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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】方向提示システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230213BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20230213BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230213BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20230213BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20230213BHJP
   G10K 11/34 20060101ALI20230213BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20230213BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20230213BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G10K15/04 303E
B60R11/02 S
G08B21/24
G08B21/00 U
G10K11/34 130
G10K11/34 140
H04R3/00 310
B60W50/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019014557
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020123143
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】真柄 秀樹
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-129734(JP,A)
【文献】特開2017-224165(JP,A)
【文献】特開2005-319998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G10K 15/04
B60R 11/02
G08B 21/24
G08B 21/00
G10K 11/34
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して音により方向を提示する方向提示システムであって、
ユーザに対して方向を提示するときに、少なくとも所定の期間経過する迄、第1の音を出力すると共に、当該第1の音の出力を、当該第1の音を出力している期間中の各時点のそれぞれにおいて、定位した当該第1の音の音像がユーザによって認識されないように行う無定位音出力手段と、
前記所定の期間が経過した後に、第2の音を出力すると共に、当該第2の音の出力を、ユーザに対して提示する方向となる位置に定位した当該第2の音の音像がユーザによって認識されるように行う定位音出力手段とを有することを特徴とする方向提示システム。
【請求項2】
請求項1記載の方向提示システムであって、
前記無定位音出力手段が出力する第1の音の音源となる音と、前記定位音出力手段が出力する第2の音の音源となる音とは同じ音であることを特徴とする方向提示システム。
【請求項3】
請求項1記載の方向提示システムであって、
前記無定位音出力手段が出力する第1の音の音源となる音と、前記定位音出力手段が出力する第2の音の音源となる音とは異なる音であることを特徴とする方向提示システム。
【請求項4】
請求項3記載の方向提示システムであって、
前記無定位音出力手段は、前記所定の期間が経過した後、前記定位音出力手段が前記第2の音を出力している期間中、前記第1の音の出力を継続することを特徴とする方向提示システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の方向提示システムであって、
当該方向提示システムは自動車に搭載されており、
当該方向提示システムは、前記自動車周辺の障害物を検出する障害物検出手段を有し、
前記ユーザは、前記自動車の運転者であり、
前記ユーザに対して方向を提示するときとは、前記障害物検出手段が、前記自動車に接近している障害物を検出したときであり、
前記ユーザに対して提示する方向とは、前記障害物検出手段が検出している障害物の方向であることを特徴とする方向提示システム。
【請求項6】
請求項5記載の方向提示システムであって、
前記定位音出力手段は、前記出力する音の音像を定位させる位置と前記ユーザとの距離を、前記障害物検出手段が検出した障害物までの距離に応じて変化させることを特徴とする方向提示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響により方向を提示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響により方向を提示する技術としては、自動車において自動車周辺の障害物を検知し、自動車の運転者に対して、当該運転者からみて検知した障害物の方向で位置が揺れ動く音像や、当該運転者からみて検知した障害物の方向に他の方向から移動する音像を、音像の定位位置を制御する立体音響の技術を用いて出力する技術が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-259879号公報
【文献】特特許第5353070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
聴感による音像の認識能力には個人差があり、上述したように定位位置の方向のみによって方向を提示するだけでは、ユーザが音像によって提示される方向を良好に把握できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、より確実に方向を把握できるように、音響により方向を提示することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、ユーザに対して音により方向を提示する方向提示システムに、ユーザに対して方向を提示するときに、少なくとも所定の期間経過する迄、ユーザにとって音像が特定の位置に定位しないように音を出力する無定位音出力手段と、前記所定の期間が経過した後に、ユーザに対して提示する方向となる位置にユーザにとって音像が定位するように音を出力する定位音出力手段とを備えたものである。
【0007】
ここで、このような方向提示システムにおいて、前記無定位音出力手段が出力する音と前記定位音出力手段が出力する音は同じ音であってもよい。
また、逆に、前記無定位音出力手段が出力する音と前記定位音出力手段が出力する音を異なる音としてもよい。
また、この場合には、前記無定位音出力手段において、前記所定の期間が経過した後、前記定位音出力手段が音を出力している期間中、前記ユーザにとって音像が特定の位置に定位しないように行う音の出力を継続するようにしてもよい。
【0008】
また、以上の方向提示システムを自動車に搭載されたシステムとし、当該方向提示システムに、前記自動車周辺の障害物を検出する障害物検出手段を設け、前記ユーザを、前記自動車の運転者とし、前記ユーザに対して方向を提示するときを、前記障害物検出手段が、前記自動車に接近している障害物を検出したときとし、前記ユーザに対して提示する方向は、前記障害物検出手段が検出している障害物の方向としてもよい。
【0009】
また、この場合には、前記定位音出力手段において、前記出力する音の音像を定位させる位置と前記ユーザとの距離を、前記障害物検出手段が検出した障害物までの距離に応じて変化させるようにしてもよい。
【0010】
以上のような方向提示システムによれば、音像が定位しない音を出力した後に、音像が定位する音を出力してユーザに方向を提示するので、方向を提示する音の出力に先だって出力される音像が定位しない音はユーザにとって、方向を提示する音の出力の予告として機能し、ユーザは、音を聴取する用意を整えた状態で、方向を提示する音を聞くことができる。したがって、ユーザは、より確実に方向を認知できるようになる。
【0011】
また、音像が定位しない音と音像が定位する音とは、ユーザにとってのコントラストが強いので、音像が定位する音が強調されてユーザに聴取されることとなり、当該音による方向の提示をより確実に行えるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、より確実に方向を把握できるように、音響により方向を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る監視範囲とスピーカの配置例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る障害物警告処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る音像の定位位置を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る他の方向提示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、自動車周辺の障害物を監視する周辺監視装置1、予め記憶された音データを用いて各種の音を出力する音源装置2、複数のスピーカ3、各スピーカ3に対応して設けられた入力する音を増幅して対応するスピーカ3に出力するアンプ4、音源装置2から出力された音に各種の音響処理を施して各スピーカ3から出力する音を生成して当該スピーカ3に対応するアンプ4に出力するサウンドプロセッサ5、以上各部を制御する制御装置6を備えている。
【0015】
ここで、周辺監視装置1は、たとえば、図2aに示すように自動車の外部を全周に渡り監視し、自動車周辺に発生した障害物の方向や距離を検出する。また、このような周辺監視装置1としては、ミリ波レーザや赤外線レーザを用いて自動車周辺の障害物を検出する装置や、カメラやステレオカメラで撮影した自動車周辺のようすから自動車周辺の障害物を検出する装置等を用いることができる。
【0016】
次に、複数のスピーカ3は、たとえば、図2bに示すように、自動車の左右のフロントのドア、左右のリアドアに各々装着されたスピーカ3である。
そして、サウンドプロセッサ5は、音源装置2から出力された音から生成する各スピーカ3に出力する音の間の音量差や遅延時間差などを調整して、運転者に対して任意の位置に定位する、音源装置2から出力された音の音像を生成することができる。
【0017】
次に、制御装置6が行う障害物警告処理について説明する。
図3に、この障害物警告処理の手順を示す。
図示するように、制御装置6は障害物警告処理において、周辺監視装置1の所定距離以内に接近している障害物の検出の発生を監視する(ステップ302)。
そして、所定距離以内に接近している障害物の検出が発生したならば(ステップ302)、一定期間、音源装置2に所定の注意喚起音を出力させると共に、サウンドプロセッサ5に、注意喚起音の音像が運転者にとって特定の位置に定位しない無定位の音像となる各スピーカ3への出力音を生成させ、アンプ4を介して各スピーカ3に出力させる(ステップ304)。
【0018】
そして、続いて、音源装置2に所定の警告音の出力を開始させると共に、サウンドプロセッサ5に、警告音の音像が運転者にとって、運転者から見て障害物の方向に位置に定位する音像となる各スピーカ3への出力音の生成と、アンプ4を介した各スピーカ3への出力を開始させる(ステップ306)。
【0019】
そして、周辺監視装置1の所定距離以内に接近している障害物を検出しなくなるのを待ち(ステップ308)、音源装置2の警告音の出力とサウンドプロセッサ5の各スピーカ3への出力音の生成と出力を停止し(ステップ310)、ステップ302の監視に戻る。
【0020】
以上、制御装置6が行う障害物警告処理について説明した。
ここで、サウンドプロセッサ5による、注意喚起音の音像が運転者にとって特定の位置に定位しない無定位の音像となる各スピーカ3への出力音の生成は、運転者に各スピーカ3から聞こえる注意喚起音の音量及び遅延時間が等しくなるように各スピーカ3に出力する注意喚起音を調整することにより行う。
【0021】
また、この無定位の音像となる各スピーカ3への出力音の生成は、サウンドプロセッサ5において、音源装置2から出力される注意喚起音に、リバーブやエコーやディレイなどの、人間の音像の定位位置の認識を困難とする音響効果を与えた音を、各スピーカ3への出力音とすることにより行ってもよい。
【0022】
また、この無定位の音像となる各スピーカ3への出力音の生成は、サウンドプロセッサ5において、音源装置2から出力される注意喚起音の、人間が音像の定位の判別に用いることのできる2kHzと12kHzの間の周波数成分を周波数フィルタでカットした音、すなわち、注意喚起音の2kHz未満の音のみを含む音、注意喚起音の12kHz超の音のみを含む音、または、注意喚起音の2kHz未満の音と12kHz超の音のみを含む音を、各スピーカ3への出力音として生成することにより行うこともできる。
【0023】
また、この無定位の音像となる各スピーカ3への出力音の生成は、音源装置2に注意喚起音として、各スピーカ3と同じ数の相互に相関性の低い音を出力させ、サウンドプロセッサ5において音源装置2から出力される各音を、各スピーカ3への出力音とすることにより行うこともできる。
【0024】
次に、警告音の定位位置は、図4a、bに示すように、運転者の頭部近くの、頭部から障害物の方向Sに所定距離(たとえば、10から30cm)離れた位置Pとする。
ただし、図4c1、c2に示すように、自動車から障害物までの距離に応じて、障害物までの距離が大きい場合(c1)には、障害物までの距離が小さい場合(c2)に比べ、警告音の定位位置を運転者の頭部からより離れた位置とするようにしてもよい。
【0025】
次に、上述した注意喚起音と警告音は、たとえば、注意喚起音を比較的低音の「ブー」という音とし、警告音を比較的高音の「ピ」という音にしてもよい。
この場合、障害物の接近が検出されると、特定の位置に音像が定位しない無定位の音「ブー」が出力され、その後、運転者から見て障害物の方向の位置に音像が定位する音「ピ」が、障害物の接近が検出されなくなるまで、「ピ」、「ピ」、「ピ」、...と繰り返し出力される。
【0026】
ただし、この警告音の音は一度だけ出力するようにしてもよく、この場合には、障害物の接近が検出されると、特定の位置に音像が定位しない無定位の音「ブー」が出力され、その後、運転者から見て障害物の方向の位置に音像が定位する音「ピ」が出力されることとなる。
【0027】
また、このようにこの警告音の音は一度だけ出力する場合等には、注意喚起音を「ピー」という連続音とし、警告音を比較的高音の「ピ、ピ、ピ、...」といった断続音にしてもよい。
【0028】
また、注意喚起音と警告音とは同じ音を共通に用いるようにしてもよい。この場合において、注意喚起音と警告音とを中域の音「プー」を用いた場合には、障害物の接近が検出されると、特定の位置に音像が定位しない無定位の音「プー」が出力され、その後、音「プー」の音像が、運転者から見て障害物の方向の位置に収束することとなる。
【0029】
また、無定位の注意喚起音の出力は、警告音の出力中も継続するようにしてもよい。この場合、注意喚起音を比較的低音の「ブー」という音とし、警告音を比較的高音の「ピ」という音とすると、障害物の接近が検出されると、特定の位置に音像が定位しない無定位の音「ブー」が出力され、その後、無定位の音「ブー」を背景音として、運転者から見て障害物の方向の位置に音像が定位する音「ピ」が出力されることとなる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、音像が定位しない無定位の注意喚起音を出力した後に音像が定位する警告音を出力して運転者に障害物の方向を提示するので、注意喚起音は運転者にとって警告音の出力の予告として機能し、運転者は、警告音を聴取する用意を整えた状態で、方向を提示する警告音を聞くことができる。したがって、運転者は、より確実に方向を認知できるようになる。
【0031】
また、音像が定位しない無定位の注意喚起音と音像が定位する警告音とは、運転者にとってのコントラストが強いので、警告音が強調されて運転者に聴取されることとなり、警告音による方向の提示をより確実に行えるようになる。
【0032】
なお、以上の実施形態では、障害物の方向の通知を行う場合について説明したが、本実施形態で示した、音像が定位しない無定位の音を出力した後に音像が定位する音を出力してユーザに方向を提示する技術は、任意のシステムにおいて任意の目的のためにユーザに対して方向を提示する場合に同様に適用することができる。すなわち、たとえば、カーナビゲーションシステムにおいて、設定されたルートに従った右左折等の進路変更地点に接近した際に、音像が定位しない無定位の音を出力した後に、運転者から見て進路変更方向となる位置に音像が定位するように音を出力してユーザに進路変更地点における進路変更方向を案内するようにしてもよい。
【0033】
また、以上の実施形態は、図3に示した障害物警告処理に代えて実行する処理、または、図3に示した障害物警告処理と選択的に実行させることができる処理として、周辺監視装置1が所定距離以内に接近している障害物を検出したならば、音源装置2に所定の警告音の出力を開始させると共に、サウンドプロセッサ5に、図5a1、a2、a3に示すように、運転者にとっての警告音の音像の定位位置Pが、運転者から障害物の方向Sに向かって遠ざかっていくように、各スピーカ3への出力音の生成と、アンプ4を介した各スピーカ3への出力行わせるようにしてよい。または、逆に、周辺監視装置1が所定距離以内に接近している障害物を検出したならば、音源装置2に所定の警告音の出力を開始させると共に、サウンドプロセッサ5に、図5b1、b2、b3に示すように、運転者にとっての警告音の音像の定位位置Pが、障害物の方向Sから運転者に向かって近づいてくるように、各スピーカ3への出力音の生成と、アンプ4を介した各スピーカ3への出力行わせるようにしてよい。
【符号の説明】
【0034】
1…周辺監視装置、2…音源装置、3…スピーカ、4…アンプ、5…サウンドプロセッサ、6…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5