IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターガス・ヒーティング・アセッツ・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

<>
  • 特許-流量制御装置及びそれを用いた温水器具 図1
  • 特許-流量制御装置及びそれを用いた温水器具 図2
  • 特許-流量制御装置及びそれを用いた温水器具 図3A
  • 特許-流量制御装置及びそれを用いた温水器具 図3B
  • 特許-流量制御装置及びそれを用いた温水器具 図3C
  • 特許-流量制御装置及びそれを用いた温水器具 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】流量制御装置及びそれを用いた温水器具
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20230213BHJP
   F16K 11/044 20060101ALI20230213BHJP
   F24H 1/10 20220101ALI20230213BHJP
【FI】
F24H9/00 M
F16K11/044 Z
F24H1/10 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017549234
(86)(22)【出願日】2016-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 NL2016050194
(87)【国際公開番号】W WO2016190730
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2018-12-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2014498
(32)【優先日】2015-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2015218
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】511003073
【氏名又は名称】インターガス・ヒーティング・アセッツ・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジャン・クール
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】松下 聡
【審判官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-125325(JP,A)
【文献】特開平6-147519(JP,A)
【文献】特開平4-340050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062422(US,A1)
【文献】特開2000-320894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K11/044
F24H1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に温水道水を提供するように構成された温水道水器具(2)であって、
加熱すべき水道水を供給する冷水道水供給部(12)と連結された入口チャンネル(6)と、加熱された温水道水を排出する出口チャンネル(8)を有するヒーター(4)であって、前記冷水道水供給部(12)により供給される冷水道水を加熱するように構成されたヒーター(4)と、
少なくとも3つのチャンネル(20、22、24)を有するハウジング(16)と、前記ハウジング(16)内に配置され、前記少なくとも3つのチャンネル(20、22、24)が進出する分岐室(18)を有する流量制御装置(1)
を含み、
前記分岐室(18)内で、前記少なくとも3つのチャンネル(20、22、24)のうち少なくとも2つのチャンネルを閉鎖し又は開放することができるように遮断弁(26)が配置され、
前記遮断弁(26)は、第1の極限位置を有する調整範囲(V)を有し、前記第1の極限位置において、前記少なくとも3つのチャンネル(20、22、24)のうち、第1チャンネル(20)と第2チャンネル(22)は前記分岐室(18)を介して互いに流れ接続され、前記第1チャンネル(20)と、前記少なくとも3つのチャンネル(20、22、24)のうちの第3チャンネル(24)が実質的に互いに閉鎖され、
前記温水道水器具(2)は、
さらに、バイパスチャンネル(10)と、
前記ヒーター(4)の温水側付近であって、流れ方向において前記バイパスチャンネル(10)が前記出口チャンネル(8)に接続される前の位置に配置される少なくとも1つの温度センサー(38)であって、前記ヒーター(4)から離れる温水道水の温度を測定する温度センサー(38)と、
使用者に望ましくない高温で水が排出されることを防止するため、前記少なくとも1つの温度センサー(38)により測定された温水道水温度に従い前記遮断弁(26)を駆動するように構成された制御装置(40)を含み、
前記流量制御装置(1)は、前記温水道水が前記流量制御装置(1)に流入しないように、前記温水道水器具(2)の冷水側に配置され、
前記第1チャンネル(20)が冷水供給チャンネルであり、
前記第2チャンネル(22)が前記ヒーター(4)の入口チャンネル(6)と流れ接続された第1の排出チャンネルであり、
前記第3チャンネル(24)が前記バイパスチャンネル(10)と流れ接続された第2の排出チャンネルであり、
前記バイパスチャンネル(10)が前記流量制御装置(1)の下流にあり、かつ前記ヒーター(4)の出口チャンネル(8)と流れ接続され、これにより、前記流量制御装置(1)の前記分岐室(18)内の前記遮断弁(26)の位置に基づいて、前記ヒーター(4)の前記出口チャンネル(8)から排出される加熱された水道水と前記冷水道水供給部(12)から前記バイパスチャンネル(10)経由で導かれる冷水道水とが、前記出口チャンネル(8)と前記流量制御装置(1)の下流にある前記バイパスチャンネル(10)の接続箇所において混合可能であり、かつ前記温水道水器具(2)の水排出部(14)から混合された状態で排出可能である
ことを特徴とする温水道水器具。
【請求項2】
前記遮断弁(26)が前記第1の極限位置で前記分岐室(18)の壁と当接し、前記分岐室(18)から前記第3チャンネル(24)を閉鎖し、前記分岐室(18)を介した前記第1チャンネル(20)から前記第2チャンネル(22)へ、又は前記第2チャンネル(22)から前記第1チャンネル(20)への流体の流れを可能とすることを特徴とする請求項1に記載の温水道水器具。
【請求項3】
前記遮断弁(26)が2つの封止側を有し、
前記遮断弁(26)の前記調整範囲の前記第1の極限位置において前記遮断弁(26)の第1のシール側が前記分岐室(18)の壁に当接して前記分岐室(18)から前記第3チャンネル(24)を閉鎖し、
前記遮断弁(26)の前記調整範囲の第2の極限位置において前記遮断弁(26)の第2のシール側が前記分岐室(18)の壁に当接して前記分岐室(18)から前記第1チャンネル(20)を閉鎖し、前記第1チャンネル(20)から前記分岐室(18)への流体の供給を実質的に遮断する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の温水道水器具。
【請求項4】
前記遮断弁(26)は、前記分岐室(18)内で、前記第2チャンネル(22)の流出流と実質的横方向において、前記第1と第2の極限位置との間で移動し、前記第2チャンネル(22)の前記分岐室(18)への流出流が前記遮断弁(26)により開放されていることを特徴とする請求項に記載の温水道水器具。
【請求項5】
前記第1、第2及び第3チャンネル(20、22、及び24)は、前記第2の極限位置から前記第1の極限位置に向かって移動する間前記調整範囲の第1部分にわたって互いに流れ接続され、前記調整範囲内で前記第2の極限位置から離れるにつれて、これらの前記分岐室(18)を介する相対の流れが増加することを特徴とする請求項3又は4に記載の温水道水器具。
【請求項6】
前記第1、第2及び第3チャンネル(20、22、及び24)は、前記調整範囲内の第2部分において互いに流れ接続され、前記分岐室(18)を介した前記第1及び第2チャンネル(20及び22)との間の通過流が前記第1の極限位置の方向のさらなる調整範囲にわたってさらに増加し、前記分岐室(18)を介した前記第1及び第3チャンネル(20及び24)との間の通過流が前記第1の極限位置の方向のさらなる調整範囲にわたって減少することを特徴とする請求項に記載の温水道水器具。
【請求項7】
前記調整範囲の第1部分と第2部分の間の転換点が前記遮断弁(26)の前記調整範囲の35~65%の間の位置にあることを特徴とする請求項に記載の温水道水器具。
【請求項8】
前記調整範囲の前記第1部分と第2部分の間の転換点が前記第1チャンネル(20)からの体積流量を実質的に比例的に前記第2チャンネル(22)及び第3チャンネル(24)に分割することを特徴とする請求項又はに記載の温水道水器具。
【請求項9】
前記遮断弁(26)は駆動可能なねじ軸により調整可能であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の温水道水器具。
【請求項10】
前記遮断弁(26)が耐食性金属から製造されることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の温水道水器具。
【請求項11】
前記制御装置(40)は電子装置であり、前記測定された温水道水温度に従い、駆動手段、より具体的には電気モーターにより、前記遮断弁(26)を駆動するように構成されることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の温水道水器具。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の温水道水器具を使用して、使用者に温水道水を提供する方法であって、
冷水道水を提供するステップと、
前記冷水道水を加熱して温水道水を産出するステップと、
前記温水道水の温度に従い冷水道水をバイパスさせるステップと、
前記バイパスされた冷水道水を前記温水道水に添加するステップと、
前記混合された温水道水及び冷水道水を排出するステップと、
を順次に含むことを特徴とする温水道水を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水制御装置に用いられる流量制御装置及び温水器具、より具体的にはかかる流量制御装置を備えた高出力の温水器具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような高出力の温水器具は、例えばキッチンの水道の温水チャンネルやシャワーの温水を提供する。適用される分野によって、このような(高出力)の温水器具の応用はいくつかの課題を呈する。
【0003】
1つ目の課題は、使用者が一定時間の間水道から温水を放水した場合に生ずる。水が実質的に連続的に放出され流れ続ける限り、その温度は制御可能である。しかし、温水が放出された後に水道が一時的に停止されると、温水器具内の温度と熱交換器内の静止水の均等化の結果として、静止温水が望ましくない高温に達する場合がある。その後温水が放出されると、使用者の肌に触れる場合には火傷を発生させるほど熱くなる危険性がある。このような危険を回避するため、従来の温水器具は一定時間静止状態にあった温水にあらかじめ冷水を混合することが可能なバイパスチャンネルを備える。
【0004】
2つ目の課題は、温水器具の要求条件の幅が広い場合、例えば複数のシャワーが連結されたスポーツセンターやスイミングプールの場合に生じる。シャワーが個人単独で又はチーム全体で同時に使用されるかによって必要は温水放出の要求は大きく変動する。定期的な大きな需要を満足させるため、このような施設における温水器具はカスケード化、すなわち並列回路において互いに接続される。必要に応じては、1つ又は複数の温水器具は遮断弁により接続され又は切り離される。
EP特許公開2628984は最も近い先行技術として認識されるが、この文献からみて、少なくとも本発明の特徴的部分は新規である。米国特許公開5119988、国際公開98/25086、実開昭54-134334、特開平7-317927、EP特許公開1967935、DE実用新案公報29722208、EP特許公開1321700、DE特許公開2557156、及び国際公開2012/118432はさらなる先行技術として認識されている。
【0005】
また、温水器具の信頼性を高め、さらにシンプルかつコンパクトな形にする要請は常にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記課題の少なくとも1つを解決し、以上のようなタイプの流量制御装置及びそれを用いた温水器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1に記載される、使用者に温水道水を提供する温水道水器具と、請求項15に記載される、使用者に温水道水を提供する方法により達成される

【0008】
流量制御装置の遮断弁が第1の極限位置から離れる場合、第1と第3チャンネルとの間の閉鎖が徐々に開かれ、これにより流体は分岐室を介して第3チャンネルに流入することが可能である。これにより、流量制御装置は第1及び第2のチャンネルが分岐室を介して互いに流れ接続された状態維持しつつ、第3チャンネルを経由する流体の流れを選択的に許容することができる。
【0009】
以上の手段により、流量制御装置は一時的に一部分の流体をパイバス導管に導くことができる。これにより、上記導入部で紹介された第1の課題、すなわち温水が過度に熱くなることを防止する課題は解決される。
【0010】
本発明の好ましい実施態様によれば、遮断弁は第1の極限位置において分岐室の壁に当接し、分岐室から第3チャンネルを閉鎖する一方で、分岐室を介した第1チャンネルから第2チャンネルへ、又は第2チャンネルから第1チャンネルへの流体の流れを可能とする。遮断弁を分岐室の壁に当接させることにより、一方において第3チャンネルは効果的に閉鎖され、他方において第1チャンネルからの流体の通過流は、実質的に妨害されない状態で、分岐室を介して第2チャンネルに流入し、その逆もそうである。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、前記遮断弁が2つの封止側を有し、前記遮断弁の前記調整範囲の前記第1の極限位置において前記遮断弁の第1のシール側が前記分岐室の壁に当接して前記分岐室から前記第3チャンネルを閉鎖し、前記遮断弁の前記調整範囲の第2の極限位置において前記遮断弁の第2のシール側が前記分岐室の壁に当接して前記分岐室から前記第1チャンネルを閉鎖し、前記第1チャンネルから前記分岐室への流体の供給を実質的に遮断する。
【0012】
遮断弁に、2つの極限位置のそれぞれに対応して封止するように2つの封止側を設けることにより、チャンネルの反対する2つの流出流、すなわち第1チャンネルの流出流と第3チャンネルの流出流はそれぞれ、1つの遮断弁により分岐室から閉鎖することができる。
【0013】
以上の手段により、流量制御装置は第2の極限位置において第1チャンネルからの流体の供給を一時的に遮断することができる。これにより流量制御装置は一時的に温水器具を並列回路から切り離すことができ、上記導入部で紹介された第2の課題を解決できる。従来技術において上記導入部で紹介された第1及び第2の課題を解決するには2つの独立の遮断弁が必要であったが、本実施形態においては1つの遮断弁でこれらの課題を解決できることに留意すべきである。
【0014】
この実施形態はさらに非常にシンプルな制御を可能とする。遮断弁を所定速度で第1の極限位置から第2の極限位置に移動させることにより各チャンネルは予測可能に開放又は閉鎖することができる。第2の極限位置から第1の極限位置にかけてバイパス導管は一時的にのみ解放され、どれぐらいの量の流体を第3チャンネルを介してバイパス導管に流入させることが許容できるかが事前に決定できる。遮断弁の周りの通路の設計により、通過流の所望の特性を得ることができる。
【0015】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記第1、第2及び第3のチャンネルは、前記遮断弁の前記調整範囲の前記第2の極限位置において、少なくとも大部分、さらに好ましくは実質的に完全に閉鎖可能である。
【0016】
いくつかの適用形態においては、第1チャンネルと第2チャンネルの間に流れ漏れが継続する場合があり、これが望ましい場合さえある。2つの温水器具を有する並列回路の場合、第1の温水器具からのわずかな冷水の流れ漏れ(この時点では加熱がされない)は、第2の温水器具において水をわずかに過度に加熱することにより容易に補填することができ、これによりこれらの並列接続された温水器具からの混合水は所望の温度になる。わずかな流れ漏れを維持することにより、遮断弁と他の部材に負担をかける圧力差を防止することができる。したがって、第1チャンネルと第2チャンネル間の通過流は、一部の適用形態においては少なくとも大部分が減少し、又は「収縮」させる程度で十分である。
【0017】
他の適用形態においては、第1、第2及び第3チャンネルは遮断弁により実質的に完全に閉鎖可能であることが望ましい。「収縮」位置も同様に設定することができるので、完全閉鎖を達成することができる実施形態が推奨される。
【0018】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記遮断弁は、前記分岐室内で、前記第2チャンネルの流出流と実質的横方向において、前記第1と第2の極限位置との間で移動し、前記第2チャンネルの前記分岐室への流出流が前記遮断弁により開放されている。遮断弁の2つの封止側により、遮断弁はチャンネルの反対する2つの流出流、すなわち第1チャンネルの流出流と第3チャンネルの流出流をそれぞれ分岐室から閉鎖することができ、他方では第2チャンネルは調整範囲にわたって分岐室に接続されたままである。
【0019】
流量制御装置の別の好ましい実施態様によれば、前記第1、第2及び第3チャンネルは、前記第2の極限位置から前記第1の極限位置に向かって移動する間前記調整範囲の第1部分にわたって、互いに流れ接続され、前記調整範囲内で前記第2の極限位置から離れるにつれて、これらの前記分岐室を介する相対の流れが増加する。第1チャンネルと第2チャンネル間の通過流はこれにより必要に応じて制御可能であり、減少させ、又は「収縮」させることができる。水が高い予圧である場合でも、これにより器具からの水の放出が速くなりすぎで使用者希望の流出流の温度に達しないことを防止できる。このような場合の通過流を減少させることにより水の流出流の所望温度を達成可能であることを保証できる。同時に、分岐室を経由した第3チャンネルへのサブフローが生じる。
【0020】
流量制御装置の別の好ましい実施態様によれば、前記第1、第2及び第3チャンネルは、前記調整範囲内の第2部分において互いに流れ接続され、前記分岐室を介した前記第1及び第2チャンネルとの間の通過流が前記第1の極限位置の方向のさらなる調整範囲にわたってさらに増加し、前記分岐室を介した前記第1及び第3チャンネルとの間の通過流が前記第1の極限位置の方向のさらなる調整範囲にわたって減少する。第1チャンネルと第2チャンネル間の通過流はこれにより必要に応じて制御可能であり、他方では、調整範囲の第2部分において分岐室から第3チャンネルへの流体の流れは減少され、さらに閉鎖されることになる。
【0021】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記調整範囲の第1部分と第2部分の間の転換点が前記遮断弁の前記調整範囲の35~65%の間の位置、より好ましくは40~60%の間の位置にあることが特に有利である。熱交換器が強力になるに従い、バイパス導管によりより多くの冷水を供給できるようにすることが望ましい。上記範囲内においては、最も一般的な(高出力)温水器具に十分なバイパスを実現できる。
【0022】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記調整範囲の前記第1部分と第2部分の間の転換点が前記第1チャンネルからの体積流量を実質的に比例的に前記第2チャンネル及び第3チャンネルに分割する。
【0023】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、流量制御装置の遮断弁は駆動可能なねじ軸により調整可能とすることで、信頼性のあり、かつ適切に制御できるシステムが得られる。このようなねじ軸にピッチが設けられ、さらに軸の回転駆動と相まって、遮断弁の正確な動きを実現することができる。駆動は、例えば電動モーター、より具体的にはステッピングモータを用いて行うことができる。
【0024】
本発明において遮断弁は高品質プラスチックにより作製可能であるが、本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記遮断弁は耐食性金属、より好ましくは真鍮から製造される。
【0025】
本発明は、さらに温水器具に関する。具体的には、温水器具であって、入口チャンネルと出口チャンネルを有する熱交換器、上記に記載の流量制御装置を含み、前記第1チャンネルが供給チャンネルであり、前記第2チャンネルが前記熱交換器の入口チャンネルと流れ接続された第1の排出チャンネルであり、前記第3チャンネルはバイパスチャンネルと流れ接続された第2の排出チャンネルであり、前記バイパスチャンネルは前記熱交換器の前記出口チャンネルと流れ接続され、前記流量制御装置の前記分岐室の前記遮断弁の位置に基づいて、前記熱交換器の出口チャンネルからの水と前記バイパスチャンネルからの水が混合可能であり、かつ混合状態で前記温水器具の水の流出流により排出可能であることを特徴とする温水器具に関する。
【0026】
熱交換器の熱は温度変化により流量制御装置の遮断弁の封止側に不利な温度変化をもたらす可能性があり、また温水側においてより多く水垢が生成することになるが、それにもかかわらず、特定の用途では、流量制御装置が熱交換器の温水側に配置されることが想定可能である。流量制御装置を熱交換機の排出部の近くに配置することにより、冷水の移動に必要な距離が短く直接な制御が可能だからである。ここで、分岐室は混合室として機能することに留意すべきである。
【0027】
別の実施態様によれば、本発明は、温水器具であって、入口チャンネルと出口チャンネルを有する熱交換器、上記に記載の流量制御装置を含み、前記第1チャンネルが排出チャンネルであり、前記第2チャンネルが前記熱交換器の出口チャンネルと流れ接続された供給チャンネルであり、前記第3チャンネルはバイパスチャンネルと流れ接続された供給チャンネルであり、流量制御装置を介して前記バイパスチャンネルは前記熱交換器の前記出口チャンネルと流れ接続され、前記流量制御装置の前記遮断弁の位置に基づいて、前記熱交換器の出口チャンネルからの水と前記バイパスチャンネルからの水が前記分岐室で混合可能であり、かつ混合状態で前記温水器具の水の流出流により排出可能であることを特徴とする温水器具に関する。
【0028】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、温水器具は、前記熱交換器から離れる水の温度を測定する少なくとも1つの温度センサーと、測定された水温に従い、駆動手段、より具体的には電気モーターにより、前記遮断弁を駆動する電子制御装置をさらに含む。
【0029】
本発明の好ましい実施態様は、図面を参照して、以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の流量制御装置を有する温水器具の概略図である。
図2】遮断弁が第1の極限位置にある本発明の流量制御装置の断面図である。
図3A-C】図2の第1の極限位置、中間位置及び第2の極限位置のそれぞれの概略図である。
図4】それぞれチャンネルを通る流れを遮断弁の位置に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示す温水器具2は、加熱すべき水のための入口チャンネル6と、加熱された水が排出される出口チャンネル8とを有する熱交換器4を含む。温水器具2から実質的に連続的に温水が放出されて流れ続ける限り、この水の温度を適切に制御することができる。しかし、放水の中断があると、熱交換器4内の静止温水は望ましくない高温に達する可能性がある。その後すぐにお湯が抜かれると、この水は非常に熱くなり、使用者の肌に触れると火傷を負う危険がある。
【0032】
本発明による温水器具2には、冷水を温水器具2の出口チャンネル8に直接案内することができるバイパスチャンネル10が設けられている。この冷水は、温水器具2から来る温水に混合することができる。熱水の供給の中断があった場合、冷水は簡単に出口チャンネル8内の温水と混合することができ、それによって、使用者に望ましくない高温で水が排出されることを防止できる。このようなバイパスチャンネル10は、従来技術から公知であるが、本発明は、図示の実施形態では、温水器具2の冷水供給部12の冷水側に配置された特に有利な流量制御装置1を提供する。バイパスチャンネル10は熱交換器の出口チャンネル8に結合され、混合水は、温水器具2の温水排出部14を介して、シャワー又は水道などにより水の消費者側に排出され得る。
【0033】
温度は、温度センサー38を熱交換器4の温水側近くに、例えば排出部14の位置に配置することによって測定することができる。電子制御装置40は、次に、この測定された温度に従い、流量制御装置1内の遮断弁26について、フィードバックを用いて制御を行うことができる。フィードバック制御の利点は、システム全体のモデルベースの知識が(ほとんど)必要ないことである。そのため、遮断弁の正確な特性は重要ではない。
【0034】
別の実施形態(図示せず)は、冷水供給部12内に配置された温度センサーを備える。この温度センサーにより、冷水供給部12を介して供給される水の温度変化を測定することができ、この測定温度に基づいて電子制御装置40は事前にフィードフォワード制御を介して補填することができる。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施形態において、特に有利なのは、温水器具2には、所望の流れが検知される(及びスイッチオン又はスイッチオフされる)フローセンサ42が設けられることである。温水器具2上の流れ及び温度差は負荷のパラメータであり、それに基づいて電子制御装置40は温水器具2内の燃焼プロセスを最適に制御することができる。冷水温度及び所望の温水温度は必要な正味電力を最終的に決定する。周囲領域への熱損失や交換器の効率損失などの予想される損失が把握されている場合、電子制御装置は最適設定を決定することができる。
【0036】
図2の断面図において、流量制御装置1は、遮断弁26の第1の極限位置に示されている。流量制御装置1は、ハウジング16を有し、ハウジング16には、第1チャンネル20、第2チャンネル22、及び第3チャンネル24を有し、これら全てのチャンネルは共通の分岐室18に進出する。図示された第1の極限位置では、遮断弁26はその第1の側28が分岐室18の壁に当接し、それによって分岐室18から第3チャンネル24を閉鎖する。同時に、流体、特に水は、分岐室18を介して第1チャンネル20から第2チャンネル22へ、又は第2チャンネル22から第1チャンネル20へ自由に流れることができる。
【0037】
図示の実施形態では、第1チャンネル20は供給チャンネルであり、第2チャンネル22は、分岐室18を介して熱交換器4の入口チャンネル6と流れ接続されている第1の排出チャンネルである。第3チャンネル24は、バイパスチャンネル10と流れ接続されている第2の排出チャンネルである。バイパスチャンネル10は、熱交換機4の排出チャンネル8と流れ接続されており、これにより、流量制御装置1の分岐室18内の遮断弁26の位置に基づいて、熱交換器の排出チャンネル8からの水と、バイパスチャンネル10からの水が混合可能であり、かつ混合状態で温水器具2の水排出部14から排出可能である。
【0038】
遮断弁26は、さらに分岐室18の壁に当接して閉鎖的に配置可能な第2の側32を有し、これにより第1チャンネル22の流出流が分岐室18から遮断される。封止効果を促進するため、第1の側28には第1のシール30が設けられている。第2の側32のシール面34に第2のシール(図示せず)を必要ならば設けてもよい。
【0039】
遮断弁26は、調整範囲Vにわたって調節可能であり、この目的のために、電子制御装置40及び電気モーター、より具体的にはステッピングモータ(図示せず)を介して回転方向Rに回転可能に駆動される軸がこの実施態様において設けられる。この構造は、ばね44をさらに含む。
【0040】
調整範囲Vは、2つの極限位置により制限される。遮断弁26の調整範囲Vの第1の極限位置(図2及び図3A)では、遮断弁26の第1の封止側28が分岐室18の壁に当接し、分岐室18から第3チャンネル24を閉鎖する。
【0041】
遮断弁26の調整範囲Vの第2の極限位置(図3C)では、遮断弁26の第2の封止側32が分岐室18の壁に当接し、分岐室18から第1チャンネル20を閉鎖する。第1チャンネル20を介して分岐室18への流体の供給が防止されるか、又は少なくとも大幅に低減される。流体の流れFは、図3A~3Cに矢印で示されている。
【0042】
図3Bは、2つの極限位置の間に位置し、調整範囲を第1部分と第2部分とに分割する中間位置を示す。図3Bに示す中間位置において、第1チャンネル20を介して供給される流体は、第2チャンネル22と第3チャンネル24とに分割される。
【0043】
調整範囲の第1部分を通る移動は、第1の極限位置(図3A)の方向に第2の極限位置(図3C)から図3Bに示す中間位置へと行われる。調整範囲の第2部分を通る移動は、図3Bに示す中間位置から第1の極限位置(図3A)の方向に行われる。図3Cは、流れが生じていない状況を示し、それによって、例えば、複数の温水器具を有する並列回路から温水器具2を一時的に切り離すのに利用される休止位置を形成する。
【0044】
遮断弁26が調整範囲の第1部分(すなわち、図3Cから図3B)を通って移動するとき、第1チャンネル20、第2チャンネル22及び第3チャンネル24は互いに流れ接続され、第2の極限位置(図3C)から離れた調整範囲にわたって、分岐室18を介したこれらのチャンネルの相対の流れが増加する。第1チャンネル20と第2チャンネル22との間の流れは、これによって制御することができ、必要に応じて低減することができ、又は「収縮させる」ことができる。同時に分岐室18を介した第3チャンネル24への流体のサブフローも体積が増加して流れる。
【0045】
遮断弁26が調整範囲の第2部分(すなわち、図3Bから図3A)を通って移動するとき、第1チャンネル20、第2チャンネル22及び第3チャンネル24は、分岐室18を介して互いに流れ接続されており、第1チャンネル20と第2チャンネル22との間の流れは第1の極限位置の方向のさらなる調整範囲内にわたってさらに増加し、分岐室18を介した第1チャンネル20と第3チャンネル24との間の流れは、第1の極限位置(図3A)の方向のさらなる調整範囲内にわたって減少する。これにより、第1チャンネル20と第2チャンネル22との間の流れをさらに制御することができ、一方、調整範囲の第2の部分における分岐室18から第3チャンネル24への流体の流れを低減し、又は完全に閉鎖することができる。
【0046】
流量制御装置1がどのように動作するかが明らかになったので、バイパス導管10の内部容積は、温水器具2(図1)におけるこのような流量制御装置1の適用にとって重要なパラメータであることに留意すべきである。長さ及び直径は、熱交換器4の流量制御装置1と出口チャンネル8との間のバイパス導管10の内部容積が、冷水の流れが熱交換器4からの(過度に熱い)温水の流れと混合し、温度を効果的に低減して少なくとも火傷の危険を防止できるように最適に合流するように調整することができる。
【0047】
最後に、図4は、それぞれのチャンネルを通る流れを示すグラフである。熱交換器4を通る流れ4’は、第2チャンネル22を通って流れる流れであり、バイパスチャンネル10を通る流れ10’は、第3チャンネル24を通る流れに対応する。図3A図3B及び図3Cに関連する場合は、それぞれ参照番号IIIA、IIIB及びIIICによりグラフに示される。毎分の通過流F(リットル)が、左の縦軸にプロットされている。横軸は弁設定を段階的に示しており、予圧Pは右縦軸にバーでプロットされている。
【0048】
図3C図4のIIIC参照)の場合では、流れFはなく、遮断弁26が図3Bに示す場合の方向に移動されると、第2チャンネル22を通る流れF(流れ曲線4’)及び第3チャンネル24を通る流れF(流れ曲線10’)の両方が増加する。
【0049】
図3Bの場合(図4のIIIB参照)では、第2チャンネル22を通る流れF(流れ曲線4’)及び第3チャンネル24を通る流れF(流れ曲線10’)は実質的に等しい。すなわち、第1チャンネル20を介して供給される流れは実質的に等しく分割される。
【0050】
遮断弁が図3Aの場合(図4のIIIA参照)にさらに移動すると、第3チャンネル24の流出流は次第に減少され、最終的には第3チャンネル24を通る流れF(流れ曲線10’)が生じなくなる。第1チャンネル20を通って供給される全ての流体は、分岐室18を介して第2チャンネル22に流れる(流れ曲線4’)。
【0051】
また、図4には、流体、例えば給水系統の予圧(曲線11)が示されている。図3Cの完全に閉じた状況(図4のIIICを参照。通過流Fはゼロである。)において、予圧が最大であることが明確に分かる。遮断弁26の負荷を低減するために、漏れ流れを許容することを選択することが可能であり、これにより予圧が低下する。
【0052】
図4の水平軸には、ステッピングモータのステップが示されている。図示された例では、ステッピングモータは2600ステップを有し、それによって正確な制御が可能である。このような正確な制御は、バイパス機能、すなわちバイパスチャンネル10を通る流れにとって特に重要である。正確な制御を得るためには、IIICからIIIAまでステッピングモータの最初の2000ステップ(すなわち、図4の2600~600のステップ)は、バイパスチャンネル10を通る流れ10’を制御する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態を示しているが、上記の実施形態は、本発明を説明することのみを意図しており、決して本発明の明細書を限定するものではない。特許請求の範囲内の技術的事項の後に参照番号が付されている場合、そのような参照番号は、特許請求の範囲の理解に寄与するのみであるが、決して保護の範囲を限定するものではない。記載された権利は、以下の請求項によって定義され、その範囲内で多くの変更が想定され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4