IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社熊谷組の特許一覧 ▶ 日特建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-芯材建込方法 図1
  • 特許-芯材建込方法 図2
  • 特許-芯材建込方法 図3
  • 特許-芯材建込方法 図4
  • 特許-芯材建込方法 図5
  • 特許-芯材建込方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】芯材建込方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20230213BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
E02D5/20 101
E02D13/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019139173
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021274
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】西窪 久弥
(72)【発明者】
【氏名】三井 卓
(72)【発明者】
【氏名】片原 道男
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩司
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078311(JP,A)
【文献】特開平10-317380(JP,A)
【文献】特開2002-030654(JP,A)
【文献】特開2007-321480(JP,A)
【文献】特開2015-010438(JP,A)
【文献】特開2013-036300(JP,A)
【文献】特開2008-069577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/20
E02D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ制限を受ける場所の地盤に形成した掘削孔内に芯材を建て込む際に、掘削孔内に建て込まれるべき所定の長さの芯材を複数に分割し、当該分割した分割芯材を順次継ぎ足して建て込む芯材建込方法において、
掘削孔の孔口の周囲の地盤上に設置した架構に、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を吊ることが可能な吊り手段を設けて構成された芯材建込装置を用いて、当該単一の分割芯材又は当該継ぎ芯材を吊り降ろすことにより掘削孔内に建て込むようにした芯材建込方法であって、
所定数以上の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を吊ることができないが、単一の分割芯材又は所定数よりも少ない数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を掘削孔内に吊り降ろすことが可能なクレーンを使用して、当該単一の分割芯材又は当該継ぎ芯材を掘削孔内に建て込む第1ステップと、
掘削孔内に建て込んだ当該単一の分割芯材の上端側又は当該継ぎ芯材の上端側を掘削孔の孔口側に設けた支持部に固定した状態として、当該単一の分割芯材の上端又は当該継ぎ芯材の上端と次に継ぎ足す分割芯材の下端とを接続する際に、上端側が芯材建込装置の吊り手段に連結された次に継ぎ足す分割芯材の下端を当該単一の分割芯材の上端又は当該継ぎ芯材の上端に位置決めする位置決め作業を、クレーン及び芯材建込装置を用いて行う第2ステップと、
位置決め作業後に、上端側が芯材建込装置の吊り手段に連結された次に継ぎ足す分割芯材の下端と当該単一の分割芯材の上端又は当該継ぎ芯材の上端とを接続して所定数以上の分割芯材が継がれて構成された継ぎ芯材を、芯材建込装置を用いて吊り降ろして掘削孔内に建て込む第3ステップとを備えたことを特徴とする芯材建込方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ制限(空頭制限)を受ける場所の地盤に形成した掘削孔内に芯材を建て込む際に、芯材を複数に分割した分割芯材を順次継ぎ足すようにして建て込む芯材建込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高さ制限を受ける場所(現場)の地盤に形成した掘削孔内に、芯材を複数に分割した分割芯材を順次継ぎ足すようにして建て込む芯材建込方法が知られている(特許文献1参照)。
当該芯材建込方法では、分割芯材の側面側に被支持部を設け、この被支持部をクレーンで吊ることによって、分割芯材、又は、複数の分割芯材を継いだ継ぎ芯材の吊り込み時におけるクレーンのブームの先端の位置を低くできるため、分割芯材、又は、継ぎ芯材の吊り込み時において、クレーンのブームの先端を上方の障害物に衝突させてしまう可能性を少なくでき、しかも、分割芯材の長さを長くできて、分割芯材、及び、継ぎ芯材の吊り込み回数及び継手数を少なくできるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-68397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した芯材建込方法では、クレーンを用いて、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を吊らなくてはならないので、当該単一の分割芯材又は継ぎ芯材を吊ることが可能な定格総荷重値を考慮したクレーンを使用しなくてはならない。
即ち、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材の重量が大きい場合、当該重量が大きい単一の分割芯材又は継ぎ芯材を確実に吊れるように、クレーンの定格総荷重値が当該単一の分割芯材又は継ぎ芯材の重量よりも十分に大きい能力に余裕のある大型のクレーンを用いなくてはならないが、高さ制限を受ける現場においては、当該大型のクレーンは吊り代(クレーンで吊られた分割芯材が地切りした段階から上方に移動可能な距離)が大きい等の理由により使用できない可能性があり、芯材建込作業を行えない可能性がある。
また、当該単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材の重量が小さい場合は、当該単一の分割芯材又は継ぎ芯材を確実に吊れるだけの、小さい定格総荷重値を有した小型のクレーンを用いることができるので、高さ制限を受ける場所であっても当該小型のクレーンを使用して芯材建込作業を効率的に行える。しかしながら、定格総荷重値が小さい小型のクレーンを用いる場合、吊ることができる単一の分割芯材又は継ぎ芯材の重量が制限されてしまうので、単一の分割芯材又は継ぎ芯材の重量が大きい場合には、対応できない。
つまり、高さ制限を受ける場所において、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材の重量が大きい場合には、定格総荷重値が大きい大型のクレーンや定格総荷重値が小さい小型のクレーンを用いて芯材建込作業を行うことができないという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、高さ制限を受ける場所において、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材の重量が大きい場合でも、芯材建込作業を効率的に行える芯材建込方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る芯材建込方法は、高さ制限を受ける場所の地盤に形成した掘削孔内に芯材を建て込む際に、掘削孔内に建て込まれるべき所定の長さの芯材を複数に分割し、当該分割した分割芯材を順次継ぎ足して建て込む芯材建込方法において、掘削孔の孔口の周囲の地盤上に設置した架構に、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を吊ることが可能な吊り手段を設けて構成された芯材建込装置を用いて、当該単一の分割芯材又は当該継ぎ芯材を吊り降ろすことにより掘削孔内に建て込むようにした芯材建込方法であって、所定数以上の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を吊ることができないが、単一の分割芯材又は所定数よりも少ない数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材を掘削孔内に吊り降ろすことが可能なクレーンを使用して、当該単一の分割芯材又は当該継ぎ芯材を掘削孔内に建て込む第1ステップと、掘削孔内に建て込んだ当該単一の分割芯材の上端側又は当該継ぎ芯材の上端側を掘削孔の孔口側に設けた支持部に固定した状態として、当該単一の分割芯材の上端又は当該継ぎ芯材の上端と次に継ぎ足す分割芯材の下端とを接続する際に、上端側が芯材建込装置の吊り手段に連結された次に継ぎ足す分割芯材の下端を当該単一の分割芯材の上端又は当該継ぎ芯材の上端に位置決めする位置決め作業を、クレーン及び芯材建込装置を用いて行う第2ステップと、位置決め作業後に、上端側が芯材建込装置の吊り手段に連結された次に継ぎ足す分割芯材の下端と当該単一の分割芯材の上端又は当該継ぎ芯材の上端とを接続して所定数以上の分割芯材が継がれて構成された継ぎ芯材を、芯材建込装置を用いて吊り降ろして掘削孔内に建て込む第3ステップとを備えた芯材建込方法とした
発明に係る芯材建込方法によれば、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材の重量が大きい場合でも、芯材建込作業を効率的に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】芯材の建込方法及び芯材建込装置を示す図(実施形態)。
図2】(a)は芯材建込装置の正面図、(b)は芯材建込装置の側面図、(c),(d)は継ぎ芯材の例を示す図(実施形態)。
図3】芯材の建込方法の手順を示す工程図(実施形態)。
図4】芯材の建込方法の手順を示す工程図(実施形態)。
図5】芯材の建込方法の手順を示す工程図(実施形態)。
図6】芯材の建込方法の手順を示す工程図(実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係る芯材の建込方法は、図1に示すように、高架橋Bの下方等のように高さ制限(空頭制限)Hがある場所(現場)Gの地盤1に形成した掘削孔2内に芯材を建て込む際に、掘削孔2内に建て込まれるべき所定の長さの芯材を複数に分割し、当該分割した分割芯材3a,3a…を順次継ぎ足すようにして建て込む芯材建込方法であって、掘削孔2の孔口の周囲の地盤1上、例えば、地盤1上に敷設された覆工版13上に設置される架構4に、所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを吊ることが可能な吊り手段5を設けて構成された芯材建込装置45を用いて、当該継ぎ芯材3Xを芯材建込装置45の吊り手段5で吊り降ろすことによって掘削孔2内に建て込むようにした芯材建込方法である。
【0008】
即ち、掘削孔2内に芯材を建て込む現場Gにおいて、高さ制限がある場合、高さ制限(空頭制限)Hの高さよりも長い1本ものの芯材を吊ることができないので、当該高さ制限値Hよりも長い1本ものの芯材を吊ることが可能な吊り能力(定格総荷重値)を有したクレーンを使用せずに、当該クレーンよりも吊り能力が小さいクレーンを用いる。
実施形態に係る芯材の建込方法では、当該高さ制限に対応して、分割芯材3aの長さ及び重さを決めるとともに、少なくとも1本の分割芯材3aを吊ることが可能な吊り能力及び吊り代を考慮して、使用するクレーン20(図3(a)参照)を選定する。
さらに、選定したクレーン20の能力では、所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3X(例えば、後述するように3本の分割芯材3a,3a,3aが継がれて構成される継ぎ芯材3X(第2の継ぎ芯材3X)や、4本の分割芯材3a,3a,3a,3aが継がれて構成される継ぎ芯材3X(第3の継ぎ芯材3X))を吊ることができないため、当該継ぎ芯材3Xを吊り降ろして掘削孔2内に建て込む作業は、芯材建込装置45を用いて行う。
【0009】
芯材建込装置45は、架構4と、架構4に取付けられて、所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成された継ぎ芯材3Xを吊り降ろすことが可能な吊り能力を有した吊り手段5とを備えた構成とした。
【0010】
架構4は、骨組みとなる部材を結合して組み立てた構造物、即ち、ラーメン架構、ブレース架構、トラス架構、アーチ架構等の構造物である。
架構4は、例えば、骨組みとなる形鋼を組み合わせた直方体枠形状に形成される。例えば、四角形の下枠と、四角形の上枠と、下枠の四隅と上枠の四隅とを連結する4本の柱とで構成された直方体枠形状に形成される。
具体的には、例えば図2(a),(b)に示すように、下枠は、前後の下梁材41,41と、下梁材41,41の上の左右に設けられて下梁材41,41を連結する左右の下桁材42,42とで構成され、上枠は、前後の上梁材43,43と、上梁材43,43の下の左右に設けられて上梁材43,43を連結する左右の上桁材44,44とで構成され、下枠の四隅と上枠の四隅とが4本の柱材46,46…で連結され、かつ、隣り合う柱材46,46同士がブレース材48,48で補強された構成の直方体枠形状に形成される。尚、上梁材43,43の上の左右側に設けられて上梁材43,43を連結する左右の吊桁材47,47が設けられ、当該左右の吊桁材47,47にそれぞれ後述する電動チェーンブロック50,50が取付けられる。
【0011】
吊り手段5は、例えば、複数の電動チェーンブロック50,50と、各電動チェーンブロック50,50に接続されるとともに所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成された継ぎ芯材3Xの上端側に接続されて当該継ぎ芯材3Xを当該継ぎ芯材3Xの垂直方向に延長する中心線3XCを回転中心として回転可能に吊り下げる回転自在接続手段60(図6参照)とを備えた構成とした。
具体的には、図6に示すように、吊り手段5は、例えば、2つの電動チェーンブロック50,50と、回転自在接続手段60とで構成される。
【0012】
電動チェーンブロック50は、例えば図2(a),(b)に示すように、ロード(負荷)チェーン51と、ロードチェーン51の巻き上げ及び操り出しを行う巻上機モータ52と、ロードチェーン51を収納するチェーンバケット53と、ロードチェーン51の下端に設けられた吊用のフック54と、巻上機電装品ボックス55と、巻上機の操作部56とを備える。
【0013】
回転自在接続手段60は、例えば図6に示すように、2つの電動チェーンブロック50,50のフック54,54に接続される接続板61と、上端が接続板61に接続されて下端が継ぎ芯材3Xの上端に接続されるスイベルジョイント62とを備えた構成とした。
このように、継ぎ芯材3Xをスイベルジョイント62を介して2つの電動チェーンブロック50,50で吊り下げるので、継ぎ芯材3Xの傾きや姿勢の調整が容易となり、継ぎ芯材3Xの建て込み精度を向上させることができる。
【0014】
尚、当該芯材建込方法は、例えば、柱列式地下連続壁を造成する場合において実施される。
例えば、現場Gの道路の路盤を撤去し、柱列式地下連続壁を形成するための掘削孔2の並ぶ予定の方向に沿って延長させた溝10を形成する。次に、当該溝10の上部側を拡径して覆工桁11を設置するための設置面12(図3参照)を形成する。そして、溝10を介して対向するように設置面12に設置された各覆工桁11,11の上部に覆工版13を掛け渡して敷設する。
そして、掘削孔2を形成する部分の覆工版13を除去して作業口14を形成し、図外のボーリングマシンを使用して、ボーリングマシンのボーリングロッドの先端に取り付けた掘削用ビットを回転させて地盤1を削孔しながら掘削用ビット側に安定液を供給する。また、掘削土砂を孔口側に設置した図外のサンドポンプにより土砂を排出する。排出された土砂をふるいにかけて安定液を分離させ、当該安定液を循環させて使用する。掘削完了後、掘削孔2内のスライム処理を行ってから、掘削孔2内に、所定の長さの1本ものの芯材3の代わりに、複数の分割芯材3a,3a…が継がれて構成された所定の長さの継ぎ芯材3Xを建て込んた後、掘削孔2内にモルタルを打設して杭を造成する。この杭を横に連続して並ぶように複数個施工することにより、柱列式地下連続壁を造成する。
【0015】
実施形態に係る芯材建込方法の施工手順の具体例を図3乃至図6に基づいて詳細に説明する。
尚、当該具体例においては、高架橋B下における現場Gの空頭制限Hが4.7mであり、掘削孔2内に建て込まれるべき所定の長さの1本ものの芯材が、例えば、長さ11.5mの極厚H形鋼であるため、芯材を分割して建込みを行う必要がある場合を例示する。
例えば、現場Gの地盤1の所定箇所から順番に並ぶように形成された掘削孔2,2…のうち例えば図2(c)に示すように奇数番目の各掘削孔2,2…に建て込まれる先行芯材を、上から長さa=2.7m、長さa=2.7m、長さa=2.7m、長さb=3.4mの4本の分割芯材3aとなるよう分割するとともに、現場Gの地盤1の所定箇所から順番に並ぶように形成された掘削孔2,2…のうち例えば図2(d)に示すように偶数番目の各掘削孔2,2…に建て込まれる後行芯材3を、上から長さb=3.4m、長さa=2.7m、長さa=2.7m、長さa=2.7mの4本の分割芯材3aとなるよう分割し、当該4分割した分割芯材3a,3a…を順次継ぎ足して構成される所定の長さの継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に建て込む場合を例にして説明する。
この場合、当該所定の長さの継ぎ芯材3Xは、添接板16を含む総重量が6.3tであることや空頭制限Hが4.7mであることにより、クレーン20の選定において制約を受ける。
【0016】
まず、次の(1),(2)の作業は、例えば、最大吊上荷重4.9t,作業半径2.1m,ブーム長4.63mのクローラクレーン20を使用して行う。
(1)最初の分割芯材(掘削孔2の底部に最も近い位置に設置されることになる分割芯材)3aを掘削孔2内に吊り降ろす作業。即ち、3.4m(約1.86t)の最初の分割芯材3aを奇数番目の掘削孔2内に吊り降ろす作業、あるいは、2.7m(約1.48t)の最初の分割芯材3aを偶数番目の掘削孔2内に吊り降ろす作業。
(2)最初の分割芯材3aの上端に次の分割芯材3aを継ぎ足した第1の継ぎ芯材3X、即ち、2つの分割芯材3a,3aが継がれて構成された継ぎ芯材3X(6.1m(約3.34t)、又は、5.4m(約2.96t))を掘削孔2内に吊り降ろす作業。
【0017】
上述のクローラクレーン20の定格総荷重は、例えば、静止吊の条件において、作業半径2mmで4.9tであるが、作業半径2.5mmで3.8t、作業半径3.0mmで2.9t、作業半径3.5mmで2.29tとなる。
従って、当該クローラクレーン20を使用して、次の(3),(4)の作業(3つ以上の分割芯材3a,3a…が継がれて構成された第2の継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に吊り降ろして建て込む作業)を行うことは困難であるので、次の(3),(4)の作業は、芯材建込装置45を使用して行う。
(3)2つの分割芯材3a,3a…が継がれて構成された第1の継ぎ芯材3Xの上端に3番目の分割芯材3aを継ぎ足した第2の継ぎ芯材3X、即ち、3つの分割芯材3a,3a,3aが継がれて構成された第2の継ぎ芯材3X(8.8m(約4.82t)、又は、8.1m(約4.44t)を掘削孔2内に吊り降ろす作業。
(4)3つの分割芯材3a,3a,3aが継がれて構成された第2の継ぎ芯材3Xの上端に4番目の分割芯材3aを継ぎ足した第3の継ぎ芯材3X、即ち、4つの分割芯材3a,3a,3a,3aが継がれて構成されることによって掘削孔2内に建て込まれるべき所定の長さ(元の1本ものの芯材と同じ所定の長さ)に形成された継ぎ芯材3X(11.5m(6.3t))を掘削孔2内に吊り降ろす作業。
つまり、この場合、芯材建込装置45により吊り降ろすことができる所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xは、所定数が3以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xである。換言すれば、この場合に選定されるクローラクレーン20は、3以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを吊ることができないが、単一の分割芯材3a又は所定数よりも少ない数の分割芯材3a、即ち、2以下の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に吊り降ろすことが可能なクレーンである。
【0018】
即ち、まず、図3(a)に示すように、最大吊上荷重4.9tのクローラクレーン20を使用して、最初の分割芯材3aを吊り降ろすことで、最初の分割芯材3aを掘削孔2内に建て込むとともに、当該最初の分割芯材3aの上端側を、溝10を跨ぐように設置された支持部15,15(図4(a)参照)に固定する。即ち、図3(b)に示すように、最初の分割芯材3aの上端側を支持部15,15に固定して支持部15,15に吊るす。
【0019】
同様にして、最大吊上荷重4.9tのクローラクレーン20を使用し、2番目の分割芯材3aを吊り上げて、支持部15,15に固定されている最初の分割芯材3aの上端に2番目の分割芯材3aの下端を位置決めした後に、図4(a)に示すように、添接板16を用いて、最初の分割芯材3aの上端側と2番目の分割芯材3aの下端側とを接続する。
そして、図3(b)と同様に、添接板16により接続された最初の分割芯材3aと2番目の分割芯材3aとが継がれて構成された第1の継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に建て込んで、当該第1の継ぎ芯材3Xの上端側を支持部15,15に固定して支持部15,15に吊るす。
【0020】
次に、上端側が支持部15,15に固定されて掘削孔2内に吊るされた第1の継ぎ芯材3Xの上端に、3番目の分割芯材3aの下端を位置決めする位置決め作業を行う。
この位置決め作業を行うにあたっては、まず、図4(b)に示すように、クローラクレーン20を用いて、芯材建込装置45の架構4を掘削孔2の坑口の真上の位置まで移動させる。
尚、この際、掘削孔2に建て込んだ第1の継ぎ芯材3Xの上端部に、架構4の下桁材42が衝突しないように、図4(b)に示すように、第1の継ぎ芯材3Xの上端3tを下桁材42よりも下方に位置させた状態で当該第1の継ぎ芯材3Xを支持部15に固定しておく。
そして、芯材建込装置45の架構4を、掘削孔2の坑口の真上の位置まで移動させて、掘削孔2の坑口の真上の周囲に敷設されている覆工版13の上に設置した後、クローラクレーン20を使用して3番目の分割芯材3aを架構4の近傍の仮置き場所17まで移動させる。
【0021】
次に、継ぎ作業がしやすくなるよう、図5(a)に示すように、第1の継ぎ芯材3Xの上端3tが架構4の下桁材42よりも上方に位置されるように当該第1の継ぎ芯材3Xを上方に移動させた後に当該第1の継ぎ芯材3Xを支持部15,15に固定する。
そして、図5(a)に示すように、3番目の分割芯材3aの一端側に近い両方の側面に設けた各吊部3d,3dに、各電動チェーンブロック50,50のフック54,54を連結するとともに、3番目の分割芯材3aの他端3e側をクローラクレーン20で吊った状態で、各電動チェーンブロック50,50を駆動することにより、当該3番目の分割芯材3aを第1の継ぎ芯材3Xの上方に吊り込み、第1の継ぎ芯材3Xの上端に、3番目の分割芯材3aの下端を位置決めする位置決め作業を行う。
その後、図5(b)に示すように、添接板16を用いて、第1の継ぎ芯材3Xの上端側と3番目の分割芯材3aの下端側とが継がれて構成された第2の継ぎ芯材3Xを構成する。
【0022】
そして、図6(a)に示すように、各電動チェーンブロック50,50のロードチェーン51,51の下端に設けられたフック54,54に回転自在接続手段60を介して第2の継ぎ芯材3Xの上端側を接続した後、図6(b)に示すように、電動チェーンブロック50,50を操作して当該第2の継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に吊り降ろすことによって掘削孔2内に建て込む。
即ち、電動チェーンブロック50,50のフック54,54と接続板61の上面の左右側とを接続するとともに、スイベルジョイント62の上部接続部と接続板61の下面中央とを接続し、かつ、スイベルジョイント62の下部接続部と継ぎ芯材3Xの上端部とを接続した後、電動チェーンブロック50,50を操作して当該継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に吊り降ろす。
【0023】
同様にして、図4(b),図5(a),(b)に示すように、第2の継ぎ芯材3Xの上端側と4番目の分割芯材3aの下端側とを接続して第3の継ぎ芯材3X、即ち、掘削孔内に建て込むべきであった所定の長さの1本ものの芯材3と同じ所定の長さの継ぎ芯材3Xを構成した後、図6(a)に示すように、各電動チェーンブロック50,50のロードチェーン51,51の下端に設けられたフック54,54に回転自在接続手段60を介して第3の継ぎ芯材3Xの上端側を接続した後、図6(b)に示すように、電動チェーンブロック50,50を操作して当該所定の長さの継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に吊り降ろすことによって掘削孔2内に建て込む。
以上により、1つの掘削孔2内に建て込むべき所定長さの継ぎ芯材3Xが建て込まれる。
【0024】
即ち、実施形態に係る芯材の建込方法は、所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを吊ることができないが、単一の分割芯材3a又は所定数よりも少ない数の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に吊り降ろすことが可能なクレーン20を使用して、当該単一の分割芯材3a又は当該継ぎ芯材3Xを掘削孔2内に建て込む第1ステップと、掘削孔2内に建て込んだ当該単一の継ぎ芯材3Xの上端側又は当該継ぎ芯材3Xの上端側を掘削孔2の孔口側に設けた支持部15,15に固定した状態として、当該単一の分割芯材3aの上端又は当該継ぎ芯材3Xの上端と次に継ぎ足す分割芯材3aの下端とを接続する際に、上端側が芯材建込装置45の吊り手段5に連結された次に継ぎ足す分割芯材3aの下端を当該単一の分割芯材3aの上端又は当該継ぎ芯材3Xの上端に位置決めする位置決め作業を、クレーン20及び芯材建込装置45の吊り手段5を用いて行う第2ステップと、位置決め作業後に、上端側が芯材建込装置45の吊り手段5に連結された次に継ぎ足す分割芯材3aの下端と当該単一の分割芯材3aの上端又は当該継ぎ芯材3Xの上端とを接続して所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成された継ぎ芯材3Xを、芯材建込装置45の吊り手段5で吊り降ろすことによって掘削孔2内に建て込む第3ステップとを備えた方法とした。
【0025】
実施形態によれば、高さ制限を受ける現場において、所定数以上の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xの重量が大きい場合でも、芯材建込作業を効率的に行えるようになる芯材建込方法、及び、当該方法に使用する芯材建込装置45を提供できる。
【0026】
また、芯材建込装置45によれば、分割芯材3aを頭頂部ではなく側部で吊り込むことが可能なため、掘削孔2に建て込まれるべき所定長さの継ぎ芯材3Xを構成する分割芯材3aの数を少なくできるので、上下に配置される分割芯材3a,3aを添接板16を用いて接続する作業の回数を減らすことができ、当該分割芯材接続作業にかかる時間を短縮できるため、施工サイクルの短縮化が図れ、芯材建込作業を効率的に行えるようになる。
【0027】
また、クローラクレーン20での建て込み作業では、分割芯材や継ぎ芯材の建込み位置とクローラクレーン20のフックの荷の重心とをその都度調整する作業に時間を要するが、芯材建込装置45を用いたことにより、芯材建込装置45を所定の位置に設置することで建込み精度を向上させることができる。さらに、2つの電動チェーンブロック50,50及びスイベルジョイント62とを備えた吊り手段5を用いて、継ぎ芯材3Xを建て込むので、継ぎ芯材3Xの最終的な建込み位置の微調整、即ち、継ぎ芯材3Xの傾きや姿勢の調整が容易となり、継ぎ芯材3Xの建て込み精度をより向上させることができる。
【0028】
また、芯材建込装置45の構造や大きさは、高さ制限Hを受ける現場Gの環境や継ぎ芯材3Xの重量に応じて条件を満たすように製作できる。
【0029】
また、本発明に係る芯材建込方法によれば、特に隧道や地下鉄構内などの狭隘で特異な施工環境や、芯材建込装置の留置場所を確保できない条件においても、施工当日に芯材建込装置を作製して、芯材建込作業を行うことができるようになる。
【0030】
尚、吊り手段5は、3つの電動チェーンブロック50,50,50…と、回転自在接続手段60とで構成してもよい。
【0031】
また、吊り手段5を、回転自在接続手段60を備えない構造、即ち、電動チェーンブロックのみで構成しても良い。
【0032】
また、吊り手段5は、電動チェーンブロックの代わりに、手動チェーンブロックを用いた構成としてもよい。
【0033】
また、吊り手段5は、チェーンブロックの代わりに、クレーン以外の小型の吊上げ機械、例えば、ウインチやクランプ等の小型の吊上げ機械を用いた構成としてもよい。
【0034】
また、上記では、最初の分割芯材3aと次の分割芯材3aとが継がれて構成された継ぎ芯材3Xを、クレーン20を使用して掘削孔2内に建て込むようにした例を示したが、最初の分割芯材3aと次の分割芯材3aとが継がれて構成された継ぎ芯材3Xを、芯材建込装置45を使用して掘削孔2内に建て込むようにしてもよい。つまり、所定数が2以上のの分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを、芯材建込装置45を使用して掘削孔2内に建て込むようにしてもよい。
また、単一の芯材3Xを、芯材建込装置45を使用して掘削孔2内に建て込むようにしてもよい。
即ち、本発明の芯材建込方法は、単一の分割芯材3a又は複数の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを、芯材建込装置45を使用して掘削孔2内に建て込むようにしてもよい。
また、本発明の芯材建込装置は、架構4と、架構4に取付けられて、単一の分割芯材3a又は複数の分割芯材3aが継がれて構成される継ぎ芯材3Xを吊ることが可能な吊り手段5とを備えた構成であってもよい。
このような芯材建込方法又は芯材建込装置であっても、高さ制限を受ける現場において、単一の分割芯材又は複数の分割芯材が継がれて構成される継ぎ芯材の重量が大きい場合に、芯材建込作業を効率的に行えるようになるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1 地盤、2 掘削孔、3a 分割芯材、3X 継ぎ芯材、3XC 中心線、
4 架構、5 吊り手段、20 クレーン、45 芯材建込装置、
50 電動チェーンブロック、60 回転自在接続手段、G 現場(場所)、
H 高さ制限。
図1
図2
図3
図4
図5
図6