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特許7224843ロボット、このロボットを備えた搬送車、このロボットの制御方法及び制御プログラム
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  • 特許-ロボット、このロボットを備えた搬送車、このロボットの制御方法及び制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】ロボット、このロボットを備えた搬送車、このロボットの制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230213BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J13/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018194679
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020062701
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】小森 勇司
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223831(JP,A)
【文献】特開2017-221985(JP,A)
【文献】特開2013-001548(JP,A)
【文献】特開2010-208003(JP,A)
【文献】特開平05-261692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059416(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0049939(US,A1)
【文献】国際公開第2013/135608(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/074841(WO,A1)
【文献】特開昭63-109996(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190189(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を移動させる移動部を有するアームを備えたロボットであって、
前記アームを含む領域を撮影し、前記アームに相当するアーム領域を含む撮影情報を取得する撮影手段と、
前記撮影情報において、障害物に相当する障害物領域と前記アーム領域との距離が、前記アームの移動速度に前記撮影手段の撮影間隔を乗じた値を近接範囲の値とした接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制する制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットにおいて、
前記アーム領域を含む領域を予め撮影した基準情報と、
を備え、
前記制御手段は、前記基準情報と前記撮影情報とを比較することで前記撮影情報に前記障害物領域が含まれるか否かを判定し、前記撮影情報に前記障害物領域が含まれると判定した場合に、前記障害物領域と前記アーム領域との距離が前記接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制することを特徴とする、
ロボット。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮影情報において、前記移動部が障害物とアームを上面に有する本体部との間に位置する場合には、前記アームの移動を規制することを特徴とする、
請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記移動部は、前記撮影手段で撮影される際に特徴となる特徴点を有していることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記撮影手段は、前記アームの移動速度に基づいて定められた撮影間隔で、前記撮影情報を複数回取得することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のロボットを備えた搬送車であって、
前記撮影手段は、前記ロボットを含む領域を上方側から撮影する位置に複数設けられていることを特徴とする、
搬送車。
【請求項7】
アームを含む領域を撮影し、前記アームに相当するアーム領域を含む撮影情報を取得する撮影手段と、前記撮影情報において、障害物に相当する障害物領域と前記アーム領域との距離が予め定められた接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制する制御手段と、を備え、対象物を移動させる移動部を有するアームを備えたロボットを制御する制御方法であって、
前記撮影情報を取得する撮影ステップと、
前記撮影情報において、障害物に相当する障害物領域と前記アーム領域との距離が前記アームの移動速度に前記撮影手段の撮影間隔を乗じた値を近接範囲の値とした接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制する規制ステップと、
を含むことを特徴とする、
ロボットの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットの制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット、このロボットを備えた搬送車、このロボットの制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に関する情報に基づく作業を精度よく行うことができるロボットが知られている。例えば、特許文献1では、アームを備え、前記アームに設けられた撮像部が撮像可能な撮像領域内における所定領域は、複数の対象物のそれぞれを撮像する位置に前記アームを移動した場合において前記撮像部により撮像された撮像画像の画像領域のうち前記対象物を含む前記画像領域または当該画像領域よりも小さい領域と一致し、前記位置において前記撮像部により前記対象物が撮像された前記撮像画像に基づいて前記対象物に関する情報を検出し、検出した当該情報に基づいて前記対象物を把持するロボットが記載されている。このロボットでは、アームに設けられた撮像部が撮像可能な撮像領域内における所定領域が、複数の対象物のそれぞれを撮像する位置にアームを移動した場合において撮像部により撮像された撮像画像の画像領域のうち対象物を含む画像領域又は当該画像領域よりも小さい領域と一致し、複数の対象物のそれぞれを撮像する位置において撮像部により対象物が撮像された撮像画像に基づいて対象物に関する情報を検出し、検出した当該情報に基づいて対象物を把持することにより、対象物に関する情報に基づく作業を精度よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-34243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットでは、撮像手段を用いて対象物に関する情報のみを得ているため、アームの移動経路に障害物等が存在することによりアームが予め定められた動きを行えない場合には、アームの移動が妨げられ、アームが破損したり、対象物の位置まで移動することができなかったりする可能性があるという課題があった。また、対象物の位置の変化に対応するためにシフト動作を行う場合には、アームの移動経路が予め定められた経路と異なる経路となるため、アームの移動が妨げられ、アームが破損したり、対象物の位置まで移動することができなかったりする可能性がより高まるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、アームの移動を妨げる障害物を検知することにより、アームの衝突や破損を未然に防止し、対象物をより確実に移動することができるロボットを提供することを主目的とする。また、このロボットを備えた搬送車を提供することで、対象物を確実に運搬可能な搬送車を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のロボットは、
対象物を移動する移動部を有するアームを備えたロボットであって、
前記アームを含む領域を撮影し、前記アームに相当するアーム領域を含む撮影情報を取得する撮影手段と、
前記撮影情報において、障害物に相当する障害物領域と前記アーム領域との距離が予め定められた接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制する制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0008】
このロボットは、アームを含む領域を撮影する撮影手段と、アームの移動を制御する制御手段と、を備え、制御手段によってアームの移動が制御され、移動部が対象物を移動させる。この際、撮影手段がアームを含む領域を撮影して撮影情報を取得し、この撮影情報に含まれるアームに相当するアーム領域と障害物に相当する障害物領域とが予め定められた近接範囲内にあるか否かを制御部が判定し、近接範囲内にあると判定した場合には、アームの移動を規制する。こうすることにより、アームと障害物との距離が予め定められた近接範囲よりも大きく保つことができるため、アームと障害物とが衝突する可能性を未然に低減することができる。
【0009】
本発明のロボットは、前記アーム領域を含む領域を予め撮影した基準情報と、を備え、前記制御手段は、前記基準情報と前記撮影情報とを比較することで前記撮影情報に前記障害物領域が含まれるか否かを判定し、前記撮影情報に前記障害物領域が含まれると判定した場合に、前記障害物領域と前記アーム領域との距離が前記接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制することを特徴としてもよい。このように撮影情報と基準情報とを比較することにより、撮影情報に障害物に相当する障害物領域が存在するか否かを容易に判定することができる。付言すると、障害物の有無をより確実に判定することで、障害物とアームとが接触する可能性をより低減することができる。
【0010】
本発明のロボットにおいて、前記制御手段は、前記撮影情報において、前記移動部に相当する移動領域が前記障害物領域と前記アームの最下部との間に位置すると判定した場合には、前記アームの移動を規制することを特徴としてもよい。こうすることにより、移動部が障害物とアームの最下部との間に位置する可能性を未然に低減することができる。付言すると、移動部はアームの先端に設けられているため、移動部が障害物とアームの最下部との間に位置すると、アームと障害物とが接触する可能性が高い。このため、移動部が障害物とアームの最下部との間に位置する可能性を低減することで、アームと障害物とが接触する可能性を未然に低減することができる。
【0011】
本発明のロボットにおいて、前記移動部は、前記撮影手段で撮影される際に特徴となる特徴点を有していることを特徴としてもよい。このように、撮影情報を解析する際、容易に抽出できる特徴点を移動部に備えることにより、特徴点を有しない場合と比較して、容易に移動部を抽出することができる。
【0012】
本発明のロボットにおいて、前記撮影手段は、前記アームの移動速度に基づいて定められた撮影間隔で、前記撮影情報を複数回取得することを特徴としてもよい。具体的には、例えば、アームの移動速度が速い場合には単位時間あたりの撮影回数を増大することで撮影情報の取得回数を増大し、アームの移動速度が遅い場合には、単位時間あたりの撮影回数を低減することで撮影情報の取得回数を低減してもよい。こうすることにより、アームと障害物との距離が接近範囲よりも大きく近づく可能性を未然に低減し、アームと障害物とが接触する可能性を未然に低減するとともに、撮影回数を低減することで処理量を低減することができる。
【0013】
本発明の搬送車は、
上述したいずれかに記載のロボットを備えた搬送車であって、
前記撮影手段は、前記ロボットを含む領域を上方側から撮影する位置に複数設けられていることを特徴とする、
ものである。
【0014】
この搬送車は、上述したロボットを構成の一部に含むため、上述したロボットと同様の効果、例えば、アームと障害物との距離が予め定められた近接範囲よりも広く保つことができるため、アームと障害物とが接触する可能性を未然に低減することができるという効果が得られる。
【0015】
本発明のロボットの制御方法は、
アームを含む領域を撮影し、前記アームに相当するアーム領域を含む撮影情報を取得する撮影手段と、前記撮影情報において、障害物に相当する障害物領域と前記アーム領域との距離が予め定められた接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制する制御手段と、を備え、対象物を移動する移動部を有するアームを備えたロボットを制御する制御方法であって、
前記撮影情報を取得する撮影ステップと、
前記撮影情報において、障害物に相当する障害物領域と前記アーム領域との距離が予め定められた接近範囲内にあるか否かを判定し、前記接近範囲内にあると判定した場合には、前記アームの移動を規制する規制ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0016】
本発明のロボットの制御方法は、アームを含む領域を撮影する撮影手段と、アームの移動を制御する制御手段と、を備え、制御手段によってアームの移動が制御され、移動部が対象物を移動する。この際、撮影手段がアームを含む領域を撮影して撮影情報を取得し、この撮影情報に含まれるアームに相当するアーム領域と障害物に相当する障害物領域とが予め近接範囲内にあるか否かを判定し、近接範囲内にあると判定した場合には、アームの移動を規制する。こうすることにより、アームと障害物との距離が予め定められた近接範囲よりも大きく保つことができるため、アームと障害物とが接触する可能性を未然に低減することができる。
【0017】
本発明のプログラムは、ロボットの制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなど)に記録されていても良いし、伝送媒体(インターネットや有線/無線LANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ送信されても良いし、その他どのような形で授受されても良い。また、制御方法の各ステップを実行する装置で実行されるものであっても、プログラムが実行される装置と処理が行われる装置とが異なっていてもよい。いずれの場合であっても、このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、搬送車20の構成の概略を示す側面図である。
図2図2は、搬送車20の構成の概略を示す背面図である。
図3図3は、搬送車20の電気的接続を説明するためのブロック図である。
図4図4は、移動制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態の一例として、ロボット30を含む搬送車20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、ロボット30を含む搬送車20の制御方法の一例を示すことで、本発明のロボットの制御方法及び制御プログラムの一例も明らかにする。
【0020】
本発明の実施の形態の一例である搬送車20は、図1及び図2に示すように、ロボット30を有し、無人で予め定められた経路を自走可能な無人搬送車であり、無線通信又は予め定められた搬送ルートに従って所定の経路を自走し、ロボット30で対象物を積載したり、降ろしたりする。この搬送車20は、本体部22の上面にアーム32の先端に移動部34を有するロボット30が、ロボット30よりも上方に撮影手段40a及び撮影手段40b(以下、「撮影手段40」ともいう。)が、それぞれ設けられており、ロボット30の動作や撮影手段40の撮影、搬送車20の自走を制御する制御手段50(図3参照)と、ロボット30及び撮影手段40は、図3に示すように、それぞれ電気的に接続されている。この搬送車20は、アーム32で対象物を移動させる際、撮影手段40がアーム32を含む領域を所定の間隔で撮影し、撮影情報を取得する。この撮影情報に障害物が含まれる場合には、アーム32と障害物が予め定められた接近範囲内であるか否かを判定し、接近範囲内であると判定した場合には、アーム32の移動を規制する。こうすることにより、障害物とアーム32との距離が接近範囲内に含まれることを未然に防止し、障害物とアーム32とが接触する可能性を未然に低減することができる。
【0021】
ロボット30は、図1に示すように、搬送車20の本体部22に設けられたアーム32を有する六軸アームロボットであり、アーム32の先端には移動部34が設けられている。このアーム32の六軸のそれぞれ及び移動部34には、特徴点として、赤色円形の特徴点がそれぞれ設けられている。このように、各軸及び移動部34に特徴点を備えることにより、アーム32を含む領域を撮影した撮影情報から、各軸及び移動部34を抽出する際、特徴点を有しない場合と比較して、容易に抽出することができる。また、このロボット30は、図3に示すように、制御手段50と電気的に接続され、移動部34が対象物を移動させる際には、制御手段50によってアーム32の移動が制御され、移動部34によって対象物を移動させる。こうすることによって、ロボット30は対象物を押圧したり牽引したりすることで、搬送車20に積載したり、降ろしたりすることができる。また、移動部34には赤色円形の特徴点が設けられているため、撮影手段40で撮影した際、撮影情報から移動部34を容易に抽出することができる。なお、対象物を移動させる方法としては、対象物の一部を把持又は保持することで移動させてもよいし、一面を押圧又は牽引することにより移動させてもよい。
【0022】
撮影手段40は、図1及び図2に示すように、搬送車20の上方であって、ロボット30を挟んで互いに対向する位置に設けられた公知の撮影装置であり、ロボット30の可動範囲を含む領域を撮影し、撮影情報として後述するRAM53に送信する。このとき、撮影手段40はロボット30を挟んで互いに対向する位置に設けられているため、アーム32の状態にかかわらず、移動部34を含む領域をいずれかの撮影手段40が撮影することができる。なお、図1及び図2では、撮影手段40aが搬送車20の右上部前方側、撮影手段40bが搬送車20の左上部後方側に設けられるものとしたが、互いに対向する位置であればこの位置に限定されるものではなく、例えば、撮影手段40aが左上部前方側、撮影手段40bが右上部後方側に設けられていてもよい。
【0023】
制御手段50は、図3に示すように、CPU51を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、ロボット30や撮影手段40を制御する各種制御プログラム等が記憶されたROM52と、撮影手段40によって撮影された基準情報及び撮影情報等を一時的に記憶するRAM53と、ロボット30及び撮影手段40等との間の各種信号の送受信を行うインタフェース54(以下、「I/F54」と言う。)がそれぞれバス55を介して電気的に接続されている。この制御手段50は、ロボット30及び撮影手段40の動作を制御することに加え、撮影手段40が撮影した撮影情報を受信し、障害物に相当する障害物領域が含まれるか否かを判定する。この判定結果に基づいてアーム32の動作を制御することで、アーム32と障害物とが接触する可能性を未然に低減する。
【0024】
続いて、アーム32と障害物との接触を未然に防止する移動制御処理方法について、制御手段50によって実行される移動制御処理ルーチンを一例に説明する。この移動制御処理ルーチンは、アーム32を移動する際に実行され、アーム32の移動中は繰り返し実行される。なお、ここで、図4は、移動制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0025】
移動制御処理ルーチンは、ROM52に予め記憶されており、CPU51によって実行される。この移動制御処理ルーチンがCPU51によって実行されると、CPU51は、RAM53に基準情報があるか否かを判定し(ステップS110)、基準情報がないと判定した場合には、撮影手段40に撮影信号を発信し、撮影手段40で撮影した撮影情報を基準情報としてRAM53に一時的に保存する(ステップS120)。なお、この基準情報は、ロボット30を起動中はRAM53に保存されるため、ステップS120は、校正(キャリブレーション)動作として、ロボット30を起動し、一回目に移動制御処理ルーチンが実行された際にのみ実行されることになる。
【0026】
続いて、CPU51がステップS120を実行した後、又は、ステップS110で基準情報があると判定した場合には、CPU51は、撮影手段40に撮影信号を発信し、撮影手段40で撮影した撮影情報をRAM53に一時的に記憶し(ステップS130)、撮影情報に障害物に相当する障害物情報が含まれているか否かを判定することで、障害物の有無を判定する(ステップS140)。具体的には、RAM53に記憶された基準情報と撮影情報とを比較し、撮影情報中に基準情報に含まれない領域情報が含まれているか否かを判定し、基準情報に含まれない領域情報が撮影情報に含まれる場合には、その領域が障害物に相当すると判定し、障害物が含まれると判定する。
【0027】
ステップS140において、CPU51が障害物がないと判定した場合には、本ルーチンを終了する。このような場合には、アーム32の移動が妨げる障害物が存在しないため、対象物を移動する移動位置にアーム32を障害なく移動させることができる。
【0028】
一方、ステップS140において、CPU51が障害物があると判定した場合には、撮影情報中の障害物に相当する領域を障害物領域として、撮影情報中のアーム32に相当する領域をアーム領域として、撮影情報中の移動部34に相当する領域を移動部領域として、それぞれ抽出する(ステップS150)。具体的には、撮影情報の画像解析処理を行い、撮影情報に含まれるアーム32に相当する領域、移動部34に相当する領域、障害物に相当する領域を、それぞれアーム領域、移動部領域及び障害物領域として、それぞれ抽出する。
【0029】
次に、移動部領域と障害物領域との位置を比較し、移動部34が障害物よりも上に位置するか否かを判定し(ステップS160)、移動部34が障害物よりも上に位置しないと判定した場合には、アーム32の動きを規制して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。このような場合には、障害物よりも移動部34が下方に位置することになり、アーム32を移動させた際、アーム32のいずれかの場所と障害物とが接触する可能性が高い。このため、予めアーム32の動きを規制することにより、アーム32と障害物とが接触する可能性を未然に低減することができる。
【0030】
一方、ステップS160において、CPU51が移動部34が障害物よりも上に位置すると判定した場合には、アーム領域と障害物領域との距離を算出することで、アーム32と障害物との距離を算出する(ステップS170)。具体的には、障害物領域からアーム領域の最も近い位置までの距離を算出し、この距離をアーム32と障害物との距離とする。なお、アーム32と障害物との距離を算出する方法としては、静止画像から空間情報を抽出し、空間情報を算出する各種の方法を利用することができるが、例えば、Bayesian NetworkやMarkov Random Fieldといった確率モデルを利用して算出してもよい。
【0031】
続いて、CPU51は、ステップS160で算出したアーム32と障害物との距離が近接範囲以内であるか否かを判定し(ステップS180)、近接範囲以内でないと判定した場合には、本ルーチンを終了する。このような場合には、アーム32と障害物とが直ちに接触することがないため、現時点では何らかの制御を行う必要がない。なお、ここで「近接範囲」とは、予め定められた所定の値であり、アームと障害物との距離が近接範囲以内である場合には、アームと障害物とが互いに接近しており、アームの移動に伴い、アームと障害物とが接触する可能性が高いことを示す範囲である。この範囲は、例えば、0ミリメートル以上100ミリメートル以下であってもよいし、0ミリメートル以上50ミリメートル以下であってもよい。
【0032】
一方、ステップS180において、CPU51がアーム32と障害物との距離が近接範囲以内であると判定した場合には、アーム32の動きを規制して(ステップS190)、本ルーチンを終了する。このような場合には、アーム32を動かすことで障害物と接触する可能性が高いため、アーム32の動きを規制することで、アーム32と障害物とが接触する可能性を未然に低減することができる。
【0033】
以上詳述した実施の形態によれば、撮影手段40がアーム32を含む領域を撮影して撮影情報を取得し、ステップS180で、アーム32に相当するアーム領域と障害物に相当する障害物領域との距離が予め定められた近接範囲内にあるか否かを判定し、近接範囲内にある場合には、アーム32の移動を停止する。こうすることにより、アーム32と障害物との接近を規制し、アーム32と障害物とが衝突する可能性を低減することができる。
【0034】
また、ステップS170の前に、ステップS120で取得した基準情報とステップS130で取得した撮影情報とを比較することで、障害物の有無をステップS140で判定することにより、障害物が存在しない場合には、ステップS150以下の処理を実行する必要が無い。こうすることにより、障害物の有無を予め判定することにより、処理を簡略化し、処理速度を向上させることができる。
【0035】
更に、ステップS160で移動部34と障害物との位置関係を判定し、移動部34が障害物よりも下、つまり、移動部34が障害物と本体部22との間に位置する場合には、ステップS190でアーム32の移動を停止する。このような場合にアーム32を移動すると、アーム32と障害物とが衝突する可能性が高いため、アーム32の移動を停止することで、アーム32と障害物とが衝突する可能性を未然に低減することができる。
【0036】
また、移動部34には、特徴点が設けられているため、基準情報及び撮影情報に含まれる特徴点を抽出しやすい。言い換えると、特徴点を有していない場合と比較して、基準情報及び撮影情報に含まれる把持部領域やアーム領域を容易に抽出することができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施の形態では、ステップS190においてアーム32の動きを規制するものとしたが、アーム32を進行方向以外の方向に移動してもよいし、アーム32の移動を停止してもよいし、障害物と衝突しないように移動を制御してもよい。いずれの場合であっても、アーム32の動きを変化させることにより、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0039】
上述した実施の形態では、ステップS110で基準情報があるか否かを判定するものとしたが、予め基準情報をROM52等に記憶しておいてもよい。こうすれば、ステップS110及びステップS120を実行する必要が無い。
【0040】
上述した実施の形態では、ステップS140において、撮影情報に障害物に相当する障害物領域が含まれている場合には、障害物を有すると判定するものとしたが、障害物領域が所定の大きさ以上の場合に、障害物を有すると判定してもよい。こうすれば、アーム32の移動に影響しない小さな障害物が撮影情報に含まれる場合であっても、アーム32の移動を継続することができる。
【0041】
上述した実施の形態では、特徴点は赤色円形であるものとしたが、予め定められた特徴を有するものであればこれに限定されるものではなく、青色や緑色等種々の色であってもよいし、三角形や四角形、十字形状等種々の形状であってもよい。また、凹部や凸部等の特定の形状であってもよい。予め、画像処理の際に抽出しやすい符号を備えることにより、いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0042】
上述した実施の形態では、近接範囲の値は予め定めるものとしたが、撮影手段40の撮影間隔とアーム32の移動速度に基づいて定めるものとしてもよい。具体的には、アーム32の移動速度に撮影手段40の撮影間隔を乗じた値を近接範囲の値としてもよい。こうすれば、撮影手段40が次に撮影情報を撮影し、本ルーチンで判定するまでの間にアーム32が近接範囲分より大きく移動することがないため、アームと障害物との距離が近接範囲より大きければ、アーム32と障害物とが衝突する可能性がない。
【0043】
上述した実施の形態では、移動制御処理ルーチンは繰り返し実行されるものとしたが、繰り返し実行される際、例えば、10ミリ秒や1秒等、所定の時間待機した後に実行されるものとしてもよい。こうすることにより、連続的に実行する場合と比較して、処理回数を低減し、制御手段50への負荷を低減することができる。また、この待機時間は、アーム32の移動速度に応じて定めるものとしてもよいし、アーム32の移動速度と近接範囲の値に基づいて定めるものとしてもよい。例えば、待機時間とアーム32の移動速度の積が近接範囲の値より短くなるように待機時間を定めることで、アーム32が近接範囲の距離を進む間に必ず移動制御処理ルーチンが実行されることになるため、アーム32と障害物とが接触する可能性を低減することができる。
【0044】
上述した実施の形態では、撮影手段40は2つ設けるものとしたが、アーム32を中心に4つ設けるものとしてもよいし、1つであってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様に、アーム32と障害物とが衝突する可能性を未然に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上述した実施の形態で示すように、ロボット制御分野、特に移動するアームの接触防止制御手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
20…搬送車、22…本体部、30…ロボット、32…アーム、34…移動部、40…撮影手段、40a…撮影手段、40b…撮影手段、50…制御手段、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…インタフェース、55…バス。
図1
図2
図3
図4