(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】押下操作検出装置および押下操作検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230213BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20230213BHJP
H01H 13/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/041 522
G06F3/02 400
H01H13/02 Z
(21)【出願番号】P 2019108092
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊一
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-080219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0045624(US,A1)
【文献】特開2015-207034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0301684(US,A1)
【文献】国際公開第2013/001775(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0139472(US,A1)
【文献】特開2004-362429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0097084(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1813237(CN,A)
【文献】特表2007-512619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0110769(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1906658(CN,A)
【文献】特開2013-117900(JP,A)
【文献】特開2004-355606(JP,A)
【文献】特開2013-015461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/02
H01H 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる操作部に対する接触を検出する接触検出部と、
上記操作部に対する押下量を検出する押下量検出部と、
上記接触検出部により上記接触が検出され、かつ、上記押下量検出部により検出される上記押下量が押下量閾値に達したか否かに基づいて、上記操作部に対する押下操作が行われたか否かを判定する押下操作判定部と、
上記押下量検出部により検出される押下量の増減の発生頻度を一定時間毎に検出する増減頻度検出部と、
上記接触検出部により上記操作部に対する接触が検出されていない状態下で上記増減頻度検出部により検出される上記押下量の増減の発生頻度に基づいて、上記押下操作判定部による判定処理の内容を変えるように制御する判定制御部とを備えたことを特徴とする押下操作検出装置。
【請求項2】
上記判定制御部は、上記接触検出部により上記操作部に対する接触が検出されていない状態下で、上記一定時間毎に、上記増減頻度検出部により検出される上記押下量の増減の発生頻度が頻度閾値より大きいか否かを判定し、その判定結果に応じて、上記押下操作判定部が判定に用いる上記押下量閾値を変更することを特徴とする請求項1に記載の押下操作検出装置。
【請求項3】
上記判定制御部は、上記増減頻度検出部により検出される上記押下量の増減の発生頻度が上記頻度閾値より大きい場合は、上記押下操作判定部に設定する上記押下量閾値を現在値より大きい値に変更する一方、上記増減頻度検出部により検出される上記押下量の増減の発生頻度が上記頻度閾値より大きくない場合は、上記押下操作判定部に設定する上記押下量閾値を現在値より小さい値に変更することを特徴とする請求項2に記載の押下操作検出装置。
【請求項4】
上記判定制御部は、上記押下操作判定部に設定した上記押下量閾値が所定値以上の場合は、上記押下量検出部により検出される上記押下量が上記押下量閾値に達したか否かの判定に代えて、上記押下量検出部により検出される上記押下量が上記押下量閾値に達している連続時間が所定長に達したか否かの判定を行うように、上記押下操作判定部による判定処理の内容を変更することを特徴とする請求項2または3に記載の押下操作検出装置。
【請求項5】
上記判定制御部は、上記押下操作判定部に設定した上記押下量閾値が所定値以上の場合は、上記押下操作判定部による判定処理を行わないように制御することを特徴とする請求項2または3に記載の押下操作検出装置。
【請求項6】
上記判定制御部は、上記押下操作判定部に設定した上記押下量閾値が上記所定値よりも大きい第2所定値以上の場合は、上記押下操作判定部による判定処理を行わないように制御することを特徴とする請求項4に記載の押下操作検出装置。
【請求項7】
押下操作検出装置の接触検出部が、ユーザによる操作部に対する接触を検出するステップと、
上記押下操作検出装置の押下量検出部が、上記操作部に対する押下量を検出するステップと、
上記押下操作検出装置の増減頻度検出部が、上記押下量検出部により検出される押下量の増減の発生頻度を一定時間毎に検出するステップと、
上記押下操作検出装置の判定制御部が、上記接触検出部により上記操作部に対する接触が検出されていない状態下で上記増減頻度検出部により検出される上記押下量の増減の発生頻度に基づいて、押下操作判定部による判定処理の内容を変えるように制御するステップと、
上記押下操作検出装置の上記押下操作判定部が、上記判定制御部により制御された判定処理の内容に従って、上記接触検出部により上記接触が検出され、かつ、上記押下量検出部により検出される上記押下量が押下量閾値に達したか否かに基づいて、上記操作部に対する押下操作が行われたか否かを判定するステップとを有することを特徴とする押下操作検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押下操作検出装置および押下操作検出方法に関し、特に、操作部への接触および押下量により押下操作を検出するように成された押下操作検出装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル付きディスプレイに表示されたGUI(Graphical User Interface)等をユーザが操作した際に、タッチパネルへの接触に加えて押下量を検出し、押下量が閾値を超えたことを検出したときにそのGUIが押下操作されたと判定するようにしたものが知られている。ユーザがタッチパネルを押圧したときの押下力を押下力検出センサにより検出し、検出した押下力に応じて変動する押下量を押下操作の有無の判定に用いることで、ユーザに確実な押下操作を要求することができる。
【0003】
ところで、タッチパネルおよび押下力検出センサを含む押下検出構造が車両に搭載される場合において、当該押下検出構造がダッシュボード等に設置される構造によっては、押下力検出センサが車両の振動の影響を受けて押下力を検出することがある。そして、振動に基づく押下量が検出されているときにユーザがタッチパネルを操作すると、ユーザがタッチパネルに軽く接触した程度で押下量が閾値に達し、押下操作が行われたと判定されてしまうことがある。
【0004】
この場合、ユーザが押下操作のために想定している必要な押下力と、押下操作が検出されるまでに実際に加えた押下力との間にギャップが生じ(押下操作が検出されたことは、GUIに対する押下操作の検出に応じて画面の表示が切り替わったり、触覚フィードバックが与えられたりすることによって確認される)、ユーザに違和感を与えてしまうことがあるという問題があった。
【0005】
なお、振動の影響による押圧操作の誤検出を抑制するようになされた装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の装置では、センサにより検出された圧力値の周波数成分について、所定の閾値(カットオフ周波数)よりも高い周波数帯域を減衰させるLPFによってノイズをカットし、高周波帯域が遮断された結果に基づいて押圧位置を算出する。また、特許文献1には、センサにより検出される圧力値のピークが所定の上限閾値以上または所定の下限閾値以下である場合や、圧力値が検出されている継続時間が所定の閾値以下である場合には、人の押圧操作ではないとみなし、圧力値に基づく押圧位置の算出を行わないようにすることも開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、振動体上に載置されるベース部と、ベース部に対して弾性体を介して支持される操作面を備えたタッチパッドと、操作面の動きを検出する荷重センサとを備えた操作装置において、操作面へのタッチ操作の荷重信号または振動体から伝達される荷重信号の何れであるかを判定し、タッチ操作の有無を検出することが開示されている。具体的には、荷重信号の振幅値を検出し、その振幅値の減衰の仕方に応じて上記の判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-181703号公報
【文献】特開2018-5781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような問題を解決するために成されたものであり、ユーザにとって違和感のある押下操作の検出が振動の影響によって発生することを抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、ユーザによる操作部に対する接触が検出され、かつ、操作部に対する押下量が押下量閾値に達したか否かに基づいて、操作部に対する押下操作が行われたか否かを判定する。本発明では、この判定を行う際に、押下量の増減の発生頻度を一定時間毎に検出し、操作部に対する接触が検出されていない状態下で検出される押下量の増減の発生頻度に基づいて、押下操作が行われたか否かの判定処理の内容を変えるようにしている。
【発明の効果】
【0010】
操作部に対する接触が検出されていないにもかかわらず、操作部に対する押下量が検出されている場合には、検出された押下量の増減が振動に起因するものである可能性がある。上記のように構成した本発明によれば、押下量の増減の発生頻度に応じて、押下操作の判定処理の内容を、振動の影響が小さくなるような内容に変えることができ、それにより、ユーザにとって違和感のある押下操作の検出が振動の影響によって発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態による押下操作検出装置を適用した車載装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態による押下操作検出装置を含む演算処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態による増減頻度検出部の動作例を模式的に示す図である。
【
図4】本実施形態の押下操作検出装置による押下操作の検出動作例を模式的に示す図である。
【
図5】本実施形態による押下操作検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態による押下操作検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態による押下操作検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による押下操作検出装置を適用した車載装置の構成例を模式的に示す図である。
図1に示すように、車載装置は、本実施形態による押下操作検出装置を含む演算処理装置100、タッチパネル101、表示パネル102および押下力検出センサ103を備えて構成される。
【0013】
タッチパネル101は、特許請求の範囲の操作部に相当するものであり、車両に搭乗しているユーザが触れた位置を検知し、その接触位置を示す接触位置情報を出力する。表示パネル102は、演算処理装置100により生成される画像を表示するものであり、例えば液晶パネルまたは有機ELパネル等により構成される。押下力検出センサ103は、ユーザがタッチパネル101を押圧したときの押下力を検出するものであり、押下力に応じて変動する押下量を示す押下量情報を出力する。
【0014】
図1に示すように、最上層にタッチパネル101が配置され、タッチパネル101の下層に表示パネル102が配置され、表示パネル102の下層に押下力検出センサ103が配置されている。ユーザがタッチパネル101の所望の位置を軽く接触すると、その接触位置がタッチパネル101により検出される。また、ユーザがタッチパネル101の所望の位置を強く接触する(押下する)と、その押下力がタッチパネル101から表示パネル102を介して押下力検出センサ103に伝達され、接触位置がタッチパネル101により検出されるとともに、押下力(押下量)が押下力検出センサ103により検出される。
【0015】
なお、
図1に示したタッチパネル101、表示パネル102および押下力検出センサ103の構成および配置は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、表示パネル102をタッチパネル101および押下力検出センサ103よりも若干小さく構成し、表示パネル102の外側においてタッチパネル101と押下力検出センサ103とを連結するようにすることで、ユーザがタッチパネル101を押下したときの押下力がタッチパネル101から表示パネル102を介さずに押下力検出センサ103にダイレクトに伝達されるように構成してもよい。
【0016】
タッチパネル101により検出された接触位置情報および押下力検出センサ103により検出された押下量情報は、演算処理装置100に供給される。演算処理装置100は、タッチパネル101から供給される接触位置情報および押下力検出センサ103から供給される押下量情報に基づいて、押下操作が行われたか否かを判定し、押下操作が行われたと判定した場合に、接触位置に表示されているGUIの内容に応じた所定の処理を実行する。
【0017】
図2は、本実施形態による押下操作検出装置を含む演算処理装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態による演算処理装置100は、その機能構成として、接触検出部11、押下量検出部12、押下操作判定部13、判定制御部14、増減頻度検出部15、処理実行部17および表示制御部18を備えている。このうち、接触検出部11、押下量検出部12、押下操作判定部13、判定制御部14および増減頻度検出部15により、本実施形態による押下操作検出装置が構成される。
【0018】
上記各機能ブロック11~18は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~18は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0019】
接触検出部11は、タッチパネル101から供給される接触位置情報に基づいて、ユーザによるタッチパネル101に対する接触を検出する。また、接触検出部11は、タッチパネル101から供給される接触位置情報に基づいて、タッチパネル101への接触位置も検出する。タッチパネル101に対する接触の有無に関する情報は押下操作判定部13および判定制御部14により利用され、接触位置に関する情報は処理実行部17により利用される。
【0020】
押下量検出部12は、押下力検出センサ103から供給される押下量情報に基づいて、ユーザによるタッチパネル101に対する押下量を逐次検出する。タッチパネル101に対する押下量に関する情報は、押下操作判定部13および増減頻度検出部15により利用される。
【0021】
押下操作判定部13は、接触検出部11により検出されるタッチパネル101に対する接触と、押下量検出部12により検出されるタッチパネル101に対する押下量とに基づいて、タッチパネル101に対する押下操作が行われたか否かを判定する。ここでいう押下操作とは、タッチパネル101を軽く接触するだけでなく、閾値として設定された押下量に達するまで強くタッチパネル101を押下する操作をいう。すなわち、押下操作判定部13は、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出され、かつ、押下量検出部12により検出される押下量が閾値(以下、押下量閾値という)に達したか否かに基づいて、タッチパネル101に対する押下操作が行われたか否かを判定する。
【0022】
増減頻度検出部15は、押下量検出部12により検出される押下量の増減の発生頻度を一定時間毎に検出する。押下量の増減とは、押下量が増加した後で減少する状態をいう。発生頻度は、このような押下量の増減が一定時間(例えば、5秒)の間に発生する回数をいう。増減頻度検出部15は、このような押下量の増減が一定時間内に起こる回数(発生頻度)を、一定時間毎に繰り返し検出する。押下量の増減の発生頻度を検出するのは、押下量の増減が、繰り返しの振動に因るものかどうかを判定するためである。
【0023】
なお、増減頻度検出部15は、押下量が増加した後で減少する状態を捉えて1回の増減として検出するようにしてもよいが、次のようにしてもよい。例えば、振動検出用の閾値を設け、押下量検出部12により検出される押下量が、振動検出用の閾値より小さい値から大きい値へと変動したことをもって、1回の増減を検出するようにしてもよい。これとは逆に、押下量検出部12により検出される押下量が、振動検出用の閾値より大きい値から小さい値へと変動したことをもって、1回の増減を検出するようにしてもよい。このように、振動検出用の閾値を設定して押下量の増減を検出することにより、わずかな値で変動するような増減を無視して発生頻度を検出することができる。
【0024】
判定制御部14は、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出されていない状態下で増減頻度検出部15により検出される押下量の増減の発生頻度に基づいて、押下操作判定部13による判定処理の内容を変えるように制御する。具体的には、判定制御部14は、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出されていない状態下で、一定時間毎に、増減頻度検出部15により検出される押下量の増減の発生頻度が閾値(以下、頻度閾値という)より大きいか否かを判定し、その判定結果に応じて、押下操作判定部13が判定に用いる押下量閾値を変更する。
【0025】
例えば、判定制御部14は、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出されていない状態下で、増減頻度検出部15により検出される押下量の増減の発生頻度が頻度閾値より大きい場合は、押下操作判定部13に設定する押下量閾値を現在値より大きい値に変更する。このときの増加幅はあらかじめ決められている。一方、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出されていない状態下で、増減頻度検出部15により検出される押下量の増減の発生頻度が頻度閾値より大きくない場合は、押下操作判定部13に設定する押下量閾値を現在値より小さい値に変更する。このときの減少幅はあらかじめ決められている。判定制御部14は、このような処理を一定時間毎に繰り返す。これにより、押下操作判定部13に設定される押下量閾値は、一定時間毎に動的に変動する。
【0026】
タッチパネル101に対する接触が検出されていないにもかかわらず、検出される押下量の増減の発生頻度が頻度閾値より大きい場合は、ユーザがタッチパネル101を押下している状況ではなく、押下力検出センサ103が車両の振動の影響を受けて、その振動に起因して頻繁に増減する押下力を検出している状況であると推定することが可能である。この場合は、振動に起因して検出される押下量だけで押下操作が行われたと誤判定されたり、ユーザがタッチパネル101に軽く接触した程度で押下操作が行われたと判定されたりすることを抑制するために、押下操作判定部13に設定する押下量閾値を現在値より大きい値に変更する。一方、検出される押下量の増減の発生頻度が頻度閾値より大きくない場合は、車両の振動による影響を受けていない状況であると推定することが可能である。この場合は、大きくされた押下量閾値を元の値に近づけるために、押下操作判定部13に設定する押下量閾値を現在値より小さい値に変更する。
【0027】
ここで、押下操作判定部13に設定し得る押下量閾値の最小値と最大値とをあらかじめ決めておく。このため、押下量閾値が最小値に達した後、それより小さい値に押下量閾値が下がることはない。同様に、押下量閾値が最大値に達した後、それより大きい値に押下量閾値が上がることはない。最大値を設定しておくのは、無制限に押下量閾値を大きくしていくと、ユーザがタッチパネル101を押下する際に、相当に強い力で押下しないと押下操作が検出されない状態が生じてしまうからである。最小値を設定しておくのは、無制限に押下量閾値を小さくしていくと、振動がない状況下でユーザがタッチパネル101を少し触れた程度で押下操作が検出されてしまい、ユーザに確実な押下操作を要求することができなくなってしまうからである。なお、押下量閾値の初期値は、例えば押下量閾値の最小値に設定されている。また、上述した振動検出用の閾値は、押下量閾値の最小値よりも小さい値に設定されている。
【0028】
なお、発生している振動の周波数が高い場合、それが単発的な振動であったとしても、押下量検出部12により検出される押下量は小刻みに増減する。そのため、増減頻度検出部15により検出される増減の発生頻度が頻度閾値より大きくなり、押下操作判定部13の押下量閾値が現在値より大きい値に変更されてしまうことがある。このようなことを防ぐために、増減頻度検出部15は、
図3に示すような処理によって増減の発生頻度を検出するようにしてもよい。
【0029】
すなわち、増減頻度検出部15は、
図3(b)に示すように、上述した一定時間(例えば5秒)を細分化して複数の分割区間を設定する。例えば、1つの分割区間の長さを500ミリ秒として、一定時間の中に10個の分割区間を設定する。
図3(a)は、10個のうち1つの分割区間を示したものである。増減頻度検出部15は、
図3(a)に示すように、それぞれの分割区間ごとに、押下量の増減の発生頻度を検出し、それが閾値(上述の頻度閾値と区別するために、区間内閾値という)を超えた場合に「増減あり」とする。
【0030】
図3(b)は、10個の分割区間のそれぞれについて、増減の有無を判定した結果を示したものである。ここでは、4個の分割区間において「増減あり」と判定されている。判定制御部14は、
図3(b)のように、「増減あり」と判定された分割区間の数が頻度閾値を超えた場合に、押下量閾値を現在値より大きい値に変更する。
【0031】
以上のような判定制御部14の制御により、押下操作判定部13は、次のように動作することになる。すなわち、押下操作判定部13は、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出され、かつ、押下量検出部12により検出される押下量が、以上のように動的に変動する押下量閾値に達した場合に、タッチパネル101に対する押下操作が行われたと判定する。一方、接触検出部11によりタッチパネル101に対する接触が検出されていない場合、または、押下量検出部12により検出される押下量が押下量閾値に達していない場合には、押下操作判定部13は、タッチパネル101に対する押下操作が行われていないと判定する。
【0032】
処理実行部17は、タッチパネル101に対する押下操作が行われたと押下操作判定部13により判定された場合に、タッチパネル101への接触位置に表示されているGUIに対応した所定の処理を実行する。表示制御部18は、処理実行部17による所定の処理の実行結果に基づいて、処理実行部17により生成された画像を表示パネル102に表示させるように制御する。これにより、タッチパネル101に対する押下操作に応じて、表示パネル102に表示される画像が切り替えられる。
【0033】
図4は、本実施形態の押下操作検出装置による押下操作の検出動作例を模式的に示す図である。
図4において、横軸は経過時間、縦軸は押下量をそれぞれ示している。
図4において、時点t1から時点t2までの間、時点t2から時点t3までの間がそれぞれ5秒の一定期間である。説明の便宜上、前者を第1の期間PD1、後者を第2の期間PD2という。実際にはこの後も一定期間は繰り返されるが、図示を省略している。
【0034】
図4に示すように、第1の期間PD1では、押下量閾値が第1の閾値Th1に設定されている。この第1の閾値Th1は、例えば初期値(押下量閾値として設定し得る最小値)であるものとする。第1の期間PD1では、押下量検出部12により検出される押下量について、振動に起因する増減が3回発生している。ここで、頻度閾値が2回に設定されているとすると、増減の発生頻度が頻度閾値を超えているので、判定制御部14は押下操作判定部13の押下量閾値を現在値(第1の閾値Th1)より大きい第2の閾値Th2に変更する。これにより、第1の期間PD1の次の第2の期間PD2では、押下量閾値が第2の閾値Th2に設定されている。
【0035】
第2の期間PD2では、押下量検出部12により検出される押下量について、振動に起因する増減が1回発生している。第2の期間PD2で発生している増減の回数は頻度閾値より少ないため、判定制御部14は押下操作判定部13の押下量閾値を現在値(第2の閾値Th2)より小さい第1の閾値Th1に変更する。これにより、第2の期間PD2の次の第3の期間PD3(図示せず)では、押下量閾値が第1の閾値Th1に設定される。
【0036】
第2の期間PD2において、振動に起因して発生している押下量の増減のピークのタイミングで、ユーザがタッチパネル101を操作したとする。このとき、押下量閾値はTh1からTh2へと大きくなっているので、増減のピークと押下量閾値Th2との差分Δの押下量は少なくともタッチパネル101を押下しないと、押下操作判定部13により押下操作が行われたと判定されることがない。これにより、ユーザが押下操作のために想定している必要な押下力と、押下操作が検出されるまでに実際に加えた押下力とのギャップが小さくなり、ユーザに違和感を与えないようにするか、与える違和感を小さくすることができる。
【0037】
図5~
図7は、以上のように構成した押下操作検出装置の動作例を示すフローチャートである。
図5および
図6は、
図3(a)に示した分割区間における「増減の有無」を検出する処理および
図3(b)に示した一定期間における「増減の頻度」を検出する処理の一例を示す。
図7は、増減の発生頻度に基づいて押下量閾値を変更する処理の一例を示す。
【0038】
図5に示すフローチャートは、車載装置の電源がオンとなったときに開始し、常時動作する。
図6に示すフローチャートは、車載装置の電源がオンとなったときに開始し、500ミリ秒毎に繰り返し実行される。
図7に示すフローチャートは、車載装置の電源がオンとなったときに開始し、5秒毎に繰り返し実行される。なお、電源オン直後の初期状態において、押下操作判定部13の押下量閾値は最小値に設定されている。
【0039】
図5において、押下量検出部12は、押下力検出センサ103から供給される押下量情報に基づいて、タッチパネル101に対する押下量を検出する(ステップS11)。そして、増減頻度検出部15は、押下量検出部12により検出された押下量が、振動検出用の閾値より大きい値から小さい値へと変動したか否かを判定する(ステップS12)。
【0040】
ここで、押下量が振動検出用の閾値より大きい値から小さい値へと変動した場合、増減頻度検出部15は、分割区間内における押下量の増減の回数をカウントするためのカウンタ(以下、分割区間内カウンタCNT1という)の値をインクリメントし(ステップS13)、
図5に示すフローチャートの1回の処理を終了する。一方、押下量が振動検出用の閾値より大きい値から小さい値へと変動していない場合は、分割区間内カウンタCNT1の値をインクリメントせず、
図5に示すフローチャートの1回の処理を終了する。
【0041】
図6において、増減頻度検出部15は、まず、分割区間の経過時間を計測するためのタイマ(以下、分割区間タイマTM1という)による計測を開始する(ステップS21)。そして、増減頻度検出部15は、分割区間内カウンタCNT1の値が区分内閾値nより大きいか否かを判定する(ステップS22)。
【0042】
ここで、分割区間内カウンタCNT1の値が区間内閾値nより大きい場合、一定期間内における押下量の増減の回数(増減ありと判断された分割区間の個数)をカウントするためのカウンタ(以下、一定期間内カウンタCNT2という)の値をインクリメントし(ステップS23)、処理はステップS24に進む。一方、分割区間内カウンタCNT1の値が区間内閾値nより大きくない場合は、一定期間内カウンタCNT2の値をインクリメントせず、処理はステップS24に進む。
【0043】
ステップS24において、増減頻度検出部15は、分割区間タイマTM1の値が500ミリ秒になったか否かを判定する。分割区間タイマTM1の値がまだ500ミリ秒になっていない場合、処理はステップS22に戻る。一方、分割区間タイマTM1の値が500ミリ秒になった場合、増減頻度検出部15は、分割区間内カウンタCNT1の値および分割区間タイマTM1の値をそれぞれクリアして(ステップS25)、
図6に示すフローチャートの1回の処理を終了する。
【0044】
図7において、増減頻度検出部15は、まず、一定期間の経過時間を計測するためのタイマ(以下、一定期間タイマTM2という)による計測を開始する(ステップS31)。そして、増減頻度検出部15は、一定期間内カウンタCNT2の値が頻度閾値mより大きいか否かを判定する(ステップS32)。
【0045】
ここで、一定期間内カウンタCNT2の値が頻度閾値mより大きい場合、増減頻度検出部15は、押下操作判定部13に設定されている押下量閾値Thの現在値が最大値か否かを判定し(ステップS33)、最大値でなければ、押下量閾値Thを現在値より大きい値に変更する(ステップS34)。一方、押下量閾値Thの現在値が最大値の場合は、ステップS34の処理を行わず、押下量閾値Thを現在値(最大値)のままとする。
【0046】
上記ステップS32において、一定期間内カウンタCNT2の値が頻度閾値mより大きくないと判定された場合、増減頻度検出部15は、押下操作判定部13に設定されている押下量閾値Thの現在値が最小値(初期値)か否かを判定し(ステップS35)、最小値でなければ、押下量閾値Thを現在値より小さい値に変更する(ステップS36)。一方、押下量閾値Thの現在値が最小値の場合は、ステップS36の処理を行わず、押下量閾値Thを現在値(最小値)のままとする。
【0047】
ステップS33~S36の何れかの処理の後、増減頻度検出部15は、一定期間タイマTM2の値が5秒になったか否かを判定する。一定期間タイマTM2の値がまだ5秒になっていない場合、処理はステップS32に戻る。一方、一定期間タイマTM2の値が5秒になった場合、増減頻度検出部15は、一定期間内カウンタCNT2の値および一定期間タイマTM2の値をそれぞれクリアして(ステップS38)、
図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。
【0048】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、ユーザによるタッチパネル101に対する接触が検出され、かつ、タッチパネル101に対する押下量が押下量閾値に達したか否かに基づいて、タッチパネル101に対する押下操作が行われたか否かを判定する。そして、この判定を行う際に、押下量の増減の発生頻度を一定時間毎に検出し、タッチパネル101に対する接触が検出されていない状態下で検出される押下量の増減の発生頻度に基づいて、押下操作判定部13に設定する押下量閾値の値を変えるようにしている。
【0049】
上記のように構成した本実施形態において、タッチパネル101に対する接触が検出されていないにもかかわらず、タッチパネル101に対する押下量が検出されている場合には、検出された押下量の増減が振動に起因するものである可能性があると言える。そして、この増減の発生頻度に応じて、押下操作判定部13に設定する押下量閾値の値を変えることにより、押下操作の判定処理の内容を、振動の影響が小さくなるような内容に変えることができる。これにより、ユーザがタッチパネル101に軽く接触した程度で押下操作が行われたと判定されることを抑制し、ユーザに違和感を与えてしまうことを抑制することができる。
【0050】
なお、上記実施形態にて説明した判定制御部14の制御内容は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。例えば、判定制御部14は、押下操作判定部13に設定した押下量閾値が所定値X(最小値より大きく最大値より小さい値)以上の場合は、押下量検出部12により検出される押下量が押下量閾値に達したか否かの判定に代えて、押下量検出部12により検出される押下量が押下量閾値に達している連続時間が所定長に達したか否かの判定を行うように、押下操作判定部13による判定処理の内容を変更するようにしてもよい。
【0051】
押下操作判定部13に設定される押下量閾値が所定値以上となる場合とは、押下量の増減の発生頻度が頻度閾値を超える一定期間がいくつか続いているような場合に相当する。これは、振動がしばらくの間続いている場合を意味する。このような場合は、ユーザがタッチパネル101を押下するときに、振動の影響を受けて意図しない場所を操作してしまう可能性が高くなる。よって、この場合には、タッチパネル101の押下量が単に押下量閾値に達したことをもって押下操作が行われたと判定するのではく、押下量閾値を超える押下量でタッチパネル101が長押しされた場合に押下操作が行われたと判定するようにすることで、ある程度継続した振動環境下においてユーザに確実な押下操作を要求することができる。
【0052】
また、別の例として、判定制御部14は、押下操作判定部13に設定した押下量閾値が所定値Y(最小値より大きく最大値より小さい値)以上の場合は、押下操作判定部13による判定処理を行わないように制御するようにしてもよい。これは、振動がしばらくの間続いているような場合に、押下操作判定部13による押下操作の有無の判定処理そのものを行わないようにすることにより、ユーザが振動の影響を受けて意図しない場所を操作してしまうことを確実に回避するものである。
【0053】
なお、この場合の所定値Y(特許請求の範囲の第2所定値に相当)を上記所定値Xより大きく最大値より小さい値とし、押下操作判定部13に設定した押下量閾値が所定値X以上で所定値Y未満の場合は、押下量閾値を超える押下量でタッチパネル101が長押しされた場合に押下操作が行われたと判定するとともに、押下操作判定部13に設定した押下量閾値が所定値Y以上の場合に、押下操作判定部13による判定処理を行わないように制御するようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、操作部の一例としてタッチパネル101を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、機械的な構造から成るハードウェアの押しボタンを操作部として用いるようにしてもよい。
【0055】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
11 接触検出部
12 押下量検出部
13 押下操作判定部
14 判定制御部
15 増減頻度検出部
17 処理実行部
18 表示制御部
100 演算処理装置(押下操作検出装置を含む)
101 タッチパネル(操作部)
102 表示パネル
103 押下力検出センサ