(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】顆粒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20230213BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230213BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230213BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/26
A61K47/38
A61K31/166
(21)【出願番号】P 2018220413
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】田内 郁男
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】森本 泰明
(72)【発明者】
【氏名】鈴野 健也
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】羽山哲生,製剤機械技術学会誌,2018年03月05日,Vol. 27, No. 1,pp. 31-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを湿式造粒した顆粒であって、
前記顆粒の断面における断面積当たりの空隙の外周長の総和(空隙の外周長の総和/断面積)が0.040以上であ
り、
前記顆粒の断面における中央部の周囲長と、前記中央部に存在する空隙の外周長の総和との比率が、1:2.5以上であることを特徴とする顆粒。
【請求項2】
前記断面積当たりの空隙の外周長の総和が、0.050以上である請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
更に、活性成分を含む請求項1から2のいずれかに記載の顆粒。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の顆粒の製造方法であって、
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを湿式造粒して得られた湿式造粒物を、5分以内に水分量が原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下に達するように乾燥する工程を含むことを特徴とする顆粒の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥が、気流式乾燥装置で行われる請求項4に記載の顆粒の製造方法。
【請求項6】
湿式造粒装置と、気流式乾燥装置とが接続され、前記湿式造粒装置から連続的に前記湿式造粒物を前記気流式乾燥装置に供給し、連続的に顆粒を製造する請求項4から5のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項7】
前記湿式造粒物が、更に、活性成分を含む請求項4から6のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル、サッシェ、口腔内崩壊錠等の医薬品固形製剤などを製造するために好適に用いることができる顆粒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品固形製剤を製造するために用いる顆粒や賦形剤は、流動層や噴霧乾燥など様々な方法で製造されてきた(例えば、特許文献1参照)。特に錠剤では、不定形でポーラスな形状の造粒物を使うことによって硬度が高い錠剤が得られやすいことから、中でも流動層を使って製造された顆粒が好まれて使用されてきた。
【0003】
一方、近年は、口腔内崩壊錠(以下、「OD錠」と称することがある。)に使えるような、硬度が高いだけでなく、崩壊性も良い賦形剤が求められている。OD錠の場合、口の中で素早く崩壊することにより嚥下がスムーズになるため、より短時間で崩壊するものが求められている。
【0004】
また、カプセルに使われる顆粒の中には、素早く崩壊して高濃度の薬液が腸壁に達することが求められるものがある。これは徐々に薬剤が溶け出した場合、血中濃度が低すぎて最小有効濃度にまで達せず、効果が得られない場合があるからである。
【0005】
したがって、従来の顆粒が有する崩壊性よりも更に優れた崩壊性を有する顆粒の提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた崩壊性を有する顆粒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを湿式造粒した顆粒であって、前記顆粒の断面における断面積当たりの空隙の外周長の総和(空隙の外周長の総和/断面積)が0.040以上であると、優れた崩壊性が得られることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを湿式造粒した顆粒であって、
前記顆粒の断面における断面積当たりの空隙の外周長の総和(空隙の外周長の総和/断面積)が0.040以上であることを特徴とする顆粒である。
<2> 前記断面積当たりの空隙の外周長の総和が、0.050以上である前記<1>に記載の顆粒である。
<3> 前記顆粒の断面における中央部の周囲長と、前記中央部に存在する空隙の外周長の総和との比率が、1:2.5以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の顆粒である。
<4> 更に、活性成分を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の顆粒である。
<5> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを湿式造粒して得られた湿式造粒物を、5分以内に水分量が原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下に達するように乾燥する工程を含むことを特徴とする顆粒の製造方法である。
<6> 前記乾燥が、気流式乾燥装置で行われる前記<5>に記載の顆粒の製造方法である。
<7> 湿式造粒装置と、気流式乾燥装置とが接続され、前記湿式造粒装置から連続的に前記湿式造粒物を前記気流式乾燥装置に供給し、連続的に顆粒を製造する前記<5>から<6>のいずれかに記載の顆粒の製造方法である。
<8> 前記湿式造粒物が、更に、活性成分を含む前記<5>から<7>のいずれかに記載の顆粒の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた崩壊性を有する顆粒及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、顆粒断面の中央部を説明する模式図である。
【
図2A】
図2Aは、評価1において、3次元X線顕微鏡で撮影した実施例1の顆粒を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、評価1において、3次元X線顕微鏡で撮影した比較例1の顆粒を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(顆粒及びその製造方法)
本発明の顆粒は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、必要に応じて更に活性成分やその他の添加剤とを湿式造粒した顆粒であり、本発明の顆粒の製造方法により、好適に製造することができる。
以下、本発明の顆粒の製造方法の説明と併せて、本発明の顆粒についても説明する。
【0013】
<顆粒の製造方法>
本発明の顆粒の製造方法は、乾燥工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0014】
<<乾燥工程>>
前記乾燥工程は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを湿式造粒して得られた湿式造粒物を、5分以内、好ましくは60秒間以内に水分量が原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下に達するように乾燥する工程である。
【0015】
-湿式造粒物-
前記湿式造粒物は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、必要に応じて更に活性成分やその他の添加剤とを含む混合粉末を湿式造粒して得ることができる。
【0016】
--糖及び/又は糖アルコールからなる糖類--
前記糖類としては、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蔗糖、乳糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、スクロース、グリセリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、より優れた崩壊性が優れる点で、糖アルコールが好ましく、マンニトールがより好ましい。
前記糖類は、市販品を使用することができる。
【0017】
前記混合粉末における糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%~99.9質量%、好ましくは10質量%~99.9質量%、さらに好ましくは30質量%~99.9質量%が挙げられる。
【0018】
--崩壊剤--
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースNa、カルボキシメチルセルロースCa等)等のセルロース誘導体、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、コーンスターチ等のデンプンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記崩壊剤は、市販品を使用することができる。
【0019】
前記混合粉末における崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、さらに好ましくは1質量%~15質量%が挙げられる。
【0020】
--活性成分--
前記活性成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高血圧薬、狭心薬、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬、鎮痛鎮痙薬等に使用される医薬品有効成分などが挙げられ、具体的には、エテンザミド、アセトアミノフェン、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド、アカルボースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記活性成分は、市販品を使用することができる。
【0021】
前記混合粉末における活性成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%~99質量%、好ましくは0.5質量%~90質量%、さらに好ましくは1質量%~80質量%が挙げられる。
【0022】
--その他の添加剤--
前記その他の添加剤としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、前記糖類以外の賦形剤、結合剤、その他医薬品の添加剤として公知のものを目的に応じて適宜選択することができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の添加剤は、市販品を使用することができる。
前記混合粉末におけるその他の添加剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
前記糖類以外の賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セルロース、トウモロコシデンプンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記糖類以外の賦形剤は、市販品を使用することができる。
前記混合粉末における糖類以外の賦形剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0質量%~50質量%、好ましくは0質量%~40質量%、さらに好ましくは0質量%~30質量%が挙げられる。
【0024】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記結合剤は、市販品を使用することができる。
前記混合粉末における結合剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%~15質量%、好ましくは0.5質量%~12質量%、さらに好ましくは1質量%~10質量%が挙げられる。
【0025】
前記混合粉末を調製する方法としては、特に制限はなく、公知の混合方法を適宜選択することができ、例えば、タンブラーミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0026】
--湿式造粒--
前記湿式造粒の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記混合粉末と、水等の液体とを混練し、造粒物を製造する方法などが挙げられる。
前記混合粉末に前記液体を加える割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合粉体に対し1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~45質量%、さらに好ましくは5質量%~40質量%が挙げられる。
前記湿式造粒は、公知の湿式造粒装置を適宜選択して行うことができる。
【0027】
-乾燥-
前記乾燥の方法としては、前記湿式造粒物を、5分以内、好ましくは60秒間以内に水分量が前記湿式造粒物の原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下に達するように乾燥できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、気流式乾燥装置(以下、「気流式乾燥機」と称することもある。)で乾燥する方法が好ましい。
前記乾燥工程で得られる顆粒の水分値が、前記原料混合物の平衡水分値の2.0倍よりも多いと、保存中の安定性が低下する。一方、前記顆粒の水分値が前記原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下であると、保存中の安定性が良好である。
なお、本発明において、前記原料混合物の平衡水分値とは、前記乾燥工程の温度及び相対湿度条件における値をいう。
【0028】
前記気流式乾燥装置としては、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択して用いることができる。
【0029】
前記気流式乾燥装置を用いて乾燥する場合の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、風量1~15m3/min、給気温度50~180℃などが挙げられる。
【0030】
従来用いられていた流動層乾燥では乾燥が終了するまで数十分間かかるため、造粒物は缶体に何度も衝突して、特に外周側が圧密化される。また、乾燥の際は外周側から徐々に乾燥されるが、乾燥するにつれて中央部の水が外周へと移動し、前記糖類や前記崩壊剤も共に外周へと移動する。このため、得られる顆粒は中空状の構造になりやすい。
一方、前記湿式造粒物を、5分以内、好ましくは60秒間以内に水分量が前記湿式造粒物の原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下に達するように乾燥する場合、乾燥時間が短いため、造粒物が缶体に衝突する機会が減り、圧密化はあまりされない。また、内部の水は外周側へと移動する間もなく内部で気化するため、前記糖類や前記崩壊剤も外周部へ移動することがほぼ行われず、概ね均一な構造となる。
結果として、本発明の顆粒は、空隙率が高めで、空隙の外周長の比率も高くなり、また内部構成もほぼ均一な状態となる。従って、本発明の顆粒は、後述するように、顆粒の断面における断面積当たりの空隙の外周長の総和が高くなる。また、後述するように、前記顆粒の断面における中央部の周囲長と、前記中央部に存在する空隙の外周長の総和との比率において、中央部に存在する空隙の外周長の総和の値が大きくなる。
また、本発明の顆粒は、流動層乾燥のような中空状の造粒物よりも空隙が均一に分布しているために、崩壊剤の分布も均一化していると思われるが、これが錠剤の崩壊性向上に寄与していると思われる。
【0031】
本発明の顆粒の製造方法としては、湿式造粒装置と、気流式乾燥装置とが接続され、前記湿式造粒装置から連続的に前記湿式造粒物を前記気流式乾燥装置に供給し、連続的に顆粒を製造する態様が好ましい。
前記連続的に顆粒を製造する態様に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラニュフォーマー(フロイント産業社製)などが挙げられる。前記グラニュフォーマーは、連続造粒装置に、整粒機と、気流式乾燥機(スパイラルドライヤー)とが付属したものである。
【0032】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式整粒工程などが挙げられる。
【0033】
前記湿式整粒工程は、湿式造粒物を前記乾燥工程に付す前に湿式整粒する工程である。前記整粒工程により、粗大な造粒物を除くことができる。
前記湿式整粒の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、整粒機を用いる方法などが挙げられる。
前記湿式整粒における条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
<顆粒>
本発明の顆粒は、従来の顆粒と比べて優れた崩壊性を有する。
【0035】
<<空隙の外周長の総和/断面積>>
前記顆粒の断面における断面積当たりの空隙の外周長の総和(空隙の外周長の総和/断面積)としては、0.040以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、崩壊性がより優れる点で、0.050以上が好ましい。
【0036】
<<中央部の周囲長と、中央部に存在する空隙の外周長の総和との比率>>
本発明における顆粒の断面における中央部を
図1の模式図を用いて説明する。
前記顆粒の断面における中央部とは、撮影した顆粒の断面の写真を、画像解析ソフトフェアHALCON(リンクス社製)を用いて2値化した後、erosion法により決定した顆粒の中心(
図1の符号1)と、顆粒の外周(
図1の符号2)との中間点(
図1の符号3)を結んだ線で分けられた部分(
図1の符号4)をいう。なお、この比率を求める際は、中央部に空隙があるか否かが重要となるので、顆粒の中心部分を通らないような顆粒端部の断面図は対象外とする。
【0037】
例えば、前記中央部が全て空隙からなる場合は、中央部の周囲長と、中央部に存在する空隙の外周長の総和との比率は、1:1となる。また、中央部に存在する空隙が大きくなるに連れて、前記比率における右側の数値は1に近づくことになる。
一方、前記中央部に細かな空隙が多くなるにつれて、前記比率における右側の数値は大きくなる。
【0038】
前記顆粒の断面における中央部の周囲長と、前記中央部に存在する空隙の外周長の総和との比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記顆粒中における前記糖類及び前記崩壊剤の分布の均一性が高まる点で、1:2.5以上が好ましく、1:3.0以上がより好ましい。
【0039】
前記顆粒の断面は、前記顆粒をカッター等で物理的に切断して電子顕微鏡で撮影してもよく、X線顕微鏡で撮影してもよい。
前記顆粒の断面は、任意の場所を選択することができるが、顆粒中に存在する最も大きな空隙の面積が最大となる断面を選択することが好ましい。
【0040】
前記顆粒の断面をX線顕微鏡で撮影する場合は、例えば、3次元X線顕微鏡(nano3DX リガク社製)を用い、管電圧40kv、管電流30mA、空間分解能0.52μm/voxcelの条件で撮影することができる。
前記顆粒の断面積、空隙の外周長の総和、断面の中央部の周囲長、中央部に存在する空隙の外周長の総和)は、撮影した写真から、画像解析ソフトフェアHALCON(リンクス社製)を用い、2値化した画像から算出することができる。
【0041】
本発明の顆粒は、賦形剤等として医薬品固形製剤の製造等に用いることができ、カプセル用やサッシェ用、特に口腔内崩壊錠に好適に用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
活性成分としてエテンザミド(エテンザミドA(粉末タイプ) 山本化学工業社製)30質量%、賦形剤として、糖類であるD-マンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)51質量%と、結晶セルロース(PH-101 旭化成社製)10質量%、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-21 信越化学工業社製)5質量%、及び結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L 日本曹達社製)3質量%をタンブラーミキサーにて5分間混合した。この混合粉体を、連続造粒装置(グラニュフォーマー Gf-2050 フロイント産業社製)を用い、加水割合が混合粉体に対し16質量%となるようにして湿式造粒した。続いて前記グラニュフォーマーに付属の整粒機(スクリーン径φ3.0mm)にて湿式整粒した後、風量8.5m3/min、給気温度120℃で稼働するグラニュフォーマー付属の気流式乾燥機(スパイラルドライヤー)にて、造粒した湿式造粒物を連続的に供給しながら60秒以内で、水分量が前記湿式造粒物の原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下に達するように乾燥させ、サイクロン式の回収機で乾燥顆粒を回収した。
【0044】
(実施例2)
実施例1の混合粉体におけるD―マンニトールを乳糖(Pharmatose 200M DPE Pharma社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして造粒、整粒、乾燥を行い、乾燥顆粒を得た。
【0045】
(実施例3)
実施例1の混合粉体におけるエテンザミドを除いた以外は、実施例1と同様にして造粒、整粒、乾燥を行い、乾燥顆粒を得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた整粒後の湿式造粒物を、流動層造粒乾燥機(フローコーター FLO-5M フロイント産業社製)に仕込み、風量3m3/min、給気温度80℃の条件で排気温度が40℃になるまで40分間で、水分量が前記湿式造粒物の原料混合物の平衡水分値の2.0倍以下に達するように乾燥させ、乾燥顆粒を得た。
【0047】
(比較例2)
実施例1の混合粉体からヒドロキシプロピルセルロースを除いたものを、流動層造粒乾燥機(フローコーター FLO-5M フロイント産業社製)に仕込み、風量3m3/min、給気温度80℃の条件で、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L 日本曹達社製)の5質量%水溶液をスプレーして湿式造粒を行い、比較例1と同様にして乾燥を行って、乾燥顆粒を得た。なお、顆粒におけるヒドロキシプロピルセルロースの割合は実施例1と同様の比率になるように行った。
【0048】
(評価1)
前記実施例1~3、及び比較例1~2で得られた各顆粒を3次元X線顕微鏡(nano3DX リガク社製)で、管電圧40kv、管電流30mA、空間分解能0.52μm/voxcelの条件で撮影した。
画像解析ソフトフェアHALCON(リンクス社製)を用い、撮影した写真を2値化した画像から、顆粒断面積、及び前記断面における空隙の外周長の総和(以下、「空隙外周長」と称することがある。)を算出した。さらに、erosion法により、前記顆粒の断面を中央部と外周部に分割し、前記中央部の周囲長(以下、「中央部周囲長」と称することがある。)、及び前記中央部に存在する空隙外周長の総和(以下、「中央部空隙外周長」と称することがある。)を算出した。表1に、空隙外周長(A)、顆粒断面積(B)、A/B、中央部周囲長と中央部空隙外周長との比率を示す。
なお、撮影した写真の一例を
図2A(実施例1)及び
図3A(比較例1)に示す。
図2A及び
図3A中の符号Zは、前記測定を行った顆粒を表す。また、前記
図2A及び
図3Aの画像を処理した後の図を、それぞれ、
図2B及び
図3Bに示す。
【0049】
次に、実施例1及び2、比較例1及び2の各顆粒にステアリン酸マグネシウムを1質量%添加して混合し、打錠機(VERGO 菊水製作所社製)にて、Φ8mm、10R、180mg/錠の条件で、錠剤硬度が50N程度になるように、適切な打錠圧を選択し、錠剤化した。実施例3の顆粒については、エテンザミド30質量%と混合した後、他の顆粒と同様にステアリン酸マグネシウムと混合し、錠剤化した。そして、口腔内(速)崩壊錠測定装置(トリコープテスタ 岡田精工社製)を用いて、前記錠剤の崩壊時間を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
(評価2)
常温の精製水を900mL入れたビーカーで、スターラーを800rpmで回転させ、前記実施例1又は比較例1で得られた顆粒をそれぞれ100mg又は200mg投入し、造粒顆粒が目視で確認できなくなるまでの時間を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
【0053】
以上の結果から、本発明の顆粒は、非常に崩壊性が優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の顆粒は優れた崩壊性を有するので、カプセル、サッシェ、口腔内崩壊錠等の医薬品固形製剤などを製造するための顆粒として好適に用いることができる。
本発明の顆粒を口腔内崩壊錠に用いると、口中で素早く崩壊して嚥下がスムーズになる。また、本発明の顆粒をカプセルやサッシェに用いると、カプセル溶解時に中の顆粒が素早く崩壊して高濃度の薬液が腸管に流出し、吸収されるために、設計通りの薬効が期待できる。
【符号の説明】
【0055】
1 ・・・ 中心
2 ・・・ 顆粒の外周
3 ・・・ 中央部の外周(顆粒断面の重心から顆粒の外周までの中間点を結んだ線)
4 ・・・ 中央部
Z ・・・ 顆粒