(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】核検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20230213BHJP
G01T 1/164 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G01T1/20 C
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/164 D
(21)【出願番号】P 2019568355
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2017108097
(87)【国際公開番号】W WO2019019449
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】201710631228.4
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512322380
【氏名又は名称】▲蘇▼州瑞派▲寧▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】RAYCAN TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 17, No.8 Jinfeng Road, Suzhou New District, Suzhou, Jiangsu, 215163, China
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】牛明
(72)【発明者】
【氏名】劉▲トォン▼
(72)【発明者】
【氏名】華越軒
(72)【発明者】
【氏名】孫意成
(72)【発明者】
【氏名】謝慶国
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104237924(CN,A)
【文献】特開2004-354343(JP,A)
【文献】特表2007-532864(JP,A)
【文献】特表2008-518224(JP,A)
【文献】特開平02-155157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0167605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0063138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/164
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレーション結晶アレイと、ライトガイドと、光検出器アレイとを備え、前記シンチレーション結晶アレイは、順次に密接に配置されており同じサイズを有する複数のシンチレーション結晶ストリップを含み、前記光検出器アレイは、順次に配置される複数のシリコン光電子増倍管(SiPM)を含み、前記光検出器の断面積は、前記シンチレーション結晶ストリップの断面積よりも大きく、前記ライトガイドは、互いに対向する上面及び底面と、側面とを含み、前記ライトガイドの上面は、前記シンチレーション結晶アレイとカップリングされ、前記ライトガイドの底面は、前記光検出器アレイ
の上面とカップリングされる核検出器において、
前記ライトガイドの厚さは、0.1mm~5.6mmであり、
前記ライトガイドは、前記ライトガイドの縁に近い箇所に設けられているスリットをさらに有し、前記スリットは、前記ライトガイドの上面から前記ライトガイドの底面へ向かって延在し、前記スリットの深さは、前記ライトガイドの厚さの0.1~0.5倍であ
り、
前記ライトガイドは、直方体形状を有し、前記スリットの延在方向は、前記ライトガイドの前記上面及び前記底面と直交し、
前記光検出器アレイの上面の面積は、前記ライトガイドの底面の面積よりも小さいことを特徴とする、核検出器。
【請求項2】
前記ライトガイドの前記側面から前記スリットまでの距離は、前記シンチレーション結晶ストリップの幅の1.1~1.9倍であることを特徴とする、請求項
1に記載の核検出器。
【請求項3】
前記スリットは、第1スリットと第2スリットとを有し、前記ライトガイドの前記側面から前記第1スリットまでの距離は、前記シンチレーション結晶ストリップの幅と等しく、前記ライトガイドの前記側面から前記第2スリットまでの距離は、前記シンチレーション結晶ストリップの幅の2倍と等しく、前記第1スリットの深さは、前記第2スリットの深さよりも大きくなっていることを特徴とする、請求項
1に記載の核検出器。
【請求項4】
前記スリットの数が1~40であり、前記スリットは、前記ライトガイドの側面から前記ライトガイドの中心に向かって順次に配置され、前記スリットの深さが、前記ライトガイドの側面から前記ライトガイドの中心に向かって順次に小さくなっていることを特徴とする、請求項1に記載の核検出器。
【請求項5】
前記シンチレーション結晶ストリップの幅は、0.5mm~4mmであることを特徴とする、請求項1に記載の核検出器。
【請求項6】
前記シンチレーション結晶ストリップの側面には、不透光性物質が塗布されていることを特徴とする、請求項1に記載の核検出器。
【請求項7】
前記不透光性物質は、硫酸バリウム粉末又は鏡面反射フィルムであることを特徴とする、請求項
6に記載の核検出器。
【請求項8】
前記スリットの中及び前記ライトガイドの側面には、不透光性物質が塗布されていることを特徴とする、請求項1に記載の核検出器。
【請求項9】
前記不透光性物質は黒色ペンキであることを特徴とする、請求項
8に記載の核検出器。
【請求項10】
前記ライトガイドの層数が1~4層であり、各層の前記ライトガイドの累積厚さが0.1mm~5.6mmであることを特徴とする、請求項1に記載の核検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置に関し、特に核検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマカメラ、陽電子放出コンピュータ断層撮影(Positron Emission Tomography、PETと略称)システム、放射線検出器及び結晶特性検知装置等の核検出装置において、核検出器の空間分解能は、核検出装置の性能を示す重要な指標の一つである。例えばPETシステムにおいて、空間分解能は、微細組織に対するPETシステムの空間認識能力を反映しており、PETシステムでの最も重要な2つの指標の1つであり、PET画像の品質を評価するための重要な指標の1つでもある。撮像システムとして、PETシステムの最も基本的な評価基準は、再構成画像の品質である。高品質の再構成画像には良好な分解能が必要であるため、空間分解能は、過去10年以上にわたってPETシステムの開発における最適化の焦点である。特に動物PETシステムは、動物の大きさという理由で、システム撮像の空間分解能要件が臨床PETシステムよりもはるかに高くなっている。
【0003】
従来技術では、一般的に結晶ストリップが2.0mm未満までに薄めに切断される核検出器を、高空間分解能の核検出器と呼ぶ。現在での高空間分解能の核検出器は、通常以下の設計を採用している。
【0004】
第1種は、位置感応型光電子増倍管(PSPMTと略称)とシンチレーション結晶アレイとをカップリングさせて、高空間分解能を実現する。位置感応型光電子増倍管は、高ゲイン(106)及び低ノイズという特徴を有し、非常に高い空間分解能を実現することができる。ある研究チームは、そのカップリング方法を用いて、非常に高い空間分解能が必要である小型動物PETシステムを実現したことが知られている(「Luyao Wang、Jun Zhu、Xiao Liang、Ming Niu、Xiaoke Wu、Chien-Min Kao、Heejong Kim and Qingguo Xie、『Performance evaluation of the Trans-PET(登録商標) BioCaliburn(登録商標) LH system-A large FOV small-animal PET system』、Physics in Medicine and Biology[J]、2014」という文献を参照)。この小型動物PETシステムは、優れたシステム性能を実現している。
【0005】
第2種は、アバランシェフォトダイオードアレイ(APD arrayと略称)と同じサイズを有するシンチレーション結晶アレイとを直接カップリングさせて、高空間分解能を実現する。位置感応型アバランシェフォトダイオードは、小型であり、通常の動作中に必要な電圧が高くなく、PET検出器の構築に対して強い柔軟性があり、かつシステム統合エンジニアリングの難しさを一部軽減することができる(「Bergeron M、Cadorette J、Beaudoin J F、et al.Performance Evaluation of the LabPET APD-Based Digital PET Scanner[J].IEEE Transactions on Nuclear Science、2009、56(1):10~16」という文献を参照)。
【0006】
第3種は、シリコン光電子増倍管アレイ(SiPM arrayと略称)と、同じサイズを有するシンチレーション結晶アレイとを1:1で直接カップリングさせて、PET検出器を構築する。シリコン光電子増倍管は、106のゲインを有するので、光電子増倍管に匹敵しており、かつ低ノイズ、小型、コンパクトな配置、優れた時間パフォーマンスという特徴を有する。SiPM arrayを用いてPET検出器を構築する場合、フロントエンド検出器によって出力される信号が高い信号対雑音比を有し、検出器が強い柔軟性を有し、かつシステム統合エンジニアリングの難しさを軽減することができる。半導体デバイスであるため、大量生産すると安価になるというメリットがあり、検出器が多数配置されるPETのような機器での使用に特に適する。ある研究チームは、SiPMアレイとシンチレーション結晶アレイとを1:1で直接カップリングさせて、PET検出器の設計と製造を実現し、そしてシステム統合を完了し、2.5mm程度のPETシステム空間分解能が得られたことが知られている(「Daoming Xi、Jingjing Liu、Yanzhao Li、Jun Zhu、Ming Niu、Peng Xiao、Qingguo Xie、「Investigation of continuous scintillator/SiPM detector for local extremely high spatial resolution PET』、in Conference Record of the 2011 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference[C]、pp.4429~4432、2011」という文献を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の核検出器は、設計上まだ多くの欠点がある。例えば、PSPMTとシンチレーション結晶とをカップリングさせる第1種の核検出器は、まずその光電子増倍管が非常に高価である。何千何万のチャネル数を持つPETシステムにとっては、使用される核検出器の数が非常に多く、機器のコストが高すぎる。次に、光電子増倍管自体は比較的大型であり、システムの構築に柔軟性が欠如する。更に、光電子増倍管の動作時に、一般的に千ボルト程度の高電圧が必要である。これにより、PETシステムを構築する際のエンジニアリングの難しさが増す。APDアレイとシンチレーション結晶アレイとをカップリングさせる第2種の核検出器は、アバランシェフォトダイオードに自然な欠陥があり、ゲインが十分に高くなく、ノイズも大きいため、フロントエンド検出器によって生成される電気パルス信号の信号対雑音比が低くなり、電子読み出し効果に悪影響を与え、最終的にPET検出器のパフォーマンスが低下する。シリコン光電子増倍管アレイと同じサイズを有するシンチレーション結晶アレイとを1:1で直接カップリングさせる第3種のPET検出器では、良好なエネルギー分解能及び時間分解能が得られるが、このカップリング方法では空間分解能がシリコン光電子増倍管のサイズによって制限され、結晶アレイの結晶ストリップを小サイズに切断することによってPET検出器の空間分解能をさらに向上させることは困難である。
【0008】
まとめると、従来技術のうち、PSPMTとシンチレーション結晶とをカップリングさせる核検出器は、コストが高すぎるだけでなく、システム統合の柔軟性も高くなく、エンジニアリングの難しさも大きい。高空間分解能のPETシステムでは適用することができるが、研究開発費用と製造コストが比較的高い。APDアレイとシンチレーション結晶アレイとをカップリングさせる核検出器は、アバランシェフォトダイオードのゲインが低く、信号の信号対雑音比も優れていないので、PET検出器のパフォーマンスを低下させる。SiPMアレイとシンチレーション結晶アレイとを1:1で直接カップリングさせるPET検出器は、上述の2種類の両方のメリットを有するが、SiPMアレイ内の単一のSiPMのサイズによって制限され、結晶ストリップが2mm未満までに薄めに切断される高空間分解能の核検出器を得ることが困難である。
【0009】
従って、上記の技術的な問題を考慮し、前述の欠陥を克服するために、低コスト、高度なシステム統合の柔軟性、及びより高い空間分解能という特徴を有する核検出器を提案する必要がある。
【0010】
本発明は、従来技術においてコストが高く、システム統合の柔軟性が低く、空間分解能が高くない課題を解決できる核検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的な課題を解決するために、本発明は核検出器を提供している。前記核検出器は、シンチレーション結晶アレイと、ライトガイドと、光検出器アレイとを備え、前記シンチレーション結晶アレイは、順次に密接に配置されており同じサイズを有する複数のシンチレーション結晶ストリップを含み、前記光検出器アレイは、順次に配置される複数の光検出器を含み、前記光検出器の断面積は、前記シンチレーション結晶ストリップの断面積よりも大きく、前記ライトガイドは、互いに対向する上面及び底面と、側面とを含み、前記ライトガイドの上面は、前記シンチレーション結晶アレイとカップリングされ、前記ライトガイドの底面は、前記光検出器アレイとカップリングされ、前記ライトガイドの厚さは、0.1mm~40mmであり、前記ライトガイドは、前記ライトガイドの縁に近い箇所に設けられているスリットをさらに有し、前記スリットは、前記ライトガイドの上面から前記ライトガイドの底面へ向かって延在し、前記スリットの深さは、前記ライトガイドの厚さの0.1~0.5倍である。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記ライトガイドは、直方体形状を有し、前記スリットの延在方向は、前記ライトガイドの前記上面及び前記底面と直交する。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記ライトガイドの前記側面から前記スリットまでの距離は、前記シンチレーション結晶ストリップの幅の1.1~1.9倍である。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記ライトガイドは、錐台の形状を有し、前記ライトガイドの上面の面積は、前記ライトガイドの底面の面積よりも大きく、前記スリットの延在方向は、前記錐台の側面と平行である。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記スリットは、第1スリットと第2スリットとを有し、前記ライトガイドの前記側面から前記第1スリットまでの距離は、前記シンチレーション結晶ストリップの幅と等しく、前記ライトガイドの前記側面から前記第2スリットまでの距離は、前記シンチレーション結晶ストリップの幅の2倍と等しく、前記第1スリットの深さは、前記第2スリットの深さよりも大きくなっている。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記スリットの数は、1~40であり、前記スリットは、前記ライトガイドの側面から前記ライトガイドの中心に向かって順次に配置され、前記スリットの深さは、前記ライトガイドの側面から前記ライトガイドの中心に向かって順次に小さくなっている。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記シンチレーション結晶ストリップの幅は、0.5mm~4mmである。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記シンチレーション結晶ストリップの側面には、不透光性物質が塗布されている。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記不透光性物質は、硫酸バリウム粉末又は鏡面反射フィルムである。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記スリットの中及び前記ライトガイドの側面には、不透光性物質が塗布されている。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記不透光性物質は黒色ペンキである。
【0022】
本発明の一実施例によれば、前記ライトガイドの層数は、1~4層であり、各層の前記ライトガイドの累積厚さは、0.1mm~40mmである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の核検出器によれば、シンチレーション結晶アレイの中でのシンチレーション結晶ストリップのサイズが明らかに光検出器のサイズよりも小さい場合、即ち、シンチレーション結晶ストリップと光検出器とを1:1で直接カップリングさせることを実現できない場合、スリットを有するライトガイドが両方の間に設けられることにより、高空間分解能の核検出器を実現することができる。ライトガイドの厚みが小さいので、シンチレーション結晶による毎回の発光に対して光子の損失が小さく、シンチレーション光子の信号対雑音比がほとんど損失しないから、核検出器の高空間分解能を実現することができるだけでなく、核検出器の性能を低下させることもない。これにより、当該核検出器のエネルギー分解能、及び同時計数時間分解能がいずれも高空間分解能のPET検出器の要件を満たし、なおかつ生産が便利で、製造が容易で、コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の好適な実施例による核検出器の概略正面図である。
【
図2】
図1に示される核検出器のライトガイドの概略斜視図である。
【
図3】
図1に示される核検出器の多重化回路の概略図である。
【
図4】
図1に示される核検出器の結晶位置スペクトルの概略図である。
【
図5】
図1に示される核検出器のエネルギースペクトルの概略図である。
【
図6】
図5に示される核検出器の中央シンチレーション結晶ストリップのエネルギースペクトルの概略図である。
【
図7】
図5に示される核検出器の縁部シンチレーション結晶ストリップのエネルギースペクトルの概略図である。
【
図8】
図5に示される核検出器のシンチレーション結晶ストリップの平均エネルギースペクトルの概略図であり、シンチレーション結晶ストリップの平均エネルギー分解能が14.8%である。
【
図9】
図5に示される核検出器の同時計数時間分解能の概略図であり、同時計数時間分解能が941.4psである。
【
図10】本発明の核検出器の別の実施例を示す概略正面図である。
【
図11】本発明の核検出器の更に別の実施例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な実施例により、本発明を更に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するために使用されるだけであり、本発明の範囲を限定するものではないと考えられる。
【0026】
図1は、本発明の好適な実施例による核検出器の概略正面図である。
図2は、
図1に示される核検出器のライトガイドの概略斜視図である。
図1および
図2に示すように、本発明の核検出器は、シンチレーション結晶アレイ10と、ライトガイド20と、光検出器アレイ30とを備える。ライトガイド20は、シンチレーション結晶アレイ10と光検出器アレイ30との間に設けられ、シンチレーション結晶アレイ10および光検出器アレイ30のそれぞれとカップリングされる。具体的には、シンチレーション結晶アレイ10は、順次に密接に配置されており同じサイズを有するシンチレーション結晶ストリップ11をm×n個含み、m及びnがいずれも5以上の自然数である。単一のシンチレーション結晶ストリップ11は、六面研磨の直方体である。単一のシンチレーション結晶ストリップ11の側面には、例えばBaSO
4粉末のような不透光性の拡散反射材や鏡面反射フィルムが塗布されている。シンチレーション結晶ストリップ11の各々の底面を組み合わせることにより、シンチレーション結晶アレイ10の底面が形成される。
図2に示すように、ライトガイド20は、ライトガイド本体21と、第1スリット22と、第2スリット23とを含む。ライトガイド本体21は、直方体形状を有する。ライトガイド20の上面が、シンチレーション結晶アレイ10の底面とカップリングされる。ライトガイド20の上面の面積が、シンチレーション結晶アレイ10の底面の面積と同じである。ライトガイド20の上面には、4本の第1スリット22と4本の第2スリット23とが設けられている。4本の第1スリット22は、それぞれライトガイド20の上面の4つの辺に平行する。4本の第2スリット23も、それぞれライトガイド20の上面の4つの辺に平行する。第1スリット22と第2スリット23とは、いずれもライトガイド20の上面からライトガイド20の厚さ方向に沿ってライトガイド20の内部へ延在している。4本の第2スリット23は、4本の第1スリット22よりもライトガイド20の中心に近くなっている。
図1の実施例において、ライトガイド20の縁から第1スリット22までの距離が単一のシンチレーション結晶ストリップ11の幅と等しく、第1スリット22と第2スリット23との間の距離が単一のシンチレーション結晶ストリップ11の幅と等しく、第1スリット22の深さが第2スリット23の深さよりも大きくなっている。光検出器アレイ30の上面が、ライトガイド20の底面とカップリングされる。光検出器アレイ30は、順次に配置されており同じサイズを有する光検出器31をx×y個含み、x及びyがいずれも自然数である。単一の光検出器31の断面積が単一のシンチレーション結晶ストリップ11の断面積よりも大きくなっており、光検出器アレイ30の上面の面積がライトガイド20の底面の面積よりも小さくなっている。
【0027】
より具体的には、
図1の実施例において、シンチレーション結晶アレイ10は、13×13個の単独のシンチレーション結晶ストリップ11から形成される。シンチレーション結晶ストリップ11の材料がイットリウムケイ酸ルテチウムのシンチレーション結晶(LYSOと略称)であり、1本のシンチレーション結晶ストリップのサイズが1.89mm×1.89mm×13mmであり、シンチレーション結晶アレイ10の全体サイズが26.5mm×26.5mm×13.3mmである。各シンチレーション結晶ストリップ11の間に、BaSO
4粉末が塗布されている。ライトガイド20の厚さが1.4mmである。第1スリット22は、幅が0.2mmであり、深さが1.0mmである。第2スリットは、幅が0.2mmであり、深さが0.4mmである。第1スリット22および第2スリット23の中には、例えば黒色不透光性ペンキのような不透光性物質が充填される。特に、より良いライトガイド効果を得るために、ライトガイド20の側面にも不透光性物質が塗布されている。光検出器アレイ30は、6×6個のシリコン光電子増倍管31を採用しており、単一のシリコン光電子増倍管31のサイズが4mm×4mm×0.65mmである。隣接するシリコン光電子増倍管31の間に隙間があり、隙間の幅が0.2mmである。
【0028】
図3は、
図1に示される核検出器の多重化回路の概略図である。
図3に示すように、本発明の核検出器の多重化回路は、平衡電荷分布回路であり、16本のチャネルを含む。各チャネルのシリコン光電子増倍管31のシンチレーションパルス信号が、まず2つの抵抗器40を通じ電荷を均等に分配して、8本の重み付け信号50を生成する。抵抗器40の抵抗が220オームである。この平衡電荷分布回路により、x×y本のシリコン光電子増倍管31のシンチレーションパルス信号がx+yまでに低減する。最後に、Anger法によって位置スペクトルが生成される。なお、Anger法は、本分野の通常の技術手法であるので、説明を省略する。
【0029】
図4は、本発明の一実施例である核検出器のエネルギースペクトルの概略図である。
図4に示すように、シリコン光電子増倍管31によって発生されるシンチレーションパルス信号は、多重化回路の処理を経た後、更にマルチ閾値(MVT)デジタル化方法により処理される。MVTデジタル化方法は、固定時間で電圧サンプルを取る従来のADC方法とは異なり、予めシステムに複数の電圧閾値を設定し、シンチレーションパルス信号が各電圧閾値に達する際の時間を記録し、更にシンチレーションパルスモデルに関する事前知識に基づき、フィッティングすることによりシンチレーションパルス信号の時間、エネルギー、ベースラインドリフト及び減衰時間情報が得られ、更にエネルギー情報により位置情報が得られるという方法である。
図4は、MVTデジタル化方法による
図1の核検出器の位置スペクトルである。
図4に示すように、この核検出器における13×13個の結晶の位置スペクトルが明らかに見える。
【0030】
図5は、
図1に示されるSiPMベースの核検出器に位置のルックアップテーブルアルゴリズムを適用して得られた、13×13個のシンチレーション結晶ストリップのエネルギースペクトルを示す。
図5に示すように、エネルギースペクトルにおける光電ピークをガウス近似することにより、各シンチレーション結晶ストリップのエネルギー分解能が得られる。単一のシンチレーション結晶ストリップのエネルギー分解能は、12.9%~30.1%の間である。
図6は、
図5に示される核検出器の中央シンチレーション結晶ストリップのエネルギースペクトルの概略図である。
図7は、
図5に示される核検出器の縁部シンチレーション結晶ストリップのエネルギースペクトルの概略図である。
図6と
図7との比較から理解できるように、核検出器の縁に位置するシンチレーション結晶ストリップのエネルギー分解能は、核検出器の中央に位置するシンチレーション結晶ストリップのエネルギー分解能よりも劣化する。
図8は、
図5に示される核検出器のシンチレーション結晶ストリップの平均エネルギースペクトルの概略図である。
図8に示すように、13×13個のシンチレーション結晶ストリップの平均エネルギー分解能は、14.8%である。
【0031】
図9は、
図5に示される核検出器の同時計数時間分解能の概略図である。
図9に示すように、丁度対向するSiPMベースの核検出器から4573対の隣接する応答ライン(Line of Response、LORと略称)を抽出して、同時計数時間分布スペクトルを算出する。全てのイベントが350~650keVのエネルギーウィンドウを介して選別され、ガウス近似によって得られる同時計数時間分解能は941.4psである。
【0032】
図10は、本発明の核検出器の別の実施例を示す概略正面図である。
図10の実施例において、核検出器のシンチレーション結晶アレイ110及び光検出器アレイ130はいずれも
図1に示される実施例と同じであるので、説明を省略する。異なる点に関しては、
図10の実施例において、ライトガイド120の上面には4本の第1スリット122のみが設けられている。この第1スリット122は、ライトガイド120の上面おける4つの辺にそれぞれ平行するように切り取られている。第1スリット122は、ライトガイド120の上面からライトガイド120の厚さ方向に沿ってライトガイド120の内部へ延在している。対応するライトガイド120の縁から4本の第1スリット122までの距離は、シンチレーション結晶ストリップの幅の1.1~1.9倍である。第1スリット122の深さは、ライトガイド120の厚さの0.1~0.5倍である。例えば、
図10の実施例において、対応するライトガイド120の縁から第1スリット122までの距離は、シンチレーション結晶ストリップの幅の1.5倍であり、第1スリット122の深さは、0.4mmであり、ライトガイド120の厚さは、1.4mmである。
【0033】
図11は、本発明の核検出器の更に別の実施例を示す概略正面図である。
図11の実施例において、核検出器のシンチレーション結晶アレイ210及び光検出器アレイ230はいずれも
図1に示される実施例と同じであるので、説明を省略する。異なる点に関しては、
図11の実施例において、ライトガイド220は、錐台形状を有し、対向する上面及び底面と4つの側面とを含み、ライトガイド220の上面の面積が底面の面積よりも大きく、ライトガイド220の底面の面積が光検出器アレイ230の上面の面積と等しい。ライトガイド220の上面には、4本の第1スリット222と4本の第2スリット223とが設けられている。第1スリット222及び第2スリット223が位置する平面は、それぞれライトガイド220の4つの側面と平行である。対応するライトガイド220の側面から4本の第1スリット222までの距離は、単一のシンチレーション結晶ストリップの幅と等しい。対応するライトガイド220の側面から第2スリット223までの距離は、単一のシンチレーション結晶ストリップの幅の2倍と等しい。第1スリット222の深さは、第2スリット223の深さよりも大きくなっている。例えば、
図10の実施例において、第1スリット222は0.2mmの幅、1.0mmの深さを有し、第2スリット223は0.2mmの幅、0.4mmの深さを有する。
【0034】
本発明の一実施例によれば、ライトガイドに使用される材料は、通常の無機ガラス、有機ガラス、又はシンチレーション結晶等の透明部材である。
【0035】
本発明の一実施例によれば、ライトガイドの層数は2~4層であり、全てのライトガイドの累積厚さは0.1mm~40mmである。
【0036】
本発明の一実施例によれば、ライトガイドは、円錐台、円柱体や略錐状の多面体等の形状を有してもよい。ライトガイドの幅や直径は、シンチレーション結晶アレイの幅と光検出器アレイの幅との間である。
【0037】
本発明の一実施例によれば、ライトガイドにおける第1スリット又は第2スリットの中に充填される不透光性物質は、鏡面反射フィルム(Enhanced Specular Reflector、ESRと略称)であってもよい。
【0038】
本発明の別の実施例によれば、ライトガイドのスリットの数は、2を超えてもよい。ライトガイドのスリットの数は、40個を超えない。
【0039】
本発明の一実施例によれば、シンチレーション結晶ストリップは、ゲルマニウム酸ビスマス、ケイ酸ルテチウム、臭化ランタン、イットリウムケイ酸ルテチウム、ケイ酸ルテチウム、フッ化バリウム、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化セシウム等の無機シンチレーション結晶である。
【0040】
本発明の更に別の実施例によれば、シンチレーション結晶アレイにおける単一のシンチレーション結晶ストリップの幅が0.5mm~4mmである。
【0041】
本発明の一実施例によれば、光検出器アレイにおける光検出器として、アバランシェフォトダイオード(APD)、マルチピクセルフォトンカウンタ(MPPC)及びガイガーモードアバランシェフォトダイオード(G-APD)を採用してもよい。
【0042】
本発明の核検出器によれば、シンチレーション結晶アレイの中でのシンチレーション結晶ストリップのサイズが明らかに光検出器のサイズよりも小さい場合、即ち、シンチレーション結晶ストリップと光検出器とを1:1で直接カップリングさせることを実現できない場合、スリットを有するライトガイドが両方の間に設けられることにより、高空間分解能の核検出器を実現することができる。ライトガイドの厚みが小さいので、シンチレーション結晶による毎回の発光に対して光子の損失が小さく、シンチレーション光子の信号対雑音比がほとんど損失しないから、核検出器の高空間分解能を実現することができるだけでなく、核検出器の性能を低下させることもない。これにより、当該核検出器のエネルギー分解能、及び同時計数時間分解能がいずれも高空間分解能のPET検出器の要件を満たし、なおかつ生産が便利で、製造が容易である。
【0043】
上記の記載は、本発明の好適な実施例だけであり、本発明を限定するものではなく、上記の実施例に対する様々なバリエーションが可能である。即ち、本発明の特許請求の範囲及び明細書に基づき簡単、同等の変更や修正されるものは、いずれも本発明の特許請求の保護範囲に含まれると理解すべきである。本発明において詳細に記載されていないのは、いずれも従来の技術的内容である。