(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダをロックするための自動装置
(51)【国際特許分類】
B23B 29/04 20060101AFI20230213BHJP
B23B 31/107 20060101ALI20230213BHJP
B23B 29/24 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B23B29/04 A
B23B31/107 A
B23B29/24 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018093440
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102017000052288
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518045476
【氏名又は名称】アルグラ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ALGRA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】VIA MAGNAVACCHE 4,FRAZIONE LOCALITA BREMBILLA,24012 VAL BREMBILLA(BG),ITLIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ ヴェッツォーリ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04919574(US,A)
【文献】特開昭61-100340(JP,A)
【文献】特表2010-533593(JP,A)
【文献】特開昭63-260706(JP,A)
【文献】米国特許第5873682(US,A)
【文献】特許第7094711(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/00-29/24
B23B 31/107
B23Q 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダ(12)をロックするための自動装置、特に、マルチスピンドル及びシングルスピンドルCNC旋盤、トランスファーマシン、あらゆる種類のフライス加工センター、及び、一般に
切りくず除去により機械加工を行うあらゆる種類の工作機械に使用するのに適する自動装置であって、前記工作機械に
固定され、プレート(16)を載置する支持本体(14)を包含する自動装置において、前記ツールホルダ(12)の各々に対し、めす型切頭円錐形凹部(24)を設けた爪(18)を包含しており、前記爪がナットねじ(36)と協働し、
鉛直方向に自動的に移動して、前記ツールホルダ(12)の各々の後部(12’)に形成された凹部(38)に形成されている切頭円錐形のカラー付属物(40)と接触するように係合することを特徴とする、自動装置。
【請求項2】
前記爪(18)の
鉛直移動が、下面から突出し前記ナットねじ(36)の上端に係合するシャフト(48)を取り付けた遊星歯車減速機を備えた個々のモータ(46)によって達成され、前記ナットねじ(36)が、前記爪(18)にねじ(28)で拘束されたねじ付本体又は親ねじ(30)に形成された対応する
台形ねじに対向し係合する外側
台形ねじを
備えていることを特徴とする、請求項1に記載の
自動装置。
【請求項3】
前記爪(18)が実質的に円筒形の本体を画成し、その一方の面は、直径方向の半部分が欠け、傾向的に半円形の平面(20)を形成し、前記爪(18)の残りの直径方向の半部分が、前記平面(20)に対して直交する
鉛直壁(22)を
備え、その上に前記めす型切頭円錐形凹部(24)が形成されることを特徴とする、請求項2に記載の
自動装置。
【請求項4】
前記爪(18)が、前記親ねじ(30)の露出面(32)の形状に相補的な輪郭及び延長部を有する凹状の刻印(34)が形成された平坦部を備えることを特徴とする、請求項3に記載の
自動装置。
【請求項5】
前記爪(18)の各々が、上面に拘束され、前記プレート(16)に形成された開口部(56’)から突出するピン(56)を
備えることを特徴とする、請求項3に記載の
自動装置。
【請求項6】
前記ツールホルダ(12)が、多数のシート(42)を通して水平方向に前記支持本体(14)に手動で挿入されることを特徴とする、
請求項1に記載の
自動装置。
【請求項7】
前記支持本体(14)が、前記ツールホルダ(12)の各々と組み合わせて、親ねじ(30)を備えた爪(18)と、それぞれの上部の適合する開口部(44)から前記支持本体内に挿入されるナットねじ(36)とを収容することを特徴とする、請求項6に記載の
自動装置。
【請求項8】
前記
自動装置が、実行したストローク、従って前記爪(18)によって到達される位置を検出するのに適した一対の近接センサ(54)を各モータ(46)に対して備えており、前記爪が、前記モータ(46)によって前記ナットねじ(36)のそれぞれに課される時計回り又は反時計回りの回転から鉛直方向に移動され、前記センサが前記爪(18)のピン(56)と協働し、ねじ(62)によって前記プレート(16)に一体にされた支持体(60)に対してナット(58)又は同等の手段によって拘束されることを特徴とする、請求項1に記載の
自動装置。
【請求項9】
前記モータ(46)が、様々な前記ツールホルダ(12)の
連続した整理番号及び位置番号を上面に提示した保護カバー(66)によって遮蔽され、前記カバーが、
アレンボルト(68)又は同等物で前記プレート(16)上に固定されることを特徴とする、請求項8に記載の
自動装置。
【請求項10】
前記支持本体(14)がその後部に、前記センサ(54)からの信号に関連して前記モータ(46)を駆動する電気ケーブルを通すための接続手段(64)を
備えていることを特徴とする、請求項
8に記載の
自動装置。
【請求項11】
前記
自動装置が、前記ナットねじ(36)の頂部及び底部に配置された対向するガイドブッシュ(50,52)を備えていることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の
自動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダをロックするための自動装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、CNCシングルスピンドル又はマルチスピンドル旋盤、トランスファーマシン、あらゆる種類のフライス加工センター、及び、一般に切りくず除去により機械加工を行う工作機械における、電動又は非電動ツールホルダの迅速かつ安全なロック及びロック解除を可能にする自動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
あらゆる種類のCNC工作機械で行われる機械加工においては、必要なピースを得るために必要に応じて、様々なモジュールを頻繁に交換する必要があることが知られている。
【0004】
繰り返される装備品の交換作業は、機械の運転を強制的に一定期間停止する休止時間を必要とする。また、各工具交換時の設定時間を考慮する必要がある。複数のツールホルダを使用する機械の場合、それらの交換は、ブロッキングと心出し位置決めのために複数のねじを介在する必要がある。このように繰り返され、そして時には扱いにくい手動操作は、全体的に生産コストの大幅な増加をもたらす。
【0005】
これらの欠点を克服するために、本願出願人は、特定の装置を用いてツールホルダの交換を極めて迅速かつ容易に行うことを可能にする解決策を設計した。前記装置は、2017年2月7日付けで出願したイタリア特許出願第102017000013072号に記載されており、本願明細書に関連して想起される。しかしながら、上記の出願による装置は、上記記載の利点を完全に機能し達成することができるが、特に種々のツールホルダの交換に関与する作業者に関連する幾つかの欠点を有することが判明した。
【0006】
実際には、作業者は、生産サイクルで使用される潤滑剤や冷媒、身体の他の部分に打ち当てたり、さらには顔面に滴下及び偶発的な噴出を伴う可能性のある物質のために、手を連続的に汚すという結果を伴いながら、機械と緊密に接触する必要がある。その上、ツールホルダをロック及びロック解除するのに適した手段にスパナでもって連続的に介入することは、通常、腕を伸ばして張り出した状態で操作することになり、扱いにくく、困難なことがある。
【0007】
日本国特許文献S59-59303には、工作機械に固定され、ツールホルダの各々に対して前進バーを形成する歯付き爪を設けた支持本体を含む、ツールホルダを旋盤にロックするための装置が開示されており、爪は、垂直方向に自動的に動き、前記ツールホルダの各々の後部に形成された相補的な歯と係合するのに適する。この解決策では、支持本体へのツールホルダの代りの確実なロックの可能性はない。
【0008】
米国特許第5873682号は、爪を受け入れるために内部に作られたチャネルを有する本体を含む、切削インサートのためのツールホルダに関し、爪は、ヘッドから延在し、組付ねじによって前記チャネルの内部に固定される。前記ねじは、ヘッドが本体に対して後退位置と伸張位置との間でのみ移動することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より詳細には、本発明の目的は、ツールホルダを交換するために、前記ツールホルダが置かれている領域から適切に離れた位置に留まりながら、作業者が関連する操作を実行するのに適した、切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダをロックするための自動装置を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、作業者がツールホルダを交換するために繰り返しの扱いにくく困難な作業を行うことを防止するように設計された装置を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、ツールホルダの交換後に、4つの移動の角度、すなわちX軸、Y軸、Z軸及び回転における向き及び位置決めに関する面倒な調整の必要性を回避しながら、交換されたツールホルダの自動的なセンタリングを実行するのに適した上述のような装置を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、容易かつ経済的に作成され、しかも時間の経過と共に高いレベルの抵抗及び信頼性を保証することができる、切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダをロックするための自動装置をユーザに利用可能にすることである。
【0014】
これら及び他の目的は、特許請求の範囲による本発明のツールホルダをロックするための自動装置によって達成される。
【0015】
本発明のツールホルダをロックするための自動装置の構成及び機能的特徴は、好適かつ非限定的な実施例を示す添付の図面を参照する以下の詳細な説明からより明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の自動ロック装置の斜視図を概略的に示す。
【
図2】ツールホルダの連結シートとそれに連結されたロック/ロック解除手段を強調するために、
図1による装置の一部分の斜視図を概略的に示す。
【
図3】前図における装置の一部分の分解図を概略的に示す。
【
図4】前図における装置の一部分の詳細を概略的に示す。
【
図5】前記ツールホルダと協働する、本発明による装置の構成要素の異なる角度からの拡大斜視図を概略的に示す。
【
図6】
図1のツールホルダの斜視図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に
図1及び2を参照すると、
図1に参照番号10で全体的に示される、本発明による、
切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダをロックするための自動装置は、1つ又は複数のツールホルダ12に連結され、それ自体公知のツールホルダは、機械に固定された従来の支持本体14に接続された旋盤、トランスファーマシン、フライス加工センター、あるいは
切りくず除去機械加工を行う工作機械であっても、機械に固定された従来の支持本体14に連結される。前記ツールホルダ12の1つが
図6に詳細に示される。支持本体14は、以下でさらに説明するプレート16を載置する。
【0018】
本発明の自動ロック装置は、
図5に詳細に示す少なくとも1つの実質的に円筒形の本体からなる爪18を備え、その一方の面は、直径方向の半部分が欠け、傾向的に半円形の平面20を形成する。参照数字18’によって示される、爪18の残りの直径方向の半部分は、平面20に対して直交する
鉛直壁22を含み、その上にめす型切頭円錐形凹部24が形成される。凹部24は、
鉛直壁22の頂部から、該壁の高さのほぼ半分に等しい高さにわたって延びる。係留爪18は、前記爪を不規則な角柱形状の本体30に連結するようになっているねじ28を収容する横断貫通孔26(
図4)を含む。露出した面32が四角形延長部を有する前記本体30は、内側
台形ねじを備えた親ねじを画成する。係留爪18の一部分は、
図5に詳細に示すように、凹状の刻印又は凹陥部34が形成される平坦部を有する。前記刻印は、親ねじ又は本体30の四角形延長部を有する露出面32の形状に相補的な輪郭及び延長部を画定し、本体は、前記ねじ28によって爪18に対して角運動できないよう堅固に連結されるように、刻印に正確に位置する。
【0019】
本発明による、
切りくず除去機械加工を行う旋盤及び機械にツールホルダ12をロックするための自動装置は、外側
台形ねじが設けられた少なくとも1つのナットねじ36をさらに含んでおり、外側
台形ねじは、本体30に形成された対応する
台形ねじに面し、前記装置の動作に関してさらに特定されるようにこの
台形ねじに係合する。本発明による装置と組み合わされるツールホルダ12の各々は、有益的に、旋盤又は一般に機械に固定されるように意図された継手を構成する参照符号12’によって示されたその後部に、切頭円錐形凹部38を設けられる。この凹部は、有益的に、前記後部12’に
鉛直方向に異なる直径を有する二重穿孔によって形成される。凹部38の基部には、特に
図6に見られるように、切頭円錐形のカラー付属物40が形成され、係留爪18の下降時に係留爪18のめす型切頭円錐形凹部24に係合するようになる。この下降は、下面から突出しガイドブッシュ50を介してナットねじ36の上端に係合するシャフト48を取り付けた遊星歯車減速機を備えたモータ46によって行われる。同様のブッシュ52がナットねじ36の基部に配置される。ブッシュ50と52は、モータ46によって課せられるナットねじ36の回転運動中、ナットねじ36の焼付き防止機能及びガイド保持を行う。ナットねじ36の回転は、ねじ28により爪18が拘束されている親ねじ30によって、ねじ付外側部分により爪18を動かし、回転が時計回りか反時計回りかに応じて爪を持ち上げたり下降させる。
【0020】
有益的に、典型的には約4又は5ミリメートルに等しいストローク、従って爪18によって到達される位置を検出するのに適した近接センサ54が、各モータ46に対して2つ設けられる。このため、爪18は、その上面に拘束され、プレート16に形成された特別な開口部56’から突出するペグ56を設けられる。爪18が想定された位置に到達した後、それぞれのペグ56はセンサ54に電磁信号を送り、センサは移動を阻止する。近接センサ54は、ナット58又は同等の手段によってそれぞれの支持体60に固定される。支持体60は、
図2及び3に示すように、ねじ62によってプレート16に拘束される。支持本体14はその後部に、モータ46を駆動しツールホルダ12をロック又はロック解除する爪18を動かすためのセンサ54からの信号を管理する電気ケーブルを通すのに適した接続手段64を設けられる。
【0021】
支持本体14において、ツールホルダ12は、
図1,2及び3に参照符号42で概略的に示された、そのような目的のために設けられたシートに水平方向に手動で挿入される。任意の数のツールホルダが提供されてよい。支持本体は、ツールホルダ12の各々と協働して、親ねじ30を備えた爪18及びナットねじ36を受け入れる。前記要素18,30及び36の異なるグループは、
図3に示されるそれぞれの上部の適合する開口部44から支持本体14内の所定の高さに挿入される。ツールホルダ12の支持本体14への挿入は手動で行われるが、安定した正確な位置でのツールホルダのロックは、爪18の下降の効果により自動的に行われ、爪のめす型切頭円錐形凹部24はツールホルダ12の後部12’に形成された切頭円錐形のカラー付属物40と接触するように係合する。これらの操作を実行するため、操作者は、特定の周知の電気的接続によってそれぞれのモータ46を作動させ、例えばナットねじ36に時計回りに回転を与え、センサ54によって案内され爪18の下降を所望の高さに導くために、問題のツールホルダの位置に対応するキーをキーパッドから起動するだけでよい。逆に、交換のためにツールホルダ12をロック解除したい場合には、爪18は、モータ46によってナットねじ36に課せられた前回と逆の回転の作用により上昇される。
【0022】
図2に示されるモータ46は、
図1に例示されるように、様々なツールホルダの
整理番号及び位置番号が頂部側に記載された保護カバー66によって遮蔽される。前記カバーは、
アレンボルト68等でプレート16上に固定される。
【0023】
上記から分かるように、本発明が達成する利点は明らかである。
【0024】
マルチスピンドル及びシングルスピンドルの数値制御旋盤、トランスファーマシン、あらゆる種類のフライス加工センター、及び、一般に切りくず除去機械加工を行う工作機械でのツールホルダ12の自動及び目標中心合わせを伴う交換は、非常に迅速かつ絶対的な精度で実施され、交換後の前記ツールホルダの向きに関する面倒な調整の必要性を回避する。実際、切頭円錐部分に沿って行われる結合を実現する可能性のため、交換用ツールホルダ12の交換、その後の方向決め、ロック、並びに、ツールホルダの「X」、「Y」、「Z」及び回転軸の移動の4つの角度における正確な位置決めのステップは、モータ駆動であろうと非モータ駆動であろうとも、迅速かつ非常に容易に実行され、休止時間及び結果として生産コストの大幅な削減の利益をもたらす。担当の操作者は、交換されるべき既にロックされていないユニットを機械から取り外し、同じシートに異なるユニットを挿入し、次いで、関連するボタンを押すという唯一のタスクを有する。潤滑油や冷媒の拡散による汚染の危険性を排除することに加え、作業者は、機械やその部品に緊密に接触した状態で、スパナでもってツールホルダをロック及びロック解除する連続的で厄介な手動操作を実行するために、繰り返しの緊張を受けることはない。
【0025】
本発明により達成されるこれらの顕著な利点を有する場合でも、交換すべきユニットを取り外し交換ユニットの位置決めを行う簡単なステップは、操作者による機械への直接介入の必要性を完全に排除するように、例えば人型ロボットによって又はロボットアームの助けを借りて自動的に実行されるという更なる具体的な可能性がある。
【0026】
本発明について非限定的な例のみによって与えられる可能な実施例のうちの1つを参照して上述したが、幾多の修正及び変形が上記の説明に照らして当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての修正及び変形を包含するものである。