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特許7224650タンパク質薬物とP/Aペプチドとのコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】タンパク質薬物とP/Aペプチドとのコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20230213BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230213BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230213BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/00
C07K14/435
A61K38/43
A61K47/64
A61P43/00 111
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019571066
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066591
(87)【国際公開番号】W WO2018234455
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】17177256.9
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512300159
【氏名又は名称】エクスエル‐プロテイン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー,ウリ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/024049(WO,A1)
【文献】特表2013-531480(JP,A)
【文献】特表2010-531139(JP,A)
【文献】特表2008-524173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0272960(US,A1)
【文献】Protein Eng. Des. Sel., 2013, Vol.26, No.8, pp.489-501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質薬物と2つ以上のP/Aペプチドとのコンジュゲートであって、
各P/Aペプチドは、独立に、
(i)ペプチドR-(P/A)-Rであり、
(P/A)は、7個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、
は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であるか、またはRは存在せず、
は、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とそのカルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基である、ペプチドR -(P/A)-R であるか;または
(ii)ペプチドR -(P/A)-R であり、
(P/A)は、7個~1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、
は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であるか、またはR は存在せず、
は、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、R のアミノ基とカルボキシ基との間に少なくとも炭素原子2個分の距離を設ける、アミノ酸残基H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHである、ペプチドR -(P/A)-R であり、
各P/Aペプチドは、前記P/AペプチドのC末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基と前記タンパク質薬物の遊離アミノ基とから形成されるアミド結合を介して、前記タンパク質薬物にコンジュゲートしており、
P/Aペプチドがコンジュゲートしている前記遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、前記タンパク質薬物のN末端α-アミノ基ではない、
コンジュゲート。
【請求項2】
(P/A)は、8個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
(P/A)は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択される、15個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
(P/A)は、プロリンおよびアラニンから独立に選択される15個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む;および/または、
(P/A)に含まれるプロリン残基の数の、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数に対する割合は、≧10%かつ≦70%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
(P/A)は、(i)AAPAおよびAPAPから独立に選択される2つ以上の部分配列、および(ii)プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに0個、1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる;または、
(P/A)は、(i)1つまたは複数の部分配列AAPAAPAP、(ii)0個、1つまたは2つの部分配列AAPA、および(iii)プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに0個、1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる;または、
(P/A)は、(i)配列ASPAAPAPASPAAPAPSAPA、(ii)配列APASPAPAAPSAPAPAAPSA、(iii)配列AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA、(iv)前記配列のうちのいずれかの断片、または(v)前記配列の2つ以上の組合せからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
は、ホルミル、-CO(C1~4アルキル)、ピログルタモイルおよびホモピログルタモイルから選択され、前記-CO(C1~4アルキル)に含まれるアルキル部分は、非置換であるか、または、-OH、-O(C1~4アルキル)、-NH(C1~4アルキル)、-N(C1~4アルキル)(C1~4アルキル)および-COOHから独立に選択される1つまたは2つの基で置換されているか、または
は存在しない、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
は、HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHであるか、または
は、HN-(CH3~10-COOH、HN-フェニル-COOH、およびHN-シクロヘキシル-COOHから選択されるか、または
は、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、
【化1】

から選択されるか、または
はアラニンまたはプロリンである、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記コンジュゲートに含まれる前記P/Aペプチドは、ランダムコイルコンフォメーションをとる;および/または、
前記コンジュゲートに含まれる前記P/Aペプチドの全部が同じである;および/または、
前記P/Aペプチドがコンジュゲートしている前記遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、前記タンパク質薬物のリシン残基のε-アミノ基である;および/または、
前記P/Aペプチドがコンジュゲートしている前記遊離アミノ基は、前記タンパク質薬物の任意のリシン残基のε-アミノ基、前記タンパク質薬物または前記タンパク質薬物の任意のサブユニットのN末端α-アミノ基、およびそれらの任意の組合せから選択される;および/または、
前記コンジュゲートは、前記タンパク質薬物と前記P/Aペプチドとから、0.1~50の値を取る比m(P/Aペプチド)/m(タンパク質薬物)で構成され、m(P/Aペプチド)は、前記コンジュゲートに含まれる全P/Aペプチドの(P/A)部分中のアミノ酸残基を合わせた総数であり、m(タンパク質薬物)は、前記コンジュゲートに含まれる前記タンパク質薬物中のアミノ酸残基の総数である、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記タンパク質薬物は酵素である、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記タンパク質薬物は、尿酸オキシダーゼ、アデノシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、L-フェニルアラニン分解酵素、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、抗酸化酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ロダネーゼ、有機ホスフェート分解酵素、ホスホトリエステラーゼ、有機リンアンヒドロラーゼ、アルコール酸化酵素、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アセトアルデヒド分解酵素、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、L-グルタミン分解酵素、グルタミナーゼ、L-アルギニン分解酵素、アルギナーゼ、アルギニンデイミナーゼ、プラスミノーゲン活性化酵素、組織プラスミノーゲン活性化因子、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノーゲン溶解酵素、アンクロド、バトロキソビン、シスタチオニン-β-シンターゼ、ホモシステインチオラクトン分解酵素、パラオキソナーゼ1、ブレオマイシンヒドロラーゼ、ヒト血清HTアーゼ、ヒトビフェニルヒドロラーゼ様タンパク質、メチオニン分解酵素、メチオニナーゼ、メチオニン特異性について改変されたシスタチオニン-γ-リアーゼ、ホモシステイン分解酵素、システイン分解酵素、シスチン分解酵素、ヒアルロニダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、グルコセレブロシダーゼ、イミグルセラーゼ、P/Aペプチドに対する活性のない広域スペクトルプロテアーゼ、アナナイン、コモサイン、オクリプラスミン、アセチルコリン分解酵素、ブチリルコリンエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コカイン分解酵素、コカインエステラーゼ、コンドロイチナーゼ、コラゲナーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ポルホビリノーゲン、DNアーゼ、ドルナーゼα、オキサレート分解酵素、オキサレートデカルボキシラーゼ、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、アセチルCoAα-グルコサニミドアセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、N-α-アセチルグルコサミニダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、トリペプチジルペプチダーゼ1、ホスホグリセリン酸キナーゼ、凝固第IX因子、凝固第VIII因子、凝固第VIIa因子、凝固第Xa因子、凝固第IV因子、凝固第XIII因子、補体経路のタンパク質に特異性のあるプロテアーゼ、因子C3特異性について改変された型の膜タイプセリンプロテアーゼ1、VEGFまたはVEGF受容体に特異性のあるプロテアーゼ、改変された型の膜タイプセリンプロテアーゼ1、ヒトアンジオテンシン変換酵素2、RNアーゼ、オンコナーゼ(onconase)、ランピルナーゼ、ウシ精液RNアーゼ、RNアーゼT1、α-サルシン、RNアーゼP、アクチビンド(actibind)、RNアーゼT2、アルカリホスファターゼ、ヒト組織非特異型アルカリホスファターゼ、アスホターゼアルファ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アスパルトアシラーゼ、α-マンノシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ1、グランザイムB、溶菌素、エンドリシン、エクトリシン(ectolysin)、N-アセチルムラミダーゼ、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ、L-アラノイル-D-グルタメートエンドペプチダーゼ、システイン/ヒスチジン依存性アミドヒドロラーゼ/ペプチダーゼ、リソスタフィン、ファージ尾部関連壁溶解酵素、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のファージ-K由来の尾部関連壁溶解酵素触媒ドメインとリソスタフィンの細胞-壁-結合SH3bドメインとからなる融合タンパク質、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ-1、エンド-β-N-アセチル-グルコサミニダーゼ、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のEndoSまたはEndoS2、免疫グロブリン分解酵素、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のIdeS、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)のIgAプロテアーゼ、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、チミジンホスホリラーゼ、アリールスルファターゼA、サイクリン依存性キナーゼ様5タンパク質、グリアジンペプチダーゼ、キヌレニン-分解酵素、キヌレニナーゼ、ミオチューブラリン、および触媒抗体またはその機能性断片から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載のコンジュゲートを調製するプロセスであって、
(a)式R-(P/A)-RC-act[式中、RC-actは、Rのカルボキシ活性化形態であり、Rおよび(P/A)は、調製される前記コンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]の活性化P/Aペプチドを、タンパク質薬物とカップリングして、前記タンパク質薬物と、Rが保護基である前記P/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステッ
を含む、プロセス。
【請求項13】
前記活性化P/Aペプチド中のアミノ酸残基RC-actの活性化カルボキシ基は、
(A)活性エステル基であり、
前記活性エステル基は、次の基:
【化2】

のいずれか1つから選択される、活性エステル基;または、
(B)無水物基であり、
前記無水物基は、(i)次式:
【化3】

のプロピルホスホン酸無水物(T3P)基、
または(ii)混合炭酸無水物基である、無水物基;または、
(C)ハロゲン化アシル
ある、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップ(a)の前に、式R-(P/A)-R[式中、Rおよび(P/A)は、調製される前記コンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]のP/Aペプチドを前記活性化P/Aペプチドに変換するさらなるステップを含む、
請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
式R-(P/A)-RC-actの活性化P/Aペプチドであって、
は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であり、
ここで、以下:
(i)(P/A)は、7個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、
C-actは、活性化カルボキシ基を有し、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とその活性化カルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基である;または
(ii)(P/A)は、7個~1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、
C-act は、アミノ酸残基H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHであり、前記H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHの-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態であり、前記H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHは、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、前記H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHは、R C-act のアミノ基と活性化カルボキシ基との間に少なくとも炭素原子2個分の距離を設ける、
のいずれかである、
活性化P/Aペプチド。
【請求項16】
記アミノ酸残基RC-actの前記活性化カルボキシ基は、
(A)活性エステル基であり、
前記活性エステル基は、次の基:
【化4】

のいずれか1つから選択される、活性エステル基;または、
(B)無水物基であり、
前記無水物基は、(i)次式:
【化5】

のプロピルホスホン酸無水物(T3P)基、
または(ii)混合炭酸無水物基である、無水物基;または、
(C)ハロゲン化アシル
ある、請求項15に記載の活性化P/Aペプチド。
【請求項17】
(P/A)は、8個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、請求項15または16に記載の活性化P/Aペプチド。
【請求項18】
(P/A)に含まれるプロリン残基の数の、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数に対する割合は、≧10%かつ≦70%である;および/または、
(P/A)は、(i)AAPAおよびAPAPから独立に選択される2つ以上の部分配列、および(ii)プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに0個、1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる;または、
(P/A)は、(i)1つまたは複数の部分配列AAPAAPAP、(ii)0個、1つまたは2つの部分配列AAPA、および(iii)プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに0個、1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる;または、
(P/A)は、(i)配列ASPAAPAPASPAAPAPSAPA、(ii)配列APASPAPAAPSAPAPAAPSA、(iii)配列AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA、(iv)前記配列のうちのいずれかの断片、または(v)前記配列の2つ以上の組合せからなる、請求項15から17のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
【請求項19】
は、ホルミル、-CO(C1~4アルキル)、ピログルタモイルおよびホモピログルタモイルから選択され、前記-CO(C1~4アルキル)に含まれるアルキル部分は、非置換であるか、または、-OH、-O(C1~4アルキル)、-NH(C1~4アルキル)、-N(C1~4アルキル)(C1~4アルキル)および-COOHから独立に選択される1つまたは2つの基で置換されている、請求項15から18のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
【請求項20】
C-actは、HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHであり、前記HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHの-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態である;または、
C-actは、HN-(CH3~10-COOH、HN-フェニル-COOH、およびHN-シクロヘキシル-COOHから選択され、前記RC-act基の各々の-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態である;または、
C-actは、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、
【化6】

から選択され、前記RC-act基の各々の-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態である;または、
C-actは、活性化カルボキシ基を有するアラニンであるか、またはRC-actは、活性化カルボキシ基を有するプロリンである、請求項15から19のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
【請求項21】
請求項1から10のいずれか一項に記載のコンジュゲートを調製するための、請求項15から20のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質薬物と2つ以上のP/Aペプチドとのコンジュゲート、およびそれを含む医薬組成物に関する。本発明のコンジュゲートは、個々のアンマスク状態のタンパク質薬物と比較して免疫原性が有利に低く、安全性および忍容性のプロファイルが好適であり、このため、本発明のコンジュゲートは特に治療上の使用に適切となる。本コンジュゲートは、さらに血漿中半減期が向上しており、したがって、個々のアンマスク状態のタンパク質薬物と比較して作用持続時間が長く、このため、投与頻度の低減、ひいては副作用の負荷の低減が可能になる。本発明はまた、このようなコンジュゲートを調製するプロセス、およびコンジュゲートの調製における合成中間体として有用な活性化P/Aペプチドも提供する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質薬物などの多くの生物学的薬剤の主な欠点は、腎臓濾過による血液循環からのそのクリアランスが急速で、その治療有効性が著しく制限されることである。しかし、見かけの分子寸法を、腎臓糸球体の孔径を超えるほど大きくすることによって、治療用タンパク質の血漿中半減期を、数日という医学的に有用な範囲まで延長することができる。このような効果を実現するための1つの戦略は、生物学的薬剤を、合成ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)と化学的にコンジュゲートすることである。これにより、いくつかの承認薬、例えば、PEG-インターフェロンα2a(Pegasys(登録商標))、PEG-G-CSF(Neulasta(登録商標))、PEG化抗TNFα-Fab断片(Cimzia(登録商標))、および最近ではPEG化インターフェロンベータ-1a(Plegridy(登録商標))が出来ている。それでも、「PEG化」技術にはいくつか欠点がある。特に、PEGは生分解性ではなく、継続処置をすると、腎臓上皮の空胞化などの副作用を引き起こす恐れがある。例えば、Gaberc-Porekar (2008) Curr Opin Drug Discov Devel 11:242-50; Knop (2010) Angew Chem Int Ed Engl 49:6288-308;またはArmstrong in: Veronese (Ed.), "PEGylated Protein Drugs: Basic Science and Clinical Applications", Birkhauser Verlag, Basel 2009;またはIvens (2015) Toxicol Pathol. 43:959-983を参照されたい。さらに、動物とヒトの両方に抗-PEG免疫の出現が認められており、これによりPEG化治療用物質のクリアランスが加速化し、そのため、治療有効性の低下につながる恐れがある(例えば、Yang et al. (2015) Wiley Interdiscip Rev Nanomed Nanobiotechnol. 7:655-677を参照)。
【0003】
PEG技術の欠点の一部を克服するために、一定の組換えポリペプチドミメティックが当技術分野において提供されており、その一部は、天然に存在するアミノ酸配列または合成アミノ酸ストレッチに基づいている。ほとんどの天然アミノ酸配列は、フォールディングされたコンフォメーション(二次構造)をとる傾向があり、またはアンフォールド状態の場合は通常不溶性で、凝集体を形成するため、生理学的溶液中では、PEGの重要な特徴を構成する理想的なランダム鎖のようには挙動しない。実際、ポリペプチドのランダム鎖挙動を調査するための従来の実験のほとんどは、変性条件下、すなわち、尿素または塩化グアニジウムのような化学的変性剤の存在下で行われた(例えば、Cantor (1980) Biophysical Chemistry. W.H. Freeman and Company, New Yorkを参照)。したがって、このような技術は、一般に、フォールディング、凝集および非特異的吸着に抵抗し、それにより、フォールディングされる治療用タンパク質ドメインに遺伝子的に融合されている場合でさえも生理学的緩衝液条件および温度下で安定なランダム鎖になる特殊なアミノ酸配列に基礎を置いている。これらの状況下で、このような組換えPEGミメティックは、普通その分子量のみを基に予想されるよりも大幅に大きくサイズを増大させることができ、最終的に、腎臓濾過を遅延し、付着させた生物学的薬剤の血漿中半減期を相当な倍率で効果的に延長する。
【0004】
最近、治療用タンパク質の血漿中半減期を延長する新規な方法が開発された。これは、小残基Pro、AlaおよびSer(PAS)を含み、流体力学的容積が大きく、コンフォメーションが無秩序なポリペプチド鎖を利用するもので、「PAS化」と名付けられた(Schlapschy, M., Binder, U., Borger, C., Theobald, I., Wachinger, K., Kisling, S., Haller D. & Skerra, A. (2013) PASylation: a biological alternative to PEGylation for extending the plasma half-life of pharmaceutically active proteins. Protein Eng. Des. Sel., 26(8), 489-501、国際公開第2008/155134号パンフレット)。PAS配列は、親水性、非荷電性の生物学的ポリマーであり、ポリエチレングリコール(PEG)にきわめて類似した生物物理学的性質を有するが、ポリエチレングリコール(PEG)については、これを薬物に化学的にコンジュゲートすることが、血漿中半減期を延長するために確立された方法である。それに対し、PASポリペプチドは、遺伝子レベルで治療用タンパク質に融合し、大腸菌(E. coli)が十分に活性な治療用タンパク質を産生するのを可能にし、in vitroでのカップリングまたは修飾の各ステップを不要にすることが記述されている。さらに、PASポリペプチドは生分解性であり、それ故、器官での蓄積を回避しながら血清中の安定性を示し、マウスにおいて毒性または免疫原性は認められていない。ProおよびAlaからなるポリペプチドを用いる、治療用タンパク質の類似の修飾も提案されている(国際公開第2011/144756号パンフレット)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、治療特性が改善されたタンパク質薬物は、依然として必要とされ続けている。したがって、本発明の目的は、治療用酵素を含むタンパク質薬物の免疫原性を低下させる、および/または血漿中半減期を延長するための、新規なおよび/または改善された手段を提供することである。
【0006】
本発明の内容において、驚くべきことに、2つ以上のP/Aペプチドを、特定のC末端アミノ酸残基(R、これは、そのアミノ基とそのカルボキシ基(β-アラニン、δ-アミノ吉草酸またはパラ-アミノシクロヘキサンカルボン酸など)との間に少なくとも2個の炭素原子を含む)を介してタンパク質薬物に化学的にコンジュゲートすると、タンパク質薬物の分子当たりのP/Aペプチドのカップリング比が特に高いコンジュゲートが得られ、その結果、免疫原性がかなり低下し、血漿中半減期が向上することが発見された。さらに、この新規な技術は、触媒活性を損なわずに治療用酵素に適用することができ、対応するコンジュゲートの治療的価値を大いに高めることが発見された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、タンパク質薬物と2つ以上のP/Aペプチドとのコンジュゲートであって、各P/Aペプチドは、独立に、ペプチドR-(P/A)-Rであり、(P/A)は、約7個~約1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であるか、またはRは存在せず、Rは、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とそのカルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基であり、各P/Aペプチドは、P/AペプチドのC末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基とタンパク質薬物の遊離アミノ基とから形成されるアミド結合を介して、タンパク質薬物にコンジュゲートしており、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、タンパク質薬物のN末端α-アミノ基ではない、コンジュゲートを提供する。
【0008】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートおよび薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物にも関する。さらに、本発明は、医薬品として使用するための、特に疾患/障害(例えば、後述される疾患/障害のうちいずれか1つ)の処置または予防に使用するための、前記コンジュゲートまたは前記医薬組成物に関する。本発明は同様に、特に疾患/障害(例えば、後述される疾患/障害のうちいずれか1つ)を処置または予防するための医薬品の調製における、本明細書において提供されるコンジュゲートの使用に関する。本発明は、さらに、疾患/障害(例えば、後述される疾患/障害のうちいずれか1つ)を処置または予防する方法であって、本発明のコンジュゲート、または前記コンジュゲートおよび薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を、それを必要とする対象(例えば、ヒトまたは動物)に投与するステップを含む、疾患/障害を処置または予防する方法を提供する。
【0009】
本発明はさらに、本発明によるコンジュゲートを調製するプロセスであって、
(a)式R-(P/A)-RC-act[式中、RC-actは、Rのカルボキシ活性化形態であり、Rおよび(P/A)は、調製されるコンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]の活性化P/Aペプチドを、タンパク質薬物とカップリングして、タンパク質薬物と、Rが保護基であるP/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステップ、および
(b)任意選択により、ステップ(a)において得られたコンジュゲートに含有されているP/Aペプチドから保護基Rを除去して、タンパク質薬物と、Rが存在しないP/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステップ
を含む、プロセスに関する。
【0010】
さらに、本発明はまた、式R-(P/A)-RC-actの活性化P/Aペプチドであって、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であり、(P/A)は、約7個~約1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、RC-actは、活性化カルボキシ基を有し、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とその活性化カルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基である、活性化P/Aペプチドも提供する。この活性化P/Aペプチドは、特に上記のプロセスで、本発明によるコンジュゲートの調製に使用することができる。したがって、本発明はさらに、本発明によるコンジュゲートを調製するための活性化P/Aペプチドの使用に関し、同様に、本発明によるコンジュゲートの調製における活性化P/Aペプチドの使用に関する。
【0011】
本発明に従って提供されるコンジュゲートは、以下でさらに詳細に説明される。この詳細な説明は、コンジュゲート自体のみならず、コンジュゲートを含む医薬組成物、コンジュゲートまたは医薬組成物を使用する治療適用および方法、コンジュゲートを調製するプロセス、およびコンジュゲートを調製するために使用することができる活性化P/Aペプチドも含めて、本発明のすべての態様に関し、それらに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
P/AペプチドR-(P/A)-R
本発明によるコンジュゲートに含まれる各P/Aペプチドは、独立に、ペプチドR-(P/A)-Rである。したがって、本発明のコンジュゲートに含まれるP/Aペプチドの各々について、N末端の保護基R(存在する場合)、アミノ酸配列(P/A)、およびC末端アミノ酸残基Rは、それらのそれぞれの意味からそれぞれ独立に選択される。したがって、本発明のコンジュゲートに含まれる2つ以上のP/Aペプチドは、同じであってもよく、または互いに異なっていてもよい。好ましくは、コンジュゲートに含まれるP/Aペプチドの全部が同じである。
【0013】
さらに、コンジュゲートに含まれるP/Aペプチドは、特にコンジュゲートが水性の環境(例えば、水性溶液または水性緩衝液)中に存在する場合に、好ましくはランダムコイルコンフォメーションをとる。ランダムコイルコンフォメーションの存在は、当技術分野において公知の方法を使用して、特に円二色性(CD)分光法などの分光技術によって判定することができる。
【0014】
P/Aペプチドは、例えば、実施例で言及している、および/または図3に図示している特定のP/Aペプチドのいずれかから選択することができる。
【0015】
ペプチドR-(P/A)-Rに含まれるアミノ酸配列(P/A)
ペプチドR-(P/A)-Rに含まれる(P/A)部分は、約7個~約1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む。
【0016】
(P/A)を構成するアミノ酸残基の数は、好ましくは約7個~約800個のアミノ酸残基、より好ましくは約8個~約600個のアミノ酸残基、より好ましくは約8個~約400個のアミノ酸残基、より好ましくは約9個~約200個のアミノ酸残基、より好ましくは約9個~約100個のアミノ酸残基、より好ましくは約10個~約80個のアミノ酸残基、より好ましくは約10個~約60個のアミノ酸残基、より好ましくは約12個~約55個のアミノ酸残基、より一層好ましくは約12個~約50個のアミノ酸残基、より一層好ましくは約15個~約45個のアミノ酸残基、さらにより一層好ましくは約20個~約40個のアミノ酸残基である。
【0017】
(P/A)中のアミノ酸残基の数の、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より一層好ましくは少なくとも98%、さらにより一層好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%が、プロリンおよびアラニンから独立に選択されるのがさらに好ましい。(P/A)中の残りのアミノ酸残基は、好ましくは、20種の標準タンパク質原性のα-アミノ酸から、より好ましくはプロリン、アラニン、セリン、グリシン、バリン、アスパラギンおよびグルタミンから、より一層好ましくはプロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから選択される。したがって、(P/A)は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンの各残基から構成される(この場合、(P/A)中のアミノ酸残基の数の10%未満、好ましくは5%未満がグリシン残基またはセリン残基である)のが好ましく、(P/A)は、プロリン残基およびアラニン残基から構成される、すなわちプロリン残基およびアラニン残基のみからなるのが最も好ましい。当然のことながら、上に明記したように、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む。
【0018】
(P/A)は、約8個~約400個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含むのが特に好ましい。例えば、(P/A)は、約8個~約400個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であって、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニンおよびグリシンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含むアミノ酸配列とすることができ;代替として、(P/A)は、約8個~約400個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であって、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニンおよびセリンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含むアミノ酸配列とすることができる。
【0019】
より好ましくは、(P/A)は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択される、10個~60個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む。例えば、(P/A)は、プロリン、アラニンおよびグリシンから独立に選択される、10個~60個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であって、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含むアミノ酸配列とすることができ;代替として、(P/A)は、プロリン、アラニンおよびセリンから独立に選択される、10個~60個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であって、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含むアミノ酸配列とすることができる。
【0020】
より一層好ましくは、(P/A)は、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、15個~45個のアミノ酸残基からなる(例えば、15、20、25、30、35、40または45個のアミノ酸残基からなる)アミノ酸配列であり、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む。
【0021】
ペプチドR-(P/A)-R中、(P/A)部分に含まれるプロリン残基の数の、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数に対する割合は、好ましくは≧10%および≦70%であり、より好ましくは≧20%かつ≦50%であり、より一層好ましくは≧25%かつ≦40%である。したがって、(P/A)中のアミノ酸残基の総数の10%~70%はプロリン残基であるのが好ましく、より好ましくは、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数の20%~50%はプロリン残基であり、より一層好ましくは、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数の25%~40%(例えば、25%、30%、35%または40%)はプロリン残基である。さらに、(P/A)は連続するプロリン残基を含有しない(すなわち、(P/A)は、部分配列PPも、その多重配列も含有しない)のが好ましい。
【0022】
好ましいアミノ酸配列(P/A)の例としては、特に、(i)AAPAおよびAPAPから独立に選択される2つ以上の部分配列、および(ii)任意選択により、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに1個、2個または3個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列が挙げられる。(P/A)のより好ましい例としては、(i)1つまたは複数の部分配列AAPAAPAP、(ii)任意選択により、1つまたは2つの部分配列AAPA、および(iii)任意選択により、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに1個、2個または3個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列が挙げられる。そのようなアミノ酸配列(P/A)の具体例は、実施例および/または図3に説明されており、対応するP/Aペプチドまたはコンジュゲートを通して例示されている。
【0023】
好ましいアミノ酸配列(P/A)のさらなる例としては、(i)配列ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(「PAS#1」とも呼ぶ)、もしくは(ii)配列APASPAPAAPSAPAPAAPSA(「PAS#2」)、もしくは(iii)配列AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(「PAS#5」)、もしくは(iv)これらの配列のうちのいずれかの断片、または(v)これらの配列の2つ以上の組合せ(同じであっても異なっていてもよい、すなわち、配列PAS#1、PAS#2および/またはPAS#5の2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10)の任意の組合せであってもよい;相応する例は、PAS#1の二量体(「PAS#1-PAS#1」)、すなわちASPAAPAPASPAAPAPSAPAASPAAPAPASPAAPAPSAPAであり;さらなる例には、PAS#1-PAS#2(すなわちASPAAPAPASPAAPAPSAPAAPASPAPAAPSAPAPAAPSA)、PAS#1-PAS#5、PAS#2-PAS#1、PAS#2-PAS#2、PAS#2-PAS#5、PAS#5-PAS#1、PAS#5-PAS#2、PAS#5-PAS#5、PAS#1-PAS#1-PAS#1、PAS#1-PAS#1-PAS#2、PAS#1-PAS#1-PAS#5、PAS#1-PAS#2-PAS#1、PAS#1-PAS#2-PAS#2、PAS#1-PAS#2-PAS#5、PAS#1-PAS#5-PAS#1、PAS#1-PAS#5-PAS#2、PAS#1-PAS#5-PAS#5、PAS#2-PAS#1-PAS#1、PAS#2-PAS#1-PAS#2、PAS#2-PAS#1-PAS#5、PAS#2-PAS#2-PAS#1、PAS#2-PAS#2-PAS#2、PAS#2-PAS#2-PAS#5、PAS#2-PAS#5-PAS#1、PAS#2-PAS#5-PAS#2、PAS#2-PAS#5-PAS#5、PAS#5-PAS#1-PAS#1、PAS#5-PAS#1-PAS#2、PAS#5-PAS#1-PAS#5、PAS#5-PAS#2-PAS#1、PAS#5-PAS#2-PAS#2、PAS#5-PAS#2-PAS#5、PAS#5-PAS#5-PAS#1、PAS#5-PAS#5-PAS#2、またはPAS#5-PAS#5-PAS#5が含まれる)を含む(または、より好ましくは、これらからなる)アミノ酸配列が挙げられる。
【0024】
(P/A)を構成するアミノ酸残基は、いずれの配置を有していてもよい。特に、(P/A)に含まれる各α-アミノ酸残基は、L配置を有していても、D配置を有していてもよい。したがって、(P/A)中のいずれのプロリン残基についても、L-プロリンの形態でもD-プロリンの形態でもよく、(P/A)中のいずれのアラニン残基についても、L-アラニンの形態でもD-アラニンの形態でもよい。当然のことながら、すべてのアミノ酸が明確なL配置およびD配置を有しているわけではなく、特に、グリシン残基は1つの配置のみを有する。(P/A)に含まれ、L配置またはD配置を有することができるα-アミノ酸残基の中で、前記α-アミノ酸残基の数の、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、さらにより一層好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%がL配置で存在する。
【0025】
ペプチドR-(P/A)-Rに含まれるN末端の保護基R
ペプチドR-(P/A)-R中のR基は、存在しないか、またはアミノ酸配列(P/A)のN末端のアミノ基、特にN末端α-アミノ基に付着している保護基である。当然のことながら、Rが存在しない場合、対応するP/Aペプチドは、ペプチド(P/A)-Rである。
【0026】
は、ホルミル(すなわち、-CHO)、-CO(C1~6アルキル)、ピログルタモイル(すなわち、5-オキソピロリジン-2-イル-カルボニル)、およびホモピログルタモイル(すなわち、6-オキソピペリジン-2-イル-カルボニル)から選択され、前記-CO(C1~6アルキル)に含まれるアルキル部分は、-OH、-O(C1~4アルキル)、-NH(C1~4アルキル)、-N(C1~4アルキル)(C1~4アルキル)および-COOHから独立に選択される1つまたは複数の基(例えば、1つ、2つまたは3つの基)で任意選択により置換されているか、またはRは存在しないのが好ましい。より好ましくは、Rは、ホルミル、-CO(C1~4アルキル)、ピログルタモイルおよびホモピログルタモイルから選択され、前記-CO(C1~4アルキル)に含まれるアルキル部分は、-OH、-O(C1~4アルキル)、-NH(C1~4アルキル)、-N(C1~4アルキル)(C1~4アルキル)および-COOHから独立に選択される1つまたは2つの基で任意選択により置換されているか、またはRは存在しない。より一層好ましくは、Rは、ホルミル、アセチル、ヒドロキシアセチル、メトキシアセチル、エトキシアセチル、プロポキシアセチル、マロニル(すなわち、-CO-CH-COOH)、プロピオニル、2-ヒドロキシプロピオニル、3-ヒドロキシプロピオニル、2-メトキシプロピオニル、3-メトキシプロピオニル、2-エトキシプロピオニル、3-エトキシプロピオニル、スクシニル(すなわち、-CO-CHCH-COOH、またはシクロスクシニル、すなわち-CO-CHCH-CO-)、ブチリル、2-ヒドロキシブチリル、3-ヒドロキシブチリル、4-ヒドロキシブチリル、2-メトキシブチリル、3-メトキシブチリル、4-メトキシブチリル、グリシンベタイニル(すなわち、-CO-CH-N(-CH)、グルタリル(すなわち、-CO-CHCHCH-COOH)、ピログルタモイル、およびホモピログルタモイルから選択されるか、またはRは存在しない。Rは、アセチルおよびピログルタモイルから選択されるのが特に好ましく、ピログルタモイルは特に好ましいR基である。
【0027】
ペプチドR-(P/A)-Rに含まれるC末端アミノ酸残基R
ペプチドR-(P/A)-R中のR基は、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とそのカルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基である。
【0028】
当然のことながら、Rのアミノ基とカルボキシ基との間の少なくとも2個の炭素原子は、Rのアミノ基とカルボキシ基との間に少なくとも炭素原子2個分の距離を設けることができ(例えば、Rがε-アミノヘキサン酸などのω-アミノ-C3~15アルカン酸である場合に当てはまる)、またはRのアミノ基とカルボキシ基との間に炭素原子1個分のみの距離を設けることができる(例えば、Rがアラニンである場合に当てはまる)。
【0029】
好ましくは、Rは、HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHであり、任意選択により、前記HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHに含まれるヒドロカルビル部分中の1つまたは複数の-CH-単位はそれぞれ、-O-、-S-、-NH-および-N(C1~4アルキル)-から独立に選択される基で置換されており、さらに、任意選択により、前記HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHに含まれるヒドロカルビル部分中の1つまたは複数の=CH-単位(存在する場合)はそれぞれ、=N-で置換されている。前記HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHに含まれるヒドロカルビル部分は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、またはこれらの任意の組合せ(例えば、アルカリールまたはアラルキル、例えば、ベンジル、フェネチルまたはメチルフェニルなど)とすることができる。さらに、前記ヒドロカルビル部分は、好ましくは3個~10個の炭素原子を有し、より好ましくは4個~8個の炭素原子を有する。上記の環式ヒドロカルビル基(前記アリールまたは前記シクロアルキルなどであり、後続の段落で述べられるHN-(CH0~2-フェニル-(CH0~2-COOHに含まれるフェニルなど、以下で述べられる特定の環式基のいずれかも含む)上の2つの付着部位は、同一の環炭素原子上にも、隣接する環炭素原子上にもないのがさらに好ましい。そのような環式基が6個の環原子を有する(フェニルまたはシクロヘキシルのように)場合、1,4位-付着(パラ)または1,3位-付着(メタ)が好ましく、1,4位-付着が特に好ましい。さらに、前記HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHに含まれるヒドロカルビル部分中の-CH-単位も=CH-単位(存在する場合)も、上記のヘテロ基で置換されていない(すなわち、-CH-単位は、-O-、-S-、-NH-または-N(C1~4アルキル)-で置換されておらず、=CH-単位は、存在する場合、=N-で置換されていない)のが好ましい。したがって、Rは、より好ましくはHN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOHである。
【0030】
より一層好ましくは、Rは、HN-(C2~12アルキル)-COOH、HN-(CH0~2-フェニル-(CH0~2-COOH、およびHN-(CH0~2-(C3~8シクロアルキル)-(CH0~2-COOHから選択される。より一層好ましくは、Rは、HN-CH-(C1~11アルキル)-COOH、HN-(C1~11アルキル)-CH-COOH、HN-(CH0~2-フェニル-(CH0~2-COOH、およびHN-(CH0~2-(C3~8シクロアルキル)-(CH0~2-COOHから選択される。より一層好ましくは、Rは、HN-CHCH-COOH、HN-CHCH-(C1~10アルキル)-COOH、HN-(C1~10アルキル)-CHCH-COOH、HN-(CH0~2-フェニル-(CH0~2-COOH、およびHN-(CH0~2-(C3~8シクロアルキル)-(CH0~2-COOHから選択される。さらにより一層好ましくは、Rは、HN-(CH2~12-COOH、HN-(CH0~2-フェニル-(CH0~2-COOH、およびHN-(CH0~2-シクロヘキシル-(CH0~2-COOHから選択される。さらにより一層好ましくは、Rは、HN-(CH3~10-COOH、HN-フェニル-COOH、およびHN-シクロヘキシル-COOHから選択される。
【0031】
より一層好ましくは、Rは、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、HN-(CH-COOH、
【0032】
【化1】
から選択される。したがって、Rは、δ-アミノ吉草酸、ε-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、パラ-アミノ安息香酸、およびパラ-アミノシクロヘキサンカルボン酸(すなわち、4-アミノシクロヘキサンカルボン酸)から選択されるのが特に好ましい。
【0033】
添付の実施例にも示しているように、特に前述の好ましいR残基のいずれかを含む、本明細書に定義しているC末端アミノ酸残基Rを使用すると、驚くべきことに、タンパク質薬物の分子当たりのP/Aペプチドのカップリング比が有利に高く、このため、免疫原性が有利に低く、血漿中半減期が有利に向上したコンジュゲートが得られることが発見された。
【0034】
として、天然アミノ酸(そのアミノ基とそのカルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含む)、特に、アラニンまたはプロリンなどの標準タンパク質原性のα-アミノ酸を使用すると、そのようなアミノ酸が安全で忍容性が高いと考えられるため、有利でもあり得る。したがって、Rは、そのアミノ基とそのカルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含む、標準タンパク質原性のα-アミノ酸、特に、アラニンまたはプロリンとすることもできる。
【0035】
したがって、Rは、例えば、アラニン(例えば、L-アラニンまたはD-アラニン)、プロリン(例えば、L-プロリン)、β-アラニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、δ-アミノ吉草酸(Ava)、ε-アミノヘキサン酸(Ahx)、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸(Aoa)、9-アミノノナン酸、パラ-アミノ安息香酸(Abz)、パラ-アミノシクロヘキサンカルボン酸(ACHA、例えば、cis-ACHAまたはtrans-ACHA)、およびパラ-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸(AMCHA、例えばcis-AMCHAまたはtrans-AMCHA)から選択することもできる。
【0036】
P/Aペプチドのタンパク質薬物へのコンジュゲート
本発明によるコンジュゲートにおいて、各P/Aペプチド、すなわち、各ペプチドR-(P/A)-Rは、P/AペプチドのC末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基とタンパク質薬物の遊離アミノ基とから形成されるアミド結合を介して、タンパク質薬物にコンジュゲートしている。タンパク質薬物の遊離アミノ基は、例えば、タンパク質薬物のN末端α-アミノ基または側鎖アミノ基(例えば、タンパク質薬物に含まれるリシン残基のε-アミノ基)とすることができる。タンパク質薬物が複数のサブユニットから構成されている場合、複数のN末端α-アミノ基(すなわち、各サブユニットに1個)が存在してもよい。
【0037】
本発明によれば、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、タンパク質薬物のN末端α-アミノ基ではない(すなわち、それとは異なる)。したがって、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、タンパク質薬物の側鎖アミノ基であるのが好ましく、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、タンパク質薬物のリシン残基のε-アミノ基であるのが特に好ましい。
【0038】
さらに、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基は、タンパク質薬物の任意のリシン残基のε-アミノ基、タンパク質薬物またはタンパク質薬物の任意のサブユニットのN末端α-アミノ基、およびそれらの任意の組合せから選択されるのが好ましい。P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基のうち1個は、タンパク質薬物のN末端α-アミノ基であり、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基のうち、それ以外は、それぞれ、タンパク質薬物のリシン残基のε-アミノ基であるのが特に好ましい。代替としては、P/Aペプチドがコンジュゲートしている遊離アミノ基の各々が、タンパク質薬物のリシン残基のε-アミノ基であるのが好ましい。
【0039】
本発明によるコンジュゲートは、1つのタンパク質薬物(すなわち、1つのタンパク質薬物分子)と、2つ以上のP/Aペプチドから構成される。対応するコンジュゲートは、例えば、1つのタンパク質薬物(すなわち、1つのタンパク質薬物分子)と、タンパク質薬物にそれぞれコンジュゲートしている、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの(もしくはそれより多い)P/Aペプチドからなるものであってもよい。一般に、タンパク質薬物のアミノ酸残基の数が多いほど、対応するタンパク質薬物にコンジュゲートするべきP/Aペプチドが多くなり、さらには、P/Aペプチドの(P/A)部分のアミノ酸残基の数が少ないほど、それぞれのタンパク質薬物にコンジュゲートするべきP/Aペプチドが多くなる。
【0040】
コンジュゲートは、タンパク質薬物(すなわち、1つまたは複数のサブユニットからなっていてもよいタンパク質薬物分子)とP/Aペプチドとから、ある一定の比で構成されるのが好ましい。好ましくは、比m(P/Aペプチド)/m(タンパク質薬物)[m(P/Aペプチド)は、コンジュゲートに含まれる全P/Aペプチドの(P/A)部分中のアミノ酸残基を合わせた総数であり、m(タンパク質薬物)は、コンジュゲートに含まれるタンパク質薬物中のアミノ酸残基の総数である]は、0.1~50の値を取る。より好ましくは、比m(P/Aペプチド)/m(タンパク質薬物)は、0.2~10の値を取る。より一層好ましくは、比m(P/Aペプチド)/m(タンパク質薬物)は、0.5~5の値を取る(すなわち、前記比が0.5~5の間である、例えば、前記比は、0.5、0.7、1、2、3、4または5であってもよい)。
【0041】
タンパク質薬物
本発明のコンジュゲートに含まれるタンパク質薬物は、治療的/薬理学的に活性な任意のタンパク質、すなわち、医薬品として使用するのに適切な、任意のタンパク質とすることができる。「タンパク質薬物」という用語は、本明細書では、「治療用タンパク質」および「治療用タンパク質薬物」と同義で使用される。
【0042】
好ましくは、タンパク質薬物は、約2kDa~約500kDaの分子量を有し、より好ましくは、サブユニット当たり約5kDa~約50kDaの分子量を有する。
【0043】
タンパク質薬物の分子量は、本明細書ではダルトン(Da)で示され、これは統一原子質量単位(u)の代替名である。したがって、例えば、500Daの分子量は、500g/molに等しい。「kDa」(キロダルトン)という用語は、1000Daのことを指す。
【0044】
タンパク質薬物の分子量は、当技術分野において公知の方法、例えば、質量分析法(例えば、エレクトロスプレーイオン化質量分析法、ESI-MS、またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法、MALDI-MS)、ゲル電気泳動法(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムを使用するポリアクリルアミドゲル電気泳動法、SDS-PAGE)、流体力学法(例えば、ゲル濾過/サイズ排除クロマトグラフィー、SEC、または勾配沈降法)、または動的光散乱法(DLS)もしくは静的光散乱法(例えば、多角度光散乱法、MALS)などを使用して決定することができ、あるいは、タンパク質薬物の分子量は、タンパク質薬物の既知のアミノ酸配列(および存在すれば、既知の翻訳後修飾)から計算することができる。好ましくは、タンパク質薬物の分子量は、質量分析法を使用して決定される。
【0045】
タンパク質薬物は、酵素、特に、上記で定義したとおりの分子量を有する酵素であるのが好ましい。より好ましくは、タンパク質薬物は、尿酸オキシダーゼ(または尿酸ヒドロキシラーゼもしくはウリカーゼ)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、L-フェニルアラニン分解酵素(例えば、フェニルアラニンヒドロキシラーゼまたはフェニルアラニンアンモニアリアーゼなど)、抗酸化酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼまたはカタラーゼなど)、ロダネーゼ、有機ホスフェート分解酵素(例えば、ホスホトリエステラーゼ(アリールジアルキルホスファターゼもしくは有機リンヒドロラーゼ)または有機リンアンヒドロラーゼなど)、アルコール酸化酵素(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼまたはアルコールオキシダーゼなど)、アセトアルデヒド分解酵素(例えば、アルデヒドデヒドロゲナーゼなど)、L-グルタミン分解酵素(例えば、グルタミナーゼなど)、L-アルギニン分解酵素(例えば、アルギナーゼまたはアルギニンデイミナーゼなど)、プラスミノーゲン活性化酵素(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(例えばレテプラーゼ)、ストレプトキナーゼ、またはウロキナーゼなど)、フィブリノーゲン溶解酵素(例えば、アンクロドまたはバトロキソビンなど)、シスタチオニン-β-シンターゼ、ホモシステインチオラクトン(HTL)分解酵素(例えば、パラオキソナーゼ1、ブレオマイシンヒドロラーゼ、ヒト血清HTアーゼ、またはヒトビフェニルヒドロラーゼ様タンパク質など)、メチオニン分解酵素(例えば、メチオニナーゼまたは改変シスタチオニン-γ-リアーゼなど)、ホモシステイン分解酵素、システイン分解酵素、シスチン分解酵素、ヒアルロニダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、グルコセレブロシダーゼ(例えば、イミグルセラーゼなど)、P/Aペプチドに対する活性のない広域スペクトルプロテアーゼ(例えば、アナナイン、コモサイン、またはオクリプラスミンなど)、アセチルコリン分解酵素(例えば、ブチリルコリンエステラーゼまたはアセチルコリンエステラーゼなど)、コカイン分解酵素(例えば、コカインエステラーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなど)、コンドロイチナーゼ、コラゲナーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ(またはα-L-イズロノヒドロラーゼ(α-L-iduronohydrolase)もしくはラロニダーゼ)、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ(またはヒドロキシメチルビランシンターゼ)、DNアーゼ(例えば、ドルナーゼαなど)、オキサレート分解酵素(例えば、オキサレートデカルボキシラーゼなど)、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(またはヘパランN-スルファターゼ)、アセチルCoAα-グルコサニミドアセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、N-α-アセチルグルコサミニダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)、ホスホグリセリン酸キナーゼ、凝固第IX因子、凝固第VIII因子、凝固第VIIa因子、凝固第Xa因子、凝固第IV因子、凝固第XIII因子、補体経路のタンパク質に特異性のあるプロテアーゼ(例えば、因子C3特異性について改変された型の膜タイプセリンプロテアーゼ1など)、VEGFまたはVEGF受容体に特異性のあるプロテアーゼ(例えば、改変された型の膜タイプセリンプロテアーゼ1など)、ヒトアンジオテンシン変換酵素2、RNアーゼ(例えば、オンコナーゼ(onconase)、ランピルナーゼ、ウシ精液RNアーゼ、RNアーゼT1、α-サルシン、RNアーゼP、アクチビンド(actibind)、またはRNアーゼT2など)、アルカリホスファターゼ(例えば、ヒト組織非特異型アルカリホスファターゼまたはアスホターゼアルファなど)、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アスパルトアシラーゼ、α-マンノシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ1、グランザイムB、エンドリシンおよびエクトリシン(ectolysin)を含む溶菌素(例えば、N-アセチルムラミダーゼ、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ、L-アラノイル-D-グルタメートエンドペプチダーゼ、システイン/ヒスチジン依存性アミドヒドロラーゼ/ペプチダーゼ、リソスタフィン、ファージ尾部関連壁溶解酵素(tail-associated muralytic enzyme)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のファージ-K由来の尾部関連壁溶解酵素(TAME)触媒ドメイン(Lys16)とリソスタフィンの細胞-壁-結合SH3bドメインとからなる融合タンパク質など)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ-1、エンド-β-N-アセチル-グルコサミニダーゼ(例えば、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のEndoSまたはEndoS2など)、免疫グロブリン分解酵素(例えば、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のIdeSまたは淋菌(Neisseria gonorrhoeae)のIgAプロテアーゼなど)、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、チミジンホスホリラーゼ、アリールスルファターゼA、サイクリン依存性キナーゼ様5タンパク質、グリアジンペプチダーゼ、キヌレニン-分解酵素(例えば、キヌレニナーゼなど)、ミオチューブラリン、および触媒抗体またはその機能性断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab)またはscFv)から選択される。タンパク質薬物は、ウリカーゼまたはアデノシンデアミナーゼであるのが特に好ましい。さらに、タンパク質薬物は、L-アスパラギナーゼではない(すなわち、タンパク質薬物はL-アスパラギナーゼとは異なる)のが好ましい。
【0046】
治療適用
本発明はまた、本発明のコンジュゲート(すなわち、タンパク質薬物と2つ以上のP/Aペプチドとのコンジュゲート)および薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物も提供する。加えて、本発明はさらに、医薬品として使用するための前記コンジュゲートまたは前記医薬組成物に関する。
【0047】
本発明のコンジュゲート、または前記コンジュゲートおよび薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物は、特に、対応するタンパク質薬物(コンジュゲートに含まれる)それ自体が適切であると知られている、またはそのように提案されている治療適用、すなわち疾患/障害の処置または予防に使用することができる。例えば、本発明のコンジュゲートに含まれるタンパク質薬物が、とりわけ高尿酸値症の処置または予防に有効であると知られている尿酸オキシダーゼである場合、このコンジュゲート(尿酸オキシダーゼをタンパク質薬物として含む)を、例えば、高尿酸値症の処置または予防に使用することができる。
【0048】
様々な代表的タンパク質薬物およびその各治療適応症を以下の表にまとめている。これらのタンパク質薬物の各々の、表中のおよび/またはさらなる治療適用を記載している参考文献も示している。本発明は、特に、コンジュゲート中のタンパク質薬物が、この表で各薬物について示されている対応する疾患/障害のうちいずれか(またはその薬物についての各参考文献に開示されているいずれかの疾患/障害)の処置または予防に使用するための、下の表に示されているタンパク質薬物のうちいずれか1つである、本発明のコンジュゲートまたは医薬組成物に関する。本発明はまた、対応する疾患/障害のうちいずれかを処置または予防するための医薬品を調製するための対応するコンジュゲートの使用にも関する。同様に、本発明は、下の表に挙げられている(または引用した参考文献のいずれかに開示されている)疾患/障害のうちいずれか1つを処置または予防する方法であって、コンジュゲート中のタンパク質薬物が下の表の対応する行に示されているとおりである、本発明のコンジュゲートまたは医薬組成物を、それを必要とする対象/患者(例えば、ヒトまたは動物)に投与するステップを含む方法を提供する。
【0049】
【表1-1】
【0050】
【表1-2】
【0051】
【表1-3】
【0052】
【表1-4】
【0053】
【表1-5】
【0054】
【表1-6】
【0055】
【表1-7】
【0056】
本発明によるコンジュゲートは、それ自体が投与されてもよく、または医薬品/医薬組成物として製剤化されてもよい。医薬品/医薬組成物には、任意選択により、1種または複数種の薬学的に許容される添加剤、例えば、担体、賦形剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、着色剤、顔料、安定化剤、保存剤、および/または抗酸化剤などを含めてもよい。
【0057】
医薬組成物は、当業者に公知の技術、例えば、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Pharmaceutical Press, 22ndeditionに公表されている技術によって製剤化することができる。医薬組成物は、経口投与、非経口投与、例えば、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、動脈内、心臓内、直腸、鼻内、局所、エアゾールまたは腟内の各投与のための剤形として製剤化することができる。経口投与用の剤形としては、コーティング錠剤および非コーティング錠剤、軟ゼラチンカプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、ドロップ剤、トローチ剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、再構成用の散剤および顆粒剤、分散性の散剤および顆粒剤、薬用ガム、咀嚼錠剤ならびに発泡性錠剤が挙げられる。非経口投与用の剤形としては、溶液剤、乳剤、懸濁剤、分散剤ならびに再構成用の散剤および顆粒剤が挙げられる。乳剤は、非経口投与に好ましい剤形である。直腸投与および腟内投与用の剤形としては、坐剤および腟坐剤が挙げられる。鼻内投与用の剤形は、吸入および通気を介して、例えば定量吸入器によって投与することができる。局所投与用の剤形としては、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤(ointments)、蝋膏剤(salves)、貼付剤および経皮送達システムが挙げられる。
【0058】
本発明のコンジュゲート、または本発明のコンジュゲートを含む上記の医薬組成物は、全身的/末梢的にせよ、所望の作用部位にせよ、以下のうち1つまたは複数を含むが、これらに限定されない任意の好都合な投与経路によって、対象に投与することができる。経口投与(例えば、錠剤、カプセル剤として、または摂取可能な溶液剤として)、局所投与(例えば、経皮、鼻腔内、経眼、頬側および舌下)、非経口投与(例えば、注射技術または輸注技術を使用して、および例えば注射によって、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、髄腔内、関節包内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下または胸骨内を含み、例えば、デポー剤のインプラントによって、例えば、皮下または筋肉内を含む)、経肺投与(例えばエアゾール剤を使用し、例えば、口または鼻を通しての吸入または通気治療による)、胃腸投与、子宮内投与、眼内投与、皮下投与、眼部投与(硝子体内または前房内を含む)、直腸投与、または腟内投与。
【0059】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物が非経口的に投与される場合、そのような投与の例として、静脈内に、動脈内に、腹腔内に、鞘内に、脳室内に、尿道内に、胸骨内に、心臓内に、頭蓋内に、筋肉内にもしくは皮下に、および/または輸注技術の使用によって、コンジュゲートまたは医薬組成物を投与することのうち1つまたは複数が挙げられる。非経口投与の場合、コンジュゲートは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするために十分な塩またはブドウ糖を含有していてもよい滅菌水性溶液の形態で使用するのが最良である。水性溶液は、必要であれば適切に緩衝(好ましくはpH3~9に)されるべきである。滅菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な医薬技術で容易に実現される。
【0060】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物は、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出または制御放出で適用するための、香味剤または着色剤を含有していてもよい、錠剤、カプセル剤、卵形剤(ovule)、エリキシル剤、溶液剤または懸濁剤の形態で、経口投与することもできる。
【0061】
錠剤は、微結晶セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびグリシンなどの添加剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカの各デンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび一定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチンおよびアラビアゴムなどの造粒結合剤を含有していてもよい。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリンおよびタルクなどの滑沢剤が含まれていてもよい。類似の種類の固体組成物はまた、ゼラチンカプセル中に充填剤として使用されてもよい。その際に、好ましい添加剤には、乳糖、デンプン、セルロース、または高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤については、コンジュゲートは、種々の甘味剤または香味剤と、着色料または染料と、乳化剤および/または懸濁化剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの賦形剤と、ならびにこれらの組合せと組み合わされてもよい。
【0062】
代替として、前記コンジュゲートまたは医薬組成物は、坐剤または腟坐剤の形態で投与することができ、またはゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤または散粉剤の形態で局所的に適用することができる。本発明のコンジュゲートはまた、例えば皮膚貼付剤の使用によって、皮膚にまたは経皮的に投与することもできる。
【0063】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物はまた、持続放出システムによって投与することもできる。持続放出組成物の適切な例としては、形状のあるものの形態の半透過性ポリマーマトリックス、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルが挙げられる。持続放出マトリックスとしては、例えば、ポリ乳酸、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタメートとのコポリマー、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、エチレン酢酸ビニルまたはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。持続放出医薬組成物にはまた、リポソームに封入されたコンジュゲート、すなわち、本発明のコンジュゲートを含有するリポソームも含まれる。
【0064】
前記コンジュゲートまたは医薬組成物はまた、経肺経路、直腸経路、または経眼経路によって投与することもできる。眼部に使用するために、前記コンジュゲートまたは医薬組成物は、等張の、pH調整した、滅菌の生理食塩水中の微粒子化した懸濁剤として、または好ましくは、等張の、pH調整した、滅菌の生理食塩水中溶液剤として、任意選択により塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と組み合わせて製剤化することができる。代替として、ワセリンなどの軟膏剤に製剤化してもよい。
【0065】
経肺投与、特に吸入用として、本発明によるコンジュゲートの乾燥粉末製剤を調製することも想定される。そのような乾燥粉末は、実質的に非晶質ガラス状の、または実質的に結晶質の、生理活性のある粉末をもたらす条件下で噴霧乾燥することによって調製することができる。本発明のコンジュゲートの溶液製剤の噴霧乾燥は、例えば、一般に、"Spray Drying Handbook", 5th ed., K. Masters, John Wiley & Sons, Inc., NY (1991)、または噴霧乾燥に関する他のテキストもしくは科学文献に記載されているように行うことができる。
【0066】
皮膚に局所適用するために、前記コンジュゲートまたは医薬組成物は、例えば、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、乳化ワックスおよび水のうち1種または複数種との混合物中に懸濁または溶解させた活性化合物を含有する、適切な軟膏剤として製剤化することができる。代替として、前記コンジュゲートまたは医薬組成物は、例えば、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水のうち1種または複数種の混合物中に懸濁または溶解させた、適切なローション剤またはクリーム剤として製剤化することができる。
【0067】
したがって、本発明は、本明細書において提供されるコンジュゲートまたは医薬組成物に関し、対応するコンジュゲートまたは医薬組成物は、経口経路;経皮、鼻腔内、経眼、頬側、または舌下の各経路を含む局所経路;皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、鞘内、髄腔内、関節包内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、胸骨内、脳室内、尿道内、または頭蓋内の各経路によるものを含む、注射技術または輸注技術を使用する非経口経路;吸入または通気治療によるものを含む経肺経路;胃腸経路;子宮内経路;眼内経路;皮下経路;硝子体内経路または前房内経路によるものを含む眼部経路;直腸経路;または腟内経路のうちいずれか1つによって投与される。特に好ましい投与経路は非経口投与(例えば皮下投与)である。
【0068】
通常は、医師が、個々の対象に最適となる実際の投与量を決定することになる。任意の特定の個々の対象に対する特定の用量レベルおよび投与頻度は多様である可能性があり、使用される特定のコンジュゲートの活性、そのコンジュゲートの代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与方式および投与時間、排泄速度、薬物の併用、特定の状態の重症度、および治療を受ける個々の対象を含む種々の要因に依存することになる。
【0069】
本発明によるコンジュゲートのヒト(およそ70kgの体重)への皮下投与のための、提案されるが非限定的な用量は、単位用量当たりの活性成分が0.05~2000mg、好ましくは0.1mg~1000mgとすることができる。単位用量は、例えば、月に1~8回投与することができる。単位用量はまた、月に1~4回、例えば、週に1回以下で投与することもできる。当然のことながら、患者/対象の年齢および体重ならびに処置を受ける状態の重症度に応じて、投与量に対し、ルーチンに変動性をもたせることが必要な場合がある。正確な用量および投与経路もまた、最終的には担当医師または獣医師の裁量によることになる。
【0070】
本発明によるコンジュゲート、または前記コンジュゲートを含む医薬組成物は、単剤治療(例えば、さらなる治療剤を併用投与しない、またはそれぞれのコンジュゲートで処置または予防されることになる同じ疾患に対してさらなる治療剤を併用投与しない)で投与することができる。しかしながら、本発明のコンジュゲート、または前記コンジュゲートを含む医薬組成物はまた、1種または複数種のさらなる治療剤と併用して投与することもできる。本発明のコンジュゲートが、同じ疾患または状態に対して活性な第2の治療剤との併用で使用される場合、各薬剤の用量は、対応する薬剤が単独で使用される場合の用量とは異なってもよく、特に、各薬剤の用量を下げて使用することができる。本発明のコンジュゲートと1種または複数種のさらなる治療剤との併用には、コンジュゲートとさらなる治療剤との同時の/相伴う投与(単一医薬製剤で、または別個の医薬製剤で)、またはコンジュゲートとさらなる治療剤との逐次の/別々での投与を含めてもよい。投与が逐次の場合、本発明によるコンジュゲートまたは1種もしくは複数種のさらなる治療剤のいずれかが最初に投与されてもよい。投与が同時の場合、1種または複数種のさらなる治療剤は、コンジュゲートと同じ医薬製剤に含まれていてもよく、1つまたは複数の異なる(別個の)医薬製剤で投与されてもよい。
【0071】
本発明に従って処置される対象または患者は、動物(例えば非ヒト動物)、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、またはマウス)、ウシ科の動物(例えばウシ)、イヌ科の動物(例えばイヌ)、ネコ科の動物(例えばネコ)、ブタ類の動物(porcine)(例えばブタ(pig))、ウマ科の動物(例えばウマ)、霊長目または真猿亜目の動物(例えば、長尾小型のサル(monkey)または短尾大型のサル(ape)、例えば、マーモセット、ヒヒ、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、またはテナガザルなど)、またはヒトとすることができる。本発明によれば、経済学的、農学的または科学的に重要である動物が処置対象となることが想定される。科学的に重要な生物には、以下に限定されないが、マウス、ラットおよびウサギが含まれる。農学的に重要な動物の非限定的な例には、ヒツジ、ウシおよびブタがあり、一方、例えば、ネコおよびイヌは、一般に愛玩動物のように経済学的に重要な動物と考えることができる。好ましくは、対象/患者は哺乳動物である。より好ましくは、対象/患者は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、長尾小型のサル、短尾大型のサル、マーモセット、ヒヒ、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル、ヒツジ、ウシ、またはブタなど)である。最も好ましくは、対象/患者はヒトである。
【0072】
コンジュゲートの調製
本発明によるコンジュゲートは、当技術分野において公知の方法を使用して調製することができる。特に、以下に記載されているプロセスを使用して、かつ/または実施例に記載されている手順に従って、もしくはそれと同様にして調製することができる。
【0073】
したがって、本発明はまた、本発明によるコンジュゲートを調製するプロセスであって、次のステップ:
(a)式R-(P/A)-RC-act
[式中、RC-actは、Rのカルボキシ活性化形態であり、
および(P/A)は、調製されるコンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、かつ
は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]
の活性化P/Aペプチドを、タンパク質薬物とカップリングして、タンパク質薬物と、Rが保護基であるP/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステップ、および
(b)任意選択により、ステップ(a)において得られたコンジュゲートに含有されているP/Aペプチドから保護基Rを除去して、タンパク質薬物と、Rが存在しないP/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステップ、
を含む、プロセスも提供する。
【0074】
活性化P/Aペプチドに含まれるカルボキシ活性化したC末端アミノ酸残基RC-actは、P/Aペプチドに関して本明細書に記載され、定義されているとおりのいずれのアミノ酸残基Rでもよく、この場合、Rのカルボキシ基は、活性化カルボキシ基の形態である。
【0075】
一連の様々な活性化カルボキシ基は当技術分野において公知であり、例えば、El-Faham et al., 2011; Montalbetti et al., 2005; Klose et al., 1999; Valeur et al., 2007; Carpino et al., 1995; Valeur et al., 2009;またはHermanson, 2013に記載されている。活性化P/Aペプチドの活性化カルボキシ基は、例えば、上記の参考文献のうちいずれか1つに記載されている活性化カルボキシ基のうちいずれかから選択することができる。
【0076】
特に、活性化P/Aペプチド中のアミノ酸残基RC-actの活性化カルボキシ基は、例えば、活性エステル基、無水物基、またはハロゲン化アシル基とすることができる。
【0077】
C-actの活性化カルボキシ基が活性エステル基である場合、それは、好ましくは次の活性エステル基:
【0078】
【化2】
のうちいずれか1つから選択される。
【0079】
特に好ましい活性エステル基は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)活性エステル基である。したがって、RC-actの活性化カルボキシ基は次式:
【0080】
【化3】
の基であるのが特に好ましい。
【0081】
C-actの活性化カルボキシ基はまた、無水物基であってもよい。そのような無水物基の好ましい例としては、特に、プロピルホスホン酸無水物(T3P)基(下に示したとおり)または混合炭酸無水物基が挙げられる。
【0082】
【化4】
【0083】
混合炭酸無水物基は、例えば、-CO-O-CO-O-(C1~6アルキル)基とすることができる。対応する好ましい例を以下に示す。
【0084】
【化5】
【0085】
C-actの活性化カルボキシ基がハロゲン化アシル基である場合、それは好ましくは塩化アシル(すなわち-CO-Cl基)またはフッ化アシル(すなわち-CO-F基)である。
【0086】
本プロセスは、ステップ(a)の前に、式R-(P/A)-R[式中、Rおよび(P/A)は、調製されるコンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]のP/Aペプチドを活性化P/Aペプチドに変換するさらなるステップを追加として含んでもよい。
【0087】
例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール活性エステル基をRC-actの活性化カルボキシ基として有する活性化P/Aペプチドを得るために、P/Aペプチドを活性化P/Aペプチドに変換するステップは、塩基の存在下で、P/Aペプチドを、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)のホスホニウム、ウロニウムまたはインモニウムエステルの塩と反応させることによって行うことができる。HOBtのホスホニウム、ウロニウムまたはインモニウム誘導体の塩は、好ましくは、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、ベンゾトリアゾール-1-イルジエチルホスフェート(BDP)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、ベンゾトリアゾールオキシ-ビス(ピロリジノ)カルボニウムヘキサフルオロホスフェート(BCC)、2-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TDBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-N,N-ジメチルメタンイミニウムヘキサクロロアンチモネート(BOMI)、および5-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-3,4-ジヒドロ-1-メチル-2H-ピロリウムヘキサクロロアンチモネート(BDMP)から選択され、より好ましくはTBTUである。
【0088】
カップリングステップ(a)および先行する任意選択の、P/Aペプチドを活性化P/Aペプチドに変換するステップは、例えば、文献、例えば、El-Faham et al., 2011; Montalbetti et al., 2005; Klose et al., 1999; Valeur et al., 2007; Carpino et al., 1995; Valeur et al., 2009;またはHermanson, 2013のうちいずれかに記載されているペプチドカップリングまたはアミド結合形成手順のいずれかを使用して行うことができる。そのような手順に適切な試薬および反応条件は、上記の文献およびその中に引用されているさらなる参考文献に、さらに記載されている。
【0089】
任意選択のステップ(b)において必要となる保護基Rを除去する手順は、当技術分野において周知であり、例えば、Wuts et al., 2012および/またはIsidro-Llobet et al., 2009に記載されている。したがって、任意選択のステップ(b)は、例えば、上記の参考文献のうちいずれかの中で、対応する保護基Rについて記載されているように行うことができる。
【0090】
活性化P/Aペプチド
本発明はまた、式R-(P/A)-RC-actの活性化P/Aペプチドであって、Rは、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であり、(P/A)は、約7個~約1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、RC-actは、活性化カルボキシ基を有し、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とその活性化カルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基である、活性化P/Aペプチドにも関する。
【0091】
したがって、この活性化P/Aペプチドは、本明細書に記載され、定義されているP/Aペプチドに対応し、これをタンパク質薬物とカップリングして本発明によるコンジュゲートを得ることができるが、異なる点は、この活性化P/Aペプチドが、そのC末端アミノ酸残基(RC-act)に活性化カルボキシ基を有することである。したがって、式R-(P/A)-RC-actの活性化P/Aペプチドに含まれるR基および(P/A)基は、本発明のコンジュゲートに関して本明細書に記載されているP/Aペプチドに含まれる、対応するR基および(P/A)基と同じ意味(同じ好ましい意味を含む)を有する。
【0092】
同様に、活性化P/Aペプチドに含まれるRC-act基は、本発明のコンジュゲートに関して本明細書に記載されているP/Aペプチドに含まれる、対応するR基と同じ意味(同じ好ましい意味を含む)を有するが、異なる点は、RC-actは、Rのカルボキシ基(-COOH)の代わりに活性化カルボキシ基を有することである。活性化P/Aペプチドに含まれるRC-actの活性化カルボキシ基は、本発明によるコンジュゲートを調製するプロセスに関して本明細書で上に記載されている活性化カルボキシ基と同じである(例えば、活性エステル基、無水物基、またはハロゲン化アシル基であり、本明細書の上記の対応する好ましい基のうちいずれかを含む)。
【0093】
本明細書において提供される式R-(P/A)-RC-actの活性化P/Aペプチドは、本発明によるコンジュゲートの調製(特に、そのようなコンジュゲートを調製する上記のプロセスを含む)における合成中間体または前駆体として使用することができる。活性化P/Aペプチドは、例えば、容器中に保管してもよい有機溶媒または水性媒体中に供給することができる。好ましくは、活性化P/Aペプチドは無水有機溶媒(例えば、DMFまたはDMSO)中に保管される。
【0094】
定義
次の定義は、特に他の意味が指定されない限り、本明細書の全体で適用される。
【0095】
「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、1つのアミノ酸のアミノ基と別のアミノ酸のカルボキシ基との間に形成されるアミド結合を介して連結されている2つ以上のアミノ酸のポリマーを指す。ペプチドまたはタンパク質に含まれるアミノ酸は、アミノ酸残基とも呼ばれ、これは、20種の標準タンパク質原性のα-アミノ酸(すなわち、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)から選択することができるが、非タンパク質原性のおよび/または非標準のα-アミノ酸(例えば、オルニチン、シトルリン、ホモリシン、ピロリシン、4-ヒドロキシプロリン、α-メチルアラニン(すなわち、2-アミノイソ酪酸)、ノルバリン、ノルロイシン、テルロイシン(tert-ロイシン)、ラビオニン、または側鎖の位置で環式基(例えば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基)で置換されているアラニンまたはグリシン、例えば、シクロペンチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、シクロヘキシルグリシン、またはフェニルグリシンなど)ならびにβ-アミノ酸(例えば、β-アラニン)、γ-アミノ酸(例えば、γ-アミノ酪酸、イソグルタミン、またはスタチン)およびδ-アミノ酸からも選択することができる。好ましくは、ペプチドまたはタンパク質に含まれるアミノ酸残基は、α-アミノ酸から選択され、より好ましくは20種の標準タンパク質原性のα-アミノ酸(L-異性体またはD-異性体として存在することができ、好ましくは全部がL-異性体として存在する)から選択される。ペプチドまたはタンパク質は、無修飾でもよく、または例えば、そのN末端で、そのC末端で、および/またはそのアミノ酸残基のうちいずれかの側鎖中の官能基で(特に、1個または複数個のLys、His、Ser、Thr、Tyr、Cys、Asp、Glu、および/またはArgの各残基の側鎖官能基で)修飾されていてもよい。そのような修飾には、例えば、Wuts PGM, Greene's protective groups in organic synthesis, 5thedition, John Wiley & Sons, 2014の中で、対応する官能基について記載されている保護基のうちいずれかの付着を含めてもよい。そのような修飾にはまた、例えば、1つまたは複数の脂肪酸でのグリコシル化および/またはアシル化(例えば、1つまたは複数のC8~30アルカン酸またはアルケン酸で、脂肪酸アシル化されたペプチドまたはタンパク質を形成)を含めることもできる。ペプチドまたはタンパク質に含まれるアミノ酸残基は、例えば、直鎖状分子鎖(直鎖状のペプチドまたはタンパク質を形成)として存在してもよく、1つもしくは複数の環(環式のペプチドまたはタンパク質に相当)または分枝構造を形成してもよい。ペプチドまたはタンパク質はまた、2つ以上の同一のまたは異なる分子からなるオリゴマーを形成することもできる。
【0096】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、特に、20種の標準タンパク質原性のα-アミノ酸(すなわち、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro(イミノ酸とも呼ばれる)、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal)のうちいずれか1つを指すが、非タンパク質原性のおよび/もしくは非標準のα-アミノ酸(例えば、オルニチン、シトルリン、ホモリシン、ピロリシン、4-ヒドロキシプロリン、α-メチルアラニン(すなわち、2-アミノイソ酪酸)、ノルバリン、ノルロイシン、テルロイシン(tert-ロイシン)、ラビオニン、または側鎖の位置で環式基(例えば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基)で置換されているアラニンまたはグリシン、例えば、シクロペンチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、フェニルアラニン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、シクロヘキシルグリシン、またはフェニルグリシンなど)、もしくはβ-アミノ酸(例えば、β-アラニン)、γ-アミノ酸(例えば、γ-アミノ酪酸、イソグルタミン、またはスタチン)もしくはδ-アミノ酸、または少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも1つのアミノ基を含む任意の他の化合物も指す。他に定義されていない限り、「アミノ酸」という用語は、好ましくはα-アミノ酸を指し、より好ましくは、20種の標準タンパク質原性のα-アミノ酸(L-異性体またはD-異性体の形態とすることができるが、好ましくはL-異性体の形態である)のうちいずれか1つを指す。
【0097】
「炭化水素基」という用語は、炭素原子および水素原子からなる基を指す。
【0098】
「脂環式」という用語は、環式基に関して使用され、対応する環式基が非芳香族であることを意味する。
【0099】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」という用語は、非環式(すなわち、環式でない)でも環式でもよい一価の炭化水素基を指し、または非環式基/サブユニットと環式基/サブユニットとの両方から構成されていてもよい。非環式ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルの非環式サブユニットは、直鎖状でも分枝状でもよく、さらに飽和でも不飽和でもよい。環式ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルの環式サブユニットは、飽和でも、部分的不飽和(すなわち、不飽和であるが芳香族ではない)でも、芳香族でもよい。「C2~12ヒドロカルビル」は、2個~12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を意味する。代表的なヒドロカルビル基としては、とりわけ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または上記の基のうち2つ以上から構成される複合基(例えば、アルキルシクロアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルキルアリールアルケニル、アリールアルキル、またはアルキニルアリールなど)が挙げられる。上記にかかわらず、当然のことながら、例えば、HN-(C2~12ヒドロカルビル)-COOH残基の場合のように、ヒドロカルビル基が親部分に付着しており、さらに置換されている場合、この残基中の対応するヒドロカルビル基は、二価と考えることもできる。
【0100】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、直鎖状でも分枝状でもよい、一価の飽和非環式(すなわち、環式でない)炭化水素基を指す。したがって、「アルキル」基は、炭素-炭素二重結合も炭素-炭素三重結合も含まない。「C1~4アルキル」は、1個~4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましい代表的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピルまたはイソプロピル)、またはブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチル)である。他に定義されていない限り、「アルキル」という用語は、好ましくはC1~4アルキルを指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、直鎖状でも分枝状でもよく、1つまたは複数の(例えば、1つまたは2つの)炭素-炭素二重結合を含むが、炭素-炭素三重結合を含まない、一価の不飽和非環式炭化水素基を指す。「C2~4アルケニル」という用語は、2個~4個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。好ましい代表的なアルケニル基は、エテニル、プロペニル(例えば、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、またはプロパ-2-エン-1-イル)、ブテニル、またはブタジエニル(例えば、ブタ-1,3-ジエン-1-イルまたはブタ-1,3-ジエン-2-イル)である。他に定義されていない限り、「アルケニル」という用語は、好ましくはC2~4アルケニルを指す。
【0102】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」という用語は、直鎖状でも分枝状でもよく、1つまたは複数の(例えば、1つまたは2つの)炭素-炭素三重結合を含み、任意選択により、1つまたは複数の(例えば、1つまたは2つの)炭素-炭素二重結合を含む、一価の不飽和非環式炭化水素基を指す。「C2~4アルキニル」という用語は、2個~4個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。好ましい代表的なアルキニル基は、エチニル、プロピニル(例えばプロパルギル)、またはブチニルである。他に定義されていない限り、「アルキニル」という用語は、好ましくはC2~4アルキニルを指す。
【0103】
本明細書で使用する場合、「アリール」という用語は、単環式芳香環、ならびに少なくとも1つの芳香環を含有する架橋環系および/または縮合環系(例えば、2つまたは3つの縮合環から構成され、これらの縮合環のうち少なくとも1つが芳香族である環系;または2つもしくは3つの環から構成される架橋環系であり、これらの架橋環のうち少なくとも1つが芳香族である架橋環系)を含む、芳香族炭化水素環基を指す。「アリール」は、例えば、フェニル、ナフチル、ジアリニル(すなわち、1,2-ジヒドロナフチル)、テトラリニル(すなわち、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル)、インダニル、インデニル(例えば、1H-インデニル)、アントラセニル、フェナントレニル、9H-フルオレニル、またはアズレニルを指すことができる。他に定義されていない限り、「アリール」は、好ましくは6個~14個の環原子を有し、より好ましくは6個~10個の環原子を有し、より一層好ましくはフェニルまたはナフチルを指し、最も好ましくはフェニルを指す。
【0104】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、単環式芳香環、ならびに少なくとも1つの芳香環を含有する架橋環系および/または縮合環系(例えば、2つまたは3つの縮合環から構成され、これらの縮合環のうち少なくとも1つが芳香族である環系;または2つもしくは3つの環から構成される架橋環系であり、これらの架橋環のうち少なくとも1つが芳香族である架橋環系)を含む芳香環基であって、前記芳香環基は1個または複数個の(例えば、1個、2個、3個または4個などの)O、SおよびNから独立に選択される環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、1個もしくは複数個のS環原子(存在する場合)および/または1個もしくは複数個のN環原子(存在する場合)は、任意選択により酸化されていてもよく、さらに1個または複数個の炭素の環原子は、任意選択により酸化されていてもよい(すなわち、オキソ基を形成している)芳香環基を指す。例えば、前記芳香環基に含まれる各ヘテロ原子を含有する環は、1個もしくは2個のO原子および/または1個もしくは2個のS原子(任意選択により酸化されていてもよい)および/または1個、2個、3個もしくは4個のN原子(任意選択により酸化されていてもよい)を含有していてもよいが、但し、対応するヘテロ原子を含有する環のヘテロ原子の総数は1個~4個であり、対応するヘテロ原子を含有する環に少なくとも1個の炭素の環原子(任意選択により酸化されていてもよい)がある。「ヘテロアリール」は、例えば、チエニル(すなわち、チオフェニル)、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル、フリル(すなわち、フラニル)、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル(例えば、2H-1-ベンゾピラニルまたは4H-1-ベンゾピラニル)、イソクロメニル(例えば、1H-2-ベンゾピラニル)、クロモニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、ピロリル(例えば、1H-ピロリル)、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル(すなわち、ピリジニル;例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル(例えば、3H-インドリル)、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル(例えば、[1,10]フェナントロリニル、[1,7]フェナントロリニル、または[4,7]フェナントロリニル)、フェナジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル(すなわち、フラザニル)、または1,3,4-オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(例えば、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、または1,3,4-チアジアゾリル)、フェノキサジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル(例えば、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)、1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾ[b]チオフェニル(すなわち、ベンゾチエニル)、トリアゾリル(例えば、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリル、1H-1,2,4-トリアゾリル、または4H-1,2,4-トリアゾリル)、ベンゾトリアゾリル、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリル、トリアジニル(例えば、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、または1,3,5-トリアジニル)、フロ[2,3-c]ピリジニル、ジヒドロフロピリジニル(例えば、2,3-ジヒドロフロ[2,3-c]ピリジニルまたは1,3-ジヒドロフロ[3,4-c]ピリジニル)、イミダゾピリジニル(例えば、イミダゾ[1,2-a]ピリジニルまたはイミダゾ[3,2-a]ピリジニル)、キナゾリニル、チエノピリジニル、テトラヒドロチエノピリジニル(例えば、4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジニル)、ジベンゾフラニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル(例えば、1,3-ベンゾジオキサニルまたは1,4-ベンゾジオキサニル)、またはクマリニルを指すことができる。他に定義されていない限り、「ヘテロアリール」という用語は、好ましくは、O、SおよびNから独立に選択される1個または複数個の(例えば、1個、2個、3個または4個の)環ヘテロ原子を含む5員~14員の(より好ましくは5員~10員の)単環式環または縮合環系であって、1個もしくは複数個のS環原子(存在する場合)および/または1個もしくは複数個のN環原子(存在する場合)は、任意選択により酸化されており、1個または複数個の炭素の環原子は、任意選択により酸化されている、単環式環または縮合環系を指し;より一層好ましくは、「ヘテロアリール」は、O、SおよびNから独立に選択される1個または複数個の(例えば、1個、2個または3個の)環ヘテロ原子を含む5員または6員の単環式環であって、1個もしくは複数個のS環原子(存在する場合)および/または1個もしくは複数個のN環原子(存在する場合)は、任意選択により酸化されており、1個または複数個の炭素の環原子は、任意選択により酸化されている、単環式環を指す。さらに、他に定義されていない限り、「ヘテロアリール」の特に好ましい例としては、ピリジニル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、または4-ピリジル)、イミダゾリル、チアゾリル、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリル、チエニル(すなわち、チオフェニル)、またはピリミジニルが挙げられる。
【0105】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、単環式環、ならびに架橋環系、スピロ環系および/または縮合環系(例えば、2つまたは3つの環から構成されていてもよく、例えば、2つまたは3つの縮合環から構成される縮合環系などである)を含む飽和炭化水素環基を指す。「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、デカリニル(すなわち、デカヒドロナフチル)、またはアダマンチルを指すことができる。他に定義されていない限り、「シクロアルキル」は、好ましくはC3~11シクロアルキルを指し、より好ましくはC3~7シクロアルキルを指す。特に好ましい「シクロアルキル」は、3~7の環員を有する単環式飽和炭化水素環である。さらに、他に定義されていない限り、「シクロアルキル」の特に好ましい例はシクロヘキシルである。
【0106】
本明細書で使用する場合、「シクロアルケニル」という用語は、単環式環、ならびに架橋環系、スピロ環系および/または縮合環系(例えば、2つまたは3つの環から構成されていてもよく、例えば、2つまたは3つの縮合環から構成される縮合環系などである)を含む不飽和脂環式(非芳香族)炭化水素環基であって、1つまたは複数の(例えば、1つまたは2つの)炭素-炭素二重結合を含み、炭素-炭素三重結合を含まない、炭化水素環基を指す。「シクロアルケニル」は、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロへプテニル、またはシクロヘプタジエニルを指すことができる。他に定義されていない限り、「シクロアルケニル」は、好ましくはC3~11シクロアルケニルを指し、より好ましくはC3~7シクロアルケニルを指す。特に好ましい「シクロアルケニル」は、3~7の環員を有し、1つまたは複数の(例えば、1つまたは2つの、好ましくは1つの)炭素-炭素二重結合を含有する単環式不飽和脂環式炭化水素環である。
【0107】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」という用語は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、またはヨード(-I)を指す。
【0108】
本明細書で使用する場合、「任意選択の」、「任意選択により」および「~してもよい(may)」という用語は、指定した特徴が存在してもよいが、存在しなくてもまたよいことを意味する。「任意選択の」「任意選択により」または「~してもよい(may)」という用語が使用される場合は常に、本発明は、特に、両方の可能性、すなわち、対応する特徴が存在するという可能性、または代替として、対応する特徴が存在しないという可能性の両方に関する。例えば、「Xは任意選択によりYで置換されている」(または「XはYで置換されていてもよい」)という表現は、XがYで置換されているか、または非置換であることを意味する。同様に、組成物の構成成分が「任意選択」であると指定されている場合、本発明は、特に、両方の可能性、すなわち、対応する構成成分が存在する(組成物中に含有されている)という可能性、または対応する構成成分が組成物に存在しないという可能性の両方に関する。
【0109】
本明細書では、様々な基が「任意選択により置換されている」と書かれている。一般に、これらの基は、1つまたは複数の置換基、例えば、1つ、2つ、3つまたは4つなどの置換基を担持していてもよい。当然のことながら、置換基の最大数は、置換される部分の利用可能な付着部位の数によって制限される。他に定義されていない限り、本明細書に書かれている「任意選択により置換されている」基は、好ましくは2つ以下の置換基を担持し、特に、1つの置換基のみを担持していてもよい。さらに、他に定義されていない限り、任意選択の置換基は存在しない、すなわち対応する基は非置換であるのが好ましい。
【0110】
本明細書で使用する場合、「遊離アミノ基」という用語は、特に、第一級アミノ基(-NHまたは-NH )を指す。
【0111】
本明細書で使用され、文脈によって明らかに他の指定も否定もされない限り、「a」、「an」および「the」という用語は、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つ」と互換的に使用される。したがって、例えば、本発明の「a」コンジュゲートを含む組成物は、本発明の「1つまたは複数の」コンジュゲートを含む組成物を指すものと解釈することができる。
【0112】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、好ましくは示された数値の±10%を指し、より好ましくは示された数値の±5%を指し、特に、示された厳密な数値を指す。「約」という用語が範囲の両端に関して使用される場合、好ましくは、その示された数値の下端-10%からその示された数値の上端+10%までの範囲を指し、より好ましくは、下端-5%から上端+5%までの範囲を指し、より一層好ましくは、下端および上端の厳密な数値により定義される範囲を指す。「約」という用語がオープンエンドの範囲の端点に関して使用される場合、好ましくは、下端-10%から始まる、または上端+10%から始まる、対応する範囲を指し、より好ましくは、下端-5%から始まる、または上端+5%から始まる範囲を指し、より一層好ましくは、対応する端点の厳密な数値により定義されるオープンエンドの範囲を指す。「約」という用語が、タンパク質中のアミノ酸残基の数など、整数で数量化されるパラメーターに関して使用される場合、示された数値の±10%または±5%に対応する数は最も近い整数に丸められることになる(タイブレークルール「0.5は切り上げ(round half up)」を使用)。
【0113】
本明細書で使用する場合、「含んでいる(comprising)」(または「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」もしくは「含有している(containing)」)という用語は、文脈によって明らかに他の指定も否定もされない限り、「とりわけ、含有する」、すなわち、「さらなる任意選択の要素、~の中で、含有する」という意味を有する。それに加えて、この用語はまた、「から実質的になる」および「からなる」という、より狭い意味も含む。例えば、「BおよびCを含むA」という用語は「とりわけ、BおよびCを含有するA」という意味を有し、Aはさらなる任意選択の要素を含有していてもよい(例えば、「B、CおよびDを含有するA」も包含され得る)が、この用語はまた、「BおよびCから実質的になるA」の意味および「BおよびCからなるA」(すなわち、BおよびC以外の構成成分はAに含まれない)の意味も含む。
【0114】
本明細書で使用する場合の、障害または疾患の「処置」という用語は、当技術分野において周知である。障害または疾患の「処置」とは、患者/対象において、障害または疾患が疑われる、または診断されたことを意味する。障害または疾患が疑われる、またはそれらに罹患している患者/対象は、通常、特定の病的状態に起因すると当業者が考える(すなわち、障害または疾患を診断する)ことが容易にできる、特定の臨床症状および/または病的症状を示している。
【0115】
障害または疾患の「処置」は、例えば、障害または疾患の進行の停止(例えば、症状の無増悪)または障害もしくは疾患の進行の遅延(進行の停止が単に一過性の性質である場合)をもたらす場合がある。障害または疾患の「処置」が、障害または疾患に罹患している対象/患者の部分応答(例えば症状の改善)または完全応答(例えば症状の消失)をもたらす場合もある。したがって、障害または疾患の「処置」はまた、例えば、障害または疾患の進行の停止、または障害もしくは疾患の進行の遅延をもたらす場合のある、障害または疾患の改善を指すこともできる。このような部分応答または完全応答があっても、後に再発する場合がある。当然のことながら、対象/患者は、処置に対して広範な応答(本明細書の上記の例示的な応答など)をする場合がある。障害または疾患の処置には、とりわけ、治療的処置(好ましくは、完全応答、および最終的に障害または疾患の治癒をもたらす)および対症的処置(症状軽減を含む)を含めることができる。
【0116】
本明細書で使用する場合の、障害または疾患の「予防」という用語もまた、当技術分野において周知である。例えば、障害または疾患に罹患する傾向にあると疑われる患者/対象は、特にその障害または疾患の予防によって利益を得ることができる。対象/患者には、障害または疾患に感受性または素因(遺伝的素因を含むがこれに限定されない)がある場合がある。そのような素因は、標準的な方法またはアッセイにより、例えば、遺伝子マーカーまたは表現型の指標またはバイオマーカーを使用して判定することができる。当然のことながら、本発明に従って予防される障害または疾患は、患者/対象において診断されておらず、診断することもできない(例えば、患者/対象は、臨床症状または病的症状を全く示していない)。したがって、「予防」という用語は、主治医によって、何らかの臨床症状および/または病的症状が診断もしくは判断される前に、またはそれらを診断もしくは判断することができる前に、本発明のコンジュゲートを使用することを含む。
【0117】
当然のことながら、本発明は、特に、全般的なおよび/または好ましい特徴/実施形態の任意の組合せを含む、本明細書に記載されている特徴および実施形態のすべての組合せに関する。特に、本発明は、本発明によるP/Aペプチドおよびコンジュゲートに含まれる種々の基および可変要素についての意味(全般的なおよび/または好ましい意味を含む)の各々の組合せに特に関する。
【0118】
本明細書において、特許、特許出願および科学文献を含む複数の文献が引用されている。これらの文献の開示は、本発明の特許性には関連性が考えられず、その内容全体が参照によって本明細書に援用される。より具体的には、個々の文献が具体的かつ個別に参照によって援用されるように指定されたかのような場合と同程度に、すべての参考文献が参照によって援用される。
【0119】
いかなる従来の刊行物(またはそこから得られる情報)も、本明細書でそれを参照することは、その対応する従来の刊行物(またはそこから得られる情報)が、本明細書が関与する技術分野において共通一般知識の一部を形成するという承諾とも、容認とも、いかなる形の示唆とも解釈されず、またそのように解釈されてはならない。
【0120】
本発明はまた、以下の実例となる図面によっても説明される。添付の図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】リシン残基を介してP/Aペプチドをタンパク質にカップリングする反応スキーム。 非求核塩基N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、ヒューニッヒ塩基)の存在下で、DMSOを溶媒として用いて、N末端で保護されたP/Aペプチド(例えばアセチル-P/A#1(40))を、そのC末端を介して、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)で活性化する。得られたペプチドのヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)活性エステルを次に使用して、タンパク質のアミノ基(リシン残基のε-アミノ基またはN末端α-アミノ基)を、P/Aペプチドとともに、ペプチド結合またはイソペプチド結合の形成によって選択的に誘導体化し、同時に遊離HOBtを放出させる。このカップリングステップは、有機溶媒の含量が≦30%の水性溶液(例えばPBS緩衝液)中で実施される。P/A-タンパク質コンジュゲートは、残留P/Aペプチド/カップリング試薬から、透析法および/またはクロマトグラフィー(例えばイオン交換クロマトグラフィー)によって精製してもよい。
図2】Ac-P/A#1(40)ペプチドとコンジュゲートしたRNアーゼAのSDS-PAGE解析。 実施例1で説明しているように、ウシ膵臓由来のRNアーゼAを、Ac-P/A#1(40)(配列番号:1)とコンジュゲートした(RNアーゼAの1mg当たりP/Aペプチド10mg)。残留TBTUをモル過剰のグリシンで反応停止した後に、SDS-ポリアクリルアミドゲルを、無修飾のRNアーゼA(レーン1および2にそれぞれ2μgまたは8μg)、およびAc-P/A#1(40)-RNアーゼAコンジュゲート(レーン3および4にそれぞれ2μgまたは8μg)の両方とともに充填した。コンジュゲートは、明らかな高分子量の3つの個別のバンドとして現れた。個々のバンドは、カップリングされたP/Aペプチド1つずつによって変動するタンパク質コンジュゲートに対応する。カップリング反応の後に、無修飾のRNアーゼAは検出不能であった。レーンM:Pierce(商標)Unstained Protein MW Marker(Thermo Fisher Scientific)。
図3-1】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-2】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-3】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-4】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-5】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-6】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-7】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-8】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-9】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-10】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。
図3-11】P/A#1(20)ペプチドの化学構造。 すべてが固相ペプチド合成によって得られた、C末端のリンカーアミノ酸が異なるP/A(20)ペプチド:A、グリシン(参考例);B、なし(P/A(20)ペプチド配列のL-アラニンに対応);C、D-アラニン;D、β-アラニン;E、L-プロリン;F、γ-アミノ酪酸(GABA);G、5-アミノ吉草酸(Ava);H、6-アミノヘキサン酸(Ahx);I、8-アミノオクタン酸(Aoa);J、4-アミノシクロヘキサンカルボン酸(ACHA);K、4-アミノ安息香酸(Abz)。これらの例では、C末端を化学的に活性化したときにペプチドが重合するのを回避するために、N末端をピログルタモイル(Pga)残基で保護した。
図4】Pga-P/A#1(20)-AhxペプチドとコンジュゲートしたRNアーゼAのSDS-PAGE解析。 実施例2で説明しているように、ウシ膵臓由来のRNアーゼAを、Pga-P/A#1(20)-Ahxペプチド(配列番号:9)とコンジュゲートした。カップリング反応中の、タンパク質に対するP/Aペプチドの比は、RNアーゼAの1mg当たりP/Aペプチド0.5mg~15mgと変動があった。各カップリング反応で得られたコンジュゲートしたRNアーゼA7μgとともに、ゲルを充填した。さらに、非コンジュゲートのRNアーゼAをSDS-ポリアクリルアミドゲル(レーン「0」)の上に充填した。非コンジュゲートのRNアーゼAから始まる連続的なはしごの中のバンドをカウントすることで判定される、カップリングされたP/Aペプチドの数は、右に記録されている。レーン「M」:Pierce Unstained Protein MW Marker(Thermo Fisher Scientific)。
図5-1】C末端のアミノ酸が異なるPga-P/A#1(20)ペプチドとコンジュゲートした、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのSDS-PAGE解析。
図5-2】C末端のアミノ酸が異なるPga-P/A#1(20)ペプチドとコンジュゲートした、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのSDS-PAGE解析。
図5-3】C末端のアミノ酸が異なるPga-P/A#1(20)ペプチドとコンジュゲートした、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのSDS-PAGE解析。
図5-4】C末端のアミノ酸が異なるPga-P/A#1(20)ペプチドとコンジュゲートした、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのSDS-PAGE解析。
図5-5】C末端のアミノ酸が異なるPga-P/A#1(20)ペプチドとコンジュゲートした、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのSDS-PAGE解析。
図5-6】C末端のアミノ酸が異なるPga-P/A#1(20)ペプチドとコンジュゲートした、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのSDS-PAGE解析。 組換えバチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼを、P/A部分とタンパク質との間のリンカーとして作用するC末端のアミノ酸が異なる(図3を参照)様々なPga-P/A#1(20)ペプチド(配列番号:2~12)とコンジュゲートした。実施例2で説明しているようにカップリングを実施した。カップリング反応中の、タンパク質に対するP/Aペプチドの比は、ウリカーゼ1mg当たりP/Aペプチド0.5mg~10mgと変動があった。各カップリング反応で得られたコンジュゲートしたウリカーゼ7μgとともに、ゲルを充填した。さらに、非コンジュゲートのウリカーゼをSDS-ポリアクリルアミドゲルの上に充填した(矢印)。PageRuler(商標)Plus Prestained(Thermo Fisher Scientific)をレーン「M」に適用した。
図6】コンジュゲートされたP/A(20)ペプチドのC末端の(リンカー)アミノ酸に依存する、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼのカップリング効率。 C末端のリンカーアミノ酸が異なる(図3を参照)Pga-P/A(20)ペプチドにコンジュゲートしたウリカーゼのSDS-PAGE(図5を参照)を濃度測定の面から評価し、対応するバンド強度(P)について重み付けした、カップリングされたペプチドの数の算術平均を、カップリング反応中に得られたペプチドとタンパク質との間の質量比(R)に対してプロットした。飽和関数を使用してデータをあてはめ、最大カップリング比(Pmax)および最大半量質量比(R1/2)を、対応する曲線から外挿した(表2に記載、実施例3を参照)。
図7】ウリカーゼ/Pga-PA(20)-AhxコンジュゲートのSDS-PAGE解析。 組換えバチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼをサイズ排除クロマトグラフィーによって精製し、質量比が2倍のPga-P/A(20)-Ahxとコンジュゲートした(レーン3)。無修飾のウリカーゼ(レーン1)、および質量比が0.5倍のPga-P/A(20)-Ahxとコンジュゲートしたウリカーゼ(レーン2)を適用することにより、非コンジュゲートのタンパク質から始まる連続的なはしごの中のバンドのカウントを可能にした。したがって、カップリングされたP/Aペプチドの数は、正確に判定することが可能であった(右に示している)。レーン「M」:PageRuler(商標)Plus Prestained(Thermo Fisher Scientific)。
図8】ウリカーゼ/Pga-PA(20)-Ahxコンジュゲートのサイズ排除クロマトグラフィー。 (A)Pga-P/A(20)-Ahxにコンジュゲートした組換えバチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼ(実施例4に記載、図7を参照)および無修飾のウリカーゼ(点線)の溶出プロファイルの重ね描き。精製したタンパク質150μLを、濃度1mg/mlで、PBS緩衝液で平衡化したSuperdex(商標)S200 10/300GLカラムに入れた。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィー分析のピークを100%に正規化した。(B)Superdex(商標)S200 10/300GLカラムを使用する(A)のクロマトグラムの較正曲線。マーカータンパク質(オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;アルコールデヒドロゲナーゼ、150kDa、β-アミラーゼ、200kDa、アポ-フェリチン、440kDa)の分子量の対数を、それらの溶出体積(黒丸)に対してプロットし、直線によってあてはめた。四量体のウリカーゼおよびそのPga-P/A(20)-Ahxペプチドコンジュゲート(黒四角)の溶出体積を観測し、そこから、見かけの分子サイズを次のように決定した。ウリカーゼ、132kDa(真の質量142kDa);ウリカーゼ/Pga-P/A(20)-Ahxコンジュゲート、408kDa(真の質量:約197kDa)。これらのデータから、化学的にコンジュゲートしたP/Aペプチドは、流体力学的容積が大幅に増大していることが示されている。
図9-1】P/A#1(20)活性エステルのESI-MS解析。
図9-2】P/A#1(20)活性エステルのESI-MS解析。
図9-3】P/A#1(20)活性エステルのESI-MS解析。 Pga-P/A#1(20)-Ahxペプチドと、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(A)、4-ニトロフェニル(B)またはペンタフルオロフェニル(C)との活性エステルを、実施例5で説明しているように調製し、m/zスペクトルを、ESI-MSにより、正イオンモードを使用して測定した。無修飾のP/Aペプチドまたは活性化P/Aペプチドのいずれか、および検出可能なこれらのペプチドへの単一水分子の付加体に対応する質量のピークを、質量予測値および質量測定値とともに表示している。
図10】様々なP/A(20)活性エステルとコンジュゲートしたウリカーゼのSDS-PAGE解析。 Pga-P/A#1(20)-Ahxペプチドの、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)活性エステル、4-ニトロフェニル(pNP)活性エステルおよびペンタフルオロフェニル(PFP)活性エステルを、実施例5で説明しているように調製し、バチルス-ファスティディオスス(Bacillus fastidiosus)ウリカーゼにカップリングした。HOBt活性エステルとのカップリングでは、カップリング反応中の、タンパク質に対するP/Aペプチドの比は、ウリカーゼ1mg当たりP/Aペプチド1mg~10mgと変動があった。pNP活性エステルとのカップリング、およびPFP活性エステルとのカップリングでは、得られたP/Aペプチド対ウリカーゼの質量比は6:1であった。レーン「0」:非コンジュゲートのウリカーゼ。レーン「M」:PAGERuler Prestaind Protein MW Marker(Thermo Fisher Scientific)。試料を10%SDS-PAGEによって解析し、次にクーマシーで染色した。
図11】様々なP/A(40)ペプチドとコンジュゲートしたアルコールデヒドロゲナーゼのSDS-PAGE解析。 実施例6で説明しているように、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を、(A)Pga-P/A#1(40)-Ahx(配列番号:18)と、または(B)Pga-P/A#3(40)-Ahx(配列番号:19)とコンジュゲートした。カップリング反応中の、タンパク質に対するP/Aペプチドの比は、1mg当たりP/Aペプチド1mg~10mgと変動があった。PBSに対して透析した後に、各カップリング混合物5μgずつをSDS-PAGEによって解析した。コンジュゲートは、カップリングされたP/Aペプチド1つずつによって異なる分子量が大きくなるにつれて、個別のバンドのはしごとして現れる。レーン「0」:非コンジュゲートのADH。レーンM:PAGE ruler prestained MW Marker(Thermo Fisher Scientific)。
図12】様々なP/A(40)ペプチドとコンジュゲートしたアデノシンデアミナーゼのSDS-PAGE解析。 実施例7で説明しているように、ウシ(Bos taurus)由来のアデノシンデアミナーゼ(ADA)を、Pga-P/A#1(40)-Ahx(配列番号:18)と、またはPga-P/A#3(40)-Ahx(配列番号:19)とコンジュゲートした。カップリング反応中の、タンパク質に対するP/Aペプチドの比は、タンパク質1mg当たりP/Aペプチド1mg~10mgと変動があった。PBSに対して透析した後に、各カップリング混合物5μgずつをSDS-PAGEによって解析した。コンジュゲートは、カップリングされたP/Aペプチド1つずつによって異なる分子量が大きくなるにつれて、個別のバンドのはしごとして現れる。レーン「0」:非コンジュゲートのADA。レーンM:PAGE ruler prestained MW Marker(Thermo Fisher Scientific)。
図13】Pga-PAS#1(40)-AhxペプチドとコンジュゲートしたRNアーゼAのSDS-PAGE解析。 実施例8で説明しているように、ウシ膵臓由来のRNアーゼAを、Pga-PAS#1(40)(配列番号:22)とコンジュゲートした(RNアーゼAの1mg当たりPASペプチド4mg)。残留TBTUをモル過剰のグリシンで反応停止した後に、Pga-PAS#1(40)-Ahx-RNアーゼAコンジュゲートを様々な量でSDS-ポリアクリルアミドゲル上に充填した(レーン1、2、3および4にそれぞれ0.5μg、1μg、2μgまたは10μg)。コンジュゲートは、明らかな高分子量の4つの個別のバンドとして現れた。個々のバンドは、カップリングされたPASペプチド1つずつによって変動するタンパク質コンジュゲートに対応する。カップリング反応の後に、残った無修飾のRNアーゼAはもはや検出不能であった。レーンM:PAGE ruler prestained MW Marker(Thermo Fisher Scientific)。
【0122】
本発明は、以下に、単に説明のためのものであり、本発明の範囲の限定と解釈されるべきではない以下の実施例に言及することによって説明される。
【実施例
【0123】
[実施例1]:アセチル-P/A(40)-RNアーゼAコンジュゲートの調製
Ac-P/A#1(40)ペプチド(配列番号:1)(TFA塩、純度98%;Peptide Specialities Laboratories、Heidelberg、Germany)35mgを、無水DMSO(99.9%;Sigma-Aldrich、Taufkirchen、Germany)1268μLに溶解した。P/Aペプチドの、その末端のカルボン酸基を介しての化学的活性化を実現するために、500mM TBTU(CAS#125700-67-6;Iris Biotech、Marktredwitz、Germany)のDMSO溶液214μLを添加し、混合した後に、DIPEA(99.5%、biotech.Grade、Sigma-Aldrich)18μLを添加した。全混合物を短時間ボルテックスし、25℃で20分間インキュベートした(図1を参照)。この設定において、ペプチド濃度は7.14mMであり、DIPEAとTBTUとAc-P/A#1(40)との間のモル比は10:10:1であった。
【0124】
ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼA(RNアーゼA;Sigma-Aldrich、カタログ番号83831、配列番号:16)を、リン酸緩衝食塩水(PBS:115mM NaCl、4mM KHPOおよび16mM NaHPO、pH7.4)に溶解してタンパク質濃度2mg/mLを得、氷上で冷却した。RNアーゼA溶液3.5mLを活性ペプチドの溶液(1.5mL)と混合した結果、Ac-P/A#1(40)とタンパク質との間の質量比が5:1となり、室温で30分間インキュベートしてカップリングさせた。残留TBTUを反応停止するために、グリシン(pH8、トリス塩基で調整)をタンパク質試料に添加(最終グリシン濃度:250mM)してから、SDS-PAGE用に試料を加熱した(図2に示したとおり)。得られたコンジュゲートは、明らかな高分子量の3つの個別のバンドを現した。個々のバンドは、カップリングされたP/Aペプチドの数によって異なるタンパク質コンジュゲートの分布に対応する。無修飾のRNアーゼAは検出不能であった。
【0125】
[実施例2]:ピログルタモイル-P/A-(20)-アミノヘキサノイル-RNアーゼAの調製のためのカップリング比の最適化
Pga-P/A#1(20)-Ahxペプチド(TFA塩、純度98%;Almac Group、Craigavon、UK)(配列番号:9)3mgを、435mM TBTUのDMSO溶液37.3μlに溶解した。P/Aペプチドの、その末端のカルボン酸基を介しての化学的活性化は、DIPEA2.7μLをペプチドの溶液に添加し、ボルテックスすることによって開始した。この設定において、ペプチドの濃度は40.6mMであり、DIPEAとTBTUとPga-P/A#1(20)-Ahxとの間のモル比は10:10:1であった。25℃で10分インキュベートした後に、表1に従って、混合物をEppendorf(商標)チューブに入れ、DMSOで希釈した。各Eppendorf(商標)チューブは、最終的に15μLの体積の希釈ペプチド溶液を含有していた。
【0126】
ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼA(RNアーゼA;Sigma-Aldrich、カタログ番号83831)の濃度2mg/mLのPBS溶液を調製した。このタンパク質溶液35μLを、各Eppendorf(商標)チューブにピペットで移し、ピペット操作の反復およびボルテックスによって混合した。カップリング反応を、25℃で30分間行った。グリシン(pH8.0、トリス塩基で調整)を添加して反応を停止し、最終濃度を250mMにした。コンジュゲートのSDS-PAGE解析が、図4に示されている。個々のバンドは、カップリングされたP/Aペプチド1つずつによって変動するタンパク質コンジュゲートに対応する。ペプチドとタンパク質との間の比が低いカップリング反応を適用することで、非コンジュゲートのタンパク質から始まる連続的なはしごの中のバンドのカウントが可能になり、したがって、カップリングされたP/Aペプチドの数の正確な判定が可能になった。RNアーゼAの1mg当たり、Pga-P/A#1(20)-Ahxペプチド3mgのカップリング比は、すべてのアミノ基(10個のリシン残基およびN末端)のカップリングを実現するのに十分であった。この場合、カップリングされたP/A#1(20)ペプチド中のアミノ酸残基と酵素(RNアーゼA)中のアミノ酸残基との比は1.77であった。
【0127】
【表2】
【0128】
[実施例3]:様々なリンカーを有するPga-P/A#1(20)-ウリカーゼコンジュゲートの調製
凍結乾燥した組換えバチルス-ファスティディオスス(Bacillus fastidiosus)ウリカーゼ(Sigma-Aldrich、カタログ番号94310、配列番号:17)をPBSに溶解し、Slide-A-Lyzer(商標)透析カセット(MWCO 10.000;Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、4℃で終夜PBSに対して透析し、低分子量夾雑物を除去した。
【0129】
グリシン、L-アラニン、D-アラニン、β-アラニン、L-プロリン、4-アミノブタン酸(GABA)、5-アミノペンタン酸(Ava)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、8-アミノオクタン酸(Aoa)、4-アミノ安息香酸(Abz)または4-アミノシクロヘキサンカルボン酸(ACHA)のいずれかをC末端のアミノ酸Rとして有するPga-P/A#1(20)ペプチドの各々3mgずつ(図3を参照;TFA塩、純度98%、Peptide Specialities Laboratories)を、実施例2でRNアーゼAについて説明している方法と同様に、ウリカーゼ(PBS中2mg/mL)にコンジュゲートした。各コンジュゲートのSDS-PAGE解析が図5に示されている。カップリングされたP/Aペプチドの平均数を定量して、カップリング反応中に得られたタンパク質に対する各ペプチドの比を求めるために、SDS-ポリアクリルアミドゲルを、クーマシーブリリアントブルーR-250で染色してからPerfection V700 Photo scanner(Epson、Meerbusch、Germany)でスキャンし、Quant v12.2ソフトウェア(TotalLab、Newcastle upon Tyne、UK)を使用して濃度測定の面から評価した。各バンドについて、カップリングされたP/Aペプチドの数(すなわち、モル比またはタンパク質に対するペプチドの化学量論量)を、非コンジュゲートのウリカーゼから始まるバンドのカウントによって指定した。次いで、SDS-Pageに見られる対応するバンド強度(P)について重み付けし、カップリングされたペプチドの数の算術平均として計算した、酵素当たりのカップリングされたペプチドの平均数を、カップリング反応中に得られた質量比(R)に対してプロットした(図6を参照)。Kaleidagraph v4.1ソフトウェア(Synergy Software、Reading、PA)を使用して、データを次の飽和関数にあてはめた。
P(R)=Pmax×R/(R1/2+R)
maxはカップリングされたペプチドの最大(漸近)平均数に相当し、R1/2は、カップリングされたペプチドの最大半量数のカップリング比に相当する。
【0130】
試験したペプチドの各々について決定されたPmax値およびR1/2値は、表2に記載している。試験したP/AペプチドのC末端のアミノ酸RがR1/2に及ぼす影響はわずかでしかないが、このリンカー基は、カップリングされたペプチドの最大数(Pmax)には顕著な影響を示した。すべてのウリカーゼアミノ基(各サブユニットの16個のリシン残基およびN末端)の飽和は、Pmax値≧17で示されるように、リンカーアミノ酸としてAhxまたはAvaを有する場合に実現された。C末端にグリシンを有するP/Aペプチドは、Pmax値が3.5と最低であった。Pmax値が6.9~9.9の範囲の、中程度のカップリング効率は、C末端にアラニンおよびプロリンを有する場合に実現された。脂肪族のリンカーアミノ酸が長くなると、カップリング効率が高くなり(Pmaxにより示されるとおり)、C5アミノ酸Avaで最高に達した。
【0131】
脂肪族リンカーと芳香族C6環式リンカーの両者とも、直鎖状6-アミノヘキサン酸リンカーと同様に高いPmax値を示した。
【0132】
【表3】
【0133】
[実施例4]:P/A20-ウリカーゼコンジュゲートの特性評価
凍結乾燥した組換えバチルス-ファスティディオスス(Bacillus fastidiosus)ウリカーゼ(Sigma-Aldrich、カタログ番号94310、配列番号:17)をPBSに溶解し、サイズ排除クロマトグラフィーにより、PBSで平衡化したSuperdex(商標)200 increase 10/300カラム(GE Healthcare)で四量体として精製した。
【0134】
実施例3で説明しているように、DMSOに溶解したPga-P/A(20)#1-Ahxペプチド1mgをTBTUおよびDIPEAで活性化し、精製したウリカーゼ0.5mg(PBS中2mg/mL)と混合した。反応混合物を25℃で30分間インキュベートし、次いで、再生セルロース膜透析チューブ(MWCO 50kDa;Spectrum Laboratories、Los Angeles、CA)を使用して、AEX緩衝液(25mMホウ酸Na、pH8.8、1mM EDTA)5Lに対して4℃で終夜透析した。未反応のカップリング試薬を除去するために、透析した酵素コンジュゲートに1mL Resource(商標)Qカラム(GE Healthcare)で陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。カラムをAEX緩衝液で平衡化し、タンパク質コンジュゲートを30カラム体積にNaClの直線濃度勾配0~300mMを使用して溶出した。
【0135】
ウリカーゼmg当たりペプチド0.5mgという低い比で行ったカップリング反応に加えて、溶出した試料をSDS-PAGEに適用することで、前段落に記載した分取設定で観測されたカップリング比の決定が可能になり、このようにしてウリカーゼ単量体当たり6個~9個のPAペプチドが得られた(図7を参照)。
【0136】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Superdex(商標)S200 increase 10/300GLカラム(GE Healthcare Europe、Freiburg、Germany)にて、流速0.5mL/分で、PBSをランニング緩衝液としてAkta(商標)Purifier 10システム(GE Healthcare)を使用して行った。ウリカーゼ-P/A(20)コンジュゲートおよび無修飾のウリカーゼの各試料150μLずつをそれぞれカラムに適用し、クロマトグラフィープロファイルを重ねた(図8Aを参照)。タンパク質の溶出は両方とも単一の均質なピークになった。
【0137】
カラムの較正のために(図8Bを参照)、以下の球状タンパク質(Sigma、Deisenhofen、Germany)の適切な混合物150μLを、0.5mg/ml~1.0mg/mlのタンパク質濃度でPBSに適用した:シトクロムc、12.4kDa;オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;アルコールデヒドロゲナーゼ、150kDa;β-アミラーゼ、200kDa;アポ-フェリチン、440kDa;チログロブリン、660kDa。
【0138】
結果として、化学的にコンジュゲートしたウリカーゼ製剤は、SECの間に、対応する同じ分子量の球状タンパク質より大幅に大きいサイズを示した。ウリカーゼ-P/A(20)の見かけのサイズ増大は、無修飾のウリカーゼと比較して3.1倍であったが、コンジュゲートの真の質量は1.3~1.5倍大きいに過ぎなかった。この所見は、本発明によるPro/Alaペプチドとのコンジュゲートによって、生物学的に活性なウリカーゼ酵素に付与された流体力学的容積が大幅に増加していることを明確に示している。
【0139】
ウリカーゼ-P/A(20)コンジュゲートと、無修飾のウリカーゼの両者の尿酸オキシダーゼ活性を、尿酸のアラントインへの酸化に起因する、293nmでの吸光度の減少によって判定した。簡単に言うと、酵素溶液10μLを、1mM EDTAを含有する100mMホウ酸Na緩衝液(pH9.2)中の300μM尿酸溶液(ナトリウム塩;Sigma-Aldrich)200μLと混合し、30℃で5分間インキュベートした。この溶液の293nmでの吸光度を、SpectraMax(商標)250マイクロウェルプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して測定した。尿酸の希釈系列から得られた較正曲線を使用して、吸光度の減少から活性を計算した。結果が表3にまとめられている。
【0140】
【表4】
【0141】
[実施例5]:様々なPga-P/A(20)-Ahx活性エステルの合成、単離およびコンジュゲート
1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、4-ニトロフェニル(pNP)またはペンタフルオロフェニル(PFP)のいずれかでエステルとして活性化されたPga-P/A(20)-Ahxペプチドを調製するために、それぞれの活性化用に、Pga-P/A#1(20)-Ahxペプチド(TFA塩、純度98%;Almac Group、Craigavon、UK)(配列番号:9)10mgを、150mM DIPEAのDMF溶液360μlに溶解した。次いで、P/Aペプチドの、その末端のカルボン酸基を介しての化学的活性化は、TBTU、4-ニトロフェニルトリフルオロアセテート(Sigma-Aldrich)またはペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィネート(Sigma-Aldrich)の、DMF中150mM溶液360μlを、それぞれペプチド/DIPEA溶液に添加し、ボルテックスすることによって開始した。この設定において、ペプチドの濃度は7.5mMであり、DIPEAとカップリング試薬とPga-P/A#1(20)-Ahxとの間のモル比は10:10:1であった。pNP活性エステルの形成は、50mM 4-(ジメチルアミノ)ピリジン(Sigma-Aldrich)のDMF溶液22μlの添加によって促進された。25℃で20分インキュベートした後に、各混合物の72μlのアリコートを取り出した。ジエチルエーテル500μlを添加して活性ペプチドを沈殿させた。遠心分離(13.500×g、4℃)した後に、上清を除去し、沈降物をジエチルエーテル500μlで洗浄し、真空エバポレーター(SpeedyDry RVC2-18 CDplus、Martin Crist Freeze Dryers、Germany)を使用して乾燥し、-20℃で、例えば14日間保管した。
【0142】
ESI-MS解析のために、様々なP/A(20)活性エステルの各々の乾燥したアリコートをアセトニトリル/水(1:1)10mLに溶解し、正イオンモードを使用するmaXis機器(Bruker Daltonik、Bremen、Germany)に注入した。Pga-P/A#1(20)-Ahx-HOBt活性エステル、Pga-P/A#1(20)-Ahx-pNP活性エステル、およびPga-P/A#1(20)-Ahx-PFP活性エステルの未加工のm/zスペクトルが、図9A、9Bおよび9Cに、それぞれ示されている。調製したすべての活性エステルについて、検出した主な質量種は、それぞれのPga-P/A#1(20)-Ahx活性エステルの質量計算値/予測値の単一水付加体に対応していた。
【0143】
バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼと、単離した/予め形成したP/AペプチドのHOBt活性エステルとのカップリングを実現するために、乾燥アリコート(活性化前のP/Aペプチドの約1mgに相当)を、2mg/mlの酵素の100mMホウ酸Na(pH9)中溶液500μl、250μl、167μl、83.3μlまたは50μlに、ボルテックスすることによって溶解した。これらはP/A活性エステル:ウリカーゼの質量比がそれぞれ1:1、2:1、3:1、6:1または10:1に相当するものであった。溶液を室温で1時間インキュベートして、カップリングさせた。同様に、Pga-P/A#1(20)-AhxペプチドのpNP活性エステルおよびPFP活性エステルを、バチルス-ファスティディオスス(B. fastidiosus)ウリカーゼにカップリングして、P/A活性エステル:ウリカーゼの質量比1:6を得た。カップリングされた酵素試料を、Slide-A-Lyzer(商標)ミニ透析カセット(MWCO 10.000、Thermo-Fisher)を使用してPBS(4℃)に対して透析した後に、SDS-PAGEを還元条件下で実施した(図10を参照)。このようにして、ウリカーゼとP/Aペプチドとのコンジュゲートが、有利に高いカップリング比で得られたことが示された。さらに、本発明による活性化P/Aペプチドは簡便に調製することができ、ウリカーゼなどのタンパク質薬物に後でカップリングするために長期間保管(乾燥/固体状態でも)することができることが実証された。
【0144】
[実施例6]:異なる組成のPga-P/A(40)-Ahxペプチドとのアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)コンジュゲートの調製
Pga-P/A#1(40)-Ahxペプチド(Almac Group、Craigavon、UK)(配列番号:18)またはPga-P/A#3(40)-Ahxペプチド(Peptide Specialities Laboratories)(配列番号:19)の各々3.2mgずつをDMSO3.5μlに溶解し、500mM TBTUのDMSO溶液18.5μlを添加した。P/Aペプチドの、その末端のカルボン酸基を介しての化学的活性化は、DIPEA1.6μLをペプチドの溶液に添加し、ボルテックスすることによって開始した。この設定において、ペプチドの濃度は17.35mMであり、DIPEAとTBTUとPga-P/A#1(40)-Ahx(またはPga-P/A#3(40)-Ahx)との間のモル比は10:10:1であった。実施例2と同様に、25℃で10分インキュベートした後に、混合物をEppendorf(商標)チューブに入れ、DMSOで希釈して、酵素:ペプチドの質量比、1:1、1:3、1:6および1:10を実現した。各Eppendorf(商標)チューブは、最終的に25μLの体積の希釈した活性ペプチド溶液を含有していた。
【0145】
凍結乾燥したアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来、Sigma-Aldrich)(配列番号:20)をPBSに溶解し、PBSに対してさらに透析した後に、濃度2mg/mlに調整した。このタンパク質溶液75μLを、上記のペプチドとともに各Eppendorf(商標)チューブにピペットで移し、ピペット操作の反復およびボルテックスによって混合した。カップリング反応を、25℃で30分間進行させた。Slide-A-Lyzer(商標)ミニ透析カセット(MWCO 10.000、Thermo-Fisher)を使用して、カップリングされた酵素試料をPBSに対して4℃で透析した後に、SDS-PAGEを実施した(図11を参照)。このようにして、図11にも示しているように、アルコールデヒドロゲナーゼとP/Aペプチドとのコンジュゲートが、高いカップリング比で得られた。
【0146】
[実施例7]:異なる組成のPga-P/A(40)-Ahxペプチドとのアデノシンデアミナーゼ(ADA)コンジュゲートの調製
Pga-P/A#1(40)-Ahxペプチド(Almac Group、Craigavon、UK)(配列番号:18)またはPga-P/A#3(40)-Ahxペプチド(Peptide Specialities Laboratories)(配列番号:19)の各々3.2mgずつをDMSO3.5μlに溶解し、500mM TBTUのDMSO溶液18.5μlを添加した。P/Aペプチドの、その末端のカルボン酸基を介しての化学的活性化は、DIPEA1.6μLをペプチドの溶液に添加し、ボルテックスすることによって開始した。この設定において、ペプチドの濃度は17.35mMであり、DIPEAとTBTUとPga-P/A#1(40)-Ahx(またはPga-P/A#3(40)-Ahx)との間のモル比は10:10:1であった。実施例2と同様に、25℃で10分インキュベートした後に、混合物をEppendorf(商標)チューブに入れ、DMSOで希釈して、酵素:ペプチドの質量比、1:1、1:3、1:6および1:10を実現した。各Eppendorf(商標)チューブは、最終的に25μLの体積の希釈した活性ペプチド溶液を含有していた。
【0147】
凍結乾燥したアデノシンデアミナーゼ(ADA、ウシ(Bos taurus)由来、Sigma-Aldrich)(配列番号:21)をPBSに溶解し、PBSに対してさらに透析した後に、濃度2mg/mlに調整した。このタンパク質溶液75μLを、上記のペプチドとともに各Eppendorf(商標)チューブにピペットで移し、ピペット操作の反復およびボルテックスによって混合した。カップリング反応を、25℃で30分間進行させた。Slide-A-Lyzer(商標)ミニ透析カセット(MWCO 10.000、Thermo-Fisher)を使用して、カップリングされた酵素試料をPBSに対して4℃で透析した後に、SDS-PAGEを実施した(図12を参照)。このようにして、アデノシンデアミナーゼとP/Aペプチドとのコンジュゲートが、高いカップリング比で得られたことが示された。
【0148】
[実施例8]:Pga-PAS#1(40)-AhxとのRNアーゼコンジュゲートの調製
Pga-PAS#1(40)-Ahxペプチド(Peptide Specialities Laboratories)(配列番号:22)2mgを132mM DIPEAのDMSO溶液44μlに溶解した。PASペプチドの、その末端のカルボン酸基を介しての化学的活性化は、500mM TBTUのDMSO溶液11.6μLを添加し、ボルテックスすることによって開始した。この設定において、ペプチドの濃度は10.4mMであり、DIPEAとTBTUとPga-PAS#1(40)-Ahxとの間のモル比は10:10:1であった。全混合物を短時間ボルテックスし、25℃で10分間インキュベートした。
【0149】
ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼA(RNアーゼA;Sigma-Aldrich、カタログ番号83831、配列番号:16)をPBSに溶解し、PBSに対して透析した後に、濃度2mg/mlに調整した。RNアーゼA溶液166.7μLを活性ペプチドの溶液(55.6μL)と混合した結果、Pga-PAS#1(40)-Ahxとタンパク質との間の質量比が4:1となり、室温で30分間インキュベートしてカップリングさせた。Slide-A-Lyzer(商標)ミニ透析カセット(MWCO 10.000、Thermo-Fisher)を使用して、カップリングされたRNアーゼ試料をPBSに対して4℃で透析した後に、SDS-PAGEを実施した(図13を参照)。このようにして、セリンを含有するPga-PAS#1(40)-Ahxペプチドとでさえも、RNアーゼAとのコンジュゲートは高いカップリング比で得られたことが示された。
【0150】
参考文献
【表5】

本願明細書に記載の発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
タンパク質薬物と2つ以上のP/Aペプチドとのコンジュゲートであって、
各P/Aペプチドは、独立に、ペプチドR -(P/A)-R であり、
(P/A)は、約7個~約1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、
は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であるか、またはR は存在せず、
は、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とそのカルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基であり、
各P/Aペプチドは、前記P/AペプチドのC末端アミノ酸残基R のカルボキシ基と前記タンパク質薬物の遊離アミノ基とから形成されるアミド結合を介して、前記タンパク質薬物にコンジュゲートしており、
P/Aペプチドがコンジュゲートしている前記遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、前記タンパク質薬物のN末端α-アミノ基ではない、
コンジュゲート。
[2]
(P/A)は、約8個~約400個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、上記[1]に記載のコンジュゲート。
[3]
(P/A)は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択される、10個~60個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、上記[1]または[2]に記載のコンジュゲート。
[4]
(P/A)は、プロリンおよびアラニンから独立に選択される15個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[5]
(P/A)に含まれるプロリン残基の数の、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数に対する割合は、≧10%かつ≦70%であり、好ましくは≧20%かつ≦50%であり、より好ましくは≧25%かつ≦40%である、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[6]
(P/A)は、(i)AAPAおよびAPAPから独立に選択される2つ以上の部分配列、および(ii)任意選択により、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[7]
(P/A)は、(i)1つまたは複数の部分配列AAPAAPAP、(ii)任意選択により、1つまたは2つの部分配列AAPA、および(iii)任意選択により、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる、上記[1]から[6]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[8]
(P/A)は、(i)配列ASPAAPAPASPAAPAPSAPA、(ii)配列APASPAPAAPSAPAPAAPSA、(iii)配列AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA、(iv)前記配列のうちのいずれかの断片、または(v)前記配列の2つ以上の組合せからなる、上記[1]に記載のコンジュゲート。
[9]
は、ホルミル、-CO(C 1~4 アルキル)、ピログルタモイルおよびホモピログルタモイルから選択され、前記-CO(C 1~4 アルキル)に含まれるアルキル部分は、-OH、-O(C 1~4 アルキル)、-NH(C 1~4 アルキル)、-N(C 1~4 アルキル)(C 1~4 アルキル)および-COOHから独立に選択される1つまたは2つの基で任意選択により置換されているか、またはR は存在しない、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[10]
は、ホルミル、アセチル、ヒドロキシアセチル、メトキシアセチル、エトキシアセチル、プロポキシアセチル、マロニル、プロピオニル、2-ヒドロキシプロピオニル、3-ヒドロキシプロピオニル、2-メトキシプロピオニル、3-メトキシプロピオニル、2-エトキシプロピオニル、3-エトキシプロピオニル、スクシニル、ブチリル、2-ヒドロキシブチリル、3-ヒドロキシブチリル、4-ヒドロキシブチリル、2-メトキシブチリル、3-メトキシブチリル、4-メトキシブチリル、グリシンベタイニル、グルタリル、ピログルタモイル、およびホモピログルタモイルから選択される、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[11]
は存在しない、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[12]
は、H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHであり、R は、H N-(CH 3~10 -COOH、H N-フェニル-COOH、およびH N-シクロヘキシル-COOHから選択されるのが好ましく、R は、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、
【化6】
から選択されるのがより好ましい、上記[1]から[11]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[13]
はアラニンまたはプロリンである、上記[1]から[11]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[14]
前記コンジュゲートに含まれる前記P/Aペプチドは、ランダムコイルコンフォメーションをとる、上記[1]から[13]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[15]
前記コンジュゲートに含まれる前記P/Aペプチドの全部が同じである、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[16]
前記P/Aペプチドがコンジュゲートしている前記遊離アミノ基のうち少なくとも1個は、前記タンパク質薬物のリシン残基のε-アミノ基である、上記[1]から[15]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[17]
前記P/Aペプチドがコンジュゲートしている前記遊離アミノ基は、前記タンパク質薬物の任意のリシン残基のε-アミノ基、前記タンパク質薬物または前記タンパク質薬物の任意のサブユニットのN末端α-アミノ基、およびそれらの任意の組合せから選択される、上記[1]から[16]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[18]
前記コンジュゲートは、前記タンパク質薬物と前記P/Aペプチドとから、0.1~50の値を取る比m (P/Aペプチド) /m (タンパク質薬物) で構成され、m (P/Aペプチド) は、前記コンジュゲートに含まれる全P/Aペプチドの(P/A)部分中のアミノ酸残基を合わせた総数であり、m (タンパク質薬物) は、前記コンジュゲートに含まれる前記タンパク質薬物中のアミノ酸残基の総数である、上記[1]から[17]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[19]
前記比m (P/Aペプチド) /m (タンパク質薬物) は、0.5~5の値を取る、上記[18]に記載のコンジュゲート。
[20]
前記タンパク質薬物は酵素である、上記[1]から[19]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[21]
前記タンパク質薬物は、尿酸オキシダーゼ、アデノシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、L-フェニルアラニン分解酵素、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、抗酸化酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ロダネーゼ、有機ホスフェート分解酵素、ホスホトリエステラーゼ、有機リンアンヒドロラーゼ、アルコール酸化酵素、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アセトアルデヒド分解酵素、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、L-グルタミン分解酵素、グルタミナーゼ、L-アルギニン分解酵素、アルギナーゼ、アルギニンデイミナーゼ、プラスミノーゲン活性化酵素、組織プラスミノーゲン活性化因子、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、フィブリノーゲン溶解酵素、アンクロド、バトロキソビン、シスタチオニン-β-シンターゼ、ホモシステインチオラクトン分解酵素、パラオキソナーゼ1、ブレオマイシンヒドロラーゼ、ヒト血清HTアーゼ、ヒトビフェニルヒドロラーゼ様タンパク質、メチオニン分解酵素、メチオニナーゼ、メチオニン特異性について改変されたシスタチオニン-γ-リアーゼ、ホモシステイン分解酵素、システイン分解酵素、シスチン分解酵素、ヒアルロニダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、グルコセレブロシダーゼ、イミグルセラーゼ、P/Aペプチドに対する活性のない広域スペクトルプロテアーゼ、アナナイン、コモサイン、オクリプラスミン、アセチルコリン分解酵素、ブチリルコリンエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、コカイン分解酵素、コカインエステラーゼ、コンドロイチナーゼ、コラゲナーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、α-L-イズロニダーゼ、ポルホビリノーゲン、DNアーゼ、ドルナーゼα、オキサレート分解酵素、オキサレートデカルボキシラーゼ、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、アセチルCoAα-グルコサニミドアセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、N-α-アセチルグルコサミニダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ、トリペプチジルペプチダーゼ1、ホスホグリセリン酸キナーゼ、凝固第IX因子、凝固第VIII因子、凝固第VIIa因子、凝固第Xa因子、凝固第IV因子、凝固第XIII因子、補体経路のタンパク質に特異性のあるプロテアーゼ、因子C3特異性について改変された型の膜タイプセリンプロテアーゼ1、VEGFまたはVEGF受容体に特異性のあるプロテアーゼ、改変された型の膜タイプセリンプロテアーゼ1、ヒトアンジオテンシン変換酵素2、RNアーゼ、オンコナーゼ(onconase)、ランピルナーゼ、ウシ精液RNアーゼ、RNアーゼT1、α-サルシン、RNアーゼP、アクチビンド(actibind)、RNアーゼT2、アルカリホスファターゼ、ヒト組織非特異型アルカリホスファターゼ、アスホターゼアルファ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アスパルトアシラーゼ、α-マンノシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ1、グランザイムB、溶菌素、エンドリシン、エクトリシン(ectolysin)、N-アセチルムラミダーゼ、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ、L-アラノイル-D-グルタメートエンドペプチダーゼ、システイン/ヒスチジン依存性アミドヒドロラーゼ/ペプチダーゼ、リソスタフィン、ファージ尾部関連壁溶解酵素、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のファージ-K由来の尾部関連壁溶解酵素触媒ドメインとリソスタフィンの細胞-壁-結合SH3bドメインとからなる融合タンパク質、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ-1、エンド-β-N-アセチル-グルコサミニダーゼ、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のEndoSまたはEndoS2、免疫グロブリン分解酵素、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)のIdeS、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)のIgAプロテアーゼ、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、チミジンホスホリラーゼ、アリールスルファターゼA、サイクリン依存性キナーゼ様5タンパク質、グリアジンペプチダーゼ、キヌレニン-分解酵素、キヌレニナーゼ、ミオチューブラリン、および触媒抗体またはその機能性断片から選択される、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[22]
上記[1]から[21]のいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物。
[23]
医薬品として使用するための、上記[1]から[21]のいずれか一項に記載のコンジュゲートまたは上記[22]に記載の医薬組成物。
[24]
上記[1]から[21]のいずれか一項に記載のコンジュゲートを調製するプロセスであって、
(a)式R -(P/A)-R C-act [式中、R C-act は、R のカルボキシ活性化形態であり、R および(P/A)は、調製される前記コンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、R は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]の活性化P/Aペプチドを、タンパク質薬物とカップリングして、前記タンパク質薬物と、R が保護基である前記P/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステップ、および
(b)任意選択により、ステップ(a)において得られた前記コンジュゲートに含有されている前記P/Aペプチドから前記保護基R を除去して、前記タンパク質薬物と、R が存在しない前記P/Aペプチドとのコンジュゲートを得るステップ
を含む、プロセス。
[25]
前記活性化P/Aペプチド中のアミノ酸残基R C-act の活性化カルボキシ基は、活性エステル基であり、
前記活性エステル基は、好ましくは次の基:
【化7】
のいずれか1つから選択され、
前記活性エステル基は、より好ましくは次式:
【化8】
の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール活性エステル基である、
上記[24]に記載のプロセス。
[26]
前記活性化P/Aペプチド中のアミノ酸残基R C-act の活性化カルボキシ基は、無水物基であり、
前記無水物基は、好ましくは、(i)次式:
【化9】
のプロピルホスホン酸無水物(T3P)基、
または(ii)次式:
【化10】
の基などの混合炭酸無水物基である、
上記[24]に記載のプロセス。
[27]
前記活性化P/Aペプチド中のアミノ酸残基R C-act の活性化カルボキシ基は、ハロゲン化アシル基であり、前記ハロゲン化アシル基は、好ましくは-CO-Clまたは-CO-Fである、上記[24]に記載のプロセス。
[28]
ステップ(a)の前に、式R -(P/A)-R [式中、R および(P/A)は、調製される前記コンジュゲートにおいて定義されるとおりであり、R は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基である]のP/Aペプチドを前記活性化P/Aペプチドに変換するさらなるステップを含む、上記[24]から[27]のいずれか一項に記載のプロセス。
[29]
前記活性化P/Aペプチド中のアミノ酸残基R C-act の活性化カルボキシ基は、次式
【化11】
を有する1-ヒドロキシベンゾトリアゾール活性エステル基であり、
前記P/Aペプチドを前記活性化P/Aペプチドに変換する前記ステップは、塩基の存在下で、前記P/Aペプチドを、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールのホスホニウム、ウロニウムまたはインモニウムエステルの塩と反応させることによって行われ、
1-ヒドロキシベンゾトリアゾールのホスホニウム、ウロニウムまたはインモニウム誘導体の塩は、好ましくは、BOP、PyBOP、BDP、HBTU、TBTU、BCC、TDBTU、BOMIおよびBDMPから選択され、より好ましくはTBTUである、上記[28]に記載のプロセス。
[30]
式R -(P/A)-R C-act の活性化P/Aペプチドであって、
は、(P/A)のN末端のアミノ基に付着している保護基であり、
(P/A)は、約7個~約1200個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも80%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含み、
C-act は、活性化カルボキシ基を有し、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端のカルボキシ基に結合し、そのアミノ基とその活性化カルボキシ基との間に少なくとも2個の炭素原子を含むアミノ酸残基である、
活性化P/Aペプチド。
[31]
前記アミノ酸残基R C-act の前記活性化カルボキシ基は、活性エステル基であり、
前記活性エステル基は、好ましくは次の基:
【化12】
のいずれか1つから選択され、
前記活性エステル基は、より好ましくは次式:
【化13】
の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール活性エステル基である、
上記[30]に記載の活性化P/Aペプチド。
[32]
前記アミノ酸残基R C-act の前記活性化カルボキシ基は、無水物基であり、
前記無水物基は、好ましくは、(i)次式:
【化14】
のプロピルホスホン酸無水物(T3P)基、
または(ii)次式:
【化15】
の基などの混合炭酸無水物基である、
上記[30]に記載の活性化P/Aペプチド。
[33]
前記アミノ酸残基R C-act の前記活性化カルボキシ基は、ハロゲン化アシル基であり、前記ハロゲン化アシル基は、好ましくは-CO-Clまたは-CO-Fである、上記[30]に記載の活性化P/Aペプチド。
[34]
(P/A)は、約8個~約400個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも85%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、上記[30]から[33]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[35]
(P/A)は、プロリン、アラニン、グリシンおよびセリンから独立に選択される、10個~60個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)中のアミノ酸残基の数の少なくとも95%は、プロリンおよびアラニンから独立に選択され、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、上記[30]から[34]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[36]
(P/A)は、プロリンおよびアラニンから独立に選択される15個~45個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、(P/A)は、少なくとも1個のプロリン残基および少なくとも1個のアラニン残基を含む、上記[30]から[35]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[37]
(P/A)に含まれるプロリン残基の数の、(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数に対する割合は、≧10%かつ≦70%であり、好ましくは≧20%かつ≦50%であり、より好ましくは≧25%かつ≦40%である、上記[30]から[36]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[38]
(P/A)は、(i)AAPAおよびAPAPから独立に選択される2つ以上の部分配列、および(ii)任意選択により、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる、上記[30]から[37]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[39]
(P/A)は、(i)1つまたは複数の部分配列AAPAAPAP、(ii)任意選択により、1つまたは2つの部分配列AAPA、および(iii)任意選択により、プロリンおよびアラニンから独立に選択される、さらに1個、2個または3個のアミノ酸残基からなる、上記[30]から[38]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[40]
(P/A)は、(i)配列ASPAAPAPASPAAPAPSAPA、(ii)配列APASPAPAAPSAPAPAAPSA、(iii)配列AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA、(iv)前記配列のうちのいずれかの断片、または(v)前記配列の2つ以上の組合せからなる、上記[30]から[33]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[41]
は、ホルミル、-CO(C 1~4 アルキル)、ピログルタモイルおよびホモピログルタモイルから選択され、前記-CO(C 1~4 アルキル)に含まれるアルキル部分は、-OH、-O(C 1~4 アルキル)、-NH(C 1~4 アルキル)、-N(C 1~4 アルキル)(C 1~4 アルキル)および-COOHから独立に選択される1つまたは2つの基で任意選択により置換されている、上記[30]から[40]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[42]
は、ホルミル、アセチル、ヒドロキシアセチル、メトキシアセチル、エトキシアセチル、プロポキシアセチル、マロニル、プロピオニル、2-ヒドロキシプロピオニル、3-ヒドロキシプロピオニル、2-メトキシプロピオニル、3-メトキシプロピオニル、2-エトキシプロピオニル、3-エトキシプロピオニル、スクシニル、ブチリル、2-ヒドロキシブチリル、3-ヒドロキシブチリル、4-ヒドロキシブチリル、2-メトキシブチリル、3-メトキシブチリル、4-メトキシブチリル、グリシンベタイニル、グルタリル、ピログルタモイル、およびホモピログルタモイルから選択される、上記[30]から[41]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[43]
C-act は、H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHであり、前記H N-(C 2~12 ヒドロカルビル)-COOHの-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態である、上記[30]から[42]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[44]
C-act は、H N-(CH 3~10 -COOH、H N-フェニル-COOH、およびH N-シクロヘキシル-COOHから選択され、前記R C-act 基の各々の-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態である、上記[30]から[43]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[45]
C-act は、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、H N-(CH -COOH、
【化16】
から選択され、前記R C-act 基の各々の-COOH基は、活性化カルボキシ基の形態である、上記[30]から[44]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[46]
C-act は、活性化カルボキシ基を有するアラニンであるか、またはR C-act は、活性化カルボキシ基を有するプロリンである、上記[30]から[42]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[47]
ランダムコイルコンフォメーションをとる、上記[30]から[46]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチド。
[48]
上記[1]から[21]のいずれか一項に記載のコンジュゲートを調製するための、上記[30]から[47]のいずれか一項に記載の活性化P/Aペプチドの使用。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図3-9】
図3-10】
図3-11】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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