(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】平板スレート屋根の補修構造、補修方法、並びに補修用谷板
(51)【国際特許分類】
E04D 3/40 20060101AFI20230213BHJP
E04D 3/30 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
E04D3/40 N
E04D3/30 D
E04D3/40 K
E04D3/40 D
(21)【出願番号】P 2019106926
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】510314884
【氏名又は名称】株式会社動力
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊勝
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037708(JP,A)
【文献】実開平05-054723(JP,U)
【文献】特開2007-170036(JP,A)
【文献】特開2012-102577(JP,A)
【文献】特開2002-276093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/40
E04D 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟側から軒側に向けて高さが漸次低くなるように傾斜した屋根に対し、傾斜方向が異なる別の屋根が接続されて一つの屋根が形成され、接続された屋根同士の境界部に直線状に延びる谷部が形成された屋根において、
複数枚の平板状のスレート瓦が軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられている平板スレート屋根の補修構造であって、
スレート瓦の上に面合せで重ねて固定され、スレート瓦を覆う補修板と、
前記谷部の延びる方向に交差する方向の両側で対向する前記補修板の各谷側端を覆うように前記各補修板に跨って前記谷部上で前記谷部に沿って被せられる矩形板状の谷板と
を備え、
前記谷板は、その軒側端部に、下面側で棟側に折り返されてスレート瓦及び前記補修板の軒側端部を包み込む矩形の折返部が形成されており、また、棟側端部に、互いに重ねられた棟側のスレート瓦の軒側端部と軒側のスレート瓦の棟側端部との隙間に挿入して固定されるように延長された矩形の延長部が形成されており、
前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部には、スレート瓦又は前記補修板の端部に係合する係合片を備える
平板スレート屋根の補修構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記補修板は、その軒側端部に、下面側で棟側に折り返されてスレート瓦の軒側端部を包み込む矩形の折返部が形成されており、
前記谷板における前記折返部の先端側で対向する角部には、前記補修板の折返部の棟側端部に係合するように上面側に突出する係合片を備える
平板スレート屋根の補修構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記係合片は、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部を斜めに折り曲げて形成された三角形の折曲片である
平板スレート屋根の補修構造。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記係合片は、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部を部分的に切り起こして形成された切起片である
平板スレート屋根の補修構造。
【請求項5】
棟側から軒側に向けて高さが漸次低くなるように傾斜した屋根に対し、傾斜方向が異なる別の屋根が接続されて一つの屋根が形成され、接続された屋根同士の境界部に直線状に延びる谷部が形成された屋根において、
複数枚の平板状のスレート瓦が軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられている平板スレート屋根の補修方法であって、
スレート瓦の上にスレート瓦を覆う補修板を面合せで重ねて固定し、
前記谷部の延びる方向に交差する方向の両側に位置する前記補修板の各谷側端を覆うように前記各補修板に矩形板状の谷板を跨って前記谷部上に前記谷部に沿って被せ、
前記谷板の軒側端部に、下面側で棟側に折り返されて形成された矩形の折返部によりスレート瓦及び前記補修板の軒側端部を包み込み、また、棟側端部を延長して形成された矩形の延長部を、互いに重ねられた棟側のスレート瓦の軒側端部と軒側のスレート瓦の棟側端部との隙間に挿入して固定し、
前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部に備えた係合片を、スレート瓦又は前記補修板の端部に係合する
平板スレート屋根の補修方法。
【請求項6】
棟側から軒側に向けて高さが漸次低くなるように傾斜した屋根に対し、傾斜方向が異なる別の屋根が接続されて一つの屋根が形成され、接続された屋根同士の境界部に直線状に延びる谷部が形成された屋根において、
複数枚の平板状のスレート瓦が軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられており、スレート瓦の上を覆って補修板が面合せで重ねて固定されている平板スレート屋根の谷部の補修用谷板であって、
前記谷部の延びる方向に交差する方向の両側で対向する前記補修板の各谷側端を覆うように前記各補修板に跨って前記谷部上で前記谷部に沿って被せられる矩形板状の谷板本体を備え、
前記谷板本体は、その軒側端部に、下面側で棟側に折り返されてスレート瓦及び前記補修板の軒側端部を包み込む矩形の折返部が形成されており、また、棟側端部に、互いに重ねられた棟側のスレート瓦の軒側端部と軒側のスレート瓦の棟側端部との隙間に挿入して固定されるように延長された矩形の延長部が形成されており、
前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部には、スレート瓦又は前記補修板の端部に係合する係合片を備える
平板スレート屋根の補修用谷板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板スレート屋根の補修構造、補修方法、並びに補修用谷板に関する。
【背景技術】
【0002】
劣化した平板スレート屋根の補修法の一つとして、平板スレート屋根の表面に金属板(以下、補修板という)を接着して被せる方法がある(特許文献1参照)。平板スレート屋根は、棟側から軒側に向けて高さを漸次低くするように傾斜した屋根に対し、複数枚の平板状のスレート瓦が、軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設されている。従って、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられている。この各スレート瓦の表面に補修板を接着固定して補修を行っている。このとき、補修板の軒側端部は、下面側で棟側に折り返されていて、その折返部によりスレート瓦の軒側端を包み込むように折返部が当該スレート瓦とその下面側に位置するスレート瓦との隙間に差し込んで固定されている。また、補修板の棟側端部は、当該スレート瓦とその上面側に位置するスレート瓦との隙間に差し込んで固定されている。
【0003】
特許文献2には、横葺き屋根の谷構造に関する発明が開示されている。この発明は、横葺き屋根の谷部を覆うように、横葺き屋根の谷側端部と谷部を覆う谷キャップとを谷部上で捨て板によって結合するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3197644号公報
【文献】特開平9-125623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
傾斜方向が互いに異なる屋根同士が接続されて一つの屋根が形成される場合がある。係る屋根では、傾斜方向が互いに異なる屋根同士の境界部分には、直線状に延びる屋根の谷部が形成される。この谷部では、谷部を挟む両側からスレート瓦の端部が対向した状態となる。そのため、特許文献1の補修法を実施した場合、谷部において、複数枚の補修板の端部が棟側から軒側に並んで露出することになる。見栄えを良くするためには、各補修板の端部が棟側から軒側に直線状に揃うようにすることが望ましい。しかし、そのように端部を揃える作業は、施工現場の生産性を低下させる。
【0006】
そこで、各補修板の端部全体を棟側から軒側に渡って直線状に形成された別の金属板(以下、谷止縁という)により被うことが考えられる。これによれば、各補修板の端部が棟側から軒側に直線状に揃っていなくても、それらの端部は谷止縁によって覆われるため、見栄えをよくすることができる。しかし、屋根の谷部の大きさに合わせて谷止縁の形状を現場で調整する必要があり、しかもこの作業を谷部に臨む両側の各補修板端部で行う必要があり、作業が煩雑で、施工現場の生産性を低下させる。
【0007】
本発明の課題は、スレート瓦の表面に補修板を被せて平板スレート屋根の補修を行うものにおいて、屋根の谷部に臨む両側の補修板端部を、両側に跨って谷部上で谷部に沿ってカバーすることにより、簡単な作業で谷部に臨む両側の補修板端部を外から見えないようにして見栄えを良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明は、棟側から軒側に向けて高さが漸次低くなるように傾斜した屋根に対し、傾斜方向が異なる別の屋根が接続されて一つの屋根が形成され、接続された屋根同士の境界部に直線状に延びる谷部が形成された屋根において、複数枚の平板状のスレート瓦が軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられている平板スレート屋根の補修構造であって、スレート瓦の上に面合せで重ねて固定され、スレート瓦を覆う補修板と、前記谷部の延びる方向に交差する方向の両側で対向する前記補修板の各谷側端を覆うように前記各補修板に跨って前記谷部上で前記谷部に沿って被せられる矩形板状の谷板とを備え、前記谷板は、その軒側端部に、下面側で棟側に折り返されてスレート瓦及び前記補修板の軒側端部を包み込む矩形の折返部が形成されており、また、棟側端部に、互いに重ねられた棟側のスレート瓦の軒側端部と軒側のスレート瓦の棟側端部との隙間に挿入して固定されるように延長された矩形の延長部が形成されており、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部には、スレート瓦又は前記補修板の端部に係合する係合片を備える。
【0009】
第1発明によれば、屋根の谷部に臨む両側の補修板の各谷側端が、両側の補修板に跨って谷部上で谷部に沿って被せられた谷板により覆われる。そのため、両側の補修板に対して一つの谷板を被せるのみの簡単な作業で谷部に臨む両側の補修板の端部を外から見えないようにして見栄えを良くすることができる。しかも、谷板の折返部又は延長部が互いに重なったスレート瓦の隙間に挿入されたとき、係合片がスレート瓦又は補修板の端部に係合して、谷板が補修板を覆った状態から容易に外れないようにすることができる。また、係合片がスレート瓦又は補修板の端部に係合することにより谷板を谷部上で谷部に沿って位置決めすることができる。なお、谷部での雨仕舞は、補修板、谷板を被せる前段階で既に行われているため、補修板、谷板を被せる段階で改めて行う必要はない。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記補修板は、その軒側端部に、下面側で棟側に折り返されてスレート瓦の軒側端部を包み込む矩形の折返部が形成されており、前記谷板における前記折返部の先端側で対向する角部には、前記補修板の折返部の棟側端部に係合するように上面側に突出する係合片を備える。
【0011】
第2発明によれば、谷板の折返部の係合片が補修板の折返部の端部に係合して、谷板が補修板を覆った状態から容易に外れないようにすることができる。
【0012】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記係合片は、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部を斜めに折り曲げて形成された三角形の折曲片である。
【0013】
第3発明によれば、谷板の角部を折り曲げるのみの簡単な作業で係合片としての折曲片を形成することができる。
【0014】
本発明の第4発明は、上記第1又は第2発明において、前記係合片は、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部を部分的に切り起こして形成された切起片である。
【0015】
第4発明によれば、谷板の角部に切起片を形成するのみの簡単な作業で係合片を形成することができる。
【0016】
本発明の第5発明は、棟側から軒側に向けて高さが漸次低くなるように傾斜した屋根に対し、傾斜方向が異なる別の屋根が接続されて一つの屋根が形成され、接続された屋根同士の境界部に直線状に延びる谷部が形成された屋根において、複数枚の平板状のスレート瓦が軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられている平板スレート屋根の補修方法であって、スレート瓦の上にスレート瓦を覆う補修板を面合せで重ねて固定し、前記谷部の延びる方向に交差する方向の両側に位置する前記補修板の各谷側端を覆うように前記各補修板に矩形板状の谷板を跨って前記谷部上に前記谷部に沿って被せ、前記谷板の軒側端部に、下面側で棟側に折り返されて形成された矩形の折返部によりスレート瓦及び前記補修板の軒側端部を包み込み、また、棟側端部を延長して形成された矩形の延長部を、互いに重ねられた棟側のスレート瓦の軒側端部と軒側のスレート瓦の棟側端部との隙間に挿入して固定し、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部に備えた係合片を、スレート瓦又は前記補修板の端部に係合する。
【0017】
第5発明によれば、第1発明と同様に、簡単な作業で谷部に臨む両側の補修板端部を外から見えないようにして見栄えを良くすることができる。しかも、谷板が補修板を覆った状態から容易に外れないようにすることができる。
【0018】
本発明の第6発明は、棟側から軒側に向けて高さが漸次低くなるように傾斜した屋根に対し、傾斜方向が異なる別の屋根が接続されて一つの屋根が形成され、接続された屋根同士の境界部に直線状に延びる谷部が形成された屋根において、複数枚の平板状のスレート瓦が軒側から棟側に向けて各スレート瓦の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、棟側のスレート瓦は、その軒側端部が軒側のスレート瓦の棟側端部の上に重ねられており、スレート瓦の上を覆って補修板が面合せで重ねて固定されている平板スレート屋根の谷部の補修用谷板であって、前記谷部の延びる方向に交差する方向の両側で対向する前記補修板の各谷側端を覆うように前記各補修板に跨って前記谷部上で前記谷部に沿って被せられる矩形板状の谷板本体を備え、前記谷板本体は、その軒側端部に、下面側で棟側に折り返されてスレート瓦及び前記補修板の軒側端部を包み込む矩形の折返部が形成されており、また、棟側端部に、互いに重ねられた棟側のスレート瓦の軒側端部と軒側のスレート瓦の棟側端部との隙間に挿入して固定されるように延長された矩形の延長部が形成されており、前記谷板の折返部又は前記延長部の先端側で対向する角部には、スレート瓦又は前記補修板の端部に係合する係合片を備える。
【0019】
第6発明によれば、屋根の谷部に臨む両側の補修板の谷側端を、両側の補修板に跨って谷板を被せることにより、第1発明と同様に、簡単な作業で谷部に臨む両側の補修板端部を外から見えないようにして見栄えを良くすることができる。しかも、谷板が補修板を覆った状態から容易に外れないようにすることができる。
【0020】
上記各発明において、補修板、谷板の材料は問わない。金属、樹脂、セラミックス等を使用可能である。また、スレート瓦に対する補修板の固定法は問わない。接着、係合、ねじ止め、釘止め等を使用可能である。更に、谷板は、谷の両側で対を成す一組の補修板に対して一つ設けてもよいし、複数組の補修板に対して一つ設けてもよい。例えば、二組以上の補修板の谷側端を一つの谷板で覆うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】スレート瓦を敷設した平板スレート屋根の一例を示す平面図である。
【
図2】上記平板スレート屋根の谷部を拡大して示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る補修板を上記谷部のスレート瓦に被せた状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る谷板を
図3の谷部に被せた状態を示す斜視図である。
【
図6】上記スレート瓦に上記補修板を被せた状態を示す谷部に沿う方向の断面図である。
【
図14】上記谷板の延長部を示す拡大斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る谷板の折返部を示す拡大斜視図である。
【
図16】第2実施形態に係る谷板の延長部を示す拡大斜視図である。
【
図17】第1実施形態に係る谷板が上記補修板上に被せられた状態示す谷部に沿う方向の断面図である。
【
図18】第1実施形態に係る谷板の折返部が上記補修板に係合した状態を説明する説明図である。
【
図19】第1実施形態に係る谷板の延長部が上記補修板に係合した状態を説明する説明図である。
【
図20】第2実施形態に係る谷板の折返部が上記補修板に係合した状態を説明する説明図である。
【
図21】第2実施形態に係る谷板の延長部が上記補修板に係合した状態を説明する説明図である。
【
図22】本発明の第3実施形態に係る谷板の拡大斜視図である。
【
図23】第3実施形態に係る谷板の折返部及び延長部が上記スレート瓦に係合した状態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に適用する平板状のスレート瓦を敷設した平板スレート屋根の一例を示す。この屋根1は、切妻構造の屋根同士が互いの棟1aを直交させた状態で接続された構造を備える。屋根1は、棟1a側から軒1b側に向けて地上からの高さが漸次低くなるように傾斜しており、接続された屋根同士は、傾斜方向が互いに異なっている。屋根同士の境界部分には直線状に延びる谷部1cが形成されている。
【0023】
屋根1には、複数枚の平板状のスレート瓦10が敷設されている。各スレート瓦10は、軒1b側から棟1a側に向けて各スレート瓦10の端部の一部を面合せで重ねた状態で順次敷設され、その結果、棟1a側のスレート瓦10は、その軒側端部が軒1b側のスレート瓦10の棟側端部の上に重ねられている。屋根1の棟1a及び谷部1cには周知のとおり雨仕舞が施されている。なお、
図1には、破線で家の外壁2が示されている。
【0024】
図2は、上記谷部1cを部分的に拡大して示す。谷部1cでは、谷部の延びる方向(棟軒方向)に交差する方向(左右方向)の両側でスレート瓦10の端部が対向している。図中、谷部1cを軒側から棟側に延びる方向を正面として見た場合の各方向を矢印により示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
図2以外の図に関しても同様である。なお、ここでは図示されていないが、屋根1の面に垂直な線上で屋根下方向を「下」とし、屋根上方向を「上」とする。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態としての補修板20が、スレート瓦10の補修のためスレート瓦10の上に被せられた状態を示す。補修板20の谷側端部は、スレート瓦10の谷側端部より谷部1c側に突出されている。なお、
図3では、補修板20は、スレート瓦10の軒側から3列目までにのみ被せられ、4列目のスレート瓦10には被せられていない。これは補修板20が被せられることによる状況の変化を判り易く示すためであって、実際には、補修板20は必要箇所全てに区別なく被せられる。
【0026】
図4は、本発明の第1実施形態としての矩形板状の谷板30が、
図3の補修板20の上に被せられた状態を示す。詳細には、谷板30は、谷部1cの延びる方向(棟軒方向)に交差する方向(左右方向)の両側で対向する補修板20の各谷側端を覆うように左右の補修板20に跨って谷部1c上で谷部1cに沿って被せられている。ここでは、左右1組の補修板20に対して1枚の谷板30が被せられている。
【0027】
<第1実施形態に係る補修板20>
図5は、上記補修板20を拡大して示す。補修板20は、ガルバリウム鋼板(登録商標)のような鋼板製であり、軒側端部が下面側で棟側に折り返されて折返部21が形成されている。また、補修板20は、棟側端部に、互いに重ねられた棟側のスレート瓦10の軒側端部と軒側のスレート瓦10の棟側端部との隙間に挿入して固定されるように延長された延長部22が形成されている。補修板20は、
図6のように、屋根1上でスレート瓦10上に被せられており、その際、折返部21がスレート瓦10の軒側からスレート瓦10の下面に挿入されている。補修板20は、スレート瓦10の1枚毎に1枚ずつの大きさとされてもよいが、左右方向に複数枚のスレート瓦10に対して1枚の大きさとされてもよい。補修板20は、スレート瓦10の表面に接着剤にて接着固定されている。勿論、釘により屋根1面に打ち付けて固定してもよいし、他の方法を用いてもよい。
【0028】
<第1実施形態に係る谷板30>
図7~14は、上記谷板30を拡大して示す。谷板30は、補修板20と同様に、ガルバリウム鋼板(登録商標)のような鋼板製であり、谷板本体36の軒側端部が下面側で棟側に折り返されて折返部31が形成されている。また、谷板本体36には、棟側端部に、互いに重ねられた棟側のスレート瓦10の軒側端部と軒側のスレート瓦10の棟側端部との隙間に挿入して固定されるように延長された延長部32が形成されている。谷板本体36は、その全体が折返部31及び延長部32も含めて矩形形状とされている。
【0029】
谷板本体36は、左右方向の両端部がヘミング加工されて曲端部34とされている。これは谷板本体36の棟軒方向の曲げ強度を高めると同時に、左右端部に鋼板の鋭利な切断面が出ないようにするためである。曲端部34は、必要に応じて形成されればよい。また、折返部31及び延長部32の棟側先端で左右方向で対向する角部には、斜めに折り曲げられて三角形の折曲片33(本発明の係合片に相当)が形成されている。折返部31の折曲片33は、三角形の先端が上向きに形成され、延長部32の折曲片33は、三角形の先端が下向きに形成されている。なお、折曲片33は、折返部31若しくは延長部32のいずれか一方に設けられるのみでもよい。
【0030】
<第1実施形態に係る補修板20に対する谷板30の係合>
図17~19は、谷部1c上で左右の補修板20に跨って谷板30が被せられ、補修板20の端部に係合した状態を示す。
図17、18のように、谷板30の折返部31の左右の折曲片33は、補修板20の折返部21の棟側端部に係合している。また、
図17、19のように、谷板30の延長部32の左右の折曲片33は、補修板20の延長部22の棟側端部に係合している。折返部31及び延長部32の各折曲片33は、屋根1の谷部1cを挟んで左右に対向配置された補修板20の折返部21及び延長部22の各棟側端部に係合しているため、谷板30が補修板20の上に被せられた状態から外れないのは勿論のこと、棟軒方向の各谷板30が谷部1cに沿って揃った状態に並ぶように位置決めすることができる。
【0031】
<第2実施形態>
図15、16は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、係合片(折曲片33)を切起片35とした点である。その他の点は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0032】
図15、16のように、第1実施形態における折曲片33と同様、切起片35は、谷板30の折返部31及び延長部32の棟側先端で左右方向に対向する角部にそれぞれ形成されている。具体的には、上記角部の左右方向端部が切り込まれ、その切り込みより先端側片部が上側に起こし上げられて切起片35がそれぞれ形成されている。
【0033】
図20、21は、谷板30の折返部31の切起片35が補修板20の折返部21の棟側端部に係合している状態、並びに延長部32の切起片35が補修板20の延長部22の棟側端部に係合している状態を示す。切起片35も、第1実施形態における折曲片33と同様に機能し、谷板30が補修板20の上に被せられた状態から外れないのは勿論のこと、棟軒方向の各谷板30が谷部1cに沿って揃った状態に並ぶように位置決めすることができる。但し、切起片35の場合は、切起片35の片部が補修板20の各棟側端部に対して交差して形成されているため、谷板30が軒方向にずり落ちるのを防止する効果を、第1実施形態の折曲片33に比べて高めることができる。なお、切起片35は、折返部31若しくは延長部32のいずれか一方に設けられるのみでもよい。
【0034】
<第3実施形態>
図22、23は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、谷板30aの折曲片33a(係合片)を補修板20ではなくスレート瓦10の端部に係合させた点である。その他の点は、第3実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0035】
図22のように、谷板30aの折曲片33aをスレート瓦10の端部に係合させるため、谷板本体36aにおける折返部31a及び延長部32aの棟軒方向寸法を、軒側のスレート瓦10の棟側端部、及び棟側スレート瓦10の棟側端部の各位置に対応するように形成している。その上で、折返部31aの棟側先端に左右方向で対向する角部に形成される折曲片33aを下側に向けて折り曲げたものとしている。延長部32aの棟側先端に左右方向で対向する角部に形成される折曲片33a、並びに曲端部34aについては、第1実施形態における谷板30の折曲片33及び曲端部34と同様である。
【0036】
図23のように、谷板30aの折返部31aの各折曲片33aは、谷板30aの折返部31aより下側に位置する左右のスレート瓦10の棟側端部に係合する。また、谷板30aの延長部32aの各折曲片33aは、谷板30aの延長部32aより下側に位置する左右のスレート瓦10の棟側端部に係合する。このように各折曲片33aがスレート瓦10の棟側端部に係合することによって、谷板30aが補修板20の上に被せられた状態から外れないのは勿論のこと、棟軒方向の各谷板30aが谷部1cに沿って揃った状態に並ぶようにすることができる。なお、
図23では、図面を判り易くするため、補修板20の図示を省略している。また、折曲片33aは、折返部31a若しくは延長部32aのいずれか一方に設けられるのみでもよい。更に、折曲片33aは、第2実施形態と同様の切起片35に変更してもよい。
【0037】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、切妻屋根の谷部に本発明を適用した例を示したが、本発明は、切妻屋根に限定されず、寄棟屋根など各種構造の屋根の谷部に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 屋根
1a 棟
1b 軒
1c 谷部
2 外壁
10 スレート瓦
20 補修板
21 折返部
22 延長部
30、30a 谷板
31、31a 折返部
32、32a 延長部
33、33a 折曲片(係合片)
34、34a 曲端部
35 切起片(係合片)
36、36a 谷板本体