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特許7224637送信装置、受信装置、送受信装置および送受信システム
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  • 特許-送信装置、受信装置、送受信装置および送受信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、送受信装置および送受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 69/08 20220101AFI20230213BHJP
   H04N 21/436 20110101ALI20230213BHJP
【FI】
H04L69/08
H04N21/436
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019062762
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020162094
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和久
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】岩間 大介
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-169840(JP,A)
【文献】特開2015-204513(JP,A)
【文献】特開2010-199725(JP,A)
【文献】特開2016-152576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 13/00
H04N 21/436
H04L 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送速度が互いに異なる少なくとも二つの信号を含む複数の信号に基づくシリアルデータ信号を受信装置へ送出する送信装置であって、
前記複数の信号を入力するとともに、前記複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度以上に高速なサンプリングクロックを入力し、前記サンプリングクロックが指示するタイミングで前記複数の信号それぞれのレベルを保持し、その保持した前記複数の信号をパラレルデータ信号として出力するラッチと、
前記ラッチから出力されたパラレルデータ信号に基づいて符号化されたパラレルデータ信号を生成して出力する符号化部と、
前記符号化部から出力されたパラレルデータ信号に基づいてシリアルデータ信号を生成して出力するシリアライザと、
前記受信装置においてクロックデータ復元動作のトレーニングを行う為のトレーニングパターン信号、および、前記シリアライザから出力されたシリアルデータ信号の、何れかを選択して前記受信装置へ送出するセレクタと、
を備える送信装置。
【請求項2】
前記サンプリングクロックは、前記複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度より高速かつ非同期である、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記複数の信号のうちの何れかの信号は音声信号であり、
前記サンプリングクロックは前記音声信号の伝送速度と同じ又は逓倍の速度の周波数を有する、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記複数の信号のうちの何れかの信号はクロックエンベディッドデータ信号である、
請求項1~3の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項5】
伝送速度が互いに異なる少なくとも二つの信号を含む複数の信号に基づくシリアルデータ信号を送信装置から受信する受信装置であって、
前記送信装置から送られて来たトレーニングパターン信号に基づいてクロックデータ復元動作のトレーニングを行い、トレーニング終了後に前記送信装置から送られて来たシリアルデータ信号に基づいてクロックおよびデータを復元して出力する受信部と、
前記受信部により復元されて出力されたクロックを分周して、前記複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度以上に高速なサンプリングクロックを生成して出力する分周部と、
前記受信部により復元されて出力されたデータに基づいてパラレルデータ信号を生成して出力するデシリアライザと、
前記デシリアライザから出力されたパラレルデータ信号に基づいて復号化されたパラレルデータ信号を生成して出力する復号化部と、
前記サンプリングクロックが指示するタイミングで前記復号化部から出力されたパラレルデータ信号の各ビットのレベルを保持し、その保持した各ビットの信号を前記複数の信号の何れかとして出力するラッチと、
を備える受信装置。
【請求項6】
前記サンプリングクロックは、前記複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度より高速かつ非同期である、
請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記複数の信号のうちの何れかの信号は音声信号であり、
前記サンプリングクロックは前記音声信号の伝送速度と同じ又は逓倍の速度の周波数を有する、
請求項5に記載の受信装置。
【請求項8】
前記複数の信号のうちの何れかの信号はクロックエンベディッドデータ信号である、
請求項5~7の何れか1項に記載の受信装置。
【請求項9】
請求項1~4の何れか1項に記載の送信装置と、この送信装置とは別の送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する請求項5~8の何れか1項に記載の受信装置と、を備える送受信装置。
【請求項10】
請求項1に記載の送信装置と、この送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する請求項5に記載の受信装置と、を備える送受信システム。
【請求項11】
請求項2に記載の送信装置と、この送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する請求項6に記載の受信装置と、を備える送受信システム。
【請求項12】
請求項3に記載の送信装置と、この送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する請求項7に記載の受信装置と、を備える送受信システム。
【請求項13】
請求項4に記載の送信装置と、この送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する請求項8に記載の受信装置と、を備える送受信システム。
【請求項14】
映像信号を送出する映像送信装置と、この映像送信装置から送出された映像信号を受信する映像受信装置と、を更に備える請求項12に記載の送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、送受信装置および送受信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器のアプリケーションの発展に伴い、電子機器間で送受信する信号が多様化している。多様化された複数の信号を電子機器間で送受信する場合、これら複数の信号の伝送の媒体である金属等のワイヤが増加し、このことはアプリケーションに制限を与えることになる。アプリケーションの一例に映像機器があり、更に、映像機器の一例に別体型ディスプレイシステムがある。
【0003】
従来の一体型ディスプレイシステムは、表示部の大型化・薄型化・軽量化に対する要望に応えることに限界があり、配置および利用形態に対する制約の問題もある。これに対して、別体型ディスプレイシステムは、このような一体型ディスプレイシステムが有する限界や制約の問題を解消し得るものとして提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
別体型ディスプレイシステムでは、別体として設けられる二つの筐体の間で映像信号等が送受信される。別体型ディスプレイシステムとして、大型のものでは壁掛けTVディスプレイシステムなどがあり、小型のものではヘッドマウントディスプレイシステムなどがある。筐体として、表示部(例えば液晶パネル)、TVチューナ部、DVDレコーダおよびビデオゲーム機などが挙げられる。
【0005】
TVチューナ部と表示部とが別体として設けられている別体型ディスプレイシステムを例にして説明すると、次のとおりである。TVチューナ部から外部インターフェースを介して表示部へ映像信号、音声信号および様々な制御信号が送られる。表示部では、送られて来た信号に基づいて、映像が表示され、音声が出力され、或いは、様々な制御がなされる。また、表示部から外部インターフェースを介してTVチューナ部へ制御信号が送られる場合もある。
【0006】
映像信号を伝送する外部インターフェースしてHDMI(High-Definition Multimedia Interface、登録商標)が知られている。HDMIは、別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースにも適用されている。4K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースとしてHDMI2.0を適用する場合、1本のケーブルで映像信号等の伝送が可能である。HDMI2.0の1本のケーブル(タイプAのコネクタの場合)は、映像系の8本の信号線、制御系の5本の信号線、および、その他の電源線等を含めて、計19本の信号線(ワイヤ)を有する。
【0007】
8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースとしてHDMI2.0を適用しようとする場合、映像伝送量が4Kの場合の4倍になるので、映像信号等の伝送には4本のケーブルが必要である。
【0008】
8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースとしてHDMI2.1を適用する場合、帯域48Gbpsの信号に圧縮して伝送することにより、既存のコネクタを採用した1本のケーブルを用いて8Kの映像信号を伝送することが可能であるとされている。すなわち、1本のケーブルで8Kの別体型ディスプレイシステムを実現することが可能であるとされている。
【0009】
また、4K,8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースは、V-by-One(登録商標)(非特許文献1~3)により映像信号を伝送し、I2S(Inter-IC Sound)により音声信号を伝送し、I2C(Inter-Integrated Circuit)により制御信号を伝送することで、実現することも考えられる。V-by-One(登録商標)は、表示部(例えば液晶パネル)内の映像信号を伝送する内部インターフェースとしてデファクトスタンダードとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-138426号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】“V-by-One(R) HS Standard Version1.52”、[online]、平成30年9月、ザインエレクトロニクス株式会社、[平成31年3月22日検索]、インターネット<https://www.thine.co.jp/files/user/img/corporate/VBOSTD-V1P52-0000_Abridged%2BEdition.pdf>
【文献】“4K、8K映像向け次世代高速インターフェース規格V-by-One(R) US技術仕様策定のお知らせ”、[online]、平成29年3月29日、ザインエレクトロニクス株式会社、[平成31年3月22日検索]、インターネット<https://www.thine.co.jp/news_details/id=1125>
【文献】“ZMPフォーラムにて、8Mカメラ映像を1ペア伝送できる超高速伝送技術紹介のお知らせ”、[online]、平成28年8月16日、ザインエレクトロニクス株式会社、[平成31年3月22日検索]、インターネット<https://www.thine.co.jp/news_details/id=1091?SmartPhonePCView=2>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースとしてHDMI2.1を適用する場合、信号の圧縮および伸長の各処理に時間を要することから、映像の表示に遅延が生じる。また、その圧縮技術は非可逆であることから、表示される映像が劣化する。さらに、8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースとしてHDMI2.0を適用する場合はケーブル本数が増える。
【0013】
これに対して、8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースとしてV-by-One(登録商標)を用いて映像信号を伝送する場合、ケーブルの本数の増加を抑制することができ、圧縮しなくても映像信号を伝送することができる。しかし、音声信号および制御信号は映像信号と比べて多様であることから、これらの多様な複数の信号それぞれに対して信号線(ワイヤ)を割り当てると、信号線の本数が増加し、ケーブルが太線化することになる。
【0014】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、伝送すべき信号の種類が増加しても外部インターフェースのケーブルの本数の増加を抑制することができる送信装置および受信装置を提供することを目的とする。また、これらの送信装置および受信装置を備える送受信装置、ならびに、これらの送信装置と受信装置との間で信号を送受信する送受信システムを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の送信装置は、伝送速度が互いに異なる少なくとも二つの信号を含む複数の信号に基づくシリアルデータ信号を受信装置へ送出する送信装置であって、(1) 複数の信号を入力するとともに、複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度以上に高速なサンプリングクロックを入力し、サンプリングクロックが指示するタイミングで複数の信号それぞれのレベルを保持し、その保持した複数の信号をパラレルデータ信号として出力するラッチと、(2) ラッチから出力されたパラレルデータ信号に基づいて符号化されたパラレルデータ信号を生成して出力する符号化部と、(3) 符号化部から出力されたパラレルデータ信号に基づいてシリアルデータ信号を生成して出力するシリアライザと、(4) 受信装置においてクロックデータ復元動作のトレーニングを行う為のトレーニングパターン信号、および、シリアライザから出力されたシリアルデータ信号の、何れかを選択して受信装置へ送出するセレクタと、を備える。
【0016】
本発明の受信装置は、伝送速度が互いに異なる少なくとも二つの信号を含む複数の信号に基づくシリアルデータ信号を送信装置から受信する受信装置であって、(1) 送信装置から送られて来たトレーニングパターン信号に基づいてクロックデータ復元動作のトレーニングを行い、トレーニング終了後に送信装置から送られて来たシリアルデータ信号に基づいてクロックおよびデータを復元して出力する受信部と、(2) 受信部により復元されて出力されたクロックを分周して、複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度以上に高速なサンプリングクロックを生成して出力する分周部と、(3) 受信部により復元されて出力されたデータに基づいてパラレルデータ信号を生成して出力するデシリアライザと、(4) デシリアライザから出力されたパラレルデータ信号に基づいて復号化されたパラレルデータ信号を生成して出力する復号化部と、(5) サンプリングクロックが指示するタイミングで復号化部から出力されたパラレルデータ信号の各ビットのレベルを保持し、その保持した各ビットの信号を複数の信号の何れかとして出力するラッチと、を備える。
【0017】
本発明の送受信装置は、上記の本発明の送信装置と、この送信装置とは別の送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する上記の本発明の受信装置と、を備える。この送受信装置において、送信装置と受信装置とは一体化されているのが好適である。送信装置と受信装置とは、共通の半導体基板上に形成されたものであってもよいし、別個の半導体基板上に形成されて共通のパッケージに入れられたものであってもよいし、別個のパッケージに入れられて共通の筐体に入れられたものであってもよい。
【0018】
本発明の送受信システムは、上記の本発明の送信装置と、この送信装置から送出されたシリアルデータ信号を受信する上記の本発明の受信装置と、を備える。また、本発明の送受信システムは、映像信号を送出する映像送信装置と、この映像送信装置から送出された映像信号を受信する映像受信装置と、を更に備えるのが好適である。
【0019】
本発明において、サンプリングクロックは、複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度より高速かつ非同期であってもよい。複数の信号のうちの何れかの信号は音声信号であってもよく、この場合、サンプリングクロックは音声信号の伝送速度と同じ又は逓倍の速度の周波数を有するのが好適である。複数の信号のうちの何れかの信号はクロックエンベディッドデータ信号であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、伝送すべき信号の種類が増加しても外部インターフェースのケーブルの本数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、送受信システム100の構成例を示す図である。
図2図2は、送受信システム101の構成例を示す図である。
図3図3は、送受信システム101の動作例を示す図である。
図4図4は、送受信システム101の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
図1は、送受信システム100の構成例を示す図である。送受信システム100は、TVチューナ部1と表示部2とが別体として設けられている別体型ディスプレイシステムであるとして、以下に説明する。TVチューナ部1は、送受信装置10および映像送信装置30を備える。表示部2は、送受信装置20および映像受信装置40を備える。TVチューナ部1から表示部2へ送られる信号として映像信号、音声信号および制御信号がある。表示部2からTVチューナ部1へ送られる信号として制御信号がある。なお、本実施形態では、制御信号は、映像信号および音声信号を除く様々な信号(例えばリモコン操作情報など)を含むものとする。
【0024】
映像信号は、TVチューナ部1の映像送信装置30から表示部2の映像受信装置40へ送られる。映像送信装置30から映像受信装置40への片方向の信号伝送であってよい。このような映像送信装置30および映像受信装置40による映像信号の片方向インターフェースは、V-by-One(登録商標)としてデファクトスタンダードとなっている。
【0025】
音声信号は、従来では、例えばI2S規格による通信により、TVチューナ部から表示部へ送られていた。I2S規格は、音声信号を伝送するものとして代表的なものである。I2S規格により2チャンネルステレオの音声信号を伝送する場合、チャンネル情報、デジタル化された音声データおよび音声データに同期したクロックを伝送する必要があり、3本または4本の信号線が必要である。
【0026】
制御信号は、従来では、例えばI2C規格による通信により、TVチューナ部から表示部へ送られており、また、場合によっては、表示部からTVチューナ部へ送られていた。I2C規格は、制御信号を伝送するものとして一般的に用いられている。I2C規格は、数百KHzの低速信号を双方向に通信することができ、制御信号などの多くの帯域を必要としない伝送に適している。I2C規格により信号を伝送する場合、2本の信号線が必要である。
【0027】
別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースは、映像信号をV-by-One(登録商標)の技術により伝送し、音声信号をI2Sにより伝送し、制御信号をI2Cにより双方向伝送することで、実現することができる。
【0028】
V-by-One(登録商標)の映像信号伝送技術は、8K別体型ディスプレイシステムの外部インターフェースに適用された場合にも、ケーブルの本数の増加を抑制することができ、圧縮しなくても映像信号を伝送することができる。
【0029】
これに対して、音声信号および制御信号は映像信号と比べて多様であることから、これらの多様な複数の信号それぞれに対して信号線(ワイヤ)を割り当てると、信号線の本数が増加し、ケーブルが太線化することになる。また、これらの複数の信号は、伝送速度が一致しているとは限らず、同期しているとも限らないことから、映像信号の場合のような単純なシリアライズ・テクノロジでは対応することができない。例えば、音声信号はMbps程度であるが、制御信号はKbps程度で伝送されることが多い。
【0030】
そこで、本実施形態の送受信システム100は、送受信装置10および送受信装置20を用いて、TVチューナ部1と表示部2との間で音声信号および制御信号を伝送する。本実施形態の送受信システム100は、I2SおよびI2Cによる通信を行わなくてもよい。
【0031】
図2は、送受信システム101の構成例を示す図である。この図に示される送受信システム101は、図1に示された送受信システム100(別体型ディスプレイシステム)のうち送受信装置10および送受信装置20を備えるものであるとして、以下に説明する。
【0032】
送受信装置10は、送信装置110および受信装置120を備える。送信装置110および受信装置120は、一体となってTVチューナ部1内に設けられており、共通の半導体基板上に形成されたものであってもよいし、別個の半導体基板上に形成されて共通のパッケージに入れられたものであってもよいし、別個のパッケージに入れられて共通の筐体に入れられたものであってもよい。
【0033】
送信装置110は、ラッチ111、スクランブラ112、符号化部113、シリアライザ114、セレクタ115、トレーニングパターン信号生成部116およびPLL回路117を含む。受信装置120は、ラッチ121、デスクランブラ122、復号化部123、デシリアライザ124、サンプラ125、CDR部126および分周部127を含む。
【0034】
送受信装置20は、送信装置210および受信装置220を備える。送信装置210および受信装置220は、一体となって表示部2内に設けられており、共通の半導体基板上に形成されたものであってもよいし、別個の半導体基板上に形成されて共通のパッケージに入れられたものであってもよいし、別個のパッケージに入れられて共通の筐体に入れられたものであってもよい。
【0035】
送信装置210は、ラッチ211、スクランブラ212、符号化部213、シリアライザ214、セレクタ215、トレーニングパターン信号生成部216およびPLL回路217を含む。受信装置220は、ラッチ221、デスクランブラ222、復号化部223、デシリアライザ224、サンプラ225、CDR部226および分周部227を含む。
【0036】
送信装置110から受信装置220へ、伝送速度が互いに異なる少なくとも二つの信号を含む複数の信号に基づくシリアルデータ信号が送られる。送信装置210から受信装置120へ、伝送速度が互いに異なる少なくとも二つの信号を含む複数の信号に基づくシリアルデータ信号が送られる。
【0037】
TVチューナ部1の送信装置110から表示部2の受信装置220へ音声信号および制御信号を伝送することができる。表示部2の送信装置210からTVチューナ部1の受信装置120へ制御信号を伝送することができる。また、TVチューナ部1の送受信装置10をマスターとし、表示部2の送受信装置20をスレーブとして、送受信システム101は動作することができる。
【0038】
送信装置110および送信装置210において、同名の構成要素は同じ構成・機能を有することができる。受信装置120および受信装置220においても、同名の構成要素は同じ構成・機能を有することができる。以下では、主に送信装置110および受信装置220について詳細に説明する。
【0039】
送信装置110のラッチ111は、SoC130から出力された複数の信号を入力するとともに、サンプリングクロックをも入力する。ラッチ111は、サンプリングクロックが指示するタイミングで複数の信号それぞれのレベルを保持し、その保持した複数の信号をパラレルデータ信号として出力する。以下では、マスター側のサンプリングクロックをマスターサンプリングクロックという。
【0040】
SoC(System-on-a-chip)は、1個の半導体チップ上に、プロセッサコアをはじめ一般的なマイクロコントローラが持つような機能の他、応用目的の機能などが集積され、連携してシステムとして機能するよう設計されている集積回路である。本実施形態では、SoC130は、映像信号および音声信号の送信ならびに制御信号の送受信を担う。
【0041】
スクランブラ112および符号化部113は、ラッチ111から出力されたパラレルデータ信号に基づいて符号化されたパラレルデータ信号を生成して出力する。スクランブラ112は、乱数発生器で発生させた乱数を用いて、ラッチ111から出力されたパラレルデータ信号に対してスクランブル処理を行う。符号化部113は、スクランブラ112によりスクランブル処理されたパラレルデータ信号に基づいて例えば8B10Bの符号化処理を行って、その符号化されたパラレルデータ信号を出力する。
【0042】
シリアライザ114は、符号化部113から出力されたパラレルデータ信号に基づいてシリアルデータ信号を生成して出力する。また、シリアライザ114は、アライメントコードをシリアルデータ信号に挿入する。すなわち、シリアルデータ信号は、音声信号および制御信号に加えてアライメントコードを含む。アライメントコードは、受信装置220においてシリアルデータ信号からパラレルデータ信号に変換する際のビット位置合わせの為に用いられる。例えば、符号化部113が8B10Bの符号化処理を行う場合、音声信号および制御信号についてはDコードが用いられ、アライメントコードについてはKコードが用いられる。Kコードは80通りあるが、そのうちの特定の1個または少数個のKコードをアライメントコードにとして用いればよく、そのようにすることで受信装置220においてアライメントコードの検出(Kコードの検出)が容易となる。
【0043】
セレクタ115は、トレーニングパターン信号生成部116から出力されたトレーニングパターン信号、および、シリアライザ114から出力されたシリアルデータ信号の、何れかを選択して受信装置220へ送出する。PLL(Phase Lock Loop)回路117は、マスターサンプリングクロックの周波数の逓倍の周波数を有するクロックを生成し、トレーニングパターン信号生成部116は、PLL回路117により生成されたクロックに基づいてトレーニングパターン信号を生成する。トレーニングパターン信号は、受信装置220においてクロックデータ復元動作のトレーニングを行う際に用いられるものであって、好適にはデューティ比が0.5である一定周波数のクロック信号である。
【0044】
受信装置220のサンプラ225およびCDR部226は、送信装置110から送られて来た信号を受信する受信部であって、トレーニングパターン信号に基づいてクロックデータ復元動作のトレーニングを行い、トレーニング終了後に送られて来たシリアルデータ信号に基づいてクロックおよびデータを復元して出力する。サンプラ225は、送信装置110から送られて来た信号を、CDR部226から出力されるクロックが指示するタイミングでサンプリングし、そのサンプリングしたデータを出力する。CDR部226は、サンプラ225から出力されたデータと、送信装置110から送られて来た信号との間で、周波数および位相が一致(ロック)するように、サンプラ225へ与えるクロックを生成する。同期している状態では、サンプラ225から復元データが出力され、CDR部226から復元クロックが出力される。トレーニングパターン信号は、このようなクロックデータ復元動作のトレーニングを行う際に用いられる。
【0045】
分周部227は、CDR部226から出力された復元クロックを分周して、サンプリングクロックを生成して出力する。デシリアライザ224は、サンプラ225から出力された復元データに基づいてパラレルデータ信号を生成して出力する。以下では、スレーブ側のサンプリングクロックをスレーブサンプリングクロックという。
【0046】
復号化部223およびデスクランブラ222は、デシリアライザ224から出力されたパラレルデータ信号に基づいて復号化されたパラレルデータ信号を生成して出力する。復号化部223は、デシリアライザ224から出力されたパラレルデータ信号に対して、符号化部113による符号化処理に対応する復号化処理を行って、その復号化されたパラレルデータ信号を出力する。デスクランブラ222は、スクランブラ112が有する乱数発生器と同様の乱数発生器を有しており、この乱数発生器で発生させた乱数を用いて、復号化部223から出力されたパラレルデータ信号に対してデスクランブル処理を行う。
【0047】
ラッチ221は、分周部227から出力されたスレーブサンプリングクロックが指示するタイミングで、デスクランブラ222から出力されたパラレルデータ信号の各ビットのレベルを保持し、その保持した各ビットの信号を複数の信号の何れかとして出力する。このとき、ラッチ221は、送信装置110から送られて来たシリアルデータ信号に含まれるアライメントコードに基づいて、パラレルデータ信号のビット位置合わせを行うことができる。
【0048】
SoC240は、ラッチ221により保持されて出力されるパラレルデータ信号を、複数の信号の何れかに対応づけて入力して、所要の処理(例えば、映像出力、音声出力、各種の制御)を行う。
【0049】
送信装置110から受信装置220へシリアルデータ信号として送られる複数の信号(送信装置110のラッチ111に入力される複数の信号、受信装置220のラッチ221から出力される複数の信号)は、伝送速度が同じでなくてもよく、同期していなくてもよい。これらの複数の信号のうち、或る信号は、他の信号に同期したクロック信号であってもよい。
【0050】
送信装置110のラッチ111に入力されるマスターサンプリングクロック、および、受信装置220の分周部227により生成されるスレーブサンプリングクロックは、送信装置110から受信装置220へシリアルデータ信号として送られる複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度以上に高速な周波数を有する。
【0051】
マスターサンプリングクロックおよびスレーブサンプリングクロックは、これらの複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度と同じ周波数を有するものであってもよい。この場合には、受信装置220のデシリアライザ224によるシリアルパラレル変換を簡易な構成で実現することができる。
【0052】
マスターサンプリングクロックおよびスレーブサンプリングクロックは、これらの複数の信号のうち最も高速な信号の伝送速度より高速かつ非同期であってもよい。この場合には、システム上の制約やアプリケーションの要望により非同期にしておく必要がある場合であっても、シリアライザ114およびデシリアライザ224を容易に構成することができる。
【0053】
これらの複数の信号のうちの何れかの信号はクロックエンベディッドデータ信号であってもよい。伝送したい信号はデータとクロックとに分離されているとは限らないことから、クロックエンベディッドデータ信号を伝送することにより、伝送可能な信号形式に汎用性をもたせることが可能となる。
【0054】
これら複数の信号のうちの何れかの信号は音声信号であってよく、この場合、マスターサンプリングクロックおよびスレーブサンプリングクロックは音声信号の伝送速度と同じ又は逓倍の速度の周波数を有するのが好適である。この場合には、送信側においてAD変換により音声から音声信号を生成する際のクロックと、受信側においてDA変換により音声信号から音声を生成する際のクロックとを、互いに一致させることができることから、受信側において生成される音声の劣化を抑制することができる。
【0055】
図3は、送受信システム101の動作例を示す図である。この図には、上から順に、送信装置110から受信装置220へ送られるクロックトレーニング信号およびシリアルデータ信号、その信号を受信した受信装置220において生成されるパラレルデータ信号、送信装置210から受信装置120へ送られるクロックトレーニング信号シリアルデータ信号、その信号を受信した受信装置120において生成されるパラレルデータ信号、が示されている。
【0056】
送信装置110において、トレーニングパターン信号生成部116から出力されたトレーニングパターン信号(CDR Training Pattern)が、セレクタ115から受信装置220へ送出される。このトレーニングパターン信号を受信した受信装置220において、サンプラ225およびCDR部226によりクロックトレーニングが行われる。
【0057】
受信装置220において、クロックトレーニングの結果、サンプラ225から出力されたデータと送信装置110から送られて来たトレーニングパターン信号との間で周波数および位相が一致(ロック)したと判断されると、その旨を表す信号(S_Lock Notification)が送信装置210へ送られる。また、CDR部226から出力される復元クロックに基づいて分周部227によりスレーブサンプリングクロックが生成され送信装置210へ送られる。
【0058】
送信装置210において、受信装置220からロック信号(S_Lock Notification)を受け取ると、トレーニングパターン信号生成部216から出力されたトレーニングパターン信号(CDR Training Pattern)が、セレクタ215から受信装置120へ送出される。このトレーニングパターン信号を受信した受信装置120において、サンプラ125およびCDR部126によりクロックトレーニングが行われる。
【0059】
受信装置120において、クロックトレーニングの結果、サンプラ125から出力されたデータと送信装置210から送られて来たトレーニングパターン信号との間で周波数および位相が一致(ロック)したと判断されると、その旨を表す信号(M_Lock Notification)が送信装置110へ送られる。また、CDR部126から出力される復元クロックに基づいて分周部227によりスレーブサンプリングクロックが生成される。
【0060】
送信装置110において、受信装置120からロック信号(M_Lock Notification)を受け取ると、シリアライザ114から出力されたシリアルデータ信号(Normal Pattern)が、セレクタ115から受信装置220へ送出される。このシリアルデータ信号は、SoC130から出力されてラッチ111、スクランブラ112および符号化部113を経た後にシリアライザ114によりパラレルシリアル変換されて生成されたものである。また、このシリアルデータ信号は、アライメントコード(Alignment Code)が挿入されている。
【0061】
受信装置220において、送信装置110から送られて来たシリアルデータ信号に基づいてサンプラ225およびCDR部228によりデータおよびクロックが復元される。その復元データはデシリアライザ224によりパラレルデータ信号に変換される。そのパラレルデータ信号は、復号化部223およびデスクランブラ222を経た後にラッチ221により、分周部227から出力されるスレーブサンプリングクロックが指示するタイミングで保持される。そして、アライメントコードに基づいて、パラレルデータ信号のビット位置合わせが行われる。パラレルデータ信号のビット位置合わせが終了すると、その旨を示す信号(Align Detection)が、受信装置220から送信装置210へ送られる。また、これ以降、ラッチ221により保持されて出力されるパラレルデータ信号は、複数の信号の何れかに対応づけられてSoC240へ出力される。
【0062】
送信装置210において、受信装置220からアライメント終了信号(Align Detection)を受け取ると、シリアライザ214から出力されたシリアルデータ信号(Normal Pattern)が、セレクタ215から受信装置120へ送出される。このシリアルデータ信号は、SoC230から出力されてラッチ211、スクランブラ212および符号化部213を経た後にシリアライザ214によりパラレルシリアル変換されて生成されたものである。また、このシリアルデータ信号は、アライメントコード(Alignment Code)が挿入されている。
【0063】
受信装置120において、送信装置210から送られて来たシリアルデータ信号に基づいてサンプラ125およびCDR部128によりデータおよびクロックが復元される。その復元データはデシリアライザ124によりパラレルデータ信号に変換される。そのパラレルデータ信号は、復号化部123およびデスクランブラ122を経た後にラッチ121により、分周部127から出力されるマスターサンプリングクロックが指示するタイミングで保持される。そして、アライメントコードに基づいて、パラレルデータ信号のビット位置合わせが行われる。パラレルデータ信号のビット位置合わせが終了すると、これ以降、ラッチ121により保持されて出力されるパラレルデータ信号は、複数の信号の何れかに対応づけられてSoC140へ出力される。
【0064】
図4は、送受信システム101の動作例を示すタイミングチャートである。この図には、上から順に、SoC130から送信装置110のラッチ111に入力される信号(SoC_A_DATA、SoC_A_CLK、SoC_B_DATA、SoC_B_CLK)、送信装置110に入力されるマスターサンプリングクロック(SamplingCLK)、送信装置110のシリアライザ114に入力されるパラレルデータ信号(Parallel In)、送信装置110から受信装置220へ送られるシリアルデータ信号(M->S)、受信装置220のデシリアライザ224から出力されるパラレルデータ信号(Parallel Out)、受信装置220の分周部227から出力されるスレーブサンプリングクロック(Div出力CLK)、受信装置220のラッチ221からSoC240へ出力される信号(SoC_A_DATA、SoC_A_CLK、SoC_B_DATA、SoC_B_CLK)、が示されている。ここでは、SoC_A_CLKはSoC_A_DATAの同期クロックであり、SoC_B_CLKはSoC_B_DATAの同期クロックであるとしている。
【0065】
SoC_A_DATA、SoC_A_CLK、SoC_B_DATA、SoC_B_CLKは、伝送速度が異なり、非同期である。しかし、これらの信号のうち最も高速な信号の伝送速度以上に高速な周波数を有するマスターサンプリングクロックを用い、このマスターサンプリングクロックが指示するタイミングで複数の信号をラッチ111により保持し、符号化およびパラレルシリアル変換してシリアルデータ信号を生成し、そのシリアルデータ信号を送信装置から受信装置へ送る。このようにすることにより、伝送すべき信号の種類が増加しても外部インターフェースのケーブルの本数の増加を抑制することができる。
【0066】
SoC間で送受信される制御信号としては、例えば、映像および音声を再生し出力する上で必要な信号、送信装置および受信装置それぞれの状態を示す信号、リモートコントローラから与えられた指示の内容を示す信号、等が挙げられる。また、ヘッドマウントディスプレイシステムでは、SoC間で送受信される制御信号としては、例えば、表示部(ヘッド部)の位置および方位の情報、表示部を装着した者の生体センサ情報、等が挙げられる。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、別体型ディスプレイシステムへの適用に限られるものではない。本発明は、一般に、送受信されるべき複数の信号が非同期であったり伝送速度が異なったりするシステムに好適に適用され得る。送受信されるべき複数の信号は任意である。本発明は、例えば、産業用ロボットシステムや印刷システム等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0068】
1…TVチューナ部、2…表示部、10…送受信装置、20…送受信装置、30…映像送信装置、40…映像受信装置、100,101…送受信システム。
110…送信装置、111…ラッチ、112…スクランブラ、113…符号化部、114…シリアライザ、115…セレクタ、116…トレーニングパターン信号生成部、117…PLL回路。
120…受信装置、121…ラッチ、122…デスクランブラ、123…復号化部、124…デシリアライザ、125…サンプラ、126…CDR部、127…分周部、130,140…SoC。
210…送信装置、211…ラッチ、212…スクランブラ、213…符号化部、214…シリアライザ、215…セレクタ、216…トレーニングパターン信号生成部、217…PLL回路。
220…受信装置、221…ラッチ、222…デスクランブラ、223…復号化部、224…デシリアライザ、225…サンプラ、226…CDR部、227…分周部、230,240…SoC。
図1
図2
図3
図4