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特許7224887増圧給水装置及び増圧給水装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】増圧給水装置及び増圧給水装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20230213BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F04D15/00 F
F04D15/00 J
F04B49/02 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018231795
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020094514
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-240186(JP,A)
【文献】特開2014-031796(JP,A)
【文献】特開2006-207421(JP,A)
【文献】特開2017-122417(JP,A)
【文献】特開2001-050168(JP,A)
【文献】特開平08-326109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F04B 49/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
前記ポンプの一次側に配され水道管に接続された逆流防止装置と、
前記逆流防止装置と前記ポンプの間に配され、前記ポンプの吸込側のポンプ吸込圧力を検出するポンプ吸込圧力検出部と、
前記ポンプの二次側に配され、前記ポンプの吐出側の吐出圧力を検出する吐出圧力検出部と、
吐出流路に配され、給水量に比例した信号を出力する流量検出部と、
推定末端圧一定制御方式にて、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、流量の増加に伴って変動する目標圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、ポンプ運転中に、ポンプ吸込圧力が、給水量に応じて変動する前記目標圧力を超えた状態が一定時間の間継続した場合、高配水圧と判断して、前記流量検出部により検出された流量が停止流量を超えていても、ポンプを停止する、制御部と、
を備える、増圧給水装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ポンプの運転中に前記ポンプ吸込圧力がキャビテーションによりポンプの吸込側に気泡が発生するのを防止できる第1基準値以下に低下した場合に前記ポンプを停止し、当該ポンプの停止中に前記ポンプ吸込圧力が前記第1基準値よりも高い所定の第2基準値以上となった場合に、前記ポンプを再始動する、請求項1に記載の増圧給水装置。
【請求項3】
ポンプと、
前記ポンプの一次側に配され水道管に接続された逆流防止装置と、
前記逆流防止装置と前記ポンプの間に配され、前記ポンプの吸込側のポンプ吸込圧力を検出するポンプ吸込圧力検出部と、
前記ポンプの二次側に配され、前記ポンプの吐出側の吐出圧力を検出する吐出圧力検出部と、
吐出流路に配され、給水量に比例した信号を出力する流量検出部と、を備える増圧給水装置において、
推定末端圧一定制御方式にて、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、流量の増加に伴って変動する目標圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、ポンプ運転中に、ポンプ吸込圧力が、給水量に応じて変動する前記目標圧力を超えた状態が一定時間の間継続した場合、高配水圧と判断して、前記流量検出部により検出された流量が停止流量を超えていても、ポンプを停止する、
増圧給水装置の制御方法。
【請求項4】
前記ポンプの運転中に前記ポンプ吸込圧力がキャビテーションによりポンプの吸込側に気泡が発生するのを防止できる第1基準値以下に低下した場合に前記ポンプを停止し、当該ポンプの停止中に前記ポンプ吸込圧力が前記第1基準値よりも高い所定の第2基準値以上となった場合に前記ポンプを再始動する、請求項3に記載の増圧給水装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増圧給水装置及び増圧給水装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増圧給水装置において、ポンプ運転時に吸込圧力が上昇した場合にポンプを停止させる、いわゆる高配水圧停止機能を備えることが義務づけられている。
【0003】
このような増圧給水装置において、ポンプと、モータと、ポンプの一次側の流路に設けられた減圧弁式逆流防止装置と、ポンプの二次側に設けられたアキュムレータと、を備え、配管としてポンプの一次側の吸込管と、ポンプの二次側の吐出管と、吸込管と吐出管を連通するバイパス管と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。吸込管にはストレーナや閉止弁、圧力センサが設けられ、吸込配管内の圧力、すなわち逆流防止装置の一次側の圧力である吸込圧力を検出している。
【0004】
例えば吸込圧力が正圧となる増圧給水装置においては、ポンプ運転中に吸込圧力が目標圧力以上に上昇した場合に、ポンプを自動停止し、バイパス流路とポンプを経由して直圧給水する機能が日本水道協会規格に定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3287528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この場合、例えば、閉止弁とストレーナと減圧弁式の逆流防止装置の圧力損失が最低で約6mであると、ポンプを停止した場合のポンプの吐出側の圧力(以下、吐出圧力)は「目標圧力-6m」まで低下する。一方で、吐出圧力一定制御方式の場合、始動圧力は「目標圧力-4m」程度となる。したがって、ポンプの運転中にアキュムレータに蓄えられた水が流出して、吐出圧力が「目標圧力-4m」まで低下すると、ポンプが再始動するといったハンチング現象が生じる場合がある。そこで、圧力損失を考慮してマージンを設定することも考えられるが、閉止弁とストレーナと減圧弁式逆流防止装置の圧力損失は、口径や給水量に伴って複雑に変化することから、圧力損失を考慮した設定は困難である。
【0007】
そこで、本発明は、安定した制御が可能な増圧給水装置及び増圧給水装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態にかかる増圧給水装置は、ポンプと、前記ポンプの一次側に配され水道管に接続された逆流防止装置と、前記逆流防止装置と前記ポンプの間に配され、前記ポンプの吸込側のポンプ吸込圧力を検出するポンプ吸込圧力検出部と、前記ポンプの二次側に配され、前記ポンプの吐出側の吐出圧力を検出する吐出圧力検出部と、吐出流路に配され、給水量に比例した信号を出力する流量検出部と、推定末端圧一定制御方式にて、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、流量の増加に伴って変動する目標圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、ポンプ運転中に、ポンプ吸込圧力が、給水量に応じて変動する前記目標圧力を超えた状態が一定時間の間継続した場合、高配水圧と判断して、前記流量検出部により検出された流量が停止流量を超えていても、ポンプを停止する、制御部と、を備える。
本発明の他の一形態にかかる増圧給水装置の制御方法は、ポンプと、前記ポンプの一次側に配され水道管に接続された逆流防止装置と、前記逆流防止装置と前記ポンプの間に配され、前記ポンプの吸込側のポンプ吸込圧力を検出するポンプ吸込圧力検出部と、前記ポンプの二次側に配され、前記ポンプの吐出側の吐出圧力を検出する吐出圧力検出部と、吐出流路に配され、給水量に比例した信号を出力する流量検出部と、を備える増圧給水装置において、推定末端圧一定制御方式にて、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、流量の増加に伴って変動する目標圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、ポンプ運転中に、ポンプ吸込圧力が、給水量に応じて変動する前記目標圧力を超えた状態が一定時間の間継続した場合、高配水圧と判断して、前記流量検出部により検出された流量が停止流量を超えていても、ポンプを停止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安定した制御が可能な増圧給水装置及び増圧給水装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる増圧給水装置の説明図。
図2】同増圧給水装置の説明図。
図3】同増圧給水装置の側面図。
図4】同増圧給水装置の目標圧力を示すグラフ。
図5】他の実施形態にかかる増圧給水装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態にかかる増圧給水装置1及び増圧給水装置1の制御方法について、図1乃至図4を参照して説明する。図1及び図2は増圧給水装置1の説明図であり、カバーを切欠して内部構造を示すとともに、一部構造を断面にて示す正面図である。図3は増圧給水装置1の側面図であり、図4は増圧給水装置1の制御における目標圧力を示すグラフであり、推定末端圧一定制御時の揚程と流量の関係を示している。
【0012】
図1乃至図3に示すように、増圧給水装置1は、の水道管10に接続された直結式の給水装置であり、複数のポンプ装置11と、配管12と、逆流防止装置13と、アキュムレータ14と、ポンプ吸込圧力検出部である第1圧力センサ15と、吐出圧力検出部である第2圧力センサ16と、流量検出部である流量センサ17と、電装部18と、これらを収容するポンプカバー19と、を備える。水道管10は例えば水道本管または水道分管である。
【0013】
ポンプ装置11は、モータ21と、モータ21に接続されたインペラを有する1段または複数段のポンプ23と、を備え、流体を増圧して二次側に圧送する。本実施形態においては一対の多段のポンプ装置11が縦置きの状態で設置される例を示す。
【0014】
ポンプ23は、下端部にポンプ吸込口23aを有し、上部の側部にポンプ吐出口23bを有している。ポンプ吸込口23aには配管12の吸込連結管32が接続される。ポンプ吐出口23bには個別吐出流路を形成する個別吐出管34が接続される。
【0015】
各モータ21はケーブルを介して電装部18の制御部18bに接続されている。ポンプ装置11は、制御部18bの制御によりモータ21が駆動されることで、運転制御される。
【0016】
配管12は、逆流防止装置13の一次側に配される吸込配管31と、逆流防止装置13の二次側に配される吸込連結管32と、吸込連結管32から分岐して各ポンプ23のポンプ吸込口23aに至る一対のボール弁部33と、ポンプ23のポンプ吐出口23bに接続される複数の個別吐出管34と、複数の個別吐出管34とボール弁部33とを連通する吐出連結管35と、吐出連結管35と吸込連結管32とを接続するバイパス連結管36と、を備える。
【0017】
吸込配管31は一次側の端部に吸込口12aを有している。吸込口12a近傍にはストレーナ37が設けられている。吸込配管31の他端は逆流防止装置13に接続される。
【0018】
逆流防止装置13は、ポンプの一次側の流路に設けられた減圧弁式逆流防止装置であり、吸込配管31と吸込連結管32との間に設けられている。逆流防止装置13は、第1の逆止弁13aと、第2の逆止弁13bと、リテーナ13cと、逃がし弁と、を備え、流路における液体の流れの方向を一方向に規制する。
【0019】
吸込連結管32は管状部材であり、逆流防止装置13の二次側に接続される。吸込連結管32は例えば2台のポンプ装置11の下方において水平に延びている。吸込連結管32には第1の圧力検出部としての第1圧力センサ15が設けられている。第1圧力センサ15は、吸込連結管32内の圧力、すなわち逆流防止装置13の二次側であってポンプ装置11の一次側の圧力Ps1(以下、ポンプ吸込圧力Ps1とする)を検出する。
【0020】
一対のボール弁部33は、一対のポンプ23のポンプ吸込口23aにそれぞれ接続されている。ボール弁部33は一次側の吸込連結管32とポンプ吸込口23aとを連通する流路を形成するとともに、内蔵されたボール弁の回転操作により流路が開閉可能に構成されている。
【0021】
個別吐出管34は、管状部材であり、その一端がポンプ23の側壁部に配されるポンプ吐出口23bに接続されている。個別吐出管34は、ポンプ吐出口23bから前方に延び、屈曲して下方に延び、下方に設けられた吐出連結管35に接続されている。個別吐出管34内であってポンプ吐出口に近い所定箇所には、流れ方向を一方向に規制する逆止弁52が設けられている。また、個別吐出管34の中途部には、個別吐出管34内の液体の流量を検出する流量検出部である流量センサ17がそれぞれ設けられている。
【0022】
吐出連結管35は管状部材であり、複数の個別吐出管34に接続されたボール弁部33の二次側に接続される。吐出連結管35は例えば縦置きの2台のポンプ装置11の下方において水平に延び、吸込連結管32と並列に配置されている。吐出連結管35は一端が閉口し、他端には蛇口などの給水先に接続される吐出口12bを有する。吐出連結管35には第2の圧力検出部としての第2圧力センサ16が設けられている。第2圧力センサ16は、吐出連結管35内の圧力、すなわちポンプ23の二次側の圧力Ps2(以下、吐出圧力Ps2とする)を検出する。吐出連結管35の吐出口近傍に圧力を蓄えるためのアキュムレータ14が設けられている。
【0023】
バイパス連結管36は管状部材であり、吐出連結管35と吸込連結管32とを連通するバイパス流路を形成する。バイパス連結管36内の所定箇所には、流れ方向を一方向に規制する逆止弁51が設けられている。
【0024】
第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16は、例えばピエゾ効果を利用した半導体式の圧力センサである。圧力センサ15、16は、センサーボディの孔部に設けられたダイヤフラムと、ダイヤフラムの上部に設けられた歪みゲージと、ダイヤフラム及び歪みゲージの間に設けられた液室と、液室に充填された非腐食性液体、例えばシリコンオイルと、を備える。
【0025】
第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16は、配管12内の圧力を検出し、アナログ電圧出力可能に構成されている。第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16は、ダイヤフラムが配管12内の圧力により変化したときに、液室内のシリコンオイルによって歪みゲージに圧力が印加され、当該圧力に応じた歪みゲージの歪み量を信号に変換することで、圧力を検出する。第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16は、信号線を介して電装部18の制御部18bに接続され、検出した圧力信号を制御部18bに送る。
【0026】
流量センサ17は例えば磁石が設けられた羽根車を備え、磁石に接続されたホールICにて流量検出を行う回転式のセンサである。
【0027】
電装部18は、各種情報を記憶する記憶部としての記憶装置18aと、制御部18bと、各ポンプに接続された複数のインバータ18cと、を備える。
【0028】
記憶装置18aは、例えば、制御に必要な情報として、各種プログラムや各種基準値や閾値等を記憶する。例えば記憶装置18aには、制御に必要な情報として、目標圧力、始動圧力、変動基準値ΔPv、第1基準値Pt1,第2基準値Pt2等の数値や算出式、データテーブルなどが、記憶されている。
【0029】
目標圧力Pdvは各種条件に基づいて決定される設定値であり、所定の固定値、または変動値として設定される。本実施形態においては、一例として、目標圧力Pdvは推定末端圧一定制御に用いる目標圧力として、例えば図4に示すように、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、出力周波数あるいは流量の増加に伴って変動する目標圧力曲線L1上の値とした。
【0030】
始動圧力はポンプ装置の各種条件に基づいて決定される設定値であり、目標圧力より低い所定値に設定される。具体例として始動圧力は最小の目標圧力である第2目標圧力Pd2に基づいて設定される。本実施形態においては、始動圧力を最小の目標圧力である第2目標圧力Pd2よりも4m低い20mに設定した例を示す。
【0031】
第1基準値Pt1は各種条件に基づいて決定される設定値であり、例えば正圧に設定される。一例として本実施形態において第1基準値Pt1を0.01MPaとした。
【0032】
第2基準値Pt2は、各種条件に基づいて決定される設定値であり、例えば第1基準値Pt1よりも高い正圧に設定される。一例として本実施形態において第2基準値Pt2を0.04MPaとした。
【0033】
継続時間であるt1、t2は、各種条件に応じて設定される。例えばt1、t2は1秒以上の所定値であり、本実施形態においてはt1、t2をいずれも3秒に設定した例を示す。
【0034】
制御部18bは、予め記憶装置18aに記憶された各種プログラムに従って、複数のポンプ装置11の動作を制御する。具体的には、制御部18bは、各インバータ18cに制御信号を送信し各ポンプ装置11に対応するインバータ18cを制御する。例えば制御部18bは、各センサによって検出される検出値に基づき、各種の演算処理を行い、インバータ18cの周波数制御により、ポンプ装置11のモータ21を変速運転し、または停止させる。具体的には、制御部18bは、吐出圧力が給水量に応じて変動する目標圧力になるように、推定末端圧一定制御する。例えば、図4に一例を示すような、変動目標値に基づいて、吐出圧力をフィードバック制御する。
【0035】
インバータ18cは、信号線によってポンプ装置11のモータ21に電気的に接続されている。インバータ18cは制御部18bからの制御信号に応じた所定の周波数を出力することで、ポンプ装置11のモータ21を所定の回転速度で回転させる。
【0036】
次に、本実施形態にかかる増圧給水装置1の制御方法について、説明する。
【0037】
制御部18bは、ポンプ装置11を運転する指示を検出する。制御部18bは、外部入力指示などによりポンプ装置11を運転する指示を検出すると、各種データを検出するとともに、ポンプの運転を開始する。
【0038】
制御部18bは各種圧力センサ及び流量センサで検出した圧力値及び流量値を検出する。
【0039】
制御部18bは、インバータ18cに制御信号を出力することで、ポンプ装置11を駆動する。ここでは、2台のポンプ装置11を、交互運転する。インバータ18cは制御信号に応じた所定の周波数を出力することで、ポンプ装置11のモータ21を所定の回転速度で回転させる。このとき、制御部18bは、吐出圧力Pdが給水量に応じて変動する目標圧力Pdvになるように、推定末端圧一定にて制御する。
【0040】
具体的には、制御部18bは、一定時間(例:1秒)当りのポンプ吸込圧力Ps1の変動量ΔPs1を検出し、変動量ΔPs1が所定の変動基準値ΔPv以上であるか否かを判定する。
【0041】
そして、ポンプ吸込圧力の変動量ΔPs1量が所定の変動基準値ΔPv未満である場合には、出力周波数あるいは流量の増加に応じて変動する目標圧力Pdvに対して、吐出圧力をフィードバック制御する。
【0042】
具体的には、制御部18bは、一例として図4のグラフに示すように、停止流量から定格流量までの流量域において、流量センサ17で検出する流量の値に応じて、目標圧力を変化させ、推定末端圧一定制御の目標圧力曲線L1上の目標圧力に基づいてポンプの出力を制御する。
【0043】
一方、ポンプ吸込圧力Ps1の変動量ΔPs1が所定の変動基準値ΔPv以上となった場合には所定時間t1は目標圧力を変動させないように、所定時間、目標圧力を固定して、ポンプの運転制御を行う。すなわち、一定時間t1が経過するまで、目標圧を固定する。即ち、図4のグラフに示すように、変動値が一定値以上となった場合には、目標圧力を固定する。その後、一定時間t1が経過した後に、再び目標圧力曲線L1上の目標圧力に従って推定末端圧一定制御を行う。t1は例えば3秒程度に設定される。
【0044】
これにより吸込圧力が変動しても、目標圧力は変化しないため、推定末端圧一定制御の目標圧力曲線L1上で、安定して運転を行うことが可能となる。
【0045】
また、制御部18bは、ポンプの運転中に検出したポンプ吸込圧力Ps1が、高配水圧条件を満たすか否か判定する。ここで、高配水とは吸込側の圧力が所定値以上となる状態であり、本実施形態においては、制御部18bは、ポンプ吸込圧力Ps1が所定の高配水圧停止圧力値に上昇し、高配水停止圧力値以上とある、あるいは高配水停止圧力値を超える場合、あるいはその状態が所定時間継続した場合に、高配水圧(高配水圧状態)であると判定する。高配水圧停止圧力値は、目標圧力Pdvに基づいて定められ、例えば本実施形態においては、目標圧力Pdvを高配水圧停止圧力値とした。すなわち、制御部18bは、ポンプ吸込圧力Ps1が給水量に応じて変動する目標圧力Pdv超であるかを判定し、ポンプ吸込圧力Ps1が目標圧力Pdv超である状態が、一定時間t2以上継続した場合に、高配水圧と判断して、ポンプを停止する。一定時間t2は例えば3秒程度に設定されている。
【0046】
さらに、制御部18bは、ポンプ23の停止中に、吐出圧力Pdが所定の始動条件を満たすか否かを判定する。一例として制御部18bは、例えば吐出圧力Pdが、最小目標圧力である第2目標圧力Pd2より低く設定された所定の始動圧力以下に低下した場合に、始動条件を満たすとして、ポンプ23の運転を再開する。
【0047】
さらに制御部18bは、ポンプ23の運転中に、ポンプ吸込圧力Ps1が所定値以下に低下した場合に、ポンプ23を停止する。例えば制御部18bは、ポンプ吸込圧力Ps1が第1基準値Pt1以下であるかを判定し、そして、ポンプ吸込圧力Ps1が第1基準値Pt1以下に低下した場合に、吸込圧力低下と判断して、ポンプ23を停止する。
【0048】
第1基準値Pt1は、記憶装置18aに記憶された閾値であり、例えばキャビテーションによりポンプの吸込側に気泡が発生するのを防止できる程度の圧力、例えば正圧に設定される。一例として本実施形態においては、第1基準値Pt1=0.01MPaに設定される。なお、水道管の圧力は、0.01MPaに、この時点の給水量における逆流防止装置やストレーナなどの圧力損失を加算した圧力となる。
【0049】
また、制御部18bは、ポンプ吸込圧力Ps1が第1基準値Pt1以下の状態から所定値以上に上昇した場合に再始動をする。具体的には、制御部18bはポンプ23の停止中に、ポンプ吸込圧力Ps1が第2基準値Pt2以上となるか否かを判定する。制御部18bは、ポンプ吸込圧力Ps1が第2基準値Pt2以上に上昇した場合には、ポンプ23の運転を再開する。
【0050】
第2基準値Pt2は例えば第1基準値Pt1よりも高く設定され、記憶装置18aに記憶された閾値である。一例として、本実施形態においては、第2基準値Pt2は例えば0.04MPaに設定した。
【0051】
制御部18bはこれらの処理をポンプの運転終了指示があるまで繰り返し、運転終了の指示があれば運転を終了する。
【0052】
以上の様に構成された増圧給水装置1によれば、逆流防止装置の二次側のポンプ吸込圧力と目標圧力に基づいてポンプの停止を制御することにより、逆流防止装置の一次側の吸込圧力を検出する場合と比べて、ハンチング現象を抑制でき、安定した制御が可能となる。
【0053】
増圧給水装置1はポンプ23の運転中に、ポンプ吸込圧力Ps1が給水量に応じて変動する目標圧力(推定末端圧一定制御の場合、給水量に連動して変化する)を超えた状態が、一定時間の間継続した場合、流量センサ17により検出された流量が停止流量を超えていても、ポンプ23を停止するようにしている。すなわち、直接、逆流防止装置の二次側のポンプ吸込圧力と目標圧力を比較している。このため、様々な口径の減圧弁式の逆流防止装置、ストレーナなどの圧力損失が加算された合計値が、給水量の変動に伴い複雑に変動したとしても、これに影響されることなく、安定してポンプ23を自動停止することが可能となる。従って、ポンプ23の停止後に、アキュムレータ14に蓄えられた水が流出して、吐出し圧力が第2目標圧力Pd2より低く設定された始動圧力まで低下することはなく、ポンプ23が再始動するハンチング現象を防止できる。したがって、効果的にハンチング現象を防止できるとともに、安定した自動制御が可能となる。したがって、逆流防止装置、ストレーナなどの圧力損失を考慮する必要がないため、これらの圧力損失を考慮したマージンを設定する方法と比べて、簡単に、無駄な電力を消費することなく、最適な設定が可能である。
【0054】
また、増圧給水装置1においては、ポンプ23の運転中に、増圧給水装置1のポンプ23の吸込圧力Ps1が、あらかじめ定めた第1基準値Pt1(例:0.01MPa)以下になった場合、ポンプ23を自動停止し、ポンプ23の停止中に、ポンプ23の吸込圧力Ps1が、第1基準値Pt1より高く定めた第2基準値Pt2(例:0.04MPa)以上に回復した場合、ポンプ23を運転可能としている。これにより、増圧給水装置1の吸込圧力すなわち水道管10の圧力が所定値(例:0.07MPa)を超えていても、ポンプ吸込圧力が正圧である所定の第1基準値Pt1(例:0.01MPa)以下に低下したときに、ポンプ23が自動停止する。したがって、ポンプ23の吸込圧力が負圧になりキャビテーションが発生して揚水不能に陥ることを、防止できる。
【0055】
また、上記実施形態にかかる増圧給水装置1において、吸込圧力Ps1が急激に変動した場合には、目標圧力を固定することにより、推定末端圧一定制御の目標圧力曲線L1上で、安定して運転を行うことが可能となる。すなわち、ポンプ吸込圧力Ps1の急激な変動により、給水流量Qが変化していないにもかかわらず、図4の実線矢印に示されるような目標圧力の過度低下や、目標圧力の不必要な上昇による無駄な電力消費を、防止することが可能となる。例えば、急激な吸込圧力の上昇により、吐出し圧力が増加し、吐出し圧力を目標圧力まで低減することで、圧力低減が追いつかず給水流量が増加し、目標圧力が増加し、目標圧力が不必要に高止まりしてしまう、という不具合や、急激な吸込圧力の低下により吐出し圧力が低下し、吐出し圧力を目標圧力まで増加することで、圧力増加が追いつかず給水流量が低下し、目標圧力が低下し、目標圧力の不足により末端圧力が低下する、という不具合を、変動量に応じて目標圧力を固定することで、防止することができる。
【0056】
さらに、増圧給水装置1は、流量に比例した出力特性を有する流量検出部を設け、給水装置の運転流量を計測して、推定末端圧一定制御を行うことで、吸込圧力の時間あたりの変動幅が小さい場合は、ポンプへの出力周波数を変数として目標圧力を決定する方式に比べ、安定した自動制御が可能である。すなわち、例えば、吸込圧力が上昇し、吐出圧力が増加すると、制御により吐出圧力を目標圧力まで低減し、給水流量は変動しない、とする制御が可能である。または、吸込圧力が低下し、吐出圧力が低下すると、制御により吐出圧力を目標圧力まで増加することで、給水流量は変動しない、とする制御が可能である。
【0057】
上述したように、増圧給水装置1によれば、逆流防止装置の二次側のポンプ吸込圧力に基づいてポンプの停止を制御することにより、逆流防止装置の一次側の吸込圧力を検出する場合と比べて、ハンチング現象を抑制でき、安定した制御が可能となる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態の例に限られるものではない。各種設定値や制御の基準値は、ポンプ装置の構成や各種条件に応じて適宜変更可能である。例えば、上記実施形態において、高配水圧停止圧力値は吐出圧力のフィードバック制御の基準となる目標圧力とした例を示したが、これに限られるものではない。例えば高配水圧停止圧力値は、目標圧力に対応して、目標圧力よりも高い、あるいは低い、値に設定されていてもよく、例えば、推定末端圧一定制御により変動する目標圧力に対して一定比率となる(比率kは1.0未満もしくは1.0超)値を高配水圧停止圧力値としてもよい。この場合にも、逆流防止装置やストレーナ等の圧力損失を考慮する必要が無いことから、上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、第1基準値Pt1や第2基準値Pt2や継続時間t1、t2についても、上記実施形態に限らず、適宜変更可能である。例えば、定期的に検出する場合に複数回連続して検出結果が条件を満たす場合に、所定時間継続していると判定してもよい。例えば、1秒毎に吐出圧を検出する場合には、2回以上、あるいは3回以上連続して条件を満たす場合に継続していると判定してもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、推定末端圧一定制御によりポンプ23をフィードバック制御する例を示したが、これに限られるものではなく、例えば所定の目標圧力に基づき、吐出圧力一定制御を行ってもよい。
【0060】
また、他の実施形態にかかる増圧給水装置1Aとして、図5に示すように、逆流防止装置13の二次側の吸込圧力を検出する第1圧力センサ15に加え、逆流防止装置13よりも一次側に、さらに、逆流防止装置13の一次側の圧力を検出する圧力検出部としての圧力センサ60を設けてもよい。
【0061】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。さらに、上記実施形態の構成要件のうち一部を省略しても本発明を実現可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
ポンプと、
前記ポンプの一次側に配され水道管に接続された逆流防止装置と、
前記逆流防止装置と前記ポンプの間に配され、前記ポンプの吸込側のポンプ吸込圧力を検出するポンプ吸込圧力検出部と、
前記ポンプの二次側に配され、前記ポンプの吐出側の吐出圧力を検出する吐出圧力検出部と、
前記ポンプの二次側の吐出圧力と目標圧力に基づいて前記ポンプの動作を制御するとともに、前記ポンプの運転中に前記逆流防止装置の二次側であって前記ポンプの一次側のポンプ吸込圧力に基づいて高配水圧状態となった場合に前記ポンプを停止する、制御部と、を備える、増圧給水装置。
(2)
前記制御部は、前記ポンプの運転中に前記ポンプ吸込圧力が前記目標圧力に基づいて定められる所定の高配水圧停止圧力値以上あるいは前記高配水圧停止圧力値を超える場合に、前記高配水圧状態であるとして前記ポンプを停止し、
前記ポンプの停止中に前記吐出圧力が前記目標圧力より低く設定された始動圧力まで低下した場合に前記ポンプを始動する、(1)に記載の増圧給水装置。
(3)
前記制御部は、前記ポンプの運転中に前記ポンプ吸込圧力が前記目標圧力に基づいて定められる所定の高配水圧停止圧力値以上あるいは前記高配水圧停止圧力値を超える状態が、所定時間継続した場合に、前記高配水圧状態であるとして前記ポンプを停止する、(1)に記載の増圧給水装置。
(4)
前記制御部は、前記ポンプの運転中に、前記ポンプ吸込圧力が第1基準値以下に低下した場合に前記ポンプを停止し、当該ポンプの停止中に前記ポンプ吸込圧力が前記第1基準値よりも高い所定の第2基準値以上となった場合に、前記ポンプを再始動する、(1)乃至(3)のいずれかに記載の増圧給水装置。
(5)
前記制御部は、推定末端圧一定制御方式にて、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、出力周波数あるいは流量の増加に伴って変動する前記目標圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、
前記ポンプ吸込圧力の変動量が所定の変動基準値以上である場合に、所定時間前記目標圧力を固定する、(1)乃至(4)のいずれかに記載の増圧給水装置。
(6)
前記ポンプを複数備えるとともに、
前記逆流防止装置の一次側に接続される吸込配管と、前記逆流防止装置の二次側で複数の前記ポンプのポンプ吸込口に至る流路を有する吸込連結管と、前記ポンプのポンプ吐出口の二次側に連通する個別吐出流路、前記個別吐出流路から前記吸込連結管に連通するバイパス流路、及び給水先に連通する吐出口、を有する吐出連結管と、を備え、前記ポンプの吐出側に逆止弁を備える、配管と、
前記個別吐出流路に配され、給水量に比例した信号を出力する流量検出部と、を備える、(1)乃至(5)のいずれかに記載の増圧給水装置。
(7)
前記逆流防止装置の一次側に配され、前記逆流防止装置よりも吸込側の圧力を検出する圧力検出部をさらに備える、(1)乃至(6)のいずれかに記載の増圧給水装置。
(8)
ポンプの一次側に配された逆流防止装置と前記ポンプの間のポンプ吸込圧力と
前記ポンプの二次側の吐出圧力と、を検出し、
所定の目標圧力と前記吐出圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、前記ポンプの運転中に前記ポンプ吸込圧力に基づいて高配水圧となった場合に前記ポンプを停止する、増圧給水装置の制御方法。
(9)
前記ポンプ吸込圧力が前記目標圧力に基づいて定められる所定の高配水圧停止圧力値以上あるいは高配水圧停止圧力値を超える場合に、前記高配水圧であるとして、前記ポンプを停止する、(8)に記載の増圧給水装置の制御方法。
(10)
前記ポンプの運転中に、ポンプ吸込圧力が第1基準値以下になった場合に、ポンプを停止するとともに、前記第1基準値以下となって停止した場合に、前記ポンプ吸込圧力が前記第1基準値よりも高い第2基準値以上となった場合に、前記ポンプを運転する、(8)または(9)に記載の増圧給水装置の制御方法。
(11)
推定末端圧一定制御方式にて、停止流量から定格流量までの流量域において、停止流量時の第2目標圧力から定格流量時の第1目標圧力まで、出力周波数あるいは流量の増加に伴って変動する目標圧力に基づいて前記ポンプの出力を制御するとともに、
前記ポンプ吸込圧力の変動量が所定の変動基準値以上である場合に、所定時間、前記目標圧力を固定する、(8)乃至(10)のいずれかに記載の増圧給水装置の制御方法。
【符号の説明】
【0062】
1…増圧給水装置、10…水道管、11…ポンプ装置、12…配管、12a…吸込口、12b…吐出口、13…逆流防止装置、13a…第1の逆止弁、13b…第2の逆止弁、13c…リテーナ、14…アキュムレータ、15…第1圧力センサ、16…第2圧力センサ、17…流量センサ、18…電装部、18a…記憶装置、18b…制御部、18c…インバータ、19…ポンプカバー、21…モータ、22…インペラ、23…ポンプ、23a…ポンプ吸込口、23b…ポンプ吐出口、31…吸込配管、32…吸込連結管、33…ボール弁部、34…個別吐出管、35…吐出連結管、36…バイパス連結管、37…ストレーナ、51、52…逆止弁。
図1
図2
図3
図4
図5