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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】サイフォン解消型逆流防止給水器
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/07 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
E03B7/07 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022194575
(22)【出願日】2022-12-06
【審査請求日】2022-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500484375
【氏名又は名称】株式会社ジオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】杉本 小百合
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勉
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167715(JP,A)
【文献】実開平04-105153(JP,U)
【文献】特開2006-132306(JP,A)
【文献】登録実用新案第3042754(JP,U)
【文献】特開平05-087410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流を、サイフォン効果を解消することで防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器であって、
給水源から給水が導入されるように連通され、前記出口滞留水の水面高さよりも高い位置に導入側として開口された導入側開口が設けられた導入側流路と、
該導入側流路の上側に前記導入側開口に連通されて設けられた上側流通流路と、
該上側流通流路の出口側として開口された出口側開口に連通され、前記給水出口まで延長された出口側流路と、
前記上側流通流路の上側に接続されて配され、前記上側流通流路から給水の上流側が大気圧よりも負圧になった際には吸気するように開弁し、前記上側流通流路に空気が溜まった際には排気するように開弁する吸排気弁とを備え
前記上側流通流路が、流路としての断面が前記導入側流路に比べて広く形成されたボックス状や容器状のチャンバーとして設けられ、該チャンバーの下端部に、前記上側流通流路と前記導入側流路の前記導入側開口との接続部分が設けられていると共に、前記上側流通流路と前記出口側流路の前記出口側開口との接続部分が設けられていることを特徴とするサイフォン解消型逆流防止給水器。
【請求項2】
給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流を、サイフォン効果を解消することで防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器であって、
給水源から給水が導入されるように連通され、前記出口滞留水の水面高さよりも高い位置に導入側として開口された導入側開口が設けられた導入側流路と、
該導入側流路の上側に前記導入側開口に連通されて設けられた上側流通流路と、
該上側流通流路の出口側として開口された出口側開口に連通され、前記給水出口まで延長された出口側流路と、
前記上側流通流路の上側に接続されて配され、前記上側流通流路から給水の上流側が大気圧よりも負圧になった際には吸気するように開弁し、前記上側流通流路に空気が溜まった際には排気するように開弁する吸排気弁とを備え、
前記上側流通流路と前記出口側流路の上流側とが連続され、実質的に一体化された形態の外側流路として設けられ、
前記導入側流路の前記導入側開口を含む末端側が、前記外側流路の内部で立設され、該外側流路に内包される内側流路として設けられ、
前記出口側開口が、前記導入側開口の周囲の前記外側流路によって実質的に設けられていることを特徴とするサイフォン解消型逆流防止給水器。
【請求項3】
前記外側流路が貯水タンクとして設けられていることを特徴とする請求項2記載のサイフォン解消型逆流防止給水器。
【請求項4】
前記導入側流路と前記出口側流路とを連通させるバイパス配管と、
該バイパス配管によって、前記上側流通流路へ給水しないようにバイパスさせる弁構成とを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のサイフォン解消型逆流防止給水器。
【請求項5】
前記導入側開口の高さ調整ができるように、前記導入側流路と前記出口側流路の双方の上下方向に延長される部位に、長さ調整機能部を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のサイフォン解消型逆流防止給水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流を、サイフォン効果を解消することで防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気調和・衛生工学誌に掲載された「米国における逆流による飲料水汚染の事例と逆流防止器の種類」(非特許文献1参照)に解説されているように、給水の逆流に関する問題があり、その問題の解決策として、逆止弁やバキュームブレーカの種々の逆流防止給水器などが示されている。しかし、逆止弁では、弁部にゴミが詰まった場合には逆流を止めることができないという課題がある。また、従来のバキュームブレーカでは、結局のところ併設される逆止弁に頼って逆流を防ぐことになり、逆流をより確実に止めることができないと共に、断水した給水を復帰する際に、空気抜きや、汚染されてしまった給水流路の洗浄を合理的に行うことが難しいという課題がある。さらに、配水管に混入した空気が給水管を経由して建物内に入り込むと、その給水管内の空気によりウォータハンマや出水停止などを起こし、床鳴りなどの騒音や漏水等の発生要因ともなっており、従来の形態では、建物内に入り込む前に配水管からの空気の混入を防止することが難しいという課題がある。
【0003】
また、従来、サイフォン解消型逆流防止給水器において用いることができる吸排気弁としては、ケーシングの頂端を覆う蓋体に大吸排気口が設けられて上下可動に収納された大弁体の動作で大吸排気口を下から開閉し、大弁体に小吸排気口が設けられて浮子の動作に連動して小弁体で小吸排気口を下から開閉するものとし、その大弁体を、有底円筒状の部材が開口側を下にして配置され内側部分に小弁体を収装した弁室を形成し、弁室頂壁側で小吸排気口が開口して小弁座とされ、小弁座が弁室の下部開口端位置から所定高さ以上の位置に配置されているとともに大弁体が弁室内に所定量以上の空気を溜めて所定レベル以上の浮力を発揮することで、弁室内に入った水の水位が小弁座の高さまで達しないものとした(特許文献1参照)吸排気弁装置が提案されている。この吸排気弁装置は、図7に示すように、建物内の水道水又は温水の給水配管の頂部に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】空気調和・衛生工学、第68巻、第5号、平成6年5月5日発行(発行所:社団法人空気調和・衛生工学会)の第11頁~第20頁に記載された「米国における逆流による飲料水汚染の事例と逆流防止器の種類」(解説345)、前島健著の論文
【文献】特開2012-167715号公報(第1頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイフォン解消型逆流防止給水器に関して解決しようとする問題点は、逆止弁では、弁部にゴミが詰まった場合には逆流を止めることができず、従来のバキュームブレーカでは、結局のところ併設される逆止弁に頼って逆流を防ぐことになり、逆流をより確実に止めることができないことにある。
【0006】
そこで本発明の目的は、給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流をより確実に防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかるサイフォン解消型逆流防止給水器の一形態によれば、給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流を、サイフォン効果を解消することで防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器であって、給水源から給水が導入されるように連通され、前記出口滞留水の水面高さよりも高い位置に導入側として開口された導入側開口が設けられた導入側流路と、該導入側流路の上側に前記導入側開口に連通されて設けられた上側流通流路と、該上側流通流路の出口側として開口された出口側開口に連通され、前記給水出口まで延長された出口側流路と、前記上側流通流路の上側に接続されて配され、前記上側流通流路から給水の上流側が大気圧よりも負圧になった際には吸気するように開弁し、前記上側流通流路に空気が溜まった際には排気するように開弁する吸排気弁とを備え、前記上側流通流路が、流路としての断面が前記導入側流路に比べて広く形成されたボックス状や容器状のチャンバーとして設けられ、該チャンバーの下端部に、前記上側流通流路と前記導入側流路の前記導入側開口との接続部分が設けられていると共に、前記上側流通流路と前記出口側流路の前記出口側開口との接続部分が設けられている
【0008】
また、本発明にかかるサイフォン解消型逆流防止給水器の一形態によれば、給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流を、サイフォン効果を解消することで防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器であって、給水源から給水が導入されるように連通され、前記出口滞留水の水面高さよりも高い位置に導入側として開口された導入側開口が設けられた導入側流路と、該導入側流路の上側に前記導入側開口に連通されて設けられた上側流通流路と、該上側流通流路の出口側として開口された出口側開口に連通され、前記給水出口まで延長された出口側流路と、前記上側流通流路の上側に接続されて配され、前記上側流通流路から給水の上流側が大気圧よりも負圧になった際には吸気するように開弁し、前記上側流通流路に空気が溜まった際には排気するように開弁する吸排気弁とを備え、前記上側流通流路と前記出口側流路の上流側とが連続され、実質的に一体化された形態の外側流路として設けられ、前記導入側流路の前記導入側開口を含む末端側が、前記外側流路の内部で立設され、該外側流路に内包される内側流路として設けられ、前記出口側開口が、前記導入側開口の周囲の前記外側流路によって実質的に設けられている。
【0009】
また、本発明にかかるサイフォン解消型逆流防止給水器の一形態によれば、前記外側流路が貯水タンクとして設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかるサイフォン解消型逆流防止給水器の一形態によれば、前記導入側流路と前記出口側流路とを連通させるバイパス配管と、該バイパス配管によって、前記上側流通流路へ給水しないようにバイパスさせる弁構成とを備えることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかるサイフォン解消型逆流防止給水器の一形態によれば前記導入側開口の高さ調整ができるように、前記導入側流路と前記出口側流路の双方の上下方向に延長される部位に、長さ調整機能部を備えることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器によれば、給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流をより確実に防止できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器の形態例を模式的に示す説明図である。
図2】本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器の他の形態例を模式的に示す説明図である。
図3図2の形態例のA部の実施例を模式的に示す断面説明図である。
図4図2の形態例のB部の実施例を模式的に示す流路回路説明図である。
図5図2の形態例のB部の実施例を模式的に示す流路回路平面説明図である。
図6】本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器の自動洗浄式貯水タンクの形態例を模式的に示す説明図である。
図7】従来の形態例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器の形態例を図1~6に基づいて詳細に説明する。このサイフォン解消型逆流防止給水器は、給水出口60で滞留状態にある出口滞留水61の逆流を、サイフォン効果を解消することで防止できるものである。なお、図1及び2に示す形態例の給水出口60は、蛇口42に延長ホースが接続された形態であり、出口滞留水61の中に沈められており、その出口滞留水61の逆流が問題となる事例を示してある。
【0015】
本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器では、導入側流路20と、上側流通流路30と、出口側流路40と、吸排気弁50とを備えている。
【0016】
導入側流路20は、給水源10から給水が導入されるように連通され、出口滞留水61の水面高さ61aよりも高い位置に導入側として開口された導入側開口21が設けられている。例えば図1及び2の形態例では、出口滞留水61の水面高さ61aとは、シンク80の溢れ面の高さのことであり、その水面高さ61aが出口滞留水61の最高の高さになっている。すなわち、このシンク80の例では、少なくとも、この水面高さ61aの最高の高さ(シンク80の溢れ面の高さ)よりも、導入側開口21の位置が高ければよいことになる。なお、これに限らず、出口滞留水61の水面高さ61aとは、例えば、野外の散水管(ホース)などに滞留した水やそのホースの出口の先に滞留した水などの水面の高さも含まれる。
【0017】
上側流通流路30は、導入側流路20の上側に導入側開口21に連通されて設けられたスペースとなっている。なお、この上側流通流路30としては、図1及び2の形態例のように、導入側流路20のような通常の給水管(管路)と比較して、大きな容積のスペースを備えるものとして設けられているとよい。すなわち、流路としての断面が、通常の給水管(管路)に比べて、広く形成されているとよい。このため、例えば、この上側流通流路30としては、ボックス状や容器状のチャンバーとして設けられ、そのチャンバーの下端部に、上側流通流路30と導入側流路20の導入側開口21との接続部分が設けられると共に、上側流通流路30と出口側流路40の出口側開口41との接続部分が設けられる形態であってもよい。なお、それらの接続部分は、一般的な給水管の管継手を用いて接続することができるのは勿論である。
【0018】
出口側流路40は、上側流通流路30の出口側として開口された出口側開口41に連通され、給水出口60まで延長されている。図1及び2の形態例の出口側開口41は、後述するように、実質的に導入側開口21の周囲に形成された形態に設けられている。なお、例えば、前述のように上側流通流路30としては、ボックス状や容器状のチャンバーとして設けられ、そのチャンバーの下端部に設けられた配管の取り付け口が、前述のように上側流通流路30と出口側流路40との接続部分として設けられる形態であってもよい。
【0019】
吸排気弁50は、上側流通流路30の上側に接続されて配され、上側流通流路30から給水の上流側が大気圧よりも負圧になった際には吸気するように開弁し、上側流通流路30に空気が溜まった際には排気するように開弁するように設けられている。この吸排気弁50としては、特許文献1に記載の吸排気弁装置を用いることができる。図2及び3に示した形態例の吸排気弁50では、導入側流路20を形成する給水管の上側の延長部である導入配管上側延長部23(図3参照)の上端に接続されて装着されている。
【0020】
この本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器によれば、給水出口60で滞留状態にある出口滞留水61の逆流をより確実に防止できるという特別有利な効果を奏する。特に、上側流通流路30が存在することで、より効果的にサイフォン効果を破壊でき、逆流水の発生をより確実に阻止できる。すなわち、上側流通流路30が、バッファースペースになっており、サイフォン効果が破壊された後の状況で、逆流を完全に阻止する空気層スペース(容積空間)として作用できる。このため、逆流水が、導入側流路20の側へ流入することをより確実に防止できる。従って、本発明によれば、逆止弁に頼ることなく、実質的に逆流水が生じることを、より確実に阻止でき、安全性を高めることができる。
【0021】
また、図1及び2の形態例では、上側流通流路30と出口側流路40の上流側とが連続され、実質的に一体化された形態の外側流路40Aとして設けられ、導入側流路20の導入側開口21を含む末端側が、外側流路40Aの内部で立設され、その外側流路40Aに内包される内側流路20Aとして設けられている。そして、出口側開口41が、導入側開口21の周囲の外側流路40Aによって実質的に設けられている。なお、これによれば、導入側開口21と出口側開口41の開口は、実質的に同一の高さに連続して設けられていることになる。
【0022】
なお、導入側流路20の導入側開口21を含む末端側は、例えば、図2及び3に示す形態例では、導入側流路20を形成する給水管の中途部にスリット21aが設けられ、その給水管の先端部である上端(導入配管上側延長部23)に吸排気弁50が装着された形態になっている。これによれば、そのスリット21aが、実質的に導入側開口21を構成することになり、給水管の端部(導入配管上側延長部23)が外側流路40Aを構成する端部(大径の給水管の端盤部)に固定された状態となる。このため、片持ち形態を解消でき、導入側開口21を含む末端側が片持ち状態で振動しない構造になっている。なお、図1に示した形態例においても、図示をしていないが、その導入側開口21を含む末端側は振動しないように保持する手段が必要になる。例えば、導入側開口21を構成する給水管の端部と外側流路40Aを構成する部位との間を、棒状の保持用部材22(図6参照)を溶接するなどして固定・保持することで、その給水管の端部が片持ちとならないように構成できる。
【0023】
さらに、図1の形態例では、外側流路40Aが貯水タンク40Bとして設けられている。この貯水タンク40Bによれば、その内部に前述した逆流防止機能を合理的に組み込むことができ、例えば災害時などに断水状態になって水道本管が負圧になった際に、給水の逆流が発生することを効果的に防止できると共に、断水時の貯水槽として利用できるという特別有利な効果を奏する。なお、図2の形態例では、二重管構造となっており、貯水容量は小さいが、製造し易い形態になっている。
【0024】
次に、本発明に係るサイフォン解消型逆流防止給水器の作動状態について、図1及び2の形態例に基づいて説明する
先ず、通常の通水時には、導入側流路20、上側流通流路30及び出口側流路40の全ての流路が水によって満たされており、給水源10の水圧によって給水できる状態になっている。また、本発明による給水経路は、給水源10から導入側流路20を経て、さらに下流側のシンク80より高い位置の上側流通流路30を経て給水する形態となっている。つまり、出口側流路40までは建物の屋外に敷設又は設置され、高い位置にある上側流通流路30は空気の滞留する給水施設となり、出口配管40cより下流側のシンク80までは建物内の給水施設とすることができる。
【0025】
その給水できる状態から何らかの原因によって、給水源10からの圧力が失われることで断水状態になった場合、導入側流路20が負圧に転じ、吸引作用が生じるため、給水の逆流が発生する。すると、吸排気弁50が作動し、空気(大気)が上側流通流路30に流入することで、サイフォン効果が破壊される。このときに、上側流通流路30に滞留していた水は、断水によって生じた負圧によって、主に導入側流路20を介して逆流状態で給水源10側へ流れることになる。そして、上側流通流路30に滞留していた水が排出されると、導入側流路20の導入側開口21が大気に連通されることになり、その大気が導入側流路20側へ吸引される。これに対して、出口側流路40に滞留している水は空気より比重が高く重いため、導入側流路20側へ引き込まれることはなく、その出口側流路40内に留まることになる。
【0026】
そして、出口側流路40に留まった水は、重力の作用で逆サイフォン効果が生じ、その出口側流路40を介して、導入側開口21より低い位置にある給水出口61から溢れ出ることになる。その分の水量が、出口側流路40から減じることになり、図1及び2の形態例の状況では、その出口側流路40での水面が、シンク80内の安定水面61bの高さと同一高さとなって安定する。つまり、吸排気弁50が作動した当初の水面が点線で示した水面とすると、その水面が上昇して、シンク80内の安定水面61bの高さとなる。なお、水面高さ(シンクの溢れ面の高さ)61aを超えると、水がシンク80から溢れ出るため、安定水面61bは、その水面高さ61aを超えることはない。導入側流路20の導入側開口21は、水面高さ61aよりも高低差Hの設定寸法分だけ高いため、逆流が発生することはなく、前述のように安定することになる。この高低差Hは、例えば150mm以上とすればよく、信頼性を高めることができる。
【0027】
図1及び2の形態例の状況では、外側流路40Aや貯水タンク40Bと一体的に設けられる上側流通流路30は、水面高さ61aより高い位置にあり、その上側に接続され配されている吸排気弁50直下のバッファースペースとなる上側流通流路30内には配水管からの混入空気が滞留しやすくなる。そして、吸排気弁50の排気機能にて滞留した混入空気は、建物の屋外において確実に給水管外に排気されることとなるため、建物内に入り込むことなく、建物内における混入空気が原因とするウォータハンマや出水停止などの給水トラブル発生を回避することができる。
【0028】
また、本形態例では、導入側流路20と出口側流路40とを連通させるバイパス配管70と、そのバイパス配管70によって、上側流通流路30へ給水しないようにバイパスさせる弁構成とを備えている。すなわち、図1及び2の形態例では、導入側流路20の一部を形成する配管であって、内側流路20Aへ連続するように外側流路40Aや貯水タンク40Bの外側に配管された導入配管20bと、出口側流路40の一部を形成する配管であって、外側流路40Aや貯水タンク40Bから連続するように外側流路40Aや貯水タンク40Bの外側に配管された出口配管40cと、導入配管20bと出口配管40cとを連通させるバイパス配管70と、そのバイパス配管によって、上側流通流路30へ給水しないようにバイパスさせる弁構成とを備えている。なお、77は管接続部であり、カプラー継手などを用いることができる。また、導入側開口21の高さ調整ができるように、導入側流路20と出口側流路40の双方の上下方向に延長される部位に、長さ調整機能部を備えることができる。すなわち、図示した形態例では、導入側流路20(内側流路20A又は導入配管20b)や出口側流路40(外側流路40A又は出口配管40c)について、長さを調整できるスリーブ型伸縮継手などの長さ調整機能部を設置することによって、導入側流路20の導入側開口21が開口する逆流防止機能部(サイフォン効果を解消するための構成部)の高さ調整を容易に行うことができるようにしてもよい。
【0029】
前述の弁構成としては、図面に示した形態例では、バイパス配管70に開閉弁71が設けられ、導入配管20bにおけるバイパス配管70の下流側に開閉弁72が設けられ、出口配管40cにおけるバイパス配管70の上流側に開閉弁73が設けられている。これによれば、開閉弁71を開き、開閉弁72及び開閉弁73を閉じることで、逆流防止機能部をバイパスして給水出口60で吐出するように給水できる。なお、これらの弁構成としては、電動二方弁や電動三方弁などを適宜に用いることができるなど、図面に示した形態例に限定されるものではない。また、図5に示すように操作弁ボックス91内や、図6に示すように保温カバー90内の貯水タンク40Bの下部に、前述の弁構成を収納することで、弁の操作を集約的にできるようにしてもよい。
【0030】
また、導入配管20bにおける開閉弁72の下流側には逆止弁74が設けられ、出口配管40cにおける開閉弁73の上流側には排水管75が分岐されており、その排水管75には開閉弁76が設けられている。これによれば、図1の貯水タンク40Bを洗浄する際や逆流防止機能部の修理の際に、逆流防止機能部に滞留した水を給水出口60側へ連通することなく排水でき、給水は逆流防止機能部を迂回して行うことができる。また、貯水タンク40Bの下端に出口配管40cが接続されているため、貯水タンク40B内に滞留された水を淀みなく流すことができる。なお、通常の給水管構成と同様に、バイパス配管70の上流側であって給水源10に接続された導入管20bには、止水栓である開閉弁11と逆止弁12が設けられている。また、逆止弁74と導入側開口21間の少量の水を排出する際には、逆止弁74の蓋を開け、中の逆止弁カートリッジを取り出せばよく、又は前記の排水管75と開閉弁76と同様に、逆止弁74の上流側には排水管を分岐させてもよい。
【0031】
これによれば、給水の逆流を防止する手段が、複数箇所において設置されており、より確実に逆流を防止して給水の安全性を確保することができる。また、断水などによって給水が途絶えた後に復帰する際に、外側流路40Aや貯水タンク40B内に残留した水を適切に排水できる。つまり、この形態例によれば、断水した給水を復帰する際に、空気抜きや、汚染されてしまった給水流路(給水管)の洗浄を合理的に行うことができるという特別有利な効果を奏する。なお、空気抜きがなされる際には、吸排気弁50が作動し、排気液管51から排気され、その排気と共に排出される排水を、排気液受け口52で受けて排水管53を介して流すように設けられている。
【0032】
次に、図3及び6に基づいて、外側流路40Aや貯水タンク40B内の汚染防止や洗浄のために、積極的に水の流れを発生させる自動清浄化システムの形態例について説明する。
【0033】
図3に示す形態例は、図2の形態例に適用できる内側流路20Aや外側流路40A及び自動清浄化システムのノズル45を備えるものである。この形態例では、内側流路20Aからノズル分岐流路46が分岐されており、その先端にノズル45が設けられている。これによれば、給水される際に常にノズル45から給水が噴出しており、外側流路40A内が撹拌される状態になるため、給水が淀むことなく、その外側流路40Aの内壁に汚れが付着することを防止でき、外側流路40A内を常に清浄に維持できる。
【0034】
図6に示す形態例は、図1の形態例に適用できる内側流路20Aや貯水タンク40B及び自動清浄化システムのノズル45を備えるものである。この形態例では、内側流路20Aからノズル分岐流路46としてフレキシブル管46aが接続されており、その先端にノズル45が設けられている。これによれば、図3の形態例と同様の効果を得ることができると共に、ノズル45の噴射方向を適宜に調整することで旋回流を発生させることもでき、貯水タンク40B内を常に清浄に維持できる。
【0035】
また、図6に示す形態例では、吸排気弁50と上側流通流路30との間に電動三方弁55が接続され、その電動三方弁55に足踏みポンプ56が接続できるように構成されている。これによれば、電動三方弁55を操作して足踏みポンプ56を上側流通流路30に連通させることができ、足踏みポンプ56よって生じる圧縮空気によって、貯水タンク40Bに滞留した水を排出することができる構成になっている。従って、災害時に、貯水タンク40B内の水を適切に吐出させて利用することができる。なお、90は保温カバーであり、その保温カバー90の貯水タンク40Bの高さ位置よりも下側に設けられた壁面には操作弁などを点検・修理するための点検口が装備され、冬季は凍結を防止し、夏季は給水の温度上昇を抑えるように作用できる。
【0036】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0037】
10 給水源
11 開閉弁
12 逆止弁
20 導入側流路
20A 内側流路
20b 導入配管
21 導入側開口
21a スリット
22 保持用部材
23 導入配管上側延長部
30 上側流通流路
40 出口側流路
40A 外側流路
40B 貯水タンク
40c 出口配管
41 出口側開口
41a 最高位の溢れ面
42 蛇口
45 ノズル
46 ノズル分岐流路
46a フレキシブル管
50 吸排気弁
51 排気液管
52 排気液受け口
53 排水管
55 電動三方弁
56 足踏みポンプ
60 給水出口
60a 延長ホース
61 出口滞留水
61a 水面高さ(シンクの溢れ面高さ)
61b 安定水面
70 バイパス配管
71 開閉弁
72 開閉弁
73 開閉弁
74 逆止弁
75 排水管
76 開閉弁
77 管接続部
80 シンク
90 保温カバー
91 操作弁ボックス
H 高低差
【要約】
【課題】給水出口で滞留状態にある出口滞留水の逆流をより確実に防止できるサイフォン解消型逆流防止給水器を提供する。
【解決手段】給水源10から給水が導入されるように連通され、給水出口60の出口滞留水61の水面高さよりも高い位置に導入側として開口された導入側開口21が設けられた導入側流路20と、導入側流路20の上側に導入側開口21に連通して設けられた上側流通流路30と、上側流通流路30の出口側として開口された出口側開口41に連通され、給水出口60まで延長された出口側流路40と、上側流通流路30の上側に接続されて配され、上側流通流路30から給水の上流側が大気圧よりも負圧になった際には吸気するように開弁し、上側流通流路30に空気が溜まった際には排気するように開弁する吸排気弁50とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7