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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 89/00 20060101AFI20230213BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20230213BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20230213BHJP
   H01H 13/58 20060101ALI20230213BHJP
   H01H 13/64 20060101ALI20230213BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20230213BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
H01H89/00
G06F3/02 F
G06F3/0354 453
H01H13/58 B
H01H13/64
H01H13/00 B
H01H36/00 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019204029
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021077540
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 未来
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-117539(JP,U)
【文献】特開2017-21442(JP,A)
【文献】特開2011-181337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 89/00
H01H 13/64
G06F 3/0354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置が変位するように形成された第1操作部と、
前記第1操作部とは異なる方向に位置が変位するように前記第1操作部の周囲に配置され、スイッチ機能が割り当てられた複数の第2操作部と、
前記第1操作部が操作された場合に、前記第1操作部の操作方向とは異なる方向に前記複数の第2操作部を変位させて、前記第2操作部の位置を第1配置状態から第2配置状態に切り替える切替機構と、を備える入力装置。
【請求項2】
複数の前記第2操作部は、それぞれ前記第1操作部に隣接するように、前記第1操作部の周りに周方向に沿って配置されている
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記切替機構は、前記第2配置状態として、前記第2操作部を前記第1操作部よりも高い位置に配置した状態に切り替える
請求項1又は請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記第1操作部は、プッシュ操作を受け付けるプッシュ操作部であり、
前記切替機構は、前記第1操作部がプッシュ操作された場合に、前記第1操作部のプッシュ方向と交差する方向へ前記第2操作部を変位させる
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記第1配置状態は、前記第1操作部に前記第2操作部が近づいた位置をとる状態であり、
前記第2配置状態は、前記第2操作部が前記第1操作部から離れた位置をとる状態である
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項6】
前記第2操作部が前記第2配置状態をとる場合に、前記第1操作部において前記第2操作部に対向する面と、前記各第2操作部において前記第1操作部に対向する面と、前記各第2操作部において他の前記第2操作部に対向する面との少なくとも1つを、視覚的に強調表示する視認部を備える
請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記第1操作部が操作されて前記第1配置状態から前記第2配置状態に切り替えられた場合に、前記第2操作部を前記第2配置状態に保持するとともに、前記第1操作部が再度操作された場合に、前記第2操作部の保持を解除して、前記第2操作部を元の前記第1配置状態へ戻す保持機構を備える
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項8】
前記第1操作部には、スイッチ機能が割り当てられている
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項9】
前記第1配置状態と前記第2配置状態との切り替えに応じて、少なくとも前記第2操作部のスイッチ機能を切り替える機能切替部を備える
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の機能を備えた入力装置として、複数の操作部を有する入力装置が開示されている。このように、1つの入力装置に複数機能を持たせる場合には、機能ごとにそれぞれ操作部を設けることになる。これら操作部は、ケーシングの上面に並べて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-83132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の操作部を備える入力装置の場合、これら操作部は、意匠性よりも操作性を考慮して配置されることが考えられる。そのため、意匠性を向上させにくいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、操作性と意匠性とを両立可能にした入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための入力装置は、位置が変位するように形成された第1操作部と、前記第1操作部とは異なる方向に位置が変位するように前記第1操作部の周囲に配置され、スイッチ機能が割り当てられた複数の第2操作部と、前記第1操作部が操作された場合に、前記第1操作部の操作方向とは異なる方向に前記複数の第2操作部を変位させて、前記第2操作部の位置を第1配置状態から第2配置状態に切り替える切替機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の入力装置は、操作性と意匠性とを両立可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における入力装置の斜視図。
図2】同実施形態における入力装置の上面図。
図3】同実施形態における入力装置の分解斜視図。
図4図2のIV-IV線断面図。
図5】同実施形態における入力装置の構成を示すブロック図。
図6】同実施形態における第2配置状態の入力装置の斜視図。
図7】同実施形態における第2配置状態の入力装置の断面図。
図8】(a)~(e)の順に、保持機構の作動を説明する模式図。
図9】第2実施形態において表示部が接続された入力装置を示す概略図。
図10】同実施形態における第2配置状態の入力装置及び表示部を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、入力装置の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、入力装置1は、略円柱状をなすハウジング2と、ユーザにより操作される操作部10と、を備えている。入力装置1は、例えば車両に設けられている。入力装置1は、例えば車載の空調装置、オーディオ装置、ナビゲーションシステム、及びミラー装置などを操作するものである。操作部10は、ハウジング2から露出して配置されている。以降、入力装置1において、ハウジング2に対して操作部10が設けられた側を、「上側」とし、その反対側を「下側」とする。
【0010】
図1及び図2に示すように、操作部10は、第1操作部11と、複数の第2操作部12とを備えている。第1操作部11は、操作部10の中央を通り上下方向に延びる軸線L上に設けられている。複数の第2操作部12の各々は、第1操作部11に隣接するように、第1操作部11の周りに周方向に沿って配置されている。本実施形態の第1操作部11は、上面視において六角形状に形成されている。複数の第2操作部12は、上面視において、第1操作部11の六角形状の各辺にそれぞれ対向するように配置されている。6つの第2操作部12は、軸線L周りに沿って等間隔に配置されている。また、操作部10の全体は、第1操作部11及び第2操作部12が近づいた状態において、上面視で、六角形状に設けられている。
【0011】
第1操作部11の側面11aは、第2操作部12の各々と対向するように配置されている。また、各第2操作部12は、第1操作部11に対向する側面12aと、第2操作部12に対向する側面12bとを備えている。
【0012】
本実施形態の第1操作部11は、軸線Lに沿った方向へのプッシュ操作を許容するプッシュ操作部であり、具体的には、プッシュスイッチの操作ノブである。第1操作部11は、プッシュ操作されることにより、軸線Lに沿った方向、すなわちプッシュ方向に沿って変位する。第1操作部11は、プッシュ操作前の上側の位置と、プッシュ操作後の下側の位置とをとる。
【0013】
本実施形態の第2操作部12は、その上面へのタッチ操作を検出する静電容量式のセンサ52を有している。すなわち、第2操作部12は、上面に静電容量式のセンサ52が設けられることにより、タッチ操作による操作を行うタッチパッドとなっている。
【0014】
図3及び図4に示すように、入力装置1は、複数の第2操作部12の配置を切り替える切替機構20を備えている。切替機構20は、ハウジング2内に収容されている。切替機構20は、第1操作部11の操作に基づき、第2操作部12を第1配置状態から第2配置状態に変位させる。第1配置状態は、第1操作部11の周囲に第2操作部12が隣接して配置された状態である。第2配置状態は、第2操作部12が第1操作部11から離れて配置された状態である。
【0015】
切替機構20は、第1操作部11の裏面に係止されて第1操作部11と一体に動く筒部材21を備える。また、切替機構20は、第2操作部12の各々の裏面に係止されて第2操作部12と一体に動くスライド部材23と、各スライド部材23を貫通する複数のスライド軸24とを備える。スライド部材23の各々は、自身と組をなすリンク22を介して筒部材21に連結されている。
【0016】
筒部材21は、軸線Lに沿って延びる形状に形成され、第1操作部11と一体に軸線Lに沿って上下動可能に構成されている。また、筒部材21の下部には、各リンク22が連結される複数の第1ジョイント部21aが設けられている。
【0017】
各スライド部材23は、基部231と、基部231から延びるとともに第2操作部12の下側の面に係止される延出部232とを備えている。スライド部材23の基部231には、ハウジング2に取り付け固定されたスライド軸24が貫通されている。また、基部231には、リンク22が連結される第2ジョイント部23aが設けられている。
【0018】
本実施形態のスライド軸24の各々は、軸線Lと交差する方向に延びている。スライド部材23は、スライド軸24に沿ってスライド移動する。スライド部材23のスライド移動により、第2操作部12は、第1操作部11に近づいた第1配置状態と、第1操作部11から離れた第2配置状態との間で変位する。
【0019】
各リンク22は、筒部材21が上下動した場合にスライド部材23がスライド移動するように、筒部材21とスライド部材23とを連結する。リンク22は、筒部材21の第1ジョイント部21aと、スライド部材23の第2ジョイント部23aとに連結されている。各リンク22は、第1ジョイント部21a及び第2ジョイント部23aのそれぞれに、リンク22の延出方向に対して直交する軸線回りに回転可能に連結されている。
【0020】
第1操作部11が操作されて筒部材21が上下動した場合、リンク22を介して接続された各スライド部材23が、スライド軸24に沿ってスライド移動する。これにより、各第2操作部12がスライド移動する。複数の第2操作部12は、第1操作部11がプッシュ操作前の上側の位置にあるとき、第1操作部11に近づいた第1配置状態に配置され、第1操作部11がプッシュ操作後の下側の位置にあるとき、第1操作部11から離れた第2配置状態に配置される。
【0021】
図6に示すように、第1操作部11の側面11a、及び第2操作部12の側面12a,12bは、第1配置状態のとき、外部から見えないものの、第2配置状態のとき、外部から見ることができる。これら側面11a,12a,12bには、各操作部の他の面、例えば上面などと比べて視覚的に強調表示された視認部15が設けられている。本実施形態の場合、側面11a,12a,12bは、他の面と異なる色で着色されている。視認部15は、側面11a,12a,12bに相当する。なお、視認部15は、照明を用いて強調表示を行うものでもよい。
【0022】
図3に示す通り、入力装置1は、第1操作部11がプッシュ操作されて位置が変位した場合に第1操作部11を変位した位置で保持する保持機構30を備えている。本実施形態の保持機構30は、プッシュ操作された第1操作部11を、プッシュ操作後の下側の位置で保持する。保持機構30は、第1操作部11の裏面に係止されたプッシャ31と、プッシャ31が挿通される案内部32と、プッシャ31の下側で軸線L回りに回転可能に設けられた回転子33とを備える。
【0023】
プッシャ31は、筒部材21の内部に配置されるとともに、筒部材21と一体に動く。プッシャ31は、筒部材21とともに第1操作部11に連結され、第1操作部11と一体に上下動するように形成されている。プッシャ31の下端には、複数の谷状又は山状の面が連続する鋸歯状面41が設けられている。
【0024】
案内部32は、プッシャ31が挿通される案内筒34と、案内筒34から軸線Lの径方向に延びた被固定部35とを備えている。例えば、被固定部35の延出方向の端部は、ピンなどによりハウジング2の上壁部に取り付けられている。これにより、案内部32は、ハウジング2に対して固定されている。案内筒34は、所謂カム本体である。案内筒34の内面には、回転子33の移動を案内する切り欠き42が設けられている。切り欠き42は、例えば段違いの斜面と、溝とを組み合わせた形状に形成されている。
【0025】
図3及び図4に示す通り、回転子33は、案内筒34の内部においてプッシャ31と同軸の軸線L回りに回転可能に設けられている。また、回転子33は、案内部32に対し、軸線Lに沿って上下動可能に設けられている。回転子33は、軸線Lに沿った軸部36と、軸部36よりも大径の基部37と、基部37から下側へ突出する突出部38とを備えている。軸部36は、案内部32の案内筒34内において、プッシャ31の内側に挿入される。また、回転子33は、軸部36から径方向に突出した突片43が複数、本実施形態では3つ設けられている。各突片43は、その上端面が軸線Lに対して斜めに傾斜する形状に形成され、第1操作部11の操作時、鋸歯状面41や案内筒34の切り欠き42に係止される。
【0026】
図4に示す通り、保持機構30は、回転子33を上側へ付勢する付勢部材39を備えている。付勢部材39は、例えばコイルばねである。付勢部材39は、回転子33の基部37を下側から上側へ付勢している。付勢部材39は、回転子33及びプッシャ31を介して第1操作部11を押し上げる。第1操作部11は、付勢部材39により押し上げられて回転子33の基部37が案内筒34の下端面に当てられることにより、プッシュ操作前の上側の位置に保持される。
【0027】
回転子33の突出部38は、例えばその先端側に設けられたプッシュスイッチの接点51(図5参照)を接触又は開離させる。この接点51の接触又は開離により、第1操作部11へのプッシュ操作の有無が検出される。
【0028】
図5に示すように、入力装置1は、操作部10への操作に基づいて、車載装置を制御する制御部50を備えている。本実施形態の制御部50は、第1操作部11のプッシュ操作に関して、第1操作部11に設けられた接点51の接触又は開離に基づく入力を受け付ける。また、制御部50は、第2操作部12へのタッチ操作に関して、第2操作部12のセンサ52に基づく入力を受け付ける。制御部50は、これら操作部10からの入力に応じて他の車載装置との通信を行い、他の車載装置の制御を実行する。
【0029】
制御部50は、操作部10の機能を切り替える機能切替部53を備えている。本実施形態の機能切替部53は、第1操作部11のプッシュ操作の有無に基づき、第2操作部12のタッチ検出機能の有効、無効を切り替える。タッチ検出機能が無効とは、第2操作部12においてタッチ検出を行わないこと、制御部50でタッチ検出の入力を受けないこと、制御部50でタッチ検出の入力を無視すること、又はこれらの組み合わせなどを含む。
【0030】
以下、本実施形態の作用について説明する。
図1及び図4に示した第1配置状態から第1操作部11がプッシュ操作された場合、切替機構20は、第1操作部11がプッシュ操作により下側へ変位するのに従い、第2操作部12を軸線Lから離れる側、すなわち径方向外側へスライド移動させる。具体的には、第1操作部11が下側へ押し込まれることにより、筒部材21が下側へ変位し、リンク22を介して筒部材21に接続された各スライド部材23が、スライド軸24に沿って径方向外側へスライド移動する。各第2操作部12は、スライド部材23とともに、径方向外側へスライド移動する。そして、第1操作部11がプッシュ操作後の下側の位置まで押し込まれた場合、複数の第2操作部12は、第1操作部11から離れた第2配置状態に配置される。また、制御部50は、第1操作部11が下側の位置にある場合、接点51の検出信号を基に、プッシュ操作有りを検出する。
【0031】
図6及び図7に示すように、各第2操作部12は、第2配置状態をとったとき、第1操作部11から離隔するとともに、隣の第2操作部12からも離隔している。また、第2操作部12は、第1操作部11よりも高い位置に配置されている。これにより、第1操作部11と第2操作部12との間、及び第2操作部12同士の間で好適な間隙を設けることができる。これにより、操作性を向上することができる。なお、制御部50は、第1操作部11がプッシュ操作後の下側の位置に保持されている状態においても、接点51の検出信号からプッシュ操作有りを検出する。
【0032】
続いて、図8を用いて、保持機構30による操作部10の配置状態の保持について説明する。第1操作部11のプッシュ操作によって第2操作部12が第2配置状態となった際、第1操作部11は、保持機構30によってプッシュ操作後の下側の位置に保持される。なお、図8では、プッシャ31の鋸歯状面41、案内部32の切り欠き、及び回転子33の突片43を、軸線Lの周方向に展開し、模式的に図示している。また、図8では突片43を1つのみ図示している。
【0033】
図8(a)に示すように、回転子33は、プッシュ操作前の上側の位置において、案内部32の切り欠き42の溝部42a内に挿入している。なお、このとき、回転子33の基部37は、付勢部材39の付勢力により押し上げられ、案内筒34の下端面に当てられている。
【0034】
図8(b)に示すように、第1操作部11が第1配置状態からプッシュ操作されると、プッシャ31は、付勢部材39の付勢力に反して突片43を押し下げる。突片43は、切り欠き42の溝部42aの外側に出ると、鋸歯状面41の傾斜に沿って周方向に移動する。すなわち、回転子33は、軸線L回りに回転する。このとき、第2操作部12は、第2配置状態に配置される。
【0035】
図8(c)に示すように、第1操作部11に対するプッシュ操作が解消されると、付勢部材39の付勢力によって回転子33及びプッシャ31が押し上げられる。この時、回転子33の突片43が切り欠き42の段違い斜面42bに沿って周方向に移動、すなわち回転する。そして、突片43は、段違い斜面42bに引っかかる位置で保持される。これにより、回転子33は、プッシュ操作前の位置よりも下側に変位した位置に保持される。したがって、第1操作部11は、保持機構30によってプッシュ後の下側へ変位した位置に保持された保持状態となる。これにより、第2操作部12は、第2配置状態に保持される。
【0036】
図8(d)に示すように、第2配置状態をとる第2操作部12を元の第1配置状態に戻すには、下側に沈み込んだ状態の第1操作部11を再度プッシュ操作する。下側に沈み込んだ第1操作部11に対してプッシュ操作が行われると、プッシャ31は、突片43を押し下げる。突片43は、段違い斜面42bの外側で、鋸歯状面41の傾斜に沿って周方向に移動、すなわち回転する。
【0037】
図8(e)に示すように、第1操作部11に対するプッシュ操作が解消されると、付勢部材39の付勢力によって回転子33及びプッシャ31が押し上げられる。この時、回転子33の突片43が切り欠き42の溝部42a内に挿入される。これにより、第1操作部11は、保持状態が解除され、プッシュ操作前の上側の位置に戻る。このように、保持機構30は、第1操作部11のプッシュ操作によって、第1操作部11を下側の位置に保持する保持状態とし、再度のプッシュ操作によって、保持状態の解除を行う。したがって、第1操作部11は、プッシュ操作によって、上側の位置と下側の位置との間で交互に切り替えられる。
【0038】
第1操作部11が上側の位置へ戻る際、筒部材21が上側へ変位すると、リンク22を介して接続された各スライド部材23が、スライド軸24に沿って軸線Lへ近づく側、すなわち径方向内側へスライド移動する。これにより、各第2操作部12が図1に示す第1配置状態に配置される。各第2操作部12は、第1配置状態において、第1操作部11に近接するとともに、隣の第2操作部12にも近接している。第1配置状態にある場合、第1操作部11及び複数の第2操作部12が、ひとつの形状をなしている。これにより、意匠性を向上することができる。
【0039】
制御部50は、接点51の検出信号を基に、第1操作部11が下側の位置にあるときには、プッシュ操作有りを検出し、第1操作部11が上側の位置にあるときには、プッシュ操作無しを検出する。制御部50の機能切替部53は、プッシュ操作無しを検出している場合、第2操作部12のタッチ操作の検出を無効とする。これにより、第1配置状態の場合、第2操作部12を用いて操作を行うことができなくなる。また、機能切替部53は、プッシュ操作有りを検出している場合、第2操作部12のタッチ検出機能を有効とする。これにより、第2配置状態では、第2操作部12へのタッチ操作により、車載装置の操作が可能となる。このように、機能切替部53は、第1配置状態及び第2配置状態との切り替えに応じて、第2操作部12の機能の切り替えを行う。意匠性を向上した第1配置状態では、操作を無効とすることで、誤操作の抑制ができる。
【0040】
図6に示すように、第1操作部11の側面11a、及び第2操作部12の側面12a,12bは、第1配置状態のとき、外部から見えないものの、第2配置状態のとき、外部から見ることができる。本実施形態の場合、側面11a,12a,12bは、他の面と異なる色で着色されている。側面11a,12a,12bを着色などにより強調表示することによって、第2状態をとっていることが視認しやすくなる。
【0041】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)入力装置1は、位置が変位するように形成された第1操作部11と、第1操作部11とは異なる方向に位置が変位するように第1操作部11の周囲に配置された複数の第2操作部12とを備えている。また、入力装置1は、第1操作部11が操作された場合に、第1操作部11の操作方向とは異なる方向に複数の第2操作部12を変位させて、第2操作部12の位置を第1配置状態から第2配置状態に切り替える切替機構20を備えている。この構成によれば、操作性の高い配置と、意匠性の高い状態とで、第2操作部12の配置を切り替えることができる。これにより、操作性と意匠性とを両立できる。
【0042】
(2)複数の第2操作部12は、それぞれ第1操作部11に隣接するように、第1操作部11の周りに周方向に沿って配置されている。この構成によれば、第1操作部11を中心として第2操作部12を配置できる。これは、第1操作部11の操作によって第2操作部12の配置を切り替えるのに有利となる。
【0043】
(3)切替機構20は、第2配置状態において、第2操作部12を第1操作部11よりも高い位置に配置された状態に切り替える。この構成によれば、高い位置の第2操作部12を操作しやすくなる。これは、操作性の向上に寄与する。
【0044】
(4)第1操作部11は、プッシュ操作を受けるプッシュ操作部である。切替機構20は、第1操作部11がプッシュ操作された場合に、第1操作部11のプッシュ方向と交差する方向へ第2操作部12を変位させる。この構成によれば、プッシュ操作という容易な操作で配置を切り替えることができる。また、プッシュ方向に対して交差する方向における第1操作部11と第2操作部12との間の距離を変化させることができる。
【0045】
(5)切替機構20は、複数の第2操作部12を、第1操作部11に近づいた第1配置状態と、第1操作部11から離れた第2配置状態との間で変位させる。この構成によれば、第1操作部11及び第2操作部12の間の距離を変化させることで、意匠性の高い配置と、操作性の高い配置とを切り替えることができる。
【0046】
(6)第1操作部11において第2操作部12に対向する側面11aと、各第2操作部12において第1操作部11に対向する側面12aと、各第2操作部12において他の第2操作部12に対向する側面12bとには、着色により視覚的に強調された視認部15が形成されている。この構成によれば、側面11a,12a,12bが着色によって強調表示されることで、第2配置状態にあることが容易に認識できる。
【0047】
(7)第1操作部11をプッシュ操作されて第1配置状態から第2配置状態に切り替えられた場合に、第2操作部12を第2配置状態に保持する保持機構30を備えている。また、保持機構30は、保持状態の第1操作部11が再度プッシュ操作された場合に、保持を解除して第2操作部12を第1配置状態へ戻す。これによれば、第1操作部11の操作が解消された場合でも、第2操作部12の配置状態を保持できる。
【0048】
(8)第1操作部11は、接点51の接触と開離とによりスイッチ機能が割り当てられている。この構成によれば、配置を切り替える操作とともに、スイッチ操作を行うことができる。
【0049】
(9)入力装置1は、第1配置状態と第2配置状態との切り替えに応じて、第2操作部12の機能を切り替える機能切替部53を備えている。この構成によれば、第2操作部12の機能を、配置状態に応じた機能に切り替えることができる。これは、操作性の向上に寄与する。
【0050】
<第2実施形態>
次に、入力装置1の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の部材構成については、同一の符号を付すとともに説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0051】
図9に示すように、制御部50には、車両に設けられた表示部60が接続されている。表示部60は、例えばナビゲーションシステムのディスプレイにおける表示領域である。制御部50は、操作部10に対する操作を検出する接点51やセンサ52の検出信号を基に、表示部60の表示状態を制御する。本実施形態の入力装置1は、表示部60上に表示される各種機能、例えば表示スイッチなどの選択操作、若しくは決定操作などに用いられる。
【0052】
本実施形態の第1操作部11は、その上面へのタッチ操作を検出する静電容量式のセンサを有している。これにより、第1操作部11は、プッシュスイッチの操作ノブであるとともに、上面へのタッチ操作を検出可能となっている。これにより、第1操作部11及び第2操作部12は、第1配置状態において、その上面にひとつのタッチ操作領域70を形成している。
【0053】
制御部50の機能切替部53は、第1操作部11へのプッシュ操作の有無に基づいて、第1操作部11及び複数の第2操作部12のタッチ検出機能の動作モードを切り替える。機能切替部53は、第1操作部11に対してプッシュ操作無しの場合、操作部10のタッチ検出機能の動作モードを、タッチ操作領域70へのなぞり操作などを含むタッチ操作を検出するタッチパッドモードに設定する。また、機能切替部53は、第1操作部11に対してプッシュ操作有りの場合、操作部10のタッチ検出機能の動作モードを、個々の第1操作部11又は第2操作部12に対するタッチ操作の有無を検出するタッチスイッチモードに設定する。また、制御部50は、接点51の検出信号を基に、第1操作部11へのプッシュ操作の有無に応じて、表示部60の表示を切り替える。
【0054】
以下、本実施形態の作用について説明する。
図9に示した通り、制御部50の機能切替部53は、第1操作部11がプッシュ操作される前の第1配置状態の場合、操作部10の動作モードをタッチパッドモードに設定する。よって、操作部10の上面全域が、タッチ操作領域70として形成される。制御部50は、第1配置状態の場合、例えば空調機能、オーディオ機能、ナビゲーション機能等の各種機能のアイコンやグラフィックが表示されている表示部60に対し、ポインタ61を表示させる。このとき、制御部50は、タッチ操作領域70に対するなぞり操作に基づいて、表示部60内のポインタ61を移動させる。また、タッチ操作領域70に対するタップ操作に基づいて、ポインタ61による選択を実行させる。
【0055】
図10に示した通り、第1操作部11がプッシュ操作されて第2操作部12が第2配置状態に切り替えられた場合、第1操作部11及び第2操作部12の各々は、互いに離隔する。また、制御部50の機能切替部53は、第2配置状態の場合、接点51の検出信号を基にプッシュ操作有りを検出し、第1操作部11及び複数の第2操作部12のタッチ検出機能の動作モードをタッチスイッチモードに切り替える。
【0056】
制御部50は、操作部10のタッチ検出機能をタッチスイッチモードに切り替えた場合、例えば表示部60の表示を、タッチパッドモードのときとは別の表示態様に切り替え、第2配置状態をとった第2操作部12に対応した表示に変更する。本実施形態の場合、例えば表示部60には、第2配置状態をとった各第2操作部12の配列に応じた位置に各表示スイッチ62を複数表示する。このとき、制御部50は、各第2操作部12に対するタッチ操作若しくはタップ操作に基づいて、表示スイッチ62の選択を実行する。なお、制御部50は、タッチスイッチモードを選択している場合、第1操作部11のタッチ検出機能を有効及び無効のどちらとしてもよいし、複数の第2操作部12の一部又は全部のタッチ検出機能を無効としてもよい。
【0057】
このように、操作部10の配置状態に応じて、タッチ検出機能のモードを切り替えることで、ひとつの操作部10を用いて、ポインタ61の操作と、表示スイッチ62の操作とを実行することができる。すなわち、ひとつの操作部10によって、複数の機能を選択操作することができる。
【0058】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(10)機能切替部53は、第1配置状態及び第2配置状態の切り替えに応じて、第1操作部11及び第2操作部12のタッチ検出機能のモードを切り替える。この構成によれば、配置状態の切り替えに応じて、操作方法を切り替えることで、ひとつの操作部10を用いて複数の機能を操作できる。
【0059】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
[操作部10について]
・第2実施形態において、第1操作部11は、タッチ検出機能を有していなくてもよい。この場合、複数の第2操作部12で形成されたタッチ操作領域に対するなぞり操作などを検出してもよい。
【0060】
・各実施形態において、第1操作部11は、プッシュスイッチの操作ノブに限定されない。例えばプル操作されるものでもよいし、タッチ操作されるものでもよいし、ダイヤル操作されるものでもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0061】
・各実施形態において、第2操作部12は、タッチ操作されることに限定されず、プッシュ操作、プル操作、又はダイヤル操作されるものでもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0062】
・各実施形態において、第2操作部12は、2つでもよいし、3つでもよいし、4つでもよい。
・各実施形態において、第1操作部11及び各第2操作部12の形状は、特に限定されず、適宜変更可能である。また、第1配置状態において、操作部10全体が上面視で六角形状に設けられていなくてもよく、五角形でもよいし、四角形でもよい。
【0063】
・各実施形態において、第1配置状態において、第1操作部11及び各第2操作部12の間に、間隙が空いていてもよい。
・各実施形態において、第1操作部11の側面11a、及び第2操作部12の側面12a,12bは、強調表示されていなくてもよい。すなわち、視認部は省略可能である。
【0064】
・各実施形態において、各第2操作部12は、第1操作部11に直接対向することに限定されず、他の第2操作部12を介して対向していてもよい。すなわち、第1操作部11に隣接して設けられることに限定されない。
【0065】
・各実施形態において、第1操作部11及び複数の第2操作部12は、直線的に並べて設けられてもよい。すなわち、複数の第2操作部12は、第1操作部11の周りに配置されていなくてもよい。
【0066】
・各実施形態において、第2操作部12が第1操作部11の周囲に配置されているとは、第1操作部11に隣接して配置されることに限定されず、例えば車両において第1操作部11と同じ場所に配置されていればよい。
【0067】
・各実施形態において、第2操作部12は、第1配置状態が第1操作部11から離れた位置に配置され、第2配置状態が第1操作部11に近づいた位置に配置されてもよい。
[切替機構20について]
・各実施形態において、切替機構20は、本実施形態に限定されず、第1操作部11の変位によって第2操作部12を変位させるものであればよい。
【0068】
・各実施形態において、切替機構20は、第2操作部12を第1操作部11から離れた位置に配置して意匠性を向上させ、第2操作部12を第1操作部11に近づいた位置に配置して操作性を向上させるものであってもよい。
【0069】
・各実施形態において、切替機構20が切り替える配置状態の数は、少なくとも2つであればよく、3つでもよいし、4つ以上でもよい。
・各実施形態において、切替機構20は、ユーザによって第2操作部12を任意の配置に調整するものであってもよい。
【0070】
・各実施形態において、切替機構20は、少なくとも第1配置状態から第2配置状態へと切り替え可能であればよい。
[保持機構30について]
・各実施形態において、保持機構30が、第1操作部11の位置を保持することは必須ではなく、第2操作部12の配置状態を保持できるものであればよい。例えば、保持機構30が第2操作部12を直接保持してもよい。また、この場合、切替機構20が第1配置状態から第2配置状態への切り替えを行い、保持機構30が第2配置状態から第1配置状態への切り替えを行うように構成されていてもよい。
【0071】
・各実施形態において、保持機構30において、保持状態へと切り替える操作と、保持状態を解除する操作とは、異なっていてもよい。
・各実施形態において、保持機構30は、省略可能である。
【0072】
[制御部50について]
・第2実施形態において、制御部50は、タッチスイッチモードを選択している場合、第1操作部11のタッチ検出機能を無効としてもよいし、複数の第2操作部12の一部又は全部のタッチ検出機能を無効としてもよい。
【0073】
・各実施形態において、第1操作部11の操作有無の検出は、実施形態に限定されず、接点機構を含む種々の検出方法を用いることができる。例えば、第2操作部12側に設けられた接点機構を用いてもよいし、第1操作部11又は第2操作部12の位置を検出するセンサ等を用いてもよい。
【0074】
・各実施形態において、機能切替部53は、第1操作部11の操作有無に基づいて機能の切り替えを制御することに限定されず、配置状態そのものを検出して制御してもよい。
・各実施形態において、機能切替部53の機能の切り替えは、機能の可否を切り替えるものであってもよいし、操作モードを変えるものであってもよいし、操作対象の機能を切り替えるものであってもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0075】
・第1実施形態において、機能切替部53は、省略可能である。
・制御部50は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)並びに、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0076】
[その他]
・各実施形態において、第2操作部12のスイッチ機能を実現するセンサは、種類を問わない。また、第1操作部11のスイッチ機能は、センサに限定されず、各種スイッチとしてもよい。
【0077】
・第2実施形態において、第2操作部12が第2配置状態になったときに表示部60に表示される画面は、第2操作部12ごとに用意されたアイコンが表示されることに限らず、第2操作部12で選択決定される種々の表示を含む。
【符号の説明】
【0078】
1…入力装置
10…操作部
11…第1操作部
11a…側面
12…第2操作部
12a…側面
12b…側面
15…視認部
20…切替機構
21…筒部材
22…リンク
23…スライド部材
24…スライド軸
30…保持機構
31…プッシャ
32…案内部
33…回転子
41…鋸歯状面
42…切り欠き
43…突片
50…制御部
53…機能切替部
60…表示部
図1
図2
図3
図4
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図6
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図10