(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】付着装置、ノズルセット及び付着方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20230213BHJP
B05B 16/00 20180101ALI20230213BHJP
【FI】
A61L2/18
B05B16/00
(21)【出願番号】P 2022008910
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021011105
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520275962
【氏名又は名称】北原 正裕
(74)【代理人】
【識別番号】100161975
【氏名又は名称】米田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】北原 正裕
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-156014(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0013691(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0138993(US,A1)
【文献】特開2019-058347(JP,A)
【文献】特表2008-526466(JP,A)
【文献】特開2004-275818(JP,A)
【文献】特許第6831033(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
B05B 13/02、16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の少なくとも一部に薬液を付着させる付着装置であって、
前記人の上方に位置して、平面視において前記人を挟むように配置され、前記薬液を噴霧する第1ノズルペアと、
前記人の上方に位置して、前記平面視において前記第1ノズルペアを結ぶ第1仮想直線と前記人を挟むように配置され、前記薬液を噴霧する第2ノズルペアと、
床面と、前記床面に前記人が立つ場合における立ち位置
を示すマークと、を有して、前記人が立った状態で前記人を収容可能、かつ、収容された前記人の上方に前記第1及び前記第2ノズルペアが配置された閉じた空間と、
を備え、
前記第1及び前記第2ノズルペアは、前記立ち位置に立つ前記人が水平方向に両手を広げた場合に、前記両手を広げた人が、前記平面視において、前記第1及び前記第2ノズルペアの各ノズルを角とする仮想四角領域の内側に位置するように配置され、
前記マークをもとに前記立ち位置に前記人が立った場合に、前記床面には、
前記マークをもとに前記立ち位置に立つ前記人の右足裏領域、左足裏領域、及び、前記右足裏領域と前記左足裏領域とに挟まれる間領域が形成され、
前記マークをもとに前記立ち位置に立つ前記人が前記水平方向に前記両手を広げ、前記平面視において、前記両手の端から端を直径とする円を仮想円領域とし、
前記平面視で前記第1仮想直線に直行、かつ、前記平面視で前記人に交差する仮想直線を第2仮想直線とするとともに、前記平面視で前記第2ノズルペアを結ぶ第3仮想直線に直行、かつ、前記平面視で前記人に交差する仮想直線を第4仮想直線とした場合に、
前記第1ノズルペアの各ノズルの中心軸は、前記平面視において、前記第2仮想直線に交差することなく、前記仮想円領域から前記右足裏領域、前記左足裏領域及び前記間領域を除いた領域と前記仮想四角領域とが重なる領域に位置する前記床面と交差し、
前記第2ノズルペアの各ノズルの中心軸は、前記平面視において、前記第4仮想直線に交差することなく、前記仮想円領域から前記右足裏領域、前記左足裏領域及び前記間領域を除いた領域と前記仮想四角領域とが重なる領域に位置する前記床面と交差する、付着装置。
【請求項2】
前記空間の内面の少なくとも一部には、撥水コーティング層が備わる、請求項1に記載の付着装置。
【請求項3】
前記空間は、前記床面に接続する側壁を備え、
前記側壁は、内面に前記撥水コーティング層を有し、
前記内面に、前記第1及び前記第2ノズルペアが取り付けられる請求項2に記載の付着装置。
【請求項4】
床面の予め定められた立ち位置
を示すマークをもとに前記立ち位置に人が立った場合に、前記床面には、前記立ち位置に立つ前記人の右足裏領域、左足裏領域、及び、前記右足裏領域と前記左足裏領域とに挟まれる間領域が形成され、
前記マークをもとに前記立ち位置に立った前記人の上方に配置されて、前記人の少なくとも一部に薬液を付着させるために前記薬液を噴霧するノズルセットであって、
前記人の上方に位置して、平面視において前記人を挟むように配置され、前記薬液を噴霧する第1ノズルペアと、
前記人の上方に位置して、前記平面視において前記第1ノズルペアを結ぶ第1仮想直線と前記人を挟むように配置され、前記薬液を噴霧する第2ノズルペアと、
を備え、
前記第1及び前記第2ノズルペアは、
前記マークをもとに前記立ち位置に立つ前記人が水平方向に両手を広げた場合に、前記両手を広げた人が、前記平面視において、前記第1及び前記第2ノズルペアの各ノズルを角とする仮想四角領域の内側に位置するように配置され、
前記マークをもとに前記立ち位置に立つ前記人が前記水平方向に前記両手を広げ、前記平面視において、前記両手の端から端を直径とする円を仮想円領域とし、
前記平面視で前記第1仮想直線に直行、かつ、前記平面視で前記人に交差する仮想直線を第2仮想直線とするとともに、前記平面視で前記第2ノズルペアを結ぶ第3仮想直線に直行、かつ、前記平面視で前記人に交差する仮想直線を第4仮想直線とした場合に、
前記第1ノズルペアの各ノズルの中心軸は、前記平面視において、前記第2仮想直線に交差することなく、前記仮想円領域から前記右足裏領域、前記左足裏領域及び前記間領域を除いた領域と前記仮想四角領域とが重なる領域に位置する前記床面と交差し、
前記第2ノズルペアの各ノズルの中心軸は、前記平面視において、前記第4仮想直線に交差することなく、前記仮想円領域から前記右足裏領域、前記左足裏領域及び前記間領域を除いた領域と前記仮想四角領域とが重なる領域に位置する前記床面と交差する、ノズルセット。
【請求項5】
床面の予め定められた立ち位置に人が立った場合に、前記床面には、前記立ち位置に立つ前記人の右足裏領域、左足裏領域、及び、前記右足裏領域と前記左足裏領域とに挟まれる間領域が形成され、
前記立ち位置に立った前記人を収容可能な閉じた空間に収容された前記人の上方から前記人の少なくとも一部に薬液を付着させる付着方法であって、
前記人の上方から、平面視において前記人を挟む第1位置及び第2位置から前記床面に向けて前記薬液を噴霧する第1噴霧工程と、
前記人の上方から、前記平面視において前記第1及び前記第2位置を結ぶ第1仮想直線と前記人を挟む第3位置及び第4位置から前記床面に向けて前記薬液を噴霧する第2噴霧工程と、
を備え、
前記立ち位置に立つ前記人が水平方向に両手を広げ、前記平面視において、前記両手の端から端を直径とする円を仮想円領域とし、
前記第1及び前記第2位置から前記床面に向けて、それぞれ延びる各直線を第1及び第2仮想軸線とし、
前記第3及び前記第4位置から前記床面に向けて、それぞれ延びる各直線を第3及び第4仮想軸線とし、
前記平面視において、前記第1位置、前記第2位置、前記第3位置、及び前記第4位置を角とする仮想四角領域の内側に前記水平方向に前記両手を広げて前記立ち位置に立つ前記人が配置され、
前記第1噴霧工程は、
前記平面視で前記第1仮想直線に直行、かつ、前記平面視で前記人に交差する仮想直線を第2仮想直線とした場合に、前記平面視において、前記第2仮想直線に交差することなく、前記仮想円領域から前記右足裏領域、前記左足裏領域及び前記間領域を除いた領域と前記仮想四角領域とが重なる領域に位置する前記床面に交差する前記第1及び前記第2仮想軸線に沿って、前記薬液を噴霧し、
前記第2噴霧工程は、
前記平面視で前記第3位置と前記第4位置を結ぶ第3仮想直線に直行、かつ、前記平面視で前記人に交差する仮想直線を第4仮想直線とした場合に、前記平面視において、前記第4仮想直線に交差することなく、前記仮想円領域から前記右足裏領域、前記左足裏領域及び前記間領域を除いた領域と前記仮想四角領域とが重なる領域に位置する前記床面に交差する前記第3及び前記第4仮想軸線に沿って、前記薬液を噴霧する、付着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着装置、ノズルセット及び付着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、室内に入室した人に薬液を噴霧する装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、人の頭部に向けて薬液の噴霧を行うため、薬液が頭部に集中して付着する。
【0005】
本発明の課題は、人の少なくとも一部に満遍なく薬液を付着させる付着装置、ノズルセット及び付着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の付着装置は、
人の少なくとも一部に薬液を付着させる付着装置であって、
人の上方に位置して、平面視において人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第1ノズルペアと、
人の上方に位置して、平面視において第1ノズルペアを結ぶ第1仮想直線と人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第2ノズルペアと、
床面と、床面に人が立つ場合における立ち位置を示すマークと、を有して、人が立った状態で人を収容可能、かつ、収容された人の上方に第1及び第2ノズルペアが配置された閉じた空間と、
を備え、
第1及び第2ノズルペアは、立ち位置に立つ人が水平方向に両手を広げた場合に、両手を広げた人が、平面視において、第1及び第2ノズルペアの各ノズルを角とする仮想四角領域の内側に位置するように配置され、
マークをもとに立ち位置に人が立った場合に、床面には、マークをもとに立ち位置に立つ人の右足裏領域、左足裏領域、及び、右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる間領域が形成され、
マークをもとに立ち位置に立つ人が水平方向に両手を広げ、平面視において、両手の端から端を直径とする円を仮想円領域とし、
平面視で第1仮想直線に直行、かつ、平面視で人に交差する仮想直線を第2仮想直線とするとともに、平面視で第2ノズルペアを結ぶ第3仮想直線に直行、かつ、平面視で人に交差する仮想直線を第4仮想直線とした場合に、
第1ノズルペアの各ノズルの中心軸は、平面視において、第2仮想直線に交差することなく、仮想円領域から右足裏領域、左足裏領域及び間領域を除いた領域と仮想四角領域とが重なる領域に位置する床面と交差し、
第2ノズルペアの各ノズルの中心軸は、平面視において、第4仮想直線に交差することなく、仮想円領域から右足裏領域、左足裏領域及び間領域を除いた領域と仮想四角領域とが重なる領域に位置する床面と交差する。
【0007】
本発明の付着装置は、各ノズルから噴霧される薬液が、いわば、人の足元の外側かつ人の近傍に位置する床面めがけて噴霧される。したがって、噴霧された気流は、床面にぶつかった後に気流の一部が人に沿うように上昇する。よって、人の特定の部位をめがけて薬液を噴霧する場合より人に満遍なく薬液を付着させることができる。なお、本明細書において、「薬液」とは、薬の液のみならず、薬の液を噴霧したり、微細化したりすることで生じる液滴も含まれる。
【0008】
本発明の実施態様では、
空間の内面の少なくとも一部には、撥水コーティング層を備えることができる。
【0009】
これによれば、空間内に噴霧された薬液が撥水コーティング層により空間内の内面に付着しにくくなり、薬液を人により付着させることが可能となる。
【0010】
本発明の実施態様では、
空間は、床面に接続する側壁を備え、
側壁は、内面に撥水コーティング層を有し、
側壁の内面に、第1及び第2ノズルペアを取り付けることができる。
【0011】
これによれば、側壁の内面に取り付けられた第1及び第2ノズルペアから噴霧される薬液が側壁内面の撥水コーティング層により、側壁内面に付着しにくくなり、ノズルから噴霧されて側壁内面にぶつかった気流が人に向けて流れやすくなり、人に付着させる薬液を増加させることができる。
【0012】
また、本発明のノズルセットは、
床面の予め定められた立ち位置を示すマークをもとに立ち位置に人が立った場合に、床面には、立ち位置に立つ人の右足裏領域、左足裏領域、及び、右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる間領域が形成され、
マークをもとに立ち位置に立った人の上方に配置されて、人の少なくとも一部に薬液を付着させるために薬液を噴霧するノズルセットであって、
人の上方に位置して、平面視において人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第1ノズルペアと、
人の上方に位置して、平面視において第1ノズルペアを結ぶ第1仮想直線と人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第2ノズルペアと、
を備え、
第1及び第2ノズルペアは、マークをもとに立ち位置に立つ人が水平方向に両手を広げた場合に、両手を広げた人が、平面視において、第1及び第2ノズルペアの各ノズルを角とする仮想四角領域の内側に位置するように配置され、
マークをもとに立ち位置に立つ人が水平方向に両手を広げ、平面視において、両手の端から端を直径とする円を仮想円領域とし、
平面視で第1仮想直線に直行、かつ、平面視で人に交差する仮想直線を第2仮想直線とするとともに、平面視で第2ノズルペアを結ぶ第3仮想直線に直行、かつ、平面視で人に交差する仮想直線を第4仮想直線とした場合に、
第1ノズルペアの各ノズルの中心軸は、平面視において、第2仮想直線に交差することなく、仮想円領域から右足裏領域、左足裏領域及び間領域を除いた領域と仮想四角領域とが重なる領域に位置する床面と交差し、
第2ノズルペアの各ノズルの中心軸は、平面視において、第4仮想直線に交差することなく、仮想円領域から右足裏領域、左足裏領域及び間領域を除いた領域と仮想四角領域とが重なる領域に位置する床面と交差する。
【0013】
本発明のノズルセットは、各ノズルから噴霧される薬液が、いわば、人の足元の外側かつ人の近傍に位置する床面めがけて噴霧される。したがって、噴霧された気流は、床面にぶつかった後に気流の一部が人に沿うように上昇する。よって、人の特定の部位をめがけて薬液を噴霧する場合より人に満遍なく薬液を付着させることができる。
【0014】
また、本発明の付着方法は、
床面の予め定められた立ち位置に人が立った場合に、床面には、立ち位置に立つ人の右足裏領域、左足裏領域、及び、右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる間領域が形成され、
立ち位置に立った人を収容可能な閉じた空間に収容された人の上方から人の少なくとも一部に薬液を付着させる付着方法であって、
人の上方から、平面視において人を挟む第1位置及び第2位置から床面に向けて薬液を噴霧する第1噴霧工程と、
人の上方から、平面視において第1及び第2位置を結ぶ第1仮想直線と人を挟む第3位置及び第4位置から床面に向けて薬液を噴霧する第2噴霧工程と、
を備え、
立ち位置に立つ人が水平方向に両手を広げ、平面視において、両手の端から端を直径とする円を仮想円領域とし、
第1及び第2位置から床面に向けて、それぞれ延びる各直線を第1及び第2仮想軸線とし、
第3及び第4位置から床面に向けて、それぞれ延びる各直線を第3及び第4仮想軸線とし、
平面視において、第1位置、第2位置、第3位置、及び第4位置を角とする仮想四角領域の内側に水平方向に両手を広げて立ち位置に立つ人が配置され、
第1噴霧工程は、
平面視で第1仮想直線に直行、かつ、平面視で人に交差する仮想直線を第2仮想直線とした場合に、平面視において、第2仮想直線に交差することなく、仮想円領域から右足裏領域、左足裏領域及び間領域を除いた領域と仮想四角領域とが重なる領域に位置する床面に交差する第1及び第2仮想軸線に沿って、薬液を噴霧し、
第2噴霧工程は、
平面視で第3位置と第4位置を結ぶ第3仮想直線に直行、かつ、平面視で人に交差する仮想直線を第4仮想直線とした場合に、平面視において、第4仮想直線に交差することなく、仮想円領域から右足裏領域、左足裏領域及び間領域を除いた領域と仮想四角領域とが重なる領域に位置する床面に交差する第3及び第4仮想軸線に沿って、薬液を噴霧する。
【0015】
本発明の付着方法は、第1~第4の各位置から薬液が、いわば、人の足元の外側かつ人の近傍に位置する床面めがけて噴霧される。したがって、噴霧された気流は、床面にぶつかった後に気流の一部が人に沿うように上昇する。よって、人の特定の部位をめがけて薬液を噴霧する場合より人に満遍なく薬液を付着させることができる。
【0016】
また、本発明の実施態様では、
着衣した人の衣服及び人の少なくとも一部に薬液を付着させる付着装置であって、
人の上方に位置して、平面視において人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第1ノズルペアと、
人の上方に位置して、平面視において第1ノズルペアを結ぶ仮想直線と人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第2ノズルペアと、
床面を有して、床面に人が両足を開いて立った状態で人を収容可能かつ、収容された人の上方に第1及び第2ノズルペアが配置された閉じた空間と、
を備え、
床面は、空間において人が両足を開いて立つ右足の立ち位置となる第1マークと、空間において人が両足を開いて立つ左足の立ち位置となる第2マークと、を有し、
第1マーク及び第2マークの上に両足を開いて立った人の右足裏領域、左足裏領域、及び右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる領域の外側に位置する床面に対して、第1及び第2ノズルペアの各ノズルの中心軸が交差し、
平面視において、各ノズルが仮想四角形の各頂点に相当するように各ノズルが四角形状に配置され、
仮想四角形において、1つの頂点を基点に接続する2辺を仮想第1辺と仮想第2辺とし、仮想第1辺の長さが仮想第2辺の長さ以下とした場合に、
仮想第1辺に沿う第1方向から見て、鉛直方向に延びる仮想鉛直線と中心軸とのなす角である第1角度が5度以上かつ15度以下であり、
仮想第2辺に沿う第2方向から見て、仮想鉛直線と中心軸とのなす角である第2角度が0度以上30度以下であり、
平面視において、第1マーク及び第2マークは、仮想四角形の内側に位置し、
第1ノズルペアは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
第2ノズルペアは、第3ノズルと第4ノズルを有し、
平面視において、第1ノズルの中心軸は、第1ノズルに対向する第3ノズルと第1ノズルとの中央より第1ノズル側において床面に交差し、
平面視において、第3ノズルの中心軸は、第3ノズルに対向する第1ノズルと第3ノズルとの中央より第3ノズル側において床面に交差し、
平面視において、第2ノズルの中心軸は、第2ノズルに対向する第4ノズルと第2ノズルとの中央より第2ノズル側において床面に交差し、
平面視において、第4ノズルの中心軸は、第4ノズルに対向する第2ノズルと第4ノズルとの中央より第4ノズル側において床面に交差し、
人が第1マーク及び第2マークに立って、水平方向に両手を広げた状態、かつ、平面視及び仮想第2辺に沿う方向を基準とし、人の両手側から足元側の領域において各ノズルの中心軸が床面と交差させることができる。
【0017】
これによれば、人に満遍なく薬液を付着させることができる。
【0018】
本発明の実施態様では、第1ノズルペアの第1角度と、第2ノズルペアの第1角度が異なってもよい。
【0019】
これによれば、着衣した人の衣服及び人により満遍なく薬液を付着させることができる。
【0020】
また、本発明の実施態様では、
人が両足を開いて立つ右足の立ち位置となる第1マークと、人が両足を開いて立つ左足の立ち位置となる第2マークと、を有する床面に両足を開いて立った状態で衣服を着衣した人の上方に配置されて、衣服及び人の少なくとも一部に薬液を付着させるために薬液を噴霧するノズルセットであって、
人の上方に位置して、平面視において人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第1ノズルペアと、
人の上方に位置して、平面視において第1ノズルペアを結ぶ仮想直線と人を挟むように配置され、薬液を噴霧する第2ノズルペアと、
を備え、
第1マーク及び第2マークの上に両足を開いて立った人の右足裏領域、左足裏領域、及び右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる領域の外側に位置する床面に対して、第1及び第2ノズルペアの各ノズルの中心軸が交差し、
平面視において、各ノズルが仮想四角形の各頂点に相当するように各ノズルが四角形状に配置され、
仮想四角形において、1つの頂点を基点に接続する2辺を仮想第1辺と仮想第2辺とし、仮想第1辺の長さが仮想第2辺の長さ以下とした場合に、
仮想第1辺に沿う第1方向から見て、鉛直方向に延びる仮想鉛直線と中心軸とのなす角である第1角度が5度以上かつ15度以下であり、
仮想第2辺に沿う第2方向から見て、仮想鉛直線と中心軸とのなす角である第2角度が0度以上30度以下であり、
平面視において、第1マーク及び第2マークは、仮想四角形の内側に位置し、
第1ノズルペアは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
第2ノズルペアは、第3ノズルと第4ノズルを有し、
平面視において、第1ノズルの中心軸は、第1ノズルに対向する第3ノズルと第1ノズルとの中央より第1ノズル側において床面に交差し、
平面視において、第3ノズルの中心軸は、第3ノズルに対向する第1ノズルと第3ノズルとの中央より第3ノズル側において床面に交差し、
平面視において、第2ノズルの中心軸は、第2ノズルに対向する第4ノズルと第2ノズルとの中央より第2ノズル側において床面に交差し、
平面視において、第4ノズルの中心軸は、第4ノズルに対向する第2ノズルと第4ノズルとの中央より第4ノズル側において床面に交差し、
人が第1マーク及び第2マークに立って、水平方向に両手を広げた状態、かつ、平面視かつ仮想第2辺に沿う方向を基準とし、人の両手側から足元側の領域において各ノズルの中心軸が床面と交差することができる。
【0021】
これによれば、人に満遍なく薬液を付着させることができる。
【0022】
本発明の実施態様では、
衣服を着衣した人が床面に両足を開いて立った状態で人を収容可能な閉じた空間に収容された人の上方から衣服及び人の少なくとも一部に薬液を付着させる付着方法であって、
人の上方から、平面視において人を挟む第1位置及び第2位置から、両足を開いて立った人の右足裏領域、左足裏領域、及び右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる領域の外側に位置する床面に向けて薬液を噴霧する第1噴霧工程と、
人の上方から、平面視において第1及び第2位置を結ぶ仮想直線と人を挟む第3位置及び第4位置から、外側に位置する床面に向けて薬液を噴霧する第2噴霧工程と、
を備え、
第1~第4位置から外側に位置する床面に向けて、それぞれ延びる各直線を仮想軸線とし、
平面視において、第1~第4位置が仮想四角形の各頂点に相当するように第1~第4位置が四角形状に位置し、
仮想四角形において、1つの頂点を基点に接続する2辺を仮想第1辺と仮想第2辺とし、仮想第1辺の長さが仮想第2辺の長さ以下とした場合に、
仮想第1辺に沿う第1方向から見て、鉛直方向に延びる仮想鉛直線と仮想軸線とのなす角である第1角度が5度以上かつ15度以下であり、
仮想第2辺に沿う第2方向から見て、仮想鉛直線と仮想軸線とのなす角である第2角度が0度以上30度以下とし、
平面視において、第1位置の仮想軸線は、第1位置に対向する第3位置と第1位置との中央より第1位置側において床面に交差し、
平面視において、第3位置の仮想軸線は、第3位置に対向する第1位置と第3位置との中央より第3位置側において床面に交差し、
平面視において、第2位置の仮想軸線は、第2位置に対向する第4位置と第2位置との中央より第2位置側において床面に交差し、
平面視において、第4位置の仮想軸線は、第4位置に対向する第2位置と第4位置との中央より第4位置側において床面に交差し、
両足を開いて立った人が水平方向に両手を広げた状態、かつ、平面視かつ仮想第2辺に沿う方向を基準とし、人の両手側から足元側の領域において第1~第4位置の各仮想軸線が床面と交差し、
第1噴霧工程及び第2噴霧工程は、第1~第4位置の各位置から各仮想軸線と床面が交差する方向に向けて、薬液を噴霧することができる。
【0023】
これによれば、人に満遍なく薬液を付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図1の消毒室内を平面視により見た模式断面図。
【
図3】
図1の消毒室内を正面視により見た模式断面図。
【
図4】
図1の消毒室内を平面視により見た模式断面図(ただし、
図2とは異なり、便宜的に一部の部品などは省略してある。)。
【
図5】
図1の付着装置の消毒室内を第1方向から見た場合のノズルの中心軸と仮想鉛直線とのなす角aを示す模式図。
【
図6】
図1の付着装置の消毒室内を第2方向から見た場合のノズルの中心軸と仮想鉛直線とのなす角bを示す模式図。
【
図7】実験例で使用したガーゼを人に取り付けた場所を示す模式正面図(人の顔側)。
【
図8】実験例で使用したガーゼを人に取り付けた場所を示す模式背面図(人の背中側)。
【
図9】実験例1~6において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図10】実験例7~11において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図11】実験例12~14において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図12】実験例15、16において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図13】実験例17~19において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図14】実験例20、21において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図15】実験例22において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図16】実験例23~25において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図17】実験例26~28において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図18】実験例29において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図19】実験例30、31において全身の一部に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図20】
図1の消毒室内を平面視により見た模式断面図(ただし、
図2及び
図4とは異なり、便宜的に一部の部品などを省略し、仮想円領域などを追加してある。)。
【
図21】
図1の消毒室内を平面視により見たものであり、仮装円領域や第1及び第2仮想直線などとの位置関係を示す模式断面図。
【
図22】
図1の消毒室内を平面視により見たものであり、仮装円領域や第3及び第4仮想直線などとの位置関係を示す模式断面図。
【
図23】
図21から第1仮想直線を省略し、ノズルの中心軸が位置する領域を斜線で示した模式断面図。
【
図24】
図22から第3仮想直線を省略し、ノズルの中心軸が位置する領域を斜線で示した模式断面図。
【
図25】実験例32、33において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図26】実験例34、35において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図27】実験例36、37において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【
図28】実験例38、39において全身に付着した薬液の付着量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一例の付着装置1を示す。付着装置1は、主に、着衣した人の衣服の表面及び人の少なくとも一部(衣服から露出している部分)に病原菌などを消毒する薬液を付着させる装置である。付着装置1は、衣服や人に付着した病原菌などを消毒する消毒室2と、消毒する薬液を蓄える薬液タンク3と、薬液タンク3から薬液を消毒室2内に供給する供給ポンプ4と、供給ポンプにより供給された薬液を霧状に噴霧するために用いるコンプレッサー5と、を備える。
【0026】
衣服や人に付着した病原菌などを消毒する消毒室2は、床6と、4つの側壁7と、天井8とを有する。消毒室2内を平面視で模式的に表した
図2に示すように、消毒室2は中空直方体状に形成される。床6は、平坦な板状に形成され、長辺6a1と短辺6a2を有する長方形状の床面6aを有する。床面6aの中央部には、消毒のために消毒室2内に入った人が立つ、予め定められた立ち位置を表示するマークMが表示される。マークMは、消毒室2内に入った人の右足の立ち位置を示すマークM1と、左足の立ち位置を示すマークM2とを有する。マークM1、M2は、消毒室2内に入った人の爪先が一方の長辺6a1、踵が他方の長辺6a1に対向するように床面6aに表示される。なお、マークM1とマークM2との中点を軸にマークM1とマークM2を反時計回りに90度回転させた位置にマークM´(マークM´1、マークM´2)が表示される。例えば、マークM、M´は、人の足(足裏)がマークM、M´の内側に収まる大きさに設定される。
【0027】
消毒室2は、床面6aの各長辺6a1及び各短辺6a2の縁部から上方に延びるように側壁7を有する。側壁7は、各長辺6a1の縁部から上方に延びる板状の側壁7aと、各短辺6a2の縁部から上方に延びる板状の側壁7bとを有する。側壁7として、2つの側壁7aと2つの側壁7bを有する。各側壁7aは、消毒室2に人が出入りする出入口となる扉Dを有する。また、
図1に示すように、一方の側壁7aには、消毒室2内に供給する薬液の噴霧条件などを制御する制御部Cを有する。なお、側壁7の内側(消毒室2の室内側の表面)には、撥水塗料が塗布され、側壁7の内表面には撥水コーティング層が備わる。
【0028】
消毒室2内を正面視で模式的に表した
図3に示すように、消毒室2は、側壁7に蓋をするように板状の天井8を有する。天井8、側壁7a及び床6により、消毒室2は閉じた空間となる。消毒室2は、
図2に示すマークMに人が立って、水平方向に手を広げた状態で人の両手が側壁7bに接しない大きさである。また、マークMに立った人がその場で鉛直方向を軸として90度回転するとともに、両手を腰にあてたポーズを取った状態で、肘などが側壁7aや扉Dに触れない大きさである。更に、消毒室2は、マークMに人が立って背筋を伸ばした状態で、人の頭と
図3に示す天井8との間に空間が形成される大きさである。
【0029】
図20には、立ち位置であるマークMをもとに床面6aに立った人が水平方向に両手を広げ、平面視において両手の端(左手の先LP)から端(右手の先RP)を直径DMとする円により形成される仮想円領域R5が示される。
【0030】
消毒室2内には、消毒室2内に薬液を噴霧させるノズル9が備わる。ノズル9は、
図2のマークMに人が立って背筋を伸ばした状態で、人の上方に位置する。
図4には、消毒室2の内部を平面視により見た様子が示される(ただし、消毒室2内の一部の部品などは便宜的に省略してある。)。
図4では、マークMに立っている人が両手を水平方向に広げた領域が便宜的に領域HRとして示される。ノズル9は、人の領域HRを挟むように配置される第1ノズルペア9a(ノズル9a1とノズル9a2のペア)と、
図4の第1ノズルペア9aを結ぶ第1仮想直線IL1及び人の領域HRを挟むように配置される第2ノズルペア9b(ノズル9b1とノズル9b2のペア)とを有する。消毒室2内には、第1及び第2ノズルペア9a、9bの計4つの噴霧ノズル(ノズルセット)が配置される。
図4において、各ノズル9が仮想四角形IQの各頂点に相当するように各ノズル9が四角形状に配置される。仮想四角形IQの内側に人の領域HRが含まれる。なお、仮想四角形IQには、1つの頂点Vを基点に接続する仮想第1辺IS1と仮想第2辺IS2が示される(ただし、仮想第1辺SI1<仮想第2辺SI2の長さ)。図示省略してあるが、各ノズル9は、短辺6a2の縁部から上方に延びる側壁7bに取り付けられる。ノズル9a1、9b2は、
図4において、図示左側の側壁7bに取り付けられ、ノズル9a2、9b1は、図示右側の側壁7bに取り付けられる。
図4においては、ノズル9a1とノズル9b1が対向するとともに、ノズル9a2とノズル9b2が対向して位置する。そのため、各ノズル9は、薬液を噴霧する噴霧口が消毒室2の中央側に向くように位置する。
【0031】
図4の仮想第1辺IS1に沿う第1方向から消毒室2内のノズル9a1、9b1を見た
図5に示すように、ノズル9a1、9b1は、ノズル9a1、9b1の中心軸Aと鉛直方向に延びる仮想鉛直線IVとのなす角a(鋭角)が、例えば、5度以上15度以下になるように側壁7bに取り付けられる。
図5において、中心軸Aは、各ノズル9a1、9b1を基点とするように仮想鉛直線IVから消毒室2内の中央側に傾いて位置する。なお、
図5では、ノズル9a1、9b1が側壁7bに取り付けられる詳細は省略してある。
【0032】
図21には、平面視において人(図示省略)を挟むように配置されたノズル9a1、9a2を結ぶ第1仮想直線IL1と、第1仮想直線IL1に直行し、かつ、平面視で人に交差する第2仮想直線IL2が示される。また、
図22には、平面視において人(図示省略)を挟むように配置されたノズル9b1、9b2を結ぶ第3仮想直線IL3と、第3仮想直線IL3に直行し、かつ、平面視で人に交差する第4仮想直線IL4が示される。
【0033】
また、
図4の仮想第2辺IS2に沿う第2方向から消毒室2内のノズル9b1、9a2を見た
図6に示すように、ノズル9b1、9a2は、ノズル9の中心軸Aと仮想鉛直線IVとのなす角b(鋭角)が、例えば、0度以上30度以下になるように側壁7bに取り付けられる。
図6において、中心軸Aは、各ノズル9a2、9b1を基点とするように仮想鉛直線IVから消毒室2内の中央側に傾いて位置する。なお、
図6では、ノズル9a2、9b1が側壁7bに取り付けられる詳細は省略してある。
【0034】
図5及び
図6に示すように各ノズル9の中心軸Aは、床面6aと交差する。
図2においては、中心軸Aが床面6aと交差する位置としては、マークM1に囲まれる領域R1、マークM2に囲まれる領域R2及び、マークM1とマークM2とに挟まれる領域R3の外側に位置する。なお、
図2において、破線で略扇状に描かれる領域R4は、ノズル9から噴霧される薬液の様子の一例を便宜的に表したものであり、
図2に示すように薬液が噴霧される状態に限定されるものではない。
【0035】
図3に示すように消毒室2内の上方には、噴霧する薬液を4つの各ノズル9に分流する分流容器10が位置する。分流容器10には、分流容器10に薬液を流通するための流通管10aと、各ノズル9に薬液を供給する供給管10bが接続される。また、消毒室2内の上方には、各ノズル9から薬液を噴霧するために各ノズル9圧縮空気を送るための空気供給管11が位置する。
図3では、図示省略してあるが、消毒室2の天井8には、流通管10a及び空気供給管11を消毒室2内に導くための貫通孔がそれぞれ形成される。流通管10a及び空気供給管11を通した貫通孔はパッキンなどで塞がれ、扉Dを閉めた状態で消毒室2は密閉された状態となる。
【0036】
図1に戻って、消毒室2内で衣服や人に付着した病原菌などを消毒する薬液は、薬液タンク3に蓄えられる。薬液タンク3は、薬液を貯蔵する容器である。薬液タンク3は、貯蔵した薬液の外部への流通を調節するバルブ3aと、バルブ3aに接続して供給ポンプ4に繋がる接続管3bを有する。薬液タンク3に貯蔵する薬液としては、例えば、次亜塩素酸水などである。
【0037】
接続管3bが接続する供給ポンプ4は、薬液タンク3から流通する薬液を消毒室2内に送るためのポンプである。供給ポンプ4は、接続管3bに接続して薬液が流入する流入口4aと、流入口4aから流入した薬液を消毒室2に向けて吐出する吐出口4bと、吐出口4bに接続して、供給ポンプ4から消毒室2に向けて供給される薬液の流通を調節するバルブ4cと、を有する。なお、バルブ4cには、一方に供給ポンプ4の吐出口4bが取り付けられ、他方には消毒室2内に薬液を送るための流通管10aが取り付けられる。流通管10aは、一端がバルブ4cに取り付けられ、他端が消毒室2内に分流容器10(
図3)に取り付けられる。薬液は、分流容器10を経て各ノズル9内に送られる。
【0038】
薬液が送られるノズル9には、ノズル9に送られた薬液をノズル9から霧状に噴霧するために圧縮空気が送られる。ノズル9に送られる圧縮空気は、
図1に示すように消毒室2の外側に位置するコンプレッサー5により送られる。コンプレッサー5は、外部から取り込んだ空気を圧縮して消毒室2内のノズル9に向けて圧縮空気を送る。コンプレッサー5により、ノズル9から噴霧する薬液の噴霧圧力を調整可能であり、例えば、ノズル9から噴霧する薬液の噴霧圧力を、例えば、0.2Mpa以上0.4Mpa以下に設定可能である。コンプレッサー5は、圧縮空気を消毒室2に向けて送る流通管5aと、流通管5aから流通する圧縮空気を制御する制御部Cと、制御部Cにより制御された圧縮空気を消毒室2内の各ノズル9に送る空気供給管11と、を有する。制御部Cは、コンプレッサー5から送られてくる圧縮空気をノズル9に搬送する間隔や時間などを調節する機構である。制御部Cにより、流通管5aから搬送された圧縮空気を所定時間連続して、又は、間欠的に空気供給管11に搬送する等し、ノズル9から薬液を噴霧する噴霧条件を調節できる。なお、消毒室2内の側壁7には、制御部Cなどにより調節された噴霧条件で薬液の噴霧を開始するためのスイッチ(図示省略)が備わる。
【0039】
以上の構成を有する付着装置1により、例えば、衣服を着た人の全身を消毒する。次に、衣服を着た人(使用者)の全身を付着装置1で消毒する方法を説明する。先ず、薬液タンク3のバルブ3aや供給ポンプ4のバルブ4bを開くとともに、ノズル9から薬液を噴霧する噴霧条件に応じてコンプレッサー5の圧力や制御部Cによりノズル9から薬液を噴霧する時間などを調節する。そして、供給ポンプ4やコンプレッサー5を稼働させて、ノズル9から薬液を噴霧できる状態にしておく。次に、衣服を来た人(全身の消毒をする使用者)が扉Dを開けて消毒室2内に入り、扉Dを閉める。扉Dを閉めると消毒室2内は密閉され、消毒室2内の気流が外部に漏れない状態となる。扉Dを閉めた後、使用者は、立ち位置となる
図2に示すマークM1内に右足裏、マークM2内に左足裏が位置するように、足を広げて立ち、両手を水平に広げ、いわば、Tの字のようなポーズをとる。このようにして使用者を消毒するための準備が完了する。
【0040】
消毒の準備が完成したら、次に、消毒室2内の内壁についているスイッチ(図示省略)を使用者が手で押す。すると、制御部Cによりスイッチの押圧が検出され、ノズル9から、予め設定された条件での薬液の噴霧が行われる。例えば、全てのノズル9から20秒間連続して薬液の噴霧をして5秒のインターバルをおく、との工程を4回繰り返し、最後に全てのノズル9から20秒間、連続して薬液の噴霧をし、30秒のインターバルをおいて、薬液の噴霧が終了する。薬液の噴霧終了後は、扉Dから使用者が消毒室2の外に出る。このようにして、衣服を着た人の全身の消毒が終了する。1人の人の消毒が終われば、同じように別の人が消毒することが可能となる。
【0041】
ノズル9a1、9a2、ノズル9a1、9a2の中心軸A、人の立ち位置を示すマークM、第1及び第2仮想直線IL1、IL2、仮想四角形IQ、及び、仮想円領域R5の平面視における位置関係が
図21に示される。
図21では、ノズル9a1とノズル9a2の各中心軸Aは、第2仮想直線IL2に交差することない。加えて、ノズル9a1とノズル9a2の各中心軸Aは、仮想円領域R5からマークM1に相当する領域R1、マークM2に相当する領域R2、及び、マークM1とマークM2とに挟まれる領域R3を除いた領域と仮想四角IQの領域とが重なる領域(
図23の斜線領域DR)に位置する床面6aと交差する。言い換えれば、
図23の平面視において、ノズル9a1とノズル9a2の各中心軸Aは、第2仮想直線IL2に交差することなく、かつ、領域R1、R2、R3に重ならないように斜線領域DRに位置する。また、ノズル9b1、9b2、ノズル9b1、9b2の中心軸A、人の立ち位置を示すマークM、第3及び第4仮想直線IL3、IL4、仮想四角形IQ、及び、仮想円領域R5の平面視における位置関係が
図22に示される。
図22では、ノズル9b1とノズル9b2の各中心軸Aは、第4仮想直線IL4に交差することない。加えて、ノズル9b1とノズル9b2の各中心軸Aは、仮想円領域R5からマークM1に相当する領域R1、マークM2に相当する領域R2、及び、マークM1とマークM2とに挟まれる領域R3を除いた領域と仮想四角IQの領域とが重なる領域(
図24の斜線領域DR)に位置する床面6aと交差する。言い換えれば、
図24の平面視において、ノズル9b1とノズル9b2の各中心軸Aは、第4仮想直線IL4に交差することなく、かつ、領域R1、R2、R3に重ならないように斜線領域DRに位置する。そのため、各ノズル9から噴霧される薬液が、いわば、人の足元の外側の外周部である人の近傍に位置する床面6a(
図23、
図24の斜線領域DRに位置する床面6a)めがけて噴霧される。噴霧された気流は、床面6aにぶつかった後に気流の一部が人に沿うように上昇する。よって、人の特定の部位をめがけて薬液を噴霧する場合より着衣した人の衣服及び人に満遍なく薬液を付着させることができる。また、
図20に示すように、立ち位置に立った人が水平方向に両手を広げた手の端LPと端RPを結んだ直線DMを直径とする仮想円領域R5内に位置する床面6a(
図23、
図24の斜線領域DRに位置する床面6a)めがけて噴霧されるため、立ち位置に立った人が両手を水平方向に広げた際にも、着衣した人の衣服及び人に満遍なく薬液を付着させることができる。なお、消毒室2の内面の側壁7の内表面に備わる撥水コーティング層により、消毒室2内に噴霧された薬液が側壁7の内表面に付着しにくくなり、消毒室2内に噴霧される気流量を増やすことができる。その結果、人に付着させる薬液量を増加させることが可能となる。
【実施例】
【0042】
以下、実験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0043】
まず、実験例1~31において、概ね共通する事項を説明する。付着装置1として、室内が幅1.65m、奥行き0.74m、高さ2.4mの直方体状の消毒室2を用意し、消毒室2の側壁7bの高さ2mの位置に4つのノズル9を設置した。設置した各ノズル9は、
図2に示す中心軸Aが、両足を開いて立った人の右足裏領域(マークM1の領域R1に相当する領域)、左足裏領域(マークM2の領域R2に相当する領域)、及び右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる領域(領域R3に相当する領域)の外側に位置する床面6aに交差するように設定した。ノズル9としては、スプレーイングシステムジャパン社製のエアー噴霧式加湿器のノズルを使用した。また、ノズル9から噴霧する薬液としては、CELA(登録商標)水と呼ばれる非電解の弱酸性次亜塩素酸水(pH6.5、残留塩素濃度50ppm)を用いた。ノズル9から薬液を噴霧する条件としては、ノズル9の噴霧液量を0.69ml/秒、ノズル9から噴霧されるザウター平均粒子径8.5μmに設定した。消毒室2内で全身を消毒する人(着衣した人)には、身体の各部位(
図7及び
図8に示すように、頭頂部A1、後頭部A2、側頭部右A3、側頭部左A4、首A5、胸部B1、腹部B2、脇腹右B3、脇腹左B4、背中B5、腰B6、股B7、右上腕表HR1、右前腕表HR2、右上腕裏HR3、右前腕裏HR4、左上腕表HL1、左前腕表HL2、左上腕裏HL3、左前腕裏HL4、右太もも表LR1、右脛LR2、右太もも裏LR3、右脹脛LR4、右太もも内LR5、左太もも表LL1、左脛LL2、左太もも裏LL3、左脹脛LL4、左太もも内LL5の30か所)に10cm×10cmのガーゼを取り付けた。そして、
図2に示す消毒室2内の床面6aのマークM1上に右足裏、マークM2上に左足裏が位置するように、足を広げて立って、両手を水平に広げた状態(Tの字のポーズ)にして全ノズル9から薬液の噴霧を行う。噴霧開始から20秒を経過すると、消毒室2内の人は、その場で鉛直方向を軸として90度回転し、右足裏がマークM´1上に、左足裏がマークM´2に位置するとともに、側壁7に手が触れないように両手を腰にあてたポーズ(アキンボーのポーズ)をとる。そして、更に20秒を経過すると、先ほどと逆方向に90度回転するとともに、両手を水平に広げた状態(最初にしたTの字のポーズ)をとる。その後も、20秒毎に、アキンボーのポーズ→Tの字のポーズ→アキンボーのポーズ→Tの字のポーズのように各ポーズを繰り返す。薬液の噴霧開始から所定時間が経過したら薬液の噴霧を止めて、扉Dから消毒室2の外に出て、身体の各部位に取り付けた10cm×10cmのガーゼを取り外し、消毒室2に入る前後でのガーゼの重さ(g)の差の絶対値を100cm
2で除法した数値を人に付着した薬液の着水量(mg/cm
2)として測定した。
【0044】
実験例1~6においては、各ノズル9を消毒室2内のそれぞれの角に取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、薬液の噴霧開始から、20秒間、薬液を噴霧し、5秒のインターバルを置く間欠噴霧を4回行った後、最後に20秒間、薬液を噴霧した(消毒室2において、次亜塩素酸水の密度を94.2g/m
3とした)。最後の薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定を行った。
図5に示すノズル9の中心軸Aと仮想鉛直線IVとのなす角aを10度に固定する一方で、実験例1では、
図6に示すノズル9の中心軸Aと仮想鉛直線IVとのなす角bを0度、実験例2ではなす角bを5度、実験例3ではなす角bを10度、実験例4ではなす角bを15度、実験例5ではなす角bを30度、実験例6ではなす角bを45度として測定を行った。
【0045】
図9には、実験例1~6の測定結果が示される。
図9では、実験例6(なす角bが45度)の左前腕表の着水量が示されていないが、具体的な着水量は、10.3であった。なす角bが45度の場合には、着水量のバラツキが大きく、全身に満遍なく薬液を付着させれないため、なす角bは0度以上30度以下が好ましい。
【0046】
実験例7~11においては、各ノズル9を消毒室2内のそれぞれの角に取り付け、
図5のなす角aを10度、
図6のなす角bを5度に固定した。また、実験例7、8、10、11では、薬液の噴霧開始から、20秒間、薬液を噴霧し、5秒のインターバルを置く間欠噴霧を4回行った後、最後に20秒間、薬液を噴霧した。最後の薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした(合計で100秒の薬液噴霧時間)。実験例9では、薬液の噴霧開始から、20秒間、薬液を噴霧し、5秒のインターバルを置く間欠噴霧を3回行った後、最後に20秒間、薬液を噴霧した。最後の薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定した(合計で80秒の薬液噴霧時間)。また、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力としては、実験例7が0.2Mpa、実験例8が0.3Mpa、実験例9が0.4Mpa、実験例10が0.4Mpa、実験例11が0.3Mpa(ただし、付着装置1の扉Dを開放したまま薬液の噴霧した)として、測定をした。
【0047】
図10には、実験例7~11の測定結果が示される。実験例11に示すように扉Dを開放した場合には、外気の影響により十分な着水量を全く得られなかった。噴霧圧力としては、0.2Mpa以上0.4Mpa以下であれば、全身に満遍なく薬液を付着させることができた。実験例9と実験例10の比較からわかるように、薬液の噴霧時間が長いほど全身に付着させることができる着水量は多くなった。
【0048】
実験例12~14においては、各ノズル9を消毒室2内のそれぞれの角に取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、薬液の噴霧開始から、20秒間、薬液を噴霧し、5秒のインターバルを置く間欠噴霧を4回行った後、最後に20秒間、薬液を噴霧した。最後の薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。
図6のなす角bを5度に固定する一方で、実験例12では、
図5のなす角度aを5度、実験例13ではなす角aを10度、実験例14ではなす角aを15度として測定を行った。
【0049】
図11には、実験例12~14の測定結果が示される。
図5のなす角aが5度以上15度以下であれば、全身にほぼ0.5を超える十分な着水量が得られ、満遍なく薬液を付着させることができた。
【0050】
実験例15、16においては、各ノズル9を消毒室2内のそれぞれの角に取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、薬液の噴霧開始から、100秒間、連続して薬液を噴霧した。薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。
図6のなす角bを5度に固定する一方で、実験例15では、
図5のなす角度aを5度、実験例16ではなす角度aを10度として測定をした。
【0051】
図12には、実験例15、16の測定結果が示される。間欠で薬液の噴霧を行った実験例12、13(
図11)と比較すると、連続して薬液を噴霧した実験例15、16(
図12)では、間欠で薬液を噴霧した場合よりも着水量のバラツキが目立つ。これは、間欠的に薬液を噴霧する場合には、薬液を噴霧しないインターバルにより、再度、薬液を噴霧する際に、消毒室2内に漂う薬液の気流に噴霧された薬液が衝突することで、薬液の拡散が促されるためだと推測される。
【0052】
実験例17~19においては、消毒室2の奥行き方向において手前から0.185mと0.555mの両側の位置にそれぞれノズル9を取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、薬液の噴霧開始から、100秒間、連続して薬液を噴霧した。薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。
図6のなす角bを0度に固定する一方で、実験例17では、
図5のなす角度aを5度、実験例18ではなす角度aを10度、実験例19ではなす角度aを15度として測定を行った。
【0053】
図13には、実験例17~19の測定結果が示される。連続して薬液を噴霧する場合であっても、
図6のなす角bが0度、かつ、
図5のなす角aが5度以上15度以下であれば、全身にほぼ0.5を超える着水量が得られ、満遍なく薬液を付着させることができた。
【0054】
実験例20、21においては、消毒室2の奥行き方向において手前から0.185mと0.555mの両側の位置にそれぞれノズル9を取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、薬液の噴霧開始から、100秒間、連続して薬液を噴霧した。薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。
図6のなす角bを0度に固定した。実験例20では、
図5の第1ノズルペア9aのなす角aを15度、第2ノズルペア9bのなす角aを10度とした。実験例21では、第1ノズルペア9aのなす角aを15度と10度、第2ノズルペア9bのなす角aを15度と10度とし、消毒室2の長手方向において向かい合うノズル9のなす角aが同じ角度になるようにし、測定した。
【0055】
図14には、実験例20、21の測定結果が示される。実験例20のグラフからわかるように第1及び第2ノズルペア9a、9bの各ペアのなす角aを同じにすることで、全身に1を超える着水量が得られ、とても満遍なく薬液を付着させることができた。一方、第1及び第2ノズルペア9a、9bの各ペアのなす角aを変えてしまうと、着水量に若干のバラツキが見られた。
【0056】
実験例22においては、実験例20と第1及び第2ノズルペア9a、9bのなす角aを変えて測定をした。具体的には、第1ノズルペア9aのなす角aを15度、第2ノズルペア9bのなす角aを5度として測定をした。
【0057】
図15には、実験例22の測定結果が示される。全身にほぼ1を超える着水量が得られ、とても満遍なく薬液を付着させることができた。
図14の実験例20からもわかるように、第1及び第2ノズルペア9a、9bの各ペアのなす角aを同じにすることで、満遍なく薬液を付着できることがわかる。
【0058】
実験例23~25においては、消毒室2の奥行き方向において手前から0.185mと0.555mの両側の位置にそれぞれノズル9を取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、薬液の噴霧開始から、100秒間、連続して薬液を噴霧した。薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。また、
図6のなす角bを0度に固定した。実験例23では、
図5のなす角aを全て5度とし、実験例24ではなす角aを全て10度とし、実験例25ではなす角aを全て15度とし、測定した。
【0059】
図16には、実験例23~25の測定結果が示される。第1ノズルペア9aと第2ノズルペア9bとの間において、なす角aを異なるようにした実験例20、22(
図14、
図15)に比べて、第1ノズルペア9aと第2ノズルペア9bとの間において、なす角aを同じにした実験例23~25(
図16)では、全身への着水量に若干のばらつきが生じた。そのため、第1ノズルペア9aと第2ノズルペア9bとの間において、なす角aを異なるようにすることで、噴霧された薬液が効果的に拡散され、全身へ満遍なく薬液が付着すると考えられる。
【0060】
実験例26~28においては、消毒室2の奥行き方向において手前から0.185mと0.555mの両側の位置にそれぞれノズル9を取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。薬液の噴霧開始から、20秒間、薬液を噴霧し、2秒のインターバルを置く間欠噴霧を4回行った後、最後に20秒間、薬液を噴霧した。最後の薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした(合計で100秒の薬液噴霧時間)。また、
図5の第1ノズルペア9aのなす角aを15度、第2ノズルペア9bのなす角aを10度とし、
図6のなす角bを0度に固定した。実験例26では、各ノズル9の噴霧液量を0.69ml/秒から0.28ml/秒、ノズル9から噴霧されるザウター平均粒径を7.6μmに設定した(薬液噴霧終了後の消毒室2において、次亜塩素酸水の密度を38.2g/m
3とした)。実験例27では、各ノズル9の噴霧液量を0.83ml/秒、ノズル9から噴霧されるザウター平均粒径を9.0μmとし(薬液噴霧終了後の消毒室2において、次亜塩素酸水の密度を113.3g/m
3とし)、実施例28では、各ノズル9の噴霧液量を1.25ml/秒、ノズル9から噴霧されるザウター平均粒径を11.2μmとし(薬液噴霧終了後の消毒室2において、次亜塩素酸水の密度を170.6g/m
3とし)、測定した。
【0061】
図17には、実験例26~28の測定結果が示される。
図17では、実験例28の右上上表の着水量が示されていないが、具体的な着水量は、12.1であった。
図17に示すように各ノズル9の噴霧液量を0.28ml/秒とすると、着水量が0.5を下回る個所が多くなり、十分な着水量が得られなかった。各ノズル9の噴霧液量が0.69ml/秒である実験例20及び実験例27、28に示すように各ノズル9の噴霧液量が0.69ml/秒以上、かつ、1.25ml/秒以下であれば(薬液噴霧終了後の消毒室2において、次亜塩素酸水の密度が94.2g/m
3以上、かつ、170.6g/m
3以下であれば)、全身に0.5を超える着水量が得られ、満遍なく薬液を付着させることができた。
【0062】
実験例29においては、
図5の第1ノズルペア9aのなす角aを15度、第2ノズルペア9bのなす角aを5度とする以外は、実験例28と同じ条件にし、測定した。
【0063】
図18には、実験例29の測定結果が示される。股の着水量が0.5であるものの、その他の箇所については、非常に高い着水量が得られた。なお、股の着水量が0.5であった要因としては、着水量を測定するために股に取り付けたガーゼが股の間に挟まれ、ガーゼに薬液が付着する付着面積を十分に確保できなかったためと考えられる。
【0064】
実験例30においては、
図5の第1ノズルペア9aのなす角aを15度、第2ノズルペア9bのなす角aを5度とする以外は、実験例27と同じ条件にし、測定時間の短縮を図るために、特定の部位だけの着水量を測定した。実験例31においては、薬液の噴霧開始から、15秒間、薬液を噴霧し、2秒のインターバルを置く間欠噴霧を4回行った後、最後に15秒間、薬液を噴霧した。最後の薬液の噴霧が終わった以降は、ポーズを変化させず、30秒間同じ姿勢を保ち、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定(合計で75秒の薬液噴霧時間)をする以外は、実験例29と同じ条件にし、測定時間の短縮を図るために、特定の部位だけの着水量を測定した。
【0065】
図19には、実験例30、31の測定結果が示される。各ノズル9の噴霧液量が0.83ml/秒の場合においても、実験例27から実験例30のように
図5の第1及び第2ノズルペア9aのなす角aを変えても、0.5を超える着水量が得られた。また、実験例31に示すように、各ノズル9の噴霧水液が1.25ml/秒と1秒間に噴霧する水液を多くすることで、薬液噴霧時間を100秒から75秒に短縮したとしても、ほとんどの部位で1を超える着水量を得られた。そのため、薬液噴霧時間としては、75秒以上、かつ、100秒以下であれば、全身に満遍なく薬液を付着させることができる。
【0066】
上記の実験例の一部において、10cm×10cmのガーゼを取り外し、着水量を測定する際に、
図7及び
図8における側頭部左A4、胸部B1、股B7、腰B6、右上腕裏HR3、左太もも表LL1のガーゼに対して、次亜塩素酸試験紙にて残留塩素濃度を測定したところ、いずれも10ppm以上の残留塩素濃度を確認できた。
【0067】
次に、実施例32~39において、概ね共通する事項を説明する。付着装置1として、室内が幅1.65m、奥行き0.74m、高さ2.4mの直方体状の消毒室2を用意し、消毒室2の奥行き方向において手前から0.185mと0.555mの両側の位置にそれぞれノズル9を取り付け、各ノズル9から噴霧される薬液の噴霧圧力を0.3Mpaにした。また、各ノズル9は、
図6のなす角bを0度に固定する一方で、
図5のなす角度aを15度とし、各ノズル9の中心軸Aが、
図23及び
図24の斜線領域DRに位置するようにした。ノズル9としては、スプレーイングシステムジャパン社製のエアー噴霧式加湿器のノズルを使用した。また、ノズル9から噴霧する薬液としては、CELA(登録商標)水と呼ばれる非電解の弱酸性次亜塩素酸水(pH6.5、残留塩素濃度50ppm)を用いた。ノズル9から薬液を噴霧する条件としては、ノズル9の噴霧液量を1.25ml/秒、ノズル9から噴霧されるザウター平均粒子径11.2μmに設定した。消毒室2内で全身を消毒する人(着衣した人)には、実施例1などと同様に身体の各部位に10cm×10cmのガーゼを取り付けた。そして、
図2に示す消毒室2内の床面6aのマークM1内に右足裏、マークM2内に左足裏が位置するように、足を広げて立って、両手を水平に広げた状態(Tの字のポーズ)にして全ノズル9から薬液の噴霧を行う。噴霧開始から20秒を経過すると、消毒室2内の人は、その場で鉛直方向を軸として90度回転し、右足裏がマークM´1上に、左足裏がマークM´2に位置するとともに、側壁7に手が触れないように両手を腰にあてたポーズ(アキンボーのポーズ)をとる。そして、更に20秒を経過すると、先ほどと逆方向に90度回転するとともに、両手を水平に広げた状態(最初にしたTの字のポーズ)をとる。その後も、20秒毎に、アキンボーのポーズ→Tの字のポーズ→アキンボーのポーズ→Tの字のポーズのように各ポーズを繰り返す。薬液の噴霧開始から所定時間が経過したら薬液の噴霧を止めて、扉Dから消毒室2の外に出て、身体の各部位に取り付けた10cm×10cmのガーゼを取り外し、消毒室2に入る前後でのガーゼの重さ(g)の差の絶対値を100cm
2で除法した数値を人に付着した薬液の着水量(mg/cm
2)として測定した。
【0068】
実験例32及び33においては、薬液の噴霧開始から、25秒間、薬液を噴霧し、2秒のインターバルを置き、その後、21秒間薬液を噴霧し、2秒間のインターバルを置く間欠噴霧(21秒間の薬液噴霧と2秒間のインターバルの間欠噴霧)を4回行った後に、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。また、実験例32においては、側壁7の内面に満遍なく撥水塗料を塗布したのに対して、実施例33において、側壁7には撥水塗料を塗布せずに測定をした。
【0069】
図25には、実験例32及び33の測定結果が示される。実験例32に示すように側壁7に撥水塗料を塗布した場合には、撥水塗料を塗布しない実施例33よりも概ね全身の各部位において、より多くの薬液を付着させることができた。
【0070】
実験例34及び35においては、薬液の噴霧開始から、22秒間、薬液を噴霧し、2秒のインターバルを置き、その後、18秒間薬液を噴霧し、2秒間のインターバルを置く間欠噴霧(18秒間の薬液噴霧と2秒間のインターバルの間欠噴霧)を4回行った後に、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。また、実験例34においては、側壁7の内面に満遍なく撥水塗料を塗布したのに対して、実施例35において、側壁7には撥水塗料を塗布せずに測定をした。
【0071】
図26には、実験例34及び35の測定結果が示される。実験例34に示すように側壁7に撥水塗料を塗布した場合には、撥水塗料を塗布しない実施例35よりも概ね全身の各部位において、より多くの薬液を付着させることができた。
【0072】
実験例36及び37においては、薬液の噴霧開始から、22秒間、薬液を噴霧し、2秒のインターバルを置き、その後、18秒間薬液を噴霧し、2秒間のインターバルを置く間欠噴霧(18秒間の薬液噴霧と2秒間のインターバルの間欠噴霧)を4回行った後に、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。また、実験例36においては、側壁7の内面に満遍なく撥水塗料を塗布したのに対して、実施例37において、側壁7には撥水塗料を塗布せずに測定をした。
【0073】
図27には、実験例36及び37の測定結果が示される。実験例36に示すように側壁7に撥水塗料を塗布した場合には、撥水塗料を塗布しない実施例37よりも概ね全身の各部位において、より多くの薬液を付着させることができた。
【0074】
実験例38及び39においては、薬液の噴霧開始から、18秒間、薬液を噴霧し、2秒のインターバルを置き、その後、14秒間薬液を噴霧し、2秒間のインターバルを置く間欠噴霧(14秒間の薬液噴霧と2秒間のインターバルの間欠噴霧)を4回行った後に、扉Dから消毒室2の外に出て着水量の測定をした。実験例38においては、側壁7の内面に満遍なく撥水塗料を塗布したのに対して、実施例39において、側壁7には撥水塗料を塗布せずに測定をした。
【0075】
図28には、実験例38及び39の測定結果が示される。実験例38に示すように側壁7に撥水塗料を塗布した場合には、撥水塗料を塗布しない実施例39よりも概ね全身の各部位において、より多くの薬液を付着させることができた。
【0076】
以上の実験例から、各ノズル9から噴霧される薬液が消毒室2内の人の足元(右足裏領域、左足裏領域、及び右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる領域)の外側、いわば、人の足元の外側の外周部である人の近傍領域(
図23、
図24の斜線領域DRに位置する床面6a)床面6aをめがけて噴霧すると、人に満遍なく薬液を付着させることが可能となる。具体的には、
図5のなす角aが5度以上15度以下であり、
図6のなす角bが0度以上30度以下であると、効果的である。また、第1ノズルペア9aと第2ノズルペア9bとの間において、
図5のなす角aを異なるようにすることで、噴霧された薬液が効果的に拡散され、全身へ満遍なく薬液が付着させることが可能となる。また、
図6のなす角bを0度とする場合には、ノズル9を消毒室2内に取り付ける際に、なす角aのみを調整すればよく、調整が容易となる。そして、なす角bが0度の場合であっても、
図13に示すように全身に満遍なく薬液を付着させることができる。
図23、
図24に示すように、各ノズル9の中心軸Aが斜線領域DRに位置し、領域R1、R2、R3に交差しないように位置することで、マークM1、M2の立ち位置に立った人が両手を水平方向に広げた際にも、着衣した人の衣服及び人に満遍なく薬液を付着させることができる。
【0077】
また、実験例32~39から、消毒室2の内面の側壁7の内表面に備わる撥水コーティング層(塗布された撥水塗料でコーティングされた表層)により、消毒室2内に噴霧された薬液が側壁7の内表面に付着しにくくなり、人に付着させる薬液量を増加させることが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施の態様を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【0079】
上記では、
図2に示すノズル9の中心軸Aとしては、
図2以外にも、消毒室2内の人の足元(右足裏領域、左足裏領域、及び右足裏領域と左足裏領域とに挟まれる領域)の外側に位置する床面6aと交差するならば、種々の配置になってよい。
【0080】
上記では、消毒室2内に1人の人が入って消毒をする例を示したが、閉じた広い空間内に第1及び第2ノズルペア9a、9bのセットを複数設置するとともに、各第1及び第2ノズルペア9a、9bに挟まれるように人を配置し、一度に複数の人を消毒してもよい。
【0081】
上記では、
図2に示すように4つのノズル9が平面視において、長方形状に位置するように配置される例を示したが、4つのノズル9が正方形状に配置されてもよい。
【0082】
図23及び
図24では、各ノズル9の中心軸Aが斜線領域DRの内側に向けて延びる例を示したが、中心軸Aが斜線領域DRの外縁(仮想第2辺IS2)に重なるように位置する場合でも良い。
【0083】
上記では、マークMの外側に位置する床面6aをめがけて薬液を噴霧する例を示したが、マークMを基準とする代わりに、マークMをもとに消毒室2内に立った人の足の位置に基づいてノズル9の中心軸Aを設定してもよい。例えば、マークMをもとに消毒室2内に立った人の右足裏領域を領域R1、左足裏領域を領域R2、右足裏領域及び左足裏領域に挟まれた間領域を領域R3として、各領域R1~R3に重ならないようにノズル9の中心軸Aが位置するように設定してもよい。
【0084】
上記では、側壁7の内表面に撥水コーティング層を設ける例を示したが、撥水コーティング層を床面6aに設けても良い。これにより、床面6aにめがけて噴霧される薬液が床面6aに付着しにくくなり、噴霧された薬液を人により付着させやすくなる。また、上記では、側壁7の内表面の全体に撥水コーティング層を設ける例を示したが、噴霧される薬液の気流がぶつかりやすい側壁7の一部のみに撥水コーティング層を設けてもよい。なお、撥水コーティング層を備える側壁7にノズル9を取り付けることで、ノズル9から噴霧される薬液がノズル9を起点に広がる際にノズル9から広がった薬液がノズル9周辺に位置する側壁7に付着するのが抑制され、人に向かう薬液の気流量を増やすことができ、人に薬液をより付着させやすくなる。
【符号の説明】
【0085】
1 付着装置 2 消毒室
3 薬液タンク 4 供給ポンプ
5 コンプレッサー 6 床
6a 床面 7 側壁
7a 側壁 7b 側壁
7a 取付部 7b 本体
8 天井 9 ノズル
9a 第1ノズルペア 9b 第2ノズルペア
A 中心軸 IL1 第1仮想直線
IL2 第2仮想直線 IL3 第2仮想直線
IL4 第4仮想直線 IQ 仮想四角形
IS1 仮想第1辺 IS2 仮想第2辺
IV 仮想鉛直線 R1 領域(右足裏領域)
R2 領域(左足裏領域) R3 領域(間領域)
R4 仮想円領域