IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シダラ セラピューティクス インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図1
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図2
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図3
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図4A
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図4B
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図5
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図6
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図7
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図8
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図9
  • 特許-真菌感染の処置のための投薬レジメン 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】真菌感染の処置のための投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20230213BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230213BHJP
   C07K 7/54 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P31/10
C07K7/54 ZNA
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018548363
(86)(22)【出願日】2017-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 US2017022551
(87)【国際公開番号】W WO2017161016
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】62/309,211
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/350,591
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/415,928
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/418,727
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/419,076
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/436,716
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514235916
【氏名又は名称】シダラ セラピューティクス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーティザル,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ダルワラ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロッケ,ジェフリー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】オング,ブーン
(72)【発明者】
【氏名】サンディソン,テイラー
(72)【発明者】
【氏名】タイ,ダーク
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512392(JP,A)
【文献】Chatterjee, S. et al.,Draft genome of a commonly misdiagnosed multidrug resistant pathogen Candida auris,BMC Genomics,2015年,Vol. 16,686
【文献】Lee, W.G. et al.,First three reported cases nosocomial fungemia caused by Candida auris,Journal of Clinical Microbiology,2011年09月,Vol. 49, No. 9,pp. 3139-3142
【文献】安原 眞人 ほか,基礎から学ぶ臨床薬物動態 臨床薬物動態の基礎知識,臨床薬理,2010年,第41巻,第4号,p.155-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
C07K 7/00- 7/66
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化1】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態のCD101が、前記対象に、前記カンジダ・アウリス感染を処置するのに十分な量及び持続時間で投与される、医薬組成物。
【請求項2】
対象における薬物耐性のカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化2】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態のCD101が、前記対象に、前記薬物耐性のカンジダ・アウリス感染を処置するのに十分な量及び持続時間で投与される、医薬組成物。
【請求項3】
抗真菌療法を用いる処置に失敗したことがある対象におけるカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化3】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態のCD101が、前記対象に、前記カンジダ・アウリス感染を処置するのに十分な量及び持続時間で投与される、医薬組成物。
【請求項4】
前記カンジダ・アウリス感染が、変異型1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体を有する真菌に起因する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
塩又は中性の形態の、150mg~800mgの用量のCD101が、前記対象に静脈内投与され、2回以上の用量が前記対象に1~4週の期間にわたり投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
塩又は中性の形態のCD101が、局所的、膣内、口腔内、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、皮下、経口的、又は吸入により投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
対象におけるカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化4】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態の、550mg~800mgの用量のCD101が、前記対象に静脈内投与され、2回以上の用量が前記対象に1~4週の期間にわたり投与される、医薬組成物。
【請求項8】
対象におけるカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化5】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態の、150mg~800mgの用量のCD101が、前記対象に週当たり1~3回、2~4週間、静脈内投与される、医薬組成物。
【請求項9】
対象におけるカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化6】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態の、150mg~800mgのCD101を含む組成物の2回以上の用量が、前記対象に、静脈内投与される、医薬組成物。
【請求項10】
投与された量が、塩又は中性の形態のCD101の少なくとも変異株出現防止濃度を、対象の血漿中で少なくとも8時間維持する、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記カンジダ・アウリス感染が、エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のカンジダ・アウリス感染である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記カンジダ・アウリス感染が、エキノカンジン耐性の感染である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象が、エキノカンジン療法を用いる処置に失敗したことがある、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象が、アニデュラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンを用いる処置に失敗したことがある、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象が、ポリエン療法、フルシトシン療法、又はアゾール療法を用いる処置に失敗したことがある、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記カンジダ・アウリス感染が、FKS遺伝子中に1つ以上の変異を含む変異型1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体を有するカンジダ・アウリスに起因する、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記カンジダ・アウリス感染が、カンジダ血症、侵襲性カンジダ症、中咽頭カンジダ症、食道カンジダ症、粘膜カンジダ症、性器カンジダ症、外陰カンジダ症、消化管カンジダ症、直腸カンジダ症、肝カンジダ症、腎カンジダ症、肺カンジダ症、脾カンジダ症、外耳道真菌症、骨髄炎、化膿性関節炎、又は心血管系カンジダ症である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のカンジダ・アウリス(Candida auris)の殺菌方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化7】

CD101を含む医薬組成物であって、エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のカンジダ・アウリスが、塩又は中性の形態のCD101に、エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のカンジダ・アウリスを殺菌するのに十分な量及び持続時間で曝露される、医薬組成物。
【請求項19】
対象におけるカンジダ・アウリス(Candida auris)感染の処置方法における使用のための、塩又は中性の形態の、以下の構造:
【化8】

CD101を含む医薬組成物であって、塩又は中性の形態のCD101の少なくとも変異株出現防止濃度を、対象の血漿中で少なくとも8時間維持する投薬レジメンにおいて、塩又は中性の形態の、150mg~800mgのCD101の2回以上の用量が、前記対象に静脈内投与される、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌感染の処置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
カンジダに起因する全身感染は、特に高齢者、術後、重篤疾患、及び深刻な病状を伴う他の入院患者などの非常に脆弱な患者集団において重大な公衆衛生問題に相当する、深刻で生命を脅かす感染である。既存の抗真菌薬に対する耐性が増大しているため、これらの深刻な感染を処置するための、新しく、より効果的な抗真菌剤を開発することが急務である。疾病対策予防センターは、最近、フルコナゾール耐性のカンジダが公衆衛生に対して深刻な脅威を与える可能性があるという警告を発した。しかしながら、2007年以来、カンジダ血症の処置用の新しい抗真菌剤は認可されていない。したがって、カンジダ及び他の真菌感染の新しい処置が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、カンジダ種(Candida spp)の野生型並びにアゾール耐性及びエキノカンジン耐性の菌株に対して優れた活性を有する、広域スペクトルの抗真菌剤であるCD101の投与のための投薬レジメンを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様は、対象における真菌感染の処置方法である。本方法は、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101の第1の用量を静脈内投与する工程、(b)塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101の第2の用量を静脈内投与する工程、及び(c)場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101の第3の用量を静脈内投与する工程からなる。本方法では、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、投与する場合は、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与する。
【0005】
第2の態様は、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、(b)塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、(c)塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び(d)場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することによる、対象における真菌感染の処置方法である。本方法では、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与し、投与する場合は、第4の用量を第21日~第23日の間(例えば、第22日)に投与する。
【0006】
第2の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第28日~第30日の間(例えば、第29日)に投与する。更なる実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第35日~第37日の間(例えば、第36日)に投与する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の用量は、塩又は中性の形態の400mgのCD101であり、第2及び第3の用量は、それぞれ塩又は中性の形態の200mgのCD101である。
【0008】
第3の態様は、対象における真菌感染の処置方法である。本方法は、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101の第1の用量を静脈内投与する工程、(b)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101の第2の用量を静脈内投与する工程、及び(c)場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101の第3の用量を静脈内投与する工程からなる。本方法では、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、投与する場合は、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与する。
【0009】
第4の態様は、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、(b)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、(c)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び(d)場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することによる、対象における真菌感染の処置方法である。本方法では、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与し、投与する場合は、第4の用量を第21日~第23日の間(例えば、第22日)に投与する。
【0010】
第4の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第28日~第30日の間(例えば、第29日)に投与する。更なる実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第35日~第37日の間(例えば、第36日)に投与する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3の用量は、それぞれ、400mgのCD101又はそれらの塩若しくは中性の形態である。
【0012】
いくつかの実施形態では、当技術分野で公知の標準的試験により決定されるように、菌類根絶、臨床徴候及び症状における改善、並びに/又は臨床的治癒が達成されるまで、塩又は中性の形態のCD101を投与する。いくつかの実施形態では、菌類根絶は、1つの陰性血液培養と定義される。いくつかの実施形態では、菌類根絶は、陽性血液培養を介在することなく且つ真菌感染の抗真菌療法に変化がない、≧12時間離れた2つの陰性血液培養と定義される。
【0013】
いくつかの実施形態では、医師により決定されるように、対象が発熱、咳、息切れ、体重減少、寝汗、頻脈、頻呼吸、低血圧、及び/又は低体温などの真菌感染の症状がなくなるまで、塩又は中性の形態のCD101を投与する。
【0014】
第1及び態様のいくつかの実施形態では、第15日に対象において菌類根絶及び/又は臨床的治癒が達成されなかった場合、塩又は中性の形態の、200±25mg(例えば、200mg)のCD101を含む第3の用量を投与する。第1及び第2の態様の他の実施形態では、対象において菌類根絶及び/又は臨床的治癒が達成された場合、塩又は中性の形態の、200±25mg(例えば、200mg)のCD101を含む第3の用量を投与しない。第1及び第2の態様の他の実施形態では、第15日に対象が真菌感染の症状を示す場合、塩又は中性の形態の、200±25mg(例えば、200mg)のCD101を含む第3の用量を投与する。
【0015】
第3及び第4の態様のいくつかの実施形態では、第15日に対象において菌類根絶及び/又は臨床的治癒が達成されなかった場合、塩又は中性の形態の、400±25mg(例えば、400mg)のCD101を含む第3の用量を投与する。第3及び第4の態様の他の実施形態では、第15日に対象において菌類根絶及び/又は臨床的治癒が達成された場合、塩又は中性の形態の、400±25mg(例えば、400mg)のCD101を含む第3の用量を投与しない。第3及び第4の態様の他の実施形態では、第15日に対象が真菌感染の症状を示す場合、塩又は中性の形態の、400±25mg(例えば、400mg)のCD101を含む第3の用量を投与する。
【0016】
いくつかの実施形態では、菌類根絶は、1つの陰性血液培養により決定される。いくつかの実施形態では、菌類根絶は、陽性血液培養を介在することなく、≧12時間離れた2つの陰性血液培養により決定される。
【0017】
いくつかの実施形態では、真菌感染の症状は、発熱、咳、息切れ、体重減少、寝汗、頻脈、頻呼吸、低血圧、及び/又は低体温を含む。
【0018】
第1から第4の他の実施形態では、真菌感染は、カンジダ感染(例えば、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.デュブリニエンシス(C.dubliniensis)、C.クルセイ(C.krusei)、C.パラプローシス(C.parapsilosis)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.オルトプシロシス(C.orthopsilosis)、C.ギリエルモンジィ(C.guilliermondii)、C.ルゴサ(C.rugosa)、C.アウリス(C.auris)、C.ルシタニアエ(C.lusitaniae)、又は他のカンジダ種の感染)である。カンジダ感染として、カンジダ血症、侵襲性カンジダ症、中咽頭カンジダ症、食道カンジダ症、粘膜カンジダ症、性器カンジダ症、外陰カンジダ症、消化管カンジダ症、直腸カンジダ症、肝カンジダ症、腎カンジダ症、肺カンジダ症、脾カンジダ症、外耳道真菌症、骨髄炎、化膿性関節炎、及び心血管系カンジダ症が挙げられる。いくつかの実施形態では、心血管系カンジダ症は、心内膜炎である。いくつかの実施形態では、粘膜カンジダ症は、眼球カンジダ症、耳カンジダ症、又は口カンジダ症である。
【0019】
第5の態様では、本発明は、対象へのCD101の投与方法であって、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、(b)塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、及び(c)場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与することからなり、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、投与する場合は、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与する、方法を特徴とする。
【0020】
第5の態様のいくつかの実施形態では、第1の用量は、塩又は中性の形態の400mgのCD101であり、第2及び第3の用量は、それぞれ塩又は中性の形態の200mgのCD101である。第6の態様では、本発明は、対象へのCD101の投与方法であって、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、(b)塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、(c)塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び(d)場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することからなり、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与し、投与する場合は、第4の用量を第21日~第23日の間(例えば、第22日)に投与する、方法を特徴とする。
【0021】
第6の態様のいくつかの実施形態では、第1の用量は、塩又は中性の形態の400mgのCD101であり、第2、第3及び第4の用量は、それぞれ塩又は中性の形態の200mgのCD101である。
【0022】
第6の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第28日~第30日の間(例えば、第29日)に投与する。更なる実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、200±25mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第35日~第37日の間(例えば、第36日)に投与する。
【0023】
第7の態様では、本発明は、対象へのCD101の投与方法を特徴とし、本方法は、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、(b)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、及び(c)場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与することからなり、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、投与する場合は、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与する。
【0024】
第7の態様のいくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3の用量は、それぞれ、400mgのCD101又はそれらの塩若しくは中性の形態である。
【0025】
第8の態様では、本発明は、対象へのCD101の投与方法であって、(a)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、(b)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、(c)塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び(d)場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することからなり、第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第7日~第9日の間(例えば、第8日)に投与し、第3の用量を第14日~第16日の間(例えば、第15日)に投与し、投与する場合は、第4の用量を第21日~第23日の間(例えば、第22日)に投与する、方法を特徴とする。
【0026】
第8の態様のいくつかの実施形態では、第1、第2、第3及び第4の用量は、それぞれ、400mgのCD101又はそれらの塩若しくは中性の形態である。
【0027】
第8の態様のいくつかの実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第28日~第30日の間(例えば、第29日)に投与する。更なる実施形態では、本方法は、場合によって、塩又は中性の形態の、400±25mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第35日~第37日の間(例えば、第36日)に投与する。
【0028】
任意の上記態様の実施形態では、塩又は中性の形態のCD101を、30~180分の時間にわたり(例えば、30±5分、60±5分、90±5分、120±5分、150±5分、180±5分、30±10分、60±10分、90±10分、120±10分、150±10分、又は180±10分にわたり)投与する。
【0029】
任意の上記態様の実施形態では、塩又は中性の形態のCD101を、水性医薬組成物(例えば、4.0~8のpHを有する医薬組成物)として投与する。
【0030】
任意の上記態様では、CD101塩はCD101酢酸塩である。
【0031】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、塩又は中性の形態のCD101を、2~12用量(例えば、2~3用量)投与する。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「静脈内投与」又は「静脈内に投与すること」とは、対象への薬物の静脈内のボーラス注入又は輸注を表す。
【0033】
「十分量」により、薬物の経口生物学的利用能を増加させるのに必要とされる添加剤の量を意味する。
【0034】
「真菌感染」により、病原性真菌による宿主への侵入を意味する。例えば、感染は、ヒトの身体内若しくは身体上に通常存在する真菌の過剰増殖又はヒトの内若しくは上に通常存在しない真菌の増殖を含み得る。より一般に、真菌感染は、真菌集団(複数可)の存在が、宿主身体に損傷を与える任意の状況であり得る。したがって、過剰量の真菌集団が個人の身体内若しくは身体上に存在するとき、又は真菌集団(複数可)の存在が個人の細胞若しくは他の組織に損傷を与えているとき、ヒトは真菌感染に「罹患」している。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「薬物耐性の真菌感染」とは、例えば、抗真菌薬のような薬物を用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1つ以上の抗真菌薬を用いる処置に対して耐性がある(例えば、抗真菌薬耐性の真菌株(例えば、抗真菌薬耐性のカンジダ種株))。抗真菌薬として、エキノカンジン、ポリエン化合物、フルシトシン、及びアゾール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。真菌感染は、例えば、カンジダ(例えば、C.アルビカンス、C.グラブラタ、及びC.アウリス)又はアスペルギルス(Aspergillus)(例えば、A.フミガタス(fumigatus))属の真菌に起因し得る。いくつかの実施形態では、真菌感染はまた、皮膚糸状菌感染でもあり得る。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「エキノカンジン耐性の真菌感染」とは、エキノカンジンを用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1種以上のエキノカンジンを用いる処置に対して耐性がある。1種以上のエキノカンジンは、1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体の阻害により、細胞壁中のグルカンの合成を阻害する環状リポペプチドである。用語「エキノカンジン耐性の真菌感染」で表される1種以上のエキノカンジンは、ミカファンギン、カスポファンギン、及びアニデュラファンギンを含むが、CD101又はその塩若しくは中性の形態を含まない。したがって、本発明の方法を使用して、CD101又はその塩若しくは中性の形態は、ミカファンギン耐性、カスポファンギン耐性、及び/又はアニデュラファンギン耐性の真菌感染を処置するために使用され得る。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリエン耐性の真菌感染」とは、ポリエン化合物を用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1種以上のポリエン化合物を用いる処置に対して耐性がある。ポリエン化合物は、真菌膜中に入り込み、真菌膜中のエルゴステロール及び構造的に関連するステロールに結合し、膜構造の完全性を破壊する化合物であり、したがって感染を起こす真菌から細胞成分の漏出を起こす。ポリエン化合物は、典型的には、3個~8個の共役炭素-炭素二重結合を有する大きいラクトン環を含み、且つ糖部分及び芳香族部分も含有し得る。ポリエン化合物の例として、67-121-A、67-121-C、アンホテリシンB、アレノモブシン(arenomvcin)B、オーレニン(aurenin)、オーレファンギン(aureofungin)A、オーレオタスチン(aureotuscin)、カンジジン(candidin)、チニン(chinin)、デメトキシラパマイシン、デルモスタチン(dermostatin)A、デルモスタチンB、DJ-400-B1、DJ-400-B2、エリザベシン(elizabethin)、ユーロシジン(eurocidin)A、ユーロシジンB、フィリピンI、フィリピンII、フィリピンIII、フィリピンIV、ファンギクロミン(fungichromin)、ガンニバマイシン(gannibamycin)、ハマイシン、レボリンA2、リエノマイシン(lienomycin)、ルセンソマイシン、マイコヘプチン(mycoheptin)、マイコチシン(mycoticin)A、マイコチシンB、ナタマイシン、ニスタチンA、ニスタチンA3、パートリシン(partricin)A、パートリシンB、ペリマイシン(perimycin)A、ピマリシン、ポリファンギン(polifungin)B、ラパマイシン、レクチラベンドモブシン(rectilavendomvcin)、リモシジン(rimocidin)、ロフラマイコイン(roflamycoin)、テトラマイシン(tetramycin)A、テトラマイシンB、テトリン(tetrin)A、及びテトリンBが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「フルシトシン耐性の真菌感染」とは、合成抗真菌薬フルシトシンを用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す。フルシトシンの商品名は、Ancobon(登録商標)である。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「アゾール耐性の真菌感染」とは、アゾール化合物を用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1種以上のアゾール化合物を用いる処置に対して耐性がある。用語「アゾール耐性の真菌感染」中で表されるアゾール化合物は、少なくとも1個のN及びN、O、又はSから選択される1個以上のヘテロ原子を有する5員複素環である、アゾール基を含有する抗真菌化合物である。抗真菌アゾール化合物は、酵素14α-デメチラーゼに結合し、その自然の機能を破壊、阻害、及び/又は防止することにより機能する。酵素14α-デメチラーゼは、ラノステロールが、真菌細胞壁中の必須成分であるエルゴステロールに変換される前に、C-14α-メチル基のラノステロールからの除去を触媒する、チトクロームP450酵素である。したがって、14α-デメチラーゼを阻害することにより、エルゴステロールの合成が阻害される。アゾール化合物の例として、VT-1161、VT-1598、フルコナゾール、アルバコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エフィナコナゾール、フェンチコナゾール、イサブコナゾール、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、ポサコナゾール、プラミコナゾール、ラブコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、及びボリコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「抗真菌療法」とは、抗真菌薬を使用する真菌感染の処置を表す。抗真菌療法で使用される抗真菌薬として、エキノカンジン、ポリエン化合物、フルシトシン、アゾール化合物、エンフマファンジン(enfumafungin)、及びSCY-078、APX001が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるように、本発明の態様は、抗真菌療法を用いる処置に失敗したことがある対象における、真菌感染の処置方法である。本発明の態様における抗真菌療法で使用される抗真菌薬は、CD101又はその塩若しくは中性の形態を含まない。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「エキノカンジン療法」とは、エキノカンジン(ミカファンギン、カスポファンギン、及びアニデュラファンギンなどであるが、化合物1の塩又はその中性形態ではない)を使用する真菌感染に対する処置を表す。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、エキノカンジン療法を用いる処置に失敗したことがある対象は、真菌感染を処置するために、化合物1の塩又はその中性形態を投与され得る。いくつかの実施形態では、真菌感染を有する対象は、真菌感染がエキノカンジン療法を用いる処置に失敗したことがある場合、CD101又はその塩若しくは中性の形態を投与され得る。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリエン療法」とは、ポリエン化合物を使用する真菌感染に対する処置を表す。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、ポリエン療法を用いる処置に失敗したことがある対象は、真菌感染を処置するためにCD101又はその塩若しくは中性の形態を投与され得る。いくつかの実施形態では、真菌感染を有する対象は、真菌感染がポリエン療法を用いる処置に失敗したことがある場合、CD101又はその塩若しくは中性の形態を投与され得る。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「アゾール療法」とは、アゾール化合物を使用する真菌感染に対する処置を表す。抗真菌アゾール化合物の例として、VT-1161、VT-1598、フルコナゾール、アルバコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エフィナコナゾール、フェンチコナゾール、イサブコナゾール、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、ポサコナゾール、プラミコナゾール、ラブコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、及びボリコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、アゾール療法を用いる処置に失敗したことがある対象は、真菌感染を処置するためにCD101又はその塩若しくは中性の形態を投与され得る。いくつかの実施形態では、真菌感染を有する対象は、真菌感染がアゾール療法を用いる処置に失敗したことがある場合、CD101又はその塩若しくは中性の形態を投与され得る。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体」とは、真菌細胞壁中の必須成分であるf1,3-β-D-グルカンの合成を担う、マルチサブユニット酵素複合体を表す。変異型1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体とは、酵素複合体の1つ以上のサブユニット中に1つ以上の変異を有する1,3-β-D-グルカンシンターゼ複合体を表す。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体の触媒サブユニットをコードする、FKS遺伝子(FKS1、FKS2、FKS3)中にある。
【0045】
「有効」量により、感染又は感染に関連する疾患を処置又は防止するために必要とされる薬物量を意味する。微生物感染に起因するか又はそれが寄与する状態の治療的又は予防的な処置用に、本明細書に記載される方法を実践するために使用される薬物の有効量は、投与の仕方、対象の年齢、体重、及び総体的な健康状態に応じて変わる。最終的に、担当医師が適切な量及び投薬量レジメンを決定する。そのような量が「有効」量と表される。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「CD101塩」とは、式1の化合物の塩を表す。CD101は(以下の)構造を有し、CD101の第3級アンモニウムイオンの正電荷は、その塩の形態における負の対イオン(例えば、酢酸イオン)と釣り合っている。
【0047】
【化1】
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「CD101中性形態」は、式1の化合物が正味の正電荷又は負電荷を持たない、CD101の双性イオン性形態を含む。双性イオンは、CD101又はCD101の塩と比較して、塩基性媒体(例えば、pH9)中により高い割合で存在する。いくつかの実施形態では、双性イオンはまた、その塩形態中にも存在し得る。
【0049】
本明細書で使用されるとき、用語「塩」とは、医薬品産業で一般的に使用される、無毒の酸付加塩、金属塩、又は金属錯体などの任意の薬学的に許容される塩を表す。酸付加塩の例として、酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、コール酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、グルタル酸、グルクロン酸、グリセリン酸、グリココール酸、グリオキシル酸、イソクエン酸、イソ吉草酸、乳酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、プロピオン酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸などの有機酸、並びに塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属の塩は、数ある中でも特にナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムを含む。
【0050】
本明細書で使用されるとき、各用量における量とは、CD101がその塩形態にある場合、負の対イオン(例えば、酢酸イオン)を含まないCD101(上に示す式1)の量を表す。
【0051】
「用量」により、対象に投与されるCD101の量を意味する。
【0052】
「対象」又は「患者」により、ヒトを意味する。
【0053】
「臨床的治癒」により、ベースラインで存在した、カンジダ血症及び/又は侵襲性カンジダ症の大部分又は全ての臨床徴候及び症状の完全回復を意味し、且つカンジダ血症及び/又は侵襲性カンジダ症に起因し得る新しい徴候/症状又は合併症がないことを意味する。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「処置すること」とは、予防的及び/又は治療的な目的で医薬組成物を投与することを意味する。「疾患を防止する」こととは、まだ病気ではないが、特定の疾患に感受性であるか、又はそうでなければ特定の疾患のリスクがある対象の予防的処置を表す。「疾患を処置する」こと又は「治療的処置」の使用とは、既に疾患に罹患している対象に、対象の状態を改善又は安定化するために処置を施すことを表す。したがって、特許請求の範囲及び実施形態において、治療的又は予防的のいずれかの目的で対象に処置が施される。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「変異株出現防止濃度」又は「MPC」とは、極めて希少な自然発生的な変異株を除く、全ての変異株の発現を抑制するのに十分な薬物の濃度を表す。MICとMPCの間の薬物濃度範囲は、変異株選択濃度域を表し、そこでは新たな変異株が最も発生しやすい。MPCを超える薬物濃度の持続時間を最大化する治療的レジメンは、それによって治療経過中の耐性発現の可能性を最小化する。
【0056】
インビボの耐性株の選択は、MIC値とMPC値の間に位置する薬物濃度の範囲にわたり優勢に起きる。MPCを超える血漿中薬物濃度をもたらす投薬パラダイムは、したがって、治療期間中の新たな変異株の発現の防止において、より望ましく且つ効果的である(例えば、Drlicaら、J. Antimicrob. Chemother. 52:11-17、2003を参照されたい)。カスポファンギン、ミカファンギン、及びアニデュラファンギンに関する現在認可されている処置レジメンは、Cmaxが、処置中のいかなる時点でもMPCと同等又はMPCを超えることのないようなレベルにおける1日1回の投薬を含む。C.アルビカンス及びC.グラブラタに対してCD101に関して決定されたMPCは、16μg/mlであった(実施例2を参照されたい)。インビボ薬物動態データに基づくCD101合計血漿中濃度のモデル化により、本発明者らは、C101≧150mgのIV投与が、16μg/mlを超える濃度を生み出すのに十分であることを算出することができる。他の菌株及び/又は真菌種に関して、血漿中変異株出現防止濃度を作り出す投薬レジメンは、血漿中濃度が20μg/ml、24μg/ml、30μg/ml、又は36μg/mlを超え、CD101又はその塩若しくは中性の形態が、MPCを超えるレベルで投薬される可能性を有するレジメンであり、したがって既存の認可されたエキノカンジン処置レジメンより強い変異株出現防止能力を有し得る。
【0057】
操作例以外で、又は特に明記されない限り、本明細書で使用される成分の量又は反応条件を表現する全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されることを理解されたい。本明細書で使用されるとき、用語「約」は、±5%の偏差を示す。
【0058】
本発明の他の特色及び利点は、以下の発明を実施するための形態、図面、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】2種のCD101投薬レジメンに関するPK-PD目標到達を示す、週及び最小発育阻止濃度(MIC)により層別された棒グラフである。
図2】種々の接種密度のアゾール耐性のC.アルビカンス株R357に感染したマウスにおける、腎臓負荷を示す棒グラフである。
図3】C.アルビカンスR357感染モデルにおけるCD101、アンホテリシンB、及びフルコナゾールの有効性を評価するために使用された実験的プロトコルの概略を示す図である。
図4A】アゾール耐性のC.アルビカンス株R357に感染したマウスにおける腎臓負荷に関する、CD101、アンホテリシンB(AM-B)、及びフルコナゾール(FLU)の効果を示す棒グラフである。
図4B】アゾール耐性のC.アルビカンス株R357に感染したマウスにおける腎臓負荷に関する、CD101、アンホテリシンB(AM-B)、及びフルコナゾール(FLU)の効果を示す棒グラフである。
図5】用量1mg/kg、4mg/kg、及び16mg/kgにわたるCD101のPKを示す散布図である。
図6】種々の分割スケジュールにおけるCD101の種々の合計用量に対する真菌密度(log10CFU)の正味変化を示す散布図である。
図7】種々の分割スケジュールにおけるCD101の2mg/kgの合計用量により起きる、ベースラインからの真菌密度(log10CFU)減少の変化を示す棒グラフである。
図8】分割したCD101の2mg/kgレジメンに関する、MICと比較した遊離薬物濃度時間プロファイルのシミュレーションを示す線グラフである。
図9】アスペルギルスフミガタスに感染し、2mg/kgのCD101(IV又はIP)を用いて処置されたマウスにおける経時的な生存百分率を示すグラフである。
図10】カンジダアウリス臨床分離株に対する様々な抗真菌剤の活性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
塩又は中性の形態の水性組成物として配合されたCD101の点滴静注を対象に施すことによる、それを必要とする対象における真菌感染の処置方法を提供する。
【0061】
CD101
CD101は、酵母型のカンジダ種の真菌細胞壁の必須成分である1,3-β-D-グルカンの合成及びアスペルギルス菌糸の活性細胞増殖領域を阻害する、半合成のエキノカンジンである。1,3-β-D-グルカンの合成は、触媒サブユニットがFKS1、FKS2、及びFKS3遺伝子によりコードされる酵素複合体である、1,3-β-D-グルカンシンターゼの活性に依存する。この酵素の阻害により、カンジダ種に対する迅速で、濃度依存性の、殺真菌活性がもたらされる。CD101の構造は上に示す。
【0062】
治療
本明細書に記載される処置レジメン及び医薬組成物は、真菌感染を処置又は防止するために使用され得る。
【0063】
処置される真菌感染は、頭部白癬、体部白癬、足部白癬、爪真菌症、爪囲真菌症(perionychomycosis)、癜風、鵞口瘡、腟カンジダ症、気道カンジダ症(respiratory tract candidiasis)、胆管カンジダ症(biliary candidiasi)、食道カンジダ症、尿路カンジダ症(urinary tract candidiasis)、全身性カンジダ症、粘膜皮膚カンジダ症、ムコール症、パラコクシジオイデス症、北アメリカブラストミセス症、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス症、スポロトリクム症、真菌性副鼻腔炎、又は慢性副鼻腔炎から選択される感染であり得る。例えば、処置される感染は、カンジダ種(例えば、C.アルビカンス、C.グラブラタ、C.デュブリニエンシス、C.クルセイ、C.パラプローシス、C.トロピカリス、C.オルトプシロシス、C.ギリエルモンジィ、C.ルゴサ、C.アウリス、C.ルシタニアエ、又は他のカンジダ種)による感染であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、真菌感染は、抗真菌薬を用いる処置に対して抵抗性である真菌感染である、抗真菌薬耐性の真菌感染であり得る。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1つ以上の抗真菌薬を用いる処置に対して耐性がある(例えば、抗真菌薬耐性の真菌株(例えば、抗真菌薬耐性のカンジダ種株))。抗真菌薬として、アゾール化合物、エキノカンジン、ポリエン化合物、及びフルシトシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
例えば、エキノカンジン耐性の真菌感染とは、エキノカンジンを用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1種以上のエキノカンジンを用いる処置に対して耐性がある。1種以上のエキノカンジンは、1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体の阻害により、細胞壁中のグルカンの合成を阻害する環状リポペプチドである。用語「エキノカンジン耐性の真菌感染」で表される1種以上のエキノカンジンは、ミカファンギン、カスポファンギン、及びアニデュラファンギンを含むが、塩又は中性の形態のCD101を含まない。したがって、本発明の方法を使用して、塩又は中性の形態のCD101は、ミカファンギン耐性、カスポファンギン耐性、及び/又はアニデュラファンギン耐性の真菌感染を処置するために使用され得る。
【0066】
抗真菌薬耐性の真菌感染はまた、アゾール化合物を用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す、アゾール耐性の真菌感染でもあり得る。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1種以上のアゾール化合物を用いる処置に対して耐性がある。用語「アゾール耐性の真菌感染」中で表されるアゾール化合物は、少なくとも1個のN及びN、O、又はSから選択される1個以上のヘテロ原子を有する5員複素環である、アゾール基を含有する抗真菌化合物である。抗真菌アゾール化合物は、酵素14α-デメチラーゼに結合し、その自然の機能を破壊、阻害、及び/又は防止することにより機能する。酵素14α-デメチラーゼは、ラノステロールが、真菌細胞壁中の主要成分であるエルゴステロールに変換される前に、C-14α-メチル基のラノステロールからの除去を触媒する、チトクロームP450酵素である。したがって、14α-デメチラーゼを阻害することにより、エルゴステロールの合成が阻害される。アゾール化合物の例として、VT-1161、VT-1598、フルコナゾール、アルバコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エフィナコナゾール、フェンチコナゾール、イサブコナゾール、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、ポサコナゾール、プラミコナゾール、ラブコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、及びボリコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
抗真菌薬耐性の真菌感染はまた、ポリエン化合物を用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す、ポリエン耐性の真菌感染でもあり得る。そのような感染では、感染を起こす真菌は、1種以上のポリエン化合物を用いる処置に対して耐性がある。ポリエン化合物は、真菌膜中に入り込み、真菌膜中のエルゴステロール及び構造的に関連するステロールに結合し、膜構造の完全性を破壊する化合物であり、したがって感染を起こす真菌から細胞成分の漏出を起こす。ポリエン化合物は、典型的には、3個~8個の共役炭素-炭素二重結合を有する大きいラクトン環を含み、且つ糖部分及び芳香族部分も含有し得る。ポリエン化合物の例として、67-121-A、67-121-C、アンホテリシンB、アレノモブシンB、オーレニン、オーレファンギンA、オーレオタスチン、カンジジン、チニン、デメトキシラパマイシン、デルモスタチンA、デルモスタチンB、DJ-400-B1、DJ-400-B2、エリザベシン、ユーロシジンA、ユーロシジンB、フィリピンI、フィリピンII、フィリピンIII、フィリピンIV、ファンギクロミン、ガンニバマイシン、ハマイシン、レボリンA2、リエノマイシン、ルセンソマイシン、マイコヘプチン、マイコチシンA、マイコチシンB、ナタマイシン、ニスタチンA、ニスタチンA3、パートリシンA、パートリシンB、ペリマイシンA、ピマリシン、ポリファンギンB、ラパマイシン、レクチラベンドモブシン、リモシジン、ロフラマイコイン、テトラマイシンA、テトラマイシンB、テトリンA、及びテトリンBが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
抗真菌薬耐性の真菌感染はまた、合成抗真菌薬フルシトシンを用いる処置に対して抵抗性である真菌感染を表す、フルシトシン耐性の真菌感染でもあり得る。フルシトシンの商品名は、Ancobon(登録商標)である。
【0069】
カンジダ感染は、抗真菌薬耐性株のC.アルビカンス、C.パラプローシス、C.グラブラタ、C.ギリエルモンジィ、C.クルセイ、C.ルシタニアエ、C.アウリス、C.トロピカリス、又は他のカンジダ種などのカンジダ属における抗真菌薬耐性の真菌株に起因し得る。いくつかの実施形態では、カンジダ感染は、アゾール耐性株のC.アルビカンス、C.パラプローシス、C.グラブラタ、C.ギリエルモンジィ、C.クルセイ、C.ルシタニアエ、C.アウリス、C.トロピカリス、又は他のカンジダ種などのカンジダ属におけるアゾール耐性の真菌株に起因し得る。いくつかの実施形態では、アゾール耐性の真菌株は、カンジダアルビカンス、例えば、C.アルビカンスR357株である。アゾール耐性のC.アルビカンスR357株は、遺伝子ERG11に変異を含有する(例えば、C.アルビカンスERG11(CaERG11))。CaERG11遺伝子は、アゾール抗真菌化合物の標的である、酵素14α-デメチラーゼをコードする。アミノ酸置換をもたらすCaERG11遺伝子における変異は、14α-デメチラーゼに結合し、それを阻害するアゾール化合物の能力を変化させ、したがって結果的に耐性をもたらす。いくつかの実施形態では、アゾール耐性のC.アルビカンスR357株は、CaERG11発現の増加を有し、野生型株と比較して、例えば2~15倍(例えば、3~15、4~15、5~15、6~15、7~15、8~15、9~15、10~15、11~15、12~15、13~15、又は14~15倍)の発現の増加を有する。いくつかの実施形態では、アゾール耐性のC.アルビカンスR357株は、CaERG11遺伝子に1つ以上の変異を有し、これは1つ以上のアミノ酸置換、例えば、D116E、D153E、及び/又はE266Dに至る。いくつかの実施形態では、アゾール耐性のカンジダアルビカンスR357株は、CDR1又はMDR1発現において有意な変化を示さない。表1は、3種のアゾール化合物、アンホテリシンB、カスポファンギン、及びCD101の、アゾール耐性のC.アルビカンスR357株に対する阻害百分率及びMIC値、並びにC.アルビカンスR357株の、列挙した化合物に対するCLSI(臨床及び実験室規格学会(Clinical and Laboratory Standards Institute))による分類としての感受性ステータス(S:感受性、R:耐性)を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
本明細書に記載される処置レジメン及び医薬組成物により処置又は防止され得るC.アウリスの臨床分離株は、実施例の節(例えば、実施例9)に記載され、並びにLeeら、J Clin Microbiol. 49:3139-42、2011年、Kathuriaら、J Clin Microbiol. 53:1823-30、2015年、及びVallabhaneniら、MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 65:1234-1237、2016年にも記載され、これらのそれぞれは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、Kathuriaの図2には、表2に示されるC.アウリスの臨床分離株が記載されている。
【0072】
【表2】
【0073】
本明細書に記載される処置レジメン及び医薬組成物は、それを必要とする対象における真菌感染を防止するために施され得る。例えば、対象は、侵襲的な医療手順(例えば、移植、幹細胞治療、グラフト、プロテーゼを受けるなどの手術の準備をすること、長期若しくは頻回の静脈内カテーテル法を受けること、又は集中治療室における処置を受けること)の準備をする一方で、免疫無防備状態の対象(例えば、癌を有する、HIV/AIDSを有する、若しくは免疫抑制薬を受けている対象)において、又は長期抗生物質療法を受けている対象において、予防的処置を受けることができる。あるいは、本明細書に記載される処置レジメン及び医薬組成物は、対象における血液感染又は臓器感染(例えば、肺感染、腎感染、若しくは肝感染)を処置するために施され得る。
【0074】
以下の実施例は、本明細書に特許請求された方法及び化合物が、いかに実施され、作製され、且つ評価されたかという完全な開示及び記載を当業者に提供するために提示され、本発明の単なる例示であることを意図し、限定することを意図するものではない。
【実施例
【0075】
[実施例1]
健康な成人対象へのCD101投与
臨床研究により、CD101が、400mgまでの単回用量及び400mgまでの複数回用量として、安全であり、且つ良好な耐容性を有することが示された。
【0076】
第1の研究では、CD101を、IV注入により健康な成人対象に投与した。本研究では、8名の対象(活性薬6名、プラセボ2名)の4コホートにおける対象はそれぞれ、単回IV用量のCD101又はプラセボ(生理食塩水)を60(±5)分間にわたり輸注されるよう無作為化された。評定されるCD101の用量レベルは、漸増単回用量レジメン(50、100、200、又は400mg)に従う。
【0077】
合計32名の対象を無作為化し、31名の対象が全研究評定を完了した。1名の対象は、安全性又は耐容性とは無関係の個人的理由から、時期を早めて中止した。対象は、主として、白人(97%)、ヒスパニック系(94%)であり、男性及び女性をほぼ均等とした(それぞれ、53%及び47%)。重篤有害事象(SAE)、重度の有害事象(AE)、又は全般的なAEに関する用量-応答関係はなかった。AEの大多数は軽度であり、全てのAEは研究の最後までに完全に消散した。臨床的に有意な血液学的に生じた薬物関連AE又は臨床化学的な検査所見の異常はいかなる用量においてもなかった。加えて、心電図(ECG)、バイタルサイン、又は理学的検査所見に関する安全性の問題はなかった。
【0078】
IV注入により健康な成人対象に投与されるCD101の第2の研究もまた実施された。本研究では、8名の対象(活性薬6名、プラセボ2名)の3コホートにおける対象はそれぞれ、複数回IV投薬のCD101又はプラセボ(生理食塩水)を60(±5)分間にわたり輸注されるよう無作為化された。評定されるCD101の用量レベルは、漸増複数回投薬レジメン(100mg×2用量、200mg×2用量、又は400mg×3用量)に従う。
【0079】
合計24名の対象を無作為化し、全ての対象が研究を完了した。対象は、主として、白人(88%)、ヒスパニック系又はラテンアメリカ系(88%)であり、27.208kg/m2の平均肥満度指数(BMI)及び42.8歳の平均年齢を有した。男性及び女性は均等とした(それぞれ50%)。SAE又は重度のAEはなかった。AEの大多数は軽度であり、全ての関連AEは研究の最後までに完全に消散した。CD101群の4名の対象は、潮紅、温熱感、悪心、及び胸部絞扼感を特徴とする軽度で一過性の輸注反応を経験した。これらの輸注反応は、主として400mg用量のコホートに関連し、第3の用量に最も共通した。これらの反応は、輸注開始の数分内に起こり、研究薬の輸注の中断又は中止を伴うことなく数分内に消失した。臨床的に有意な血液学的に生じた薬物関連AE又は臨床化学的な検査所見の異常はいかなる用量においてもなかった。加えて、ECG、バイタルサイン、又は理学的検査所見に関する安全性の問題はなかった。
【0080】
[実施例2]
CD101の臨床薬理学
以下に記載のように、CD101の薬物動態は、3週間にわたる400mgまでの用量で健康な対象において、十分に特徴付けられた。
【0081】
単回漸増投薬の薬物動態
単回用量の研究薬を投与した後の様々な時点において、各コホートにおいてCD101を受けた対象から得た血漿及び尿の試料を、CD101濃度に関して分析することにより薬物動態を最初に決定した。
【0082】
CD101の血漿PKは、一般に、50、100、200、及び400mgのCD101用量に従い、十分に特徴付けられた。CD101に対する曝露は、CD101用量の増加につれて増加した(表3)。Cmax到達時間(すなわち、Tmax)が、輸注の最後に、予期されたように、全用量の輸注開始後およそ1時間において観察された。CD101の除去は、多相性であると思われる。AUC及びCmaxは、用量に比例して増加し、全身クリアランスは、血漿採取の第1週を通して>80時間のt1/2値を有して、用量レベルの全体にわたり同様であった(より後の採取時間からのデータを組み込むと、127~146時間というより長い終末相t1/2が算出される)。全身クリアランスは、CD101用量にわたりおよそ4mL/分であり、調査された用量にわたりCD101に関して直線的動態を示した。分布容積(Vz及びVss)は33~48Lの範囲であった。尿中に排出された用量画分は、全ての用量レベルにおいて<1%であり、CD101排出における腎クリアランスの寄与が小さいことを示している。
【0083】
【表3】
【0084】
複数回漸増投薬の薬物動態
CD101を投与した後の様々な時点において、各コホートにおいてCD101を受けた対象から得た血漿及び尿の試料を、CD101濃度に関して分析することにより薬物動態を決定した。
【0085】
CD101の血漿PKはまた、CD101の2又は3週間用量:100mg(第1日/第8日)、200mg(第1日/第8日)、及び400mg(第1日/第8日/第15日)に従い、十分に特徴付けられた。第1の用量に続く曝露は、SAD研究において観察されたものとかなり同等であり、AUC及びCmaxは、一般に用量に比例して増加した(表4)。蓄積は微量であり、最後の用量/第1の用量のCmax比により測定して14%~34%(又は1.14~1.34)の範囲、且つ最後の用量/第1の用量のAUC0~168比により測定して30%~55%(又は1.30~1.55)であった。
【0086】
【表4】
【0087】
上記研究からのデータを使用して、単回及び複数回の週1回投薬のIV投与後の、CD101濃度の時間経過を説明する集団PKモデルを開発した。手短に言えば、データは、0次にIV輸注を介した薬物投入及び1次に線形性消失を用いた4-コンパートメントモデルを使用して最もよく説明された。構造的PKパラメータと対象体重の間の関係を説明するために、モデルにおける全てのパラメータを、標準的相対成長係数(standard allometric coefficients)(クリアランス項目に関して0.75のべき乗及び容積項目に関して1.0のべき乗)を使用して、対象体重にスケーリングした。このモデルは、ほとんど偏りがなく優れた精度で、観察されたデータと合致した。
【0088】
PK-薬力学的(PD)目標到達の確率を評定するために、多様な探索的投薬レジメンを使用して、モンテカルロシミュレーションを実行した。更なる調査のために、2種の投薬レジメンを選択した(表5)。各投薬後のCD101濃度-時間曲線の0~168時間における週間の遊離薬物曲線下面積(fAUC0~168)を、2000名の仮想患者に関してシミュレートした;患者の個体群統計学的特徴のデータベースを使用して患者体重をシミュレートし、血漿タンパク結合を99.1%であると推定した。マウスにおけるカンジダアルビカンス感染の非臨床研究により、CD101のfAUC0~168:MICの10という比は、感染した腎臓の真菌負荷における2-log減少に関連することが示された。この10という値は、したがって、モンテカルロシミュレーション用の着目しているPK-PD目標として選択された。
【0089】
2種のレジメン(400mg/400mg/400mg及び400mg/200mg/200mg)は、0.5mg/LのMICまで妥当なPK-PD目標到達を提供することが予測される(Sentry2014からの調査データに基づく、C.アルビカンス及びグラブラタに関する0.06のMIC90より3希釈倍率高い)。加えて、反復投薬に伴う蓄積に起因して、400mgIVの週1回レジメンは、治療の第2週及び第3週中の1mg/LのMICにおいて、より高いPK-PD目標到達を達成することが期待され、したがって、MIC≧1mg/mLで病原菌に対する第1週の治療を超える付加的な利益をもたらすことが期待される。2種の選択されたレジメンに関するPK-PD目標到達を表5及び図1に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
[実施例3]
カンジダ血症及び/又は侵襲性カンジダ症を有する対象の処置
カンジダ血症及び/又は侵襲性カンジダ症を有する対象は、CD101注入を受ける(第1日及び第8日のそれぞれに400mg、第15日に400mgの場合による投薬を伴う;又は第1日、第8日、及び第15日のそれぞれに400mg、第22日に400mgの場合による投薬を伴う;又は第1日、第8日、第15日、及び第22日のそれぞれに400mg、第29日に400mgの場合による投薬を伴う;又は第1日、第8日、第15日、第22日、及び第29日のそれぞれに400mg、第36日に400mgの場合による投薬を伴う;又は第1日に400mg、及び第8日に200mg、第15日に200mgの場合による投薬を伴う;第1日に400mg、並びに第8日及び第15日のそれぞれに200mg、第22日に200mgの場合による投薬を伴う;第1日に400mg、並びに第8日、第15日、及び第22日のそれぞれに200mg、第29日に200mgの場合による投薬を伴う;第1日に400mg、並びに第8日、第15日、第22日、及び第29日のそれぞれに200mg、第36日に200mgの場合による投薬を伴う)。カンジダ血症及び/又は侵襲性カンジダ症の菌類診断は、第1の用量の投与前、採取時間から96時間内に、カンジダ種に関する≧1の血液培養陽性により確立される。
【0092】
CD101は、無菌溶液として又は凍結乾燥配合物として供給される。CD101注入液のバイアルは、輸液バッグ中で生理食塩水で希釈される。CD101を、第1日、第8日、及び場合によって第15日に60(±5)分にわたり、IV輸注により投与する。
【0093】
いくつかの実施形態では、CD101注入液は、輸注前に、希釈用の無菌の水性又は凍結乾燥生成物(例えば、0.9%塩化ナトリウム中)として提供される。いくつかの実施形態では、水性CD101の1つ以上のバイアルは、輸液バッグ中で希釈される。
【0094】
CD101を、30~180分の時間にわたり(例えば、30±5分、60±5分、90±5分、120±5分、150±5分、180±5分、30±10分、60±10分、90±10分、120±10分、150±10分、又は180±10分にわたり)投与する。
【0095】
[実施例4]
アゾール耐性のカンジダアルビカンスR357感染に続く感染評定
アゾール耐性のC.アルビカンスR357を冷凍作業ストックから得て、室温で解凍した。0.1mLの一定分量のストックを、サブロー寒天(SA)プレートに移し、35~37℃で終夜インキュベートした。培養物を1mLの冷却PBS中で再懸濁させ(>2.0×109CFU/mL、OD6203.0~3.2)、5×106、5×105、5×104、及び5×103CFU/mLの目標の接種菌サイズまでPBSで希釈した。希釈物をSAプレートにプレーティングし、続いて20~24時間インキュベーションすることにより、実際のコロニー数を決定した。
【0096】
体重22±2gの雄のICR(Institute of Cancer Research)マウスの群(群当たりn=3)を使用した。シクロホスファミドの150mg/kgをC.アルビカンス感染の4日前(第-4日)及び100mg/kgを1日前(第-1日)における2回の腹腔内注入により、免疫抑制を誘起した。第0日に、R357懸濁液を用いて、動物に静脈内接種(0.2mL/マウス)した。該動物を、接種後2時間及び72時間にCO2窒息により安楽死させた。実験設計の要約を表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
腎臓対を収集し、秤量した。収集した腎臓を1mLの無菌PBS(pH7.4)中で均質化し、10倍の希釈物を調製し、更に2~24時間のインキュベーションのためにSAプレート上に分離プレーティングし、次に腎臓中の真菌数(CFU/g)を計測した。アゾール耐性のC.アルビカンス株R357の種々の接種密度からの腎臓真菌負荷を図2に示す。
【0099】
[実施例5]
C.アルビカンスR357を用いた播種性感染モデルにおけるアンホテリシンB、フルコナゾール、及びCD101の有効性
材料
試験物。CD101を、0.9%NaCl中に10%DMSO及び1%Tween20を含有するビヒクルに溶解した(以下の配合表を参照されたい)。アンホテリシンB及びフルコナゾールは粉末形態であった。アンホテリシンBを0.9%NaClに溶解した。フルコナゾールを水(WFI:注入用水)に溶解した。試験物の要約を表7に示す。
【0100】
【表7】
【0101】
生体。C.アルビカンス株R357を、-70℃で貯蔵する、単回使用の冷凍作業ストック培養物として凍結保存した。
【0102】
動物。体重22±2gの雄のCRマウスを、使用前に3日間順応させ、良好な健康状態であることを確認した。3又は5匹の動物に対する空間割り付けは、27×20×14cmであった。全ての動物を、制御された温度(20~24℃)、湿度(30%~70%)及び12時間の明/暗サイクルを伴う衛生的な環境に維持した。無菌化標準的な実験用飼料及び加圧滅菌された水道水を自由に得られるようにした。飼育施設、実験、及び動物の廃棄を含む本作業の全態様を、一般に「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals: Eighth Edition」(National Academies Press、Washington、D.C.、2011年)に準拠して、実施した。
【0103】
化学物質。アンホテリシンB粉末(Cat#A-9528、Sigma、USA)、Bacto寒天(Cat#214040、BD DIFCO、USA)、シクロホスファミド(Cat#C-0768、Sigma、USA)、ジメチルスルホキシド(Cat#1.02931.1000、Merck、ドイツ)、フルコナゾール粉末(Cat#F8929、SIGMA-Aldrich、USA)、液体サブロー培地(Cat#264210、BD DIFCO、USA)、リン酸緩衝食塩水(PBS)(Cat#P4417、Sigma、USA)、塩化ナトリウム(Cat#S7653、SIGMA-Aldrich、USA)、Tween20(Cat#P-7949、Sigma、USA)及び注入用水(WFI)(Tai-Yu、台湾)。
【0104】
装置。生物学的安全キャビネット(NuAire、USA)、吸光度マイクロプレートリーダー(Tecan、Infinite F50、USA)、遠心分離機(Model 5922、Kubota、日本)、個別換気ケージ(IVC、36 Mini Isolator systems)(Tecniplast、イタリア)、層流(Tsao-Hsin、台湾)、軌道振盪インキュベーター(Firstek Scientific、台湾)、Pipetman(Rainin、USA)、ポリトロンホモジナイザー(Kinematica、スイス)及び超低温冷凍庫(NuAire、USA)。
【0105】
方法
アゾール耐性のC.アルビカンス(R357)株を冷凍作業ストックから得て、室温で解凍した。0.1mLのアリコートストックを、サブロー寒天(SA)プレートに移し、35~37℃で終夜インキュベートした。培養物を1mLの冷却PBS(>2.0×109CFU/mL、OD6203.0~3.2)中で再懸濁させ、5×105CFU/mLまでPBSで希釈した。希釈物をSAプレートにプレーティングし、続いて20~24時間インキュベーションすることにより、実際のコロニー数を決定した。実際の接種菌数は7.05×105CFU/mLであった。
【0106】
体重22±2gの雄のICRマウスの群(群当たりn=5)を使用した。シクロホスファミドの150mg/kgをC.アルビカンス感染の4日前(第-4日)及び100mg/kgを1日前(第-1日)における2回の腹腔内注入により、免疫抑制を誘起した。第0日に、C.アルビカンス(R357)の1.41×105CFU/0.2mL/マウスにおける5接種菌サイズを用いて、動物に静脈内接種した(0.2mL/マウス)。CD101を、3、10及び30mg/kgにおいて、腹腔内(IP)注入により投与した。アンホテリシンB(AM-B)を、1及び3mg/kgにおいて、静脈内(IV)注入により投与した。フルコナゾール(FLU)を、20mg/kgにおいて、経口経管栄養(PO)により投与した。全ての試験物を、接種後2時間に1回投与した。投薬容積は、全群に対して10mL/kgであった。実験設計の要約を表8に示す。
【0107】
【表8】
【0108】
該動物を、接種後48時間及び72時間にCO2窒息により安楽死させた。腎臓対を収集し、秤量した。収集した腎臓を1mLの無菌PBS(pH7.4)中で均質化し、10倍の希釈物を調製し、SAプレート上に分離プレーティングした。腎臓中の真菌数(CFU/g)を計測し、以下の式により減少百分率を算出した:
減少率(%)=[(ビヒクルのCFU/g-処置のCFU/g)/(ビヒクルのCFU/g)]×100%
【0109】
実験的プロトコルの概略を図3に示す。図4A及び4Bは、感染後48時間又は74時間に測定された、試験物処置群の絶対真菌数及び真菌数における差異をそれぞれ示す。感染後48時間又は72時間に測定された、ビヒクル群の真菌数と比較して、処置された動物の真菌数における99%以上(≧99%、2-log)の減少により、有意な抗菌活性が示された。一元ANOVA続いてダネット検定も適用して、統計学的有意性を評定した。
【0110】
有意な抗菌効果(P<0.05)が、3、10、及び30mg/kg IPにおけるCD101処置群について、感染後48時間及び72時間に観察された。真菌数における2-log減少が、全てのCD101処置群について、48時間及び72時間の時点に観察された。有意な効果が、1及び3mg/kg IVにおけるアンホテリシンB処置に続いて、感染後48時間及び72時間に観察された。3mg/kg IVにおけるアンホテリシンB処置は、72時間の時点で数における2-log減少をもたらした。20mg/kg POにおけるフルコナゾール投与により、一元ANOVA続いてダネット検定解析を用いて、有意ではなかった(P>0.05)ビヒクル対照群と比較して、感染後48時間及び72時間のコロニー数において中等度の減少(51%及び84%)が引き出された。
【0111】
[実施例6]
CD101有効性の薬理学的基礎
方法
薬物動態の研究。健康な雌のICRマウスに、腹腔内(IP)注入を介して単回用量のCD101を与えた。以下の用量を、用量当たり3匹のマウスにおいて研究した:1、4、及び16mg/kg。投薬後0、1、3、6、12、24、48、72、96時間に、有効とされたLC/MSアッセイを使用して、0.02μg/mLという定量下限でCD101血漿中濃度を決定した。
【0112】
用量分割研究。雄又は雌の体重22±2gのICRマウス(レジメン及び観察時間当たり5匹)に、感染の4日前(第-4日)(150mg/kg IP)及び1日前(第-1日)に100mg/kg IPのシクロホスファミド処置を用いてマウスに注入することにより、研究用に好中球減少性にした。好中球減少は、感染後48時間毎に+1、+3、+5及び+7日に、シクロホスファミド用量(100mg/kg IP)を用いて、研究継続期間中は持続させた。それぞれの動物は、1×103CFUのC.アルビカンス(菌株R303、MIC=0.125mg/L)を静脈内接種された。CD101(又はビヒクル)を、感染後24時間にIP注入を介して投与した。研究した用量を表9に示す。
【0113】
【表9】
【0114】
マウスを処置開始後168時間(7日間)に屠殺した。対照アームマウスをビヒクル投与後0、24、及び48時間に屠殺した。腎臓対を無菌的に収集し、均質化し、コロニー計数のためにプレーティングして、真菌負荷(CFU/g)を決定した。
【0115】
薬物動態-薬力学分析。PK研究から収集されたデータを使用して、S-ADAPTにおいてPKモデルを開発した。開発されたPKモデルを使用して、濃度-時間プロファイル及びAUC0~168h値を、用量分割研究において投与された各投薬レジメンに関してコンピュータ処理した。99.1%のマウスのタンパク質結合値を使用して、遊離薬物の血漿中濃度を得た。治療開始からのlog10CFUにおける変化と、AUC0~168hの間の関係を探求した。
【0116】
結果
CD101は、研究範囲に及ぶ用量にわたり(1~16mg/kg IP)直線的PKを呈した。4-コンパートメントモデルが、PKデータを最もよく説明していた。モデル適合性を図5に示す。
【0117】
用量分割研究の結果を図6に示し、これは非処置の対照群において真菌が良く成長したことを示している。真菌密度(log10CFU)における正味変化の大きさは、分割スケジュールにかかわらず、CD101の0.7及び7mg/kgの投薬群内で同様であった。しかしながら、CD101の2mg/kg群内の結果は、分割スケジュールにより変化した。
【0118】
CD101の2mg/kg群に関する、分割スケジュールによる168時間におけるベースラインからのlog10CFU減少における変化を、図7に示す。2mg/kgの合計用量が毎日送達されると(0.29mg/kg/日)、真菌密度(log10CFU)における正味変化の大きさは、非処置の対照群と同様であった。しかしながら、2mg/kgが単回用量として送達されると、168時間においてベースラインからの2-log10CFUより大きい減少があった。2mg/kg×1及び0.29mg/kgの毎日×7レジメンは、図6に示すように、168時間において同様の累積CD101曝露を有した。同様の曝露を有するにもかかわらず、これは有効性に影響し、これらのレジメンは非常に異なる効果を示した。
【0119】
3種の分割したCD101の2mg/kg投薬レジメンの、遊離薬物の血漿中濃度-時間プロファイルを図8に示す。3種全てのレジメンは、非常に異なる曝露プロファイルを示す。詳細には、単回用量レジメンは、治療における初期に、より大きいCD101曝露をもたらす。遊離薬物の血漿AUC0~24は、それぞれ、単回用量、週2回、及び毎日のレジメンとしてのCD101の2mg/kgの投与に従い、0.0654、0.0303、及び0.00948mg時/Lである。更に、単回投薬の投与は、週2回及び毎日のレジメンに関する血漿中濃度より、それぞれ84時間及び48時間、高いままである遊離薬物の血漿中濃度をもたらす。
【0120】
同様の合計曝露を有し、更に非常に異なる曝露形状を有する3種のCD101レジメンは、かなり異なる有効性を示す。これは、CD101のAUCの形状が有効性の決定要因であることを示唆しており、前倒しレジメンがより大きい有効性を実証している。真菌負荷における正味変化の大きさは、CD101の0.7及び7mg/kg投薬群内で分割スケジュールにかかわらず同様であったが、2mg/kg群内では異なった。2mg/kg用量は、週2回又は毎日のレジメンに分けられた同一用量と比較して、週1回で与えられるとかなり大きく効果的であった。
【0121】
[実施例7]
アスペルギルス症及びアゾール耐性の播種性カンジダ症のマウスモデルにおけるCD101の有効性
方法
アゾール耐性のカンジダ症及びアスペルギルス症の好中球減少性マウスモデルを使用して、CD101のインビボ有効性を評価した。ヒト血液から単離したC.アルビカンスのアゾール耐性株(R357;フルコナゾール[Flu]、ボリコナゾール、及びポサコナゾールに対して耐性があるが、アンホテリシンB[AmB]及びエキノカンジンに対して感受性である)を、マウスカンジダ症モデルに対して使用した。アスペルギルスフミガタス(ATCC13073)の試験株を、マウスアスペルギルス症モデルに対して使用した。マウスを、シクロホスファミドにより好中球減少性として、次にC.アルビカンス(105CFU/マウス)又はA.フミガタス(104CFU/マウス)を尾静脈中に注入することにより感染させた。試験物を、感染後2時間に投与開始した。マウスカンジダ症モデルでは、5匹マウス群は、それぞれ、AmB(3mg/kg IV)、Flu(20mg/kg 経口)、又はCD101(3、10又は30mg/kg 腹腔内投与[IP]による)の1用量を受けた。感染後の72時間後、マウスを安楽死させ、腎臓組織中のC.アルビカンス数(CFU/g)を測定した。マウスアスペルギルス症モデルでは、10匹マウス群は、それぞれ、AmB(2mg/kg IP)又はCD101(2mg/kg IV及びIP)の1用量を受けた。生存を10日間毎日監視した。ビヒクル群と試験物群の間の差異は、カンジダ症及びアスペルギルス症モデルにおいて、それぞれ、一元ANOVA続いてダネット検定及びフィッシャー直接確率法により、有意性に関して評定した。
【0122】
結果
CD101の3mg/kgの1用量により、単回IP投薬に従う投薬後少なくとも72時間を通して、ビヒクルと比較して、C.アルビカンスCFUにおける>99.9%(又は>3-log、P<0.001)の減少がもたらされた。AmBは、活力が低いにもかかわらず同様の有効性(CFUにおける>99%又は>2-logの減少、P<0.05)を示し、一方、フルコナゾールは、有効性が低かった(CFUにおける83.9%又は<2-logの減少)。アスペルギルス症モデルでは、2mg/kgのIV又はIP投与されたCD101は、AmBの2mg/kgのIPと同様の有効性を示し、両方ともビヒクルより有意に、より長期の生存を伴った(P<0.05、図9)。
【0123】
結論
単回用量のCD101の3mg/kgにより、ビヒクルと比較して、アゾール耐性のカンジダ症の好中球減少性マウスモデルにおいて、C.アルビカンス負荷における有意な減少がもたらされ(P<0.001)、同一用量におけるAmBではより良好ではないにしても同等の有効性を実証している。CD101の1用量はまた、アスペルギルス症のマウスモデルにおける有効性も実証している。これらのデータは、アゾール耐性株、及びアスペルギルス菌種を含むカンジダに起因する重篤な感染の処置用の、CD101の継続した開発を支持している。
【0124】
[実施例8]
カンジダアウリス臨床分離株に対するCD101の有効性
材料及び方法
生体及び抗真菌剤
日本、韓国、インド及びCenter for Medical Mycologyから得たC.アウリス臨床分離株(n=14)を評価した。臨床及び実験室規格学会(CLSI、文書M38-A2)により酵母及びカビに関して承認された、以下のカンジダQC株を使用した:C.パラプローシスATCC22019、C.クルセイATCC6258。試験化合物を、MICアッセイで使用する前に新たに調製し:CD101、5-フルシトシン(5FC)、アンホテリシンB(AMB)、アニデュラファンギン(ANID)、カスポファンギン(CAS)、フルコナゾール(FLU)、イトラコナゾール(ITRA)、ミカファンギン(MICA)、ポサコナゾール(POSA)及びボリコナゾール(VORI)を含んだ。
【0125】
最小発育阻止濃度(MIC)アッセイ
CLSI M38-A2法に準拠して実施された微量液体希釈MICアッセイを使用して、選択された抗真菌薬に対する真菌株の感受性を評価した。手短に言えば、C.アウリス株をサブローデキストロース寒天(SDA)にプレーティングし、37℃で2日間インキュベートした。次にC.アウリス細胞を遠心分離により収集し、生理食塩水洗浄(0.85%NaCl)をした。MICアッセイ接種菌を、血球計を使用して調製した。MICアッセイを、24時間及び/又は48時間のインキュベーション後に50及び/又は100%阻害において読み取った(図10)。接種菌数を点検するために、C.アウリスの作業分生子懸濁液の10倍の希釈物を、SDA培地にプレーティングした。接種菌プレートを、コロニー数を決定する前に、37℃で2日間インキュベートした。
【0126】
[実施例9]
カンジダアウリス臨床分離株に対するCD101、カスポファンギン(CAS)、ミカファンギン(MICA)、及びフルコナゾール(FLU)の有効性並びにFKS1 HS1の配列解析
本研究は、CD101、カスポファンギン(CAS)、ミカファンギン(MICA)、及びフルコナゾール(FLU)に対する臨床C.アウリス分離株のインビトロ感受性を決定し、FKS1内のホットスポット1(HS1)の配列を解析することであった。
【0127】
材料及び方法
カンジダアウリス分離株。VP Chest Institute、デリー大学(デリー、インド)から得た38のC.アウリス株を研究に使用した(表10)。菌株を、試験前に、酵母抽出物ペプトンデキストロース(YPD)寒天プレート上で成長させた。
【0128】
【表10】
【0129】
カンジダアウリスの抗真菌薬感受性試験(AFST)。抗真菌薬感受性試験を、CLSI文書M27-A3(CLSI、2008年)に記載されるガイドラインに準拠して、それぞれの菌株に関して二重に実施した。C.パラプローシスATCC22019及びC.クルセイATCC6258を品質管理用菌株として使用した。CD101、CAS、MICA、及びFLUを、製造業者から標準粉末として得て、化合物を水(CAS、MICA)又は100%ジメチルスルホキシド(DMSO)(CD101、FLU)に溶解することにより、ストック溶液を調製した。
【0130】
FKS1 HS1 PCR/配列決定。FKS1 HS1 PCRを、T100サーマルサイクラー(Bio-Rad)中で、30μlの反応容積において、EmeraldAmp MAX PCR Master Mix(TaKaRa)を使用して実行した。PCR混合物は、1μlのそれぞれのプライマー:10μMにおいてCspp_F2275(5'-AATGGGCTGGTGCTCAACAT-3')及びCspp_R3070(5'-CCTTCAATTTCAGATGGAACTTGATG-3')を含有した。少量の試験単一コロニーを有する無菌爪楊枝をPCR反応マスターミックス内に浸漬し、次にFKS1 HS1 PCRを実施した。時間-温度プロファイルは、94℃で3分間の初期変性、続いて94℃で30秒、53℃で30秒、及び72℃で90秒の35サイクルを含んだ。増幅産物を、GelStar核酸ゲル染料(Nucleic Acid Gel Stain)(Lonza)染色された1%アガロースゲル上で視覚化し、ZR DNA Sequencing Clean-up Kit(Zymo Research)を使用することにより精製し、Genewizにより配列決定した。配列決定結果をSeqMan Pro 14(DNASTAR Lasergene)により解析した。
【0131】
結果
カンジダアウリスの抗真菌薬感受性試験(AFST)。CD101、CAS、MICA、及びFLUに関するC.アウリス分離株のMIC(μg/ML)分布を表11に示す。全てのC.アウリス分離株(38)は、フルコナゾールに対して耐性があった。4種の分離株は、全ての試験を行ったエキノカンジン(CD101、CAS、MICA)に対して耐性があった。CD101は、MICAと同様の活性を呈した。
【0132】
FKS1 HS1 PCR/配列決定。C.アウリス分離株FKS1 HS1の配列解析の結果を表11に示す。34種のエキノカンジン感応性の分離株は、FKS1 HS1領域内で野生型(WT)の遺伝子型を示した。4種の分離株(表11中の菌株番号:16、25、27、及び30)は、エキノカンジン耐性と決定され、カンジダアルビカンスにおけるFKS1 HS1 S645と同等の位置において、セリンのフェニルアラニンへのアミノ酸置換を示した。
【0133】
【表11】
【0134】
結論
高フルコナゾール耐性は、C.アウリスの臨床分離株に共通している。大部分のC.アウリス株は、エキノカンジンに対して感受性である。しかしながら、大部分の菌株は、カスポファンギンに関して48時間にブレイクスルーするが、CD101又は他のエキノカンジンはブレイクスルーしない。これらのC.アウリス分離株におけるエキノカンジン耐性は、FKS1 HS1領域内の(C.アルビカンスS645と同等の位置における、セリンのフェニルアラニンへの)アミノ酸置換に関連した。
【0135】
[実施例10]
C.アルビカンス及びC.グラブラタに対する、CD101のインビボ薬物動態/薬力学(PK/PD)評価
方法
4種のC.アルビカンス及び3種のC.グラブラタ株を使用した。MICをCLSI標準により決定した。単回用量の血漿PKを、1、4、16、及び64mg/kgのIP投薬後の3匹のマウス群において決定した。処置研究に関して、マウスを、-4、-1、+2及び+4日におけるシクロホスファミドの投与を介して好中球減少性にした。マウスを、6.3±0.1CFU/ml(C.アルビカンス)又は6.2±0.2CFU/ml(C.グラブラタ)を側尾静脈中に注入して感染させた。処置用量範囲は0.016~64mg/kgであり、感染後2時間にIP注入により1度与えた。実験継続期間は7日間であり、その時点で腎臓をCFU計数用に無菌的に収集した。Emaxヒル式を使用して、用量-応答データをPK/PD指標AUC/MICに対してモデル化した。固定用量及び1-log殺菌用量、同様に関連するAUC/MIC値を、各分離株に関して決定した。
【0136】
結果
CD101 MICは、C.アルビカンスに関して0.008~0.06mg/L、及びC.グラブラタに関して0.06~0.5mg/Lであった。単回用量の血漿PKパラメータ範囲は:2.6~77mg/LのCmax、93~4046mg×時間/LのAUC0~∞、28~41時間のT1/2を含んだ。2log10CFU/腎臓を超える最大殺菌力で、用量依存性の殺傷活性を観察した。7日間にわたる平均24時間AUCを使用して、AUC/MICデータをモデル化し、C.アルビカンスに関してR20.70、及びC.グラブラタに関してR20.86で、処置応答データとよく合致した。固定用量(SD)及び1-log殺菌用量並びに関連するAUC/MIC値を表12に示す。
【0137】
【表12】
【0138】
結論
CD101は、選択C.アルビカンス及びC.グラブラタ株に対して、好中球減少性マウスの播種性カンジダ症モデルにおけるインビボ効力を実証した。他のエキノカンジンを用いる研究と同様に、AUC/MICは曝露-応答データとよく合致し、C.グラブラタ目標はC.アルビカンスより数値的に低かった。本研究で確認されたPK/PD目標は、ヒト薬物動態及びMIC分布の文脈において、CD101の臨床的投薬レジメンの最適化に有用となるであろう。
【0139】
他の実施形態
本明細書で述べられた全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ独立した刊行物又は特許出願が詳細に且つ個別的に参照により組み込まれると明記されているかの如く同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
本発明は、それらの特定の実施形態と関連して記載される一方、更なる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従い、本発明が関連する技術分野内で公知の又は慣例的実施内に含まれる本発明からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、又は適応を包含することが意図され、上述に明示される本質的特色に適用され得、特許請求の範囲に従うことが理解されよう。他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)対象における真菌感染の処置方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、及び
(c)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、投与する場合は、第3の用量を第15日に投与する、方法。
(2)対象における真菌感染の処置方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、
(c)塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び
(d)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、第3の用量を第15日に投与し、投与する場合は、第4の用量を第22日に投与する、方法。
(3)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第29日に投与する、(2)に記載の方法。
(4)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第36日に投与する、(3)に記載の方法。
(5)対象における真菌感染の処置方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、及び
(c)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、投与する場合は、第3の用量を第15日に投与する、方法。
(6)対象における真菌感染の処置方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、
(c)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び
(d)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、第3の用量を第15日に投与し、投与する場合は、第4の用量を第22日に投与する、方法。
(7)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第29日に投与する、(6)に記載の方法。
(8)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第36日に投与する、(7)に記載の方法。
(9)真菌感染が、カンジダ感染である、(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)カンジダが、カンジダアルビカンス、C.グラブラタ、C.デュブリニエンシス、C.クルセイ、C.パラプローシス、C.トロピカリス、C.オルトプシロシス、C.ギリエルモンジィ、C.ルゴサ、C.アウリス、及びC.ルシタニアエからなる群から選択される、(9)に記載の方法。
(11)カンジダが、C.アルビカンスである、(10)に記載の方法。
(12)カンジダが、C.グラブラタである、(10)に記載の方法。
(13)カンジダ感染が、カンジダ血症、侵襲性カンジダ症、中咽頭カンジダ症、食道カンジダ症、粘膜カンジダ症、性器カンジダ症、外陰カンジダ症、消化管カンジダ症、直腸カンジダ症、肝カンジダ症、腎カンジダ症、肺カンジダ症、脾カンジダ症、外耳道真菌症、骨髄炎、化膿性関節炎、又は心血管系カンジダ症である、(9)~(12)のいずれかに記載の方法。
(14)心血管系カンジダ症が、心内膜炎である、(13)に記載の方法。
(15)粘膜カンジダ症が、眼球カンジダ症、耳カンジダ症、又は口カンジダ症である、(14)に記載の方法。
(16)第15日に対象において菌類根絶及び/又は臨床的治癒が達成されなかった場合、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第3の用量を投与する、(1)~(4)及び(9)~(15)のいずれかに記載の方法。
(17)第15日に対象において菌類根絶及び/又は臨床的治癒が達成されなかった場合、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第3の用量を投与する、(5)~(15)のいずれかに記載の方法。
(18)菌類根絶が、1つの陰性血液培養により決定される、(16)又は(17)に記載の方法。
(19)菌類根絶が、陽性血液培養を介在することなく、≧12時間離れた2つの陰性血液培養により決定される、(16)又は(17)に記載の方法。
(20)第15日に対象が真菌感染の症状を示す場合、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第3の用量を投与する、(1)~(4)及び(9)~(15)のいずれかに記載の方法。
(21)第15日に対象が真菌感染の症状を示す場合、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第3の用量を投与する、(5)~(15)のいずれかに記載の方法。
(22)真菌感染の症状が、発熱、咳、息切れ、体重減少、寝汗、頻脈、頻呼吸、低血圧、及び/又は低体温を含む、(20)又は(21)に記載の方法。
(23)対象へのCD101の投与方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、及び
(c)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、投与する場合は、第3の用量を第15日に投与する、方法。
(24)対象へのCD101の投与方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、
(c)塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び
(d)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、第3の用量を第15日に投与し、投与する場合は、第4の用量を第22日に投与する、方法。
(25)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第29日に投与する、(24)に記載の方法。
(26)場合によって、塩又は中性の形態の、200mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第36日に投与する、(25)に記載の方法。
(27)対象へのCD101の投与方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、及び
(c)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、投与する場合は、第3の用量を第15日に投与する、方法。
(28)対象へのCD101の投与方法であって、
(a)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第1の用量を静脈内投与すること、
(b)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第2の用量を静脈内投与すること、
(c)塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第3の用量を静脈内投与すること、及び
(d)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第4の用量を静脈内投与することからなり、
第1の用量を第1日に投与し、第2の用量を第8日に投与し、第3の用量を第15日に投与し、投与する場合は、第4の用量を第22日に投与する、方法。
(29)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第5の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第5の用量を第29日に投与する、(28)に記載の方法。
(30)場合によって、塩又は中性の形態の、400mgのCD101を含む第6の用量を静脈内投与することを更に含み、投与する場合は、第6の用量を第36日に投与する、(29)に記載の方法。
(31)CD101を、30~180分の時間にわたり(例えば、60±5分)投与する、(1)~(30)のいずれかに記載の方法。
(32)CD101を、水性医薬組成物として投与する、(1)~(31)のいずれかに記載の方法。
(33)医薬組成物が、4.0~8のpHを有する、(32)に記載の方法。
(34)CD101塩が、CD101酢酸塩である、(1)~(33)のいずれかに記載の方法。
(35)対象におけるC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態のCD101を、前記対象に、前記C.アウリス感染を処置するのに十分な量及び持続時間で投与することを含む、方法。
(36)対象における薬物耐性のC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態のCD101を、前記対象に、前記薬物耐性のC.アウリス感染を処置するのに十分な量及び持続時間で投与することを含む、方法。
(37)抗真菌療法を用いる処置に失敗したことがある対象におけるC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態のCD101を、前記対象に、前記C.アウリス感染を処置するのに十分な量及び持続時間で投与することを含む、方法。
(38)前記C.アウリス感染が、変異型1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体を有する真菌に起因する、(35)~(37)のいずれかに記載の方法。
(39)投与工程が、塩又は中性の形態の、約150mg~約800mgの用量のCD101を、前記対象に静脈内投与することを含み、2回以上の用量が前記対象に1~4週の期間にわたり投与される、(35)~(38)のいずれかに記載の方法。
(40)投与工程が、化合物1の塩又はその中性形態を、局所的、膣内、口腔内、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、皮下、経口的、又は吸入により投与することを含む、(35)~(39)のいずれかに記載の方法。
(41)対象におけるC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態の、約550mg~約800mgの用量のCD101を、前記対象に静脈内投与することを含み、2回以上の用量が前記対象に1~4週の期間にわたり投与される、方法。
(42)対象におけるC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態の、約150mg~約800mgの用量のCD101を、前記対象に週当たり1~3回、2~4週間、静脈内投与することを含む、方法。
(43)対象におけるC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態の、約150mg~約800mgのCD101を含む組成物の2回以上の用量を、前記対象に、静脈内投与することを含む、方法。
(44)投与された量が、塩又は中性の形態のCD101の少なくとも変異株出現防止濃度を、対象の血漿中で少なくとも8時間維持する、(31)~(43)のいずれかに記載の方法。
(45)前記C.アウリス感染が、エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のC.アウリス感染である、(35)~(44)のいずれかに記載の方法。
(46)前記C.アウリス感染が、エキノカンジン耐性の感染である、(45)に記載の方法。
(47)前記対象が、エキノカンジン療法を用いる処置に失敗したことがある、(35)~(46)のいずれかに記載の方法。
(48)前記対象が、アニデュラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンを用いる処置に失敗したことがある、(47)に記載の方法。
(49)前記対象が、ポリエン療法、フルシトシン療法、又はアゾール療法を用いる処置に失敗したことがある、(35)~(48)のいずれかに記載の方法。
(50)前記C.アウリス感染が、FKS遺伝子中に1つ以上の変異を含む変異型1,3-β-D-グルカンシンターゼ酵素複合体を有するC.アウリスに起因する、(35)~(49)のいずれかに記載の方法。
(51)前記C.アウリス感染が、カンジダ血症、侵襲性カンジダ症、中咽頭カンジダ症、食道カンジダ症、粘膜カンジダ症、性器カンジダ症、外陰カンジダ症、消化管カンジダ症、直腸カンジダ症、肝カンジダ症、腎カンジダ症、肺カンジダ症、脾カンジダ症、外耳道真菌症、骨髄炎、化膿性関節炎、又は心血管系カンジダ症である、(35)~(50)のいずれかに記載の方法。
(52)エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のC.アウリスの殺菌方法であって、エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のカンジダを、塩又は中性の形態のCD101に、エキノカンジン耐性、ポリエン耐性、フルシトシン耐性、又はアゾール耐性のC.アウリスを殺菌するのに十分な量及び持続時間で曝露することを含む、方法。
(53)対象におけるC.アウリス感染の処置方法であって、塩又は中性の形態のCD101の少なくとも変異株出現防止濃度を、対象の血漿中で少なくとも8時間維持する投薬レジメンにおいて、塩又は中性の形態の、約150mg~約800mgのCD101の2回以上の用量を、前記対象に静脈内投与することを含む、方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
0007224916000001.app