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特許7224914タンパク質のアミノ酸配列の同定及び分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】タンパク質のアミノ酸配列の同定及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230213BHJP
【FI】
G01N27/62 V ZNA
G01N27/62 X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018540821
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 US2017016549
(87)【国際公開番号】W WO2017136753
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】62/291,216
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516114064
【氏名又は名称】アウトルック セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】シアオヤオ シアオ
(72)【発明者】
【氏名】リンホイ リー
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-052331(JP,A)
【文献】特表2014-534423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277165(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0104509(US,A1)
【文献】再公表特許第2012/111249(JP,A1)
【文献】再公表特許第2013/014853(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的バイオロジック(biologic)に関してテストタンパク質のバイオシミラリティーを決定するための方法であって、前記テストタンパク質にはモノクローナル抗体が含まれ、かつ当該モノクローナル抗体にはアダリムマブ(Adalimumab)が含まれ、当該方法が、以下の:
(a) 第1のプロテアーゼを用いて第1の消化期間でテストタンパク質の第1の試料を消化し、そして第2のプロテアーゼを用いて第2の消化期間で前記テストタンパク質の第2の試料を消化する工程、ここで、前記第1の試料及び前記第2の試料は、物理的に分離されており、前記第1の消化期間が、約0.1時間~約0.5時間であり、前記第2の消化期間が、約0.1時間~約1.5時間であり、前記第1のプロテアーゼがトリプシンであり、そして前記第2のプロテアーゼキモトリプシンであり;
(b) カラムクロマトグラフィー及びタンデム質量分析を、低分子ペプチドの前記カラムへの結合を促進するために十分な条件下で前記第1の試料に適用し、前記第1の試料における前記テストタンパク質の配列を生成する工程;
(c) カラムクロマトグラフィー及びタンデム質量分析を、低分子ペプチドの前記カラムへの結合を促進するために十分な条件下で前記第2の試料に適用し、前記第2の試料における前記テストタンパク質の配列を生成する工程、ここで、前記第1の試料及び前記第2の試料は、物理的に分離されている;
(d) 前記テストタンパク質が、前記標的バイオロジックに対し100%の配列同一性を含む場合、前記テストタンパク質を、前記標的バイオロジックに対してのバイオシミラーとして同定する工程; 及び
(e) 前記テストタンパク質が、前記標的バイオロジックに対し100%の配列同一性を含まない場合、前記テストタンパク質を、前記標的バイオロジックに対してのバイオシミラーでないものとして同定する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の消化期間が、約0.5時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の消化期間が、約1.5時間である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年2月4日に出願された米国特許出願 62/291,216に基づく優先権を主張しており、その内容は、本明細書において出典明記により全体に組み込まれる。
【0002】
2017年2月2日に作製され、サイズが81.7KBである「ONBI-008001WO_SeqList.txt」のテキストファイルの内容は、本明細書において出典明記により全体に組み込まれる。
【0003】
本開示は一般に、配列カバー率及び精度を100%までに高めるために変性タンパク質のプロテアーゼ消化のための短縮されたインキュベーション時間を用い且つ、カラムクロマトグラフィー及びタンデム質量分析(LC-MS/MS)分析中の増加した水系移動相を含む改善されたタンパク質配列決定方法、並びに治療用組換えタンパク質の開発及び承認されたバイオロジクス(biologics)のための品質管理分析において使用するための改善されたタンパク質の配列決定方法に関連する。
【背景技術】
【0004】
組換えモノクローナル抗体(mAbs)及び天然タンパク質の組換え型を含む組換えタンパク質は、生物医学研究のための試薬、並びにヒトのための診断薬及び治療薬として使用されている。組換えタンパク質の一例は、バイオシミラー分子(「バイオロジクス」とも称される)を含む。ヒトのための治療薬としての使用認可を得るために、バイオシミラー分子は、同一のアミノ酸配列を有し且つ、翻訳後修飾において類似性が非常に高いこと、例えば親のイノベーター生物学的産物に対して「同一性(sameness)」を有することが示されなければならない。組換えタンパク質は、本質的に複雑であるため、バイオシミラー分子の同一性を評価することは重要である。組換えタンパク質は、遺伝子改変された生物(例えば、細菌、酵母又はヒトの細胞株)を用いて操作される。前記生物は、複雑な機構によって折り畳まれた長鎖アミノ酸及び/又は修飾アミノ酸を産生する。その結果、組換えタンパク質は、高分子複雑性(high molecular complexity)を示し、前記製造工程の変化に対して非常に影響を受けやすい。
【0005】
組換えタンパク質の特徴及びエフェクター機能は、アミノ酸配列及び特定の修飾の有無に大きく依存する。従って、DNA配列決定は、モノクローナル抗体等のバイオロジクスを最初に特徴づけるために日常的に用いられている。しかしながら、このような改変は、タンパク質レベルでの分析によってのみ明らかにすることが出来るので、組換えタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)の後に起こる突然変異及び翻訳後修飾(PTM)等のタンパク質レベルでの改変は、前記タンパク質レベルでの分析によって認識される。従って、モノクローナル抗体のアミノ酸配列決定は、前記抗体のcDNA又はオリジナルの細胞株が、利用可能でない場合、又はアミノ酸配列の特徴付けが、治療剤として使用承認された組換え抗体の類似性を検証するため、並びに製造中の品質管理のために必要である場合に要求される。
【0006】
タンパク質中のアミノ酸の配列同定の重要性にもかかわらず、高いレベル(100%)での配列精度及びカバー率を提供する未知タンパク質の配列決定のための方法は、開発されていない。特に、組換えタンパク質の配列を決定することは、課題として取り残されている。2つの一般的なアプローチが、質量分析法を用いたタンパク質配列決定のために用いられる。第1のアプローチとして、インタクトなタンパク質をイオン化し、次いで、質量測定及びタンデム質量分析(MS/MS)分析のための質量分析器に導入する。このアプローチは、「トップダウン」プロテオミクスと称される。第2のアプローチとして、タンパク質を、トリプシン等のプロテアーゼを用いてより低分子のペプチドに酵素的に消化する。その後、ペプチドを、質量分析計に導入し、ペプチド質量フィンガープリンティング又はタンデム質量分析(MS/MS)によって同定する。この後者のアプローチは「ボトムアップ」プロテオミクスと称され、ペプチドレベルで同定することで、タンパク質の存在を推測する。ボトムアッププロテオミクスは、タンパク質を同定し、それらのアミノ酸配列、並びにPTMを特徴付けるための好ましいプロセスである。
【0007】
ボトムアッププロテオミクスの周知の方法の1つは、エドマン分解である。この方法において、アミノ末端残基は標識され、他のアミノ酸残基間のペプチド結合を破壊することなく、ペプチドから切断される。エドマン分解は、タンパク質のN末端から生じるので、前記N末端アミノ酸が化学的に修飾されている場合、又は天然タンパク質の立体構造内に隠れている場合には、信頼性が低い。ジスルフィド結合の位置、並びに識別し得る結果を得るために1ピコモル以上のペプチド濃度を決定するための推測又は別個の手順もまた、要求される。前述の理由により、前記エドマンプロセスは、50アミノ酸より長いタンパク質又はPTMを有するタンパク質の配列決定に不適当である。
【0008】
質量分析法に基づく方法は、タンパク質の複数のタンパク質分解消化から生成された重複ペプチドのタンデム質量(MS/MS)スペクトルをアセンブルすることによって、タンパク質を特徴づける。各タンデム質量(MS/MS)スペクトルは、標的タンパク質の短いペプチドのみをカバーする。従って、高いカバー率のタンパク質配列決定の鍵は、タンデム質量分析(MS/MS)スペクトルを長いスペクトルにアセンブルするために、重複ペプチドからスペクトル対を見出すことである。しかしながら、ペプチドの重複領域は、高い信頼性で同定するためには短すぎる可能性がある。さらに、個々のタンデム質量分析(MS/MS)スペクトルを判断することに依存する自動デノボ配列決定法は、典型的に、平均して5個のアミノ酸中1個を誤って同定することなく、長い配列(8個以上のアミノ酸)を再構成することができない方法であるため、限定される。デノボペプチド配列決定の進歩で、配列決定の正確性は95%超に向上したが、配列カバー率は限られている(例えば、わずか55%の配列カバー率)。全ての現在のスペクトルごとのデノボ配列決定の戦略は、完全なペプチド断片化を示すスペクトルが全標的タンパク質をまれにカバーすることはほとんどなく、全長ペプチド配列を正確に再構築することが要求されるため、配列決定精度とカバレッジとの間のトレードオフに直面する。
【0009】
個々のスペクトルを別々に配列決定する代替アプローチは、ショットガンタンパク質配列決定(SPS)と呼ばれる他のプロセスを用いて、重複ペプチドから複数のMS/MSスペクトルを同時に解釈することである。SPSは、高分解能MS/MSスペクトル上の20個のアミノ酸のうち1個のみを誤って同定する一方で、標的タンパク質配列の90~95%の頻度でカバーする配列を生成することが見出されている。SPSは、制限を有する。これは、前記標的タンパク質配列の広い領域をカバーするのに不十分であり、完全なタンパク質でない、断片化された配列を生成する。SPS配列は、10~15アミノ酸の平均長を有し、最も長い復元されたSPSデノボ配列は、45アミノ酸未満である。
【0010】
ヒトや動物の治療用途で承認を得るために、バイオシミラーは、臨床、動物、及び分析研究、並びに立体構造の状態によって集められたデータに基づき、親イノベーターバイオロジクスとほぼ同じである(例えば「同一性」を有する)ことを示さなければならない。トップダウン又はボトムアップの逆相クロマトグラフィー法のいずれも、組換えタンパク質のバイオシミラリティー(biosimilarity)を決定するための信頼性があり且つ、基本的な基準(例えば、100%配列正確性及びカバー率)を提供しない。
【0011】
従って、親イノベーターバイオロジクスと比較して、組換えタンパク質(例えばモノクローナル抗体)の分析上の類似性又は「同一性」を決定するための方法が現在必要であり、ここで、前記方法は、組換えタンパク質のプロテアーゼ消化のための有意に減少された時間フレーム(よく使用されるプロテアーゼ消化プロトコールと比較した場合)及びペプチド曝露のための条件の強化及び結果としてのペプチドのカラムクロマトグラフィーへの付着性の増加を用いて、高い信頼性で100%までのアミノ酸配列カバー率を正確に分析する。前記方法は、承認されたバイオシミラーの開発、並びに承認されたバイオシミラーの製造中の品質管理分析に有用である。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、例えばバイオシミラーに関連する交換可能な組成物(例えば、医薬製剤(pharmaceutical preparations))を含む、バイオシミラーを含むバイオロジクスを、評価、選択、及び/又は製造する際に使用する方法を提供する。例えば、本開示は、標的タンパク質(例えば、バイオロジクス承認申請(BLA)の下で承認された親イノベーター生物学的産物)が、特徴的なサイン(例えば、アミノ酸配列等)によって定義され、及びそのような特徴は、治療薬としての使用のための診断又は承認において使用するために、前記標的タンパク質に要求される「同一性」を有するバイオロジクスの評価、同定、及び/又は製造に使用される。開示された方法は、例えば、バイオロジクスの製造中に生きた細胞での組換え技術の使用の結果として起こり得る産物の変化をモニターし且つ、産物のドリフト(drift)を制御するためにも有用である。前記方法は、テストタンパク質と高い信頼性を有する標的タンパク質との類似性を、バイオロジック(biologic)のアミノ酸配列の100%までのカバー率及び精度で評価する段階を含む。例えば、類似性の予め決められたレベル、又はヒト又は動物における治療的使用のために市販されている及び/又は承認されている標的タンパク質との「同一性」を有する場合、前記テストタンパク質は、決定のために評価され得る。これは、以下の条件のうち1つ又は複数、又は全てが存在する場合に特に有益である: (1) 前記テストタンパク質が、標的タンパク質とは異なる方法によって作製されるか、又は前記標的タンパク質を作製するために用いられる方法が、前記テストタンパク質の製造者に知られていない; (2)前記テストタンパク質が、前記標的タンパク質を作製する主体とは異なる販売承認を有する(又は全く承認しない)主体によって作製される; 又は(3) 前記テストタンパク質が、その承認のための標的タンパク質に関する臨床情報に依拠した又は参照したプロセスにおいて承認される。
【0013】
本開示は、標的バイオロジックに対するテストタンパク質のバイオシミラリティーを決定するための方法を提供し、当該方法は、以下の工程: (a) 第1のプロテアーゼを用いて第1のインキュベーション時間でテストタンパク質の第1の試料を消化する工程、ここで、前記第1の試料及び前記第2の試料は物理的に分離されている; (b) カラムに低分子ペプチドの結合を促進するために十分な条件下でカラムクロマトグラフィー及びタンデム質量分析を前記第1の試料に適用し、前記第1の試料中の前記テストタンパク質の配列を生成する工程; (c) カラムに低分子ペプチドの結合を促進するために十分な条件下でカラムクロマトグラフィー及びタンデム質量分析を前記第2の試料に適用し、前記第2の試料中の前記テストタンパク質の配列を生成する工程、ここで、前記第1の試料及び前記第2の試料は、物理的に分離されている; (d) 前記テストタンパク質が、前記標的バイオロジックに対し100%の同一性を含む場合、前記テストタンパク質を前記標的バイオロジックに対しバイオシミラーとして同定する工程; 及び(e) 前記テストタンパク質が、前記標的バイオロジックに対し100%の同一性を含まない場合、前記テストタンパク質を前記標的バイオロジックに対しバイオシミラーでないとして同定する工程、を含む。
【0014】
本開示の標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する方法の特定の実施形態において、前記モノクローナル抗体は、アダリムマブ(Adalimumab)を含む。
【0015】
本開示の標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する方法の特定の実施形態において、前記第1のプロテアーゼは、トリプシンである。あるいは、又は加えて、本開示の標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する方法の特定の実施形態において、前記第2のプロテアーゼは、キモトリプシンである。
【0016】
本開示の標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する方法の特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.1~約1.0時間である。特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.1~約0.5時間である。特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.6~約1.0時間である。特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.5時間である。
【0017】
本開示の標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する方法の特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約0.1~約2.0時間である。特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約0.1~約1.5時間である。特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約1.5~約2.0時間である。特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約1.5時間である。本開示は、標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する方法を提供し、当該方法は、以下の工程: 第1のプロテアーゼを用いて第1のインキュベーションの時間及び第2のプロテアーゼを用いて第2のインキュベーション時間でテストタンパク質の第1の試料を消化する工程、ここで、前記テストタンパク質は、前記第1の試料及び前記第2の試料においてペプチド配列に別々に消化される; カラムクロマトグラフィーを用いて前記第2の試料の前記ペプチド配列とは別に前記第1の試料の前記ペプチド配列を分析し、100%の前記アミノ酸配列カバー率及び前記テストタンパク質の100%のアミノ酸配列精度を決定する工程、ここで、前記カラムクロマトグラフィーは、低分子ペプチドのカラムへの結合を促進する条件を含む; を含む。
【0018】
標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、テストタンパク質は、タンパク質、糖タンパク質、融合タンパク質、成長因子、ワクチン、血液因子、血栓溶解剤、造血タンパク質、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンに基づく製品、抗体、単一特異性(例えば、モノクローナル)抗体、ペグ化抗体、抗体薬物コンジュゲート、治療用酵素、サイトカイン、又は可溶性受容体断片、の1つである。
【0019】
標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、前記第1のプロテアーゼは、トリプシンである。あるいは、又は加えて、標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、前記第2のプロテアーゼは、キモトリプシンである。
【0020】
標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、前記第1のプロテアーゼは、トリプシンである。前記第1のプロテアーゼがトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.1~約1.0時間である。前記第1のプロテアーゼがトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.6~約1.0時間である。前記第1のプロテアーゼがトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第1の消化期間は、約0.5時間である。
【0021】
標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、前記第2のプロテアーゼは、キモトリプシンである。前記第2のプロテアーゼがキモトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約0.1~約2.0時間である。前記第2のプロテアーゼがキモトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約0.1~約1.5時間である。前記第2のプロテアーゼがキモトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約1.5~約2.0時間である。前記第2のプロテアーゼがキモトリプシンであることを含む特定の実施形態において、前記第2の消化期間は、約1.5時間である。
【0022】
標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、前記標的バイオロジックは、ヒト又は動物において治療用途に市販されている又は承認されたバイオロジック、二次承認プロセスのためのリファレンスリスト薬物、糖タンパク質、融合タンパク質、成長因子、ワクチン、血液因子、血栓溶解剤、造血タンパク質、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンに基づく製品、抗体、単一特異性(例えば、モノクローナル)抗体、ペグ化抗体、抗体薬物コンジュゲート、治療用酵素、サイトカイン、又は可溶性受容体断片である。特定の実施形態において、前記標的バイオロジックは、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(Adalimumab (Humira))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))(Bevacizumab (Avastin))、デノスマブ(Xgeva(登録商標))(Denosumab (Xgeva))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))(Cetuximab (Erbitux)); リツキシマブ(リツキサン(登録商標))(Rituximab (Rituxan)); マブテラ(登録商標)(Mabthera); キャンパス(登録商標)(Campath); ハーセプチン(登録商標)(Herceptin); ゾレア(登録商標)(Xolair); プロリア(登録商標)(Prolia); ベクティビックス(登録商標)(Vectibix); レオプロ(登録商標)(ReoPro); ゼナパックス(登録商標)(Zenapax); シムレクト(登録商標)(Simulect); シナジス(登録商標)(Synagis); レミケード(登録商標)(Remicade); マイロターグ(登録商標)(Mylotarg); キャンパス(登録商標)(Campath); ラプティバ(登録商標)(Raptiva); ゼバリン(登録商標)(Zevalin); アービタックス(登録商標)(Erbitux); タイサブリ(登録商標)(Tysabri); ルセンティス(登録商標)(Lucentis); ソリリス(登録商標)(Soliris); シムジア(登録商標)(Cimzia); イラリス(登録商標)(Ilaris); アーゼラ(登録商標)(Arzerra); ベキサール(登録商標)(Bexxar); シンポニー(登録商標)(Simponi); アクテムラ(登録商標)(Actemra); ベンリスタ(登録商標)(Benlysta); アドセトリス(登録商標)(Adcetris); 又はヤーボイ(登録商標)(Yervoy)の1つである。標的バイオロジックに対するテストタンパク質の前記バイオシミラリティーを決定する前記方法の特定の実施形態において、前記標的バイオロジックは、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(Adalimumab (Humira))である。
【0023】
本開示は、アダリムマブ又はその生物学的同等物に関連する組換えモノクローナル抗体の前記バイオシミラリティーを分析するための方法を提供し、前記方法は、以下の工程: 前記組換えモノクローナル抗体の第1の試料を第1のプロテアーゼで消化することによって前記組換えモノクローナル抗体のアミノ酸配列の100%までを決定する工程及び前記組換えモノクローナル抗体の第2の試料を第2のプロテアーゼで別々に消化する工程、ここで、前記プロテアーゼ消化工程は、合わせて2時間以下のインキュベーション時間を含む; 及び前記組換えモノクローナル抗体のアミノ酸配列を前記アダリムマブのアミノ酸配列と又はその生物学的同一物と同一性を判定するために比較する工程、を含む。
【0024】
アダリムマブ又はその生物学的同等物に対する組換えモノクローナル抗体の前記バイオシミラリティーを分析するための前記方法の特定の実施形態において、前記同一性は、前記組換えモノクローナル抗体のアミノ酸配列とアダリムマブ又はその生物学的同等物のアミノ酸配列の間の100%同一性を含む。
【0025】
本開示は、組換えモノクローナル抗体を含む医薬製品の製造方法を提供し、前記方法は、以下の工程: 組換えモノクローナル抗体を提供する工程、ここで、前記組換えモノクローナル抗体は、BLA又は補充BLAの下で承認されない; 前記組換えモノクローナル抗体のための入力値を取得する工程、ここで、1つ又は複数の前記入力値は、標的バイオロジックのアミノ酸配列である; 前記入力値と前記標的バイオロジックの複数のアミノ酸配列とを比較することによって作製された複数の評価を取得する工程、ここで、前記標的バイオロジックは、バイオロジクス承認申請(BLA)又は補充BLAの下で承認される; 及び前記入力値が、前記標的バイオロジックの当該アミノ酸配列の標的値と区別できない場合、前記組換えモノクローナル抗体を医薬製品に加工する工程、を含む。
【0026】
組換えモノクローナル抗体を含む医薬製品の前記製造方法の特定の実施形態において、前記モノクローナル抗体は、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(Adalimumab (Humira))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))(Bevacizumab (Avastin))、デノスマブ(Xgeva(登録商標))(Denosumab (Xgeva))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))(Cetuximab (Erbitux)); リツキサン(登録商標)(Rituxan); マブセラ(登録商標)(Mabthera); キャンパス(登録商標)(Campath); ハーセプチン(登録商標)(Herceptin); ゾレア(登録商標)(Xolair); プロリア(登録商標)(Prolia); ベクティビックス(登録商標)(Vectibix); レオプロ(登録商標)(ReoPro); ゼナパックス(登録商標)(Zenapax); シムレクト(登録商標)(Simulect); シナジス(登録商標)(Synagis); レミケード(登録商標)(Remicade); マイロターグ(登録商標)(Mylotarg); キャンパス(登録商標)(Campath); ラプティバ(登録商標)(Raptiva); ゼバリン(登録商標)(Zevalin); アービタックス(登録商標)(Erbitux); タイサブリ(登録商標)(Tysabri); ルセンティス(登録商標)(Lucentis); ソリリス(登録商標)(Soliris); シムジア(登録商標)(Cimzia); イラリス(登録商標)(Ilaris); アーゼラ(登録商標)(Arzerra); ベキサール(登録商標)(Bexxar); シンポニー(登録商標)(Simponi); アクテムラ(登録商標)(Actemra); ベンリスタ(登録商標)(Benlysta); アドセトリス(登録商標)(Adcetris); 又はヤーボイ(登録商標)(Yervoy)の1つに対するバイオシミラーとなるように操作される。
【0027】
組換えモノクローナル抗体を含む医薬製品の前記製造方法の特定の実施形態において、前記組換えモノクローナル抗体は、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(Adalimumab (Humira))に対するバイオシミラーであるように操作される。
【0028】
組換えモノクローナル抗体を含む医薬製品の前記製造方法の特定の実施形態において、前記入力値は、前記組換えモノクローナル抗体の前記アミノ酸配列の100%カバー率を含む。
【0029】
本開示は、組換えモノクローナル抗体のアミノ酸配列の100%までを分析し、医薬製品と同一性を決定するための方法を提供し、前記方法は、以下の工程: 第1のプロテアーゼを用いた第1のインキュベーション時間で変性組換えモノクローナル抗体の第1の試料及び第2のプロテアーゼを用いた第2のインキュベーション時間で変性組換えモノクローナル抗体の第2の試料を消化することによって変性組換えモノクローナル抗体を分散したペプチドに断片化する工程、ここで、前記第1のインキュベーション時間は、約0.1~約1.0時間であり、その後、前記第1のプロテアーゼが、クエンチされ、及び前記第2のインキュベーション時間は、約1.0~約2.0時間であり、その後、前記第2のプロテアーゼがクエンチされる; 前記組換えモノクローナル抗体を構成するアミノ酸の配列を決定するための前記組換えモノクローナル抗体の分散したペプチドを分析する工程; 及び前記組換えモノクローナル抗体のアミノ酸配列を前記医薬製品のアミノ酸配列と比較する工程、ここで、前記医薬製品は、バイオロジクス承認申請(BLA)又は補充BLAの下で承認される、を含む。
【0030】
方法はまた、テストタンパク質についての定義(例えば、アミノ酸配列)の生成又は評価のために予め決定された多数の標的器値の生成又は評価のために提供され、及び/又は前記テストタンパク質と前記標的タンパク質の間の関係(例えば、構造的関係)を記述する同一性/アイデンティティ値を得るため、このような情報の使用又は適用を提供する。場合によっては、同一性/アイデンティティ(identity)値は、テストタンパク質を評価、同定、及び/又は産生(例えば、製造)するために使用され得る。場合によっては、同一性/アイデンティティ値は、テストタンパク質のリリース(release)のための仕様である。従って、承認されたバイオロジックを評価、同定、及び製造するための有用な方法が、本明細書において開示される。
【0031】
当該方法は、高度に精製された調製物(例えば、テストタンパク質調製物)中で、他のアイソフォーム又はテストバイオロジックの変異体、並びに同じものを製造する副産物からバイオロジック調製物を分離する調製工程を含み、ここで、前記テストバイオロジックは、バイオロジクス承認申請(BLA)、補充BLA、又はそれらに同等な承認申請の下で承認されず; 及び標的バイオロジックのための1つ以上のアミノ酸配列の入力値に用いる前記高度に精製されたテストバイオロジック調製物を処理する工程を任意で含む。
【0032】
一実施形態において、前記テストタンパク質は、標的タンパク質アミノ酸配列と同一又はほぼ同一(例えば、100%一致0.5%の許容誤差での翻訳誤差による配列の相違)であるアミノ酸配列(例えば、一次アミノ酸配列)を有することが決定され、及び前記標的タンパク質が、バイオロジクス承認申請(BLA)、補充BLA、又はそれらに同等な承認申請の下で承認される。
【0033】
一実施形態において、前記方法は、以下の工程: (1) 豊富なテストタンパク質調製物を産生する工程、ここで、前記テストタンパク質は、バイオロジクス承認申請(BLA)、補充BLA、又はそれらに同等な承認申請の下で承認され得る、又はされ得ない; 及び(2) 前記アミノ酸配列が標的タンパク質のアミノ酸配列と区別できないことを決定するためにテストタンパク質調製物を処理する工程、ここで、前記テストタンパク質が、前記標的タンパク質アミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を有し、及び前記標的タンパク質が、バイオロジクス承認申請(BLA)、補充BLA、又はそれらに同等な承認申請の下で承認され、それによって、タンパク質を含む医薬製品(例えば、モノクローナル抗体(mAb))を製造する、を含む。
【0034】
一実施形態において、前記標的タンパク質は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体等の抗体である。代替の実施形態において、前記標的タンパク質は、例えばペグ化抗体等のポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖とコンジュゲートした抗体であり得る。ペグ化モノクローナル抗体に関して、前記ペグ化の程度及び前記ペグ化の質量サイズの範囲に依存して、本発明の前記方法は、ペプチドマッピングのための試料調製に先駆けてPEGをリリースする工程の後に、前記モノクローナル抗体のアミノ酸を配列決定するために採用され得る。さらなる実施形態において、前記標的タンパク質は、全長mAb又は不安定な結合を有する安定な化学リンカーを介して生物学的活性細胞傷害性(抗癌)ペイロード又は薬物に連結された一本鎖可変断片(scFv)等の抗体断片等の抗体から構成される抗体薬物コンジュゲート(ADC)複合体分子であり得る。前記薬物との前記反応残基が修飾されているADC複合体分子において、本開示の前記方法は、前記薬物の前記分子量を修飾として前記配列データベースに含めることによって、前記薬物コンジュゲーション部位をマッピングするために使用され得る。
【0035】
例えば、前記標的タンパク質は、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(Adalimumab (Humira))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))(Bevacizumab (Avastin))、デノスマブ(Xgeva(登録商標))(Denosumab (Xgeva))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))(Cetuximab (Erbitux)); リツキサン(登録商標)(Rituxan); マブセラ(登録商標)(Mabthera); キャンパス(登録商標)(Campath); ハーセプチン(登録商標)(Herceptin); ゾレア(登録商標)(Xolair); プロリア(登録商標)(Prolia); ベクティビックス(登録商標)(Vectibix); レオプロ(登録商標)(ReoPro); ゼナパックス(登録商標)(Zenapax); シムレクト(登録商標)(Simulect); シナジス(登録商標)(Synagis); レミケード(登録商標)(Remicade); マイロターグ(登録商標)(Mylotarg); キャンパス(登録商標)(Campath); ラプティバ(登録商標)(Raptiva); ゼバリン(登録商標)(Zevalin); アービタックス(登録商標)(Erbitux); タイサブリ(登録商標)(Tysabri); ルセンティス(登録商標)(Lucentis); ソリリス(登録商標)(Soliris); シムジア(登録商標)(Cimzia); イラリス(登録商標)(Ilaris); アーゼラ(登録商標)(Arzerra); ベキサール(登録商標)(Bexxar); シンポニー(登録商標)(Simponi); アクテムラ(登録商標)(Actemra); アクテムラ(登録商標)(Actemra); ベンリスタ(登録商標)(Benlysta); アドセトリス(登録商標)(Adcetris); 又はヤーボイ(登録商標)(Yervoy)、並びに他のバイオロジクスとして市販されている製品から選択され得る。
【0036】
本開示の追加の態様、特徴、及び利点は、その方法及び使用の両方に関して、本開示が添付の図面に対してなされる例示的な実施形態の以下の説明に照らして考慮される際に、より容易に理解され且つ、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A図1Aは、特異性のために実行された、トリプシン消化及びキモトリプシン消化クロマトグラフィーマトリックスの各クロマトグラフィープロファイルを説明するペアのグラフである。前記マトリックスは、Sequence Discovererの何れの標的アミノ酸配列にヒットしなかった。前記マトリックスクロマトグラム上の小さなピークは、システムピークと酵素ピークを示す。
図1B図1Bは、特異性のために実行された、トリプシン消化及びキモトリプシン消化クロマトグラフィーマトリックスの各クロマトグラフィープロファイルを説明するペアのグラフである。前記マトリックスは、Sequence Discovererの何れの標的アミノ酸配列にヒットしなかった。前記マトリックスクロマトグラム上の小さなピークは、システムピークと酵素ピークを示す。
図2A図2Aは、前記ONS-3010リファレンススタンダード(アダリムマブ)のトリプシン消化重鎖(図2A(配列番号1、潜在的な修飾を含む(配列番号2)))、キモトリプシン消化重鎖(図2B(配列番号3、潜在的な修飾を含む(配列番号4)))、トリプシン消化軽鎖(図2C(配列番号5、潜在的な修飾を含む(配列番号6)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図2D(配列番号7、潜在的な修飾を含む(配列番号8)))の各配列カバー率を説明する一連のアライメントである。これらの図は、本開示の前記方法が、100%の配列カバー率が可能であることを実証する。
図2B図2Bは、前記ONS-3010リファレンススタンダード(アダリムマブ)のトリプシン消化重鎖(図2A(配列番号1、潜在的な修飾を含む(配列番号2)))、キモトリプシン消化重鎖(図2B(配列番号3、潜在的な修飾を含む(配列番号4)))、トリプシン消化軽鎖(図2C(配列番号5、潜在的な修飾を含む(配列番号6)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図2D(配列番号7、潜在的な修飾を含む(配列番号8)))の各配列カバー率を説明する一連のアライメントである。これらの図は、本開示の前記方法が、100%の配列カバー率が可能であることを実証する。
図2C図2Cは、前記ONS-3010リファレンススタンダード(アダリムマブ)のトリプシン消化重鎖(図2A(配列番号1、潜在的な修飾を含む(配列番号2)))、キモトリプシン消化重鎖(図2B(配列番号3、潜在的な修飾を含む(配列番号4)))、トリプシン消化軽鎖(図2C(配列番号5、潜在的な修飾を含む(配列番号6)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図2D(配列番号7、潜在的な修飾を含む(配列番号8)))の各配列カバー率を説明する一連のアライメントである。これらの図は、本開示の前記方法が、100%の配列カバー率が可能であることを実証する。
図2D図2Dは、前記ONS-3010リファレンススタンダード(アダリムマブ)のトリプシン消化重鎖(図2A(配列番号1、潜在的な修飾を含む(配列番号2)))、キモトリプシン消化重鎖(図2B(配列番号3、潜在的な修飾を含む(配列番号4)))、トリプシン消化軽鎖(図2C(配列番号5、潜在的な修飾を含む(配列番号6)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図2D(配列番号7、潜在的な修飾を含む(配列番号8)))の各配列カバー率を説明する一連のアライメントである。これらの図は、本開示の前記方法が、100%の配列カバー率が可能であることを実証する。
図3A図3Aは、特異性のために実行された、ONS-3010リファレンススタンダードのトリプシン消化及びキモトリプシン消化の各クロマトグラフプロファイルを説明するペアのグラフである。
図3B図3Bは、特異性のために実行された、ONS-3010リファレンススタンダードのトリプシン消化及びキモトリプシン消化の各クロマトグラフプロファイルを説明するペアのグラフである。
図4A図4Aは、前記ポジティブコントロールであるアダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(試料テスト番号H35)のトリプシン消化重鎖(図4A(配列番号9、潜在的な修飾を含む(配列番号10)))、キモトリプシン消化重鎖(図4B(配列番号11、潜在的な修飾を含む(配列番号12)))、トリプシン消化軽鎖(図4C(配列番号13、潜在的な修飾を含む(配列番号14)))及びキモトリプシン消化軽鎖(図4D(配列番号15、潜在的な修飾を含む(配列番号16)))のそれぞれの100%配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これらの図は、前記標的配列が、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))の正確なアミノ酸配列であることを明示する。
図4B図4Bは、前記ポジティブコントロールであるアダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(試料テスト番号H35)のトリプシン消化重鎖(図4A(配列番号9、潜在的な修飾を含む(配列番号10)))、キモトリプシン消化重鎖(図4B(配列番号11、潜在的な修飾を含む(配列番号12)))、トリプシン消化軽鎖(図4C(配列番号13、潜在的な修飾を含む(配列番号14)))及びキモトリプシン消化軽鎖(図4D(配列番号15、潜在的な修飾を含む。これらの図は、前記標的配列が、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))の正確なアミノ酸配列であることを明示する。
図4C図4Cは、前記ポジティブコントロールであるアダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(試料テスト番号H35)のトリプシン消化重鎖(図4A(配列番号9、潜在的な修飾を含む(配列番号10)))、キモトリプシン消化重鎖(図4B(配列番号11、潜在的な修飾を含む(配列番号12)))、トリプシン消化軽鎖(図4C(配列番号13、潜在的な修飾を含む(配列番号14)))及びキモトリプシン消化軽鎖(図4D(配列番号15、潜在的な修飾を含む(配列番号16)))のそれぞれの100%配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これらの図は、前記標的配列が、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))の正確なアミノ酸配列であることを明示する。
図4D図4Dは、前記ポジティブコントロールであるアダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(試料テスト番号H35)のトリプシン消化重鎖(図4A(配列番号9、潜在的な修飾を含む(配列番号10)))、キモトリプシン消化重鎖(図4B(配列番号11、潜在的な修飾を含む(配列番号12)))、トリプシン消化軽鎖(図4C(配列番号13、潜在的な修飾を含む(配列番号14)))及びキモトリプシン消化軽鎖(図4D(配列番号15、潜在的な修飾を含む(配列番号16)))のそれぞれの100%配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これらの図は、前記標的配列が、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))の正確なアミノ酸配列であることを明示する。
図5A図5Aは、トリプシン消化及びキモトリプシン消化したポジティブコントロールアダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(試料テスト番号H35)の各クロマトグラフプロファイルを説明するペアのグラフである。
図5B図5Bは、トリプシン消化及びキモトリプシン消化したポジティブコントロールアダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(試料テスト番号H35)の各クロマトグラフプロファイルを説明するペアのグラフである。
図6A図6Aは、前記ネガティブコントロールであるリツキシマブ(リツキサン(登録商標))(試料テスト番号M6)のトリプシン消化重鎖(図6A(配列番号17、潜在的な修飾を含む(配列番号18)))、キモトリプシン消化重鎖(図6B(配列番号19、潜在的な修飾を含む(配列番号20)))、トリプシン消化軽鎖(図6C(配列番号21、潜在的な修飾を含む(配列番号22)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図6D(配列番号23、潜在的な修飾を含む(配列番号24)))のそれぞれの配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これは、本開示の前記方法が、配列を正確に同定することが出来ることを明示する。
図6B図6Bは、前記ネガティブコントロールであるリツキシマブ(リツキサン(登録商標))(試料テスト番号M6)のトリプシン消化重鎖(図6A(配列番号17、潜在的な修飾を含む(配列番号18)))、キモトリプシン消化重鎖(図6B(配列番号19、潜在的な修飾を含む(配列番号20)))、トリプシン消化軽鎖(図6C(配列番号21、潜在的な修飾を含む(配列番号22)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図6D(配列番号23、潜在的な修飾を含む(配列番号24)))のそれぞれの配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これは、本開示の前記方法が、配列を正確に同定することが出来ることを明示する。
図6C図6Cは、前記ネガティブコントロールであるリツキシマブ(リツキサン(登録商標))(試料テスト番号M6)のトリプシン消化重鎖(図6A(配列番号17、潜在的な修飾を含む(配列番号18)))、キモトリプシン消化重鎖(図6B(配列番号19、潜在的な修飾を含む(配列番号20)))、トリプシン消化軽鎖(図6C(配列番号21、潜在的な修飾を含む(配列番号22)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図6D(配列番号23、潜在的な修飾を含む(配列番号24)))のそれぞれの配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これは、本開示の前記方法が、配列を正確に同定することが出来ることを明示する。
図6D図6Dは、前記ネガティブコントロールであるリツキシマブ(リツキサン(登録商標))(試料テスト番号M6)のトリプシン消化重鎖(図6A(配列番号17、潜在的な修飾を含む(配列番号18)))、キモトリプシン消化重鎖(図6B(配列番号19、潜在的な修飾を含む(配列番号20)))、トリプシン消化軽鎖(図6C(配列番号21、潜在的な修飾を含む(配列番号22)))、及びキモトリプシン消化軽鎖(図6D(配列番号23、潜在的な修飾を含む(配列番号24)))のそれぞれの配列カバー率を説明するアライメントのシリーズである。これは、本開示の前記方法が、配列を正確に同定することが出来ることを明示する。
図7A図7Aは、トリプシン消化及びキモトリプシン消化したネガティブコントロールリツキシマブ(リツキサン(登録商標))(試料テスト番号M6)の各クロマトグラフプロファイルを説明するペアのグラフである。
図7B図7Bは、トリプシン消化及びキモトリプシン消化したネガティブコントロールリツキシマブ(リツキサン(登録商標))(試料テスト番号M6)の各クロマトグラフプロファイルを説明するペアのグラフである。
図8図8は、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))の軽鎖(配列番号25)及び重鎖(配列番号26)の理論上のアミノ酸配列を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書において使用する場合、用語「バイオロジック(biologic)」(単数又は複数)は、ペプチド及びタンパク質産物を指す。例えば、バイオロジクスは、タンパク質、糖タンパク質、融合タンパク質、成長因子、ワクチン、血液因子、血栓溶解剤、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンに基づく製品、単一特異性(例えば、モノクローナル)抗体、治療用酵素等の細胞において発現された天然由来又は組換え産物を含む。バイオロジクスは、公衆衛生サービス(PHS)法第351条(a)に基づく、バイオロジクス承認申請(BLA)の下で承認され得、一方、リファレンス産物としてBLAを参照するバイオシミラー及び互換性のあるバイオロジクスは、PHS法第351条(k)に基づいて使用許諾される。公衆衛生サービス(PHS)法第351条は、42 U.S.C. 262として成文化される。他のバイオロジクスは、連邦食品及び化粧品法第505条(b)(1)に基づいて、又はハッチワックスマン法第505条(b)(2)及び第505条(j)に基づく簡易申請として承認され得、ここで第505条は、21 U.S.C. 355として成文化される。
【0039】
本明細書において使用する場合、前記用語「アイソフォーム」(単数又は複数)は、単一ヌクレオチド多型、mRNAの異なるスプライシングの何れか、又は翻訳後修飾(例えば、硫酸化、グリコシル化等)から生じる同じタンパク質のいくつかの異なる形態の何れかを指す。
【0040】
本明細書において使用する場合、前記用語「抗体」(単数又は複数)は、最も広い意味において、IgG、IgM、IgD、IgA及びIgEの何れかのクラスのモノクローナル抗体(全長のモノクローナル抗体を含む)、並びに所望する生物学的活性を示す抗体断片を指す。「抗体断片」という前記語句は、全長抗体の一部(一般にその抗原結合領域又は可変領域)を指す。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片; ダイアボディ; 線状抗体; 一本鎖抗体分子; 及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0041】
本明細書において使用する場合、前記用語「モノクローナル抗体」(単数又は複数)は、特異性が高く、単一の抗原エピトープを対象とした抗体を指す。あるいは、前記用語「モノクローナル抗体」は、単一の脾臓細胞から産生された抗体を指す。非限定的な例において、モノクローナル抗体は、完全にヒト化された抗体であり得る、すなわち、その可変領域及び定常領域の両方がヒトソース(human source)に由来する。
【0042】
本明細書において使用する場合、用語「承認」は、管理機関、例えばUSFDAが、ヒト又は動物における治療的又は診断的使用の候補を承認する手順を指す。本明細書において使用する場合、一次承認プロセスは、例えば、承認されたタンパク質が、以前に承認されたタンパク質と構造的又は機能的類似性を有することを必要としない等、例えば同一の一次アミノ酸配列又は一次アミノ酸配列を有する以前に承認されたタンパク質等、の以前に承認されたタンパク質を指さない承認プロセスである。実施形態において、前記一次承認プロセスは、申請者が、承認のために以前承認された産物からのデータ(例えば臨床データ)に依存しないプロセスである。例示的な一次認証プロセスは、米国においてバイオロジクス承認申請(BLA)、又は補充バイオロジクス承認申請(sBLA)、又は連邦食品及び化粧品法第505条(b)(1)に基づく新薬申請(NDA)、並びに欧州において、欧州指令2001/83/ECの第8条(3)の規定に基づく承認、又は他の国又は管轄区域における類似の手続きを含む。
【0043】
本明細書において使用する場合、前記用語「糖タンパク質」は、アミノ酸配列に共有結合した1つ以上のオリゴ糖鎖(例えばグリカン)を含むアミノ酸配列を指す。例示的なアミノ酸配列は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。例示的な糖タンパク質は、グリコシル化抗体及び抗体様分子(例えば、Fc融合タンパク質)を含む。例示的な抗体は、モノクローナル抗体及び/又はその断片、ポリクローナル抗体及び/又はその断片、及びFcドメイン含有融合タンパク質(例えば、IgG1のFc領域、又はそのグリコシル化部分を含む融合タンパク質)を含む。糖タンパク質調製物は、少なくとも1つの糖タンパク質を含む組成物又は混合物である。
【0044】
本明細書において使用する場合、前記用語「標的バイオロジック」(例えば、標的タンパク質)は、テストバイオロジックが、測定又は評価される基準を規定するか又は提供する市販の又は承認されたバイオロジックを指す。実施形態において、標的バイオロジックは、ヒト又は動物における治療的使用のために市販される。実施形態において、前記標的バイオロジックは、一次承認プロセスによってヒト又は動物において使用が承認される。さらなる実施形態において、前記標的バイオロジックは、二次承認プロセスのためのリファレンスリスト薬物である。例示的な標的タンパク質は、ヒト化又はヒト抗体等の抗体である。他の標的タンパク質は、糖タンパク質、サイトカイン、造血タンパク質、可溶性受容体断片、及び成長因子を含む。
【0045】
本明細書において使用する場合、前記用語「評価する(evaluating)」は、前記1つ以上のパラメータに属する情報を提供するための批評する、考慮する、査定する、測定する、及び/又は存在、不存在、レベル、及び/又はテストタンパク質及び/又は標的バイオロジックにおける1つ以上のパラメータの割合を検出することを指す。場合によって、糖タンパク質調製物を評価することは、テストタンパク質と標的バイオロジックの間の1つ以上の類似点の有無、レベル又は比を検出することを含む。
【0046】
本明細書において使用する場合、前記用語「分析する」は、試料又は別の物質(例えば、出発物質等)における物理的変化を含むプロセスを行うことを指す。例示的な変化は、2つ以上の出発材料から物理的実体を作製すること、物質を切断又は断片化すること、物質を分離又は精製すること、2つ以上の実体を混合物に合わせること、又は共有結合又は非共有結合を切断すること又は形成することを含む化学反応を行うことを含む。試料を分析することは、例えば試料、分析物又は試薬等の物質の物理的変化を含む分析プロセス(本明細書において「物理的分析」と呼ばれることもある)を実施すること、例えば以下の1つ以上を含む方法等の分析方法を実施すること: 他の物質から分析物等の物質、又は断片若しくは他の誘導体を分離又は精製すること; 分析物、又は断片若しくはその誘導体を緩衝液、溶媒又は反応物等の他の物質と混合すること; 分析物、又はその断片若しくは他の誘導体の構造を変化させること(分析物の第1の原子と第2の原子との間に共有結合又は非共有結合を切断又は形成することによって; 試薬、又はその断片若しくは他の誘導体を変化させることによって(例えば、前記試薬の第1原子と第2原子の間の共有結合又は非共有決同又は非共有結合を切断又は形成することによって); を含むことが出来る。
【0047】
本明細書において使用する場合、前記語句「入力値」は、テストバイオロジックのパラメータに関連する値を指す。前記値は、例えば存在、非存在、中間等の定性的な値であってもよく、又は前記値は、例えばパラメータのため単一の数値又は範囲等の数値が使用され得る等の数値的な値であってもよい。
【0048】
本開示の一般的な方法
本開示の前記方法は、バイオシミラー治療分子の開発及び製造を通じて、親イノベーター生物学的産物(例えば、標的タンパク質)に対する組換えタンパク質(例えば、テストタンパク質)の類似性を分析的に決定するために使用され得る。
【0049】
前記方法の非限定的な適用には、限定されないが、以下を含む生物学的産物に対する組換えタンパク質の類似性を決定する際の使用が含まれる; アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))(Adalimumab (Humira))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))(Bevacizumab (Avastin))、デノスマブ(Xgeva(登録商標))(Denosumab (Xgeva))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))(Cetuximab (Erbitux)); リツキシマブ(リツキサン(登録商標))(Rituximab (Rituxan)); マブセラ(登録商標)(Mabthera); キャンパス(登録商標)(Campath); ハーセプチン(登録商標)(Herceptin); ゾレア(登録商標)(Xolair); プロリア(登録商標)(Prolia); ベクティビックス(登録商標)(Vectibix); レオプロ(登録商標)(ReoPro); ゼナパックス(登録商標)(Zenapax); シムレクト(登録商標)(Simulect); シナジス(登録商標)(Synagis); レミケード(登録商標)(Remicade); マイロターグ(登録商標)(Mylotarg); キャンパス(登録商標)(Campath); ラプティバ(登録商標)(Raptiva); ゼバリン(登録商標)(Zevalin); アービタックス(登録商標)(Erbitux); タイサブリ(登録商標)(Tysabri); ルセンティス(登録商標)(Lucentis); ソリリス(登録商標)(Soliris); シムジア(登録商標)(Cimzia); イラリス(登録商標)(Ilaris); アーゼラ(登録商標)(Arzerra); ベキサール(登録商標)(Bexxar); シンポニー(登録商標)(Simponi); アクテムラ(登録商標)(Actemra); ベンリスタ(登録商標)(Benlysta); アドセトリス(登録商標)(Adcetris); 又はヤーボイ(登録商標)(Yervoy)、並びに他のバイオロジクス。
【0050】
前記方法は、テストタンパク質又は標的タンパク質を分析するため、及び/又はテストタンパク質を標的タンパク質と比較して分析するための何れかのテストタンパク質の一次構造を評価するための分析方法を提供する。前記方法は、100%までのアミノ酸配列のカバー率及び正確性を提供する。
【0051】
実施形態において、変異体を含むことが出来る組換えタンパク質等のテストタンパク質を分析することが出来る。非限定的な代替実施形態において、テストタンパク質は、前記バイオロジックの塩基性及び酸性変異体及び/又は酵素、細胞及び細胞デブリ等の前記バイオロジックの製造の他の副産物から前記バイオロジックを分離するために、HPLC等のカラムクロマトグラフィーによって最初に、任意で精製され得る。前記バイオロジック、その変異体、及び関連する製造副産物は、近接して溶出するタンパク質の高効率、高分解能の分離が可能な陽イオンカラム等のクロマトグラフシステムを経て処理され得る。
【0052】
さらなる非限定的な例において、本開示は、特徴づけのために前記テストタンパク質-モノクローナル抗体(例えば、ONS-3010 前記モノクローナル抗体アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))に対するバイオシミラー)の前記一次構造を同定及び確認するための方法を提供する。
【0053】
本開示の前記一般的な方法に従って、モノクローナル抗体(mAb)等の前記テストタンパク質及び/又は標的タンパク質は、変性され、還元され、アルキル化され、及び10kDa遠心分離フィルターを通してスピンダウンされる。これは、前記テストタンパク質の可溶化による最適な消化及び完全な配列カバー率、前記テストタンパク質の変性、及びジスルフィド結合還元を含む。分離したペプチドは、トリプシン(Try)及びキモトリプシン(Chy)を用いて選択的に断片化される。このペプチド混合物を、独自のプロファイル(ペプチドマップ)を得るために逆相超高速液体クロマトグラフィー(RP-UPLC)システムに注入する。前記ペプチドの前記正確な質量電荷比(m/z)は、高分解能質量分析計でのフルスキャンによって決定される。次いで、前記ペプチドをMS/MSアミノ酸配列分析のためにイオンフラグメントに分解する。前記MS/MSデータを、ペプチド配列を同定するためにアダリムマブのアミノ酸配列に対して、例えば、プロテオームディスカバリーソフトウェアを用いることによって分析することが出来る。リファレンス産物又は標的産物とテストタンパク質の間のアミノ酸配列の前記類似性が、報告される。
【0054】
同定配列を適用して、前記プロテオームディスカバリーソフトウェアは、関連するMS/MSスペクトルを「.raw」ファイルから抽出し、前記前駆体の電荷状態及び前記断片化スペクトルの品質を決定する。SEQUEST検索アルゴリズムは、タンパク質データベースからの理論的MS/MSスペクトルとの比較による実験的MS/MSスペクトルを相関させる。前記プロテオームディスカバリーは、確率に基づくスコアリングシステムを用いて、前記SEQUESTアルゴリズムによって検出されたベストマッチの関連性を評価する。アルゴリズムカラーは、同定された前記対応するペプチド配列の部分を示すためにアミノ酸表をコードする。緑色、黄色及びピンク色は、それぞれ、高い、中程度の、低い信頼性を示す。色が無いことは、前記ペプチドにヒットしないことを意味する。タンパク質結果表示は、予測された断片質量に一致するペプチドMS/MSスペクトルの前記フラグメントイオンを強調表示する。特にこの開示の図2A~2D、4A~4D及び6A~6Dにおいて、高い、中程度の、低い信頼性ヒットは、それぞれ、色の代わりに、実線(_____)、長い破線(-----)、短い破線(……)で示される。
【0055】
特定の実施例において、前記モノクローナル抗体(標的タンパク質、例えばアダリムマブ及び/又は生物学的同等製剤)の2つの別々のアリコートは、水を1.5mLポリプロピレン遠心管に移し、300mgの試料を前記管に加えることにより、≧3.0mg/mLの濃度で調製される。ネガティブコントロール(例えば、製剤緩衝液又はHPLC等級の水)及びポジティブコントロール(例えば、リファレンススタンダード)もまた、リファレンスとして調製される。機器システム適合性コントロールとして使用される前記ペプチド標準混合物は、2.5mLの移動相A(下記参照)を標準混合物の1つのバイアル(Sigma、カタログ番号H2016-1VL)に加えることによって調製された20μg/mLのHPLCペプチド標準混合物である。
【0056】
モノクローナル抗体の各アリコートは、500μLの8NグアニジンHCl(Fisher、カタログ番号24115)、40μLの2.5Mトリスベース(HPLC水に3.03gのトリスベースを加え最終容量を10mLにする)及び20μLの1N HCl(Fisher Scientific、カタログ番号SA48-1又は同等物)の混合物を各管に加えることによって変性される。
【0057】
前記変性タンパク質のジスルフィド結合の破壊を促進する条件下で、ジチオスレイトール(DTT)等の安定化試薬は、前記変性タンパク質の各試料に加えた。その後、前記変性モノクローナル抗体の各試料を、2μLの25mg/mLのジチオスレイトール(DTT)(Bio-Rad、カタログ番号161-0611)(例えば、HPLC等級の水(Fisher Scientific、カタログ番号W5-4)に25mgのDTTを加え最終容量を1.0mLにする)を各試料に加えることによって還元された。前記試料は、別々に約37±2℃で約0.5時間インキュベートされた。
【0058】
前記インキュベーションの終わりに、8μLの200mg/mLのヨウ化酢酸ナトリウム(Sigma、カタログ番号I2512)(例えば、200mgのヨウ化酢酸ナトリウムをHPLC水と混合して最終容量を1mLとする)は、各試料に加えることによって各試料をアルキル化し、その後、前記試料は、暗黒条件下、周辺温度で約15分インキュベートされた。
【0059】
前記アルキル化インキュベーションの終わりに、各試料は、脱塩される。前記脱塩プロセスは、Millipore Biomax-10kDa Ultrafree 0.5遠心分離フィルター各試料を洗浄することを含む。前記フィルターを、最初に10,000rpmで5分間遠心分離した約300μLの炭酸水素アンモニウムを遠心分離することによって濡らす。各試料は、予め濡らしたフィルターの表面に移され、次いで300μLの0.1M炭酸水素アンモニウムで洗浄され、10,000rpmで10分遠心分離される。前記洗浄工程は、2回以上繰り返すことが出来る。前記最終洗浄は、各試料が、約100μLの最終容量となるように10,000rpmで約10~13分の遠心分離を含む。
【0060】
次いで、消化のための時間枠の短縮(例えば、トリプシンについては0.5時間まで、キモトリプシンについては1.5時間まで)を含む最適化されたインキュベーション条件で、トリプシン及びキモトリプシン等の異なるプロテアーゼを試料に加えることによって、脱塩した試料は、酵素的に消化される。前記短縮したインキュベーション時間は、従来のインキュベーション時間(例えば2~4時間さらには18時間まで)よりも短い。前記より短い消化時間は、前記糖タンパク質は、より長い時間の消化によって産生されるより短いペプチドよりも、長いペプチドを含むため、アミノ酸の特異的な誤切断のより多くの実例を提供する。前記消化は、2つの脱塩試料で個別に起こる。すなわち、最初のインキュベート時間(例えば、0.5時間)の経過後にクエンチされるトリプシンを用いて第1の試料を消化し、次いで第2のインキュベーション時間(例えば、1.5時間)の経過後にクエンチされるキモトリプシンを用いて第2の試料を消化する。このキモトリプシンプロテアーゼ消化の使用は、100%の配列カバー率を達成するために軽鎖中の低分子ペプチドEAK及び重鎖中の低分子ペプチドSLRのためのカバー率をサポートする。前記消化の間、前記変性タンパク質のポリペプチド鎖は、前記酵素が前記変性タンパク質中のアミノ酸残基を連結するペプチド結合を分割するにつれてより短い断片に切断される。
【0061】
第1の試料は、トリプシンによるタンパク質消化を受ける。例えば、トリプシン(sequence grade modified、Promega、カタログ番号V5111、20μg)を、20μLの再構成用緩衝液中で再構成することが出来る。15μLの再構成トリプシンは、約1:20のトリプシン対試料の比に達するまで各試料に加えられる。トリプシンを加えた前記サンプルを37℃で0.5時間インキュベートし、次いで5μLの10%ギ酸(v/v) (Thermo、製品番号28905又は同等物、例えば、900μLのHPLC等級の水に100μLのギ酸を加える)は、各サンプルに加えられ、前記第2の消化のための調製物において酵素消化をクエンチする。
【0062】
第2の試料は、キモトリプシンによるタンパク質消化を受ける。例えば、キモトリプシン(Promega Chymotrypsin Sequencing Grade、25 μg、カタログ番号V1062)は、20μLのHPLC等級の水中1mM HCl(Fisher Scientific、カタログ番号SA48-1又は同等物)の再構成緩衝液に再構成され得る。約15μLの再構成キモトリプシンを、約1:16のキモトリプシン対試料の比で各サンプルに加える。キモトリプシンを加えた前記試料を37℃で1.5時間インキュベートし、次に約5μLの10%ギ酸(v/v)を各試料に加えて前記酵素消化をクエンチする。
【0063】
次に、消化されたモノクローナル抗体の試料を、通常条件下で結合する可能性が低いより低分子の鎖ペプチドを含むカラムへの前記ペプチドの吸着を促進する条件下で、分析のためにUPLC-MS/MSを介して別々に実行する。例えば、前記UPLCカラム(Waters BEH300 C18、2.1x100mm、1.7μm、カタログ番号186003555)は、プレカラム(VanGuard、BEH300 C18、2.1x5mm、1.7μm、カタログ番号186003975)を有するHPLCカラムであり得る。試料を、約45℃の温度で約3μg/μLのタンパク質濃度を有する約10μLの容量で前記カラムに注入する。前記試料をロードした後、移動相A(水中0.1% TFA(最適条件LC/MS、Fisher Scientific、カタログ番号LS119))及び移動相B(95%アセトニトリル(ACN)中0.085% TFA (v/v)) (HPLC等級、Fisher Scientific、カタログ番号A-998-4又は同等物)からなる勾配を約400μL/minの流速で前記カラムに通す。前記UPLCシステムパラメータを以下に示す: オートサンプラーは、約4℃; データレート20pts/秒; 1でのPMTゲイン; 210nm及び280nmのPDA波長。
【0064】
前記ペプチドスタンダード混合物のための前記勾配は、以下のように実行される。
【表1】
【0065】
試料のための前記勾配は、以下のように実行される。
【表2】
【0066】
前記試料バッチを、以下のように設定することが出来る。
【表3】
【0067】
アミノ酸配列カバー率検索プロテオームディスカバリー1.3を各UPLCランのデータ解析に用いた。
【0068】
データの受け入れ、記録及びレポートは、正確な質量較正が含まれ、続いてXcaliburの前記ペプチドスタンダードレイアウトをペプチドスタンダード注入に適用した。MSクロマトグラム上のペプチドスタンダード注入の5つのピークを記録し、各ピークRTの%RSDを個別に計算する。選択したペプチドの正確な質量をm/z532で記録し、全ての注入について前記質量の精度を計算する。
【0069】
ペプチドスタンダードレイアウトは以下の通りであった。
【0070】
【数1】
【実施例
【0071】
実施例1: ONS-3010/ONS-1045
ONS-3010(ロット番号X1302-BDS-O)及びONS-1045(ロット番号1407104501)を、前記開示の方法に従って、前記短縮された消化時間(トリプシンについては0.5時間)を実行することによって及びペプチドがカラムに結合する時間を可能にする98分の方法論を用いて質量分析により消化されたペプチドをテストすることによって調製した。88分の方法論を用いて分析したONS-3010及びONS-1045の精製試料を、前記98分の方法論を用いて分析し、結果を88分の方法論を用いて得られた結果と比較した。改善された配列カバー率の概要を表1に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
トリプシン消化ONS-3010重鎖配列カバー率は、95.79%から100%に増加し、トリプシン消化ONS-1045重鎖配列カバー率は、96.91%から100%に増加した。
【0074】
ONS-1045試料番号1407104501及び番号1408104502を、前記98分UPLC法を実施する質量分析を用いて本開示の前記方法に従って分析した。試料を-80℃で凍結し、前記同一移動相を用いるが、前記98分UPLC法を用いて前記同一機器に注入した。この方法は、前記勾配の開始で0.4mL/分の100%移動相Aを10分余計に含む。先行方法では、前記ランの開始時に10分の移動相Aを伴わず88分ランを実施した。再注入の結果によると、前記98分UPLC法は、前記トリプシン消化試料のアミノ酸配列カバー率を増加させた。さらに、前記ペプチドCKは、切断されたペプチドCKVSNKとして検出されたが、前記88分の方法においては不検出であった。
【0075】
前記分析の特異性を評価するために、マトリックス、ポジティブコントロール(ヒュミラ)及びネガティブコントロール(リツキサン)を、特異性を決定するために使用した。マトリックスは標的配列からのヒットを示さなかった。ポジティブコントロールは、前記トリプシン及びキモトリプシン消化試料の分析結果を合わせた後、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の両方でアダリムマブに対して100%の配列カバー率を有した。ネガティブコントロールは、アダリムマブ配列に対するFab領域の配列カバー率を示さなかった。いくつかのペプチドは、異なるIgG1の前記定常領域アミノ酸配列が、同一であるため、ネガティブコントロールにおいて検出された。本明細書の特定の図は、プロテオームディスカバリー又は全イオンクロマトグラフからの何れかの配列カバー率の結果を示す。各試料の前記一般的な配列カバー率を、表2に記載する。
【0076】
【表5】
【0077】
前記分析の再現性を評価するために、各ランにおいてONS-3010リファレンススタンダードを試験し、3ラン繰り返した。前記リファレンススタンダードの前記重鎖及び軽鎖の配列カバー率並びにトリプシン及びキモトリプシン消化からの試料を、表3に記載する。
【0078】
【表6】
【0079】
本開示は、特定の実施形態と関連して上記に記載されるが、上記説明を考慮し、当業者にとって代替、変更、置換及び変形することが容易になる。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲内にある、その代替形態、改変形態及び変形形態の全てを包含することが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
【配列表】
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