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特許7224889吸気ダクト、ガイド部材、車両、及び排水構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】吸気ダクト、ガイド部材、車両、及び排水構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20230213BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20230213BHJP
   B60K 13/02 20060101ALI20230213BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F02M35/10 301H
F02M35/16 D
F02M35/10 101F
B60K13/02 D
B62D35/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018232488
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020094535
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】吉野 弘記
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-193166(JP,U)
【文献】特開2017-171033(JP,A)
【文献】特開2017-194031(JP,A)
【文献】実開昭63-064527(JP,U)
【文献】特開2018-165063(JP,A)
【文献】米国特許第04208197(US,A)
【文献】特開2012-180800(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブの側面に設けられたドアの上方に配置され、空気を取り込む取込部と、
前記取込部よりも車幅方向の内側に設けられ、下方を向くとともに前記車幅方向の外側に向かって下降傾斜し前記キャブのルーフ部に対向する下面部と、
前記下面部に設けられるとともに車長方向に延び、前記下面部の外側の面を伝って前記車幅方向の外側へ流れる水を前記ルーフ部へ導く第一ガイド部と、を備えた
ことを特徴とする、吸気ダクト。
【請求項2】
前記第一ガイド部が、前記下面部から下方へ突出するリブ状に形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の吸気ダクト。
【請求項3】
前記第一ガイド部が、前記ルーフ部において車長方向に延びる凹部と上下方向に並んで設けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸気ダクト。
【請求項4】
前記取込部よりも車幅方向の内側に設けられ、上方を向く上面部と、
前記上面部および前記下面部の前端部同士を繋ぐ前面部と、
前記上面部に設けられるとともに車長方向に延びる上ガイド部、及び、前記前面部に設けられるとともに上下方向に延び、前記上ガイド部と連接された前ガイド部を有し、前記上面部を伝って前記車幅方向の外側へ流れる水を前記ルーフ部へ導く第二ガイド部と、を備えた
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸気ダクト。
【請求項5】
前記上面部に形成されて前記上面部を補強する補強リブを備え、
前記上ガイド部が、前記補強リブよりも前記車幅方向の外側で前記上面部から上方へ突出するリブ状に形成されているとともに、前記補強リブよりも突出高さが大きい
ことを特徴とする、請求項4に記載の吸気ダクト。
【請求項6】
前記上面部が、前方に向かって下降傾斜し、
前記前ガイド部の下端部が、前記第一ガイド部の前端部よりも前記車幅方向の内側に配置されている
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の吸気ダクト。
【請求項7】
前記前ガイド部の下端部が、前記ルーフ部において車長方向に延びる凹部と上下方向に並んで設けられている
ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の吸気ダクト。
【請求項8】
車両のキャブのルーフ部に設置されたヘッド部を備える吸気ダクトから前記ルーフ部に水を導くためのガイド部材であって、
前記ヘッド部に設けられて下方を向き車幅方向の外側に向かって下降傾斜した下面部と繋がるとともに車長方向に延び、車幅方向の外側へ流れる水を前記ルーフ部へ導く
ことを特徴とする、ガイド部材。
【請求項9】
請求項8に記載のガイド部材を備えた
ことを特徴とする、車両。
【請求項10】
前記ヘッド部は、前記キャブの側面に設けられたドアの上方に配置されて空気を取り込む取込部と、前記取込部よりも前記車幅方向の内側に設けられて前記ルーフ部に対向する前記下面部と、を備えた
ことを特徴とする、請求項9に記載の車両
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のキャブに取り付けられる吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジンに空気を送るための吸気ダクトが設けられる。従来、トラック等の車両のキャブに取り付けられた吸気ダクトが知られている。例えば特許文献1には、キャブの後面に沿って配置された吸気ダクトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-180800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸気ダクトは、より冷たい空気を取り込むために、キャブのルーフ部に設置される場合がある(いわゆるルーフオンシュノーケル)。この場合、吸気ダクトは、エンジンからより離れて配置されるため、エンジンの排熱などの影響が少ない空気を取り込むことができる。この結果、燃費の向上を図れるという利点がある。
【0005】
一方で、ルーフ部に設置された吸気ダクトは、キャブの側面に設けられるドアの上方に位置することから、例えば雨天時、吸気ダクトを伝って流れた水がドアに向かって垂れやすくなる。このため、車両の後退時などに、ドライバが後方確認のためにドアを開けて頭部を出したり、ドアに形成された窓開口から頭部を出したりした場合、吸気ダクトから垂れた水がドライバにかかりやすくなるという課題がある。
【0006】
本開示の吸気ダクトは、上述したような課題に鑑み創案されたものであり、キャブのドアに向かって垂れる水を低減することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
(1)本適用例に係る吸気ダクトは、車両のキャブの側面に設けられたドアの上方に配置され、空気を取り込む取込部と、前記取込部よりも車幅方向の内側に設けられ、下方を向くとともに前記キャブのルーフ部に対向する下面部と、前記下面部に設けられるとともに車長方向に延び、前記下面部を伝って前記車幅方向の外側へ流れる水を前記ルーフ部へ導く第一ガイド部と、を備えている。これにより、下面部を伝って車幅方向の外側へ流れる水が、第一ガイド部よりも車幅方向の外側に流れにくくなることから、ドアに向かって垂れる水が低減される。
【0008】
(2)本適用例に係る吸気ダクトにおいて、前記第一ガイド部が、前記下面部から下方へ突出するリブ状に形成されていてもよい。このように第一ガイド部がリブ状であれば、下面部を伝って車幅方向の外側へ流れる水を第一ガイド部で受け止めやすくなる。
【0009】
(3)本適用例に係る吸気ダクトにおいて、前記第一ガイド部が、前記ルーフ部において車長方向に延びる凹部と上下方向に並んで設けられていてもよい。このように第一ガイド部とルーフ部の凹部との位置関係が規定されれば、下面部を伝って車幅方向の外側へ流れる水が第一ガイド部から凹部に落下し、凹部に沿って車長方向に流れやすくなる。このため、ルーフ部に導かれた水がドアへ流れにくくなる。
【0010】
(4)本適用例に係る吸気ダクトにおいて、前記吸気ダクトが、前記取込部よりも車幅方向の内側に設けられ、上方を向く上面部と、前記上面部および前記下面部の前端部同士を繋ぐ前面部と、前記上面部に設けられるとともに車長方向に延びる上ガイド部、及び、前記前面部に設けられるとともに上下方向に延び、前記上ガイド部と連接された前ガイド部を有し、前記上面部を伝って前記車幅方向の外側へ流れる水を前記ルーフ部へ導く第二ガイド部と、を備えていてもよい。このように第二ガイド部が設けられれば、上面部を伝って車幅方向の外側へ流れる水が第二ガイド部よりも車幅方向の外側に流れにくくなる。よって、ドアに向かって垂れる水がより低減される。
【0011】
(5)本適用例に係る吸気ダクトにおいて、前記吸気ダクトが、前記上面部に形成されて前記上面部を補強する補強リブを備え、前記上ガイド部が、前記補強リブよりも前記車幅方向の外側で前記上面部から上方へ突出するリブ状に形成されているとともに、前記補強リブよりも突出高さが大きくてもよい。このように補強リブが設けられれば、上面部が補強される。また、上ガイド部の突出高さが補強リブの突出高さよりも大きくされれば、補強リブを伝って車幅方向の外側へ流れる水を上ガイド部で受け止めやすくなる。
【0012】
(6)本適用例に係る吸気ダクトにおいて、上面部が、前方に向かって下降傾斜し、前記前ガイド部の下端部が、前記第一ガイド部の前端部よりも前記車幅方向の内側に配置されていてもよい。このように上面部を傾斜させれば、車両の走行時の空気抵抗が低減される。また、前ガイド部の下端部が第一ガイド部の前端部よりも車幅方向の内側に配置されていれば、傾斜した上面部を伝って前方へと流れた水が前ガイド部の下端部から下面部に流れたとしても、第一ガイド部がこの水をルーフ部へ導くため、ドアに向かって垂れる水がより確実に低減される。
【0013】
(7)本適用例に係る吸気ダクトにおいて、前記前ガイド部の下端部が、前記ルーフ部において車長方向に延びる凹部と上下方向に並んで設けられていてもよい。このように前ガイド部の下端部とルーフ部の凹部との位置関係とが規定されれば、上面部を伝って車幅方向の外側へ流れる水が第二ガイド部から凹部に落下し、凹部に沿って車長方向に流れやすくなる。このため、ルーフ部に導かれた水がドアへ流れにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の吸気ダクトによれば、キャブのドアに向かって垂れる水を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態としての吸気ダクトが搭載された車両の前部を示す斜視図である。
図2図1の吸気ダクトの要部を示す斜視図である。
図3図1の吸気ダクトの要部を示す前面部である。
図4図1の吸気ダクトによる作用を説明するための図(図3に水流の経路を示す破線矢印を追加した図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態としての吸気ダクトについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
[1.装置構成]
本実施形態の吸気ダクト10は、図1に示す車両20に設けられている。ここではトラックである車両20を例示する。以下、車両20の前進方向を前方とし、この反対方向(車両20の後退方向)を後方とし、車両20の前方を向いた状態を基準にして左右を定める。また、前後方向を車長方向ともいい、左右方向を車幅方向ともいう。さらに、車長方向と車幅方向とのいずれにも直交する方向を上下方向という。車両20は、水平な路面上にあり、上下方向が鉛直方向と一致する(下方向が重力の作用方向と一致する)姿勢であるものとする。
【0018】
車両20の前部には略箱形状のキャブ21が設けられており、キャブ21の下方には図示しないエンジンが搭載される。本実施形態では、車両20が右ハンドル車であって、キャブ21内の右側に図示しない運転席が設けられている。
【0019】
キャブ21の上面を構成するルーフ部22は、車長方向および車幅方向に沿って延びるパネルで形成されている。本実施形態のルーフ部22には、車長方向に延びる複数の凹部(ルーフビード)23(図1では一つのみに符号を付す)が設けられている。各々の凹部23は、下方へ窪んだ溝状の部位であって、ルーフ部22の車長方向における略全長にわたって設けられている。複数の凹部23は、車幅方向に互いに間隔をあけて並設されている。ルーフ部22の車幅方向に沿う鉛直断面は、複数の凹部23により波形となっている。
【0020】
キャブ21の左右の側面24には、ドア25が設けられている。図1には右側の側面24に設けられたドア25を示し、左側の側面24に設けられたドア25は省略する。運転席に着座したドライバは、例えば車両20を後退させる場合に、右側の側面24に設けられたドア25を開けて頭部を出したり、ドア25に形成された窓開口27から頭部を出したりして、後方を確認することができる。
【0021】
吸気ダクト10は、車両20に搭載されたエンジンに空気を送るための装置である。本実施形態の吸気ダクト10は、キャブ21のルーフ部22に設置されたヘッド部11と、キャブ21の後面26に沿って配置されたダクト部12とを備えている。ヘッド部11は、車両20の外部の空気(外気)を取り込むための部位であり、略箱型に形成されている。ダクト部12は、ヘッド部11とエンジンとの間で空気の通路となる部位であり、ヘッド部11の後端部から下方へ延びる筒状に形成されている。ヘッド部11の内部とダクト部12の内部とは、互いに連通している。ヘッド部11で取り込まれた空気は、ダクト部12を通じてエンジンの吸気部へと送られる。
【0022】
本実施形態では、キャブ21の右側に配置された吸気ダクト10を例示する。より具体的には、ヘッド部11がキャブ21のルーフ部22における右側の後部に設置され、ダクト部12がキャブ21の後面26における右側の端部に沿って配置されている。このようにキャブ21の右側に配置された吸気ダクト10を基準にすると、車幅方向の外側が右方であり、車幅方向の内側が左方である。したがって、以下の説明では、車幅方向の外側を「右方」ともいい、車幅方向の内側を「左方」ともいう。また、キャブ21のルーフ部22を「キャブルーフ部22」ともいう。
【0023】
図2に示すように、ヘッド部11は、右方に向くように配置されて空気(外気)を取り込む取込部1と、左方を向く側面部2と、上方を向く上面部3と、下方を向く下面部4と、前方を向く前面部5とを備えている。これらの部位1~5はいずれも、ヘッド部11の外面を構成する。なお、ここでいう各部位1~5の向きは大まかな向きであって、各部位1~5はここでいう向きに必ずしも正対していなくてもよい。
【0024】
取込部1には、空気を取り込むための取込口1aが形成されている。ここでは取込口1aに多数の羽板を有するルーバー1bが配置されている場合を例示する。図3に示すように、取込部1は、キャブ21の右側のドア25の上方に配置される。本実施形態の取込部1は、その全体がキャブルーフ部22よりも右方に位置し、その下端部がキャブルーフ部22よりもやや下方に位置するように、キャブ21に対して位置決めされている。以下、右側のドア25を単に「ドア25」という。
【0025】
側面部2は、取込部1よりも左方で取部1と離隔して位置する。本実施形態の側面部2は、上下方向に沿って延びるとともに、前方へ向かって右方に(取部1へ近づくように)傾斜する略平面状に形成されている。また、側面部2は、取込部1よりも上下方向に短く形成されている。側面部2は、キャブルーフ部22の上方でキャブルーフ部22と離隔して設けられる。
【0026】
上面部3は、取込部1よりも左方に設けられ、取込部1及び側面部2の上端部同士を繋いでいる。本実施形態の上面部3は、車幅方向に沿って延びるとともに、前方に向かって緩やかに下降傾斜する曲面状に形成されている。上面部3には、上面部3を補強する補強リブ6が形成されている。補強リブ6は、上面部3から上方へ突出した形状であって、上面部3に沿って延設されている。本実施形態では、網目状(格子状)に設けられた補強リブ6を例示する。
【0027】
より具体的には、補強リブ6は、車長方向に延びる複数の縦部6aと、車幅方向に延びて縦部6aと交差する複数の横部6bとで構成されている。図2及び図3では、複数の縦部6aと複数の横部6bとのうち、それぞれ一つのみに符号を付す。なお、本実施形態の縦部6aは、より詳細には、後方から前方へ向かってやや右方へ斜めに延びている。図2に示すように、本実施形態の補強リブ6は、上面部3よりも後方まで延長されており、上面部3とダクト部12の上端部とにわたって形成されている。
【0028】
下面部4は、取込部1よりも左方に設けられ、取込部1及び側面部2の下端部同士を繋いでいる。図3に示すように、本実施形態の下面部4は、大まかにいえば右方に向かって下降傾斜する曲面状に形成されている。より具体的には、下面部4は、側面部2の下端部から右方へ向かって緩やかに下降傾斜した後、キャブ21のルーフ部22と右側の側面24との角部に沿うように徐々にその勾配(曲率)を増大させて下降傾斜している。また、下面部4の右端部(車幅方向の外側の端部)は、車幅方向に延びて取部1の下端部に繋がっている。下面部4は、その全体がキャブ21との間に隙間をあけて設けられる。また、下面部4は、キャブルーフ部22よりも上方ではキャブルーフ部22に対向する。
【0029】
前面部5は、上面部3及び下面部4の前端部同士を繋いでいるとともに、取込部1及び側面部2の前端部同士を繋いでいる。図2に示すように、本実施形態の前面部5は、上面部3の前端部から下方且つやや前方へ延びる(上面部3よりも急な勾配で前方に向かって下降傾斜する)略平面状に形成されている。なお、側面部2,上面部3,下面部4及び前面部5の各境界部分は曲面状に形成されている。
【0030】
吸気ダクト10は、雨天時などに吸気ダクト10の外面を伝って流れる水をキャブルーフ部22に導くための構成として、第一ガイド部7(ガイド部材,導水部)及び第二ガイド部8(ガイド部材)を備えている。第一ガイド部7は、下面部4を伝って右方へ流れる水をキャブルーフ部22へと導くものであり、第二ガイド部8は、上面部3を伝って右方へ流れる水をキャブルーフ部22へと導くものである。
【0031】
第一ガイド部7は、下面部4に設けられており、車長方向に延在する。本実施形態では、下面部4のうち、キャブルーフ部22よりも上方において勾配が急になり始める部分に延設された第一ガイド部7を例示する。第一ガイド部7は、上面視でその全体がキャブルーフ部22と重なるように設けられる。より詳細には図3に示すように、第一ガイド部7は、キャブルーフ部22に形成された凹部23(導水部)と上下方向に並んで設けられる。したがって、車両20の下方向が重力の作用方向と一致する場合、第一ガイド部7は、凹部23の真上(鉛直上方)に位置する。
本実施形態の排水構造は、導水部として、第一ガイド部7及び凹部23の少なくとも一方を備える。
【0032】
本実施形態の第一ガイド部7は、下面部4から下方へ突出するリブ状に形成されている。第一ガイド部7の突出高さH1は、例えば、補強リブ6の突出高さHrよりも大きくされる(Hr<H1)。なお、ここでいう突出高さとは、基端から先端までの最短距離に相当する。例えば第一ガイド部7の突出高さH1は、下面部4との境界部分である基端(上端)から、突出端である先端(下端)までの最短距離に相当する。
【0033】
第二ガイド部8は、上面部3に設けられた上ガイド部8aと、前面部5に設けられた前ガイド部8bとを有する。上ガイド部8aと前ガイド部8bとは、互いに連接されており、一つの線状に設けられる。このように、第二ガイド部8は、上ガイド部8a及び前ガイド部8bによって、上面部3及び前面部5にわたって設けられている。
【0034】
上ガイド部8aは、車長方向に延在する。本実施形態では、補強リブ6よりも右方に延設された上ガイド部8aを例示する。より詳細には、上ガイド部8aは、補強リブ6における横部6bの右端部(車幅方向の外側の端部)を通るように延設されている。上ガイド部8aは、好ましくは、上面部3の右端部(取込部1との境界部分)またはその近傍に設けられる。
【0035】
本実施形態の上ガイド部8aは、上面部3から上方へ突出するリブ状に形成されている。上ガイド部8aの突出高さH2は、補強リブ6の突出高さHrよりも大きくされる(Hr<H2)。なお、本実施形態では、第一ガイド部7の突出高さH1と上ガイド部8aの突出高さH2とが、等しく設定されている(H1=H2)。
【0036】
前ガイド部8bは、上下方向に延在する。本実施形態の前ガイド部8bは、より詳細には、上ガイド部8aの前端部から下方且つやや左方へ延びる直線(斜線)状に延設されている。前ガイド部8bの下端部8cは、第一ガイド部7の前端部7aよりも左方に配置されている。また、前ガイド部8bの下端部8cは、キャブルーフ部22の凹部23と上下方向に並んで設けられている。したがって、車両20の下方向が重力の作用方向と一致する場合、前ガイド部8bの下端部8cは、凹部23の真上(鉛直上方)に位置する。
【0037】
本実施形態の前ガイド部8bは、上ガイド部8aと同様のリブ状に形成されている。具体的には、前ガイド部8bは、前面部5から前方へ突出した形状である。なお、前ガイド部8bの突出高さH3は、上ガイド部8aの突出高さH2と等しく設定されている(H2=H3)。したがって、本実施形態の第一ガイド部7と第二ガイド部8とは、いずれの部位においても等しい突出高さH1,H2,H3となっている。
【0038】
[2.作用]
図4を参照して、本実施形態の吸気ダクト10による作用を説明する。図4には、例えば雨天時に、吸気ダクト10の外面を伝って流れる水の経路を太破線の矢印A1~A5で示している。また、比較例として、第一ガイド部7及び第二ガイド部8が設けられない場合の水の経路を細破線の矢印B1,B2で示している。
【0039】
まず、第一ガイド部7の作用について詳述する。吸気ダクト10では、上面部3や補強リブ6の横部6bを伝って左方へ流れる水が、側面部2を伝って下方へと流れた後、下面部4を伝って右方へと流れていく(矢印A1参照)。ここで、第一ガイド部7が設けられない構造では、下面部4を伝って右方へと流れた水が、下面部4の右端部(取込部1の下端部との境界部分)まで流れ、下面部4の右端部から重力の作用で下方へと落下する(矢印B1参照)。このため、第一ガイド部7が設けられない構造では、下面部4からドア25に向かって水が垂れやすくなる。
【0040】
これに対し、第一ガイド部7が設けられた吸気ダクト10では、下面部4を伝って右方へ流れる水が、第一ガイド部7の位置に到達すると第一ガイド部7によって受け止められる。これにより、下面部4を流れる水は、下面部4の右端部に到達しにくくなるため、下面部4の右端部からドア25に向かって垂れる水が低減される。
【0041】
また、第一ガイド部7で受け止められた水は、第一ガイド部7から重力の作用でキャブルーフ部22へと落下する(矢印A2参照)。本実施形態では、第一ガイド部7がキャブルーフ部22の凹部23の真上に位置するため、第一ガイド部7から重力の作用で落下する水は凹部23に入り、凹部23に沿って車長方向へ流れていく。
【0042】
このように、吸気ダクト10では、下面部4を伝って右方へ流れた水が、第一ガイド部7によってキャブルーフ部22へと案内される。そして、キャブルーフ部22に案内された水は、キャブ21の外面を伝って流れていくため、ドア25の上方からドア25に向かって垂れることが回避される。
【0043】
次に、第二ガイド部8の作用について詳述する。吸気ダクト10では、上面部3や補強リブ6の横部6bを伝って右方へ水が流れる場合もある(矢印A3参照)。ここで、第二ガイド部8が設けられない構造では、上面部3や補強リブ6の横部6bを伝って右方へと流れた水が、上面部3の右端部から取込部1へと流れ、取込部1から重力の作用により下方へと落下する(矢印B2参照)。このため、第二ガイド部8が設けられない構造では、取込部1からキャブ21のドア25に向かって水が垂れやすくなる。
【0044】
これに対し、第二ガイド部8が設けられた吸気ダクト10では、上面部3を伝って右方へ流れる水が、上ガイド部8aの位置に到達すると上ガイド部8aによって受け止められる。これにより、上面部3を流れる水は、取込部1に到達しにくくなるため、取込部1からドア25に向かって垂れる水が低減される。
【0045】
また、上ガイド部8aで受け止められた水は、上ガイド部8aに沿いながら上面部3を伝って前方へと流れていき、続いて前ガイド部8bに沿いながら前面部5を伝って下方へと流れていく(矢印A4参照)。そして、この水は、前ガイド部8bの下端部8cから重力の作用でキャブルーフ部22へと落下する(矢印A5参照)。本実施形態では、前ガイド部8bの下端部8cがキャブルーフ部22の凹部23の真上に位置するため、第二ガイド部8から重力の作用で落下する水は凹部23に入り、凹部23に沿って車長方向へ流れていく。
【0046】
このように、吸気ダクト10では、上面部3を伝って右方へ流れた水が、第二ガイド部8によってキャブルーフ部22へと案内される。また、本実施形態では前ガイド部8bの下端部8cが第一ガイド部7の前端部7aよりも左方に配置されているため、前ガイド部8の下端部8cに到達した水がたとえ下面部4へ流れたとしても、前述したように第一ガイド部7によってこの水がキャブルーフ部22へと案内される。
【0047】
なお、第一ガイド部7及び第二ガイド部8から落下する水は、仮に凹部23に入らなくても、キャブルーフ部22に案内されれば、前述したようにキャブ21の外面を伝って流れていくため、ドア25の上方からドア25に向かって垂れることが回避される。
【0048】
[3.効果]
(1)吸気ダクト10によれば、車長方向に延び、下面部4を伝って右方へ流れる水をキャブルーフ部22へ導く第一ガイド部7が下面部4に設けられるため、下面部4からドア25に向かって垂れる水を低減できる。したがって、例えば車両20の後退時にドライバがドア25を開けて頭部を出したり、ドア25の窓開口27から頭部を出したりしても、ドライバに水をかかりにくくすることができる。
【0049】
(2)第一ガイド部7が下面部4から下方へ突出するリブ状に形成されているため、第一ガイド部7を、下面部4において水を堰き止める壁として機能させることができる。これにより、下面部4を伝って流れる水が第一ガイド部7で受け止められやすくなるため、下面部4からドア25に向かって垂れる水をより低減しやすくできる。
【0050】
(3)第一ガイド部7が、キャブルーフ部22において車長方向に延びる凹部23と上下方向に並んで設けられているため、第一ガイド部7から重力の作用で落下する水を凹部23に入りやすくすることができる。これにより、第一ガイド部7でキャブルーフ部22に導かれた水が、凹部23に沿って車長方向に流れやすくなるため、キャブルーフ部22からドア25側へ水を流れにくくすることができる。したがって、ドア25に向かって垂れる水をより確実に低減できる。
【0051】
(4)上面部3を伝って右方へ流れる水をキャブルーフ部22へ導く第二ガイド部8が設けられるため、上面部3からドア25に向かって垂れる水を低減できる。より詳細には、上面部3を伝って右方へ流れる水が上ガイド部8aに沿って流れた後に前ガイド部8bに沿って流れるため、上面部3から取込部1へ水を流れにくくすることができる。したがって、ドア25に向かって垂れる水をより低減できる。
【0052】
(5)上ガイド部8aが上面部3から上方へ突出するリブ状に形成されているため、上ガイド部8aを、上面部3において水を堰き止める壁として機能させることができる。これにより、上面部3を伝って流れる水が上ガイド部8aで受け止められやすくなるため、上面部3からドア25に向かって垂れる水をより低減しやすくできる。
【0053】
また、上ガイド部8aが補強リブ6よりも右方に設けられるとともに、その突出高さH2が補強リブ6の突出高さHrよりも大きくされるため、補強リブ6を伝って流れる水を上ガイド部8aで受け止めやすくすることができる。これにより、ドア25に向かって垂れる水をより確実に低減できる。
【0054】
なお、本実施形態では補強リブ6が網目状であるため、上面部3と補強リブ6とで区画される空間に水が溜まる場合があり、この水が一気に右方へ流れる可能性がある。この点、前述した突出高さH2の上ガイド部8aが設けられていれば、上ガイド部8aで水をより確実に受け止めることができる。よって、ドア25に向かって垂れる水をより確実に低減できる。
【0055】
(6)上面部3が前方に向かって下降傾斜しているため、車両20の走行時に上面部3に作用する空気抵抗を低減することができる。また、このように前傾した上面部3では、重力の作用により水が前方へ流れるため、第二ガイド部8に沿って流れる水を前ガイド部8bの下端部8cに導きやすくすることができる。そして、前ガイド部8bの下端部8cに導かれた水がたとえ下面部4に流れたとしても、前ガイド部8bの下端部8cが第一ガイド部7の前端部7aよりも左方に配置されているため、前述したように第一ガイド部7でこの水をキャブルーフ部22に導くことができる。よって、ドア25に向かって垂れる水を更に低減できる。
【0056】
(7)前ガイド部8bの下端部8cが、キャブルーフ部22において車長方向に延びる凹部23と上下方向に並んで設けられているため、前ガイド部8bから重力の作用で落下する水を凹部23に入りやすくすることができる。これにより、第二ガイド部8でキャブルーフ部22に導かれた水が、凹部23に沿って車長方向に流れやすくなるため、キャブルーフ部22からドア25側へ水を流れにくくすることができる。したがって、ドア25に向かって垂れる水をより確実に低減できる。
【0057】
(8)取込部1がキャブルーフ部22よりも右方で下端部をキャブルーフ部22よりも下方に位置させるように配置されるとともに、下面部4がキャブ21の右側の側面24とルーフ部22との角部に沿う曲面状に形成されるため、吸気ダクト10を一般的な(既存の)キャブ21の形状に対応させつつ、取込部1における空気の取込性能を確保することができる。これにより、吸気ダクト10が既存のキャブ21に適用可能となるため、コスト削減に寄与することができる。なお、下面部4が前述した曲面状に形成されて取込部1が前述したように配置される場合、下面部4や取込部1を伝う水がドア25に向かって垂れやすくなるが、吸気ダクト10によれば、前述したように第一ガイド部7及び第二ガイド部8でこれを抑制することができる。
【0058】
[4.変形例]
第一ガイド部7は、前述したリブ状に限らず、例えば、下面部4から上方へ窪む溝状に形成されてもよい。同様に、第二ガイド部8は、前述したリブ状に限らず、上面部3から下方へ窪む溝状に形成されてもよい。また、第一ガイド部7と前ガイド部8bの下端部8cとは、キャブルーフ部22の凹部23に対して車幅方向にずれて配置されてもよい。この場合であっても、前述したように第一ガイド部7及び第二ガイド部によってキャブルーフ部22に水が導かれることで、ドア25に向かって垂れる水を低減することができる。
【0059】
前述した前ガイド部8bの延設方向は一例である。ただし、前述したように前ガイド部8bを上ガイド部8aの前端部から下方且つやや左方へ斜めに延設すれば、上ガイド部8aを上面部3の右端部に近づけて配置しながらも、前ガイド部8bの下端部8cを第一ガイド部7の前端部7aより左方に配置しやすくなる。したがって、前述したようにドア25に向かって垂れる水をより低減しやすくなる。
【0060】
なお、第二ガイド部8は、吸気ダクト10に必須の構成ではない。吸気ダクト10によれば、第二ガイド部8が設けられない場合であっても、下面部4を伝って右方へ流れる水が第一ガイド部7によりキャブルーフ部22へ導かれるため、下面部4からドア25に向かって垂れる水を低減できる。
【0061】
前述した補強リブ6の構成は一例である。また、前述した各突出高さH1,H2,H3,Hrも一例である。なお、補強リブ6は吸気ダクト10から省略されてもよい。また、側面部2,上面部3,下面部4及び前面部5の各形状も、前述したものに限定されない。例えば、上面部3及び前面部5は前方に向かって下降傾斜しなくてもよいし、下面部4は平面状であってもよい。
【0062】
前述した実施形態ではキャブ21の右側に配置された吸気ダクト10を例示したが、吸気ダクト10は、キャブ21の左側に配置されてもよい。この場合、吸気ダクト10は、前述した実施形態と左右対称な構造にされればよい。なお、キャブ21の左側に配置された吸気ダクト10を基準にすると、車幅方向の外側が左方となり、車幅方向の内側が右方となる。したがって、キャブ21の左側に配置された吸気ダクト10によれば、キャブ21の左側の側面24に設けられたドア25に向かって垂れる水を低減できる。
【符号の説明】
【0063】
1 取込部
3 上面部
4 下面部
5 前面部
6 補強リブ
7 第一ガイド部(ガイド部材,導水部)
7a 前端部
8 第二ガイド部(ガイド部材)
8a 上ガイド部
8b 前ガイド部
8c 前ガイド部の下端部
10 吸気ダクト
20 車両
21 キャブ
22 キャブルーフ部(ルーフ部)
23 凹部(導水部)
24 側面
25 ドア
図1
図2
図3
図4