(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/578 20210101AFI20230213BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20230213BHJP
H01M 50/164 20210101ALI20230213BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/152
H01M50/164
(21)【出願番号】P 2019551009
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038239
(87)【国際公開番号】W WO2019082711
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2017204480
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原口 心
(72)【発明者】
【氏名】宮田 恭介
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157749(WO,A1)
【文献】特開2006-147180(JP,A)
【文献】特開2015-156374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板がセパレータを介して巻回された電極体と、電解液と、前記電極体及び電解液を収容する有底円筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部にガスケットを介してかしめ固定された封口体と、を備える円筒形電池であって、
前記封口体は、平面視で円形をなす弁体と、前記弁体の電池内方側の表面に接触して配置され、中央部に開口を有する絶縁板と、前記絶縁板を挟んで前記弁体に対向して配置され、前記絶縁板の開口を介して前記弁体の中央部に接続される
とともに前記絶縁板に固定された金属板とから構成され
る電流遮断機構を含み、
前記絶縁板及び前記金属板のそれぞれに通気孔が設けられ、
前記弁体は、前記中央部と外周部が厚肉部に形成され、前記中央部と前記外周部をつなぐ中間部が半径方向に沿った平坦面を有する薄肉部に形成され、前記中間部が前記絶縁板に内周部から外周部に亘って接触している、
円筒形電池。
【請求項2】
前記中間部は内周部から外周部にかけて均一厚みに形成されている、請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項3】
前記絶縁板の開口の内径が3mm以上である、請求項1または2に記載の円筒形電池。
【請求項4】
前記弁体の電池外方側の表面が平坦面に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の円筒形電池。
【請求項5】
前記封口体が前記弁体上に配置された端子キャップを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流遮断機構を有する封口体を備えた円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弁体、絶縁部材、及び金属板から構成される電流遮断機構を含む封口体を備えた円筒形電池が開示されている。この封口体では、弁体によって金属板が絶縁部材を介して固定されている。弁体の中央部には突出部が形成され、この突出部が金属板の中央部に接続されている。弁体の突出部の周囲には傾斜領域が設けられている。この傾斜領域では、内周部から外周部へ半径方向に沿って厚みが連続的に減少している。
【0003】
上記のような電流遮断機構を構成する封口体を備えた電池では、電池内圧が上昇したとき、金属板の通気孔を介して内部圧力が弁体に作用し、金属板の中央部との接続部を引っ張るように弁体を電池外方へ押圧する。そして、電池内圧が所定値に達すると、金属板の弁体との接続部又は金属板に設けられた溝状の薄肉部が破断して、弁体と金属板との間の電流経路が遮断される。その後、さらに電池内圧が上昇すると、弁体に設けられた傾斜領域の最外周部である薄肉部が起点となって弁体が破断して、電池内部のガスが排出される
ようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される円筒形電池では、弁体に傾斜領域が設けられていることで、電池内圧の上方に伴って弁体が安定して変形するため、電流遮断機構の作動圧のばらつきを低減することができる。しかし、電流遮断機構の作動圧をより安定させることが好ましい。
【0006】
本発明の目的は、弁体、絶縁板、及び金属板によって構成される電流遮断機構を含む封口体を備えた円筒形電池において、電流遮断機構の作動圧を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る円筒形電池は、正極板と負極板がセパレータを介して巻回された電極体と、電解液と、前記電極体及び電解液を収容する有底円筒状の外装缶と、前記外装缶の開口部にガスケットを介してかしめ固定された封口体と、を備える円筒形電池であって、前記封口体は、平面視で円形をなす弁体と、前記弁体の電池内方側の表面に接触して配置され、中央部に開口を有する絶縁板と、前記絶縁板を挟んで前記弁体に対向して配置され、前記絶縁板の開口を介して前記弁体の中央部に接続される金属板とから構成され、前記弁体は、前記中央部と外周部が厚肉部に形成され、前記中央部と前記外周部をつなぐ中間部が半径方向に沿った平坦面を有する薄肉部に形成され、前記中間部が前記絶縁板に内周部から外周部に亘って接触している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弁体、絶縁板、及び金属板によって構成される電流遮断機構を含む封口体を備えた円筒形電池において、電流遮断機構の作動圧を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態である円筒形電池の断面図である。
【
図2】
図2(a)は本実施形態の円筒形電池の封口体の断面図であり、
図2(b)は比較例の封口体の断面図である。
【
図3】
図3は端子キャップを含む封口体を備えた別実施形態の円筒形電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である円筒形電池10の断面図である。
図2は、封口体20の断面図である。円筒形電池10は、例えば、非水電解質二次電池である。
【0012】
図1に示すように、円筒形電池10は、有底円筒状の外装缶12の内部に電極体14と図示しない電解液を収容して構成される。外装缶12の開口部にガスケット16を介して封口体20がかしめ固定されている。これにより電池内部が密封される。
【0013】
封口体20は、弁体22、絶縁板24、及び金属板26から構成されている。封口体20は、電流遮断機構を構成する。弁体22は、平面視で円形をなしている。絶縁板24は、弁体22の電池内方側の表面に接触して配置されている。
【0014】
絶縁板24は、平面視で円環状に形成され、中央部に開口24aを有する。この開口24aの内径は3mm以上であることが好ましい。このように設定すれば、弁体22と金属板26の中央部同士の接続を安定して確実に行うことができる。
【0015】
金属板26は、平面視で円形の外形を有し、絶縁板24を挟んで弁体22に対向して配置されている。弁体22と金属板26は、絶縁板24の開口24aを介して、それらの中心部同士が接続されている。本実施形態では、弁体22が電池外部に露出しており、外部端子(より詳しくは正極端子)として機能する。
【0016】
電流遮断機構は次のように作動する。金属板26には通気孔26aが設けられており、絶縁板24には通気孔(図示せず)が設けられている。そのため、電池内圧が上昇すると、弁体22が金属板26の通気孔26a及び絶縁板24の通気孔を介して、その圧力を受ける。その結果、電池内圧の上昇に伴って、弁体22が金属板26との接続部を電池外方へ引っ張るように作用する。そして電池内圧が所定値に達すると金属板26の弁体22との接続部又は金属板26に設けられた溝26bが破断して、弁体22と金属板26との間の電流経路が遮断される。その後、電流遮断機構の作動後さらに電池内圧が上昇すると、後述する弁体22の薄肉部である中間部22cが破断して、電池内部のガスが排出される。
【0017】
弁体22はアルミニウム又はアルミニウム合金の板材のプレス加工により作製することができる。アルミニウム及びアルミニウム合金は可撓性に優れているため弁体22の材料として好ましい。
【0018】
弁体22は、平面視で円形をなし、その中央部22aと外周部22bがそれぞれ厚みTa,Tbの厚肉部として形成されている。これに対し、中央部22aと外周部22bをつなぐ中間部22cは、厚みTcの薄肉部に形成されている。中間部22cの厚みTcは、中央部22aの厚みTaより小さく、且つ、外周部22bの厚みTbより小さい。なお、弁体22において中央部22aの厚みTaと外周部22bの厚みTbは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0019】
中間部22cの厚みTcは、内周部から外周部にかけて均一厚みに形成されるのが好ましい。このように均一厚みとすることで、弁体22の作製が容易となる利点がある。ただし、これに限定されるものではなく、中間部22cの厚みTcは内周部から外周部へ連続的に減少または増加するように形成してもよい。
【0020】
弁体22の中央部22aが厚肉部に形成されていることで、中央部22aは扁平な円柱状をなして電池内方側の表面に突出している。このように中央部22aが突出していることで、弁体22と金属板26との接続が容易になるとともに、弁体22と金属板26との間に絶縁板24が介在するためのスペースを与えることができる。
【0021】
弁体22の電池外方側の表面は、平坦面に形成されていることが好ましい。このように平坦面に形成されていることで、外部端子となる弁体22の表面に集電部材を例えば超音波接合により接続する場合、集電部材をより確実に接続できるという利点がある。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、弁体22の電池外方側の表面が中央部22aで膨出したような形状であってもよい。
【0022】
上述したように、弁体22の電池外方側の表面は平坦面に形成されている。これにより、厚みTcの薄肉部である中間部22cは、弁体22の電池内方側の面において円環状の凹部22dを形成している。この凹部22dに絶縁板24が嵌め合されて固定される。絶縁板24の内周部に金属板26が嵌め合されて固定される。したがって、金属板26は、絶縁板24を介して弁体22に固定されている。
【0023】
薄肉部である中間部22cの電池内方側の表面(すなわち、中間部22cによって形成される凹部22dの底面)は、弁体22の半径方向に沿った平坦面に形成されている。これにより、弁体22の中間部22cは、凹部22d内に嵌め合された絶縁板24と内周部から外周部に亘って接触している。
【0024】
絶縁板24は絶縁性を確保することができ、電池特性に影響を与えない材料を用いることができる。絶縁板24に用いられる材料としてはポリマー樹脂が好ましく、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が例示される。
【0025】
絶縁板24はその外周部に電池内方へ伸びるスカート部24bを有している。スカート部24bの内周部に金属板26が嵌め合されて固定される。スカート部24bの先端は、弁体22の中央部22a側へ折り曲げられてもよい。これにより、金属板26の外周に設けたフランジ部26cにスカート部24bの先端が係合した状態で組み付けられ、絶縁板24に対する金属板26の位置ズレを確実に防止することができる。
【0026】
金属板26は、平面視で絶縁板24より小径の円形をなし、中央部が薄肉部に形成されている。金属板26は、弁体22と同様にアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されることが好ましい。これにより弁体22と金属板26の中央部同士の接続が容易になる。接続方法としてはレーザー溶接を用いることが好ましい。金属板26の外周部には通気孔26aが貫通形成されている。金属板26の外周縁部にあるフランジ部26cが絶縁板24のスカート部24bによって保持されている。
【0027】
封口体20は、次のようにして組み立てられる。まず、封口体20を構成する弁体22、絶縁板24、及び金属板26を準備する。次に、絶縁板24のスカート部24bの内側に金属板26を嵌め合わせ、続いて、弁体22の凹部22dに絶縁板24を嵌め合わせる。なお、上記の部材を嵌め合わせる2つの手順は順序を入れ替えてもよい。
【0028】
弁体22と金属板26との接続は上記の手順を完了した後に行うことが好ましい。弁体22と金属板26が互いに固定された状態で接続することが可能になるため、接続強度のばらつきが低減される。
【0029】
上述したように本実施形態の円筒形電池10の封口体20では、金属板26が固定された絶縁板24が、内周部から外周部に亘って弁体22の中間部22cと接触している。そのため、電池内圧が上昇して金属板26及び絶縁板24に電池外方側へ押圧する圧力が作用したとき、弁体22の中間部22cによって接触支持されていることで金属板26及び絶縁板24の変形が抑制され、その結果、電流遮断機構の作動圧を安定させることができる。
【0030】
次に、電極体14について説明する。本実施形態では
図1に示すように正極板30と負極板32をセパレータ34を介して巻回して形成した電極体14を用いている。
【0031】
正極板30は、例えば次のようにして作製することができる。まず、正極活物質と結着剤を分散媒中で均一になるように混練して、正極合剤スラリーを作製する。結着剤にはポリフッ化ビニリデンを分散媒にはN-メチルピロリドンを用いることが好ましい。正極合剤スラリーには黒鉛やカーボンブラックなどの導電剤を添加することが好ましい。この正極合剤スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して正極合剤層が形成される。その際、正極集電体の一部に正極合剤層が形成されていない正極集電体露出部が設けられる。次に、正極合剤層をローラーで所定厚みに圧縮し、圧縮後の極板を所定寸法に切断する。最後に、正極集電体露出部に正極リード31を接続して正極板30が得られる。
【0032】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出することができるリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、一般式LiMO2(MはCo、Ni、及びMnの少なくとも1つ)、LiMn2O4及びLiFePO4が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができ、Al、Ti、Mg、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1つを添加して、又は遷移金属元素と置換して用いることもできる。
【0033】
負極板32は、例えば次のようにして作製することができる。まず、負極活物質と結着剤を分散媒中で均一になるように混練して、負極合剤スラリーを作製する。結着剤にはスチレンブタジエン(SBR)共重合体を、分散媒には水を用いることが好ましい。負極合剤スラリーにはカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤を添加することが好ましい。この負極合剤スラリーを負極集電体上に塗布、乾燥して負極合剤層が形成される。その際、負極集電体の一部に負極合剤層が形成されていない負極集電体露出部が設けられる。次に、負極合剤層をローラーで所定厚みに圧縮し、圧縮後の極板を所定寸法に切断する。最後に、負極集電体露出部に負極リード33を接続して負極板32が得られる。
【0034】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出することができる炭素材料や金属材料を用いることができる。炭素材料としては、天然黒鉛及び人造黒鉛などの黒鉛が例示される。金属材料としては、ケイ素及びスズ並びにこれらの酸化物が挙げられる。炭素材料及び金属材料は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
セパレータ34として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィンを主成分とする微多孔膜を用いることができる。微多孔膜は1層単独で又は2層以上を積層して用いることができる。2層以上の積層セパレータにおいては、融点が低いポリエチレン(PE)を主成分とする層を中間層に、耐酸化性に優れたポリプロピレン(PP)を表面層とすることが好ましい。さらに、セパレータ34には酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)及び酸化ケイ素(SiO2)のような無機粒子を添加することができる。このような無機粒子はセパレータ中に担持させることができ、セパレータ表面に結着剤とともに塗布することもできる。
【0036】
非水電解液として、非水溶媒中に電解質塩としてのリチウム塩を溶解させたものを用いることができる。
【0037】
非水溶媒として、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状カルボン酸エステルを用いることができ、これらは2種以上を混合して用いることが好ましい。環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)が例示される。また、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のように、水素の一部をフッ素で置換した環状炭酸エステルを用いることもできる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)などが例示される。環状カルボン酸エステルとしてはγ-ブチロラクトン(γ-BL)及びγ-バレロラクトン(γ-VL)が例示され、鎖状カルボン酸エステルとしてはピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート及びメチルプロピオネートが例示される。
【0038】
リチウム塩として、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li2B10Cl10及びLi2B12Cl12が例示される。これらの中でもLiPF6が特に好ましく、非水電解液中の濃度は0.5~2.0mol/Lであることが好ましい。LiPF6にLiBF4など他のリチウム塩を混合することもできる。
【0039】
以下、本実施形態に係る円筒形電池10の実施例について詳細に説明する。
【0040】
(実施例1)
(封口体の作製)
図2(a)に示した封口体20を次のように作製した。弁体22及び金属板26をそれぞれプレス加工により所定の形状に成型した。弁体22には、直径19mmの円形アルミニウム板を用いた。弁体22の中央部22aの厚みTa0.8mm、外周部22bの厚みTb0.8mm、中間部22cの厚みTc0.1mmとした。
【0041】
絶縁板24は、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン製の板材を環状に打ち抜いた後、
図2(a)に示す断面形状となるように熱成型するとともに通気孔を形成した。絶縁板24は、直径を15mmに形成し、スカート部24b以外の部分の厚みを0.4mmとした。また、絶縁板24の開口24aの直径Daを3mmとし、外形の直径Dbを15mmとした。
【0042】
金属板26には、直径13mmで厚み0.6mmの円形アルミニウム板を用いた。金属板26の中央部に薄肉部を形成し、外周部に通気孔26aを形成した。金属板26の薄肉部の周囲に平面形状が環状で断面形状がV字状の溝26bを形成した。この溝26bは電流遮断部として機能する。
【0043】
上記のように作製した金属板26を、絶縁板24が金属板26を保持するように絶縁板24のスカート部24bの内周部に嵌め合わせた。次に、弁体22の凹部22dに金属板26を保持した絶縁板24を嵌め合わせて固定した。そして、弁体22の中央部22aと金属板26の薄肉部をレーザー溶接により接続した。このようにして封口体20を作製した。
【0044】
このように作製された封口体22では、
図2(a)に示すように、絶縁板24が直径Da:3mmの開口24aから外形の直径Db:15mmの間の領域で弁体22に接触支持されており、このように支持された絶縁板24によって金属板26が接触支持された構成となっている。
【0045】
(正極板の作製)
正極活物質としてLiNi0.91Co0.06Al0.03で表されるリチウムニッケル複合酸化物を用いた。100質量部の正極活物質と、1質量部の導電剤としてのアセチレンブラック(AB)と、1質量部の結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を混合した。この混合物を分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で混練して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚み13μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し乾燥して正極合剤層を形成した。その際、正極集電体の一部に正極合剤層が形成されていない正極集電体露出部を設けた。次に、正極合剤層を充填密度が3.6g/cm3になるようにローラーで圧縮し、圧縮後の極板を所定寸法に切断した。最後に、正極集電体露出部にアルミニウム製の正極リード31を接続して正極板30を作製した。
【0046】
(負極板の作製)
負極活物質として93質量部の黒鉛と7質量部の酸化ケイ素(SiO)の混合物を用いた。100質量部の負極活物質と、1質量部の増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、1質量部の結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を混合した。その混合物を分散媒としての水中で混練して負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚み6μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し乾燥して負極合剤層を形成した。その際、負極集電体の一部に負極合剤層が形成されていない負極集電体露出部を設けた。次に、負極合剤層を充填密度が1.65g/cm3となるようにローラーで圧縮し、圧縮後の極板を所定寸法に切断した。最後に、負極集電体露出部にニッケル製の負極リード33を接続して負極板32を作製した。
【0047】
(電極体の作製)
正極板30と負極板32を、セパレータ34を介して巻回することにより電極体14を作製した。セパレータ34には、片面にポリアミドとアルミナ(Al2O3)のフィラーをを含む耐熱層が形成されたポリエチレン製の微多孔膜を用いた。
【0048】
(試験用円筒形電池の組立)
図1に示すように、電極体14の下部に下部絶縁板36を配置し、電極体14を有底円筒状の外装缶12へ挿入した。負極リード33は外装缶12の底部に抵抗溶接により接続した。試験用円筒形電池では、外装缶12に電解液を注入しなかった。
【0049】
次に、電極体14の上部に上部絶縁板38を配置し、外装缶12の開口部の近傍にU字状の溝部13を円周方向に塑性加工によって形成した。そして、正極リード31の上端部を金属板26に接続し、外装缶12に形成された溝部13にガスケット16を介して封口体20をかしめ固定することにより、外径が21mm、高さが70mmの試験用円筒形電池を作製した。
【0050】
(比較例1)
比較例1の試験用円筒形電池用として、
図2(b)に示す封口体20Aを作製した。この封口体20Aの弁体22Aには、中央部22aと外周部との間に傾斜領域23を形成した。この傾斜領域23では、内周部から外周部へ半径方向に沿って厚みが連続的に減少しており、その最外周部23aの厚みを0.2mmに形成した。なお、傾斜領域23の最外周部23aが、電池内圧が上昇して弁体22が安全弁として機能する際に破断の起点となる。
【0051】
弁体22Aでは傾斜領域23を形成したことで、傾斜領域23の下方に空間が形成されており、弁体22Aの傾斜領域23と絶縁板24とが非接触になっている。さらに、比較例1の封口体20Aでは、弁体22Aにおいて中央部22aと傾斜領域23囲まれた範囲も絶縁板24と非接触となるように弁体22Aと絶縁板24との間に僅かな隙間を形成した。したがって、比較例1の封口体20Aでは、
図2(b)に示すように、絶縁板24は、傾斜領域23の最外周部23aの直径Da:10mmと絶縁板24の外形の直径Db:15mmとの間の領域で弁体22に接触支持されており、このように支持された絶縁板24によって金属板26が接触支持された構成となっている。
【0052】
弁体22A以外の絶縁板24及び金属板26は、実施例1と同じものを用いて封口体20Aを作製した。この封口体20Aを用いて、実施例1と同様に試験用円筒形電池を組み立てた。
【0053】
(電流遮断機構の作動圧の測定)
実施例1の封口体20及び比較例1の封口体20Aを用いて試験用円筒形電池をそれぞれ30本ずつ作製した。試験用円筒形電池の外装缶12の底部に直径3mmの貫通孔を形成し、銅管を挿入して貫通孔と銅管の間をシール剤で気密状態に封止した。そして、銅管を経由して試験用円筒形電池内に空気を0.3MPa/secの加圧速度で注入し、電池内圧を上昇させて電流遮断機構が作動したときの作動圧を測定した。このような測定を各30個の封口体20,20Aについて行い、封口体20,20Aについて作動圧の標準偏差をそれぞれ算出した。その結果を、下記の表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示すように、金属板26の最外周部から中央部の薄肉部近傍までの範囲で金属板26が絶縁板24を介して弁体22によって支持される構成の実施例1では電流遮断機構の作動圧のばらつきが比較的小さく、金属板26の外周部分だけが絶縁板24を介して弁体22Aによって支持される構成の比較例1では電流遮断機構の作動圧のばらつきが比較的大きくなった。これは、弁体22によって接触支持される領域が金属板26の薄肉部近傍まで増えることで、電池内圧上昇時に金属板26と絶縁板24の電池外方側への変形が抑制され、その結果、金属板26の薄肉部の破断動作が安定するためと考えられる。
【0056】
なお、本発明に係る円筒形電池は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更や改良が可能である。
【0057】
例えば、上記においては弁体22が円筒形電池10の外部に露出して外部端子として機能する場合について説明したが、これに限定されない。
図3に示す円筒形電池10Bのように、弁体22上に端子キャップ29を配置して、この端子キャップ29を外部端子として用いるタイプの封口体20Bを備えてもよい。この場合、端子キャップ29は中央部が略円柱状に膨出して形成され、図示しない通気孔が設けられている。また、端子キャップ29は、外周部がガスケット16を介して外装缶12の上端部にかしめ固定されている。このように端子キャップ29を有する封口体20Bを備えた円筒形電池10Bによっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
また、上記では
図4(a)に示すように、弁体22の中央部22aおよび外周部22bが一方表面に突出した形状に形成した例について説明したが、これに限定されるものではなく、
図4(b)に示すように、弁体22の両側表面に中央部22aおよび外周部22bが突出した形状としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10,10B 円筒形電池、12 外装缶、13 溝部、14 電極体、16 ガスケット、20,20A,20B 封口体、22 弁体、22a 中央部、22b 外周部、22c 中間部、22d 凹部、23 傾斜領域、23a 最外周部、24 絶縁板、24a 開口、24b スカート部、26 金属板、26b 溝、26c フランジ部、29 端子キャップ、30 正極板、31 正極リード、32 負極板、33 負極リード、34 セパレータ、36 下部絶縁板、38 上部絶縁板。