(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】ウェアラブルスピーカシステム、ウェアラブルスピーカモジュール、及びウェアラブルディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230213BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20230213BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20230213BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20230213BHJP
H04R 5/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
H04R1/00 318Z
H04R1/00 317
H04R1/02 101B
H04R1/10 101Z
H04R1/28 310E
H04R5/02 Z
(21)【出願番号】P 2018205991
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 英徳
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255012(JP,A)
【文献】特開2007-235922(JP,A)
【文献】特開2018-152919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/08
H04R 1/10
H04R 1/12- 1/14
H04R 1/20- 1/40
H04R 1/42- 1/46
H04R 5/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンクロージャと、
上記エンクロージャに収容された、音声信号に従って動作するスピーカユニットと、
上記エンクロージャに取り付けられた、上記音声信号に従って振動する振動体と、
上記振動体を聴者の頭部に押し当てるように、上記エンクロージャを保持するアームと
、を備え
、
上記振動体は、上記スピーカユニットの背圧によりパッシブ駆動される、
ことを特徴とするウェアラブルスピーカシステム。
【請求項2】
上記スピーカユニットは、上記振動体が上記聴者の頭部に押し当てられたときに、上記
聴者の耳を向くように、上記エンクロージャに収容されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項3】
上記アームは、その一端が上記エンクロージャに固定されており、上記エンクロージャ
を介して上記振動体を間接的に保持する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項4】
上記アームは、その一端が上記振動体に固定されており、上記振動体を介して上記エン
クロージャを間接的に保持する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項5】
上記エンクロージャには、バスレフダクトが設けられている、
ことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載のウェアラブルスピーカシステム。
【請求項6】
他装置に取り付けられた、又は、取り付け可能なウェアラブルスピーカモジュールであ
って、
エンクロージャと、
上記エンクロージャに収容された、音声信号に従って動作するスピーカユニットと、
上記エンクロージャに取り付けられた、上記音声信号に従って振動する振動体と、
上記振動体を聴者の頭部に押し当てるように、上記エンクロージャを保持するアームと
、を備え
、
上記振動体は、上記スピーカユニットの背圧によりパッシブ駆動される、
ことを特徴とするウェアラブルスピーカモジュール。
【請求項7】
請求項
6に記載のウェアラブルスピーカモジュールと、上記ウェアラブルスピーカモジ
ュールが取り付けられたウェアラブルディスプレイモジュールと、を備えている、
ことを特徴とするウェアラブルディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルスピーカシステム(聴者に装着可能なスピーカシステム)及びウェアラブルスピーカモジュール(聴者に装着可能なスピーカモジュール)に関する。また、そのようなウェアラブルスピーカモジュールを備えたウェアラブルディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
据え置き型のスピーカシステムを用いて良好な音質を得るために、聴者は、リスニングルームの特定の場所に居続ける必要がある。したがって、据え置き型のスピーカシステムには、聴者が音楽鑑賞を楽しみながら自由に移動することが困難であるという問題がある。
【0003】
また、イヤフォン又はヘッドフォンを用いて良好な音質を得るために、聴者は、外耳道を塞ぐようにイアピースを装着する必要がある。したがって、イヤフォン及びヘッドフォンには、聴者が音楽鑑賞を楽しみながら外界の音を認識することが困難であるという問題がある。
【0004】
これらの問題の解決に資する技術として、例えば、特許文献1に記載のウェアラブルスピーカシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のウェアラブルスピーカシステムでは、小口径のスピーカユニットとパッシブラジエータと収容した小型のエンクロージャが、聴者の鎖骨周辺に装着される。このため、臨場感を伴った低音感を聴者に与えることが困難である、という問題があった。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、臨場感を伴った低音感を聴者に与えることが可能なウェアラブルスピーカシステム及びウェアラブルスピーカモジュールを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るウェアラブルスピーカシステム及びウェアラブルスピーカモジュールは、それぞれ、エンクロージャと、上記エンクロージャに収容された、音声信号に従って動作するスピーカユニットと、上記エンクロージャに取り付けられた、上記音声信号に従って振動する振動体と、上記振動体を聴者の頭部に押し当てるように、上記エンクロージャを保持するアームと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、臨場感を伴った低音感を聴者に与えることが可能なウェアラブルスピーカシステム及びウェアラブルスピーカモジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェアラブルスピーカシステムの構成を示す。(a)は、そのウェアラブルスピーカシステムの斜視図であり、(b)は、そのウェアラブルスピーカシステムが備えるスピーカの断面図である。
【
図2】
図1に示すウェアラブルスピーカシステムを聴者が装着する装着方法を示す。(a)は、そのウェアラブルスピーカシステムを装着した聴者の正面図であり、(b)は、そのウェアブルスピーカシステムを装着した聴者の側面図である。
【
図3】
図1に示すウェアラブルスピーカシステムにおいてアームがエンクロージャを保持する保持方法を示す。(a)は、第1の保持方法を示す正面図であり、(b)は、第2の保持方法を示す正面図である。(c)は、ウェアラブルスピーカシステムの変形例を示す正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るウェアラブルディスプレイシステムの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、単体でウェアラブルスピーカ(聴者に装着可能なスピーカ)として機能する装置のことを「ウェアラブルスピーカシステム」と記載し、他装置に取り付けられた状態でウェアラブルスピーカとして機能する装置のことを「ウェアラブルスピーカモジュール」と記載する。なお、ウェアラブルスピーカモジュールは、他装置に既に取り付けられた状態で複合製品(他装置とウェアラブルスピーカモジュールとを含むシステム)の一部として実施されてもよいし、他装置に未だ取り付けられていない状態で、単体製品として実施されてもよい。
【0012】
≪第1の実施形態≫
〔ウェアラブルスピーカシステムの構成〕
本発明の一実施形態に係るウェアラブルスピーカシステム1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1において、(a)は、ウェアラブルスピーカシステム1の構成を示す斜視図であり、(b)は、ウェアラブルスピーカシステム1が備えるスピーカ11の断面図である。
【0013】
ウェアラブルスピーカシステム1は、
図1の(a)に示すように、2つのスピーカ11と、これら2つのスピーカ11を保持するアーム12と、を備えている。これら2つのスピーカ11は、聴者の外耳道を塞ぐことなく、外耳道外の空間を伝播した後、外耳道内に入射した音波によって聴者に音声を感知させる所謂ラウドスピーカである。各スピーカ11は、
図1の(a)及び(b)に示すように、エンクロージャ111と、スピーカユニット112と、振動体113と、バスレフダクト114と、を備えている。
【0014】
エンクロージャ111は、内部に空洞が形成された筐体である。エンクロージャ111には、スピーカユニット112を取り付けるための第1開口111aと、振動体113を取り付けるための第2開口111bと、バスレフポート(バスレフダクト114の出口)として機能する第3開口111cとが形成されている。第2開口111bの開口方向(
図1におけるX軸方向)は、第1開口111aの開口方向(
図1におけるY軸方向)に交わる方向(例えば、直交する方向)である。第3開口111cの開口方向(
図1におけるY軸方向)は、第1開口111aの開口方向(
図1におけるY軸方向)に沿う方向(例えば、平行な方向)である。
【0015】
なお、本実施形態においては、エンクロージャ111として、内部に空洞が形成された球状の筐体を用いている。ただし、エンクロージャ111の形状は、任意であり、これに限定されない。例えば、内部に空洞が形成された直方体状の筐体を用いてもよいし、或いは、内部に空洞が形成された円柱状の筐体を用いてもよい。
【0016】
スピーカユニット112は、第1開口111aを塞ぐように、エンクロージャ111の内部に収容される。スピーカユニット112は、与えられた音声信号に従って動作し、その音声信号に応じた音波を放射する。スピーカユニット112は、聴者の耳を向くように配置され、スピーカユニット112から放射された音波は、聴者の外耳道外の空間を伝播した後、聴者の外耳道内に入射し、聴者の鼓膜を振動させる。これにより、聴者は、聴覚刺激を通じて、音声信号が表す音声を感知する。
【0017】
なお、本実施形態においては、スピーカユニット112として、1つのフルレンジユニットを用いている。ただし、スピーカユニット112の構成は、これに限定されない。例えば、2つのスピーカユニットの組み合わせ(例えば、ミッドローユニットとツイータとの組み合わせ、或いは、ミッドハイユニットとウーファとの組み合わせ)を、スピーカユニット112として用いてもよいし、或いは、3つのスピーカユニットの組み合わせ(例えば、ツイータとスコーカとウーファとの組み合わせ)を、スピーカユニット112として用いてもよい。また、スピーカユニット112の動作方式も、特に限定されない。ダイナミック型であってもよいし、コンデンサ型であってもよいし、リボン型であってもよい。
【0018】
振動体113は、第2開口111bを塞ぐように、エンクロージャ111の外部に取り付けられる。振動体113は、スピーカユニット112と同じ音声信号に従って動作し、その音声信号に応じて振動する。振動体113は、聴者の頭部に押し当てられ、振動体113の振動は、聴者の頭部を構成する皮膚及び/又は骨格に伝導される。これにより、聴者は、骨伝導及び/又は皮膚刺激を通じて、音声信号が表す音声の低域成分を感知する。この低域成分の感知により、聴者は、臨場感を伴う低音感を与えられることになる。
【0019】
本実施形態においては、振動体113として、スピーカユニット112の背圧によってパッシブ駆動される振動体を用いている。より具体的には、
図1の(b)に示すように、円筒状の蛇腹113aと、蛇腹113aの一端を閉塞する円盤状の振動板113bとにより構成された振動体を用いている。この場合、スピーカユニット112の振動板112aが後退し、エンクロージャ111内の気圧が上がると、振動体113の振動板113bが前進する。逆に、スピーカユニット112の振動板112aが前進し、エンクロージャ111内の気圧が下がると、振動体113の振動板113bが後退する。すなわち、振動体113の振動板113bは、逆位相駆動される。ただし、振動体113は、これに限定されない。例えば、コイルやマグネットなどにより構成されるアクチュエータを備え、音声信号によりアクティブ駆動される振動体を、振動体113として用いてもよい。この場合、振動体113の振動板113bを、逆位相駆動することもできるし、同位相駆動することもできる。ネットワーク回路を用いれば、スピーカユニット112の振動板112aと振動体113の振動板113bとの位相差を、所望の値(例えば、π/4,2π/4,3π/4,5π/4,6π/4,7π/4)に制御することも可能である。
【0020】
バスレフダクト114は、エンクロージャ111の内部とエンクロージャ111の外部とを繋ぐダクトである。バスレフダクト114の長さ及びバスレフダクト114の断面積は、エンクロージャ111の容積及びスピーカユニット112の特性に応じて、低音を効果的に増強するように設定されている。バスレフダクト114が低音を増強する原理、及び、低音を増強するためのバスレフダクト114の設計については、公知であるため、ここではその説明を省略する。
【0021】
本実施形態においては、(1)スピーカユニット112の背後から後方(
図1におけるY軸負方向)に延伸し、(2)エンクロージャ111を貫通してU字型に折り返し、(3)再びエンクロージャ111を貫通して第3開口111cに至るダクトを、バスレフダクトとして用いている。これにより、エンクロージャ111のサイズが小さい場合であっても、バスレフダクト114の長さを十分に長くすることができる。なお、振動体113によって聴者に十分な低音感を与えられる場合には、バスレフダクト114を省略することも可能である。
【0022】
アーム12は、各スピーカ11のエンクロージャ111を保持するための構成である。アーム12は、U字型に成形された弾性体により構成されており、両端にスピーカ11がそれぞれ固定されている。このとき、各スピーカ11のスピーカユニット112は、後方(
図1においてy軸負方向)を向き、各スピーカ11の振動体113は、内側方向(
図1においてx軸正方向側のスピーカ11ではx軸負方向、x軸負方向型のスピーカ11ではx軸正方向)を向く。ウェアラブルスピーカシステム1は、2つのスピーカ11の間隔を広げるようにアーム12を弾性変形させた状態で聴者の頭部に装着される。このとき、各スピーカ11は、2つのスピーカ11の間隔を狭めようとするアーム12の復元力によって、内側方向に付勢される。これにより、各スピーカ11の内側に取り付けられた振動体113が、聴者の頭部に押し当てられる。
【0023】
本実施形態においては、アーム12として、聴者の頭部に上方から装着するU字型のアーム(頭頂部にかけるアーム)を用いている。ただし、アーム12の形態は、これに限定されない。例えば、聴者の頭部に後方から装着するU字型のアーム(後頭部にかけるアーム)を用いてもよいし、或いは、聴者の頭部に下方から装着するU字型のアーム(顎にかけるアーム)を用いてもよい。また、後述するように、ヘッドマウントディスプレイに取り付けられたアームを、アーム12として用いることも可能である。
【0024】
〔ウェアラブルスピーカシステムを聴者に装着する装着方法〕
ウェアラブルスピーカシステム1を聴者Lに装着する装着方法について、
図2を参照して説明する。
図2においては、(a)は、ウェアラブルスピーカシステム1を装着した聴者Lの正面図であり、(b)は、ウェアラブルスピーカシステム1を装着した聴者Lの側面図である。
【0025】
ウェアラブルスピーカシステム1は、
図2に示すように、2つのスピーカ11の間隔を広げるようにアーム12を弾性変形させた状態で聴者の頭部に上方から装着される。このとき、
図2の(b)に示すように、2つのスピーカ11が聴者Lの耳の前方に位置し、スピーカユニット112が聴者Lの耳を向く。また、
図2の(a)に示すように、2つのスピーカ11の間隔を狭めようとするアーム12の復元力によって、各スピーカ11が内側方向に付勢され、各スピーカ11の内側に取り付けられた振動体113が聴者Lの頭部(例えば、側頭部)に押し当てられる。
【0026】
スピーカユニット112が聴者Lの耳を向く構成によって、スピーカユニット112から放射された音波を効率的に視聴者Lに導くことが可能になる。また、振動体113が聴者Lの頭部に押し当てられる構成によって、振動体113の振動を効率的に聴者Lの頭部に伝導させることができ、その結果、臨場感を伴う低音感を骨伝導及び/又は皮膚刺激を通じて効率的に聴者Lに与えることが可能になる。
【0027】
〔アームがエンクロージャを保持する保持方法〕
ウェアラブルスピーカシステム1において、アーム12が各スピーカ11のエンクロージャ111を保持する保持方法について、
図3を参照して説明する。
図3において、(a)は、第1の保持方法が採用されたウェアラブルスピーカシステム1の正面図であり、(b)は、第2の保持方法が採用されたウェアラブルスピーカシステム1の正面図である。
【0028】
第1の保持方法は、
図3の(a)に示すように、アーム12の両端を、それぞれ、各スピーカ11のエンクロージャ111に固定する保持方法である。この場合、アーム12は、各スピーカ11のエンクロージャ111を直接的に保持すると共に、各スピーカ11の振動体113を、そのスピーカ11のエンクロージャ111を介して間接的に保持することになる。
【0029】
この場合、アーム12に固定されたエンクロージャ111の内側で振動体113が振動し、その振動が聴者の頭部に伝導される。これにより、臨場感を伴う低音感を骨伝導又は皮膚刺激を通じて聴者に与えることができる。
【0030】
第2の保持方法は、
図3の(b)に示すように、アーム12の両端を、それぞれ、各スピーカ11の振動体113(の振動板113b)に固定する保持方法である。この場合、アーム12は、各スピーカ11の振動体113を直接的に保持すると共に、各スピーカ11のエンクロージャ111を、そのスピーカ11の振動体113を介して間接的に保持することになる。
【0031】
この場合、アーム12に固定された振動体113の外側でエンクロージャ111が振動し、その振動が聴者の頭部に伝導される。エンクロージャ111が外側に変位するときに、内向きの力(反作用)が聴者の頭部に作用するからである。これにより、臨場感を伴う低音感を骨伝導又は皮膚刺激を通じて聴者に与えることができる。
【0032】
なお、ウェアラブルスピーカシステム1は、
図3の(c)に示すように構成してもよい。すなわち、振動体113を蛇腹113aと振動板113bとに分け、蛇腹113aをエンクロージャ111の外側に、振動板113bをエンクロージャ111の内側に、それぞれ取り付ける。そして、アーム12の両端を、それぞれ、左右のエンクロージャ111に取り付けられた蛇腹113aの外側に固定する。これにより、蛇腹113aが伸縮すると、聴者の頭部に押し当てられた振動板113bがエンクロージャ111と共に振動することになる。このようなウェアラブルスピーカシステム1においても、上述した効果と同様の効果が得られる。
【0033】
≪第2の実施形態≫
ウェアラブルスピーカモジュール2を備えたウェアラブルディスプレイシステムDSの構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、ウェアラブルディスプレイシステムDSの構成を示す側面図である。
【0034】
ウェアラブルディスプレイシステムDSは、ウェアラブルディスプレイモジュールDMと、ウェアラブルディスプレイモジュールDMに取り付けられたウェアラブルスピーカモジュール2と、を備えている。ウェアラブルディスプレイモジュールDMは、視聴者に装着可能なディスプレイであり、ウェアラブルスピーカモジュール2は、視聴者に装着可能なスピーカである。
【0035】
ウェアラブルスピーカモジュール2は、第1の実施形態に係るウェアラブルスピーカシステム1と同様、スピーカ21と、スピーカ21を保持するアーム22と、を備えている。スピーカ21は、第1の実施形態に係るスピーカ11と同様、エンクロージャ211と、エンクロージャ211に収容されたスピーカユニット212と、エンクロージャ211に取り付けられた振動体213と、を備えている。スピーカ21のエンクロージャ211、スピーカユニット212、及び振動体213の構造及び機能は、それぞれ、スピーカ11のエンクロージャ111、スピーカユニット112、及び振動体113の構造及び機能と同様である。このため、スピーカ21に関する詳細な説明は省略する。
【0036】
アーム22は、スピーカ21のエンクロージャ211を保持するための構成である。アーム22の一端は、スピーカ21のエンクロージャ211に取り付けられており、アーム22の他端は、ウェアラブルディスプレイモジュールDMに取り付けられている。
【0037】
アーム22は、その全長を視聴者が調整することを可能ならしめる全長調整機能を有している。本実施形態においては、アーム22を主アーム221と副アーム222とにより構成し、副アーム222を主アーム221に挿入する挿入長を可変にすることによって、この全長調整機能を実現している。これにより、視聴者は、より良い音質を得るために、スピーカ21の位置を容易に調整することが可能になる。
【0038】
また、アーム22は、その取付角度を視聴者が調整することを可能ならしめる角度調整機能を有している。本実施形態においては、ヒンジ223を介してアーム22をウェアラブルディスプレイ5の筐体に取り付けることによって、この取付角度調整機能を実現している。これにより、視聴者は、より良い音質を得るために、スピーカ21の位置を更に容易に調整することが可能になる。
【0039】
ウェアラブルスピーカモジュール2は、ウェアラブルスピーカシステム1と同様、以下の効果を奏する。すなわち、音声信号が表す音声を、スピーカユニット212が放射する音波によって、聴覚刺激を通じて視聴者に感知させると共に、それだけでは不足しがちな臨場感を伴う低音感を、視聴者の頭部に押し当てられた振動体213の振動によって、骨伝導及び/又は皮膚刺激を通じて視聴者に感知させることができる。
【0040】
なお、ウェアラブルスピーカモジュール2は、ウェアラブルディスプレイモジュールDMに着脱不能に取り付けられていてもよいし、ウェアラブルディスプレイモジュールDMに着脱可能に取り付けられていてもよい。後者の場合、ウェアラブルスピーカモジュール2は、ウェアラブルディスプレイモジュールDMに既に取り付けられた状態で、複合製品(ウェアラブルディスプレイシステムDS)の一部として実施することもできるし、ウェアラブルディスプレイモジュールDMに未だ取り付けられていない状態で、単体製品として実施することもできる。また、ウェアラブルスピーカモジュール2は、ウェアラブルディスプレイモジュールDM以外の任意の装置(特許請求の範囲における「他装置」)に取り付けて利用することも可能である。
【0041】
≪まとめ≫
本発明の態様1に係るウェアラブルスピーカシステムは、エンクロージャと、上記エンクロージャに収容された、音声信号に従って動作するスピーカユニットと、上記エンクロージャに取り付けられた、上記音声信号に従って振動する振動体と、上記振動体を聴者の頭部に押し当てるように、上記エンクロージャを保持するアームと、を備えていることを特徴とする。
【0042】
上記の構成によれば、上記音声信号が表す音声を、上記スピーカユニットが音波を放射することによって、聴覚刺激を通じて上記聴者に感知させると共に、それだけでは不足しがちな臨場感を伴う低音感を、上記聴者の頭部に押し当てられた上記振動体が上記音声信号に従って振動することによって、骨伝導又は皮膚刺激を通じて上記聴者に感知させることができる。したがって、上記の構成によれば、臨場感を伴った低音感を聴者に与えることが可能なウェアラブルスピーカを実現することができる。
【0043】
本発明の態様2に係るウェアラブルスピーカシステムは、本発明の態様1に係るウェアラブルスピーカシステムにおいて、上記スピーカユニットは、上記振動体が上記聴者の頭部に押し当てられたときに、上記聴者の耳を向くように、上記エンクロージャに収容されている、ことを特徴とする。
【0044】
上記の構成によれば、臨場感を伴う低音感を、上記聴者の頭部に押し当てられた上記振動体が上記音声信号に従って振動することによって、骨伝導又は皮膚刺激を通じて上記聴者に感知させる機能を阻害することなく、上記スピーカユニットから放射される音波をより効率的に上記聴者の耳に導くことができる。
【0045】
本発明の態様3に係るウェアラブルスピーカシステムは、本発明の態様1又は2に係るウェアラブルスピーカシステムにおいて、上記アームの一端が、上記振動体に固定されており、上記アームが、上記振動体を介して上記エンクロージャを間接的に保持する、ことを特徴とする。
【0046】
上記の構成によれば、上記アームに固定されたエンクロージャの内側で上記振動体が振動することによって、伴った低音感を骨伝導又は皮膚刺激を通じて上記聴者に効率的に感知させることができる。
【0047】
本発明の態様4に係るウェアラブルスピーカシステムは、本発明の態様1又は2に係るウェアラブルスピーカシステムにおいて、上記アームの一端が、上記振動体に固定されており、上記アームが、上記振動体を介して上記エンクロージャを間接的に保持する、ことを特徴とする。
【0048】
上記の構成によれば、上記アームに固定された振動体の外側で上記エンクロージャが振動することによって、伴った低音感を骨伝導又は皮膚刺激を通じて上記聴者に効率的に感知させることができる。
【0049】
本発明の態様5に係るウェアラブルスピーカシステムは、本発明の態様1~4の何れかに係るウェアラブルスピーカシステムおいて、上記振動体が、上記スピーカユニットの背圧によりパッシブ駆動される、ことを特徴とする。
【0050】
上記の構成によれば、上記振動体を振動させるためのアクチュエータ(コイル、マグネット、ネットワーク回路等)を備えることなく、上記ウェアラブルスピーカを実現することができる。したがって、上記ウェアラブルスピーカをより簡単に、かつ、より安価に製造することが可能になる。
【0051】
本発明の態様6に係るウェアラブルスピーカシステムは、本発明の態様1~5の何れかに係るウェアラブルスピーカシステムにおいて、上記エンクロージャに、バスレフダクトが設けられている、ことを特徴とする。
【0052】
上記の構成によれば、上記バスレフダクトが放射される音波によって、上記聴者が感知する低音感を更に増強することができる。
【0053】
本発明の態様7に係るウェアラブルスピーカモジュールは、他装置に取り付けられた、又は、取り付け可能なウェアラブルスピーカモジュールであって、エンクロージャと、上記エンクロージャに収容された、音声信号に従って動作するスピーカユニットと、上記エンクロージャに取り付けられた、上記音声信号に従って振動する振動体と、上記振動体を聴者の頭部に押し当てるように、上記エンクロージャを保持するアームと、を備えている、ことを特徴とする。
【0054】
上記の構成によれば、上記音声信号が表す音声を、上記スピーカユニットが音波を放射することによって、聴覚刺激を通じて上記聴者に感知させると共に、それだけでは不足しがちな臨場感を伴う低音感を、上記聴者の頭部に押し当てられた上記振動体が上記音声信号に従って振動することによって、骨伝導又は皮膚刺激を通じて上記聴者に感知させることができる。したがって、上記の構成によれば、臨場感を伴った低音感を聴者に与えることが可能なウェアラブルスピーカを実現することができる。
【0055】
本発明の態様8に係るウェアラブルディスプレイシステムは、本発明の態様7に係るウェアラブルスピーカモジュールと、そのウェアラブルスピーカモジュールが取り付けられたウェアラブルディスプレイモジュールと、を備えている、ことを特徴とする。
【0056】
上記の構成によれば、映像と共に、臨場感を伴った低音感を有する音声を視聴者に提供することが可能なウェアラブルディスプレイシステムを実現することができる。
【0057】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ウェアラブルスピーカシステム
11 スピーカ
111 エンクロージャ
112 スピーカユニット
113 振動体
12 アーム
2 ウェアラブルスピーカモジュール
21 スピーカ
211 エンクロージャ
212 スピーカユニット
213 振動体
22 アーム
DS ウェアラブルディスプレイシステム
DM ウェアラブルディスプレイモジュール