(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】散布支援装置及び散布支援システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2019066788
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-06-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八尾 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】西川 知宏
(72)【発明者】
【氏名】東内 一輝
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143160(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004305(WO,A1)
【文献】特開2018-082648(JP,A)
【文献】特開2019-008536(JP,A)
【文献】特開2015-118482(JP,A)
【文献】特開2015-117497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0177136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 2/38
A01G 5/00 - 7/06
A01G 9/28
A01G 17/00 - 17/02
A01G 17/18
A01G 20/00 - 22/67
A01G 24/00 - 24/60
A01D 41/00 - 41/16
A01D 47/00
A01D 67/00 - 69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を複数の区画に分割する分割設定部と、
前記複数の区画毎の散布量を設定する散布量設定部と、
前記圃場に作付けされた作物の倒れ度合を示し且つ当該倒れ度合に応じて複数に区分された倒伏度を、前記複数の区画毎に取得する倒伏度取得部と、
前記圃場に散布する散布物の予定散布量であって、前記散布量設定部で設定された前記区画毎の予定散布量を取得する散布量取得部と、
前記複数に区分された倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数との対応関係を示す散布制限情報を記憶する記憶部と、
前記倒伏度取得部が取得した前記複数の区画毎の倒伏度に対応する当該複数の区画毎の前記補正係数を、前記散布制限情報を用いて特定し、前記散布量取得部が取得した前記区画毎の予定散布量に当該区画毎の前記補正係数を乗算することによって、前記複数の区画毎の予定散布量を補正する散布量補正部と、
前記散布量補正部によって補正された補正後の予定散布量である補正散布量を出力する散布量出力部と、
を備え、
前記散布制限情報は、前記複数に区分された倒伏度のうちで最小側の2つ以上の区分の倒伏度を基準内の倒伏度とし、それ以外の複数の区分を基準外の倒伏度とし、前記基準内の倒伏度
のうちで最も大きい倒伏度については前記補正係数を「1.0」とし、
前記基準内の倒伏度のうちで前記最も大きい倒伏度以外の倒伏度については前記補正係数を「1.0」よりも大きな値に設定され、前記基準外の倒伏度については倒伏度が大きくなるにつれて前記補正係数を「1.0」未満で値が小さくなるように設定されており、
前記散布量補正部は、「前記補正散布量=前記予定散布量×前記補正係数」の演算式を用いて、前記複数の区画毎に、前記予定散布量を補正した前記補正散布量を求めることにより、前記予定散布量の上限値を制限する散布支援装置。
【請求項2】
前記散布制限情報は、前記基準内の倒伏度のうちで前記最も大きい倒伏度以外の倒伏度については、前記最も大きい倒伏度との差である許容差が大きくなるほど値が大きいとした増加値を「1.0」に加算することにより、前記補正係数を当該「1.0」よりも大きな値に設定されている請求項
1に記載の散布支援装置。
【請求項3】
前記倒伏度取得部は、無人飛行体に設けられた測定装置によって測定された倒伏度を取得する請求項1
又は2に記載の散布支援装置。
【請求項4】
前記倒伏度取得部は、作物を収穫する収穫機に設けられた測定装置によって測定された倒伏度を取得する請求項1
又は2に記載の散布支援装置。
【請求項5】
圃場を複数の区画に分割する分割設定部と、
前記複数の区画毎の散布量を設定する散布量設定部と、
前記圃場に作付けされた作物の倒れ度合を示し且つ当該倒れ度合に応じて複数に区分された倒伏度を、前記複数の区画毎に取得する倒伏度取得部と、
前記圃場に散布する散布物の予定散布量であって、前記散布量設定部で設定された前記区画毎の予定散布量を取得する散布量取得部と、
前記複数に区分された倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数との対応関係を示す散布制限情報を記憶する記憶部と、
前記倒伏度取得部が取得した前記複数の区画毎の倒伏度に対応する当該複数の区画毎の前記補正係数を、前記散布制限情報を用いて特定し、前記散布量取得部が取得した前記区画毎の予定散布量に当該区画毎の前記補正係数を乗算することによって、前記複数の区画毎の予定散布量を補正する散布量補正部と、
前記散布量補正部によって補正された補正後の予定散布量である補正散布量を出力する散布量出力部と、
前記作物の出穂時期における生育データと前記作物の収量とに基づいて倒伏度を演算する第1倒伏度演算部
と、
を備え、
前記散布制限情報は、前記複数に区分された倒伏度のうちで最小側の2つ以上の区分の倒伏度を基準内の倒伏度とし、それ以外の複数の区分を基準外の倒伏度とし、前記基準内の倒伏度については前記補正係数を「1.0」とし、前記基準外の倒伏度については倒伏度が大きくなるにつれて前記補正係数を「1.0」未満で値が小さくなるように設定されており、
前記散布量補正部は、「前記補正散布量=前記予定散布量×前記補正係数」の演算式を用いて、前記複数の区画毎に、前記予定散布量を補正した前記補正散布量を求めることにより、前記予定散布量の上限値を制限し、
前記記憶部は、前記作物の出穂時期から登熟初期における生育データを記憶し、
前記第1倒伏度演算部は、前記記憶部に記憶された前記生育データを参照して、当該生育データの中から出穂時期に対応する生育データを取得し、取得した出穂時期に対応する生育データから区画毎の推定収量を演算し、区画毎の実収量と前記推定収量との収量差を演算し、「区画毎の倒伏度=前記収量差×第1換算係数(但し、前記第1換算係数は、前記収量差を倒伏度に換算する数値である。)」の演算式により、前記区画毎の倒伏度を演算し、
前記倒伏度取得部は、前記第1倒伏度演算部によって演算された倒伏度を取得す
る散布支援装置。
【請求項6】
前記作物の出穂時期における生育データと前記作物の収量とに基づいて倒伏度を演算する第1倒伏度演算部を備え、
前記記憶部は、前記作物の出穂時期から登熟初期における生育データを記憶し、
前記第1倒伏度演算部は、前記記憶部に記憶された前記生育データを参照して、当該生育データの中から出穂時期に対応する生育データを取得し、取得した出穂時期に対応する生育データから区画毎の推定収量を演算し、区画毎の実収量と前記推定収量との収量差を演算し、「区画毎の倒伏度=前記収量差×第1換算係数(但し、前記第1換算係数は、前記収量差を倒伏度に換算する数値である。)」の演算式により、前記区画毎の倒伏度を演
算し、
前記倒伏度取得部は、前記第1倒伏度演算部によって演算された倒伏度を取得する請求項
1又は2に記載の散布支援装置。
【請求項7】
前記作物の収量と前記作物に含有される成分との関係に基づいて倒伏度を演算する第2倒伏度演算部を備え、
前記倒伏度取得部は、前記第2倒伏度演算部によって演算された倒伏度を取得する請求項
1又は2に記載の散布支援装置。
【請求項8】
圃場を複数の区画に分割する分割設定部と、
前記複数の区画毎の散布量を設定する散布量設定部と、
前記圃場に作付けされた作物の倒れ度合を示し且つ当該倒れ度合に応じて複数に区分された倒伏度を測定する測定装置と、
前記測定装置によって測定された倒伏度を、前記複数の区画毎に取得する倒伏度取得部と、
前記圃場に散布する散布物の予定散布量であって、前記散布量設定部で設定された前記区画毎の予定散布量を取得する散布量取得部と、
前記複数に区分された倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数との対応関係を示す散布制限情報を記憶する記憶部と、
前記倒伏度取得部が取得した前記複数の区画毎の倒伏度に対応する当該複数の区画毎の前記補正係数を、前記散布制限情報を用いて特定し、前記散布量取得部が取得した前記区画毎の予定散布量に当該区画毎の前記補正係数を乗算することによって、前記複数の区画毎の予定散布量を補正する散布量補正部と、
前記散布量補正部によって補正された補正後の予定散布量である補正散布量を出力する散布量出力部と、
を備え、
前記散布制限情報は、前記複数に区分された倒伏度のうちで最小側の2つ以上の区分の倒伏度を基準内の倒伏度とし、それ以外の複数の区分を基準外の倒伏度とし、前記基準内の倒伏度
のうちで最も大きい倒伏度については前記補正係数を「1.0」とし、
前記基準内の倒伏度のうちで前記最も大きい倒伏度以外の倒伏度については前記補正係数を「1.0」よりも大きな値に設定され、前記基準外の倒伏度については倒伏度が大きくなるにつれて前記補正係数を「1.0」未満で値が小さくなるように設定されており、
前記散布量補正部は、「前記補正散布量=前記予定散布量×前記補正係数」の演算式を用いて、前記複数の区画毎に、前記予定散布量を補正した前記補正散布量を求めることにより、前記予定散布量の上限値を制限する散布支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布支援装置及び散布支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場への施肥量を設定する技術として、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1の施肥量設定方法は、穀物の目標収量と穀物の収量の実績値との差である収量差を算出する収量差算出ステップと、穀物の目標の目標食味値と食味値の実績値の差である食味差を算出する食味差算出ステップとを有し、収量差算出ステップで算出された収量差と食味差算出ステップで算出された食味差とに対して、重みづけの値を携帯端末等に入力することによって、施肥量を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の施肥量設定方法では、収量と食味とがトレードオフの関係があることに着目して重みづけの値を携帯端末に入力することによって施肥量を算出している。特許文献1の施肥量設定方法は、施肥量を適切に設定することができるため非常に有用な技術である。しかしながら、作物の収穫時に当該作物が倒れることによって収量が低下することがあり、このような場合には、収量に基づいて適正な散布量を設定することが困難になる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、作物の倒伏度に応じた散布量を設定することができる散布支援装置及び散布支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
散布支援装置は、圃場を複数の区画に分割する分割設定部と、前記複数の区画毎の散布量を設定する散布量設定部と、前記圃場に作付けされた作物の倒れ度合を示し且つ当該倒れ度合に応じて複数に区分された倒伏度を、前記複数の区画毎に取得する倒伏度取得部と、前記圃場に散布する散布物の予定散布量であって、前記散布量設定部で設定された前記区画毎の予定散布量を取得する散布量取得部と、前記複数に区分された倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数との対応関係を示す散布制限情報を記憶する記憶部と、前記倒伏度取得部が取得した前記複数の区画毎の倒伏度に対応する当該複数の区画毎の前記補正係数を、前記散布制限情報を用いて特定し、前記散布量取得部が取得した前記区画毎の予定散布量に当該区画毎の前記補正係数を乗算することによって、前記複数の区画毎の予定散布量を補正する散布量補正部と、前記散布量補正部によって補正された補正後の予定散布量である補正散布量を出力する散布量出力部と、を備え、前記散布制限情報は、前記複数に区分された倒伏度のうちで最小側の2つ以上の区分の倒伏度を基準内の倒伏度とし、それ以外の複数の区分を基準外の倒伏度とし、前記基準内の倒伏度のうちで最も大きい倒伏度については前記補正係数を「1.0」とし、前記基準内の倒伏度のうちで前記最も大きい倒伏度以外の倒伏度については前記補正係数を「1.0」よりも大きな値に設定され、前記基準外の倒伏度については倒伏度が大きくなるにつれて前記補正係数を「1.0」未満で値が小さくなるように設定されており、前記散布量補正部は、「前記補正散布量=前記予定散布量×前記補正係数」の演算式を用いて、前記複数の区画毎に、前記予定散布量を補正した前記補正散布量を求めることにより、前記予定散布量の上限値を制限する。
【0008】
前記散布制限情報は、前記基準内の倒伏度のうちで前記最も大きい倒伏度以外の倒伏度については、前記最も大きい倒伏度との差である許容差が大きくなるほど値が大きいとした増加値を「1.0」に加算することにより、前記補正係数を当該「1.0」よりも大きな値に設定されている。
前記倒伏度取得部は、無人飛行体に設けられた測定装置によって測定された倒伏度を取得する。
【0009】
前記倒伏度取得部は、作物を収穫する収穫機に設けられた測定装置によって測定された
倒伏度を取得する。
散布支援装置は、前記作物の出穂時期における生育データと前記作物の収量とに基づいて倒伏度を演算する第1倒伏度演算部を備え、前記記憶部は、前記作物の出穂時期から登熟初期における生育データを記憶し、前記第1倒伏度演算部は、前記記憶部に記憶された前記生育データを参照して、当該生育データの中から出穂時期に対応する生育データを取得し、取得した出穂時期に対応する生育データから区画毎の推定収量を演算し、区画毎の実収量と前記推定収量との収量差を演算し、「区画毎の倒伏度=前記収量差×第1換算係数(但し、前記第1換算係数は、前記収量差を倒伏度に換算する数値である。)」の演算式により、前記区画毎の倒伏度を演算し、前記倒伏度取得部は、前記第1倒伏度演算部によって演算された倒伏度を取得する。
【0010】
散布支援装置は、前記作物の収量と前記作物に含有される成分との関係に基づいて倒伏度を演算する第2倒伏度演算部を備え、前記倒伏度取得部は、前記第2倒伏度演算部によって演算された倒伏度を取得する。
散布支援システムは、圃場を複数の区画に分割する分割設定部と、前記複数の区画毎の散布量を設定する散布量設定部と、前記圃場に作付けされた作物の倒れ度合を示し且つ当該倒れ度合に応じて複数に区分された倒伏度を測定する測定装置と、前記測定装置によって測定された倒伏度を、前記複数の区画毎に取得する倒伏度取得部と、前記圃場に散布する散布物の予定散布量であって、前記散布量設定部で設定された前記区画毎の予定散布量を取得する散布量取得部と、前記複数に区分された倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数との対応関係を示す散布制限情報を記憶する記憶部と、前記倒伏度取得部が取得した前記複数の区画毎の倒伏度に対応する当該複数の区画毎の前記補正係数を、前記散布制限情報を用いて特定し、前記散布量取得部が取得した前記区画毎の予定散布量に当該区画毎の前記補正係数を乗算することによって、前記複数の区画毎の予定散布量を補正する散布量補正部と、前記散布量補正部によって補正された補正後の予定散布量である補正散布量を出力する散布量出力部と、を備え、前記散布制限情報は、前記複数に区分された倒伏度のうちで最小側の2つ以上の区分の倒伏度を基準内の倒伏度とし、それ以外の複数の区分を基準外の倒伏度とし、前記基準内の倒伏度のうちで最も大きい倒伏度については前記補正係数を「1.0」とし、前記基準内の倒伏度のうちで前記最も大きい倒伏度以外の倒伏度については前記補正係数を「1.0」よりも大きな値に設定され、前記基準外の倒伏度については倒伏度が大きくなるにつれて前記補正係数を「1.0」未満で値が小さくなるように設定されており、前記散布量補正部は、「前記補正散布量=前記予定散布量×前記補正係数」の演算式を用いて、前記複数の区画毎に、前記予定散布量を補正した前記補正散布量を求めることにより、前記予定散布量の上限値を制限する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作物の倒伏度に応じた散布量を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2A】収量マップM1及び散布量マップM2を表示した設定画面T1を示す図である。
【
図2B】収量マップM1、散布量マップM2及び倒伏度マップM3を表示した設定画面T1を示す図である。
【
図4】実収量Dnとタンパク含有量Tnとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、散布支援システムを示している。散布支援システムは、例えば、散布物の散布に関する支援を行うシステムである。散布物(散布剤)は、例えば、薬剤(農薬)、肥料等である。散布支援システムは、コンピュータを備えている。
コンピュータは、例えば、農家、営農会社等に設置された管理コンピュータ1aと、管理コンピュータ1a等が接続可能なサーバ1bとを含んでいる。管理コンピュータ1aは、例えば、管理者や作業者等に割り当てられたパーソナルコンピュータ(PC)である。なお、管理コンピュータ1aは、スマートフォン、タブレット、PDA等の携帯端末であってもよ
い。
【0014】
図1に示すように、サーバ1bは、散布を支援する散布支援装置であって、様々なデータ(情報)を取得可能である。サーバ1bは、例えば、圃場における作物の収量を示す収量データ、作物の化学成分を示す作物成分データ、作物の生育状況を示す生育データ、圃場における作物の倒伏度を示す倒伏度データ等を取得可能である。作物成分データとは、例えば、作物の食味(タンパク含有量)、作物の水分量(水分含有量)等である。倒伏度データ(倒伏度を示すデータ)は、圃場から上方へ伸びる作物の倒れ度合を数値化したデータである。
図5に示すように、稲等の作物が倒れておらず真っ直ぐに伸びている場合は、倒伏度は小さく、作物が倒れて地面に近づいている場合は、倒伏度は大きい。倒伏度データは、様々なセンサ等によって得ることが可能である。例えば、アラウンドビューカメラ、ステレオカメラ等で撮像した撮像画像を解析したり、超音波センサ、レーザスキャナ等によって照射した反射波によって作物の角度を演算することにより得ることができる。
【0015】
収量データ及び作物成分データは、例えば、作物の収穫時に収穫機20で検出する。収穫機20は、作物を収穫可能なコンバインである。収穫機20は、測定装置20aと、通信装置20bと、位置検出装置20cとを有している。測定装置20aは、収穫した作物の重量(収量)を検出するロードセル、収穫した作物のタンパク量、水分量を測定する分光分析装置、刈取りの前の状態を検出する周囲検出装置である。周囲検出装置は、アラウンドビューカメラ、超音波センサ、ステレオカメラ、レーザスキャナであって、収穫機20で収穫する直前の作物の状態を検出することができる。位置検出装置20cは、収穫機20の位置を検出する装置であって、GPS等の測位衛星のデータに基づいて位置(緯度、経度)を検出する。
【0016】
収穫機20は、作物を収穫する際に、測定装置20aで検出した作物の重量(収量)に、位置検出装置20cで検出された位置を対応付けて収量データとする。また、収穫機20は、作物を収穫した際に、測定装置20aで検出した作物のタンパク量(タンパク含有率)及び水分量(水分含有率)に、位置検出装置20cで検出された位置を対応付けて作物成分データとする。
【0017】
周囲検出装置は、作物の収穫時に周囲検出装置によって検出した周囲データに、位置検出装置20cで検出された位置を対応付け、周囲データを解析することによって、それぞれの位置に対応する倒伏度データを得ることができる。
通信装置20bは、少なくとも収穫機20で検出した検出情報、即ち、収量データ、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)、倒伏度データを外部に送信する装置である。通信装置20bは、収量データ、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)及び倒伏度データをサーバ1bに送信する。サーバ1bは、収量データ、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)及び倒伏度データを受信すると、受信した収量データ、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)及び倒伏度データを記憶部(データベース)10に記憶する。
【0018】
また、生育データの元データは、例えば、マルチコプター等の無人飛行体30で検出する。マルチコプター30は、本体30aと、本体30aに設けられたアーム30bと、アーム30bに設けられた回転翼30cと、本体30aに設けられたスキッド30dとを有している。回転翼30cは、飛行するための揚力を発生させる装置で、回転力を付与するロータとロータの駆動によって回転するブレード(プロペラ)とを含んでいる。
【0019】
また、マルチコプター30は、撮像装置(測定装置)30eを有している。撮像装置30eは、赤外線カメラ等で構成され、圃場の作物を撮像可能な装置である。また、マルチコプター30は、位置検出装置30fを有している。位置検出装置30fは、マルチコプター30の位置を検出する装置であって、GPS等の測位衛星のデータに基づいて位置(緯度、経度)を検出する。マルチコプター30は、圃場上を飛行して、圃場上の作物を空撮し、撮像装置30eで撮像した画像(撮像画像)に、位置検出装置30fで検出された位置を対応付けて撮像データとする。
【0020】
撮像データは、マルチコプター30に設けられた記憶部30gに記憶される。マルチコプター30の記憶部30gに記憶された撮像データは、USBメモリ、SDカード等の電子記憶媒体31に転送され、当該電子記憶媒体31に記憶される。電子記憶媒体31に記憶された撮像データは、管理コンピュータ1a、又は、管理コンピュータ1aとは別に空撮サービス会社等に設置された固定型の管理コンピュータ1cに転送される。転送された撮像データは管理コンピュータ1a又は管理コンピュータ1cに記憶される。また、管理コンピュータ1a又は管理コンピュータ1cがサーバ1bにログイン後、当該管理コンピュータ1a又は管理コンピュータ1cに記憶された撮像データは、当該サーバ1bに送信される。サーバ1bは、撮像データを受信すると、受信した撮像データを記憶部(データベース)10に記憶する。サーバ1bは、撮像データ(撮像画像)を解析することで、DVI、RVI、NDVI、GNDVI、SAVI、TSAVI、CAI、MTCI、REP、PRI、RSI等の植生指標などにより生育データを生成する。サーバ1bによって生成した生育データは記憶部10に記憶する。上述した植生指数は一例であり、限定されない。
【0021】
なお、サーバ1bは、撮像データ(撮像画像)を解析することで、位置に対応する倒伏度データを得るようにしてもよい。
また、管理コンピュータ1a又は管理コンピュータ1cによって、撮像データから生育データ及び倒伏度データを生成して、生成した生育データ及び倒伏度データを管理コンピュータ1a又は管理コンピュータ1cからサーバ1bに送信してもよい。また、上述した実施形態では、マルチコプター30で圃場の作物を撮像していたが、
図1に示すように、圃場に設置された圃場監視装置32で、圃場の作物を撮像して、撮像した撮像画像に、当該圃場監視装置32に対応付けられた圃場の位置を付加することにより撮像データを得るようにしてもよい。
【0022】
このように、サーバ1bは、収量データ、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)、生育データ及び倒伏度データを取得してデータベースとして記憶部10に保存することができる。以下、収量データ、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)、生育データ及び倒伏度データには、位置(緯度、経度)等の位置情報が含まれているとして説明を進める。
【0023】
さて、サーバ1bは、上述した収量データ等を参照しながら、圃場に散布する散布計画を作成することができる。散布計画とは、少なくとも所定の圃場において、圃場内のどの部分にどれだけの散布量の散布物(肥料、薬剤等)を散布するかを設定する計画である。
サーバ1bは、分割設定部11aと、散布量設定部11bとを備えている。分割設定部11a及び散布量設定部11bは、サーバ1bに設けられた電気・電子部品、電気回路、当該サーバ1bに格納されたプログラム等から構成されている。
【0024】
例えば、管理コンピュータ1aがサーバ1bにログインすると、当該管理コンピュータ1aの表示部40にメニュー等を選択するメニュー画面が表示される。表示部40は、液晶モニタ等により構成されている。
メニュー画面において、散布計画のアイコン、ボタン等が選択されて所定の操作が行われると、管理コンピュータ1aは、サーバ1bに対して、散布計画の作成の要求を行う。サーバ1bは、
図2Aに示すような散布計画を立てるための設定画面T1を管理コンピュータ1aに表示する。
【0025】
設定画面T1は、収量マップM1を表示する収量マップ表示部51と、散布量マップM2を表示する散布量マップ表示部52と、メッシュ入力部53とを含んでいる。収量マップ表示部51は、サーバ1bの記憶部10に記憶されている収量データの収量を可視化した収量マップM1を表示する。散布量マップ表示部52は、収量データ等によって設定された散布量を可視化した散布量マップM2を表示する。
【0026】
メッシュ入力部53は、収量マップM1及び散布量マップM2を所定の区画に区切って表示する場合に、区画1つ当たりの縦の長さL1と横の長さL2とを設定する部分である。メッシュ入力部53に、縦の長さL1及び横の長さL2が入力されると、分割設定部11aは、収量マップM1及び散布量マップM2のそれぞれに、縦の長さL1及び横の長さL2の大きさの区画Qnを作成する。なお、区画Qnに対応する位置(緯度、経度)は、区画Qnに紐付けられていて区画Qnが分かると、位置も把握することが可能である。
【0027】
分割設定部11aは、1つの圃場を示す収量マップM1に対して、1つの収量マップM1を、縦の長さL1及び横の長さL2にて、複数の区画Qn(区画数n:n=1,2,3・・・n)に分ける。分割設定部11aは、複数の区画Qnにそれぞれ対応する収量データの収量(実収量)Dnj(区画数:n=1,2,3・・・n、1区画当たりの収量のデータ数:j=1,2,3・・・j)に基づいて、1区画当たりの収量Dnを演算する。分割設定部11aは、例えば、1区画に2つの収量Dn1、Dn2が含まれる場合は、収量Dn1、Dn2を加算した収量を、1区画当たりの収量Dnに設定する。
【0028】
また、分割設定部11aは、1つの圃場を示す散布量マップM2に対して、1つの散布量マップM2を、縦の長さL1及び横の長さL2にて、複数の区画Qn(区画数n:n=1,2,3・・・n)に分ける。
散布量設定部11bは、複数の区画Qn毎の収量Dnに基づいて、区画Qn毎の予定散布量Fnを設定する。例えば、散布量設定部11bは、「予定散布量Fn=基準散布量+(基準収量-実収量Dn)×定数」により、予定散布量Fnを設定する。なお、基準散布量及び基準収量は予めサーバ1bにより定められた値であり、定数は、収量を施肥量に換算する数値である。即ち、散布量設定部11bは、実収量Dnが基準収量よりも少ない場合は予定散布量Fnが多くなるように設定し、実収量Dnが基準収量よりも多い場合は予定散布量Fnが少なくなるように設定する。なお、上述した予定散布量Fnの求め方は一例であり、例えば、基準収量を目標収量に置き換えてもよいし、実収量Dnの大きさに応じて複数段の収量ランクを設定して、収量ランクに応じて予定散布量Fnを設定してもよい。
【0029】
以上のように、分割設定部11aによる区画Qnの設定、散布量設定部11bによる予定散布量Fnの設定が完了すると、収量マップ表示部51には、収量Dnに対応した収量マップM1が表示され、散布量マップM2には、予定散布量Fnに対応した散布量マップM2が表示される。例えば、収量マップ表示部51には、収量Dnの大きさに応じて色が変化する収量マップM1が表示され、散布量マップM2には、予定散布量Fnの大きさに応じて色が変化する散布量マップM2が表示される。
【0030】
したがって、分割設定部11a及び散布量設定部11bによって収量Dnに応じた予定散布量Fnの設定、即ち、散布計画の作成を行うことができる。
さて、サーバ1bは、倒伏度に応じて予定散布量Fnの補正を行うことが可能である。
図1に示すように、サーバ1bは、倒伏度取得部11cと、散布量取得部11dと、散布量補正部11eと、散布量出力部11fとを含んでいる。倒伏度取得部11c、散布量取得部11d及び散布量補正部11eは、サーバ1bに設けられた電気・電子部品、電気回路、当該サーバ1bに格納されたプログラム等から構成されている。
【0031】
倒伏度取得部11cは、例えば、設定画面T1に表示された倒伏度ボタン54が選択されると、サーバ1bの記憶部10に記憶されている倒伏度データを取得する。なお、倒伏度取得部11cは、上述したように収穫機20の測定装置(周囲検出装置)20aによって得た倒伏度データであっても、マルチコプター30は、撮像装置(測定装置)30eによって得た倒伏度データであってもよく限定されない。
【0032】
倒伏度取得部11cが倒伏度データを取得すると、サーバ1b(分割設定部11a)は、取得した倒伏度データを、収量マップM1及び散布量マップM2と同様に、複数の区画Qn(区画数n:n=1,2,3・・・n)に対応する区画倒伏度Knを作成する。分割設定部11aは、例えば、1区画に複数の倒伏度を示すデータKnp(区画数:n=1,2,3・・・n、1区画当たりの倒伏度のデータ数:p=1,2,3・・・j)がある場合には、1区画のデータ数pの中で最も倒伏度が大きいデータpmaxを、区画倒伏度Knに設定する。例えば、1番目の区画Q1に対応する3つのデータK11、K12、K13が存在する場合、データK11、K12、K13の中で最も倒伏度が高い値を、1番目の区画Q1に対応する区画倒伏度K1に設定する。
【0033】
なお、上述した区画倒伏度Knの設定は一例であり、データKnpの平均値を区画倒伏度Knに設定してもよいし、データKnpの分布のうち信頼性が高い3σ以内のデータの平均値を区画倒伏度Knに設定してもよいし、区画倒伏度Knの設定方法は限定されない。また、
図2Bに示すように、区画倒伏度Knを求めた後は、設定画面T1に、区画倒伏度Knを示す倒伏度マップM3を表示してもよい。
【0034】
散布量取得部11dは、倒伏度ボタン54が選択された時点で、散布量設定部11bによって設定された予定散布量Fnを取得する。即ち、散布量取得部11dは、区画Qnに対応した予定散布量Fnを取得する。
散布量補正部11eは、散布量取得部11dによって予定散布量Fnを取得した後は、倒伏度取得部11cが取得した倒伏度、即ち、区画倒伏度Knに基づいて、散布量取得部11dが取得した予定散布量Fnを補正する。
図3に示すように、サーバ1bの記憶部10は、倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数W1との対応関係を示す散布制限情報を記憶している。
図3に示すように、倒伏度が基準内である場合は、補正係数W1は1.0、倒伏度が大きくなるにつれて補正係数W1は1.0未満になっている。散布量補正部11eは、補正散布量Gn=予定散布量Fn×補正係数W1により、予定散布量Fnの補正、即ち、予定散布量Fnの上限値を制限する。
【0035】
なお、倒伏度の数値、補正係数W1等は、
図3に限定されない。コシヒカリ等の品種ごとに、基準内の倒伏度の範囲を設定してもよいし、補正係数W1の数値を変更してもよい。例えば、倒伏度が零(0)であり、基準内で余裕がある場合には、補正係数W1を1.0よりも大きな値にしてもよい。補正係数W1を1.0以上にする場合は、予測される倒伏度と、基準内で最も高い倒伏度(基準内と基準外との境界になる倒伏度)との差(許容差)に基づいて、補正係数W1を求めることが好ましい。許容差が大きい場合は、補正係数W1の増加量(1.0よりも増加させる量)を大きく、許容差が小さい場合は、補正係数W1の増加量を小さくする。このようにすれば、倒伏度が基準内でありながら、収量を増加させることができる。
【0036】
また、肥料等の散布物の種類と倒伏度との関係を記憶部10に記憶しておき、散布物の種類と倒伏度との関係から補正係数W1を求めてもよい。例えば、肥料の種類として、速効性肥料、遅効性肥料、緩効性肥料、倒伏軽減剤入り肥料などがある。肥料を使用する際に、倒伏度を高めやすい肥料を用いる場合は、補正係数W1を小さく、倒伏度を高めにくい肥料を用いる場合は、補正係数W1を大きくする。より詳しくは、散布量補正部11eは、設定画面T1に散布する散布物の名称又は種類等を入力する散布物入力部(図示省略)を表示させる。散布物入力部に散布物の名称が入力された場合は、散布量補正部11eは、散布物入力部に入力された名称から散布物の種類を求める。また、散布量補正部11eは、散布物の種類を求めた場合、又は、散布物入力部に散布物の種類が入力された場合、記憶部10を参照して、散布物の種類から倒伏度の関係を割り出す。ここで、倒伏度を高めやすい散布物の場合は、散布量補正部11eの補正係数W1を小さく、倒伏度を高めにくい散布物の場合は補正係数W1を大きくする。このようにすれば、肥料の種類によって、補正係数W1を変更することができ、収量を増加させることができる。
【0037】
散布量補正部11eは、区画Qnに対応した区画倒伏度Kn及び予定散布量Fnを取得する一方、散布制限情報を参照する。散布量補正部11eは、取得した区画倒伏度Knが散布制限情報で示された標準内であれば、区画倒伏度Knに対応する補正係数W1を1.0に設定し、取得した区画倒伏度Knが散布制限情報で示された標準以外であれば、区画倒伏度Knに対応する補正係数W1を、区画倒伏度Knの大きさに合わせて散布制限情報から抽出し、抽出した補正係数W1を上述した式に適用することによって、予定散布量Fnを補正した補正散布量Gnを求める。
【0038】
散布量補正部11eは、全ての区画Qnに対応した予定散布量Fnの補正、即ち、補正散布量Gnを求めると、求めた補正散布量Gnを記憶部10に記憶する。なお、補正散布量Gnには、区画Qnの位置情報が紐付けられていて、補正散布量Gnは、どの位置における散布量であるかは把握することが可能である。
散布量出力部11fは、例えば、管理コンピュータ1aから散布計画の要求があった場合、補正散布量Gn及び当該補正散布量Gn(区画Qn)に対応する位置(緯度、経度)を、管理コンピュータ1aに送信する。管理コンピュータ1aは、補正散布量Gn及び区画Qnに対応する位置(緯度、経度)を取得すると画面上に、補正散布量Gnを示すマップ(散布量マップ)を表示することが可能である。
【0039】
上述した実施形態は、収穫機20によって得た倒伏度データ、無人飛行体30によって得た倒伏度データであったが、これに代えて、少なくとも作物の出穂期から登熟初期の期間における生育データと作物の収量(収量データ)とに基づいて倒伏度を演算してもよい。
図1に示すように、サーバ1bは、第1倒伏度演算部12を備えている。第1倒伏度演算部12は、サーバ1bに設けられた電気・電子部品、電気回路、当該サーバ1bに格納されたプログラム等から構成されている。
【0040】
第1倒伏度演算部12は、例えば、作物の出穂期(出穂時期)における生育データと作物の収量とに基づいて倒伏度を演算する。具体的には、第1倒伏度演算部12は、記憶部10に記憶された生育データを参照して、生育データの中から出穂時期に対応する生育データ(植生指標)を取得し、取得した生育データから区画Qn毎の推定の収量(推定収量)Enを演算する。第1倒伏度演算部12は、収量データから得られた区画Qn毎の実収量Dnと推定収量Enとの収量差ΔDEnを演算する。収量差ΔDEnが大きい場合は、倒伏度が大きく、収量差ΔDEnが小さい場合は、倒伏度が小さいと考えられる。第1倒伏度演算部12は、例えば、区画倒伏度Kn=収量差ΔDEn×第1換算係数により、区画倒伏度Knを求める。第1換算係数は、収量差を倒伏度に換算する数値である。なお、区画倒伏度Knを求めた後の処理は、上述した実施形態と同様である。
【0041】
また、作物に含まれる成分、即ち、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)と、作物の収量(収量データ)とに基づいて倒伏度を演算してもよい。
図1に示すように、サーバ1bは、第2倒伏度演算部13を備えている。第2倒伏度演算部13は、サーバ1bに設けられた電気・電子部品、電気回路、当該サーバ1bに格納されたプログラム等から構成されている。
【0042】
第2倒伏度演算部13は、作物成分データと収量データとの関係に基づいて倒伏度を演算する。具体的には、第2倒伏度演算部13は、記憶部10に記憶された作物成分データを参照して、作物成分データの中からタンパク含有量を取得する。第2倒伏度演算部13は、区画Qn毎のタンパク含有量Tnを求め、求めたタンパク含有量Tnと区画Qn毎の実収量Dnとの中から、
図4に示すように、実収量Dnとタンパク含有量Tnとが標準的なエリアR1に入るデータのみを用いて、実収量Dnとタンパク含有量Tnとの相関関係、即ち、近似曲線L1を求める。第2倒伏度演算部13は、エリアR1において、近似曲線L1から所定離れた理想的なエリアR1aでは、区画倒伏度Knは基準内として設定し、実収量Dn及びタンパク含有量Tnで示される位置が理想的なエリアR1aから離れるにしたがって、区画倒伏度Knを大きい値に設定する。即ち、第2倒伏度演算部13は、実収量Dnとタンパク含有量Tnとの関係が理想的なエリアR1aである場合は、区画倒伏度Knは小さく、理想的なエリアR1aから離れる度合いに応じて、区画倒伏度Knを大きくする。言い換えれば、第2倒伏度演算部13は、実収量Dnとタンパク含有量Tnとの位置P1と、エリアR1aとの距離L2に応じて、区画倒伏度Knを大きくする。
【0043】
標準的なエリアR1、即ち、タンパク含有量と収量との関係において適正と考えられるエリアは、品種と地域との関係に基づいて変更してもよい。
以上によれば、生育データ(植生指数)、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)、収量等から倒伏度を求めているため、生育データ(植生指数)、作物成分データ(タンパク含有率、水分含有率)、収量等から、施肥量の上限値を設定することができる。なお、生育データ、作物成分データ及び収量は、過去のデータ、例えば、サーバ1bに蓄積された昨年等のデータであってもよい。また、施肥量の上限値は、気象情報、土壌情報等から得られる地力等によって修正してもよい。
【0044】
散布支援装置1bは、圃場に作付けされた作物の倒伏度を取得する倒伏度取得部11cと、圃場に散布する散布物の予定散布量Fnを取得する散布量取得部11dと、倒伏度取得部11cが取得した倒伏度に基づいて、散布量取得部11dが取得した予定散布量Fnを補正する散布量補正部11eと、散布量補正部11eによって補正された補正後の予定散布量Fnである補正散布量Gnを出力する散布量出力部11fと、を備えている。これによれば、散布量補正部11eによって、倒伏度取得部11cが取得した倒伏度と、散布量取得部11dが取得した予定散布量Fnとに基づいて、予定散布量Fnを補正することができ、補正した後の予定散布量Fnである補正散布量Gnを出力することによって、補正散布量Gnを用いて肥料等の散布を行うことができる。例えば、作物の倒伏度が大きい場合には、予め定められた予定散布量Fnを小さくした補正散布量Gnを用いて散布を行うことができ、作物の倒伏度が小さい場合には、予定散布量Fnを変更せずに散布を行うことができる。
【0045】
散布支援装置1bは、圃場を複数の区画Qnに分割する分割設定部11aと、複数の区画Qn毎の散布量を設定する散布量設定部11bと、を備え、散布量取得部11dは、散布量設定部11bで設定された区画Qn毎の予定散布量Fnを取得し、倒伏度取得部11cは、複数の区画Qn毎の倒伏度を取得し、散布量補正部11eは、複数の区画Qn毎の倒伏度に基づいて区画Qn毎の予定散布量Fnを補正する。これによれば、圃場を複数の区画Qnに分割した場合に、区画Qn毎に予定散布量Fnを補正することができ、区画Qn毎に細かな施肥等の散布を行うことができる。
【0046】
散布支援装置1bは、倒伏度と、散布量の上限を制限する補正係数との対応関係を示す散布制限情報を記憶する記憶部10を備え、散布量補正部11eは、予定散布量Fnに散布制限情報で示された補正係数を乗算することによって、予定散布量Fnの上限を制限する。これによれば、予定散布量Fnが大きく設定された場合でも、補正係数によって予定散布量Fnの上限を制限することができるため、作物の倒伏を抑制することができる。
【0047】
倒伏度取得部11cは、無人飛行体30に設けられた測定装置30eによって測定された倒伏度を取得する。これによれば、無人飛行隊30によって得られた倒伏度を用いて、補正散布量Gnの設定を簡単に行うことができる。
倒伏度取得部11cは、作物を収穫する収穫機20に設けられた測定装置20aによって測定された倒伏度を取得する。これによれば、収穫機20によって得られた倒伏度を用いて、補正散布量Gnの設定を簡単に行うことができる。
【0048】
散布支援装置1bは、作物の出穂時期における生育データと作物の収量とに基づいて倒伏度を演算する第1倒伏度演算部12を備え、倒伏度取得部11cは、第1倒伏度演算部12によって演算された倒伏度を取得する。これによれば、直接的に作物の倒伏度を測定しなくても、生育データと作物の収量との関係を用いて簡単に倒伏度を演算することができる。例えば、昨年の作物の収穫時において作物の倒伏度を直接測定していなくても、生育データ及び収量によって得られた倒伏度によって散布量の設定を行うことができる。
【0049】
散布支援装置1bは、作物の収量と作物に含有される成分との関係に基づいて倒伏度を演算する第2倒伏度演算部13を備え、倒伏度取得部11cは、第2倒伏度演算部13によって演算された倒伏度を取得する。これによれば、直接的に作物の倒伏度を測定しなくても、作物の収量と作物の成分との関係を用いて簡単に倒伏度を演算することができる。例えば、昨年の作物の収穫時において作物の倒伏度を直接測定していなくても、作物の収量及び成分によって得られた倒伏度によって散布量の設定を行うことができる。
【0050】
散布支援システムは、圃場に作付けされた作物の倒伏度を測定する測定装置20a、30eと、測定装置20a、30eによって測定された倒伏度を取得する倒伏度取得部11cと、圃場に散布する散布物の予定散布量Fnを取得する散布量取得部11dと、倒伏度取得部11cが取得した倒伏度に基づいて、散布量取得部11dが取得した予定散布量Fnを補正する散布量補正部11eと、散布量補正部11eによって補正された補正後の予定散布量Fnである補正散布量Gnを出力する散布量出力部11fと、を備えている。これによれば、散布量補正部11eによって、倒伏度取得部11cが取得した倒伏度と、散布量取得部11dが取得した予定散布量Fnとに基づいて、予定散布量Fnを補正することができ、補正した後の予定散布量Fnである補正散布量Gnを出力することによって、補正散布量Gnを用いて肥料等の散布を行うことができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1a :管理コンピュータ
1b :サーバ(散布支援装置)
1c :管理コンピュータ
10 :記憶部
11a :分割設定部
11b :散布量設定部
11c :倒伏度取得部
11d :散布量取得部
11e :散布量補正部
11f :散布量出力部
12 :第1倒伏度演算部
13 :第2倒伏度演算部
20 :収穫機
20a :測定装置
20b :通信装置
20c :位置検出装置
30 :マルチコプター(無人飛行体)
30a :本体
30b :アーム
30c :回転翼
30d :スキッド
30e :撮像装置(測定装置)
30f :位置検出装置
30g :記憶部
31 :電子記憶媒体
32 :圃場監視装置
40 :表示部
51 :収量マップ表示部
52 :散布量マップ表示部
53 :メッシュ入力部
54 :倒伏度ボタン
Dn :収量(実収量)
En :推定収量
Fn :予定散布量
Gn :補正散布量
Kn :区画倒伏度
Knp :データ
L1 :近似曲線
M1 :収量マップ
M2 :散布量マップ
M3 :倒伏度マップ
Qn :区画
R1 :エリア
R1a :エリア
T1 :設定画面
Tn :タンパク含有量
W1 :補正係数
n :区画数
p :データ数
pmax :データ
ΔDEn :収量差