(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】異径対応配管検査用継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/091 20060101AFI20230213BHJP
F16L 37/12 20060101ALI20230213BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F16L37/091
F16L37/12
F16L55/00 S
(21)【出願番号】P 2018209371
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073623
【氏名又は名称】石川 幸吉
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】金井 宏之
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-322575(JP,A)
【文献】実開平04-111981(JP,U)
【文献】特開2001-208266(JP,A)
【文献】特開2003-097785(JP,A)
【文献】特開2005-265585(JP,A)
【文献】特開2000-146055(JP,A)
【文献】特開2010-127409(JP,A)
【文献】特開2012-017807(JP,A)
【文献】特開2006-192547(JP,A)
【文献】特開2002-301617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/091
F16L 37/12
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体の先端側に
、樹脂管挿入部を構成する間隙を置いて設定する
樹脂管の先端部位置を外部から目視できる透明なカバー体と、該カバー体の先端部に樹脂管をロックするストッパーを設定するキャップと、低突出と高突出とからなる2本のOリングを前記樹脂管挿入部の
内径壁面、若しくは前記継手本体の先端側の挿入部構成筒状部の外周面に設定して、伸張方向に付勢されたスプリングを介して、樹脂管挿入口を設けたリリースキャップをカバー体先端側に嵌着し
、樹脂管の取外し操作の際にキャップがリリースキャップ内に隠れる状況が目視できる構造として成る、配管内に、検査流体を封入加圧して施工配管の漏れを確認検査する配管検査用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅内配管施工後、末端の水栓金具を取り付ける前に配管に漏れがないか水圧又は空圧検査を行う際に用いる配管検査用継手に関し、特に、配管に使用する樹脂管が呼び径16Aの場合のように架橋ポリエチレン管(PE-X管)とポリブテン管(PB管)でも管の内外径が異なるものに対応するための異径対応の配管検査用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宅内配管施工後の漏れの検査は、配管内部に水や空気等の検査流体を封入し圧力を加えて漏れの有無を確認する方法によって行われるが、その際、配管の端末に、端末閉止のための閉塞部材や検査流体注入のための注入部材を取り付ける必要がある。
【0003】
従来、このように検査のために配管端末に取り付けられる部材処理は、例えば、特許文献1記載のように樹脂管が挿入される継手本体を備えており、その継手本体の内部には上記樹脂管との係合により同樹脂管の継手本体からの抜け出しを防止するロックリングが設けられている継手を用いたり、更に、特許文献2記載のように継手本体とロックリングとを同一軸線上に位置させ、その軸線に沿って継手本体内に押し込まれることによってロックリングと樹脂管との係合を解除するリリースを備えるようにして簡易迅速に配管端末への着脱ができるようにする提案もなされている。
【0004】
また、特許文献3記載のように、樹脂管の内径部にプラグ式継手をねじ込んだり、樹脂管の外径をメカニカル式継手によってナットを締め込むことにより接合することが行われてきた。
【0005】
以上のような配管検査は、検査後、検査用継手を取り外し、水栓金具接続用の継手を樹脂管に接続し、水栓金具を取り付けて配管施工が完了するが、水栓金具を取り付け後に漏洩が生ずると、その漏洩箇所の発見に手間を要すると共に、その手直しや配管の交換工事に多大な時間を要することになる。
【0006】
この問題に対応して、本願出願人により特願2018-061646号出願による発明(以下、先願発明という。)がなされ、既に出願されている。しかしながら、先願発明は継手される樹脂管がPE-X管とPB管の外径(17mm)、内径(12.8mm)が同一の呼び径13Aの場合を前提とし、管内径部を継手本体先端側に並列設定した1種類2本のOリングで止水する構造で対応するものとなっている。
【0007】
しかしながら、樹脂管の呼び径が16Aの場合、配管に使用する樹脂管は5種類(JIS K 6769 PN15 M種、JIS K 6769 PN15 E種、JIS K 6778 J種、JIS K 6787 M種、JIS K 6787 E種)、すなわち、寸法違いで3種類、外径違い(21.5mmと22mm)で2種類があり、先願発明ではこのような異径の樹脂管に対応することができない。このような異径の樹脂管に対応するため、本体に差込んだ樹脂管を袋ナットで締め込むメカニカル式検査用継手が公知であるが、ワンタッチ式で且つ、差し込み確認が目視可能で異径の樹脂管に1種類の継手で対応できる検査用継手はない。
【0008】
なお、異径の樹脂管に対応する継手についての提案は、特許文献4~6によってなされているが、何れも配管用の継手であり、検査用として用いることはできないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4565776号公報
【文献】特開2018-17336号公報
【文献】特開2000-155068号公報
【文献】特開2007-32598号公報
【文献】特開2001-289376号公報
【文献】特開平11-108267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のような状況から、使用する樹脂管に対応した何種類もの継手を用意する必要や締め込み作業が必要で現場での取り回しなど多くの労力を要する前記先行技術等による対応が採られてきた。しかしながら、前記先行技術による継手は何れも樹脂管からの取り外しがワンタッチとまでは行かず、構成部材の形状が複雑で加工や組立てに時間と労力を要するという問題があった。
【0011】
検査用継手は、検査時に抜けや漏れのない確実な着脱が必要不可欠であるが、作業者の未熟による樹脂管の不完全な挿し込みや、誤操作による樹脂管の抜け出しは大事故に繋がりかねない問題がある。
【0012】
検査用継手は、検査時に抜けや漏れのない確実な構造を必要とすると共に、取付け取り外しを簡易迅速に行えることが必要であることから、本発明は樹脂管への着脱を手動によって簡易迅速に行え、呼び径16Aの場合のように管の内外径が異なるものにも対応できる異径対応の配管検査用継手の提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、継手本体の先端側に樹脂管挿入部を構成する間隙を置いて設定するカバー体の内径壁面、或いは、継手本体の先端側の挿入部構成筒状部外周面に、前記樹脂管挿入部への突出が低突出と高突出とからなる2本のOリングを並列して設定し、該カバー体の先端部に樹脂管をロックするストッパーを設定するキャップと伸張方向に付勢されたスプリングを介して、樹脂管挿入口を設けたリリースキャップをカバー体先端側に嵌着するように構成した。
【0014】
この構成により、異径の挿入樹脂管にも対応することができ、手動でリリースキャップの樹脂管挿入口から樹脂管を挿し込むだけで、検査用継手を取付けることができ、スプリングに抗してリリースキャップを継手本体後端側に押すことにより樹脂管から検査用継手を取り外すことができる。
【0015】
更に、継手本体の先端側に設定するカバー体の所要部を透明に構成することにより樹脂管の挿入状況を外部から目視で確認することができ、継手部における樹脂管の挿入不足による抜けや封入流体の漏れをより完全に防止することができる。また、継手本体の樹脂管の内径が挿入され支持される支持部外形11aをテーパー面に構成することにより、挿入樹脂管の挿入先端がテーパー面によって支持され、継手本体と挿入樹脂管のガタツキが防止される。
【0016】
上記構成により、2本のOリングの設定を、挿入樹脂管の外径にOリング内径(突出量)をそれぞれ対応させることによって管外径の違いに対応する。
【0017】
また、挿入樹脂管の挿入先端面外径を面取りして差込むことにより、カバー体に内装されたOリング突出面と面取り面が滑接し樹脂管の円滑な挿入を行うことができる。そのため、継手本体の基部側端部に面取り機構を備えた止水キャップで覆蓋することにより、面取りに対する利便性を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成したことにより、検査時に抜けや漏れのない確実な着脱が可能となり、作業者の未熟による樹脂管の不完全な挿し込みや、誤操作による樹脂管の抜け出しを防止することができ、樹脂管への着脱を手動によって簡易迅速に行える効果があると共に、継手される樹脂管の外径、内径が同一の場合だけでなく、管の内外径が異なるものにも対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例を示すもので、2本のOリングの設定を、カバー体の内径壁面に行う実施例における樹脂管とそれを差し込む前における検査用継手の構造を示す縦断面正面図。
【
図2】同じく、2本のOリングの設定を、継手本体の先端側の挿入部構成筒状部外周面に行う実施例における樹脂管とそれを差し込む前における検査用継手の構造を示す縦断面正面図。
【
図3】同じく、
図1の実施例における検査用継手に樹脂管が差し込まれ、ストッパーによって係止された状態を示す検査用継手の縦断面正面図。
【
図4】同じく、樹脂管から検査用継手を引き抜くため、リリースキャップを継手本体の後端側に押し込んでストッパーの係止を解除させた状態を示す
図1の実施例における検査用継手の縦断面正面図。
【
図5】同じく、カバー体とキャップを組み付けた継手本体に、スプリングを介してリリースキャップを仮組みした状況を示す
図1の実施例における検査用継手の縦断面正面図。
【
図6】同じく、継手本体の基部側端部を覆蓋する面取り機構を備えた
図1の実施例における止水キャップの縦断面正面図。
【
図9】同じく、止水キャップに付設した面取り機構に樹脂管端部を挿入して押込み回動して挿入先端面外径を面取りする状況を示す止水キャップと挿入樹脂管の縦断面正面図。
【
図10】同じく、継手本体の基部側端部を、面取り機構を備えた止水キャップで覆蓋した状態を示す
図1の実施例における縦断面正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて2本のOリングの設定を、カバー体2の内径壁面に行うようにした実施を例として本発明の実施の形態を説明する。
1は検査用継手で、継手本体11の先端側に樹脂管挿入部Aを構成する間隙を置いて設定すると共に、挿入される樹脂管の外径面に密着して止水する2本のOリング12a、12bをその内径壁面に設定したカバー体2と、該カバー体2の先端部に樹脂管Pをロックするストッパー3を設定するキャップ4と伸張方向に付勢されたスプリング5を介して、樹脂管挿入口61を設けたリリースキャップ6をカバー体2の先端側のキャップ4に嵌着して構成されている。
【0021】
その組立については、先ず、先端にストッパー3を設定したカバー体2とキャップ4を組み立てた継手本体11に、スプリング5を介してリリースキャップ6を載置して仮組し、更に、工具を用いて伸張方向に付勢されたスプリング5に抗して強制的に押し込みを行う。
【0022】
この強制的な押し込みにより、キャップ4の外周に形成された係合段部41とリリースキャップ6の尾端内径に設けられた係合段部62とが係合して組み立てられる。
【0023】
樹脂管への取付けは、先ず、継手本体11の基部側端部14を覆蓋する面取り機構16を備えた止水キャップ15の挿入部に樹脂管Pの挿入端を押し込みながら回動させれば、挿入底部に設定された斜交刃17により樹脂管Pの挿入先端面外径が切削されて面取りを行う。なお、面取り機構16の両側はコの字型の切込み窓孔18が開口し、その開口角部が斜交刃17を形成するものである。
【0024】
このように挿入樹脂管の挿入先端面外径を面取りし、リリースキャップ6の先端に開口する樹脂管挿入口61に樹脂管Pを挿入すると、樹脂管Pの先端は径方向内側に向けて斜立するストッパー片32を乗り越え、更に、カバー体2の内径壁面に設定した2本のOリング12a、12bに突合するが、前記面取りによりOリング突出面と面取り面が滑接し樹脂管の円滑な挿入を行うことができる。なお、樹脂管の面取りは、継手への挿入時に先端外径角部が挿入部内周壁に設定されたOリング12a、12bに引っ掛ってOリングを脱溝させる恐れがあるためなので、場合によっては省略することもある。
【0025】
2本のOリング12a、12bは、Oリング内径の差により突出面が12aより12bが高くなっており、管の外径が異なるものに対応する。すなわち、管外径が細いものについては主として12bのOリングによって止水シールし、12aのOリングによるシールは副次的なものとなる。
【0026】
挿入樹脂管の外径が太いものについては、12aのOリングによって止水シールし、12bのOリングは管外径が細い場合より潰し量が多い状態で止水シールする。結局、挿入樹脂管はOリング12aと12bの高低差の間隙によってシール調整され、管の外径が異なるものについて対応することができるものである。
【0027】
以上のように、リリースキャップ6の先端に開口する樹脂管挿入口61に先端面外径部を面取り加工した樹脂管Pを挿入すると、樹脂管Pの先端は挿入方向奥側に向かうに従い径方向内側に向けて斜立するストッパー片32を乗り越え、カバー体2の内径壁面に設定した2本のOリングを挿通して止水シール調整による周面の水密性を確保しながら樹脂管挿入部Aの底部まで挿入することができる。
【0028】
挿入された樹脂管は、ストッパー3が挿入方向奥側に向かうに従い径方向内側に向けて斜立するストッパー片32によって構成されているので、先端側に向けて引張ってもストッパー片32が樹脂管外周に食い込んで引抜きが阻止される。
【0029】
樹脂管Pの挿入度合いは、カバー体2を透明にすることで、樹脂管挿入部Aの底部まで挿入されているのを目視で確認できるので、検査用継手1の取付けを安全確実に行えるものである。
更に、キャップ4の色を例えば黒に設定することにより、樹脂管Pの取外し操作の際、キャップ4とリリースキャップ6の内部に装着しているスプリング5が縮み、キャップ4がリリースキャップ6内に隠れる状況が外部から目視できるので、ロックが解除されたことを確認できる。
【0030】
また、スプリング5が伸張方向に向けて付勢されているので、リリースキャップ6が常に先端側に向けて押圧され、安定した検査用継手の取付けを行うことができる。
【0031】
次に、樹脂管の挿入を解除して樹脂管Pから検査用継手1を取り外す際には、リリースキャップ6をスプリング5の反発力に抗して継手本体後端側に押すことにより樹脂管Pから検査用継手1を取り外すことができる。
なお、リリースキャップ6の外形部に指が掛かる段差64を設けることによりリリースキャップ6の操作をし易くできる。また、リリースキャップ6の外形部に指が掛けられる段差以外にもフランジ形状とした突出部65を設けることで操作時に指の滑りを防止するようにすれば、更に、リリース操作がし易くなる。
【0032】
すなわち、リリースキャップ6を継手本体後端側に押すことにより、リリースキャップ6の樹脂管挿入部内壁63が、挿入方向奥側に向かうに従い径方向内側に向けて斜立するストッパー3のストッパー片32を、カバー体2の先端部とキャップ4の先端側内周凹部によって形成される凹陥部31に一時的に変形させてストッパー機能を停止させることにより樹脂管挿入部Aから樹脂管Pを円滑に引抜くことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る配管検査用継手は、上記のように、検査時に抜けや漏れのない確実な構造を備え、取付け取り外しを簡易迅速に行えると共に、樹脂管への着脱を手動によって簡易迅速に行うことを可能とするほか、これまで多大な時間と労力を要した宅内配管施工後、末端の水栓金具を取り付ける前に配管に漏れがないか水圧又は空圧検査を行う際に用いる配管検査を極めて容易に行えるようにしたもので水道機器産業において利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 検査用継手
11 継手本体
11a 支持部外形
12a 低突出Oリング
12b 高突出Oリング
13a 継手本体の先端部
13b 継手本体の先端側の挿入部構成筒状部
14 継手本体基部側端部
15 止水キャップ
16 面取り機構
17 面取り機構の斜交刃
18 面取り機構の切込み窓孔
19 止水キャップの着座シート
2 カバー体
3 ストッパー
31 ストッパー片凹陥部
32 ストッパー片
4 キャップ
41 キャップ外周の係合段部
5 スプリング
6 リリースキャップ
61 リリースキャップの樹脂管挿入口
62 リリースキャップ尾端内径の係合段部
63 樹脂管挿入部内壁
64 リリースキャップの操作段差
65 リリースキャップのフランジ形突出部
A 樹脂管挿入部
P 樹脂管