(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】エアシリンダ装置及びこれを備えた計量システム
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20230213BHJP
G01G 19/387 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F15B15/14 380D
G01G19/387 D
(21)【出願番号】P 2019133496
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】高柳 一夫
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-118193(JP,A)
【文献】実開平05-092507(JP,U)
【文献】特開2014-102242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0100362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
G01G 19/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に収容されたエアシリンダに、圧縮空気の管路が接続されたエアシリンダ装置であって、
前記ケーシングの内部の前記圧縮空気の前記管路が分岐された分岐管路を備え、
前記分岐管路には、圧縮空気の流量を抑制する流量抑制部が設けられ、
前記エアシリンダに供給される前記圧縮空気の一部が、前記分岐管路の前記流量抑制部を介して前記ケーシングの内部に漏洩する、
ことを特徴とするエアシリンダ装置。
【請求項2】
前記流量抑制部が、前記分岐管路に接続されたオリフィスである、
請求項1に記載のエアシリンダ装置。
【請求項3】
前記エアシリンダが、シリンダケースの一端側からのみピストンロッドが突出する片ロッド式の複動型であり、前記分岐管路は、前記シリンダケースのボトム側に接続された前記圧縮空気の前記管路が分岐されたものである、
請求項1または2に記載のエアシリンダ装置。
【請求項4】
前記ケーシングには、該ケーシングの内部の空気が外部へ流出するのを許容する排気流路が設けられている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエアシリンダ装置。
【請求項5】
前記ケーシングは開口部を有し、
前記ケーシングに、シール部材を介して連結されて、前記開口部を水密状に閉塞するカバーを備え、
前記シール部材は、その一部に迷路構造の前記排気流路を有している、
請求項4に記載のエアシリンダ装置。
【請求項6】
前記ケーシングは開口部を有し、
前記ケーシングに、シール部材を介して連結されて、前記開口部を水密状に閉塞するカバーを備え、
前記カバーを前記ケーシングに連結する連結部材は、前記ケーシングの内外に連通して前記排気流路となる透孔を有している、
請求項4に記載のエアシリンダ装置。
【請求項7】
物品を計量する計量装置を備える計量システムであって、
前記請求項1ないし6のいずれか一項に記載のエアシリンダ装置と、
前記エアシリンダ装置によって駆動される被駆動部材とを備える、
ことを特徴する計量システム。
【請求項8】
前記被駆動部材は、前記エアシリンダ装置によって揺動駆動されて物品の搬送経路上に出退し、前記搬送経路上の物品を排除、又は、物品の通過を許容する、
請求項7に記載の計量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種装置の駆動に用いられるエアシリンダ装置及びこれを備えた計量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、例えば、生肉などの生鮮食品を計量する計量装置を備えた生産ラインでは、頻繁に洗浄水等によって計量装置やその周辺の洗浄が行われると共に、生鮮食品が傷まないように比較的低温の環境下で作業が行われる。
【0003】
このような低温環境下では、ロードセル等の荷重センサを収容した計量ユニットの内部で結露が生じることがあり、このような結露によって、ロードセルにおける歪ゲージの絶縁抵抗に影響を及ぼしたり、起歪部を腐食させたりして、荷重信号に誤差をもたらすおそれがある。
【0004】
このために、例えば、特許文献1では、発熱する電装品を収容した制御ボックス内の加温された空気を、計量ユニット内に供給することで、計量ユニット内を加温して結露を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、荷重センサを収容した計量ユニットの結露を防止するものであって、生産ラインにおいて、各種装置の駆動に用いられるエアシリンダの結露については、考慮されておらず、また、電装品から発せられる熱で加温された制御ボックス内の空気を利用するので、結露を防止する対象が、制御ボックス内の空気を供給できるものに限定されてしまう。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、ケーシング内の結露を防止して、ケーシングに収容されたエアシリンダや金属作動部材の防錆を安定的かつ低コストで行うことができるエアシリンダ装置及びこれを備えた計量システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0009】
(1)本発明に係るエアシリンダ装置は、ケーシングの内部に収容されたエアシリンダに、圧縮空気の管路が接続されたエアシリンダ装置であって、
前記ケーシングの内部の前記圧縮空気の前記管路が分岐された分岐管路を備え、前記分岐管路には、圧縮空気の流量を抑制する流量抑制部が設けられ、前記エアシリンダに供給される前記圧縮空気の一部が、前記分岐管路の前記流量抑制部を介して前記ケーシングの内部に漏洩する。
【0010】
本発明に係るエアシリンダ装置によると、エアシリンダを作動させる圧縮空気は一般に除湿されているので、エアシリンダの作動の都度、除湿された圧縮空気の一部を、分岐管路の流量抑制部を介してケーシング内に漏洩注入することで、エアシリンダの作動を阻害することなく、ケーシング内に除湿された圧縮空気を供給して結露を防止し、エアシリンダ及び金属作動部位の防錆を図ることができる。
【0011】
この場合、ケーシングの内部に圧縮空気を供給する専用のエア圧送装置は不要であり、エアシリンダの駆動に本来備えられている装備のみでケーシングの内部への圧縮空気の供給を行うことができる。
【0012】
また、分岐管路は、ケーシングの内部の圧縮空気の管路を分岐したものであるので、エアシリンダの駆動に必要な圧縮空気の管路を構成する配管のみをケーシングに水密状に挿通すればよい。すなわち、分岐箇所をケーシングの外部に配備した場合には、ケーシングには、エアシリンダの駆動に必要な圧縮空気の配管と分岐管路の配管とを水密状にそれぞれ挿通することになり、ケーシングに水密状に挿通する配管の数が多くなって部品コスト及び組み付けコストが高くなる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記流量抑制部が、前記分岐管路に接続されたオリフィスである。
【0014】
この実施態様によると、エアシリンダに供給される圧縮空気の一部を、オリフィスによって、エアシリンダの作動を阻害しない流量に抑制しつつ、ケーシングの内部に漏洩させることができる。
【0015】
(3)本発明の一実施態様では、前記エアシリンダが、シリンダケースの一端側からのみピストンロッドが突出する片ロッド式の複動型であり、前記分岐管路は、前記シリンダケースのボトム側に接続された前記圧縮空気の前記管路が分岐されたものである。
【0016】
片ロッド式の複動型のエアシリンダにおいては、ロッド側のエア室におけるピストンの受圧面積が、ボトム側のエア室におけるピストンの受圧面積よりもピストンロッドの断面積だけ小さい。このため、一定のストロークでピストンロッドを伸長作動させるのに必要なエア量は、同ストロークでピストンロッドを短縮作動させるのに必要なエア量よりも多くなる。
【0017】
従って、ボトム側のエア室に圧縮空気を供給して一定ストローク伸長作動させる時間の方が、ロッド側のエア室に圧縮空気を供給して同ストロークだけ短縮作動させる時間より長くなる。
【0018】
この実施態様によると、作動時間が長くなる伸長作動時に供給される圧縮空気を分岐管路から漏洩させるので、短縮作動時に供給される圧縮空気を漏洩させる場合に比べて、多くの除湿された圧縮空気をケーシングの内部に漏洩させることができる。
【0019】
(4)本発明の他の実施態様では、前記ケーシングには、該ケーシングの内部の空気が外部へ流出するのを許容する排気流路が設けられている。
【0020】
この実施形態によると、ケーシングの内部の空気が排気流路を介して流出可能であるので、エアシリンダの作動の都度、ケーシングの内部へ繰り返し圧縮空気が漏洩注入されることによってケーシングの内圧が不当に高くなるのを防止することができる。
【0021】
(5)本発明の更に他の実施態様では、前記ケーシングは開口部を有し、前記ケーシングに、シール部材を介して連結されて、前記開口部を水密状に閉塞するカバーを備え、前記シール部材は、その一部に迷路構造の前記排気流路を有している。
【0022】
この実施態様によると、シール部材を加工するだけで所望の排気流路を簡単に形成することができる。
【0023】
(6)本発明の一実施態様では、前記ケーシングは開口部を有し、前記ケーシングに、シール部材を介して連結されて、前記開口部を水密状に閉塞するカバーを備え、前記カバーを前記ケーシングに連結する連結部材は、前記ケーシングの内外に連通して前記排気流路となる透孔を有している。
【0024】
この実施態様によると、パッキンの水封機能を損なうことなく所望の排気流路を形成することができる。
【0025】
(7)本発明に係る計量システムは、物品を計量する計量装置を備える計量システムであって、
上記(1)ないし(6)のいずれかのエアシリンダ装置と、前記エアシリンダ装置によって駆動される被駆動部材とを備える。
【0026】
物品として、例えば、生肉などの生鮮食品を計量するような場合には、生鮮食品が傷まないように低温であって、頻繁な洗浄等よる水気の多い環境、すなわち、結露が生じ易い環境での計量となるが、本発明によると、当該計量システムで使用される被駆動部材を駆動するエアシリンダ装置では、ケーシングの内部に除湿された圧縮空気を漏洩させて結露を防止し、低コストでエアシリンダ及び金属作動部位の防錆を図ることができる。
【0027】
(8)本発明の好ましい実施態様では、前記被駆動部材は、前記エアシリンダ装置によって揺動駆動されて物品の搬送経路上に出退し、前記搬送経路上の物品を排除、又は、物品の通過を許容する。
【0028】
この実施態様によると、計量される物品を搬送経路上から排除する物品排出機構の被駆動部材を揺動駆動するエアシリンダ装置のケーシング内のエアシリンダ及び金属作動部位の防錆を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のエアシリンダ装置によれば、エアシリンダの作動の都度、除湿された圧縮空気の一部を、分岐管路の流量抑制部を介してケーシング内に漏洩注入することで、エアシリンダの作動を阻害することなく、ケーシング内の結露を防止し、低コストでケーシング内に収容されたエアシリンダや金属作動部材の防錆を図ることができる。
【0030】
また、結露が生じ易い環境下で物品の計量を行う計量システムにおいて、被駆動部材を駆動するエアシリンダ装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る計量システムの全体斜視図である。
【
図4】
図4は本発明の実施形態に係るエアシリンダ装置の一部を切欠いた斜視図である。
【
図6】
図6は排気流路の別実施形態を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るエアシリンダ装置を備える計量システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る計量システムの全体構成を示す斜視図、
図2はその平面図、
図3はその側面図である。この計量システムは、物品供給を行う物品供給装置1と、供給された物品の組合せ計量を行う半自動式の組合せ秤2とを備えている。
【0034】
この実施形態では、単体重量が比較的大きく不定形で、機械によるハンドリングが難しい粘着性を有する物品、例えば、ブロイラー(肉用鶏)を解体したモモ肉あるいはムネ肉といったブロック状の肉片を計量対象としている。
【0035】
物品供給装置1は、水平に配備した前段搬送機構3と、その搬送径路の複数箇所、この例では3箇所に配備した物品排出機構4と、各物品排出機構4にそれぞれ対応する3台の分配搬送機構5と、各分配搬送機構5に対応して複数台ずつ、この例では3台ずつ並列配備した振動フィーダ6とを備えている。
【0036】
前段搬送機構3は、水平に巻回した搬送ベルト7を、
図2において、矢符Aで示されるように、右方から左方に一定の速度で回転駆動されるベルトコンベヤで構成されている。前段搬送機構3の搬送ベルト7の右方の始端側において、
解体された生肉であるブロイラーの肉片が、物品wとして供給される。
【0037】
物品排出機構4は、前段搬送機構3における搬送径路を挟む一方側に設置されて縦支点aを中心にして、揺動駆動可能な長板状の被駆動部材としてのガイド部材8を備えている。このガイド部材8は、
図2中の実線で示すように、搬送径路の前記一方側に外れて搬送方向に沿った退避姿勢となる通過許容状態では、前段搬送機構3による搬送径路上の物品wの通過が許容される。この通過許容状態からガイド部材8が駆動されて、
図2中の仮想線で示すように、前記縦支点aを中心に搬送経路側へ揺動して搬送経路上に進出すると、長板状のガイド部材8が、平面視で搬送径路に斜めに交差した排出姿勢の排出案内状態となる。この排出案内状態では、搬送径路に沿って搬送される物品wは、搬送経路を斜めに横切るように交差しているガイド部材8の板面に沿って、徐々に搬送径路の他方側の外方へ案内されて、搬送経路から排出される。
【0038】
前段搬送機構3の排出側には、下窄まりの傾斜した排出シュート9が固定配備されており、ガイド部材8によって案内排出された物品wは、排出シュート9を介して前記他方側の下方に滑落案内される。
【0039】
このように物品排出機構4は、長板状のガイド部材8を、前段搬送機構3の搬送経路に対して傾斜するように交差させて、前段搬送機構3によって搬送される物品wを、ガイド部材8の板面に沿って案内して排出するので、粘着性を有するブロイラーの肉片である物品wを確実に所定の箇所で排出することができる。
【0040】
なお、前記ガイド部材8の駆動に本発明の一実施形態に係るエアシリンダ装置が利用されるものであって、その詳細な構成は後述する。
【0041】
前記分配搬送機構5は、物品排出機構4によって排出されてきた物品wを受け取る上拡がり漏斗状の投入ファネル10と、投入ファネル10に投入された物品wを搬送すると共に、所定角度だけ回動駆動可能な旋回コンベヤ14とを備えている。旋回コンベヤ14は、投入ファネル10で滑落案内された物品wを載置して水平に搬送する搬送ベルト11と、搬送ベルト11の両脇に起立配備された左右の側板12と、両側板12の終端部に取付けられた平面形状がU形の排出カバー13とを備えている。この排出カバー13は、搬送ベルト11で載置搬送されてきた物品wを、搬送方向へ飛び出させることなく落下させる落下口を形成する。
【0042】
旋回コンベヤ14は、投入ファネル10からの物品が滑落する搬送ベルト11の搬送始端側に設定された縦支点bを中心として、サーボモータによって所定角度だけ回動駆動可能である。この旋回コンベヤ14は、回動範囲における中央位置とその両側の回動端位置の3位置において、搬送ベルト11の搬送終端の落下口が、各振動フィーダ6の直上方に位置するようになっている。すなわち、旋回コンベヤ14は、縦支点bを中心として、所定角度だけ旋回して、物品wを、3台の各振動フィーダ6に振分ける。
【0043】
振動フィーダ6は、
図3に示すように、樋状のトラフ15を加振機16に脱着可能に連結した直進フィーダであり、トラフ15を振動駆動することで載置した物品wを、組合せ秤2に搬送するように構成されている。トラフ15の底面及び左右の側面には、トラフ15の長手方向に沿ったスリット状の透孔19が多数整列形成されている。この透孔19は、ブロイラーを解体した肉片である物品wの表面に浮き出た油脂や油液をトラフ15外に排出し、トラフ15内面にこれら油脂や油液が多量に付着固化して物品wの搬送が困難となるのを防止している。
【0044】
1台の分配搬送機構5の旋回コンベヤ14に対して、振動フィーダ6が3台ずつ並列配備され、旋回コンベヤ14の中央位置及びその両側の回動端位置への切換え回動に応じて、各旋回コンベヤ14から3台の各振動フィーダ6のトラフ15に物品wをそれぞれ供給することができる。したがって、全体として、直線状に並列配備された9台の振動フィーダ6によって、9箇所へ物品wを振動搬送することができる。
【0045】
各振動フィーダ6では、その駆動及び停止によって、物品wを搬送及び停止させることができるので、物品wを、振動フィーダ6のトラフ15の終端部まで搬送して待機させるように制御し、組合せ秤2の物品投入口25への投入要求に応じたタイミングで物品を、組合せ秤2へ供給することができる。
【0046】
図1,
図2に示すように、半自動式の組合せ秤2の上面には、多数個、この例では9個の物品投入口25が左右に直線状に列設されている。これら物品投入口25が物品供給装置1の分配排出部、すなわち、振動フィーダ6群の終端に臨むよう組合せ秤2が設置される。また、各物品投入口25には、内開き観音扉状に開閉される左右一対の投入ゲート26が駆動開閉可能に備えられている。各投入ゲート26は、物品の投入を要求している期間は開放される。
【0047】
この組合せ秤2は、従来の半自動式の組合せ秤と同様であり、各物品投入口25に投入された物品の重量に基づいて、組合せ演算を行って、最適な組合せの物品を下方の図示しないコンベヤへ排出するように構成されている。
【0048】
上記のような構成を有する本実施形態の計量システムでは、前段搬送機構3の搬送方向の上手側である始端部に供給された物品wは、物品排出機構4によって搬送方向の3箇所から排出されて夫々の分配搬送機構5に送り込まれ、各分配搬送機構5に送り込まれた物品wは、更に3箇所に分配されて振動フィーダ6に送り込まれ、都合、9台の振動フィーダ6によって分配搬送された物品wが、組合せ秤2の各物品投入口25に供給される。なお、3台の物品排出機構4を通過して前段搬送機構3の終端に至った物品wは、搬出されて回収容器などに回収され、適時、人手によって再び前段搬送機構3の始端部に供給される。
【0049】
なお、詳細な説明は省略するが、上記のような物品の供給においては、図示しないセンサによって検出される各箇所における物品wの有無、及び、組合せ秤2の各物品投入口25、各振動フィーダ6、各分配搬送機構5、物品排出機構4での物品の要求状況に応じて、各物品排出機構4、各分配搬送機構5、及び、各振動フィーダ6が制御される。
【0050】
この実施形態では、前記物品排出機構4において搬送方向に沿って縦列状に配備された3つのガイド部材8は、それぞれ本発明の一実施形態に係るエアシリンダ装置によって独立して揺動駆動される。
【0051】
すなわち、前段搬送機構3における搬送径路の一方脇には、
図2,
図3に示すように、搬送方向に沿ってエアシリンダ装置を構成する3個の矩形箱型のケーシング30が縦列配備されている。
【0052】
この計量システムでは、上記のように生鮮食品である生肉を計量するものであり、このため、生肉が傷まないように低温であって、頻繁に洗浄等が行われる水気の多い結露し易い環境下で計量が行われる。
【0053】
この実施形態では、エアシリンダ装置のケーシング30内での結露を防止して、エアシリンダや金属作動部位の防錆を図っている。
【0054】
以下、このエアシリンダ装置について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0055】
各ケーシング30の上面には、前記縦支点aを中心に正逆回動可能に支軸31が立設され、この支軸31に縦壁状の前記ガイド部材8が搬送方向に向かう片持ち状に連結支持されている。
【0056】
詳しくは、前記支軸31には、縦壁状の連結板32が搬送方向に向かう片持ち状に溶接固着されている。この連結板32に沿わせてガイド部材8を位置決め係合し、連結板32に装備されたバックル型の締結金具33をガイド部材8の裏面に備えたフック8aに係止して死点越え操作することで、ガイド部材8を連結板32に対して一定姿勢に締付け連結するようになっている。また、締結金具33を解除方向に死点越え操作することで、ガイド部材8を連結板32から簡単に取り外して洗浄あるいは取り替え等を行うことができる。
【0057】
前記支軸31は、ケーシング30の上板内面に連結した防水型の上部軸受けブラケット34と、ケーシング30の下板内面に連結した下部軸受けブラケット35に亘って挿通支持されている。この支軸31のケーシング30の内部の中間位置には、作動アーム36が外嵌連結されている。この作動アーム36の遊端部に、ケーシング30に収容配備したエアシリンダ37が連動連結されている。
【0058】
前記エアシリンダ37は、シリンダケース37aの一端部からのみピストンロッド37bが突出され、ピストンロッド37bの短縮及び伸長作動をそれぞれエア駆動する片ロッド式複動型である。このエアシリンダ37のシリンダケース37aのボトム側が、
図5に示される支持ブラケット38を介してケーシング30の内面に支持されている。
【0059】
エアシリンダ37のピストンロッド37bが、支軸31に一体化された作動アーム36の遊端部に枢支連結されている。この実施形態では、エアシリンダ37が伸長状態にある時、ガイド部材8が搬送方向に沿った退避姿勢にあり、エアシリンダ37が短縮作動することで、ガイド部材8が搬送径路上に進出して搬送経路に斜めに交差した排出姿勢に揺動作動するようになっている。
【0060】
シリンダケース37aのボトム側に設けた給排ポートPaとロッド側に設けた給排ポートPbには、ケーシング30の側板を貫通してケーシング30内に水密状に挿入された圧縮空気の給排用の管路である一対のエア給排管39、40が連結接続されている。
図5に示すように、エア給排管39、40は、エア給排制御部41に連通接続されており、前段搬送機構3の物品搬送状況に応じてエアシリンダ37への圧縮空気の給排制御が行われる。
【0061】
なお、エア給排制御部41は、各エアシリンダ37に圧縮空気を給排制御する3台の電磁弁などが備えられている。この給排制御部41には、エアコンプレッサからの圧縮空気が、除湿装置及びレギュレータ等を介して供給される。このように給排制御部41に供給される圧縮空気は、除湿装置によって除湿されている。
【0062】
エアシリンダ37のボトム側に接続されたエア給排管39は、給排ポートPaの近傍に設けられた分岐配管42によって分岐されており、シリンダケース37aにおけるボトム側の給排ポートPaに連通される圧縮空気の管路Fから分岐された分岐管路Rがケーシング30内に開放されている。
【0063】
この分岐管路Rには、圧縮空気の流量を抑制する流量抑制部としてのオリフィス43が設けられており、シリンダケース37aのボトム側に供給される圧縮空気の一部が、分岐管路Rのオリフィス43を介してケーシング30内に漏洩されるようになっている。なお、オリフィス43は、給排ポートPaに供給される圧縮空気の圧力が所定の作動圧を確保できるよう所要の細径に設定されている。
【0064】
なお、この片ロッド複動型のエアシリンダ37においては、ロッド側のエア室におけるピストンの受圧面積が、ボトム側のエア室におけるピストンの受圧面積よりもピストンロッド37bの断面積だけ小さいので、一定のストロークでピストンロッド37bを伸長作動させるのに必要なエア量は、同ストロークでピストンロッド37bを短縮作動させるのに必要なエア量よりも多くなる。
【0065】
従って、単位時間当たりのエア供給量及びエア圧が一定であるとすると、ボトム側のエア室にエアを供給してピストンロッド37bを所定ストロークで伸長作動させるのに要する時間が、ロッド側のエア室にエアを供給してピストンロッド37bを同ストロークで短縮作動させるのに要する時間よりも若干長くなる。
【0066】
このため、この実施形態では、作動時間が長くなる伸長作動時に圧縮空気を分岐管路Rから漏洩させることで、短縮作動時に圧縮空気を漏洩させる場合に比べて、多くの除湿された圧縮空気をケーシング30に注入することができる。
【0067】
エアシリンダ装置のケーシング30の前面には、組み立て及びメンテナンス用の開口部50が設けられている。ケーシング30の前記開口部50の外周に沿って備えられたフランジ部30aに、フランジ部形状に合わせた形状のシール部材としてのシート状のパッキン44を挟んでカバー51が、水密状にボルト45で締付け連結されている。前記パッキン44は、その下部の一部が分断されて、迷路構造の細い排気流路46が形成されている。この排気流路46は、
図4の一部拡大図に示すように、分断されたパッキン44の一方の端部が、その幅方向の中間部で切欠かれて幅方向の両端が、パッキン44の他方の端部側に延出した第1,第2延出部44a,44bと、これら両延出部44a,44b間に入り込むように、パッキン44の他方の端部の幅方向の中間部から延出した第3延出部44cとを備え、屈曲蛇行した迷路構造となっている。
【0068】
この実施形態のエアシリンダ装置では、迷路構造の排気流路46及びカバー51によって、ケーシング30の開口部50からケーシング30内への洗浄水などの侵入を防止しながら、ケーシング30内の空気の外部への流出が許容されるようになっている。つまり、シリンダ作動によってケーシング30内へ繰り返し除湿された圧縮空気が注入されて内圧が不当に高まるのを抑制するようになっている。
【0069】
上記構成を有する本実施形態に係るエアシリンダ装置では、エア給排制御部41から除湿された圧縮空気がボトム側の給排ポートPaに供給されて、エアシリンダ37が伸長作動される都度、供給された圧縮空気の一部がオリフィス43を通してケーシング30内に漏洩注入されることで、ケーシング30内が除湿された空気で満たされ、これによって、結露の発生が防止されて、エアシリンダ37やケーシング30内の金属部位での錆の発生が抑制される。
【0070】
しかも、ケーシング30の内部に圧縮空気を供給する専用のエア圧送装置は不要であり、エアシリンダ37の駆動に本来備えられている装備のみでケーシング30の内部への圧縮空気の供給を行うことができるので、低コストで結露を防止することができる。
【0071】
また、分岐管路Rは、ケーシング30の内部の圧縮空気の管路Fを分岐したものであるので、エアシリンダ37の駆動に必要な配管のみをケーシング30に水密状に挿通すればよい。したがって、分岐箇所をケーシング30の外部に配備した場合のように、ケーシング30に、エアシリンダ37の駆動に必要な圧縮空気の配管と分岐管路の配管とを水密状にそれぞれ挿通する必要がなく、ケーシング30に水密状に挿通する配管の数が少なくて済み、部品コスト及び組み付けコストを低減することができる。
【0072】
上記実施形態では、エアシリンダ装置は、物品排出機構4のガイド部材8を揺動駆動したが、ガイド部材8に限らず、例えば、投入される物品を一旦貯留した後、下方へ排出するホッパに適用してもよい。すなわち、物品が投入される投入口及び物品を排出する排出口を有するホッパ本体と、揺動して前記排出口を開閉する排出ゲートとを備えるホッパにおいて、前記排出ゲートを、エアシリンダ装置によって、揺動駆動してもよい。
【0073】
また、エアシリンダ装置は、計量システムに限らず、他の生産システムの各種装置の駆動に使用できるのは勿論である。
[その他の実施形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0074】
(1)上記実施形態では、エアシリンダ37を伸長作動させる圧縮空気供給用の管路Fのみにオリフィスを備えた分岐管路Rを設けているが、ピストンロッド側の給排ポートPbに接続される圧縮空気の管路にもオリフィスを備えた分岐管路を設けて、エアシリンダ37を伸長作動させる場合のみならず短縮作動させる場合にもケーシング30内に圧縮空気を漏洩注入するようにしてもよい。
【0075】
あるいは、エアシリンダ37を伸長作動させる圧縮空気供給用の管路Fに代えて、ピストンロッド側の給排ポートPbに接続される圧縮空気の管路のみにオリフィスを備えた分岐管路を設けてもよい。
【0076】
(2)
図6に示すように、ケーシング30のフランジ部30aにカバー51を連結する連結部材としてのボルト45に細径の透孔47を貫通形成して、ケーシング30内の空気の外部への流出を許容する小断面積の排気流路とすることもできる。
【0077】
(3)カバー51の適所に、ケーシング30内への逆流を阻止する逆止弁付きの通気孔を設けて、防水機能を維持しながらケーシング内空気の流出を許容する排気流路を構成することもできる。
【0078】
この排気流路と、
図4の排気流路26、
図6の透孔47からなる排気流路を適宜組合せてもよい。
【0079】
(4)エアシリンダ37は、複動型に限らず、バネによって復帰作動する単動型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
8 ガイド部材
30 ケーシング
37 エアシリンダ
43 オリフィス
44 パッキン
45 ボルト
46 排気流路
47 透孔
51 カバー
F 圧縮空気の管路
R 分岐管路