(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】るつぼ支持具
(51)【国際特許分類】
B25B 7/12 20060101AFI20230213BHJP
B01L 9/00 20060101ALI20230213BHJP
G01N 25/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B25B7/12
B01L9/00
G01N25/00 N
(21)【出願番号】P 2019034758
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】村田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 裕治
(72)【発明者】
【氏名】宮島 由希
(72)【発明者】
【氏名】矢野 光弘
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207682216(CN,U)
【文献】特開2017-202534(JP,A)
【文献】特表2017-526538(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109331903(CN,A)
【文献】特開平11-151687(JP,A)
【文献】特開2012-125917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0021279(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108527190(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B1/00-11/02
B01L1/00-99/00
G01N25/00-25/72
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼを、加熱炉に出し入れする作業に用いる、るつぼ支持具であって、
挟持部と、操作部と、前記挟持部と前記操作部とを連結する長軸部と、を備え、
前記挟持部は、相互に対向して回旋することにより先端部が開閉する一対の挟持アームと、各々の前記挟持アームに前記回旋を起こさせる力を伝達可能な態様で、各々の前記挟持アームに連結されているリンク部と、を有し、
前記操作部は、把持用リングと、
棒状の操作レバーと、を有し、
前記操作レバーは、前記把持用リングの内側において該把持用リングと平行に、且つ、前記長軸部に対して垂直に設置されており、前記把持用リングは、前記挟持アームの回旋面に対して直交する方向に沿って設置されていて、
前記長軸部には、前記リンク部と、前記操作レバーと、を連結する棒状又は線状の連結部材が該長軸部の長軸方向に沿って往復運動可能な態様で配設されていて、
前記把持用リングに前記操作レバーを近づけるように前記操作部を握る第1の動作、及び、前記第1の動作を停止して前記操作レバーを元の位置に復帰させる第2の動作からなる2つの動作のみによって、前記連結部材及び前記リンク部を介して、前記挟持アームを開閉させることができる、挟持アーム開閉機構を有する、るつぼ支持具。
【請求項2】
前記長軸部の前記操作部側の端部近傍にスプリングが内蔵されていて、前記第1の動作による操作レバーの移動に対する該スプリングの反力よって、第2の動作時に前記操作レバーが元の位置に復帰する機構を備える、請求項1に記載の、るつぼ支持具。
【請求項3】
前記長軸部の長さが、900mm以上1500mm以下である、請求項1又は2に記載の、るつぼ支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、るつぼ支持具に関する。より詳しくは、本発明は、金属等の分析作業等において、物質を熔解する際等に用いる耐熱性の「るつぼ」を、手作業によって加熱炉等に出し入れする作業に用いる、るつぼ支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の分析作業において試料を熔解する際等には、耐熱性の「るつぼ」に試料を入れて、電気炉等の加熱炉に投入して加熱する。上記の試料は、通常、紛体で「るつぼ」内に入れられており、電気炉内で加熱溶解され熔体となる。よって「るつぼ」の出し入れの際には、「るつぼ」を水平に保持する必要がある。又、分析作業において、単数の試料のみを扱うことは少なく、同時に数個から十数個の試料を併行して処理するため、連続して複数の「るつぼ」を電気炉に出し入れする必要に迫られる場合が多い。
【0003】
そのような「るつぼ」を取り扱うために、従来から、一方の端部に「るつぼ」を挟んで保持する把持部を有し、他方の端部に二つの持ち手を有する、ハサミ型の支持具が広く用いられている。この支持具は、二つの持ち手を閉じることで、先端部が閉じて、「るつぼ」を把持し、二つの持ち手を開くことで、先端部が開いて、「るつぼ」を開放する構造となっている(特許文献1、2参照)。
【0004】
ここで、「るつぼ」を加熱する上述の電気炉は、600℃から1100℃程度の高温とされている。このため、「るつぼ」を出し入れする作業者を、この電気炉から放出される輻射熱から保護するため距離を確保するために、上述のハサミ型の支持具は、その全長を1000mm前後の長さとする必要があった。このような構造の支持具で、試料を支持し、尚且つ、支持具の全体を水平に保持し、更には、複数の「るつぼ」を連続して電気炉に出し入れする作業は、作業者への負担が大きく、作業ミスによって「るつぼ」中の熔体が飛散する危険性も大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-99728号公報
【文献】実開昭60-120770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気炉等の加熱炉に「るつぼ」を出し入れする作業における、作業者の負担と危険を軽減することができる支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、るつぼ支持具の構造を見直し、片手で先端部の開閉操作を行えるようにすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。本発明は、具体的には、以下のものを提供する。
【0008】
(1) るつぼを、加熱炉に出し入れする作業に用いる、るつぼ支持具であって、挟持部と、操作部と、前記挟持部と前記操作部とを連結する長軸部と、を備え、前記挟持部は、相互に対向して回旋することにより先端部が開閉する一対の挟持アームと、各々の前記挟持アームに、前記回旋を起こさせる力を伝達可能な態様で連結されているリンク部と、を有し、前記操作部は、把持用リングと、該把持用リングの内側に設置されている操作レバーと、を有し、前記長軸部には、前記リンク部と、前記操作レバーと、を連結する棒状又は線状の連結部材が該長軸部の長軸方向に沿って往復運動可能な態様で配設されていて、前記把持用リングに前記操作レバーを近づけるように前記操作部を握る第1の動作、及び、前記第1の動作を停止して前記操作レバーを元の位置に復帰させる第2の動作からなる2つの動作のみによって、前記連結部材及び前記リンク部を介して、前記挟持アームを開閉させることができる、挟持アーム開閉機構を有する、るつぼ支持具。
【0009】
(1)の、るつぼ支持具は、長尺のるつぼ支持具でありながら、操作部を握る動作とこの動作を開放する動作のみによって、「るつぼ」を支持する挟持アームを開閉させることができる構造からなる。よって、(1)の、るつぼ支持具を用いることにより、「るつぼ」を、加熱炉に出し入れする作業において、作業者は、「るつぼ」を支持する挟持アームの開閉については、これを片手で行うことができる。これにより、電気炉等の加熱炉に「るつぼ」を出し入れする作業における、作業者の負担と危険を著しく軽減することができる。
【0010】
(2) 前記長軸部の前記操作部側の端部近傍にスプリングが内蔵されていて、前記第1の動作による操作レバーの移動に対する該スプリングの反力よって、第2の動作時に前記操作レバーが元の位置に復帰する機構を備える、(1)に記載の、るつぼ支持具。
【0011】
(2)の、るつぼ支持具においては、(1)の、るつぼ支持具の挟持アームを開閉させる機構について、スプリングの弾性を利用して、挟持アームが、より円滑、且つ、速やかに開閉する機構とした。これにより、るつぼ支持具の操作の容易性が更に高まり、上述の作業者の負担と危険を更に軽減することができる。
【0012】
(3) 前記長軸部が中空のパイプ部材であって、長さが、900mm以上1500mm以下である、(1)又は(2)に記載の、るつぼ支持具。
【0013】
(3)の、るつぼ支持具においては、長軸部の長さを、操作の容易性を維持できる長さの目安となる1500mm以下の範囲内において、少なくとも900m以上の長さとした。(1)又は(2)の、るつぼ支持具における挟持アームを開閉させる機構は、長軸部の長軸方向に沿って往復運動可能な棒状又は線状の連結部材を介して、作業者が操作部を握る動作等を挟持アームの開閉運動に変換する機構であるため、従来の複数の持ち手を備えるハサミ型の支持具よりも、操作性を維持したまま支持具をより長くすることができる。又、長軸部は中空のパイプ部材であることにより、長さ当たりの重量は軽量化されており、上記のような長尺であっても、作業者が手作業で水平を維持することが容易である。よって、より高温な加熱炉における作業においても、作業者の負担と危険を十分に軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気炉等の加熱炉に「るつぼ」を出し入れする作業における、作業者の負担と危険を軽減することができる支持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の「るつぼ支持具」について、挟持部及び操作部の構造の説明に供する正面図。
【
図3】本発明の「るつぼ支持具」について、挟持部及び操作部の構造の説明に供する側面図。
【
図4】本発明の「るつぼ支持具」の使用態様の説明に供する図であり、「るつぼ」を挟持して保持している状態を示す。
【
図5】本発明の「るつぼ支持具」の挟持部の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の「るつぼ支持具」の操作部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<るつぼ支持具>
本発明の、るつぼ支持具1は、分析物を収容した、「るつぼ」を、その先端に形成されている挟持部11により安定的に挟持した状態で、当該「るつぼ」の水平を保ったまま、所望の位置にまで運び、当該所望の位置において、当該「るつぼ」の挟持を開放して当該位置に静置する作業を行う機能を有する道具である。これにより、高温の加熱炉への「るつぼ」の出し入れの作業を、手作業により、安全、且つ、容易に行うことができる。
【0018】
図1に示す通り、るつぼ支持具1は、挟持部11、操作部12、及び、これらの2つの部分を連結する長軸部13と、の3つの部分に大別される構成を、その基本構成する。又、作業者4が操作部12を握ったり離したりするという、片手で行うことができる簡易な動作のみによって、挟持部11の挟持アーム111を開閉させることができる、「挟持アーム開閉機構」を有することを、主たる特徴とする。
【0019】
[挟持部]
図2、
図3、及び、
図5に示す通り、挟持部11は、一対の、挟持アーム111と、リンク部112と、を有する。又、挟持アーム111の先端には、
図5に示すように、るつぼ2を安定的に把持可能な形状の先端部113が形成されていることが好ましい。先端部の形状は、限定されないが、
図5に示すような断面L字形の形状を、先端部113の好ましい形状の具体例として挙げることができる。
【0020】
図5に示す通り、一対の挟持アーム111は、相互に対向して回旋することにより先端部113が開閉することができる態様で設置され、挟持部11の主たる部分を構成する。
【0021】
同じく
図5に示す通り、リンク部112は、その一方の端部が、上述の挟持アーム111の回旋を起こさせる力を、それぞれの挟持アーム111に伝達可能な態様で、それぞれの、挟持アーム111に連結されている。又、リンク部112の一対の他方の端部は、長軸部13に配設されている連結部材131に連結されていて、この連結部材131を介して、更には、操作部12を構成する操作レバー122に連結されている(
図2、
図3、
図5、及び、
図6参照)。
【0022】
[操作部]
図2、
図3、及び、
図6に示す通り、操作部12は、把持用リング121と、操作レバー122と、を有する。
【0023】
把持用リング121は、略リング形状の部材である。
図6に示す通り、作業者4が、片手で握ることができる形状であればよく、作業者4が握りやすいように末端側の作業者4が握る部分については、作業者4が握りやすいように、略直線状、又は、他の部分よりも緩やかな曲線状の形状とされていることが好ましい。
【0024】
同じく
図5に示す通り、操作レバー122は、把持用リング121の内側に設置されている棒状等の形状からなる部材である。
図6に示す通り、作業者4が、把持用リング121とともに、片手で握ることができる形状であればよい。操作レバー122は、長軸部13に配設されている連結部材131に連結されていて、この連結部材131を介して、更には、挟持部11を構成するリンク部112に連結されている(
図2、
図3、
図5、及び、
図6参照)。
【0025】
[長軸部]
挟持部11と操作部12とを連結する長軸部13は、所望の耐熱性を有する金属からなる中空のパイプ部材であることが好ましい。その長さは、加熱炉の温度等に応じて作業者4の安全を確保するために必要な距離に応じて、適切な長さに調整することができる。上述の通り、長軸部13を中空のパイプ部材で構成することにより、るつぼ支持具1の操作性を良好に維持したまま、その長さを900mm以上とすることができる。
【0026】
又、長軸部13には、上述の通り、リンク部112と、操作レバー122と、を連結する棒状又は線状の連結部材131が、長軸部13の長軸方向に沿って往復運動可能な態様で配設されている。長軸部13を中空のパイプ部材で構成することにより、連結部材131を長軸部13の内部に上記態様で配設することができる。
【0027】
尚、長軸部13の操作部12側の端部近傍には、スプリング132が内蔵されていることが好ましい。このスプリング132は、後述する「挟持アーム開閉機構」が作動する際、操作レバー122の末端方向への移動に対して、操作レバー122を元の位置に戻す方向への反力が働くような構成で配置する。
【0028】
[挟持アーム開閉機構]
るつぼ支持具1は、「挟持アーム開閉機構」を有する。この「挟持アーム開閉機構」とは、るつぼ支持具1を構成する各部分が相互に連動して機能することにより、挟持アーム111の開閉を司る機構である。るつぼ支持具1は、この「挟持アーム開閉機構」によって、把持用リング121に操作レバー122を近づけるように操作部12を握る第1の動作、及び、この第1の動作を停止して操作レバー122を元の位置に復帰させる第2の動作からなる2つの動作のみによって、他の動作を必要とせずに、挟持アーム111を開閉させることができる。
【0029】
より具体的には、
図4に示すように、電気炉等の加熱炉に、るつぼ2を出し入れする作業において、作業者4は、「挟持アーム開閉機構」を有する、るつぼ支持具1を用いることにより、当該支持具の水平を両手で保持しながら、何れか一方の片手のみによる操作で、挟持アーム111の開閉を行うことができる。これにより作業容易性が著しく向上する。
【符号の説明】
【0030】
1 るつぼ支持具
11 挟持部
111 挟持アーム
112 リンク部
113 先端部
12 操作部
121 把持用リング
122 操作レバー
13 長軸部
131 連結部材
132 スプリング
2 るつぼ
3 加熱炉
4 作業者