(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】レール走行装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/02 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
B61B13/02 C
(21)【出願番号】P 2022106735
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2022-10-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512057460
【氏名又は名称】株式会社 カットランドジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3025751(JP,U)
【文献】特開平11-034865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に連続する複数個の孔が設けられた板状のレール上を進退動するレール走行装置であって、
基部に取付けられたモータと、
前記モータのトルクによって回転するように構成され、前記孔に噛合う歯を具える平歯車と、
前記平歯車に対し、該平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、前記平歯車の軸心と前記レールまでの距離が最短になる位置の、前記レールに対し、前記平歯車の反対側から前記レールに接する一対の保持部材と、
前記平歯車に対し、該平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、前記平歯車の軸心と前記レールまでの距離が最短になる位置の、前記レールに対し、前記平歯車の同じ側から前記レールに接する一対の案内部材を具え
、
前記保持部材が、前記平歯車を貫通する軸に連結され、
前記軸が、前記基部に所定の範囲で回動可能に設けられ、一方向に付勢されているレバーに連結され、
前記レバーを他方向に回動させると前記保持部材が互いに離間する方向に開くように構成されている、
レール走行装置。
【請求項2】
前記保持部材及び案内部材が、前記孔に前記平歯車の歯が歯先のたけの範囲で噛合う位置で前記レールに接する、請求項1のレール走行装置。
【請求項3】
前記基部に対する角度が可変に連結されている支持部材をさらに具え、
前記支持部材が、前記レールの表面と裏面を挟持する挟持部材を具える、請求項1又は2のレール走行装置。
【請求項4】
前記支持部材が、前記レールの側面に接する側面接触部材をさらに具える、請求項
3のレール走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のレールの上を進退動する装置(以下、単に、「レール走行装置」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動溶接装置や、溶接ビードを切削する自動切削装置等では、走行経路として板状のレールを使用し、レール上を電動で進退動させるものがある。このようなタイプのレール走行装置としては、例えば、以下のものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1の配管用レール装置は、配管の周面を周回するように配置される、板状のレールと、レールを弾性的に支持する、スプリングとマグネットを内蔵した複数の台座と、レール走行装置を具える。これによれば、レールが弾性変形可能なため、取付対象として、平面状のものだけでなく、曲面状のものにも対応することができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなレール走行装置では、レールに孔が連続して設けられ、レール走行装置の歯車が回転しながらレールの孔に噛合うことにより、レール走行装置がレール上を進退動するように構成されている。しかし、曲面状としたレールの曲率が大きい場合や、レール走行装置に対する重力の影響により、歯車がレールの孔に噛合わず、或いは、浅く噛合い、レール走行装置が円滑に進退動しないという問題が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、前述した点に鑑み、板状のレール上を安定して確実に走行するレール走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向に連続する複数個の孔が設けられた板状のレール上を進退動するレール走行装置であって、
基部に取付けられたモータと、
前記モータのトルクによって回転するように構成され、前記孔に噛合う歯を具える平歯車と、
前記平歯車に対し、該平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、前記平歯車の軸心と前記レールまでの距離が最短になる位置の、前記レールに対し、前記平歯車の反対側から前記レールに接する一対の保持部材と、
前記平歯車に対し、該平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、前記平歯車の軸心と前記レールまでの距離が最短になる位置の、前記レールに対し、前記平歯車の同じ側から前記レールに接する一対の案内部材を具えるレール走行装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基部に取付けられたモータのトルクによって平歯車が回転し、平歯車の歯が板状のレールの長手方向に連続するように設けられた複数個の孔に順に噛合うことによって、基部をレールの長手方向に進退動させることができる。ここで、平歯車に対し、平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、平歯車の軸心とレールまでの距離が最短になる位置の、レールに対し、平歯車の反対側からレールに接する一対の保持部材と、平歯車に対し、平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、平歯車の軸心とレールまでの距離が最短になる位置の、レールに対し、平歯車の同じ側からレールに接する一対の案内部材を具えるから、平歯車とレールの距離を一定に保ち、平歯車の歯と孔を確実に噛合わせることができるので、平面状だけでなく、曲率の大きい曲面状のレール上であっても、さらに、レール走行装置がどのような姿勢であっても、安定して確実に走行するレール走行装置とすることができる。
【0009】
また、保持部材及び案内部材が、孔に平歯車の歯が歯先のたけの範囲で噛合う位置でレールに接する構成とすれば、平歯車の歯が孔に浅く又は深く噛合うことによる動作不良を防止することができ、レール上を円滑に進退動するレール走行装置とすることができる。
【0010】
また、保持部材が、平歯車を貫通する軸に連結され、当該軸が、基部に所定の範囲で回動可能に設けられ、一方向に付勢されているレバーに連結され、レバーを他方向に回動させると保持部材が互いに離間する方向に開くように構成すれば、レバーを他方向に回動させた状態で、孔に平歯車の歯を噛合せ、レバーを戻すことによってレール走行装置をレールに簡便に装着させることができる。
【0011】
また、基部に対する角度が可変に連結されている支持部材をさらに具え、支持部材が、レールの表面と裏面を挟持する挟持部材を具える構成とすれば、レールに対するレール走行装置の姿勢を安定させることができる。
【0012】
また、支持部材が、レールの側面に接する側面接触部材をさらに具える構成とすれば、レール走行装置がレール上を進退動中に、支持部材がレールから不意に外れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態のレール走行装置の正面図。
【
図4】
図3のレバーを他方向に回動させたときの図。
【
図7】本発明の一実施形態のレール走行装置を曲面状のレールの外周面側に装着したときの正面図。
【
図8】本発明の一実施形態のレール走行装置を曲面状のレールの内周面側に装着したときの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を
図1~8を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、レール走行機構100は、レール走行装置10と一対の支持部材50を具えている。レール走行装置10は、後述するように、板状のレールR1上を進退動する装置である。板状のレールR1は、例えば、板ばねで構成することができ、磁石などの設置部材70によって、取付対象に取付けられる。なお、図示しての説明は省略するが、レール走行装置10には、溶接機や切削機、監視装置などが取付けられ、取付対象を加工又は点検することができるように利用される。
【0016】
図2に示すように、レールR1の長手方向には、複数個の孔72が連続して直線状に設けられている。ここで、
図3を用いて、レール走行装置10が如何にしてレールR1に装着されているかを説明する。レール走行装置10の基部11は、平歯車42を回転可能に軸支している。平歯車42は、基部11に取付けられたモータMのトルクによって回転する。
【0017】
平歯車42の歯は、レールR1の孔72(
図2参照。)に噛合うように構成されている。よって、モータMが駆動し、平歯車42が回転すると、平歯車42の歯がレールR1の長手方向に連続するように設けられた複数個の孔72に順に噛合うので、これにより、基部11及びレール走行装置10は、レールR1の長手方向に進退動する。
【0018】
基部11は、一対の保持部材26,36を具えている。一対の保持部材26,36は、平歯車42に対し、平歯車42の軸方向の一方向側と他方向側に位置するように配置される。また、一対の保持部材26,36は、平歯車42の軸心とレールR1までの距離が最短になる位置の、レールR1に対して平歯車42の反対側(
図3のR1の下面側)からレールR1に接するように配設されている(
図1も参照。)。レール走行装置10の保持部材26,36は、回転体(ローラ)であるが、回転体でなくても適用は可能である。回転体の場合、その軸心は、平歯車42の軸心と平行なものとするのがよい。
【0019】
また、基部11は、一対の案内部材44,46を具える。一対の案内部材44,46は、平歯車42に対し、平歯車42の軸方向の一方向側と他方向側に位置するように配置される。また、平歯車42の軸心とレールR1までの距離が最短になる位置の、レールR1に対し、平歯車42の同じ側(
図3のR1の上面側)からレールR1に接するように配設されている。レール走行装置10の案内部材44,46は、回転体(ローラ)であるが、回転体でなくても適用は可能である。回転体の場合、その軸心は、平歯車42の軸心と平行なものとするのがよい。
【0020】
このように、レール走行装置10は、一対の保持部材26,36と案内部材44,46を具えるので、平歯車42とレールR1の距離を一定に保ち、平歯車42の歯と孔72を確実に噛合わせることができる。よって、
図1,2に示す平面状のレールR1だけでなく、
図7に示すような曲面状のレールR2の外周面側、
図8に示すような曲面状のレールR3の内周面側、また、曲率の大きい曲面状のレール上であっても、さらには、レール走行装置10がどのような姿勢であっても、安定して確実に走行するレール走行装置10とすることができる。
【0021】
ここで、
図3に示すように、一対の保持部材26,36及び案内部材44,46は、レールR1の孔72(
図2参照。)に平歯車42の歯が歯先のたけの範囲で噛合う位置でレールR1に接するように、その配設位置を決定するのがよい。本構成とすれば、平歯車42の歯が孔72に浅く又は深く噛合うことによる動作不良を防止することができ、レールR1上を円滑に進退動するレール走行装置10とすることができるからである。
【0022】
レール走行装置10では、一対の保持部材26,36がレバー12を回動させることにより、開状態(
図4の状態。)と閉状態(
図3の状態。)が切換るように構成されている。具体的には、保持部材26は、第一連結部材22を介して、保持部材36は、第二連結部材32を介して、平歯車42を貫通する軸20に連結されている。軸20は、第一連結部材22を介してレバー12と連結されている。レバー12は、レバー支点14を中心に、所定の範囲で回動可能に基部11に設けられており、コイルばねなどの付勢手段15によって一方向に付勢されている。第一連結部材22は、軸20とレバー12の間に位置する第一支点24を中心に回動可能に、第二連結部材32は、軸20と保持部材36の間に位置する第二支点34を中心に回動可能にそれぞれ構成されている。
【0023】
このため、レバー12を他方向に回動させると、レバー12がレバー支点14を中心に、第一連結部材22が第一支点24を中心に、第二連結部材32が第二支点34を中心にそれぞれ回動し、
図4に示すように、一対の保持部材26,36が互いに離間する方向に開く構成とすることができる。本構成とすれば、レバー12を他方向に回動させた状態で、孔72(
図2参照)に平歯車42の歯を噛合せ、レバー12を戻すことによってレール走行装置10をレールR1に簡便に装着させることができる。なお、後述する支持部材50の挟持部材57,58と同様に、一対の保持部材26,36をノブとリンク機構を利用して開閉させる構成とするなど、他の構成を適用できることは言うまでもない。
【0024】
図1に示すように、レール走行装置10は、支持部材50をさらに具えた構成とするのがよい。支持部材50は、図示しているように、レール走行装置10を挟むように一対設けることができる。支持部材50は、締結部材60を介してレール走行装置10、より具体的には基部11に連結されている。締結部材60は、締結レバー62と締結具64から構成されている(
図2も参照。)。締結レバー62を回して締結具64の締結具合を緩め、或いは締めることができるので、支持部材50は、基部11に対する角度が可変に連結されることとなる。
【0025】
図5に示すように、支持部材50は、レールR1の表面(
図5の上側面。)と裏面(
図5の下側面。)を挟持する挟持部材57,58を一対具えている。支持部材50の場合、挟持部材57,58は、回転体(ローラ)であるが、回転体でなくても適用は可能である。一対の挟持部材57,58は、リンク機構56を介して、ナット54と連結されている。ナット54は、ノブ52を回転させることによってノブ52の軸上を進退動するように構成されている。
【0026】
ナット54の位置によって、一対の挟持部材57,58の内、レールR1の裏面側に位置する挟持部材58は、
図5に示す閉状態と
図6に示す開状態が切り換えられるように構成されている。レール走行装置10がレールR1上を進退動する際には、一対の挟持部材57,58を閉状態とし、レール走行装置10をレールR1に着脱する際に、一対の挟持部材57,58を開状態とする。本構成とすれば、レールR1に対するレール走行装置10の姿勢を安定させることができ、
図7,8に示すような、レール走行装置10が曲面状のレールR2,R3上を進退動する際に好適な構成とすることができる。
【0027】
また、
図5に示すように、支持部材50が、レールR1の側面(
図5の左右方向の面。)に接する側面接触部材59をさらに具える構成とすることもできる。支持部材50の場合、側面接触部材59は、回転体(ローラ)であるが、回転体でなくても適用は可能である。本構成とすれば、レール走行装置10がレールR1上を進退動中に、支持部材50がレールR1から不意に外れることを防止することができる。
【0028】
以上に説明したとおり、本発明によれば、曲率の大きい曲面状の板状のレール上であっても、安定して確実に走行するレール走行装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 レール走行装置
11 基部
12 レバー
26,36 保持部材
42 平歯車
44,46 案内部材
50 支持部材
57,58 挟持部材
59 側面接触部材
72 孔
M モータ
R1 レール
【要約】 (修正有)
【課題】板状のレール上を安定して確実に走行するレール走行装置を提供すること。
【解決手段】レール走行装置10は、基部11に取付けられたモータMのトルクによって平歯車42が回転し、平歯車42の歯が板状のレールR1の長手方向に連続するように設けられた複数個の孔に順に噛合うことによって、基部をレールR1の長手方向に進退動させることができる。平歯車に対し、平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、平歯車の軸心とレールまでの距離が最短になる位置の、レールに対し、平歯車の反対側からレールに接する一対の保持部材26,36と、平歯車に対し、平歯車の軸方向の一方向側と他方向側に位置し、平歯車の軸心とレールまでの距離が最短になる位置の、レールに対し、平歯車の同じ側からレールに接する一対の案内部材44,46を具える。
【選択図】
図3