(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】薬液制御装置及びダイヤフラム弁
(51)【国際特許分類】
F16K 7/12 20060101AFI20230213BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F16K7/12 B
F16K31/122
(21)【出願番号】P 2019038953
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000140890
【氏名又は名称】ミライアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】溜渕 晴也
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-286146(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221877(WO,A1)
【文献】特開2003-343753(JP,A)
【文献】特開2010-127435(JP,A)
【文献】特表2007-515584(JP,A)
【文献】特表2003-529031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00-7/20
13/00-13/10
25/00-29/02
31/12-31/165
31/36-31/42
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により互いに隔てられた流入路及び流出路が内部に設けられるとともに、前記流入路に連通された流入路出口及び前記流出路に連通された流出路入口が外周面に設けられ、前記流入路出口及び前記流出路入口を囲うボディ環状壁が前記外周面から延出されたボディと、
前記ボディ環状壁の先端開口を覆うとともに、前記流入路出口及び前記流出路入口を介する前記流入路から前記流出路への薬液の流通を制御するためのダイヤフラム弁と
を備え、
前記ボディ環状壁は、前記ボディ環状壁の周囲の前記ボディの前記外周面よりも突出しており、
前記ボディ環状壁の先端部と前記ダイヤフラム弁とが互いに溶着又は溶接されている、
薬液制御装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラム弁は、
弁環状壁と、
前記弁環状壁の内周面から径方向内方に延出された接続壁と、
前記接続壁を介して前記弁環状壁に接続された弁本体と
を有し、
前記弁環状壁の軸端面が前記ボディ環状壁の軸端面と溶着又は溶接されている、
請求項1記載の薬液制御装置。
【請求項3】
前記弁環状壁の内径が前記ボディ環状壁の内径と等しい、
請求項2記載の薬液制御装置。
【請求項4】
前記接続壁は、
前記弁環状壁の内周面から延出された支持壁と、
前記支持壁と前記弁本体との間に介在されるとともに前記支持壁よりも肉厚が薄い薄肉部と
を含む、請求項2又は請求項3に記載の薬液制御装置。
【請求項5】
薬液制御装置のボディに取り付けられるダイヤフラム弁であって、前記ボディは、隔壁により互いに隔てられた流入路及び流出路が内部に設けられるとともに、前記流入路に連通された流入路出口及び前記流出路に連通された流出路入口が外周面に設けられ、前記流入路出口及び前記流出路入口を囲うボディ環状壁が前記外周面から延出されており、
前記ダイヤフラム弁の外周壁を構成する弁環状壁と、
前記弁環状壁の内周面から径方向内方に延出された接続壁と、
前記接続壁を介して前記弁環状壁に接続された弁本体と
を備え、
前記弁環状壁の軸端面が前記ボディ環状壁の軸端面と溶着又は溶接されるように適合されたダイヤフラム弁であり、
前記弁環状壁の軸端面は、前記弁環状壁の外側に比べて内側が前記弁環状壁の軸方向に突出するか、又は前記弁環状壁の内側に比べて外側が前記弁環状壁の軸方向に突出し
た傾斜面とされ、前記弁環状壁の端部には断面矩形に対する欠落部が形成され、前記溶着の際の前記ボディ環状壁への押し当て時に逃げた材料を前記欠落部が吸収できるか、又は前記傾斜面が前記溶接時の開先の役割を果たすように構成されている、
ダイヤフラム弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の流通を制御するための薬液制御装置及びダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の薬液制御装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来の薬液制御装置には、薬液が通される流路が設けられたボディ、ボディに取り付けられたダイヤフラム弁、及びボディとの間にダイヤフラム弁を挟み込むように配置されたアクチュエータが含まれている。アクチュエータによりダイヤフラム弁が作動されることで薬液の流通が制御される。これらボディ、ダイヤフラム弁及びアクチュエータは、ベース部の上に配置される。そして、アクチュエータの上側からボルトを挿入し、このボルトをベース部に設けられたナットに螺合させることにより、ボディ、ダイヤフラム弁及びアクチュエータが一体として固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の薬液制御装置では、ボディ及びダイヤフラム弁等をボルト及びナットにより一体化しているので、金属部品であるボルト及びナットが薬液等により腐食破壊されて、接合部の緩みにより漏液が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、ボルト及びナットを用いずにボディ及びダイヤフラム弁を互いに一体化でき、ボルト及びナットの腐食破壊に起因して漏液が発生する虞を低減できる薬液制御装置を提供することである。また、本発明は、上述の薬液制御装置に好適なダイヤフラム弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬液制御装置は、隔壁により互いに隔てられた流入路及び流出路が内部に設けられるとともに、流入路に連通された流入路出口及び流出路に連通された流出路入口が外周面に設けられ、流入路出口及び流出路入口を囲うボディ環状壁が外周面から延出されたボディと、ボディ環状壁の先端開口を覆うとともに、流入路出口及び流出路入口を介する流入路から流出路への薬液の流通を制御するためのダイヤフラム弁とを備え、ボディ環状壁は、ボディ環状壁の周囲のボディの外周面よりも突出しており、ボディ環状壁の先端部とダイヤフラム弁とが互いに溶着又は溶接されている。
【0007】
本発明に係るダイヤフラム弁は、薬液制御装置のボディに取り付けられるダイヤフラム弁であって、ボディは、隔壁により互いに隔てられた流入路及び流出路が内部に設けられるとともに、流入路に連通された流入路出口及び流出路に連通された流出路入口が外周面に設けられ、流入路出口及び流出路入口を囲うボディ環状壁が外周面から延出されており、ダイヤフラム弁の外周壁を構成する弁環状壁と、弁環状壁の内周面から径方向内方に延出された接続壁と、接続壁を介して弁環状壁に接続された弁本体とを備え、弁環状壁の軸端面がボディ環状壁の軸端面と溶着又は溶接されるように適合されたダイヤフラム弁であり、弁環状壁の軸端面は、弁環状壁の外側に比べて内側が弁環状壁の軸方向に突出するか、又は弁環状壁の内側に比べて外側が弁環状壁の軸方向に突出した傾斜面とされ、弁環状壁の端部には断面矩形に対する欠落部が形成され、溶着の際のボディ環状壁への押し当て時に逃げた材料を欠落部が吸収できるか、又は傾斜面が溶接時の開先の役割を果たすように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の薬液制御装置によれば、ボディ環状壁の先端部とダイヤフラム弁とが互いに溶着又は溶接されているので、ボルト及びナットを用いずにボディ及びダイヤフラム弁を互いに一体化でき、ボルト及びナットの腐食破壊に起因して漏液が発生する虞を低減できる。
【0009】
本発明のダイヤフラム弁によれば、弁環状壁の軸端面が弁環状壁の外側に比べて内側が弁環状壁の軸方向に突出するか、又は弁環状壁の内側に比べて外側が弁環状壁の軸方向に突出しているので、ボディ環状壁とダイヤフラム弁とを互いに溶着又は溶接した後にボディ環状壁及びダイヤフラム弁の周面からビードが突出される虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態による薬液制御装置を示す平面図である。
【
図2】
図1の線A-Aに沿う薬液制御装置の断面図である。
【
図5】
図1の薬液制御装置の製造方法を示す斜視図である。
【
図6】
図5のボディ環状壁及び弁環状壁の断面図である。
【
図7】
図6のボディ環状壁及び弁環状壁の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
図1は本発明の実施の形態による薬液制御装置1を示す平面図であり、
図2は
図1の線A-Aに沿う薬液制御装置の断面図であり、
図3は
図2のダイヤフラム弁11の拡大断面図であり、
図4は
図2のアクチュエータ12の拡大断面図である。
【0013】
図1及び
図2に示す薬液制御装置1は、2つの配管(図示せず)の間に配置されて、一方の配管から他方の配管への薬液の流通を制御するための装置である。本実施の形態の薬液制御装置1の動作状態は、一方の配管から他方の配管への薬液の流通を許容する開状態と、一方の配管から他方の配管への薬液の流通を遮断する閉状態とで切り替え可能とされている。薬液制御装置1により流通が制御される薬液としては、例えば酸化性流体、塩基性流体及び有機系流体等を挙げることができる。
【0014】
図2に特に表れているように、薬液制御装置1は、ベース部2の上部に配置されてている。ベース部2は、図示しない支持体に支持されている。薬液制御装置1は、ベース部2に対して着脱自在に設けられていることが好ましい。着脱自在とは、薬液制御装置1及びベース部2の破壊を伴わずに、ベース部2に薬液制御装置1を取り付けることができるとともに、ベース部2から薬液制御装置1を取り外すことができることを意味している。本実施の形態の薬液制御装置1は、例えばねじ込み又はフックの係合等によりベース部2に対して着脱可能とされている。
【0015】
本実施の形態の薬液制御装置1は、ボディ10、ダイヤフラム弁11及びアクチュエータ12を含んでいる。ボディ10及びダイヤフラム弁11は、薬液との接触による腐食を抑えるため樹脂で構成されていることが好ましい。ボディ10及びダイヤフラム弁11に用いる樹脂としては、例えばPFA等を挙げることができる。後述のアクチュエータ12の第1及び第2ハウジングは、ボディ10及びダイヤフラム弁11と同様に樹脂で構成できる。第1及び第2ハウジング120,122は、ボディ10及びダイヤフラム弁11と比較して高強度であることが好ましい。第1及び第2ハウジング120,122に用いる樹脂としては、例えばPVDF等を挙げることができる。
【0016】
ボディ10は、全体として円管状の外形を有する部材であり、薬液制御装置1の下部に配置されている。薬液制御装置1の下部とは、ベース部2に近い側を意味する。ボディ10の軸方向10aに係るボディ10の一端に第1接続部101が設けられており、軸方向10aに係るボディ10の他端に第2接続部102が設けられている。本実施の形態では、ボディ10に薬液を流入させる流入配管(図示せず)が第1接続部101に接続され、ボディ10から薬液を流出させる流出配管(図示せず)が第2接続部102に接続されることとする。
【0017】
ボディ10の内部には、流入路103、流出路104及び隔壁105が設けられている。
【0018】
流入路103は、第1接続部101の側端に形成された開口を一端として、その開口から軸方向10aに延びるボディ10の内部空間である。流出路104は、第2接続部102の側端に形成された開口を一端として、その開口から軸方向10aに延びるボディ10の内部空間である。
【0019】
隔壁105は、軸方向10aに関する第1接続部101と第2接続部102との間でボディ10の内周面からボディ10の径方向に突出された壁体である。流入路103及び流出路104は、ボディ10の内部において隔壁105により互いに隔てられている。流入路103側における隔壁105の下部には円弧面105aが形成されている。流入路103を通る薬液は円弧面105aに案内されて上方へ向かう。
【0020】
ボディ10の外周面には、流入路出口103a、流出路入口104a及びボディ環状壁106が設けられている。本実施の形態の流入路出口103a、流出路入口104a及びボディ環状壁106は、ボディ10の上部に配置されている。
【0021】
流入路出口103aは、ボディ10の外周面に形成された開口であり、流入路103の他端を構成している。流出路入口104aは、ボディ10の外周面に形成された開口であり、流出路104の他端を構成している。流入路出口103aの周囲におけるボディ10の外周面は平坦面とされている。この平坦面には、上述の隔壁105の上端面が含まれる。平坦面は、後述のピストン121の進退方向121aに対して直交して延在されていることが好ましい。
【0022】
ボディ環状壁106は、そのボディ環状壁106の周囲のボディ10の外周面よりも突出するようにボディ10の外周面から延出された環状の壁部である。ボディ環状壁106は、ピストン121の進退方向121aと平行にボディ10の外周面から延出されていることが好ましい。ボディ環状壁106は、流入路出口103a及び流出路入口104aを囲うように配置されている。
【0023】
ダイヤフラム弁11は、ボディ環状壁106の先端開口を覆うように配置された部材であり、上述の流入路出口103a及び流出路入口104aを介する流入路103から流出路104への薬液の流通を制御するための部材である。
【0024】
図3に特に表れているように、本実施の形態のダイヤフラム弁11は、弁環状壁110、接続壁111及び弁本体112を有している。
【0025】
弁環状壁110は、ダイヤフラム弁11の外周壁を構成する環状の壁体である。
図2に示すように、弁環状壁110は、ボディ環状壁106と同軸状に配置されている。また、弁環状壁110は、弁環状壁110の軸方向に関してボディ環状壁106に隣り合うように配置されている。弁環状壁110の内径はボディ環状壁106の内径と等しくされている。内径が等しいとは、内径が厳密に等しいことのみならず、内径差が例えば10%等の所定範囲内に収まっていることを意味する。但し、弁環状壁110及びボディ環状壁106は必ずしも同じ内径を有していなくてもよい。また、弁環状壁110及びボディ環状壁106は必ずしも同じ外径及び肉厚を有していなくてもよい。
【0026】
接続壁111は、弁環状壁110の内周面から径方向内方に延出された環状の壁体であり、弁本体112を弁環状壁110に接続している。本実施の形態の接続壁111には、支持壁111a及び薄肉部111bが含まれている。支持壁111aは、弁環状壁110の内周面から径方向内方に延出されている。薄肉部111bは、支持壁111aの先端から径方向内方に延出されている。また、薄肉部111bは、支持壁111aと弁本体112との間に介在されている。薄肉部111bの肉厚は、支持壁111aの肉厚よりも薄くされている。薄肉部111bは、円弧状の断面形状を有している。換言すると、薄肉部111bの表面に沿う支持壁111aの先端から薄肉部111bの先端までの距離は、弁環状壁110の径方向に沿う支持壁111aの先端から薄肉部111bの先端までの距離よりも長くされている。
【0027】
弁本体112は、弁環状壁110の径方向に係る中央において弁環状壁110の軸方向に延在された略円柱状の部分であり、接続壁111を介して弁環状壁110に接続されている。弁本体112は、アクチュエータ12の動作により弁環状壁110の軸方向(ピストン121の進退方向121a)に進退可能とされている。
【0028】
弁本体112の先端には、円板状の封鎖部112aが設けられている。封鎖部112aが流入路出口103aを封鎖することにより、流入路出口103a及び流出路入口104aを介する流入路103から流出路104への薬液の流通が遮断される。一方、封鎖部112aが流入路出口103aから離されることにより、流入路出口103a及び流出路入口104aを介する流入路103から流出路104への薬液の流通が許容される。
【0029】
弁本体112の後端には、アクチュエータ12に接続される接続部112bが設けられている。
【0030】
アクチュエータ12は、ダイヤフラム弁11の開閉動作を制御するための部分である。具体的には、アクチュエータ12は、ダイヤフラム弁11の弁本体112を進退させることにより、封鎖部112aにより流入路出口103aを開閉させる。
【0031】
本実施の形態のアクチュエータ12は、第1ハウジング120、ピストン121、第2ハウジング122及び付勢部材123を含んでいる。
【0032】
第1ハウジング120は、アクチュエータ12の下部に設けられた筒状の部材である。
図4に特に表れているように、第1ハウジング120には、第1ハウジング下部環状壁1200、案内部1201及び第1ハウジング上部環状壁1202が設けられている。
【0033】
第1ハウジング下部環状壁1200は、第1ハウジング120の下部において第1ハウジング120の外周壁を構成する環状の壁体である。第1ハウジング下部環状壁1200は、弁環状壁110と同軸状に配置されている。また、第1ハウジング下部環状壁1200は、第1ハウジング下部環状壁1200の軸方向に関して弁環状壁110に隣り合うように配置されている。第1ハウジング下部環状壁1200の内径は弁環状壁110の内径と等しくされている。但し、第1ハウジング下部環状壁1200及び弁環状壁110は必ずしも同じ内径を有していなくてもよい。また、第1ハウジング下部環状壁1200及び弁環状壁110は必ずしも同じ外径及び肉厚を有していなくてもよい。
【0034】
案内部1201は、中央に貫通孔1201aが設けられた環状部分であり、第1ハウジング120の軸方向に係る中間位置に配置されている。案内部1201及び貫通孔1201aは、第1ハウジング下部環状壁1200の軸方向に延在されている。貫通孔1201aにはピストン121の先端が挿通されており、貫通孔1201aの延在方向に沿ってピストン121が進退される。
【0035】
第1ハウジング上部環状壁1202は、第1ハウジング120の上部(案内部1201よりも上方)において第1ハウジング120の外周壁を構成する環状の壁体である。第1ハウジング上部環状壁1202は、第1ハウジング下部環状壁1200と同軸状に配置されている。第1ハウジング上部環状壁1202の内径は、第1ハウジング下部環状壁1200の内径よりも大きくされている。
【0036】
ピストン121は、第1ハウジング120の内部において第1ハウジング下部環状壁1200の軸方向に延在された略円柱状部材である。ピストン121には、ピストン本体1210及び拡径部1211が設けられている。
【0037】
ピストン本体1210は、第1ハウジング下部環状壁1200の軸方向に延在された円柱状の部分である。ピストン本体1210の先端は、弁本体112の後端に設けられた接続部112bに接続されている。ピストン本体1210の進退に応じて、弁本体112が進退される。
【0038】
拡径部1211は、ピストン本体1210の外周面からピストン本体1210の径方向外方に延出された部分である。拡径部1211の外径は、第1ハウジング上部環状壁1202の内径と実質的に等しくされている。
【0039】
第1ハウジング120の案内部1201及び第1ハウジング上部環状壁1202、並びにピストン121のピストン本体1210及び拡径部1211によって囲まれた空間を作動室124と呼ぶ。作動室124には、エアポンプ(図示せず)が接続されている。
【0040】
第2ハウジング122は、アクチュエータ12の上部に設けられた筒状の部材である。第2ハウジング122には、第2ハウジング環状壁1220、天板部1221及び案内部1222が設けられている。
【0041】
第2ハウジング環状壁1220は、第2ハウジング122の外周壁を構成する環状の壁体である。第2ハウジング環状壁1220は、第1ハウジング上部環状壁1202と同軸状に配置されている。また、第2ハウジング環状壁1220は、第2ハウジング環状壁1220の軸方向に関して第1ハウジング上部環状壁1202に隣り合うように配置されている。第2ハウジング環状壁1220の内径は第1ハウジング上部環状壁1202の内径と等しくされている。
【0042】
天板部1221は、第2ハウジング環状壁1220の上端から第2ハウジング環状壁1220の径方向内方に延出された壁部である。
【0043】
案内部1222は、内部に貫通孔1222aが設けられた筒状部分であり、天板部1221の内縁から第2ハウジング環状壁1220の軸方向に延出されている。案内部1222及び貫通孔1201aは、第2ハウジング環状壁1220と同軸に配置されている。案内部1222及び貫通孔1201aは、第1ハウジング下部環状壁1200の軸方向に延在されている。貫通孔1222aにはピストン121の後端が挿通されており、貫通孔1222aの延在方向に沿ってピストン121が進退される。
【0044】
付勢部材123は、第2ハウジング環状壁1220の天板部1221とピストン121の拡径部1211との間に位置するように、第1及び第2ハウジング120,122の内部に配置されている。付勢部材123は、ピストン121を押し下げるようにピストン121を付勢している。
【0045】
付勢部材123によりピストン121が押し下げられることにより、ダイヤフラム弁11の封鎖部112aにより流入路出口103aが封鎖される。一方、上述の作動室124にエアポンプからエアが供給されて、作動室124内の圧力が付勢部材123の付勢力を上回ると、ピストン121が上方へと変位される。ピストン121が上方へと変位されることにより、封鎖部112aが流入路出口103aから離される。
【0046】
なお、ピストン121と第1及び第2ハウジング120,122との間には、シーリングのためのシーリング部材125(Oリング)が取り付けられている。
【0047】
ここで、本実施の形態による薬液制御装置1では、ボディ10及びダイヤフラム弁11は互いに溶着又は溶接されている。より具体的には、ボディ環状壁106の上側の軸端面106aは、弁環状壁110の下側の軸端面110aに溶着又は溶接されている。これにより、ボルト及びナットを用いずにボディ10及びダイヤフラム弁11を互いに一体化でき、部品点数を減少させることができる。なお、溶着とは、弁環状壁110及びボディ環状壁106の素材を溶融して互いに接合することを意味する。また、溶接とは、弁環状壁110及びボディ環状壁106の素材に溶着し得る接合樹脂を介して弁環状壁110及びボディ環状壁106間を接合することを意味する。
【0048】
同様に、本実施の形態による薬液制御装置1では、ダイヤフラム弁11及びアクチュエータ12は互いに溶着又は溶接されている。より具体的には、弁環状壁110の上側の軸端面110bは、第1ハウジング下部環状壁1200の軸端面1200aに溶着又は溶接されている。これにより、ボルト及びナットを用いずにダイヤフラム弁11及びアクチュエータ12を互いに一体化でき、ボルト及びナットの腐食破壊に起因して漏液が発生する虞を低減できる。また、部品点数を減少させることができる。
【0049】
アクチュエータ12の第1及び第2ハウジング120,122は、例えば回転ロック機構等により着脱可能に固定することができる。
【0050】
なお、仮にダイヤフラム弁11及びアクチュエータ12の一体化にボルト及びナットを用いる場合には、ボルト及びナットをコーティングして、薬液との接触によりそれらボルト及びナットが腐食することが考えられる。しかしながら、本実施の形態のようにボルト及びナットを用いずに各部を接合することにより、ボルト及びナットをコーティングする工数を省略でき、コスト面及び納期面で有利となる。また、各部を溶着又は溶接により接合することにより、各部の接合箇所にOリングを取り付ける必要が無くなり、コスト面及び納期面で有利である。また、Oリングが不要となることで、グリス等の使用を回避でき、製品清浄度の向上効果が得られる。さらに、各部を溶着又は溶接により接合することにより、各部のシール性能を向上できる。
【0051】
次に、
図5は、
図1の薬液制御装置1の製造方法を示す斜視図である。本実施の形態の薬液制御装置1は、
図5に示すヒータ3を用いて製造することができる。ヒータ3は、中央部に開口30が形成された矩形の外観を有する装置である。ヒータ3は、外装の内部に電熱線等の加熱手段が配置された構成とすることができる。外装は、例えば金属等の熱伝導率が高い素材により構成することができる。開口30の直径は、ダイヤフラム弁11の封鎖部112aの直径よりも大きく、かつボディ環状壁106及び弁環状壁110の内径よりも小さくされている。すなわち、ヒータ3は、封鎖部112aと接触せずに、ボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aに近づけられるように構成されている。
【0052】
図5に示すように、ヒータ3の両側にボディ10及びダイヤフラム弁11が配置される。この時、ボディ10及びダイヤフラム弁11は、図示しないクランプにより挟持されており、ヒータ3に対して近づく方向及び離れる方向に変位可能とされている。この状態で、ボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aがヒータ3の端面に近づけられて軸端面106a,110aが所定温度まで加熱される。その次に、ボディ10及びダイヤフラム弁11がヒータ3から離されるとともにヒータ3が退避された後に、軸端面106a,110a同士が互いに押し当てられる。これにより、ボディ10及びダイヤフラム弁11が互いに溶着される。ダイヤフラム弁11及びアクチュエータ12も同様に溶着することができる。
【0053】
ボディ10及びダイヤフラム弁11を構成する樹脂がPFA(融点280~320℃)である場合、それらボディ10及びダイヤフラム弁11の軸端面を融点以上まで加熱する必要がある。融点未満の場合、溶着が不十分になる虞があるためである。
【0054】
ボディ10及びダイヤフラム弁11を溶接する場合、これらボディ10及びダイヤフラム弁11を構成する樹脂を融点近くまで加熱しながら、接合用の素材(溶接棒)を溶かしボディ10及びダイヤフラム弁11を溶接することができる。
【0055】
次に、
図6は、
図5のボディ環状壁106及び弁環状壁110の断面図である。
図6に示すボディ環状壁106及び弁環状壁110は溶着前又は溶接前の状態である。
図6では、ボディ環状壁106及び弁環状壁110以外の構成の図示を省略している。
【0056】
図6に示すように、溶着前又は溶接前のボディ環状壁106の軸端面106aは、ボディ環状壁106の内側に比べて外側がボディ環状壁106の軸方向に突出する傾斜面とされている。
【0057】
同様に、溶着前又は溶接前の弁環状壁110の軸端面110aは、弁環状壁110の内側に比べて外側が弁環状壁110の軸方向に突出する傾斜面とされている。
【0058】
換言すると、溶着前又は溶接前のボディ環状壁106及び弁環状壁110の端部には、断面矩形に対する欠落部106c,110cが形成されている。
【0059】
ボディ環状壁106及び弁環状壁110を溶着するために、それらボディ環状壁106及び弁環状壁110の端部を加熱して互いに押し当てると、ボディ環状壁106及び弁環状壁110の材料が側方へと逃げようとする。
図6に示すように溶着前のボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aを傾斜面としておくことで、押し当て時に逃げた材料を欠落部106c,110cで吸収できる。これにより、ボディ環状壁106とダイヤフラム弁11とを互いに溶着した後にボディ環状壁106及びダイヤフラム弁11の周面からビード(押し当て時に逃げた材料)が突出される虞を低減できる。特に、ボディ環状壁106及びダイヤフラム弁11の内周面から突出したビードにより薬液の流通が妨げられる虞を低減できる。
【0060】
なお、
図6では、ボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aの両方を傾斜面とするように説明しているが、それらボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aのいずれか一方のみが傾斜面とされていてもよい。
【0061】
次に、
図7は、
図6のボディ環状壁106及び弁環状壁110の変形例の断面図である。
図7の溶着前又は溶接前のボディ環状壁106の軸端面106aは、
図6の溶着前又は溶接前のボディ環状壁106の軸端面106aと比較して傾斜方向が逆にされている。すなわち、溶着前又は溶接前のボディ環状壁106の軸端面106aは、ボディ環状壁106の外側に比べて内側がボディ環状壁106の軸方向に突出する傾斜面とされている。同様に、
図7の溶着前又は溶接前の弁環状壁110の軸端面110aは、
図6の溶着前又は溶接前の弁環状壁110の軸端面110aと比較して傾斜方向が逆にされている。すなわち、溶着前又は溶接前の弁環状壁110の軸端面110aは、弁環状壁110の外側に比べて内側が弁環状壁110の軸方向に突出する傾斜面とされている。その他の構成は
図6の態様と同様である。
【0062】
ボディ環状壁106及び弁環状壁110を溶接するとき、
図7に示すように溶着前のボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aを傾斜面としておくことで、溶接時の開先の役割を果す。これにより、ボディ環状壁106とダイヤフラム弁11とを互いに溶接した後にボディ環状壁106及びダイヤフラム弁11の周面からビード(接合樹脂)が突出される虞を低減できる。
【0063】
なお、
図6及び
図7ではボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aが傾斜面であるように説明しているが、ボディ環状壁106の軸端面106aは、ボディ環状壁106の外側に比べて内側がボディ環状壁106の軸方向に突出するか、又はボディ環状壁106の内側に比べて外側がボディ環状壁106の軸方向に突出する段状面であってもよい。同様に、弁環状壁110の軸端面110aは、弁環状壁110の外側に比べて内側が弁環状壁110の軸方向に突出するか、又は弁環状壁110の内側に比べて外側が弁環状壁110の軸方向に突出する段状面であってもよい。
【0064】
図6及び
図7ではボディ環状壁106及び弁環状壁110の軸端面106a,110aについてのみ説明しているが、他の接合端面(弁環状壁110の上側の軸端面110b、第1ハウジング下部環状壁1200の軸端面1200a、第1ハウジング上部環状壁1202の軸端面1202a、及び第2ハウジング環状壁1220の軸端面1220a)も同様に傾斜面等によって構成することができる。
【0065】
本実施の形態のような薬液制御装置1では、ボディ環状壁106の先端部とダイヤフラム弁11とが互いに溶着又は溶接されているので、ボルト及びナットを用いずにボディ10及びダイヤフラム弁11を互いに一体化でき、ボルト及びナットの腐食破壊に起因して漏液が発生する虞を低減できる。また、部品点数を減少させることができる。
【0066】
また、弁環状壁110の軸端面110aがボディ環状壁106の軸端面106aと溶着又は溶接されているので、固定用ネジの緩み等による接合部からの液漏れが低減できる。
【0067】
さらに、弁環状壁110の内径がボディ環状壁106の内径と等しいので、管路内を流れる流体の残渣を少なくできる。
【0068】
さらにまた、接続壁111が、弁環状壁110の内周面から延出された支持壁111aと、支持壁111aと弁本体112との間に介在されるとともに支持壁111aよりも肉厚が薄い薄肉部111bとを含んでいるので、ボディ環状壁106の先端部とダイヤフラム弁11とが互いに溶着又は溶接されていても、流路の開閉をより確実に行うことができる。
【0069】
本実施の形態のようなダイヤフラム弁11によれば、弁環状壁110の軸端面110aが弁環状壁110の外側に比べて内側が弁環状壁110の軸方向に突出するか、又は弁環状壁110の内側に比べて外側が弁環状壁110の軸方向に突出しているので、ボディ環状壁106とダイヤフラム弁11とを互いに溶着又は溶接した後にボディ環状壁106及びダイヤフラム弁11の周面からビードが突出される虞を低減できる。
【符号の説明】
【0070】
1 薬液制御装置
10 ボディ
103 流入路
103a 流入路出口
104 流出路
104a 流出路入口
105 隔壁
106 ボディ環状壁
11 ダイヤフラム弁
110 弁環状壁
110a 軸端面
111 接続壁
111a 支持壁
111b 薄肉部
112 弁本体