお、噴射ノズル281の回転体27に対する相対的な位置や、噴射ノズル281から圧縮空気Kを噴射する向きは、成形品Pをフランジ27から剥落させることができる限りにおいて任意である。
【0093】
制御装置0は、回転体27の各凹穴272に係合している成形品Pが、成形機Aにおける何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかを把握している。そして、制御装置0は、成形機A及び処理システムSのモジュールB、C、Dにおいて実施した成形品Pに対する各種の検査の結果、即ち圧縮成形時の圧縮圧力の異常の有無、成形品Pの外面の異常の有無、異物の混入の有無等の情報を、各成形品P毎に、当該成形品Pが成形機Aにおける何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて記憶している。従って、制御装置0は、回転体27の各凹穴272に係合している成形品Pがそれれ正常品であるか不良品であるかを認識しており、不良の成形品が係合している凹穴272の現在位置を知得することができる。
【0094】
制御装置0は、不良の成形品Pを捕捉した凹穴272が噴射ノズル281の近傍を通過するときに、圧縮空気Kの流通を制御するバルブ(噴射ノズル281に内蔵されていることがある)を開弁する制御信号を与え、噴射ノズル281から不良の成形品Pに向けて圧縮空気Kを噴射し、当該成形品Pを回転体27から脱落させて排除する。シュート282に落ちた成形品Pは、終端位置29には到達することができない。
【0095】
排除機構D3により排除されなかった正常な成形品Pは、搬送機構D1による移送の終端位置29に到達する。そして、この終端位置29にて回転体27の凹穴272から離脱し、成形品Pに対して次の工程を実施する装置又は機器に受け渡され、あるいは成形品Pを回収する容器等に向けて落下することとなる。
【0096】
凹穴272に係合する成形品Pは、回転体27の回転方向に沿って搬送されながらも、回転体27及び凹穴272に対する相対的な位置が一定化する。このことは、成形品PをカメラD2で撮影して外面検査をする処理や、特定の凹穴272に係合する成形品Pに圧縮空気Kを噴射してこれを排除又は抽出する処理等のために有効である。
【0097】
なお、処理システムSのモジュールB、C、Dに設けられる処理機構は、上述した例に限定されないことは言うまでもない。処理機構の具体例としては、成形品Pの体積、重量若しくは含有成分を検査して成形品Pの良/不良を個々に判定する品質検査機構、特に成形品Pの含有成分や偏析等をラマン分光分析、近赤外分光分析(NIR、または近赤外吸収スペクトル法)、X線回折、X線透過測定、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により分析して成形品Pの良/不良を判定するものや、成形品Pへの金属片の混入の有無を検査する金属検知機型の異物探知機構、成形品Pにレーザ光を照射することでその外面に彫刻やレーザマーキングを施すレーザ加工機型の印字機構や、成形品Pの表面にインクジェット印刷を行うインクジェットプリンタ型の印字機構、成形品PをPTP(Press Through Pack)包装シートやESOP(Easy Seal Open Pack)包装シート等に包装する包装機構、成形品Pをボトルその他の容器に詰めることで成形品Pを包装する包装機構、等を挙げることができる。これらの処理機構もまた封じ込め容器内に収容され、成形品Pに対する処理を当該封じ込め容器内で実施することになる。上記の品質検査機構や異物探知機構で各成形品Pを検査した結果に係る情報は、当該成形品Pを成形した臼孔4、上杵5及び下杵6の組を識別する情報と関連づけて、制御装置0の記憶デバイスに記憶させる。そして、不良と判定された成形品Pは、排除機構D3により排除することができる。
【0098】
図2及び図11に模式的に示しているように、成形機Aは、封じ込め容器E1内に収められている。また、処理システムSの各モジュールB、C、Dも、各々封じ込め容器E2、E3に収容されている。
【0099】
成形機Aの封じ込め容器E1とこれに直結するモジュールBの封じ込め容器E2とは、ジョイントJを介して接続する。このジョイントJは、成形機Aを収容する封じ込め容器E1の内部空間と、モジュールBを収容する封じ込め容器E2の内部空間を連通させるとともに、前者の封じ込め容器E1と後者の封じ込め容器E2とを任意に着脱することができる。ひいては、成形機AとモジュールBとを任意に着脱することができる。成形機Aのテーブル31とモジュールBの搬送機構B1の回転体17とが平面視重なり合う成形品取出位置16及びその周辺部位は、ジョイントJ内に収容される。
【0100】
モジュールBの封じ込め容器E2とこれに直結するモジュールC、Dの封じ込め容器E3ともまた、ジョイントJを介して接続する。ジョイントJは、モジュールBを収容する封じ込め容器E2の内部空間と、モジュールC、Dを収容する封じ込め容器E3の内部空間を連通させるとともに、前者の封じ込め容器E2と後者の封じ込め容器E3とを任意に着脱することができる。ひいては、モジュールBとモジュールCとを任意に着脱することができる。モジュールBの搬送機構B1の回転体17とモジュールCの搬送機構C1の回転体24とが平面視重なり合う終端位置23及びその周辺部位は、ジョイントJ内に収容される。
【0101】
封じ込め容器E1、E2、E3及びジョイントJは、成形機A及び各モジュールB、C、Dを収容している内部空間の雰囲気の封じ込め容器E1、E2、E3外への意図せざる漏洩を抑止する。成形品Pの成形、成形機AとモジュールBとの間及び各モジュールB、C、D間での成形品Pの受け渡し、並びに成形品Pに対する後工程の処理、例えば成形品Pに付着した粉塵の除去や成形品Pの検査等は、おしなべて封じ込め容器E1、E2、E3内で実施される。後工程の処理の実施のために、成形品Pを系外排出する必要はない。
【0102】
また、成形機Aや各モジュールB、C、Dを収容する封じ込め容器E1、E2、E3に設けられたジョイントJは、各封じ込め容器E1、E2、E3毎に共通している。従って、任意の封じ込め容器E1、E2、E3のジョイントJを、別の任意の封じ込め容器E1、E2、E3のジョイントJに接続することができる。つまり、任意のモジュールB、C、Dを、成形機Aの下流に連結することができる。例えば、成形機Aの封じ込め容器E1のジョイントJにモジュールCの封じ込め容器E3のジョイントJを接続して、成形機Aの下流にモジュールCを直結することができる。モジュールDの封じ込め容器E3のジョイントJに他のモジュールの封じ込め容器のジョイントを接続することで、モジュールDの下流にさらにモジュールを追加することも考えられる。なお、モジュールBは成形機Aの次に連結していることが好適である。
【0103】
封じ込め容器E1、E2、E3間の接続に使用しないジョイントJは、封じ込め容器E1、E2、E3内の雰囲気を外部に漏出させないよう閉鎖することができる。
【0104】
上述した例では、モジュールBとモジュールC、Dをそれぞれ別個の封じ込め容器E2、E3に収容することとしているが、モジュールB、C、Dを一個の封じ込め容器に収容することを妨げない。モジュールCとモジュールDとを、それぞれ別個の封じ込め容器に収容しても構わない。また、成形機Aとこれに連結する一以上のモジュールB、C、Dを、一個の封じ込め容器に収容することを妨げない。
【0105】
結局のところ、任意の処理機構が搬送機構B1、C1、D1に付随して設けられたモジュールB、C、Dが封じ込め容器E2、E3に収容されており、その封じ込め容器E2、E3に配されているジョイントJを介して、任意のモジュールB、C、Dを成形機Aの下流に連結することができる。そして、成形機Aの下流に連結するモジュールB、C、Dの選定を通じて、成形機Aが成形した成形品Pにどのような後工程の処理を実施するかを任意に設定できる。成形機Aの下流に連結するモジュールB、C、Dの数、封じ込め容器E1の下流にジョイントJを介して接続する封じ込め容器E2、E3の個数は、上記例に限定されない。
【0106】
本実施形態では、テーブル31に上下に貫通した臼孔4が設けられ、臼孔4の上下に上杵5及び下杵6が上下摺動可能に保持され、臼孔4内に充填された粉体を上杵5と下杵6とで圧縮して成形品Pを成形する成形機Aにおいて成形された成形品Pに対して後工程の処理を実施するためのシステムSであって、複数個の成形品Pを前記成形機Aにおいて成形された順序を維持したまま整列させた状態で搬送する搬送機構B1、C1、D1と、前記搬送機構B1、C1、D1により搬送される成形品Pの移動経路に臨み、搬送される個々の成形品Pに対して所定の後工程の処理を実施する処理機構B2、B3、C2、C3、D2とを具備するモジュールB、C、Dを要素とし、上流側のモジュールB、Cと下流側のモジュールC、Dとを接続することで、上流側のモジュールB、Cである処理を実施した後の成形品Pを順次下流側のモジュールC、Dに受け渡して当該モジュールC、Dにて別の所定の処理を実施できる処理システムSを構成した。
【0107】
本実施形態によれば、任意の処理機構を具備したモジュールを加除することで、成形品Pに対して任意の後工程の処理を実施することができる。
【0108】
前記各モジュールB、C、Dは封じ込め容器E2、E3内に収められ、当該封じ込め容器E2、E3内の雰囲気の外部への漏出を抑制するとともに、当該封じ込め容器E2、E3内で成形品Pに対する後工程の処理を実施するものであるため、中途で成形品Pの系外排出が生じず、粉体を含む雰囲気が外部に漏出しないコンテインメント環境を実現でき、特に高薬理活性物質を含有する成形品Pの生産において有用となる。また、成形品Pへのコンタミネーションも抑制することができる。
【0109】
前記モジュールB、C、Dが具備する前記搬送機構B1、C1、D1は、複数個の成形品Pを整列させた状態で略水平方向に移動させるものである。従って、成形品Pの高さ位置の上下動を極力抑制することができ、成形品Pが重力で落下する際にダメージを受けるリスクを低減することができる。また、成形品Pを持ち上げるリフト装置が必須ではなくなる。
【0110】
前記粉体圧縮成形機Aが、複数の臼孔4、上杵5及び下杵6の組を具備しており、前記モジュールB、C、Dが具備する前記処理機構B2、B3、C2、C3、D2が、成形品Pを撮影するカメラを含み成形品Pの外面の状態を検査する外面検査機構B3、C3、D2、成形品の体積、重量若しくは含有成分を検査する品質検査機構、又は成形品Pへの異物の混入の有無を検査する異物探知機構C2であり、前記処理機構B3、C2、C3、D2により成形品Pを検査した結果に係る情報を、当該成形品Pを成形した臼孔4、上杵5及び下杵6の組を識別する情報と関連づけて制御装置0の記憶デバイスに記憶させるものであるため、検査処理により不良が検知された成形品Pを特定して追跡することができる。加えて、成形機Aにおいて成形品Pの不良を生んだ臼4及び杵5、6の組を速やかに特定することもでき、成形品Pの不良を有む金型即ち臼4又は杵5、6を交換して成形品Pの製造不良をいち早く解消することができる。
【0111】
前記モジュールDが、前記処理機構B3、C2、C3、D2による検査を得て不良であると判断された成形品Pを正常な成形品から選り分けて排除する排除機構D3を具備しているため、成形機A及び処理システムSの稼働を停止することなく不良の成形品Pのみを排除することができ、成形品Pの歩留まりもよくなる。
【0112】
本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態における搬送機構B1、C1、D1は、成形品Pを水平回転の軌跡に沿って移送するものであったが、直線的な軌跡に沿って成形品Pを移送する搬送機構を組み込み、その搬送機構に付随して処理機構B2、B3、C2、C3、D2を付設するようにしてもよい。
【0113】
また、搬送機構により成形品Pを搬送する過程で、成形品Pを一列ではなく複数列に整列させてもよい。
【0114】
上記実施形態では、成形機Aに処理システムSのモジュールB、C、Dを連結し、成形機Aで成形した成形品Pを成形機Aから直に取り出して直ちに後工程の処理を実施していたが、処理システムSのモジュールB、C、Dを成形機Aに連結せずに成形機Aから独立させ、成形機Aで製造した後貯留しておいた成形品Pを最上流のモジュールBに供給して後工程の処理を実施するようにしてもよい。
【0115】
処理システムSは、成形機Aに付帯することに限らず、例えば成形品Pにコーティングを実施する装置に付帯するようにしてもよい。また、処理システムSのモジュールB、C、Dの数は3つに限定されるものではない。
【0116】
制御装置0は、外面検査機構B3、C3、D2や品質検査機構、異物探知機構C2等を介して成形品Pの不良を感知したときに、成形機Aの作動を停止させる制御を実施することができる。
【0117】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【符号の説明】
【0118】
A…回転式粉体圧縮成形機
31…テーブル
4…臼孔
5…上杵
6…下杵
B、C、D…モジュール
B1、C1、D1…搬送機構
B2、B3、C2、C3、D2…処理機構
D3…排除機構
P…成形品
S…処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17