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特許7224690糖尿病網膜症の診断用複合マーカーおよびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】糖尿病網膜症の診断用複合マーカーおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230213BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230213BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230213BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20230213BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230213BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230213BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 M
G01N33/50 T
G01N33/53 D
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021553338
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2020003168
(87)【国際公開番号】W WO2020180146
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0026302
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521402343
【氏名又は名称】レチ マーク カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヨン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘ リム
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-507557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177660(US,A1)
【文献】特表2008-540385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む、糖尿病網膜症の診断用複合マーカー。
【請求項2】
前記複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の糖尿病網膜症の診断用複合マーカー。
【請求項3】
MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーのmRNAまたはタンパク質レベルを測定する製剤を含む、糖尿病網膜症の診断用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーに対するmRNAまたはタンパク質レベルを測定する製剤をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の糖尿病網膜症の診断用組成物。
【請求項5】
前記複合マーカーのmRNAレベルを測定する製剤は、前記複合マーカーの遺伝子に特異的に結合するプライマーペア、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドであることを特徴とする請求項3または4に記載の糖尿病網膜症の診断用組成物。
【請求項6】
前記複合マーカーのタンパク質レベルを測定する製剤は、前記複合マーカーのタンパク質またはペプチド断片に特異的に結合する抗体、相互作用タンパク質、リガンド、ナノ粒子(nanoparticles)またはアプタマー(aptamer)であることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の糖尿病網膜症の診断用組成物。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の糖尿病網膜症の診断用組成物を含む、糖尿病網膜症の診断用キット。
【請求項8】
前記キットは、RT-PCR(Reverse transcription polymerase chain reaction)キット、DNAチップキット、ELISA(Enzymelinked immunosorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットであることを特徴とする請求項7に記載の糖尿病網膜症の診断用キット。
【請求項9】
(a)患者の生物学的試料から請求項1または2に記載の糖尿病網膜症の診断用複合マーカーのmRNAまたはタンパク質レベルを測定する段階と、
(b)前記mRNAまたはタンパク質発現レベルを対照群試料と比較する段階と、を含む、糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法。
【請求項10】
前記糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法は、患者の年齢、BMI(body mass index)、喫煙の有無、Hb1Ac検査結果、インスリン治療の有無、高血圧の有無、高脂血症の有無および心血管疾患の有無からなる群から選択された1種以上の臨床情報をさらに含んで対照群と比較することを特徴とする請求項9に記載の糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)の診断用複合マーカーおよびその用途に関し、より詳細には、糖尿病網膜症の診断に特異的な2個以上の血液マーカーで構成されていて、診断能が増加した糖尿病網膜症の診断用複合マーカーに関する。また、前記複合マーカーを用いた糖尿病網膜症の診断用組成物、診断キットおよび糖尿病網膜症の診断に必要な情報を提供する方法に関する。
[背景技術]
【0002】
糖尿病網膜症(diabetic retinopathy,DRまたはDMR)は、網膜の微細血管が損傷したときに現れる、糖尿病の代表的な合併症であり、加齢黄斑変性、緑内障と共に眼科3大失明疾患の一つである。韓国健康保険審査評価院によれば、糖尿病患者は、2012年に約200万人から2016年に約245万人に21%程度増加したが、糖尿病網膜症の患者数は、2012年に約26万人から2016年に33万6000人に38%に増加して、糖尿病より増加幅が大きかった。
【0003】
糖尿によって血糖が高まるに伴って、持続的な高血糖によって網膜血管の微細循環に障害が起こって、眼球の後半部の網膜に栄養を供給する血管が狭くなったり詰まったりして、老廃物が蓄積されて出血が発生する。当該部位に異常な新生血管が生じることで、正常な血管機能をせず、出血を起こすことによって、糖尿病網膜症が発生することになる。
【0004】
糖尿病網膜症は、深刻化程度によって非増殖性糖尿病網膜症(non-proliferative diabetic retinopathy,NPDR)と増殖性糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy,PDR)とに分けられる。また、NPDRの場合は、程度によって軽症(mild)、中等度(moderate)および重症(severe)NPDRに分類される。非増殖性糖尿病網膜症は、網膜の出血、毛細血管瘤、綿花状白斑などの所見が見られるが、長期間良い視力を維持する。増殖性糖尿病網膜症は、網膜に新生血管が生成され、該血管が破裂すると、硝子体腔内深刻な出血を惹起し、時間の経過とともに吸収されるが、線維性組織に変わって、後ほどには、牽引性網膜剥離および再出血が発生して、永久的に失明を起こすことになる。
【0005】
糖尿病網膜症は、初期症状が殆どなくて早期診断が難しく、症状(視力低下、焦点喪失、眩しい)を示すときには、すでに病気が進行された状態であり、治療(レーザー、硝子体手術)にもかかわらず、深刻化して失明に至る患者が多い。ただし、発病初期に適切な治療を受け、血糖管理を徹底すれば、視力維持が可能なので、糖尿病網膜症の早期発見と抑制および高危険群の早期治療に対する必要性が台頭している。しかしながら、まだ正確な病因は明らかにされておらず、網膜症の進行程度を判断するバイオマーカーも非常に限定的であるという問題点がある。
【0006】
これより、本発明者らは、感度および特異度が高い血液タンパク質マーカーを発掘し、これを複合的に使用して糖尿病網膜症の早期診断能を高めるために努力した結果、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む複合マーカーの糖尿病網膜症の診断効率に優れていることを確認し、本発明を完成した。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
【0007】
本発明の目的は、糖尿病網膜症の診断に特異的な血液マーカーを含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記糖尿病網膜症の診断用複合マーカーを用いた糖尿病網膜症の診断用組成物または診断キットを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記糖尿病網膜症の診断用複合マーカーを用いた糖尿病網膜症の診断に必要な情報を提供する方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーを提供する。
【0011】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことができる。
【0012】
また、本発明は、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーのmRNAまたはタンパク質レベルを測定する製剤を含む糖尿病網膜症の診断用組成物を提供する。
【0013】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一実施例において、前記複合マーカーのmRNAレベルを測定する製剤は、前記マーカーの遺伝子に特異的に結合するプライマーペア、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドでありうる。
【0015】
本発明の好ましいさらに他の一実施例において、前記複合マーカーのタンパク質レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはペプチド断片に特異的に結合する抗体、相互作用タンパク質、リガンド、ナノ粒子(nanoparticles)またはアプタマー(aptamer)を含むことができる。
【0016】
また、本発明は、前記糖尿病網膜症の診断用組成物を含む糖尿病網膜症の診断用キットを提供する。
【0017】
本発明の好ましい一実施例において、前記キットは、RT-PCR(Reverse transcription polymerase chain reaction)キット、DNAチップキット、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットでありうる。
【0018】
また、本発明は、(a)患者の生物学的試料からMBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーのmRNAまたはタンパク質レベルを測定する段階と、
(b)前記mRNAまたはタンパク質発現レベルを対照群試料と比較する段階と、を含む糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法を提供する。
【0019】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一実施例において、前記糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法は、患者の年齢、BMI(body mass index)、喫煙の有無、Hb1Ac検査結果、インスリン治療の有無、高血圧の有無、高脂血症の有無および心血管疾患の有無からなる群から選択された1種以上の臨床情報をさらに含んで対照群と比較することができる。
【0021】
本発明の好ましいさらに他の一実施例において、前記糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法は、複合マーカーの遺伝子発現レベルまたはタンパク質発現レベルが対照群に比べて増加すると、糖尿病網膜症と判定する段階をさらに含むことができる。
【0022】
本発明の好ましいさらに他の一実施例において、前記mRNA発現レベルの測定は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、RNaseプロテクションアッセイ、ノーザンブロッティングまたはDNAチップを用いて行うことができる。
【0023】
本発明の好ましいさらに他の一実施例において、前記タンパク質発現レベルの測定は、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring:MRM)、並行反応モニタリング(parallel reaction monitoring:PRM)、sequential windowed data independent acquisition of the total high-resolution(SWATH)、選択反応モニタリング(selected reaction monitoring:SRM)または免疫多重反応モニタリング(immuno multiple reaction monitoring:iMRM)を用いて行うことができる。
【0024】
本発明の好ましいさらに他の一実施例において、前記段階(b)の分析は、統計的分析方法によって行われてもよい。
【0025】
本発明の好ましいさらに他の一実施例において、前記統計的分析方法は、線形または非線形回帰分析方法、線形または非線形分類(classification)分析方法、ロジスティック回帰分析方法(logistic regression)、分散分析(Analysis of Variance;ANOVA)、神経網分析方法、遺伝的分析方法、サポートベクターマシン分析方法、階層分析またはクラスタリング分析方法、決定ツリーを用いた階層アルゴリズムまたはカーネル主成分(Kernel principal component)分析方法、マルコフブランケット(Markov Blanket)分析方法、再帰的特徴消去(recursive feature elimination)またはエントロピーベース再帰的特徴消去分析方法、前方フローティングサーチ(floating search)または後方フローティングサーチ(floating search)分析方法、およびこれらの組み合わせからなる群から選択できる。
[発明の効果]
【0026】
本発明の糖尿病網膜症の診断用複合マーカーは、他のマーカーの組み合わせに比べて感度および診断能に優れていることを確認したと共に、複合マーカーのタンパク質定量値と基本的な臨床情報を結合して分析すると、初期糖尿病網膜症で高い診断能を示すことを確認した。また、本発明の複合マーカーは、血液タンパク質として生検を用いることなく、患者の血漿を用いて簡単に分析できるので、糖尿病網膜症の早期診断に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】複合マーカーのタンパク質定量値および全体糖尿病網膜症患者の基本的な臨床情報を結合してロジスティック回帰モデル(A)およびT検定(B)で統計処理して分析したデータである(DMR:糖尿病網膜症、Non DMR:非糖尿病網膜症)。
図2】複合マーカーのタンパク質定量値および非増殖性糖尿病網膜症患者の基本的な臨床情報を結合してロジスティック回帰モデル(A)およびT検定(B)で統計処理して分析したデータである(NPDR:非増殖性糖尿病網膜症、Non DMR:非糖尿病網膜症)。
図3】複合マーカーのタンパク質定量値および増殖性糖尿病網膜症患者の基本的な臨床情報を結合してロジスティック回帰モデル(A)およびT検定(B)で統計処理して分析したデータである(PDR:増殖性糖尿病網膜症、Non DMR:非糖尿病網膜症)。
図4】複合マーカーのタンパク質定量値および段階別の非増殖性糖尿病網膜症患者の基本的な臨床情報を結合してT検定で統計処理して分析したデータである。Aは、非糖尿病網膜症(Non DMR)および軽度の非増殖性糖尿病網膜症(mild NPDR)を比較したデータであり、Bは、非糖尿病網膜症(Non DMR)および中等度の糖尿病網膜症(moderate NPDR)を比較したデータであり、Cは、非糖尿病網膜症(Non DMR)および重度の糖尿病網膜症(severe NPDR)を比較したデータである。
図5】本発明で確認した13個のマーカーのうち、MLB2、IGFBP2、LGALS3BPおよびPNLIPの組み合わせ(組み合わせ1)およびADAMTSL2、CP、DDI、FCN2、SIGLEC14、SELE、THBS1、ZG16BおよびCFHの組み合わせ(組み合わせ2)によるタンパク質定量値および全体糖尿病網膜症患者の基本的な臨床情報を結合してロジスティック回帰モデルで統計処理して分析したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明は、一態様において、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーに関する。
【0030】
本発明において使用される用語「診断」は、病理状態の存在または特徴を確認することを意味する。本発明の目的上、診断は、糖尿病網膜症の発病の有無を確認することである。
【0031】
本発明において使用される用語「診断用マーカー」とは、正常対照群(糖尿病網膜症でない個体)に比べて糖尿病網膜症を有する個体で遺伝子発現レベルまたはタンパク質発現レベルの有意的な増加または減少の様相を示すポリペプチドまたは核酸(例:mRNAなど)、脂質、糖脂質、糖タンパク質、糖(単糖類、二糖類、オリゴ糖類など)などのような有機生体分子などを含む。
【0032】
糖尿病網膜症は、進行度によって初期の非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)と後期の増殖性糖尿病網膜症(PDR)とに分けられる。非増殖性糖尿病網膜症は、血管が発達しない特徴がある。増殖性糖尿病網膜症は、血管が発達するなどその機序において異なっていて、非増殖性糖尿病網膜症が必ず増殖性糖尿病網膜症に進行されるものではないので、増殖性糖尿病網膜症の診断用マーカーと知られたマーカーであるとしても、必ず非増殖性糖尿病網膜症の診断用マーカーとして使用されるわけではない。
【0033】
本発明の複合マーカーは、非増殖性糖尿病網膜症および増殖性糖尿病網膜症の両方を特異的に診断でき、特に、非増殖性糖尿病網膜症の初期段階を診断できる。
【0034】
本発明において、前記複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことを特徴とする。
【0035】
ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)は、ADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)様タンパク質サブファミリーのメンバーであり、細胞表面と細胞外基質をバインディングする糖タンパク質である。ADAMTSL2は、LTBP1(latent transforming growth factor beta binding protein 1)と相互作用し、LTBP1タンパク質は、細胞の成長および分裂を調節する重要な成長因子であるTGF-β1の貯蔵に関与するので、ADAMTSL2は、TGF-β1の利用可能性を調節する。また、ADAMTSL2は、がん組織で発現するので、がん診断のためのマーカーとして使用される。
【0036】
本発明において、前記ADAMTSL2は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号1のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0037】
Cp(Ceruloplasmin)は、血液で銅を運ぶ主タンパク質であり、鉄代謝において重要な役割をする。健康なヒトの血漿で約95%以上の銅がセルロプラスミン(Ceruloplasmin)の形態で存在する。
【0038】
本発明において、前記Cpは、好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号3のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0039】
CFH(complement factor H)は、補体活性化を調節して免疫反応を維持するのに必須の役割をする糖タンパク質である。細胞表面の同じ糖鎖構造と結合して補体活性化および増幅を防ぐ補体抑制剤の役割をする。
【0040】
本発明において、前記CFHは、好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号3のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0041】
DDI2(Protein DDI1 homolog2)は、内部ペプチド切断酵素であり、細胞成長およびDNA複製調節に関与するNrf1(nuclear respiratory factor 1)を活性化してプロテアソーム異常によるタンパク質分解(degradation)を補完する。
【0042】
本発明において、前記DDI2は、好ましくは、配列番号4のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号4のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0043】
FCN2(Ficolin 2)は、オリゴマーのレクチンの一種であり、短いN末端部分-コラーゲン(collagen)様ドメインとフィブリノーゲン(fibrinogen)様ドメインとから構成されている。主として肝で発現し、バクテリア細胞壁のN-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamin)と結合して、マンノース結合(mannose binding)タンパク質のようにオプソニン(opsonin)の役割をすることによって、補体系のレクチン経路で重要な役割をすることが知られている。
【0044】
本発明において、前記FCN2は、好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号5のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0045】
IGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)は、インスリン様成長因子(Insulin like growth factor;IGF)と結合して細胞内多様なプロセスを調節し、それによって血管生成(angiogenesis)を調節する。また、多様ながん(前立腺および乳がんなど)でがん細胞の成長を促進することが知られている。
【0046】
本発明において、前記IGFBP2は、好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号6のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0047】
LGALS3BP(galectin-3-binding protein)は、LGALS3BP遺伝子によりコード化されるタンパク質であり、Mac-2(human macrophage-associated lectin)およびガレクチン1(galectin 1)に特異的に結合する。LGALS3BPは、がん患者およびHIVに感染した患者の血清で増加することが知られており、NK(natural killer)細胞およびLAK(lymphokine-activated killer)細胞毒性と関連した免疫反応に関与する。
【0048】
本発明において、前記LGALS3Bは、好ましくは配列番号7のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号7のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0049】
MBL2(mannose-binding protein C)は、マンノース結合レクチン(Mannose-binding lectin;MBL)またはマンナン結合タンパク質(mannan-binding protein;MBP)とも呼ばれる。MBL2は、オリゴマー構造(400~700kDa)を有し、略30kDaから構成される3個の同じペプチド鎖を含むサブユニットから構成される。感染に対する反応により肝で生成され、急性期タンパク質と呼ばれる他の多くの要因の一部に該当する。
【0050】
本発明において、前記MBL2は、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号8のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0051】
PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)は、トリグリセリドのエステル結合を加水分解する脂肪分解酵素群であり、すい臓から分泌される酵素である。PNLIPは、すい臓ダクトシステムを通して十二指腸に分泌されるので、血清内濃度が低いことが知られているが、すい臓炎やすい臓腺がんのようなすい臓機能が極度に破壊されると、PNLIPを含むすい臓酵素が血清に分泌されるので、PNLIP血清濃度を測定して急性すい臓炎を診断できることが知られている。
【0052】
本発明において、前記PNLIPは、好ましくは配列番号9のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号9のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0053】
SELE(E-selectin)は、CD62E(CD62 antigen-like family member E)、ELAM-1(endothelial-leukocyte adhesion molecule 1)またはLECAM2(leukocyte-endothelial cell adhesion molecule 2)と知られており、インターロイキン1β、腫瘍壊死因子、リポ多糖類により活性化した血管内皮細胞に4~12時間を頂点として一過性で発現、誘導する細胞接着分子である。SELEは、炎症組織内血管内皮細胞に強く発現し、好中球と単球が血管内皮細胞の上を転がる現象を媒介することによって、これら細胞の炎症部位への浸潤を促進する。がん細胞の血管内皮細胞との接着にも関与することが知られている。
【0054】
本発明において、前記SELEは、好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0055】
SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)は、SIGLEC(Sialic acid-binding immunoglobulin-type lectins)のサブファミリーの一つであり、SIGLECは、シアル酸と結合する細胞表面タンパク質であり、主に免疫細胞の表面で発現する。SIGLECとシアル酸のタンパク質相互作用は、免疫システムをオン、オフさせるスイッチの役割をし、がん細胞も、SIGLEC-シアル酸反応を用いて免疫反応に対する抵抗性を獲得することが知られている。
【0056】
本発明において、前記SIGLEC14は、好ましくは配列番号11のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号11のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0057】
THBS1(Thrombospondin-1)は、トロンボスポンジンファミリー(thrombospondin family)の一つであり、新血管生成と腫瘍生成を抑制する糖タンパク質である。プラスミノーゲン(plasminogen)、ウロキナーゼ(urokinase)、MMP、トロンビン(thrombin)およびカテプシン(cathepsin)などの血管生成と関連したプロテアーゼと結合して内皮細胞の癒着、移動、生長を調節することが知られている。
【0058】
本発明において、前記THBS1は、好ましくは配列番号12のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号12のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0059】
ZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)は、PAUF(pancreatic adenocarcinoma upregulated factor)と知られており、炭水化物と結合し、内部上皮細胞、血管生成および浸透(permeability)を活性化させることが知られている。
【0060】
本発明において、前記ZG16Bは、好ましくは配列番号13のアミノ酸配列を含むことができるが、配列番号13のアミノ酸配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一の配列を含むものであってもよい。
【0061】
しかしながら、前記マーカーは、糖尿病網膜症の診断に使用できることを開示した従来技術は知られておらず、特に、MBL2、PNLIP、LGALS3BPおよびIGFBP2の複合マーカーを用いて糖尿病網膜症の診断能を増加させることができることを開示した技術については全く知られていない。
【0062】
本発明は、他の態様において、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)を含む糖尿病網膜症の診断用複合マーカーのmRNAまたはタンパク質レベルを測定する製剤を含む糖尿病網膜症の診断用組成物に関する。
【0063】
前記複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことを特徴とする。
【0064】
本発明において、前記複合マーカーのmRNAレベルを測定する製剤は、前記マーカーの遺伝子に特異的に結合するプライマーペア、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドであることを特徴とし、前記遺伝子の核酸情報がGeneBankなどに知られているので、当業者は、前記配列を基にこれらのプライマーペア、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドをデザインすることができる。
【0065】
本発明において使用される用語「mRNA発現レベルの測定」とは、糖尿病網膜症を診断するために糖尿病網膜症が疑われる患者から分離した生物学的試料で糖尿病網膜症の診断用遺伝子のmRNA存在の有無と発現程度を確認する過程でmRNAの量を測定する。
【0066】
本発明において使用される用語「プライマー」は、標的遺伝子配列を認知する断片であり、正方向および逆方向のプライマーペアを含むが、好ましくは、特異度および感度を有する分析結果を提供するプライマーペアである。プライマーの核酸配列が試料内存在する非標的配列と不一致する配列であるから、相補的なプライマー結合部位を含有する標的遺伝子配列のみを増幅し、非特異的増幅を誘発しないプライマーである場合、高い特異度が付与されうる。
【0067】
本発明において使用される用語「プローブ」とは、試料内の検出しようとする標的物質と特異的に結合できる物質を意味し、前記結合を通じて特異的に試料内の標的物質の存在を確認できる物質を意味する。プローブの種類は、当業界において通常使用される物質であり、制限はないが、好ましくは、PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNAまたはDNAであってもよく、最も好ましくは、PNAである。より具体的には、前記プローブは、バイオ物質であり、生物に由来したり、これと似ているものまたは生体外で製造されたものを含み、例えば、酵素、タンパク質、抗体、微生物、動植物細胞および器官、神経細胞、DNA、およびRNAであってもよく、DNAは、cDNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチドを含み、RNAは、ゲノムRNA、mRNA、オリゴヌクレオチドを含み、タンパク質の例としては、抗体、抗原、酵素、ペプチドなどを含むことができる。
【0068】
本発明において使用される用語「アンチセンス」は、アンチセンスオリゴマーがワッソン-クリック塩基対の形成によってRNA内の標的配列とハイブリダイゼーションされて、標的配列内で典型的にmRNAとRNA:オリゴマーヘテロ二量体の形成を許容する、ヌクレオチド塩基の配列およびサブユニット間バックボーンを有するオリゴマーを意味する。オリゴマーは、標的配列に対する正確な配列相補性または擬似相補性を有することができる。
【0069】
本発明において、前記複合マーカーのタンパク質レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはペプチド断片に特異的に結合する抗体、相互作用タンパク質、リガンド、ナノ粒子(nanoparticles)またはアプタマー(aptamer)であることを特徴とする。
【0070】
本発明において使用される用語「タンパク質発現レベルの測定」とは、糖尿病網膜症を診断するために生物学的試料で糖尿病網膜症の診断用遺伝子から発現したタンパク質の存在の有無と発現程度を確認する過程である。
【0071】
本発明において使用される用語「抗体」は、抗原と特異的に結合して抗原-抗体反応を起こす物質を示す。本発明の目的上、抗体は、本発明の糖尿病網膜症の診断用複合バイオマーカーに対して特異的に結合する抗体を意味する。本発明の抗体は、多クローン抗体、単クローン抗体および組換え抗体を全部含む。前記抗体は、当業界において広く公知となった技術を用いて容易に製造できる。例えば、多クローン抗体は、前記糖尿病網膜症マーカータンパク質抗原を動物に注射し、動物から採血して、抗体を含む血清を収得する過程を含む当業界において広く公知となった方法によって生産できる。このような多クローン抗体は、ヤギ、ウサギ、羊、猿、馬、豚、牛、犬などの任意の動物から製造できる。また、単クローン抗体は、当業界において広く公知となったハイブリドーマ方法(hybridoma method;Kohler and Milstein,European Journal of Immunology 6:511-519,1976参照)、またはファージ抗体ライブラリー技術(Clackson et al,Nature,352:624-628,1991;Marks et al,J.Mol.Biol.,222:58,1-597,1991参照)を用いて製造できる。前記方法で製造された抗体は、ゲル電気泳動、透析、塩沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどの方法を用いて分離、精製できる。また、本発明の抗体は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を持つ断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)およびFvなどがある。また、本発明の抗体は、商業的に入手したものであってもよい。
【0072】
本発明において使用される用語「PNA(Peptide Nucleic Acid)」は、人工的に合成された、DNAまたはRNAと似た重合体を示す。DNAは、リン酸-リボース糖骨格を有するのに対し、PNAは、ペプチド結合により連結された繰り返されたN-(2-アミノエチル)-グリシン骨格を有し、そのため、DNAまたはRNAに対する結合力と安定性が大きく増加して、分子生物学、診断分析およびアンチセンス治療法に使用されている。PNAは、文献(Nielsen PE et al,Science,254(5037):1497-500,1991)に詳細に開示されている。
【0073】
本発明において「アプタマー」は、オリゴ核酸またはペプチド分子であり、アプタマーの一般的な内容は、文献(Bock LC et al.,Nature,355(6360):5646,1992;Hoppe-Seyler F and Butz K,J Mol Med.,78(8):42630,2000;Cohen BA et al.,Proc Natl Acad Sci USA.,95(24):142727,1998)に詳細に開示されている。
【0074】
本発明は、さらに他の態様において、前記糖尿病網膜症の診断用組成物を含む糖尿病網膜症の診断用キットに関する。
【0075】
前記キットは、当業界に知られている通常の製造方法によって製造できる。前記キットは、例えば、凍結乾燥形態の抗体と緩衝液、安定化剤、不活性タンパク質などを含むことができる。
【0076】
前記キットは、検出可能な標識をさらに含むことができる。用語「検出可能な標識」は、標識がない同じ種類の分子の中で標識を含む分子を特異的に検出するようにする原子または分子を意味する。前記検出可能な標識は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、相互作用タンパク質、リガンド、ナノ粒子、またはアプタマーに付着したものであってもよい。前記検出可能な標識は、放射性核種(radionuclide)、フルオロフォア(fluorophore)、酵素(enzyme)を含むことができる。
【0077】
前記キットは、当業界で知られた多様な免疫分析法または免疫染色法によって用いられる。前記免疫分析法または免疫染色法は、放射能免疫分析、放射能免疫沈降、免疫沈降、ELISA、キャプチャーELISA、阻害または競合分析、サンドイッチ分析、フローサイトメトリー分析、免疫蛍光染色および免疫アフィニティー精製を含むことができる。好ましくは、前記キットは、RT-PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)キット、DNAチップキット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(multiple reaction monitoring)であってもよい。
【0078】
また、前記キットは、質量分析に用いられる。この場合、前記タンパク質の特定アミノ酸残基は、ミリストイル化(myristoylation)、イソプレニル化、プレニル化、グリピカン化(glypiation)、リポイル化 (lipoylation)、アシル化、アルキル化、メチル化、脱メチル化、アミド化、ユビキチン化 、リン酸化、脱アミド化、グリコシル化、酸化、またはアセチル化などのような変形を有することができる。
【0079】
本発明は、さらに他の態様において、(a)患者の生物学的試料からMBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、LGALS3BP(galectin-3-binding protein)およびIGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)から構成される糖尿病網膜症の診断用複合マーカーのmRNAまたはタンパク質レベルを測定する段階と、
(b)前記mRNAまたはタンパク質発現レベルを対照群試料と比較する段階と、を含む糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法に関する。
【0080】
本発明において、前記段階(a)の複合マーカーは、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、Cp(Ceruloplasmin)、CFH(complement factor H)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospondin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)からなる群から選択された1種以上のマーカーをさらに含むことを特徴とする。
【0081】
前記方法において「生物学的試料(biological sample)」とは、糖尿病網膜症の発病によってタンパク質発現レベルまたは遺伝子発現レベルが異なる組織、細胞、血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液または尿のような試料などを意味し、好ましくは、血液、血漿、血清を意味する。
【0082】
前記糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法は、患者の年齢、BMI(body mass index)、Hb1Ac検査結果、インスリン治療の有無、喫煙の有無、高血圧の有無、高脂血症の有無および心血管疾患の有無からなる群から選択された1種以上の臨床情報をさらに含むことができる。
【0083】
また、糖尿病網膜症の診断のための情報提供方法は、複合マーカーの遺伝子発現レベルまたはタンパク質発現レベルが対照群に比べて増加すると、糖尿病網膜症と判定する段階をさらに含むことができる。
【0084】
前記段階(a)のmRNA発現レベルの測定は、前記複合マーカーの遺伝子に特異的に結合するプライマーペア、プローブまたはアンチセンスヌクレオチドを用いて測定および比較できる。
【0085】
前記mRNA発現レベルの測定または比較分析方法としては、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、RNaseプロテクションアッセイ、ノーザンブロッティングまたはDNAチップなどが使用できるが、本発明は、これらに制限されるものではない。前記測定方法を通じて正常対照群におけるmRNA発現量と糖尿病網膜症患者のmRNA発現量を確認でき、これらの発現量程度を比較することによって、糖尿病網膜症の発病の有無を診断または予測できる。
【0086】
前記段階(a)のタンパク質発現レベルの測定は、タンパク質またはペプチド断片に特異的に結合する抗体、相互作用タンパク質、リガンド、ナノ粒子(nanoparticles)またはアプタマー(aptamer)を用いて測定および比較できる。
【0087】
タンパク質発現レベルの測定または比較分析方法としては、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDITOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、2次元電気泳動分析、液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry,LC-MS)、LCMS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロット、およびELISA(enzyme linked immunosorbentassay)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない
【0088】
より好ましくは、本発明では、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring:MRM)、並行反応モニタリング(parallel reaction monitoring:PRM)、sequential windowed data independent acquisition of the total high-resolution(SWATH)、選択反応モニタリング(selected reaction monitoring:SRM)または免疫多重反応モニタリング(immuno multiple reaction monitoring:iMRM)を用いて測定できる。
【0089】
前記MRMは、物質の正確な断片を決定してこれを質量分析計で分離した後、一度分離されたイオンの中で特定のイオンをもう一度選択して連続的に連結された検出器を用いてその数を得る方法である。MRM方法を用いる場合、正常ヒト個体と糖尿病網膜症が疑われる個体の血液試料で当該タンパク質またはその断片を質量分析計を用いて定量できる。
【0090】
前記段階(b)の分析は、診断の正確度を向上させるために統計的方法またはアルゴリズムを使用して分析でき、線形または非線形回帰分析方法、線形または非線形分類(classification)分析方法、ロジスティック回帰分析方法(logistic regression)、分散分析(Analysis of Variance;ANOVA)、神経網分析方法、遺伝的分析方法、サポートベクターマシン分析方法、階層分析またはクラスタリング分析方法、決定ツリーを用いた階層アルゴリズムまたはカーネル主成分(Kernel principal component)分析方法、マルコフブランケット(Markov Blanket)分析方法、再帰的特徴消去(recursive feature elimination)またはエントロピーベース再帰的特徴消去分析方法、前方フローティングサーチ(floating search)または後方フローティングサーチ(floating search)分析方法、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される分析方法を用いることができる。本発明では、好ましくは、前記統計的方法は、ロジスティック回帰(logistic regression)分析方法を使用したが、これに制限されるものではない。
【0091】
本発明の具体的な一具現例では、血漿タンパク中、糖尿病網膜症の診断のためのバイオマーカーの定量的検証のために155個の血漿試料を分析し(表1)、IGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、CFH(Complement factor H)、Cp(Ceruloplasmin)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、LGALS3BP(galectin 3 binding protein)、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospodin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)から構成される13個のマーカーを多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring:MRM)を用いて分析した。表2に示されたように、定量分析のために各マーカーに対するペプチドを選別してSISを用いてMRM-MS分析を行った。
【0092】
本発明の具体的な他の一具現例では、複合バイオマーカー群の結果および臨床情報を結合した場合、診断能の向上効果を確認するために、ロジスティック回帰モデルを用いてバイオマーカー発現量変換情報および臨床情報変換程度を入力して糖尿病網膜症に分類される確率値を推定した。表3に示されたように、臨床情報+MBL2+PNLIP+LGALS3BP+IGFBP2をベースとしてADAMTSL2、Cp、DDI2、FCN2、SELE、SIGLEC14、THBS1、ZG16BおよびCFHに対する発現程度を一つずつ追加して分析した結果、バイオマーカーの数が増加するにつれて糖尿病網膜症の診断能が増加することを確認した。
【0093】
また、図1図3および表4に示されたように、ロジスティック回帰モデルを用いて前記13個のマーカーに対するタンパク質定量値と基本的な臨床情報を結合して統計処理した結果、正常群と糖尿病網膜症(STAGE1、AUC=0.863)、正常群と非増殖性糖尿病網膜症(STAGE2、AUC=0.848)および正常群と増殖性糖尿病網膜症(STAGE3、AUC=0.879)に対する診断能に優れていることを確認した。
【0094】
また、図4に示されたように、T検定を通じて非増殖性糖尿病網膜症の色々な段階においても、正常群に比べて各段階で診断能に優れていることを確認した。
【0095】
本発明の具体的なさらに他の一具現例では、バイオマーカーの組み合わせによって診断能の差異が示すかを確認した。図5に示されたように、13個のターゲットのうちMBL2、PNLIP、LGALS3BPおよびIGFPB2の組み合わせ(組み合わせ1、AUC=0.783)が、他の9個のタンパク質であるADAMTSL2、Cp、FCN2、DDI2、SELE、SIGLEC14、THBS1、ZG16BおよびCFHの組み合わせよりも(組み合わせ2、AUC=0.713)高い診断能を有することを確認した。
【0096】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0097】
これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されると解されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明だろう。
【0098】
実施例1:糖尿病網膜症患者の選定および血漿の採取
糖尿病網膜症患者の血漿試料は、韓国の盆唐ソウル大学校病院の臨床試験審査委員会の承認を受けて採取した。血漿タンパクを用いてバイオマーカーの定量的検出のために、合計155個の血漿試料を分析し、分析対象である正常群(Non DMR)および糖尿病網膜症(DMR)疾患群の臨床的特徴は、下記の表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例2:ペプチドの選定およびMRM-MSを用いたペプチド分析
2-1:ペプチドの選定および合成ペプチドの設計
本発明では、糖尿病網膜症を診断するためのバイオマーカーとして、IGFBP2(insulin like growth factor binding protein 2)、ADAMTSL2(ADAMTS-like protein 2)、CFH(Complement factor H)、Cp(Ceruloplasmin)、DDI2(Protein DDI1 homolog2)、FCN2(Ficolin 2)、LGALS3BP(galectin 3 binding protein)、MBL2(mannose-binding protein C)、PNLIP(pancreatic triacylglycerol lipase)、SELE(E-selectin)、SIGLEC14(Sialic acid-binding Ig-like lectin 14)、THBS1(Thrombospodin-1)およびZG16B(Zymogen granule protein 16 homolog B)の13個を選別した。
【0101】
前記バイオマーカーに対するMRM分析を行うために、13個のバイオマーカーのタンパク質に対して特定的な電荷質量比(m/z)を有する代表ペプチドを選定し(Q1)、このペプチドを電気的な衝撃で破って発生する断片化イオン(fragmentation ion)のうち、最も強度が高いイオン(Q3)を選定した。
タンパク質当たり感度の高い1個以上のペプチドを測定し、これを基礎として質量分析計に注入して、各トランジション当たり破片化エネルギー最適値を得て、強度を基準として3個以上の上位断片化イオンを選択した(表2)。
【0102】
【表2】
【0103】
定量性を確認するために13個のタンパク質に該当するSIS(Stable-isotope labeled standard)ペプチドを用い、キャリブレーションを通じて線形性を確認する実験を用いてspiked heavy peptideの濃度を定めた。SISペプチドは、ペプチドC末端のリシン(Lys、K)やアルギニン(Arg、R)アミノ酸にある12Cと14Nを13Cと15Nに置換したペプチドである。これは、血液内に存在する内因性ペプチド(endogenous peptide)とは質量値が異なっているが、同一の配列を有することから、ペプチド疎水性(hydrophobicity)が同一なので、クロマトグラム上で同じ保持時間(retention time,RT)に溶出される。
【0104】
2-2:血漿試料の前処理およびMRM-MS分析
前記実施例1で収得した各血漿をそのまま使用したり、さらに正確なタンパク質定量をしたりするために、多量(high abundant)で存在するタンパク質14種(Albumin、IgG、Antitrypsin、IgA、Transferrin、Haptoglobin、Fibrinogen、Alpha2-Macroglobulin、Alpha1-Acid glycoprotein、IgM、Apolipoprotein AI、Apolipoprotein AII、Complement C3、Transthyretin)を除去する欠損過程(depletion)を実施した。欠損は、MARS(Multiple affinity removal system、Agilent、米国)カラムを製造社の方法によって用いて14種のタンパク質を除去し、残りの少量で存在するタンパク質を溶出させて分析に使用した。この溶出された欠損試料に8Mになるように尿素(urea)を添加した後、80mMになるように2-カルボキシエチルトリスホスフィン(Tris(2-carboxyethyl)-phosphine、TECP)および320mMになるように2-クロロアセトアミド(2-chloroacetamide)を添加し、25℃で1時間反応させて、二硫化結合を還元およびアルキル化をした。そこへ血漿タンパク質とLys-C(wako)酵素の質量比が100:1になるようにLys-C酵素を入れ、室温で4時間反応させた。その後、50mMトリス(Tris、pH8.0)溶液で10倍希釈し、シーケンシングが可能なレベルのトリプシン(Promega)をタンパク質とトリプシンの質量比が50:1になるように添加して、37℃で12時間以上反応させて、ペプチド切片に分解した。0.3%になるようにギ酸(formic acid)溶液を加えて、pH2.0以下に酸性化させ、トリプシン反応を中止させた。
【0105】
そこへ脱塩化を進め、前記実施例2-1で定めた内部標準物質(SISペプチド)でheavy-labeledペプチドを添加(spiking)して、MRM分析を施行した。Nano ultra 2D plus(Eksigent)に結合されており、トリプル四重極質量分析計QTarp 5500(SCIEX)装備を用いて各選定タンパク質のトランジションに対するscheduled MRMモードでモニタリングした。
【0106】
具体的には、5500ボルトのイオン電圧を使用し、かつ、Q1(Quadruple 1)とQ3(Quadruple 3)における分解能をユニット(unit)に設定した。トランジションに総サイクル時間が1.5秒になるように設定した。20ユニット(unit)の霧化ガス(nebulizing gas)を使用し、ヒーター温度を350℃に設定した。バッチ(batch)間のばらつきを補正するために、各試料に内部標準物質をスパイクし、同時にモニタリングした。
【0107】
2-3:データ分析
スカイライン(Skyline;McCoss lab、University of Washington、米国)を用いて生データ(raw data)をプロセッシングして、トランジションのピーク面積を計算した。内部標準物質ペプチド(endogenous/heavy labeled peptide)に対してピーク面積を使用して相対濃度を比較した。このように測定された結果値を用いて各タンパク質ペプチドの疾患予測能力(predictive ability)を測定するために、T検定(T-test)およびAUROC(Area under the receiver operating characteristic)数値を生成し、複合バイオマーカー群の結果と臨床情報が結合した予測能力を確認するために、ロジスティック回帰分析(logistic regression)モデルを用いて前記発現量変換情報および前記表1の臨床情報変換程度を入力して糖尿病網膜症に分類される確率値を推定した。MedCal ver 17.1(MedCalc)を使用してすべての統計分析を行った。
【0108】
前記臨床情報には、問診を通じて確保した身長と体重によって計算されたボディー・マス・インデックス(Body Mass Index,BMI)、喫煙の有無、高脂血症の有無、高血圧の有無、心血管疾患の有無、糖化ヘモグロビン(Hb1Ac)の数値を反映した。その中で、有無を用いた情報は、有=1、無=0(禁煙=0.5)に変換して反映した。
【0109】
実施例3:複合バイオマーカー群の結果および臨床情報の結合による診断能向上の確認
本発明では、13個の複合バイオマーカー群の結果および臨床情報を結合した場合、診断能の向上効果を確認するために、ロジスティック回帰モデルを用いてバイオマーカー発現量変換情報および臨床情報変換程度を入力して糖尿病網膜症に分類される確率値を推定した。
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
表3に示されたように、臨床情報+MBL2+PNLIP+LGALS3BP+IGFBP2を基本としてADAMTSL2、Cp、FCN2、DDI2、SELE、SIGLEC14、THBS1、ZG16BおよびCFHに対する発現程度を一つずつ追加して分析した結果、バイオマーカーの数が増加するにつれて、糖尿病網膜症の診断能(AUC)が増加することを確認した。
【0113】
また、図1図3および表4に示されたように、ロジスティック回帰モデルを用いて前記13個のマーカーに対するタンパク質定量値と基本的な臨床情報を結合して統計処理した結果、正常群と糖尿病網膜症(STAGE1、AUC=0.863)、正常群と非増殖性糖尿病網膜症(STAGE2、AUC=0.848)および正常群と増殖性糖尿病網膜症(STAGE3、AUC=0.879)に対する診断能に優れていることを確認した。
【0114】
また、図4に示されたように、T検定を通じて非増殖性糖尿病網膜症の色々な段階においても、正常群に比べて各段階で診断能に優れていることを確認した。
【0115】
実施例4:バイオマーカーの組み合わせによる糖尿病網膜症の診断能の確認
本発明では、13個のバイオマーカーの組み合わせによって糖尿病網膜症の診断能の差異が示すかを確認した。13個のバイオマーカーのうち、MBL2、PNLIP、LGALS3BPおよびIGFBP2の組み合わせおよびADAMTSL2、Cp、FCN2、DDI2、SELE、SIGLEC14、THBS1、ZG16BおよびCFHの組み合わせに分けて分析を行い、前記実施例3のSTAGE1と同一に臨床情報とともに分析を行った。
【0116】
図5に示されたように、13個のバイオマーカーのうちMBL2、PNLIP、LGALS3BPおよびIGFBP2の組み合わせ(組み合わせ1、AUC=0.784)が、他の9個のタンパク質であるADAMTSL2、Cp、FCN2、DDI2、SELE、SIGLEC14、THBS1、ZG16BおよびCFHの組み合わせ(組み合わせ2、AUC=0.713)より高い診断能を示すことを確認した。
【0117】
[産業上の利用可能性]
本発明で提供する糖尿病網膜症の診断用複合マーカーは、他のマーカーの組み合わせに比べて感度および診断能に優れていると共に、複合マーカーのタンパク質定量値と基本的な臨床情報を結合して分析すると、初期糖尿病網膜症で高い診断能を示すので、糖尿病網膜症の早期診断に有用に使用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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