(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】フライトデッキに空気流を供給するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B64D 13/04 20060101AFI20230213BHJP
B64D 13/06 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B64D13/04
B64D13/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018208940
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ダブリュー.カークブライド
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0052227(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0048449(US,A1)
【文献】特開2001-213398(JP,A)
【文献】実開平04-104709(JP,U)
【文献】特開2015-001369(JP,A)
【文献】特開平05-169972(JP,A)
【文献】特表2008-534376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0214723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライトデッキに空気流を供給するシステムであって、
乗客搭乗領域からフライトデッキを隔てるドアに設けられているともに、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されたファンと、
前記乗客搭乗領域に面して前記ファンに隣接して設けられたシールドと、を含み、前記シールドは、前記ファンを覆い隠すよう構成されている、システム。
【請求項2】
前記空気流は、前記フライトデッキ内の空気圧を上げる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ドアは、前記フライトデッキ内の空気圧を下げるよう構成された通気弁を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記シールドと前記ドアに設けられた前記ファンとの間に設置されたフィルタをさらに含み、前記フィルタは、前記空気流から粒子を除去するよう構成されている、請求項1~3のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項5】
前記フィルタは、高性能エア(HEPA)型フィルタである、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ファンは、前記ファンの作動、フィルタの状態、又は、前記フライトデッキ内の状況のうちの少なくとも1つを示すよう構成された光源を含む、請求項
4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ファンは、環境制御システム(ECS)に機能的に接続されており、前記ファンは、前記ECSから受け取った命令に基づいて起動するよう構成されている、請求項1~6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項8】
前記フライトデッキは、ユーザインターフェースを含み、前記ファンは、前記ユーザインターフェースから受け取った命令に基づいて起動するよう構成されている、請求項1~7のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項9】
前記ファンは第1ファンであり、前記システムは、前記ドアに設けられているともに、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成された第2のファンをさらに含み、前記シールドは、前記第1ファンと前記第2ファンの両方を覆い隠すよう構成されている、請求項1~8のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項10】
前記ファンから発生する音を減衰させるよう構成された弾性マウントをさらに含む、請求項1~9のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項11】
前記シールドは、前記ファンに向かう外来突入物の衝撃を吸収するか、又は、貫通を防ぐよう構成された金属板又はセラミック板である、請求項1~10のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項12】
フライトデッキに空気流を供給する方法であって、
乗客搭乗領域からフライトデッキを隔てるドアにファンを設けることを含み、この際に、前記ファンは、前記乗客搭乗領域に隣接して設けられたシールドに結合されるとともに、前記ファンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されているものとする、方法。
【請求項13】
前記ファンは、前記空気流を前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導することにより、前記フライトデッキ内の空気圧を調整す
る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ドアに設けられた通気弁を介して、前記フライトデッキの空気圧を逃すことをさらに含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記乗客搭乗領域からの空気流をフィルタリングして、前記フライトデッキに流れ込む空気流から粒子を除去することをさらに含む、請求項12~14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、フライトデッキの与圧システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
民間航空機は、一般的に、フライトデッキをコックピット内に含み、パイロットはここから航空機の制御を行う。航空機の運航中に、フライトデッキの空気の質を低下させるような事態がフライトデッキ内で発生する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施例は、概して、フライトデッキの制御圧と航空機におけるその他の空間の空気圧との差圧が正圧になるようにフライトデッキを与圧するシステム及び/又は方法に関する。これにより、設計空気流(design air flow)及び漏洩空気流(leakage air flow)がフライトデッキから外に向かって流れるようにでき、フライトデッキ外の発生源から煙や有毒ガスがフライトデッキに流入しない状態を確立することができる。
【0004】
民間航空機は、一般的に、空気圧が制御された複数の空間(control volume)に区画されて、制御圧の高い空間から制御圧の低い空間に空気流を流すように管理されている。パイロットが航空機の制御を行うフライトデッキは、そのような制御空間のうちの1つである。航空機の運航中に、いずれかの制御空間における空気に煙やその他の有毒ガスが混入する事態が発生する可能性がある。
【0005】
フライトデッキの空気圧を高圧に維持し、設計空気流及び漏洩空気流がフライトデッキから外に向かうようにするため、フライトデッキへの空気流を増加させるシステム及び/又は方法が必要である。正常運航時には、上記システム及び/又は方法は、航空機のエアマネジメント・システムの補助的な役割を担う。航空機のエアマネジメント・システムに不具合が生じた場合は、上記システム及び/又は方法がフライトデッキを冗長的に与圧することができる。
【0006】
本開示の実施例は、例えば、ファンを使って、フライトデッキに空気流を供給する。前記ファンは、乗客搭乗領域からフライトデッキを隔てるドアに設置される。前記乗客搭乗領域は、航空機における領域であって、乗客が航空機に搭乗する領域に相当する。前記ファンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されている。例えば、前記ファンの羽根の回転によって、前記乗客搭乗領域の空気を前記フライトデッキ内に導くよう構成されている。前記ファンは、前記乗客搭乗領域に隣接して配置されたシールドを含み、これは、外来突入物から前記ファンを保護するよう構成されている。任意の構成として、前記シールドは、前記ファンに向かう外来突入物の衝撃を吸収するか、又は、貫通を防ぐよう構成された金属板又はセラミック板である。
【0007】
少なくとも1の実施例では、前記空気流は、前記フライトデッキ内の空気圧を上昇させる。任意の構成として、前記ドアは、前記フライトデッキ内の空気圧を下げるよう構成された通気弁を含む。
【0008】
少なくとも1の実施例では、前記ファンは、前記シールドと前記ドアに設けられた前記ファンとの間に設置されたフィルタを含む。前記フィルタは、前記空気流から粒子を除去するよう構成されている。任意の構成として、前記フィルタは、高性能エア(HEPA)型フィルタである。
【0009】
少なくとも1の実施例では、前記ファンは、前記ファンの作動、フィルタの状態、又は、前記フライトデッキ内の状況のうちの少なくとも1つを示すよう構成された光源を含む。
【0010】
少なくとも1の実施例では、前記ファンは、環境制御システム(ECS)に機能的に接続されている。前記ファンは、前記ECSから受け取った命令に基づいて起動される。これに加えて、あるいは、これに代えて、前記フライトデッキは、ユーザインターフェースを含む。前記ファンは、前記ユーザインターフェースから受け取った命令に基づいて起動される。
【0011】
少なくとも1の実施例では、第2ファンが前記ドアに設けられている。前記第2ファンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されている。前記シールドは、前記第2ファンまで延在し、前記第2ファンを外来突入物から保護するよう構成されている。
【0012】
少なくとも1の実施例では、前記ファンは、前記ファンから発生する音を減衰させるよう構成された弾性マウントを含む。
【0013】
本開示の特定の実施例は、フライトデッキに空気流を供給するための方法を提供する。前記方法は、乗客搭乗領域からフライトデッキを隔てるドアにファンを設けることと、前記ファンを覆い隠すシールドを結合することと、を含む。前記シールドは、前記乗客搭乗領域に隣接して配置される。前記方法は、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導することを含む。
【0014】
本開示の特定の実施例は、航空機を提供する。前記航空機は、内部キャビンを含む。前記内部キャビンは、フライトデッキ及び乗客搭乗領域を含む。前記内部キャビンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキを隔てるドアを含む。前記ドアは、ファンを含む。前記ファンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されている。前記ファンは、前記乗客搭乗領域に隣接して配置されたシールドを含み、これは、前記ファンを外来突入物から保護するよう構成されている。前記シールドは、前記ファンに向かう外来突入物の衝撃を吸収するか、又は、貫通を防ぐよう構成された金属板又はセラミック板を含む。前記ファンは、前記シールドと前記ファンとの間に設置されたフィルタを含む。前記フィルタは、前記フライトデッキに流入する空気流から粒子を除去するよう構成されている。前記航空機は、前記ファンに機能的に接続された環境制御システム(ECS)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示のこれらの特徴、態様及び効果、並びに、その他の特徴、態様及び効果は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。添付図面では、同様の部分はすべての図面を通して同じ参照符号で表されている。
【0016】
【
図1A】本開示の実施例による航空機の内部キャビンの一部を示す内面図である。
【
図1B】本開示の実施例による航空機のキャビンの側面を示す内面図である。
【
図2A】本開示の実施例による、乗客搭乗領域に対するドア外面の図である。
【
図2B】本開示の実施例による、フライトデッキに対するドア内面の図である。
【
図3】本開示の実施例による、乗客搭乗領域に対するファンのロータ・アセンブリの正面図である。
【
図4】本開示の実施例による、フライトデッキと乗客搭乗領域との間に配置されたドアに設けられたファンの断面図である。
【
図5】本開示の実施例による、フライトデッキに空気流を供給する方法のフローチャートである。
【
図6】本開示の実施例による、フライトデッキと乗客搭乗領域との間に配置されたドアに設けられた第1ファンと第2ファンの正面図である。
【
図7】本開示の実施例による航空機を前方から見た透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述の発明の概要、並びに、以下に示す実施例の詳細な説明は、添付図面を参照するとより理解しやすいであろう。本明細書において、単数形で記載されている要素あるいはステップは、複数の要素あるいはステップを必ずしも排除するものではない。加えて、「一実施形態」又は「一実施例」に言及することは、その実施形態又は実施例に記載した特徴を取り入れた他の実施形態や実施例の存在を排除することを意図するものではない。加えて、特に明記されていない限り、特定の特性を有する1つの要素あるいは複数の要素を「備える」あるいは「有する」実施形態は、その性質を有さない別の要素を追加的に含んでいてもよい。
【0018】
本明細書に記載の実施例では、航空機のフライトデッキに空気流を供給するよう構成されたファンを説明する。ファンは、ドアに設けられている。ファンは、ロータ・アセンブリ(rotor assembly)を含み、ロータ・アセンブリは、一連の羽根、及び、これら一連の羽根を回転させるモータを有する。ドアは、乗客搭乗領域(passenger entry area)からフライトデッキを隔てている。ファンは、乗客搭乗領域の空気をフライトデッキの内部に導くよう構成された羽根を備えるロータ・アセンブリを含む。ファンから供給された空気流によってフライトデッキ内の空気圧が高まる。例えば、空気流によって乗客搭乗領域の空気がフライトデッキ内に押し出されるので、フライトデッキ内の圧力が高まる。ファンは、フライトデッキを与圧して、フライトデッキと航空機内のその他の空間(例えば、乗客搭乗領域)との差圧を正圧にするよう構成されている。フライトデッキ内を正圧にすると、空気流及び漏洩空気流がフライトデッキから外に向うことが保証され、よって、フライトデッキ外部の発生源から煙又は有毒ガスがフライトデッキに流入しないようにできる。フライトデッキ内の圧力は、ドアに設けられた通気弁(vent valve)を介して逃すことができる。任意の構成として、通気弁は、フライトデッキ内の空気圧が所定の閾値を超えると作動するものでもよい。このような通気弁は、空気圧が上昇すると、フライトデッキの空気を乗客搭乗領域に排気する。フライトデッキからの排気に伴って、フライトデッキ内の空気圧が下がる。
【0019】
少なくとも1の実施例において、ファンはシールドを含み、このシールドは、乗客搭乗領域からの外来突入物(external projectile)を止めて、ファンの損傷を防ぐよう構成されている。例えば、シールドは、ファンを乗客搭乗領域側で覆うように重ね合された1以上の金属板又はセラミック板を含む。この金属板及び/又はセラミック板は、外来突入物がファンに進入することを阻止し、及び/又は、外来突入物の衝撃を吸収し、及び/又は、ファンを貫通することを止めるよう構成されている。外来突入物の例としては、限定するものではないが、銃弾、堅く強化したボールペン(hardened ball point pen)、刃物、軸や柄(shank)などがある。シールドは、シールドとドアの間に隙間が形成されるように配置される。当該隙間は、この隙間を介して空気がファンに流入できるように構成されている。
【0020】
ファンは、ファンとシールドの間に配置されたフィルタを含んでもよい。フィルタは、乗客搭乗領域から流入した空気から粒子を除去するよう構成されている。粒子は、例えば、埃、煙、煤、煙霧(fumes)、花粉、及び/又は、細菌などである。任意の構成として、フィルタは、例えば、約0.3マイクロメートルなど、特定の粒径の粒子は通過させてファンに進入させる構成でもよい。フィルタは、例えば、乗客搭乗領域の空気に含まれる粒子の90%超を除去する高性能エア(HEPA)フィルタであってもよい。
【0021】
ファンは、環境制御システム(ECS)又はフライトデッキのユーザインターフェースから受け取る命令に基づいて起動される構成でもよい。このような命令には、ファンに動力を与える電気エネルギーがある。任意の構成において、命令は、ファンを起動させるよう構成されたバイナリ信号及び/又はアナログ信号でもよい。ECSは、フライトデッキと乗客搭乗領域の全体に配置された複数のセンサを含みうる。例えば、ECSは、煙を感知するよう構成されたセンサ(例えば、光センサ、イオンセンサ(ionization sensor)、一酸化炭素センサ)を含みうる。他の例では、ECSは、例えば、硫黄酸化物、アンモニア、有機化合物など、パイロットの健康に有害な粒子を検出するよう構成された1以上のセンサを含む。ECSは、煙及び/又は有害な粒子を検知すると、ファンを起動する。これに加えて、あるいは、これに代えて、ユーザインターフェースを介して、パイロットが手動でファンを起動させることもできる。
【0022】
任意の構成として、ドアに複数のファンを設置してもよい。例えば、ドアは、第1ファンと第2ファンを含み、第2ファンを第1ファンの作動に加えて利用して、追加の空気流を供給するよう構成することができる。
【0023】
図1Aは、本開示の実施例による航空機108の内部キャビン100の一部を示す図である。航空機108の内部キャビン100は、フライトデッキ102及び乗客搭乗領域104を含む。乗客搭乗領域104は、前方の乗降用ドア109に近接する領域に相当する。内部キャビン100は、異なる空気圧に制御された複数の空間に区画されて、制御空間から流出させる空気流が管理されている。例えば、パイロットが航空機の制御を行うフライトデッキ102は、そのような制御空間のうちの1つである。前方の乗降用ドア109は、乗客及び/又はクルーが航空機108に搭乗する際の入口として使用される。例えば、乗客搭乗領域104は、乗客及び/又はクルーが前方の乗降用ドア109から航空機108に搭乗するための内部キャビン100の領域である。乗客は、乗客搭乗領域104からそれぞれの座席110に向かって移動する。一方、クルーは、乗客搭乗領域104からフライトデッキ102、ギャレー、又は、航空機108内のその他の場所へ移動する。
【0024】
フライトデッキ102と乗客搭乗領域104とは、パーティション106及び/又は壁で仕切られている。乗客搭乗領域104は、キャビンの少なくとも一部に相当する。例えば、乗客搭乗領域104には、航空機108の乗客用の複数の座席110が含まれる。フライトデッキ102には、パイロットが航空機108を飛行させるための計器パネル(図示せず)が含まれる。計器パネルは、パイロットからの入力を受け付けて、各種機器(例えば、
図2~
図3に示すファン204)を起動させるユーザインターフェースを含む。ユーザインターフェースは、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、1以上の物理ボタン、タッチスクリーンなど、パイロットとの対話に用いられる1以上の機器を含む。
【0025】
図1Bは、本開示の実施例による航空機108の内部キャビン100の側面図である。内部キャビン100は、貨物室112も含む。貨物室112は、航空機108の一部に延在する。
【0026】
フライトデッキ102は、環境制御システム(ECS)114を含む。ECS114は、1以上のセンサ116を含む。航空機108の操縦中に、フライトデッキ102の制御空間の空気に、煙又はその他の有毒ガスが混入する事態が発生する可能性がある。1以上のセンサ116は、例えば、フライトデッキ102内の空気圧を測定し、煙を感知し、有毒な煙霧、空気の異常などを感知する。ECS114は、航空機108の計器パネル及び/又はその他のシステム(例えば、
図2~
図3に示したファン204)に機能的に接続されている。
【0027】
図2Aは、本開示の実施例によるドア202外面を示す図であって、乗客搭乗領域104から見た状態を示している。パーティション106は、乗客搭乗領域104からフライトデッキ102を隔てている。パーティション106は、ドア202を含む。ドア202は、覗き穴208を含み、パイロットがフライトデッキ102から乗客搭乗領域104を目視できるように構成されている。
図2Aに示すように、ドア202は、乗客搭乗領域104に面している。
【0028】
図2Aには、乗客搭乗領域104から見たファン204も示されている。ファン204は、ドア202に設けられている。例えば、ファン204は、乗客搭乗領域104側のドア202表面に対して入り込んだ位置に配置されている。例えば、ファン204は、ドア202の表面における凹みに配置されている。ドア202の表面の凹みの深さは、ファン204の厚み、及び、ドア202とパーティション106との間の隙間に依存する。例えば、この凹みを設けたことによって、ドア202を開けた際にファン204が邪魔にならず、ドアをパーティション106に近づけることができるようにしている。
【0029】
図示のファン204は、シールド206を有する。シールド206は、乗客搭乗領域104に隣接する側に配置されている。シールド206は、ファン204を覆い隠しており、ファン204が乗客搭乗領域104から見えないようになっている。シールド206は、例えば、ファン204の羽根の間の見通しを遮断して、乗客搭乗領域104の乗客がフライトデッキ102を覗き込むことを防止している。シールド206は、金属(例えば、スチール、チタン)製であるか、1以上のセラミック板(例えば、炭化ホウ素セラミックス、炭化ケイ素セラミックス)で構成されているか、あるいは、乗客搭乗領域104からの外来突入物(例えば、銃弾、堅く強化したボールペン、刃物、軸や柄)からファンを保護できる任意の材料で構成されている。シールド206は、ファン204に向かう外来突入物の衝撃を吸収し、及び/又は、貫通を阻止するよう構成されている。シールド206は、フライトデッキ102と乗客搭乗領域104を、非透過な隔離状態(impervious separation)に維持するように構成されている。
【0030】
シールド206は、ドア202の凹みに配置されている。シールド206はドア202の表面に対し、ドア202の表面とシールド206との間に隙間(gap)が形成されるような位置関係で配置されている。シールド206は、シールド206とドア202との間に隙間が形成されるようにして、ファン204に結合されている。ファン204が作動すると、乗客搭乗領域104の空気がこの隙間を通ってファン204に流れ込む。例えば、この隙間によって、シールド206の表面に開口及び/又は穴を設けなくても、ファン204に空気を流入させることができる。
【0031】
図2Bは、本開示の実施例によるドア202内面を示す図であって、フライトデッキ102から見た状態を示している。ドア202は、フライトデッキ102内に位置するファン204を有する。ファン204は、ドア202に設置されており、フライトデッキ102内に延出する構成であってもよい。
【0032】
図3は、ファン204のロータ・アセンブリ300を乗客搭乗領域104から見た正面図である。この図ではシールド206を透過させて、シールド206の背面にあるファン204が見えるようにしている。ロータ・アセンブリ300は、乗客搭乗領域104からフライトデッキ102に空気を誘導する角度で配置された羽根302を有する。例えば、ファン204が起動されると、羽根302が回転して、フライトデッキ102内の空気圧を客室よりも高くする。ファンの回転速度は、(例えば、ECSを介して)調節可能であり、これにより空気流の速度を制御することができる。
【0033】
例えば、ファン204は、乗客搭乗領域104の空気を毎秒およそ2.28メートルでファン204に吸い込むように羽根を回転させる。この回転によれば、毎秒およそ1.8メートルの速度でファン204から空気流が供給される。ファン204から供給された空気流によって、フライトデッキ102内の空気圧が乗客搭乗領域104に比べて、水柱計(IWG)による測定値でおよそ0.002水柱インチ増加する。これに加えて、あるいは、これに代えて、ファン204をより高速で、又は、より低速で回転させて、また別の流速で空気が押し出されるようにしてもよい。
【0034】
ファン204は、外側光源(external light source)304を含む。外側光源304は、例えば、1以上の発光ダイオード(LED)、白熱電球、電球形蛍光灯などである。外側光源304はシールド206の表面に配置されている。よって、外側光源304は、乗客搭乗領域104から目視可能である。外側光源304は、ファン204の作動、フィルタの状態、フライトデッキ102内の状況、あるいは、その組み合わせを示す。外側光源304は、制御回路308及び/又はECS114によって起動することができる。
【0035】
例えば、外側光源304は、ファン204の作動及び/又は起動を示すために点灯される。ファン204は、ECS114、計器パネルのユーザインターフェース、又は、制御回路308によって起動される。ファン204は、ECS114、ユーザインターフェース、又は、制御回路308から受け取った命令に基づいて起動される。このような命令としては、ロータ・アセンブリ300を起動して羽根302を回転させる電気エネルギーや起動信号(例えば、バイナリ信号、アナログ信号)が含まれる。ロータ・アセンブリ300が起動すると、外側光源304が点灯されて、ファン204が作動及び/又は起動したことを示す。
【0036】
他の例では、外側光源304は、例えば、フィルタの交換時期など、フィルタの状態を示す。制御回路308は、フィルタの耐用寿命を示すメモリに機能的に接続されている。耐用寿命は、ファン204の動作を阻害することなくフィルタが有効に機能できる時間長を表す。例えば、この時間を超えてフィルタで粒子を収集し続けると、ファン204への空気の流入が阻害される可能性がある。制御回路308は、ファン204が作動した時間長を記録するよう構成されている。制御回路308は、この作動時間をフィルタの耐用寿命と比較する。作動時間が耐用寿命を超えた場合には、制御回路308は、フィルタの交換を示す外側光源304に命令して、これを点灯させる。
【0037】
これに加えて、あるいは、これに代えて、外側光源304は、フライトデッキ102内部の状況を示す。例えば、ファン204は、フライトデッキ102内の火災、煙霧、及び/又は、その他の状況のそれぞれに対応する複数の外側光源304を含む。ECS114は、フライトデッキ102を監視して、フライトデッキ102内における煙及び/又は煙霧をセンサアレイ116(
図1)が感知すると、これを検出する。例えば、フライトデッキ102内で煙が検知されると、ECS114は、火災を表す第1外側光源304を点灯させる命令(例えば、電気エネルギー、起動信号)を送出する。他の例では、フライトデッキ102内で煙霧が検知されると、ECS114は、煙霧を表す第2外側光源304を点灯させる命令を送出する。
【0038】
本明細書において、「制御回路」、又は、それに類する用語は、任意のプロセッサベースのシステム、又は、マイクロプロセッサベースのシステムを含み、そのようなシステムは、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び、本明細書に記載の機能を実行可能なハードウェア、ソフトウェア、又は、これらの組み合わせを有する他の回路やプロセッサを使用するシステムを含む。これらは、あくまでも例示であって、上記の用語の定義及び/又は意味を何ら限定するものではない。例えば、制御回路308は、上述したようなファン204の動作を制御するよう構成された1以上のプロセッサであるか、又は、これを含むものである。
【0039】
制御回路308は、1以上のデータ記憶部又は要素(例えば、1以上のメモリ)に格納された命令セットを実行してデータを処理するよう構成されている。例えば、制御回路308は、1以上のメモリを含むか、又は、これに接続されている。データ記憶部は、所望の、あるいは、必要なデータやその他の情報も格納することができる。データ記憶部は、任意の形態の情報ソースであってもよいし、プロセッサ機に含まれる物理的なメモリ要素であってもよい。
【0040】
命令セットには、例えば、本明細書に記載の主題の様々な実施例の方法及びプロセスなどの特定の処理を制御回路308に実行させる様々なコマンドが含まれている。命令セットは、ソフトウェアプログラムの形態であってもよい。ソフトウェアは、システムソフトウェアやアプリケーションソフトウェアなど、様々な形態を取りうる。さらに、ソフトウェアは、別個のプログラムの集合であってもよいし、より大きなプログラムに含まれる部分プログラムであってもよいし、プログラムの一部であってもよい。加えて、ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミング形態のプログラムモジュールを含みうる。プロセッサ機による入力データの処理は、ユーザコマンドに応じて実行されてもよいし、先行する処理の結果に応じて実行されてもよいし、他のプロセッサ機からの要求を受けて実行されてもよい。
【0041】
本明細書に記載の実施例の図面には、1以上の制御部又は処理部が示されている場合がある。そのような処理部あるいは制御部は、回路、回路構成、あるいは、その一部を表しており、これらは、本明細書において説明した動作を実行する命令(例えば、コンピュータハードドライブ、ROM,RAMなどの有形かつ非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に格納されたソフトウェア)に関連づけられたハードウェアによって実現することができる。ハードウェアは、本明細書において説明した機能を実行するように配線で接続された状態機械回路を含みうる。任意の構成として、ハードウェアは、マイクロプロセッサ、プロセッサ、コントローラなどの1以上のロジックベースのデバイス、又は、これに接続された電子回路を含んでもよい。任意の構成として、1以上の制御部又は処理部は、1以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサなどの処理回路であってもよい。様々な実施例における回路は、1以上のアルゴリズムを実行することで、本明細書において説明した機能を実現するものでもよい。1以上のアルゴリズムは、本明細書に開示した実施例の側面を含みうるが、そのような側面が、フローチャートや方法に明示されているか否かには関わらない。
【0042】
本明細書において、「ソフトウェア」及び「ファームウェア」との用語は、同義に用いられる場合もあり、また、データ記憶部(例えば、1以上のメモリ)に格納され、コンピュータで実行される任意のコンピュータプログラムを含む。このようなメモリには、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、及び、不揮発性RAM(NVRAM)メモリが含まれる。上述したデータ記憶部の種類は、あくまでも例示であり、よって、コンピュータプログラムを記憶するために使用可能なメモリの種類を何ら限定するものではない。
【0043】
図4は、本開示の実施例によるファン204の断面図であり、これは、フライトデッキ102と乗客搭乗領域104との間に配置されたドア202(
図2に示す)に設けられている。ファン204は、ドア202内に延在する。ファン204は、シールド206をロータ・アセンブリ300に留め付ける留め具408を有する。留め具408は、シールド206の表面、及び、ファン204のフライトデッキ102側に配置されている。例えば、留め具408は、ファン204のフライトデッキ102側の表面からシールド206に貫通している。留め具408は、フライトデッキ102側から留め具408に手が届くように構成されている。例えば、留め具408は、乗客搭乗領域104側からはシールド206を取り外す(例えば、ねじを回して外す)ことができないように構成されている。留め具408は、フライトデッキ102側から留め具408を取り外せば(ねじを回して外せば)、シールド206を取り外しできるように構成されている。フライトデッキ102側から留め具408を取り外すと、乗客搭乗領域104側からもフィルタ404及び/又はファン204に手が届くようになる。ファン204は、複数のシール材(seal)402を用いてドアに封止されている。例えば、シール材402は、ドア202内の所定の位置にファン204を保持するよう構成されている。任意の構成として、シール材402は、シリコーンを含む。
【0044】
ファン204は、弾性マウント(elastomeric mount)406を含む。弾性マウント406は、ファン204から発生する音を減衰させるよう構成されている。例えば、弾性マウント406は、ゴム、シリコーン、ポリマ、又は、振動を減衰させる任意の適当な材料である。ファン204の作動中、ファン204は設定された周波数(例えば、固有振動数(natural frequency))で振動する。弾性マウント406は、この設定周波数の粘弾性(viscoelasticity)を有するよう構成されている。よって、弾性マウント406は、ファン204の振動を吸収する。弾性マウント406で振動を吸収することにより、設定周波数で振動するファン204が発生させる音を低減することができる。
【0045】
シールド206と、ドア202の乗客搭乗領域104側との間には、隙間412が存在する。例えば、シールド206を留め具408でファン204に結合することで、シールド206とドア202との間に隙間412が形成される。隙間412が在ることにより、乗客搭乗領域104の空気をファン204に流入させることができる。例えば、羽根302が回転するのに伴って、空気が乗客搭乗領域104から隙間412を通ってファン204に誘導される。ファン204からの空気流はフライトデッキ102に導入されて、フライトデッキ102内の空気圧を上昇させる。
【0046】
任意の構成として、ファン204から供給される空気流よってフライトデッキ102内の空気圧が高くなりすぎる場合に備えて、空気圧を下げる通気弁410をドア202に配置することができる。通気弁410は、ドア202を通って隙間412と隙間414の間に延びる。隙間414は、ファン204とドア202のフライトデッキ102側との間に延びる隙間である。通気弁410は、フライトデッキ102内の空気圧を、隙間412及び414を経由して調整するよう構成されている。例えば、ファン204から供給される空気流は、フライトデッキ102内の空気圧を上げる。本明細書において、通気弁410で空気圧を調整することは、フライトデッキ102内の空気圧を下げることを意味する。通気弁410は、フライトデッキ102の空気が隙間414から隙間412を通って乗客搭乗領域104に流れるための流路を提供する。例えば、ファン204からの空気流によって、フライトデッキ102と乗客搭乗領域104の空気に差圧が発生する。この差圧により、空気が隙間414を通ってフライトデッキ102から押し出されて、通気弁410に流れ込む。この空気は、隙間412を通って乗客搭乗領域104に放出される。この結果、フライトデッキ102内の空気圧が下がる。これに加えて、あるいは、これに代えて、通気弁410は、フライトデッキ102の空気圧が所定の閾値を超えない状態では、隙間414において通気弁410の流路を閉塞するよう構成された安全弁を含むことができる。所定の閾値は、例えば、フライトデッキ102と乗客搭乗領域104との差圧(例えば、0.05IWG)である。フライトデッキ102内の空気圧が所定の閾値を超えると、安全弁が開放されて、通気弁410に空気が流れるようにできる。
【0047】
図5は、フライトデッキ102に空気流を供給する方法500の実施例のフローチャートを示す。方法500は、例えば、本明細書に記載の様々な実施例(例えば、システム、及び/又は、方法、及び/又は、処理フロー)の構造や側面を採用し、又は、実行するものである。様々な実施例において、特定のステップを省略、又は、追加したり、特定のステップを組み合わせたり、特定のステップを同時に実行したり、特定のステップを複数のステップに分割したり、あるいは、特定のステップを異なる順序で実行することができる。
【0048】
先ず、502において、乗客搭乗領域104からフライトデッキ102を隔てるドア202に、ファン204を設置する。例えば、ファン204は、複数のシール材402を用いてドア202に設置される。任意の構成として、ファン204は、乗客搭乗領域104に面するドア202表面から入り込ませて設置してもよい。
【0049】
504において、シールド206を少なくとも1のファン204に結合する。例えば、シールド206は、乗客搭乗領域104に隣接する側に設ける。シールド206は、乗客搭乗領域104側のファン204表面を覆うように構成されている。シールド206により、ファン204の羽根302の間の見通しを遮断して、乗客が乗客搭乗領域104からフライトデッキ102を覗くことをシールド206で防止する。シールド206は、さらに、ファン204に向かう外来突入物の衝撃を吸収し、及び/又は、貫通を阻止するよう構成されている。
【0050】
506において、ECS114、ユーザインターフェース、及び/又は、制御回路308から受け取った命令に基づいて、1以上のファンを起動する。ECS114及びユーザインターフェースは、ファン204に機能的に接続されている。例えば、ECS114は、フライトデッキ102を監視して、センサアレイ116がフライトデッキ102内における煙及び/又は煙霧を感知すると、これを検知する。ECS114がフライトデッキ102内の煙及び/又は煙霧を検知すると、ECS114は、ファン204の起動命令を送出する。他の例では、計器パネルのユーザインターフェースが、ファン204を起動する選択をパイロットから受け付ける。ECS114及び/又はユーザインターフェースによる起動では、ファン204の羽根302を回転させる電力がファン204に供給される。
【0051】
上述の代わりに、ドア202に複数のファンを設置してもよい。
図6は、本開示の実施例による第1及び第2ファン204、602の正面図であり、両ファンは、フライトデッキ102と乗客搭乗領域104との間に配置されたドア202に設けられている。図示の通り、第2ファン602は、第1ファン204に隣接する位置に配置される。任意の構成として、他の実施例では、第1ファン204に対して第2ファン602を異なる相対位置に配置することができる。例えば、第1ファン204は、第2ファン602から離間して配置することができる。
【0052】
図示の通り、シールド206は、第2ファン602にも重なるように拡張されている。シールド206は、第2ファン602の乗客搭乗領域104側表面に沿って延びている。例えば、シールド206は、第2ファン602の乗客搭乗領域104側表面を覆うよう構成されている。シールド206は、第2ファン602の羽根の間の見通しを遮断して、乗客が乗客搭乗領域104からフライトデッキ102を覗くことを防止する。加えて、シールド206は、第1及び第2ファン204、602に向かう外来突入物の衝撃を吸収し、及び/又は、貫通を阻止するよう構成されている。シールド206と、第1及び第2ファン204、602との間には、隙間412が存在する。例えば、第1及び第2ファン204、602を起動すると、乗客搭乗領域104の空気が隙間412を通って第1及び第2ファン204、602に流れ込む。
【0053】
第2ファン602は、第1ファン204と同時に使用可能である。任意の構成では、第2ファン602は、第1ファン204の故障時及び/又は非動作時に、起動するようにしてもよい。一例として、ECS114は、第1ファン204を起動し、ESC114は、第1ファン204の起動前と起動後の空気圧を測定する。ECS114は、第1ファン204の起動前と後の空気圧を、所定の閾値と比較する。所定の閾値は、フライトデッキ102内の空気圧の変化の割合及び/又は大きさを表すものでもよい。起動後の空気圧が所定の閾値を下回った場合に、ECS114は、第2ファン602を起動する。
【0054】
508において、ファン204、602のうちの少なくとも1つから発生する音を、弾性マウント406によって弱める。例えば、ファン204の作動中、ファン204は設定周波数で振動する。弾性マウント406は、この設定周波数の粘弾性を有するよう構成されており、よって、弾性マウント406でファン204の振動を吸収することができる。
【0055】
510において、空気流を乗客搭乗領域104からフライトデッキ102に誘導する。例えば、ファン204は、羽根302を回転させて、乗客搭乗領域104の空気をファン204に吸い込ませる。この空気がフライトデッキ102に排気され、これにより、乗客搭乗領域104からフライトデッキ102に流れる空気流が生成される。
【0056】
512において、乗客搭乗領域104から流れ込む空気流をフィルタリングして、フライトデッキ102に送る空気流から粒子を除去する、例えば、フィルタ404は、繊維状物質であって、隙間412からフィルタを通過する空気に含まれる粒子を遮断するよう構成することができる。空気がフィルタ404を通過するのに伴い、粒子がフィルタ404に残留する。
【0057】
514において、フライトデッキ102側から通気弁410を介して、フライトデッキ102の空気圧を逃がす。例えば、ファン204から空気流が供給されると、フライトデッキ102内の空気圧が上昇する。通気弁410は、フライトデッキ102から乗客搭乗領域104への空気の流路を提供する。例えば、この空気流によって、フライトデッキ102と乗客搭乗領域104との間に空気の差圧が発生する。この差圧によって、空気がフライトデッキ102から通気弁410を通って乗客搭乗領域104に押し出される。この結果、フライトデッキ102内の空気圧が下がる。
【0058】
図7は、本開示の実施例による航空機を前方から見た透視図である。航空機108は、推進系712を含み、これは、例えば、2つのターボファンエンジン714を含む。任意の構成として、推進系712は、図示したよりも多くのエンジン714を含むものでもよい。エンジン714は、航空機108のウィング716によって支持されている。他の実施例では、エンジン714は、胴体718及び/又は尾翼720に支持される構成でもよい。尾翼720は、水平安定板722及び垂直安定板724も支持する。
【0059】
航空機108の胴体718は、内部キャビンを画成する。内部キャビンには、コックピット(例えば、フライトデッキ102)、1以上の業務用区画(例えば、ギャレー、機内持ち込み手荷物領域など)、1以上の乗客用区画(例えば、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスの区画)、及び、後方休憩アセンブリ(aft rest area assembly)が配置されている後方区画が含まれる。各区画は、キャビン境界領域(cabin transition area)で隔てられており、これは、本明細書に記載したような1以上のクラス/区画分割アセンブリ(class/section divider assemblies)を含みうる。
【0060】
また、本開示の実施例は、航空機の代わりに、車、バス、機関車、列車、船舶、宇宙船など、その他の輸送体に使用することもできる。
【0061】
上述のように、本開示の実施例は、航空機換気システムを追加設置してセキュリティ要件(例えば、シールド206)を満たすファンを配置し、万が一、火災が発生した場合でも、呼吸に適した空気をフライトデッキに供給できるようにするためのシステム及び方法を提供する。
【0062】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例も包含する。
【0063】
付記1.フライトデッキに空気流を供給するシステムであって、
乗客搭乗領域からフライトデッキを隔てるドアに設けられているともに、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されたファンと、前記乗客搭乗領域に面して前記ファンに隣接して設けられたシールドと、を含み、前記シールドは、前記ファンを覆い隠すよう構成されている、システム。
【0064】
付記2.前記空気流は、前記フライトデッキ内の空気圧を上げる、付記1に記載のシステム。
【0065】
付記3.前記ドアは、前記フライトデッキ内の空気圧を下げるよう構成された通気弁を含む、付記2に記載のシステム。
【0066】
付記4.前記シールドと前記ドアに設けられた前記ファンとの間に配置されたフィルタをさらに含み、前記フィルタは、前記空気流から粒子を除去するよう構成されている、付記1に記載のシステム。
【0067】
付記5.前記フィルタは、高性能エア(HEPA)型フィルタである、付記4に記載のシステム。
【0068】
付記6.前記ファンは、前記ファンの作動、フィルタの状態、又は、前記フライトデッキ内の状況のうちの少なくとも1つを示すよう構成された光源を含む、付記1に記載のシステム。
【0069】
付記7.前記ファンは、環境制御システム(ECS)に機能的に接続されており、前記ファンは、前記ECSから受け取った命令に基づいて起動するよう構成されている、付記1に記載のシステム。
【0070】
付記8.前記フライトデッキは、ユーザインターフェースを含み、前記ファンは、前記ユーザインターフェースから受け取った命令に基づいて起動するよう構成されている、付記1に記載のシステム。
【0071】
付記9.前記ドアに設けられているともに、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成された第2のファンをさらに含み、前記シールドは、前記第11ファンと前記第2ファンの両方を覆い隠すよう構成されている、付記1に記載のシステム。
【0072】
付記10.前記ファンから発生する音を減衰させるよう構成された弾性マウントをさらに含む、付記1に記載のシステム。
【0073】
付記11.前記シールドは、前記ファンに向かう外来突入物の衝撃を吸収するか、又は、貫通を防ぐよう構成された金属板又はセラミック板である、付記1に記載のシステム。
【0074】
付記12.フライトデッキに空気流を供給する方法であって、
乗客搭乗領域からフライトデッキを隔てるドアにファンを設けることを含み、この際に、前記ファンは、前記乗客搭乗領域に隣接して設けられたシールドに結合されるとともに、前記ファンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されているものとする、方法。
【0075】
付記13.前記誘導動作は、前記フライトデッキ内の空気圧を調整することを含む、付記12に記載の方法。
【0076】
付記14.前記ドアに設けられた通気弁を介して、前記フライトデッキの空気圧を逃すことをさらに含む、付記13に記載の方法。
【0077】
付記15.前記乗客搭乗領域からの空気流をフィルタリングして、前記フライトデッキに流れ込む空気流から粒子を除去することをさらに含む、付記12に記載の方法。
【0078】
付記16.前記ファンの作動、フィルタの状態、又は、前記フライトデッキ内の状況のうちの少なくとも1つを示すよう構成された光源を作動させることをさらに含む、付記12に記載の方法。
【0079】
付記17.環境制御システム又はユーザインターフェースから受け取った命令に基づいて前記ファンを起動することをさらに含む、付記12に記載の方法。
【0080】
付記18.前記ドアに設けられた第2ファンを起動して、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導することをさらに含み、前記シールドは、前記第2ファンを覆い隠すよう構成されている、付記12に記載の方法。
【0081】
付記19.前記ファンから発生する音を弾性マウントによって減衰させることをさらに含む、付記12に記載の方法。
【0082】
付記20.フライトデッキ及び乗客搭乗領域を有する内部キャビンと、
前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキを隔てるドアと、を含む航空機であって、前記ドアは、ファンを含み、前記ファンは、前記乗客搭乗領域から前記フライトデッキに空気流を誘導するよう構成されており、前記ファンは、前記乗客搭乗領域に隣接して設けられているとともに、前記ファンを覆い隠すよう構成されたシールドを含み、
前記航空機は、前記ファンに機能的に接続された環境制御システム(ECS)を含み、
前記シールドは、前記ファンに向かう外来突入物の衝撃を吸収するか、又は、貫通を防ぐよう構成された金属板又はセラミック板を含み、
前記航空機は、前記シールドと前記ファンとの間に配置されたフィルタを含み、前記フィルタは、前記フライトデッキに流入する前記空気流から粒子を除去するよう構成されている、航空機。
【0083】
本開示の実施例を説明するのに、上、底、下、中央、側面、水平、垂直、前などの、様々な空間及び方角に関する用語を用いたが、これらの用語は図面に示した向きについて用いたに過ぎない。これらの向きは、逆向きであったり、回転されたり、あるいは他の態様で変更されて、上側部分が下側部分となったり、その逆もありうる。また、水平方向が垂直方向となったりすることもありうる。
【0084】
本明細書において、あるタスクや動作を実行するように「構成された」と規定される構造、限定あるいは要素は、当該タスクや動作に適した態様を意図して、構造的に形成され、構成され、適合されたものである。明瞭化のため、また疑義を避けるために付言すると、当該タスクや動作を実行するように改変されうるに過ぎないものは、当該タスクや動作を実行するように「構成された」ものには該当しない。
【0085】
上述の説明は、すべて例示的であり、限定的に解釈されるべきではない。例えば、上述した実施例(及び/又は、その側面)は、互いに組み合わせて使用することが可能である。加えて、様々な実施例の範囲を逸脱することなく、特定の状況や材料をこれらの教示に適合させる多くの変形が可能である。本明細書で説明した材料の寸法や種類は、本開示の様々な実施例におけるパラメータを明確にするためのものであり、これら実施例は、限定を課すものではなく、例示的な実施形態に過ぎない。上述の説明を検討すれば、当業者には多くの他の実施例が明らかであろう。したがって、本開示の様々な実施例の範囲は、添付の請求の範囲を、これら請求の範囲に認められる均等物の範囲と併せて参照して決定されるべきである。添付の請求の範囲において用いられる「含む」及び「であって」等の用語は、それぞれ、「具備する」及び「において」等と意味を同じくする表現として用いられている。加えて、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単なる区別のための標識として用いられており、これらにより言及される対象について数的な要件を課すものではない。
【0086】
本明細書の記載は、例を用いてベストモードを含む様々な実施例を開示するものであり、また、任意の装置又はシステムの作製及び使用、並びに、関連する方法の実行を含む様々な実施例を、当業者にとって実施可能にするものである。本開示の各種実施例についての特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定されるものであり、当業者が想定しうる他の実施例を含みうる。そのような他の実施例は、それらが、特許請求の範囲の文言と相違のない構成要素を有する場合、又は、特許請求の範囲の文言に対して非本質的な相違を有するだけの均等の構成要素を含む場合、特許請求の範囲に包含されると考えられるべきである。