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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】積層体及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230213BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20230213BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20230213BHJP
   B32B 17/00 20060101ALI20230213BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B32B15/09 Z
B32B15/082 Z
B32B17/00
C03C27/12 D
C03C27/12 F
C03C27/12 M
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019562479
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048353
(87)【国際公開番号】W WO2019131960
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2017254081
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】有嶋 裕之
(72)【発明者】
【氏名】磯上 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】保田 浩孝
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-162856(JP,A)
【文献】特表2017-505505(JP,A)
【文献】特開2017-204387(JP,A)
【文献】特開2017-183063(JP,A)
【文献】特開2016-143511(JP,A)
【文献】特開2016-141579(JP,A)
【文献】特開2015-147725(JP,A)
【文献】特開2012-014945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0117003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 27/00-29/00
H05B 3/20,3/86
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、剥離性面を有する樹脂層(1)及び発熱性導電層をこの順に有し、前記剥離性面を有する樹脂層(1)の発熱性導電層を積層する側の表面粗さRzが、前記発熱性導電層を積層する前において5μm未満である、積層体。
【請求項2】
さらに樹脂層(2)を有し、前記基材フィルム、前記剥離性面を有する樹脂層(1)、前記発熱性導電層及び該樹脂層(2)をこの順に有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記発熱性導電層が銅からなる、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレート樹脂からなる、請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記発熱性導電層が、2つの主バスバー及び該2つの主バスバーに接続する複数の主導電細線を含む、請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記主導電細線が、全体的又は部分的に、波形状及び/又はジグザグ状である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記発熱性導電層が、前記主導電細線を結ぶ副導電細線をさらに含み、積層体表面からの投影断面積において、副導電細線の投影断面積の合計が主導電細線の投影断面積の合計の1倍未満である、請求項5又は6に記載の積層体。
【請求項8】
前記発熱性導電層が、前記主導電細線を結ぶ副導電細線をさらに含み、2つの主バスバーに挟まれる領域を各主導電細線の長さを10等分する位置で分けた際の10個の領域において、2つの主バスバーに接する各領域における副導電細線の投影断面積の合計が、他の8つの各領域における副導電細線の投影断面積の合計よりも大きい、請求項5~7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
線幅が20μm以下である部分を有する前記主導電細線の本数が、すべての前記主導電細線の本数の80%以上である、請求項5~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記剥離性面を有する樹脂層(1)の厚みが200μm未満である、請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記剥離性面を有する樹脂層(1)がポリビニルアセタール樹脂を含有する、請求項1~10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記剥離性面を有する樹脂層(1)がポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部未満含有する、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記剥離性面を有する樹脂層(1)が可塑剤を含有しない、請求項11に記載の積層体。
【請求項14】
前記樹脂層(2)が、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する、請求項2~13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
前記樹脂層(2)の厚みが200μm未満である、請求項2~14のいずれかに記載の積層体。
【請求項16】
前記樹脂層(2)がポリビニルアセタール樹脂を含有し、該ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部未満含有する、請求項14又は15に記載の積層体。
【請求項17】
前記樹脂層(2)が可塑剤を含有しない、請求項14又は15に記載の積層体。
【請求項18】
前記樹脂層(2)がポリビニルアセタール樹脂を含有し、かつ該ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部以上含有する、請求項14又は15に記載の積層体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の積層体から前記基材フィルムを剥離して得られる、発熱性導電層含有フィルム。
【請求項20】
請求項1~18のいずれかに記載の積層体から前記基材フィルム及び前記剥離性面を有する樹脂層(1)を剥離して得られる、発熱性導電層含有フィルム。
【請求項21】
少なくとも2枚のガラスの間に、請求項19に記載の発熱性導電層含有フィルムを有する合わせガラス。
【請求項22】
少なくとも2枚のガラスの間に、請求項20に記載の発熱性導電層含有フィルム、並びにポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂層(4)を有し、発熱性導電層に接する面に該樹脂層(4)が配置された、合わせガラス。
【請求項23】
前記発熱性導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離が200μm未満である、請求項21又は22に記載の合わせガラス。
【請求項24】
ポリビニルアセタール樹脂を含有する層の厚みの合計が1mm未満である、請求項2123のいずれかに記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用中間膜として使用される積層体、発熱性導電層含有フィルム、及び該発熱性導電層含有フィルムを有する合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
建物又は乗物におけるガラスの着氷や曇りを除去する方法として、ガラスに熱風を当てる方法が知られている。また、フロントガラス等のガラスに取り付けたカメラやセンサーの誤作動を防ぐため、カメラやセンサーの周りを加熱し、着氷や曇りを除去することが必要とされており、合わせガラスの間に導電層を形成し、通電させることで、着氷や曇りを除去する方法が提案されている。導電層の形成方法として、薄膜のポリビニルアセタール樹脂フィルム上に銅箔を形成し、エッチング処理する方法などが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-539905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガラスの着氷や曇りを除去する方法として、ガラスに熱風を当てる方法では、十分な前方視認性を得るのに時間がかかることや、例えば着氷や曇りの除去に燃料の燃焼熱を利用できない電気自動車においては、電気で空気を加熱し、ガラスに熱風を当てる方法では効率が悪く、航続距離の低下に直結するといった問題があった。本発明者の検討によれば、上記のような導電層の形成方法では、薄膜ポリビニルアセタール樹脂の熱収縮や、銅箔と薄膜ポリビニルアセタール樹脂フィルムとの熱膨張率差、エッチング処理の乾燥工程における薄膜ポリビニルアセタール樹脂フィルムの反りや変形等により、導電構造の断線、剥離及び変形等が生じることがわかった。特に、薄膜ポリビニルアセタール樹脂と導電層とから構成される積層体を顧客へ提供する際に、導電構造の変形等があれば、外観の悪化に加え、力学的作用により積層体を含む合わせガラスを形成する前に導電構造が断線又は剥離し得ることや、また導電構造の断線又は剥離があれば、力学的作用によりその断線又は剥離が顕著になることがわかった。さらに、このような積層体は変形や断線等がないことに加え、合わせガラス形成後に良好な視認性及び発熱性を有することが要求される。
【0005】
従って、本発明の目的は、導電層の断線、剥離及び変形がなく、かつ合わせガラス形成後に優れた視認性及び発熱性を有する積層体、発熱性導電層含有フィルム、及び該発熱性導電層含有フィルムを有する合わせガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基材フィルム、剥離性面を有する樹脂層(1)及び発熱性導電層をこの順に有する積層体であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
[1]基材フィルム、剥離性面を有する樹脂層(1)及び発熱性導電層をこの順に有する、積層体。
[2]さらに樹脂層(2)を有し、前記基材フィルム、前記剥離性面を有する樹脂層(1)、前記発熱性導電層及び該樹脂層(2)をこの順に有する、[1]に記載の積層体。
[3]前記発熱性導電層が銅からなる、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレート樹脂からなる、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記発熱性導電層が、2つの主バスバー及び該2つの主バスバーに接続する複数の主導電細線を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]前記主導電細線が、全体的又は部分的に、波形状及び/又はジグザグ状である、[5]に記載の積層体。
[7]前記発熱性導電層が、前記主導電細線を結ぶ副導電細線をさらに含み、積層体表面からの投影断面積において、副導電細線の投影断面積の合計が主導電細線の投影断面積の合計の1倍未満である、[5]又は[6]に記載の積層体。
[8]前記発熱性導電層が、前記主導電細線を結ぶ副導電細線をさらに含み、2つの主バスバーに挟まれる領域を各主導電細線の長さを10等分する位置で分けた際の10個の領域において、2つの主バスバーに接する各領域における副導電細線の投影断面積の合計が、他の8つの各領域における副導電細線の投影断面積の合計よりも大きい、[5]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]線幅が20μm以下である部分を有する前記主導電細線の本数が、すべての前記主導電細線の本数の80%以上である、[5]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]前記剥離性面を有する樹脂層(1)の厚みが200μm未満である、[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]前記剥離性面を有する樹脂層(1)がポリビニルアセタール樹脂を含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]前記剥離性面を有する樹脂層(1)がポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部未満含有する、[11]に記載の積層体。
[13]前記剥離性面を有する樹脂層(1)が可塑剤を含有しない、[11]に記載の積層体。
[14]前記剥離性面を有する樹脂層(1)の発熱性導電層を積層する側の表面粗さRzが、前記発熱性導電層を積層する前において5μm未満である、[11]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15]前記樹脂層(2)が、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する、[2]~[14]のいずれかに記載の積層体。
[16]前記樹脂層(2)の厚みが200μm未満である、[2]~[15]のいずれかに記載の積層体。
[17]前記樹脂層(2)がポリビニルアセタール樹脂を含有し、該ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部未満含有する、[15]又は[16]に記載の積層体。
[18]前記樹脂層(2)が可塑剤を含有しない、[15]又は[16]に記載の積層体。
[19]前記樹脂層(2)がポリビニルアセタール樹脂を含有し、かつ該ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して可塑剤を20質量部以上含有する、[15]又は[16]に記載の積層体。
[20][1]~[19]のいずれかに記載の積層体から前記基材フィルムを剥離して得られる、発熱性導電層含有フィルム。
[21][1]~[19]のいずれかに記載の積層体から前記基材フィルム及び前記剥離性面を有する樹脂層(1)を剥離して得られる、発熱性導電層含有フィルム。
[22]少なくとも2枚のガラスの間に、[20]に記載の発熱性導電層含有フィルムを有する合わせガラス。
[23]少なくとも2枚のガラスの間に、[21]に記載の発熱性導電層含有フィルム、並びにポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂層(4)を有し、発熱性導電層に接する面に該樹脂層(4)が配置された、合わせガラス。
[24]前記発熱性導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離が200μm未満である、[22]又は[23]に記載の合わせガラス。
[25]ポリビニルアセタール樹脂を含有する層の厚みの合計が1mm未満である、[22]~[24]のいずれかに記載の合わせガラス。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層体は、導電層の断線、剥離及び変形がなく、かつ合わせガラス形成後に優れた視認性及び発熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の積層体における発熱性導電層の導電構造の一例を示す概略図である。
図2】本発明の積層体における発熱性導電層の導電構造の一例を示す概略図である。
図3】本発明の積層体における発熱性導電層の導電構造の一例を示す概略図である。
図4】本発明の積層体における発熱性導電層の導電構造の一例を示す概略図である。
図5】比較例3及び5で得られた積層体における発熱性導電層の導電構造の一例を示す概略図である。
図6】発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積の一例、及び主導電細線の投影断面積と副導電細線の投影断面積との関係を説明するための図である。
図7】発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積の一例、及び2つの主バスバーに接する各領域における副導電細線の投影断面積の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[積層体]
本発明の積層体は、基材フィルム、剥離性面を有する樹脂層(1)及び発熱性導電層をこの順に有する。なお、本明細書において、以後、剥離性面を有する樹脂層(1)を単に樹脂層(1)、発熱性導電層を単に導電層と称する場合がある。
【0010】
本発明の積層体は、例えば基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔/基材フィルムをこの順に積層させ、金属箔側の基材フィルムを剥離後、フォトリソグラフィ等の手法を用いて金属箔から発熱性導電層を形成させることにより製造することができる。本発明の積層体は導電層形成時に、基材フィルムを有するため、例えば樹脂層(1)を構成する樹脂の熱収縮や、金属箔と樹脂層(1)の熱膨張率差、エッチング処理の乾燥工程における樹脂層(1)の反りや変形等により生じる導電層の導電構造の断線、剥離及び変形等を有効に防止又は抑制できる。そのため、積層体に力学的作用が生じても、断線、剥離及び変形等がないとともに、優れた発熱性を有する。また、本発明の積層体は合わせガラス形成時においても、導電層の導電構造の断線、剥離及び変形等を有効に防止又は抑制できるため、形成された合わせガラスも、断線、剥離及び変形等がないとともに、優れた発熱性を有する。しかも、ヘイズが低く、優れた視認性を有する。なお、本明細書において、視認性とは目視で合わせガラス表面を見たときに、ガラス表面の裏側の空間に対する見えやすさを意味する。
【0011】
<基材フィルム>
本発明の積層体は基材フィルムを有する。基材フィルムとしては、種々の樹脂からなるフィルムを用いることができる。このような樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート;ポリアクリレート;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリフッ化ビニル、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素含有樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。中でも、強度、寸法安定性及び熱安定性に優れることからポリエステル樹脂が好ましく、安価であることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂からなるフィルムがより好ましい。なお、ポリエステル樹脂は共重合体であってもよく、共重合成分としては、例えばプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分;イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びそのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分などが挙げられる。
【0012】
基材フィルムの厚みは、樹脂層および発熱性導電層の保持性や、剥離作業の容易性、ロール厚みの合理性等の観点から、好ましくは20~500μm、より好ましくは30~300μm、さらに好ましくは50~150μmである。
【0013】
基材フィルムの表面には保持層が形成されていてもよく、保持層としては、例えば、2液硬化性ウレタン接着剤や2液硬化性エポキシ接着剤を用いることができる。樹脂層(1)との接合性等を考慮して、保持層は1μm~100μmであることが好ましい。樹脂層(1)と保持層との間で剥離する場合において、剥離が容易ではなく、保持層と基材フィルム間で剥離が起きたり、いずれかの層で凝集破壊が起きたりする場合には、基材フィルムには保持層がないことが好ましい。
【0014】
<剥離性面を有する樹脂層(1)>
樹脂層(1)は、発熱性導電層と接する面に剥離性面を有してもよいし、基材フィルムと接する面に剥離性面を有してもよい。本発明の積層体から基材フィルムのみを剥離することにより、又は基材フィルムと剥離性面を有する樹脂層(1)とを剥離することにより、後述する本発明の発熱性導電層含有フィルムが得られる。
【0015】
樹脂層(1)を構成する樹脂としては、例えばポリビニルアルコール又はビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化によって製造されるポリビニルアセタール樹脂;アイオノマー樹脂;(メタ)アクリレート系樹脂;シリコーン系樹脂などが挙げられる。中でも、基材フィルムのみを剥離した発熱性導電層含有フィルムを得る観点からはポリビニルアセタール樹脂が好ましく、基材フィルムと樹脂層(1)とを剥離した発熱性導電層含有フィルムを得る観点からは(メタ)アクリレート系樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0016】
樹脂層(1)がポリビニルアセタール樹脂を含有する場合、1種類のポリビニルアセタール樹脂を含んでいてもよいし、粘度平均重合度、アセタール化度、アセチル基量、水酸基量、エチレン含有量、アセタール化に用いられるアルデヒドの分子量、及び鎖長のうちいずれか1つ以上がそれぞれ異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含んでよい。樹脂層(1)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、溶融成形の容易性の観点、導電層形成時又は合わせガラス作製時の断線、剥離又は変形を抑制する観点及び合わせガラス使用時のガラスのずれ等を防ぐ観点から、粘度平均重合度、アセタール化度、アセチル基量、水酸基量のうちいずれか1つ以上がそれぞれ異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂の混合物であることが好ましい。
【0017】
ポリビニルアセタール樹脂は、例えば次のような方法によって製造できる。まず、濃度3~30質量%のポリビニルアルコール又はビニルアルコール共重合体の水溶液を、80~100℃の温度範囲で保持した後、10~60分かけて徐々に冷却する。温度が-10~30℃まで低下したところで、アルデヒド(又はケト化合物)及び酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30~300分間アセタール化反応を行う。次に、反応液を30~200分かけて20~80℃の温度まで昇温し、30~300分保持する。その後、反応液を、必要に応じて濾過した後、アルカリ等の中和剤を添加して中和し、樹脂を濾過、水洗及び乾燥することにより、ポリビニルアセタール樹脂が製造される。
【0018】
アセタール化反応に用いる酸触媒としては、有機酸及び無機酸のいずれも使用でき、例えば酢酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、硫酸及び硝酸等が挙げられる。中でも、酸の強度及び洗浄時の除去のしやすさの観点から、塩酸、硫酸及び硝酸が好ましい。
【0019】
ポリビニルアセタール樹脂の原料であるポリビニルアルコールは、従来公知の手法、すなわち酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。カルボン酸ビニルエステル化合物を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用できる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを適宜選択できる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いた加アルコール分解反応、加水分解反応などを適用できる。
【0020】
ポリビニルアセタール樹脂の原料であるビニルアルコール共重合体は、ビニルエステルと他の単量体との共重合体をケン化して得られる。他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン等のα-オレフィン;アクリル酸及びその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩、そのエステル又はその無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらの他の単量体は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。中でも、他の単量体はエチレンが好ましい。
【0021】
合わせガラスにしたときの耐貫通性に優れるポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂の製造に使用されるアルデヒド(又はケト化合物)としては、2~10個の炭素原子を有する線状、分岐状又は環状であることが好ましく、線状又は分岐状であることがより好ましい。これにより、相応の線状又は分岐状のアセタール基がもたらされる。また、本発明において使用されるポリビニルアセタール樹脂は、複数のアルデヒド(又はケト化合物)の混合物により、ポリビニルアルコール又はビニルアルコール共重合体をアセタール化して得られるものであってもよい。ポリビニルアルコール又はビニルアルコール共重合体は、単独であるか、又は粘度平均重合度若しくは加水分解度等が異なるポリビニルアルコール若しくはビニルアルコール共重合体の混合物であってよい。
【0022】
樹脂層(1)に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも1つのポリビニルアルコールと、1~10個の炭素原子を有する1つ以上のアルデヒドとの反応により生じるものであることが好ましい。アルデヒドの炭素数が12を超えるとアセタール化の反応性が低下し、しかも反応中にポリビニルアセタール樹脂のブロックが発生しやすくなり、ポリビニルアセタール樹脂の製造が困難となる。
【0023】
アセタール化反応に用いるアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の脂肪族、芳香族、脂環式アルデヒドが挙げられる。中でも、炭素原子数が2~6の脂肪族非分岐のアルデヒドが好ましく、合わせガラスにしたときの耐貫通性に優れるポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、n-ブチルアルデヒドが特に好ましい。これらのアルデヒドは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、多官能アルデヒドやその他の官能基を有するアルデヒドなどを全アルデヒドの20質量%以下の範囲で少量併用してもよい。n-ブチルアルデヒドを他の官能基を有するアルデヒドと併用する場合、n-ブチルアルデヒドの含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0024】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は100以上が好ましく、300以上がより好ましく、400以上がさらに好ましく、600以上が特に好ましく、700以上が極めて好ましく、750以上が最も好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が上記下限値以上であると、導電層形成時又は合わせガラス作製時に導電層の変形、断線及び剥離が抑制されやすく、得られる合わせガラスにおいて熱によりガラスがずれる現象が防止されやすい。また、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましく、2300以下であることが特に好ましく、2000以下であることが最も好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が上記上限値以下であると良好な製膜性が得られやすい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、例えば、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定できる。
【0025】
通常、ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度と一致するため、上記したポリビニルアルコールの好ましい粘度平均重合度は得られるポリビニルアセタール樹脂の好ましい粘度平均重合度と一致する。樹脂層(1)が2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が、前記下限値以上かつ前記上限値以下であることが好ましい。
【0026】
ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量は、原料のポリビニルアルコール又はビニルアルコール共重合体のケン化度を適宜調整することによって調整できる。アセチル基量は、ポリビニルアセタール樹脂の極性に影響を及ぼし、それによって、樹脂層(1)の可塑剤相溶性及び機械的強度が変化し得る。
【0027】
樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂中のアセチル基量は、ポリビニルアセタール主鎖のエチレンユニットを基準として、好ましくは0.1~20モル%、より好ましくは0.5~12モル%、さらに好ましくは0.5~8モル%である。原料のポリビニルアルコールのケン化度を適宜調整することにより、アセチル基量は前記範囲内に調整できる。樹脂層(1)が、アセチル基量が前記範囲内であるポリビニルアセタール樹脂を含むと、光学歪みの低減等が達成されやすい。樹脂層(1)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0028】
樹脂層(1)において用いるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、例えば40~86モル%の範囲が好ましく、45~84モル%の範囲がより好ましく、50~82モル%の範囲がさらに好ましく、60~82モル%の範囲が特に好ましく、68~82モル%の範囲が最も好ましい。ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を適宜調整することにより、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は前記範囲内に調整できる。アセタール化度が前記範囲内であると、本発明の積層体の力学的強度が十分なものになりやすく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が低下しにくい。樹脂層(1)が2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が上記範囲内であることが好ましい。
【0029】
樹脂層(1)で用いるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、ポリビニルアセタール主鎖のエチレンユニットを基準として、好ましくは9~36モル%、より好ましくは18~34モル%、さらに好ましくは22~34モル%、特に好ましくは26~34モル%、極めて好ましくは26~31モル%、最も好ましくは26~30モル%である。水酸基量が前記範囲内であると、樹脂層(1)および後述する樹脂層(2)が共にポリビニルアセタール樹脂層である場合に、該ポリビニルアセタール樹脂層同士の屈折率差が小さくなり、光学むらの少ない合わせガラスが得られやすい。また、導電層を構成する金属箔と該ポリビニルアセタール樹脂との接着性にも優れる。本発明で用いるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、遮音性能を高める観点からは、好ましくは9~29モル%、より好ましくは12~26モル%、さらに好ましくは15~23モル%、特に好ましくは16~20モル%である。ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を調整することにより、水酸基量を前記範囲内に調整できる。
【0030】
ポリビニルアセタール樹脂は、通常、アセタール基単位、水酸基単位及びアセチル基単位から構成されており、これらの各単位量は、例えば、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」又は核磁気共鳴法(NMR)によって測定できる。また、ポリビニルアセタール樹脂が、アセタール基単位以外の単位を含む場合は、水酸基の単位量とアセチル基の単位量とを測定し、これらの両単位量をアセタール基単位以外の単位を含まない場合のアセタール基単位量から差し引くことで、残りのアセタール基単位量を算出できる。
【0031】
樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度は、好ましくは200mPa・s以上、より好ましくは240mPa・s以上である。粘度平均重合度の高いポリビニルアルコールを原料又は原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用又は併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度は前記下限値以上に調整できる。樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、かかる混合物の前記粘度が前記下限値以上であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度が前記下限値以上であると、導電層形成時又は合わせガラス作製時に導電層の断線、剥離及び変形等が抑制されやすく、得られる合わせガラスにおいて熱によりガラスがずれる現象が防止されやすい。前記粘度の上限値は、良好な製膜性が得られやすい観点から、通常は1000mPa・s、好ましくは800mPa・s、より好ましくは500mPa・s、さらに好ましくは450mPa・s、特に好ましくは400mPa・sである。
【0032】
樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量は、好ましくは53,000~100,000、より好ましくは54,000~80,000、特に好ましくは55,000~70,000である。粘度平均重合度の高いポリビニルアルコールを原料又は原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用又は併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量は前記範囲内に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量が前記範囲内であると、好適な製膜性及び好適な物性(例えば、ラミネート適性、耐クリープ性及び破断強度)が得られやすい。
【0033】
樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂の分子量分布、即ち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、特に好ましくは2.9以上である。粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコールの混合物をアセタール化したり、粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコールのアセタール化物を混合したりすることにより、ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布は前記下限値以上に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が前記下限値以上であると、製膜性及び好適な物性(例えば、ラミネート適性、耐クリープ性及び破断強度)を両立させやすい。分子量分布の上限値としては、例えば製膜のしやすさの観点から、通常は10、好ましくは5である。
【0034】
樹脂層(1)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量及び分子量分布が上記範囲内であることが好ましい。数平均分子量及び分子量分布は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量が既知のポリスチレンを標準として求められる。
【0035】
樹脂層(1)は、良好な製膜性が得られやすい観点から、未架橋のポリビニルアセタール樹脂を含むことが好ましいが、架橋されたポリビニルアセタール樹脂を含むことも可能である。ポリビニルアセタールを架橋するための方法は、例えば、EP 1527107B1及びWO 2004/063231 A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱自己架橋)、EP 1606325 A1(ポリアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)、及びWO 2003/020776 A1(グリオキシル酸により架橋されたポリビニルアセタール)に記載されている。また、アセタール化反応の条件を適宜調整して、生成する分子間アセタール結合量や残存水酸基のブロック化度を制御することも有用な方法である。
【0036】
樹脂層(1)に用いられるアイオノマー樹脂としては、例えばエチレン由来の構成単位、およびα,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位を有し、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の少なくとも一部がナトリウムイオンなどの金属イオンによって中和された樹脂が挙げられる。金属イオンによって中和される前のエチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体において、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有量は、該エチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体の質量に基づいて2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、上記α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上記アイオノマー樹脂が有するα,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸に由来する構成単位などが挙げられ、中でもアクリル酸またはメタクリル酸に由来する構成単位が特に好ましい。上記アイオノマー樹脂としては、入手容易性の観点から、エチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマーおよびエチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマーがより好ましく、エチレン-アクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマーが特に好ましい。
【0037】
樹脂層(1)に含み得る(メタ)アクリレート系樹脂は、熱硬化または光硬化によって硬化反応を生じる(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物の硬化物であってもよい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えばウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリマーポリオール系(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシ化(メタ)アクリレートなどのビニル基含有オリゴマー又はポリマー等が挙げられる。これらの化合物は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との総称である。
【0038】
前記硬化性組成物は、熱重合開始剤を含有し得る。熱重合開始剤は熱によりラジカルを発生する硬化剤であり、例えばジt-ブチルパーオキシカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシジネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジt-アミルパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-’アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの熱重合開始剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
熱重合開始剤の含有量は、硬化性組成物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.03~5質量部である。
【0040】
前記硬化性組成物は、光重合開始剤を含有し得る。光重合開始剤は特定波長の光を照射することによりラジカルを発生する硬化剤であり、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
また、光重合開始剤を含む場合、光重合促進剤も含むことができる。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
(メタ)アクリレート系樹脂は、溶媒に溶解または分散されたものも使用することができる。溶媒としては、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、塩素含有溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、(メタ)アクリレート系樹脂はあらかじめフィルム状となったものも好適に使用でき、積層して使用することもできる。
【0041】
シリコーン系樹脂としては、例えばポリオルガノシロキサン等のシリコーンゴム等が挙げられる。
【0042】
樹脂層(1)は可塑剤を含有していてもよい。樹脂層(1)が可塑剤を含む場合、可塑剤として好ましくは、下記群の1つ又は複数の化合物が使用される。
・多価の脂肪族又は芳香族酸のエステル。該エステルとしては、例えばジアルキルアジペート(例えば、ジヘキシルアジペート、ジ-2-エチルブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートとの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート);アジピン酸と脂環式エステルアルコール若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル(例えば、ジ(ブトキシエチル)アジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート);ジアルキルセバケート(例えば、ジブチルセバケート);セバシン酸と脂環式若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル;フタル酸のエステル(例えば、ブチルベンジルフタレート、ビス-2-ブトキシエチルフタレート);及び脂環式多価カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル(例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)が挙げられる。
・多価の脂肪族若しくは芳香族アルコール又は1つ以上の脂肪族若しくは芳香族置換基を有するオリゴエーテルグリコールのエステル又はエーテル。該エステル又はエーテルとしては、例えば、グリセリン、ジグリコール、トリグリコール、テトラグリコール等と、線状若しくは分岐状の脂肪族若しくは脂環式カルボン酸とのエステルが挙げられる。さらに具体的には、ジエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールベンゾエートが挙げられる。
・脂肪族又は芳香族のエステルアルコールのリン酸エステル。該リン酸エステルとしては、例えば、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、トリエチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート、トリクレジルホスフェートが挙げられる。
・クエン酸、コハク酸及び/又はフマル酸のエステル。
【0043】
また、多価アルコールと多価カルボン酸とからなるポリエステル若しくはオリゴエステル、これらの末端エステル化物若しくはエーテル化物、ラクトン若しくはヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル若しくはオリゴエステル、又はこれらの末端エステル化物若しくはエーテル化物等を可塑剤として用いてもよい。
【0044】
樹脂層(1)中の可塑剤の含有量は、樹脂層(1)の質量に基づいて好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは0~40質量%、さらに好ましくは0~30質量%、特に好ましくは0~20質量%、極めて好ましくは0~10質量%である。また、樹脂層(1)がポリビニルアセタール樹脂を含有する場合、可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して20質量部未満であり、好ましくは0~19質量部、より好ましくは0~15質量部、さらに好ましくは0~10質量部、特に好ましくは0~5質量部である。可塑剤の含有量が上記範囲であると、製膜性及び取扱い性に優れた積層体を製造しやすく、導電層形成時又は合わせガラス作製時における導電層の断線、剥離及び変形等を抑制でき、その結果、良好な発熱性が得られやすい。また、樹脂層(1)は製膜時や導電性細線形成時における樹脂層の熱変形や、それに伴う導電層の断線、剥離及び変形等を抑制する観点からは、可塑剤を含有しないことが好ましい。
【0045】
樹脂層(1)は、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、増白剤若しくは蛍光増白剤、安定剤、色素、加工助剤、有機若しくは無機ナノ粒子、焼成ケイ酸、腐食防止剤、表面活性剤及び水等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
一実施態様では、発熱性導電層の腐食を抑制するために、樹脂層(1)が腐食防止剤を含有することが好ましい。樹脂層(1)における腐食防止剤の含有量は、樹脂層(1)の質量に基づいて、好ましくは0.005~5質量%である。腐食防止剤の例としては、置換された、又は置換されていないベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0047】
樹脂層(1)の厚みは、樹脂層(1)を、後述する発熱性導電層含有フィルムの構成体として合わせガラス中に含ませるかどうか、すなわち、基材フィルムと樹脂層(1)との界面で剥離するか、樹脂層(1)と発熱性導電層との界面で剥離するか、によって選択される。樹脂層(1)を基材フィルムとの界面で剥離し、合わせガラスに用いる場合、樹脂層(1)の厚みは好ましくは200μm未満であり、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、樹脂層(1)の厚みは好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。上記範囲であると、樹脂層(1)の安定した製造ができるとともに、得られる積層体の熱収縮を有効に防止でき、発熱性導電層の断線、剥離及び変形等を有効に防止又は抑制することができる。特に、樹脂層(1)の厚みを薄くした場合には、発熱性導電層からの熱をガラス表面まで早く伝熱することができるため、特定のガラス表面を素早く加熱したい場合にはより好ましい。一方、樹脂層(1)を基材フィルムに残した使用法、すなわち、樹脂層(1)と発熱性導電層との界面で剥離して使用する場合、樹脂層(1)の厚みは好ましくは50μm未満であり、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、樹脂層(1)の厚みは好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。上記範囲であると、樹脂層(1)を安定的に基材フィルム上に製膜でき、かつ、得られる積層体の熱収縮による発熱性導電層の断線、剥離及び変形等を有効に防止又は抑制することができる。
【0048】
樹脂層(1)の発熱性導電層を積層する側の表面粗さRzは、該発熱性導電層を積層する前において、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。また、Rzは好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。表面粗さRzが上記範囲であると、発熱性導電層を形成する際のエッチング時の金属箔の樹脂層(1)からの剥離を防止することができ、得られる発熱性導電層の断線、剥離及び変形等を有効に防止又は抑制することができるとともに、金属箔との積層時において、界面の空気泡の生成を抑えることができる。
【0049】
剥離性面を有する樹脂層(1)の製造方法としては、例えば前記樹脂、場合により所定量の可塑剤、及び必要に応じて添加剤を配合し、これを均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等、公知の製膜方法によりシート(層)を作製し、これを樹脂層(1)とすることができる。
【0050】
公知の製膜方法の中でも特に押出機を用いてシート(層)を製造する方法が好適に採用される。押出時の樹脂温度は150~250℃が好ましく、170~230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとポリビニルアセタール樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。一方で温度が低すぎる場合にも、揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から、減圧により揮発性物質を除去することが好ましい。押出機を用いて樹脂層(1)を製造する場合、金属箔上に樹脂層(1)を溶融押出してもよい。
【0051】
<発熱性導電層>
本発明の積層体は、樹脂層(1)の基材フィルムとは反対側に、発熱性導電層(単に導電層と称する場合がある)を有する。発熱性導電層は発熱を目的とした、すなわち発熱用の導電性構造体である。
【0052】
発熱性導電層は金属箔由来の導電層であり、好ましくは金属箔からフォトリソグラフィの手法を用いて形成される。
【0053】
発熱性導電層は、エッチングの容易性及び金属箔の入手容易性の観点から、好ましくは銅又は銀からなり、より好ましくは銅からなる。すなわち、前記金属箔は、好ましくは銅箔又は銀箔、より好ましくは銅箔である。
【0054】
発熱性導電層は、複数のバスバーから形成されていてよいが、少なくとも2つの主バスバー及び該2つの主バスバーに接続する複数の主導電細線を含む。図4は導電層の導電構造の一例を示す概略図である。図4では、2つのバスバー1が複数の直線状の主導電細線2により接続されている。バスバー1としては、当技術分野において通常使用されているバスバーが使用され、その例としては、金属箔テープ、導電性粘着剤付き金属箔テープ及び導電性ペースト等が挙げられる。また、本発明における導電層を形成する際同時に、金属箔の一部をバスバーとして残すことによりバスバーを形成してもよい。バスバーにはそれぞれ給電線が接続され、各給電線が電源に接続されることから、電流が導電層に供給される。
【0055】
主導電細線は、全体的又は部分的に直線状であってもよいが(例えば図4)、導電層の断線、剥離及び変形等が生じにくいことから、全体的又は部分的に、波形状及び/又はジグザグ状であることが好ましく、特に全体的に波形状及び/又はジグザグ状であることがより好ましい(例えば図1)。なお、複数の主導電細線はそれぞれ形状が同一又は異なっていてもよい。
【0056】
隣接する主導電細線の距離はそれぞれ同一又は異なっていてもよく、主導電細線の線幅にも依存するが、好ましくは5μm~5mm、より好ましくは100μm~3mmである。この範囲であると、積層体に基づく合わせガラスのヘイズが低くなり、視認性の観点から有利である。ヘイズは実施例に記載の方法により測定できる。隣接する主導電細線同士の距離が同一である場合、光の干渉によって光芒が生じて問題となる場合がある一方、隣接する主導電細線同士の距離が異なる場合、発熱に分布が生じるおそれがあるため、隣接する主導電細線同士の距離は導電細線の線幅や形状に応じ、適度に調節される。
【0057】
主導電細線の線幅は好ましくは1~100μm、より好ましくは1~30μm、さらに好ましくは2~15μm、特に好ましくは3~12μmである。線幅が上記範囲内であると、十分な発熱量が確保されやすく、かつ所望の前方視認性が得られやすい。複数の主導電細線の線幅はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、主導電細線又は後述する副導電細線において、各線幅は全的的に同じであっても、部分的に異なっていてもよい。
【0058】
主導電細線の最も小さい線幅は好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。最も小さい線幅が上記範囲であると、ヘイズが低減され、視認性が向上される。また、主導電細線の最も小さい線幅は1μm以上であることが好ましい。
【0059】
好ましい態様において、線幅が20μm以下である部分を有する主導電細線の本数が、すべての主導電細線の本数の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、ヘイズが低減され、視認性が向上される。なお、ヘイズは、実施例に記載の方法、すなわち、JIS R 3106に準じて測定される。また、合わせガラスの用途に応じて、視認性が求められる位置において線幅が細くなっていることが前方視認性を得る観点から望ましいが、一般に、ガラスの中央部において線幅が20μm以下となっていることが望ましい。線幅20μm以下である部分を20cm以上、好ましくは50cm以上有することが特に好ましい。一実施態様では、線幅が20μm以下である部分を有する主導電細線において、バスバーに近接する領域は断線を回避するために線幅を20μm超に形成し、目に付きやすい領域は、線幅を20μm以下に形成することもできる。
【0060】
主導電細線の最も太い線幅は好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。この範囲であると、ヘイズが低減され、視認性が向上される。ただし、主導電細線や後述する副導電細線等の形状やパターンなどによって、特に断線を抑制することや発熱性を高めることが求められる場合には、視認性や意匠性を損なわない限りにおいて、好適に調整されうる。また、主導電細線の最も太い線幅は5μm以上が好ましい。
【0061】
導電層は視認性の観点からは主導電細線のみを有していてもよく、導電構造の断線を抑制する観点からは、主導電細線を結ぶ副導電細線をさらに有していてもよい。導電層が副導電細線を有する場合、通常複数の副導電細線が存在し、該副導電細線の形状としては、例えば全体的又は部分的に直線状、波形状、又はジグザグ状であることが好ましい。
【0062】
発熱性導電層において、前方視認性及び必要な発熱量が得られやすい観点から、主導電細線と副導電細線とで構成される細線は好ましくは格子状又は網状である。なお、格子状にはメッシュ状を含むが、格子幅やメッシュ形状によりヘイズが高くなり、良好な視認性が得られない場合にはメッシュ状を除くことができる。
【0063】
また、隣接する主導電細線を結ぶ副導電細線同士の距離は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、3mm~1500mmである。副導電細線の線幅は好ましくは1μm~50μm、より好ましくは5μm~20μmである。線幅が上記範囲内であると、十分な発熱量が確保されやすく、かつヘイズが低減されるため所望の前方視認性が得られやすい。複数の副導電細線の線幅はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、1本の副導電細線において、線幅は全体的に同じであっても、部分的に異なっていてもよい。
【0064】
図2及び図3は導電層の導電構造の一例を示す概略図である。図2に示される導電層は2つのバスバー1と、該バスバー1に接続する複数の波形状の主導電細線2と、該複数の主導電細線2に連結する2つの直線状の副導電細線3とを有し、2つの副導電細線3はそれぞれバスバー1に近接する位置、好ましくはバスバー1から50μm~1mmの位置に配置されている。バスバーに近接する位置に副導電細線を設けることで、バスバー付近で生じやすい断線が抑制されるとともに、仮に一部で断線が起きたとしても、主導電細線の通電が確保されやすい。また、図3に示される導電層は2つのバスバー1と、該バスバー1に接続する複数の波形状の主導電細線2と、複数の主導電細線2を結ぶ複数の直線状の副導電細線3とを有し、該副導電細線3は互いに等間隔あけて配置され、主導電細線2とともに網状を形成している。図3に示される導電構造において、隣接する主導電細線同士の距離は好ましくは1mm~4mm、隣接する主導電細線を結ぶ副導電細線同士の距離は、5mm~40mmである。主導電細線2と副導電細線3とで構成される細線が網状であると、断線が起きにくく必要な発熱量が得られやすい点で有利である。
【0065】
図6に、本発明の積層体における発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積の一例を示す。図6における発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積において、副導電細線の投影断面積30の合計は、主導電細線の投影断面積20の合計の好ましくは1倍未満である。これは副導電細線の投影断面積の占める割合が主導電細線の投影断面積の占める割合よりも低いことを示す。より好ましくは副導電細線の投影断面積30の合計は、主導電細線の投影断面積20の合計の0.7倍未満、さらに好ましくは0.5倍未満である。上記の上限値以下であると、ヘイズが低減され、視認性を向上することができる。また、副導電細線の投影断面積30の合計は主導電細線の投影断面積20の合計の好ましくは0.1倍以上、より好ましくは0.3倍以上である。上記の下限値以上であると、断線が有効に抑制され、発熱性が向上される。
【0066】
図7に、本発明の積層体における発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積の一例を示す。図7における発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積において、2つの主バスバーに挟まれる領域を各主導電細線の長さを10等分する位置で分けた際の10個の領域において、2つの主バスバーに接する各領域5における副導電細線の投影断面積の合計が、他の8つの各領域4における副導電細線の投影断面積の合計よりも大きいことが好ましい。これは副導電細線の本数がバスバー付近に多いことを示し、このように副導電細線が配置されることにより、断線が生じやすいバスバー付近の断線を有効に抑制することができる。より好ましくは2つの主バスバーに接する各領域5における副導電細線の投影断面積の合計は、他の8つの各領域4における副導電細線の投影断面積の合計の1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。なお、主導電細線の投影断面積や副導電細線の投影断面積の関係を説明するために、図6及び図7に本発明の積層体における発熱性導電層の積層体表面からの投影断面積の一例を示した。
【0067】
発熱性導電層の厚みは、光の反射低減及び必要な発熱量が得られやすい観点から、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~20μm、さらに好ましくは3~15μm、特に好ましくは3~12μmである。発熱性導電層の厚みは、厚み計又はレーザー顕微鏡等を用いて測定される。
【0068】
発熱性導電層の片面又は両面、さらに、側面は、好ましくは低反射率処理されている。本発明において「低反射率処理されている」とは、JIS R 3106に準じて測定された可視光反射率が30%以下となるよう処理されていることを意味する。より良好な前方視認性の観点からは、可視光反射率が10%以下となるよう処理されていることがより好ましい。可視光反射率が前記上限値以下であると、樹脂層(1)と後述の樹脂層(2)とを積層して乗物用ガラスを作製した際に、所望の可視光反射率が得られやすい。
【0069】
低反射率処理の方法としては、例えば、黒化処理(暗色化処理)、褐色化処理及びめっき処理等が挙げられる。工程通過性の観点から、低反射率処理は黒化処理であることが好ましい。従って、良好な前方視認性の観点から、可視光反射率が10%以下となるよう、導電層の片面又は両面が黒化処理されていることが特に好ましい。黒化処理は、具体的には、アルカリ系黒化液等を用いて行われる。
【0070】
<樹脂層(2)>
本発明の積層体は、さらに樹脂層(2)を有していてもよい。この場合、本発明の積層体は、前記基材フィルム、前記剥離性面を有する樹脂層(1)、前記発熱性導電層及び該樹脂層(2)をこの順に有することが好ましい。該積層体は、例えば基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔/基材フィルムをこの順に積層させ、金属箔側の基材フィルムを剥離後、フォトリソグラフィ等の手法を用いて金属箔から発熱性導電層を形成させ、該発熱性導電層に樹脂層(2)を積層することにより製造することができる。
【0071】
樹脂層(2)を構成する樹脂としては、例えばポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。中でも、ガラスに対する安定した接着性に基づく合わせガラスの安全性確保の観点から、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0072】
樹脂層(2)を構成するポリビニルアセタール樹脂としては、[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載のポリビニルアルコール樹脂と同様のものを使用ができる。アセタール化度、アセチル基量、水酸基量の範囲も同様である。樹脂層(2)を構成するポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が所定範囲であると、合わせガラスにしたときの耐貫通性又はガラスとの接着性に優れた樹脂層が得られやすい。また、アセチル基量が所定範囲であると、可塑剤との相溶性に優れた樹脂層(2)が得られやすい。さらに、水酸基量が所定範囲であると、耐貫通性、接着性、又は遮音性に優れた合わせガラスが得られやすい。
【0073】
樹脂層(2)は良好な製膜性及びラミネート適性が得られやすい観点、並びに樹脂層(2)を含む乗物用ガラスにおいて衝突時の頭部衝撃が軽減されやすい観点から、未架橋のポリビニルアセタール樹脂を含むことが好ましい。樹脂層(2)が架橋されたポリビニルアセタール樹脂を含むことも可能である。ポリビニルアセタール樹脂を架橋するための方法は、[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載の方法と同様である。
【0074】
樹脂層(2)を構成するアイオノマー樹脂としては、例えば[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載のアイオノマー樹脂と同様のものを使用できる。
【0075】
樹脂層(2)を構成するエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂において、エチレン単位と酢酸ビニル単位の合計に対する酢酸ビニル単位の割合は、50モル%未満であることが好ましく、30モル%未満であることがより好ましく、20モル%未満であることがさらに好ましく、15モル%未満であることが特に好ましい。エチレン単位と酢酸ビニル単位の合計に対する酢酸ビニル単位の割合が50モル%未満であると、合わせガラス用中間膜としての樹脂層(2)に必要な力学強度と柔軟性が好適に発現される傾向にある。
【0076】
樹脂層(2)は可塑剤を含有していてもよい。かかる可塑剤としては、[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載の可塑剤を使用できる。また樹脂層(2)は、必要に応じて、[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載の添加剤を含有していてもよい。
【0077】
一実施態様において、樹脂層(2)中の可塑剤の含有量は、樹脂層(2)の質量に基づいて15質量%以上であり、好ましくは16~36質量%、より好ましくは22~32質量%、さらに好ましくは26~30質量%である。また、樹脂層(2)がポリビニルアセタール樹脂を含有する場合、可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して20質量部以上が好ましく、20~50質量部がより好ましく、25~45質量部がさらに好ましく、30~40質量部が特に好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲であると、耐衝撃性に優れた積層体が得られ、力学的作用が生じても断線、剥離及び変形等が生じにくい。また、耐衝撃性に優れた合わせガラスが得られやすい。さらに、樹脂層(2)に遮音機能を付与する観点からは、ポリビニルアセタール樹脂に対する可塑剤の含有量は、樹脂層(2)の積層前の初期状態では、樹脂層(2)の質量に基づいて、好ましくは30質量%以上、より好ましくは30~50質量%、さらに好ましくは31~40質量%、特に好ましくは32~35質量%である。
また、本実施態様において、樹脂層(2)の厚みは好ましくは200μm以上であり、より好ましくは500μm以上、さらに好ましくは700μm以上である。また、樹脂層(2)の厚みは好ましくは1mm以下である。樹脂層(2)の厚みが上記範囲であると、合わせガラスにおいて、耐貫通性と高い発熱性とを両立しやすくなる。
【0078】
一実施態様において、樹脂層(2)中の可塑剤の含有量は、樹脂層(2)の質量に基づいて好ましくは50質量%未満、より好ましくは0~40質量%、さらに好ましくは0~30質量%、特に好ましくは0~20質量%、最も好ましくは0~10質量%である。また、樹脂層(2)がポリビニルアセタール樹脂を含有する場合、可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して20質量部未満であることが好ましく、0~19質量部であることがより好ましく、0~15質量部であることがさらに好ましく、0~10質量部であることが特に好ましく、0~5質量部であることが最も好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲であると、製膜性及び取扱い性に優れた積層体を製造しやすく、導電層形成時又は合わせガラス作製時に導電層の断線、剥離及び変形等を抑制でき、その結果、良好な発熱性が得られやすい。また、樹脂層(2)は製膜時や導電性細線形成時における樹脂層の熱変形や、それに伴う導電層の断線、剥離及び変形等を抑制する観点からは、可塑剤を含有しないことが好ましい。
【0079】
また、本実施態様において、樹脂層(2)の厚みは好ましくは200μm未満であり、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。また、樹脂層(2)の厚みは好ましくは10μm以上である。樹脂層(2)の厚みが上記範囲であると、加熱効率が向上し、合わせガラスの発熱性を向上できる。
【0080】
樹脂層(2)は、[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載の樹脂層(1)の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0081】
本発明の積層体において、樹脂層(1)及び樹脂層(2)の両方がポリビニルアセタール樹脂を含有する場合、樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、樹脂層(2)を構成するポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂及び/又は樹脂層(2)を構成するポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、樹脂層(1)を構成する少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、樹脂層(2)を構成する少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差が前記上限値以下であることが好ましい。前記差が前記上限値以下であると、本発明の積層体において可塑剤が移行した後の平衡状態において樹脂層(1)と樹脂層(2)との屈折率差が小さくなることから、面積が異なる樹脂層(1)と樹脂層(2)とを積層した場合にその境界が視認しにくいため好ましい。
一方、樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂の水酸基量を、樹脂層(2)を構成するポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも低くすることで、積層体において可塑剤が移行した後の平衡状態における樹脂層(1)中の平均可塑剤量を30質量%以上とすることも好ましい態様の1つである。その場合、樹脂層(1)を構成するポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、樹脂層(2)を構成するポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも5質量%以上低いことが好ましく、8質量%以上低いことがより好ましい。前記水酸基量の差が前記下限値以上であると、平衡状態での樹脂層(1)の可塑剤量を十分に高くでき、遮音機能が付与された合わせガラスが得られやすくなる。
【0082】
樹脂層(1)及び樹脂層(2)中に可塑剤が含まれる場合、両方の樹脂層との間で可塑剤が移行することに伴う問題(例えば、経時的な物性変化等の問題)を抑制する観点から、樹脂層(2)に含まれるものと同じ可塑剤、又は樹脂層(2)の物性(例えば、耐熱性、耐光性、透明性及び可塑化効率)を損なわない可塑剤を使用することが好ましい。このような観点から、可塑剤として、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(3GO又は3G8)、トリエチレングリコール-ビス(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール-ビスヘプタノエートが含まれることが好ましく、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(3GO又は3G8)が含まれることが特に好ましい。
【0083】
本発明では、基材フィルム/樹脂層(1)を形成する樹脂/金属箔をこの順に有する積層体に対して、フォトリソグラフィ等の手法が適用され、導電層が形成される。すなわち、基材フィルムが存在することにより、樹脂層(1)の熱収縮やエッチング処理による反りや変形等に起因する導電層の導電構造の断線、剥離及び変形等が抑制される。したがって、特に積層体の輸送時などに力学的作用が生じても、導電層の断線、剥離及び変形等が生じにくく、優れた発熱性を有する。さらに合わせガラス形成後、ヘイズが低いために優れた視認性を有する。
【0084】
本発明の積層体は、本発明の効果を阻害しない範囲で基材フィルム、樹脂層(1)、発熱性導電層及び樹脂層(2)以外の別の層を含むことができる。
【0085】
別の層としては好ましくは機能層等が挙げられる。機能層としては、例えば赤外線反射層、紫外線反射層、色補正層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、蛍光・発光層、遮音層、エレクトロクロミック層、サーモクロミック層、フォトクロミック層、意匠性層、又は高弾性率層等が挙げられる。本発明の積層体における層構成の例を下記に示す。機能層の位置は<2>~<4>及び<6>~<9>に挙げるそれぞれの位置であってもよく、2箇所以上にあってもよい。
【0086】
<1>基材フィルム/樹脂層(1)/発熱性導電層の3層構成
<2>基材フィルム/機能層/樹脂層(1)/発熱性導電層の4層構成
<3>基材フィルム/樹脂層(1)/機能層/発熱性導電層の4層構成
<4>基材フィルム/樹脂層(1)/発熱性導電層/機能層の4層構成
<5>基材フィルム/樹脂層(1)/発熱性導電層/樹脂層(2)の4層構成
<6>基材フィルム/機能層/樹脂層(1)/発熱性導電層/樹脂層(2)の5層構成
<7>基材フィルム/樹脂層(1)/機能層/発熱性導電層/樹脂層(2)の5層構成
<8>基材フィルム/樹脂層(1)/発熱性導電層/機能層/樹脂層(2)の5層構成
<9>基材フィルム/樹脂層(1)/発熱性導電層/樹脂層(2)/機能層の5層構成
【0087】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体は、基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔をこの順に積層させる工程、及び金属箔から発熱性導電層を形成する工程を含む方法により製造することができる。または、基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔/基材フィルムをこの順に積層させる工程、金属箔側の基材フィルムを剥離する工程、及び金属箔から発熱性導電層を形成する工程を含む方法により製造できる。また、本発明の積層体が樹脂層(2)を有する場合、本発明の積層体は、発熱性導電層と樹脂層(2)とを積層させる工程をさらに含む方法により製造できる。
【0088】
基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔をこの順に積層させる工程としては、例えば基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔をこの順に重ねて熱圧着させる方法、基材フィルム上に樹脂層を塗布・溶媒乾燥させるプロセスを経て形成した後に金属箔を重ねて熱圧着させる方法などが挙げられる。また、基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔/基材フィルムをこの順に積層させる工程としては、例えば基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔/基材フィルムをこの順に重ねて熱圧着させる方法、基材フィルム上に樹脂層を塗布・乾燥させるプロセスを経て形成した後に金属箔と基材フィルムを重ねて熱圧着させる方法などが挙げられる。
【0089】
熱圧着温度は、樹脂層(1)を構成する樹脂の種類にも依存するが、通常は70~170℃、好ましくは90~160℃、より好ましくは100~155℃、さらに好ましくは110~150℃である。熱圧着温度が上記範囲内であると、良好な強度が得られやすい。
【0090】
得られた金属箔から発熱性導電層を形成する工程は、公知のフォトリソグラフィの手法を用いて実施される。例えば後の実施例に記載のとおり、PETフィルム/樹脂層(1)/金属箔をこの順に有する積層体の金属箔上にドライフィルムレジストをラミネートした後、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成し、次いで、エッチング抵抗パターンが付与された樹脂層(1)を金属エッチング液に浸漬して導電層を形成した後、残存するフォトレジスト層を公知の方法で除去することによって実施される。
【0091】
発熱性導電層と樹脂層(2)とを積層させる工程としては、例えば基材フィルム/樹脂層(1)/金属箔をこの順に重ねて熱圧着させる方法と同様の方法が挙げられる。
【0092】
このような製造方法は、所望の形状の導電層を簡便かつ容易に形成できるため、本発明の積層体の生産効率を向上できる。
【0093】
本発明の積層体は好ましくは発熱用積層体であり、より好ましくは合わせガラス用加熱フィルムである。
【0094】
[発熱性導電層含有フィルム]
本発明の発熱性導電層含有フィルムは、本発明の積層体から基材フィルムを剥離するか、または基材フィルムと樹脂層(1)とを剥離することにより得ることができる。基材フィルムを剥離して得られた発熱性導電層含有フィルムは、好ましくは樹脂層(1)/発熱性導電層をこの順に有し、より好ましくは樹脂層(1)/発熱性導電層/樹脂層(2)をこの順に有する。また、基材フィルムと樹脂層(1)とを剥離して得られた発熱性導電層含有フィルムは、好ましくは発熱性導電層を有し、より好ましくは発熱性導電層/樹脂層(2)をこの順に有する。本発明の発熱性導電層含有フィルムは、導電層の断線、剥離及び変形等がなく、該発熱性導電層含有フィルムを有する合わせガラスは優れた発熱性及び視認性を有する。
【0095】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、少なくとも2枚のガラスの間に、樹脂層(1)/発熱性導電層をこの順に有する発熱性導電層含有フィルム、好ましくは樹脂層(1)/発熱性導電層/樹脂層(2)をこの順に有する発熱性導電層含有フィルムを有する。また、別の態様では、本発明の合わせガラスは、少なくとも2枚のガラスの間に、発熱性導電層を有する発熱性導電層含有フィルム、好ましくは発熱性導電層/樹脂層(2)をこの順に有する発熱性導電層含有フィルム、並びにポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する樹脂層(4)を有し、樹脂層(4)は発熱性導電層に接する面に配置されている。
【0096】
ガラスとしては、透明性、耐候性及び力学強度の観点から、好ましくは無機ガラス;又はメタクリル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、若しくはポリシクロオレフィン系樹脂シート等の有機ガラス;などが挙げられ、より好ましくは無機ガラス、メタクリル樹脂シート又はポリカーボネート樹脂シートであり、特に好ましくは無機ガラスである。無機ガラスとしては、例えばフロートガラス、強化ガラス、半強化ガラス、化学強化ガラス、グリーンガラス又は石英ガラス等が挙げられる。
【0097】
本発明の合わせガラスにおいて、導電層はガラス、樹脂層(1)、樹脂層(2)、又は別の層と接していてもよい。ただし、導電層がガラスと直接接していると、導電層の封止が不十分となって水分が侵入して導電層の腐食を招いたり、合わせガラス製造時に空気が残存して気泡残存又は剥がれの原因を招いたりする場合があるため、合わせガラスにおける導電層がガラスと直接接しないことが好ましい。
【0098】
本発明の合わせガラスを特に乗物用ガラス、とりわけ乗物用フロントガラスにおいて使用する場合は、前方視認性の観点から、導電層の低反射率処理されている面が乗車人物側にくるよう、合わせガラスを配置することが好ましい。
【0099】
また、合わせガラス端部から水分が侵入して導電層の腐食を招く場合があるため、導電層は、合わせガラスの端部より1cm以上内側に配置されていることが好ましい。
【0100】
さらに本発明の合わせガラスは、導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離が好ましくは200μm未満、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離は好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離が上記範囲であると、ガラス表面の加熱効率が向上し、高い発熱性を得ることができる。
【0101】
樹脂層(4)に含まれるポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂としては、[剥離性面を有する樹脂層(1)]の項に記載のポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂と同様のものが挙げられる。
【0102】
樹脂層(4)の厚みは好ましくは200~1000μm、より好ましくは500~1000μm、さらに好ましくは700~1000μmである。樹脂層(4)の厚みが上記範囲であると、合わせガラスにおいて、耐貫通性と高い発熱性とを両立しやすくなる。
【0103】
本発明の合わせガラスにおいて、ポリビニルアセタール樹脂を含有する層の厚みの合計は好ましくは1mm未満であり、より好ましくは900μm以下であり、さらに好ましくは850μm以下である。また、ポリビニルアセタール樹脂を含有する層の厚みの合計は好ましくは110μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは500μm以上である。ポリビニルアセタール樹脂を含有する層の厚みが上記範囲であると、合わせガラスにおいて、高い発熱性と耐貫通性が得られる。
【0104】
本発明の合わせガラスにおける層構成の例を下記に示す。機能層の位置は<1>、<2>及び<5>~<16>に挙げるそれぞれの位置であってもよく、2箇所以上にあってもよい。
<1>ガラスA/樹脂層(1)/導電層/機能層/ガラスBの5層構成、
<2>ガラスA/樹脂層(4)/導電層/機能層/ガラスBの5層構成、
<3>ガラスA/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)/ガラスBの5層構成、
<4>ガラスA/樹脂層(4)/導電層/樹脂層(2)/ガラスBの5層構成、
<5>ガラスA/機能層/樹脂層(1)/導電層/機能層/ガラスBの6層構成、
<6>ガラスA/機能層/樹脂層(4)/導電層/機能層/ガラスBの6層構成、
<7>ガラスA/樹脂層(1)/機能層/導電層/機能層/ガラスBの6層構成、
<8>ガラスA/樹脂層(4)/機能層/導電層/機能層/ガラスBの6層構成、

<9>ガラスA/機能層/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)/ガラスBの6層構成、
<10>ガラスA/機能層/樹脂層(4)/導電層/樹脂層(2)/ガラスBの6層構成、
<11>ガラスA/樹脂層(1)/機能層/導電層/樹脂層(2)/ガラスBの6層構成、
<12>ガラスA/樹脂層(4)/機能層/導電層/樹脂層(2)/ガラスBの6層構成、
<13>ガラスA/樹脂層(1)/導電層/機能層/樹脂層(2)/ガラスBの6層構成、
<14>ガラスA/樹脂層(4)/導電層/機能層/樹脂層(2)/ガラスBの6層構成、
<15>ガラスA/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)/機能層/ガラスBの6層構成、
<16>ガラスA/樹脂層(4)/導電層/樹脂層(2)/機能層/ガラスBの6層構成。
【0105】
本発明の合わせガラスは、前記積層体から形成されているため、導電層の断線及び剥離等、好ましくは導電層の断線、剥離及び変形がなく、優れた発熱性を有する。さらにヘイズが低く、優れた前方視認性を有する。
【0106】
本発明の合わせガラスの低反射率処理面(例えば黒化処理面)側から光を照射した場合のヘイズは、通常2.0以下であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.5以下である。本発明の合わせガラスの金属光沢面側から光を照射した場合のヘイズは、通常3.0以下であり、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.5以下である。ヘイズは、導電層の線幅や形状を[発熱性導電層]の項に記載のように適宜調整して、前記上限値以下に調整できる。
【0107】
本発明の合わせガラスは、建物又は乗物における合わせガラスとして使用できる。乗物用ガラスとは、汽車、電車、自動車、船舶又は航空機といった乗物のための、フロントガラス、リアガラス、ルーフガラス又はサイドガラス等を意味する。
【0108】
本発明の合わせガラスの低反射率処理面(例えば黒化処理面)側からは、乗車人物又は観察者の位置から導電性構造体の配線が視認されないことが好ましい。配線が視認されないことにより、特に乗物用フロントガラス等の良好な前方視認性が要求される用途に、本発明の合わせガラスは好適に使用される。導電層の視認性は、官能的に評価される。
【0109】
本発明の合わせガラスにおいて、通常、樹脂層(1)及び/又は樹脂層(2)に含まれる可塑剤は、可塑剤が含まれない他方の樹脂層又は可塑剤が相対的に少ない他方の樹脂層に時間経過に伴って移行し、樹脂層(1)に含まれる可塑剤量と樹脂層(2)に含まれる可塑剤量とは同程度となる。本発明において、この平均可塑剤量は、好ましくは18~35質量%、より好ましくは20~30質量%、特に好ましくは25~29質量%である。平均可塑剤量が前記範囲内であると、例えば衝突時の乗車人物の頭部への衝撃が緩和される等、合わせガラスの所望の特性が得られやすい。平均可塑剤量は、可塑剤移行後に下記式に従い算出できる。
【数1】
A(質量%):樹脂層(1)の可塑剤量
a(mm):樹脂層(1)の厚み
B(質量%):樹脂層(2)の可塑剤量
b(mm):樹脂層(2)の厚み
【0110】
樹脂層(1)に含まれる可塑剤量、樹脂層(1)の厚み、樹脂層(2)に含まれる可塑剤量、及び樹脂層(2)の厚みを調整することにより、平均可塑剤量は前記範囲内に調整できる。
【0111】
本発明の合わせガラスの可視光反射率と、導電層を含まないこと以外は本発明の合わせガラスに相当する合わせガラスの可視光反射率との差は小さいことが好ましい。前記差が小さいと、本発明の合わせガラスは前方視認性に優れ、特に乗物用フロントガラス等の良好な前方視認性が要求される用途に、本発明の合わせガラスは好適に使用される。合わせガラスの可視光反射率は、JIS R 3106に準じて測定される。導電層の低反射率処理面が乗車人物側又は観察者側に配置されるよう合わせガラスを構成すること、又は導電層の線幅を細くすること等により、前記差を小さくできる。
【0112】
本発明の合わせガラスは当業者に公知の方法で製造できる。例えば、ガラスの上に前記発熱性導電層含有フィルムを配置し、さらにもう一つのガラスを重ねたものを、予備圧着工程として温度を高めて発熱性導電層含有フィルムをガラスに全面又は局所的に融着させ、次いでオートクレーブで処理することで、合わせガラスを製造できる。
【0113】
上記予備圧着工程としては、過剰の空気を除去したり隣接する層同士の軽い接着を実施したりする観点から、バキュームバッグ、バキュームリング、又は真空ラミネーター等の方法により減圧下に脱気する方法、ニップロールを用いて脱気する方法、及び高温下に圧縮成形する方法等が挙げられる。
【0114】
例えばEP 1235683 B1に記載のバキュームバッグ法又はバキュームリング法は、例えば約2×10Pa及び130~145℃で実施される。
【0115】
真空ラミネーターは、加熱可能かつ真空可能なチャンバーからなり、このチャンバーにおいて、約20分~約60分の時間内に合わせガラスが形成される。通常は1Pa~3×10Paの減圧及び100℃~200℃、特に130℃~160℃の温度が有効である。真空ラミネーターを用いる場合、温度及び圧力に応じて、オートクレーブでの処理を行わなくてもよい。
【0116】
オートクレーブでの処理は、例えば約1×10Pa~約1.5×10Paの圧力及び約100℃~約145℃の温度で20分から2時間程度実施される。
【実施例
【0117】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に各評価の測定方法を示す。
【0118】
<ヘイズの測定>
実施例及び比較例において、オートクレープ後の合わせガラスについて、導電層における正方形の中央付近の領域に対し、ヘイズメーターを用いることにより、JIS R3106に準じてヘイズを測定した。結果を表3及び表4に示す。なお、ヘイズは黒化処理面側から光を照射した場合のヘイズを示す。
【0119】
<導電層の外観の評価>
実施例及び比較例において、エッチング後の導電層の状態、及びオートクレーブ後の導電層の状態を、ルーペを用いて目視観察し、配線の変形、断線及び剥離の有無を下記基準で評価した。結果を表3及び表4に示す。
A…変形、断線、剥離は認められなかった。
B…部分的に変形は認められたが、断線や剥離は認められなかった。
C…僅かに断線又は剥離が認められた。
D…断線又は剥離(線抜け)が顕著であった。
【0120】
<合わせガラスの発熱性の評価>
実施例及び比較例において、オートクレーブ後の合わせガラスを用いて、各々のバスバーに貼り付けた2つの電極間に室温で12Vの電圧を印加して通電を行い、導電構造とガラス表面との距離が短い側のガラス表面の中央付近に設置した熱電対の温度が70℃に到達するまでの時間を測定し、下記基準で評価した。結果を表3及び表4に示す。
A…2分未満
B…2分以上4分未満
C…4分以上
【0121】
<表面粗さRz>
Rz値は、表面粗さ計を用いて、JIS B0601-1994に準拠して測定した。
【0122】
[製造例1]
ポリビニルブチラール樹脂1(以下、「樹脂1」と称する)及びポリビニルブチラール樹脂2(以下、「樹脂2」と称する)を表2に記載の質量比で溶融混練するか、又はポリビニルブチラール樹脂3(以下、「樹脂3」と称する)またはポリビニルブチラール樹脂4(以下、「樹脂4」と称する)を溶融混練した。ポリビニルアセタール樹脂層が可塑剤を含む場合(ポリビニルアセタール樹脂層PVB-I)は、可塑剤として所定量のトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(以下、「3GO」と略す)を、樹脂4とともに溶融混練した。次に、得られた溶融混練物をストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを、単軸の押出機とTダイを用いて溶融押出し、金属弾性ロールを用いて表面が平滑なポリビニルアセタール樹脂層を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂層PVB-a~PVB-Iの厚みと、表面粗さ計を用いて測定した表面粗さRzを表2に示す。また、ポリビニルアセタール樹脂層PVB-a~PVB-Iの製造において使用した樹脂1~樹脂4の物性値を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
表2中、可塑剤の含有量は樹脂100質量部に対する量を示す。
【0125】
[製造例2]
アイオノマーフィルム(デュポン社製、SentryGlas(R) Interlayer)をポリビニルブチラール樹脂の代わりに用いたこと以外はポリビニルブチラール樹脂層の製造と同様にして、アイオノマー樹脂層を得た。得られたアイオノマー樹脂層の厚みと、表面粗さRzを表2に示す。
【0126】
[実施例1]
<PETフィルム/樹脂層(1)/銅箔/PETフィルム積層体の製造>
製造例1で得られたポリビニルアセタール樹脂層PVB-a[樹脂層(1)]に、片面が黒化処理された厚み7μmの銅箔を、黒化処理面と樹脂層(1)とが接するような向きで重ねた。次に、樹脂層(1)と銅箔とを重ねた積層体の上下を厚み50μmのPETフィルムで挟み、120℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させて、PETフィルム/樹脂層(1)/銅箔/PETフィルムの順に積層された積層体を得た。
【0127】
<PETフィルム/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)の積層体の製造>
得られたPETフィルム/樹脂層(1)/銅箔/PETフィルムの積層体の銅箔側のPETフィルムを剥離した後、銅箔上にドライフィルムレジストをラミネートし、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成した。パターンとしては、副導電細線を持たない、図1に示す導電性構造パターンを採用した。次に、前記導電性構造パターンが形成された、PETフィルム/樹脂層(1)/銅箔の積層体を、銅エッチング液に浸漬して導電層を形成した後、常法により、残存するフォトレジスト層を除去した。これにより、導電層がパターン化された銅箔からなる、PETフィルム/樹脂層(1)/導電層の順に積層された積層体を得た。導電層は、縦横各6cmの正方形の内部に、線幅5μmの銅線が2.5mm間隔で波形状に並んだ構造を有し、かつ、正方形の上辺及び下辺において、バスバーに相当する幅5mm、長さ5cmの銅線を、間隔5cmで有する構造となるように形成した。得られたPETフィルム/樹脂層(1)/導電層の積層体の導電層側から、表2に示すポリビニルアセタール樹脂層PVB-I[樹脂層(2)]を重ね、PETフィルム/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)の積層体を得た。
【0128】
<樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された発熱性導電層含有フィルムの製造>
PETフィルム/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)の積層体からPETフィルムを剥離して樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された発熱性導電層含有フィルムを得た。
【0129】
<合わせガラスの作製>
樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された発熱性導電層含有フィルムを、一連の導電層を含むように縦6cm、横6cmに切り出し、縦10cm、横10cm、厚み3mmのガラスの上に配置した。次に、導電層の両端部にある各々のバスバー(5mm幅銅線)に、電極(導電性粘着剤付き銅箔テープ)を、ガラス(無機ガラス)から外へ各電極端部がはみ出すように貼り付けた後、縦10cm、横10cm、厚み3mmのガラスを重ねて配置した。
続いて、これを真空バッグに入れ、真空ポンプを用いて室温で15分間減圧にした後、減圧したまま100℃まで昇温し、そのまま60分間加熱した。降温後、常圧に戻し、プレラミネート後の合わせガラスを取り出した。
その後、これをオートクレーブに投入し、140℃、1.2MPaで30分間処理し、ガラス/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)/ガラスの順に積層された合わせガラスを作製した。
【0130】
[実施例2]
導電層として、線幅5μmの銅線が2.5mm間隔で波形状に並んだ構造に代えて、線幅5μmの銅線が2.5mm間隔でジグザグ状に並んだ構造としたこと以外は実施例1と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0131】
[実施例3]
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、表2に記載のポリビニルアセタール樹脂層PVB-bを樹脂層(1)として使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0132】
[実施例4]
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、表2に記載のポリビニルアセタール樹脂層PVB-bを樹脂層(1)として使用したこと以外は実施例2と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0133】
[実施例5]
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、表2に記載のポリビニルアセタール樹脂層PVB-cを樹脂層(1)として使用したこと以外は実施例1と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0134】
[実施例6]
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、表2に記載のポリビニルアセタール樹脂層PVB-dを樹脂層(1)として使用したことに加え、導電性構造体パターンとして、線幅5μmの直線状の副導電細線を正方形の上辺及び下辺から500μmの位置に有する、概略図が図2に示されるパターンAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。なお、図2において、隣接する主導電細線同士の距離は2.5mmであり、隣接する主導電細線を結ぶ副導電細線同士の距離は49mmであった。パターンAにおいて、副導電細線の投影断面積の合計は主導電細線の投影断面積の合計の1倍未満であった。
【0135】
[実施例7]
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、表2に記載のポリビニルアセタール樹脂層PVB-dを樹脂層(1)として使用したことに加え、主導電細線の線幅を5μmから8μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0136】
[実施例8]
導電性構造パターンとして、パターンAに代えて、線幅5μmの副導電細線を有する、概略図が図3に示されるパターンBに変更したこと以外は実施例6と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。なお、図3において、隣接する主導電細線同士の距離は2.5mmであり、隣接する主導電細線を結ぶ副導電細線同士の距離は7.5mmであった。パターンBにおいて、副導電細線の投影断面積の合計は主導電細線の投影断面積の合計の1倍未満であった。
【0137】
[実施例9]
導電性構造パターンとして、パターンAに代えて、線幅5μmの副導電細線を有する、概略図が図4に示されるパターンCに変更したこと以外は実施例6と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0138】
[実施例10]
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、製造例2で得られたアイオノマー樹脂層(表2に記載)を樹脂層(1)として用い、熱圧着ロールの間を通過させる際の温度を120℃から150℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0139】
[実施例11]
<PETフィルム/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)の積層体の製造>
ポリビニルアセタール樹脂層PVB-aに代えて、アクリレート系樹脂[BPS5296(トーヨーケム(株)製)100重量部に、硬化剤としてオリバインBHS8515(トーヨーケム(株)製)2重量部を混合撹拌したもの]を樹脂層(1)として用い、さらに、アクリレート系樹脂に重ねる銅箔の面を黒化処理面とは異なる面としたことに加え、PVB-Iに代えてPVB-aを樹脂層(2)として使用したこと以外は実施例1と同様にして、PETフィルム/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された積層体を得た。
【0140】
<導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された発熱性導電層含有フィルムの製造>
PETフィルム/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)の積層体の上下面を厚み50μmのPETフィルムで挟んだ後、120℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させ、上下面に重ねたPETフィルムを剥離し、さらに、樹脂層(1)と導電層の界面で剥離を行った。このようにして、導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された発熱性導電層含有フィルムを得た。
【0141】
<合わせガラスの作製>
導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された発熱性導電層含有フィルムの導電層上にポリビニルアセタール樹脂層PVB-Iを樹脂層(4)として積層することにより、樹脂層(4)/導電層/樹脂層(2)の積層体を得て、その後、実施例1と同様の方法にてガラス/樹脂層(4)/導電層/樹脂層(2)/ガラスの順に積層された合わせガラスを作製した。
【0142】
[実施例12]
導電構造体パターンとして、線幅5μmの副導電細線を正方形の上辺及び下辺から500μmの位置に有する、概略図が図2に示されるパターンAを用いたこと以外は実施例11と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。
【0143】
[実施例13]
導電構造体パターンとして、線幅5μmの副導電細線を有する、概略図が図3に示されるパターンBを用いたこと以外は実施例11と同様にして、積層体、発熱性導電層含有フィルム及び合わせガラスを得た。図3において、隣接する主導電細線同士の距離は2.5mmであり、隣接する主導電細線を結ぶ副導電細線同士の距離は7.5mmであった。
【0144】
[比較例1]
基材フィルムを用いることなく、ポリビニルアセタール樹脂層/銅箔の積層体を作成し、フォトリソグラフィの手法を用いて導電構造パターンを形成したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)がこの順に積層された積層体(発熱性導電層含有フィルム)及びガラス/樹脂層(1)/導電層/樹脂層(2)/ガラスの順に積層された合わせガラスを得た。
【0145】
[比較例2]
主導電細線の線幅を5μmから10μmに変更したこと以外は比較例1と同様にして、積層体(発熱性導電層含有フィルム)及び合わせガラスを得た。
【0146】
[比較例3]
導電性構造体パターンとして、線幅5μmの副導電細線を有する、概略図が図5に示されるパターンDを用いたこと以外は比較例1と同様にして、積層体(発熱性導電層含有フィルム)及び合わせガラスを得た。図5において、主導電細線同士の距離は2.5mmであり、副導電細線同士の距離は2.0mmあった。なお、パターンDにおいて、副導電細線の投影断面積の合計は主導電細線の投影断面積の合計の1倍を超えていた。
【0147】
[比較例4]
銅箔と積層させるポリビニルアセタール樹脂層として、PVB-aの代わりにPVB-eを用いたこと以外は比較例1と同様にして、積層体(発熱性導電層含有フィルム)及び合わせガラスを得た。
【0148】
[比較例5]
導電構造体パターンとして、線幅5μmの副導電細線を有する、概略図が図5に示されるパターンDを用いたこと以外は比較例4と同様にして、積層体(発熱性導電層含有フィルム)及び合わせガラスを得た。図5において、主導電細線同士の距離は2.5mmであり、副導電細線同士の距離は2.0mmあった。
【0149】
[比較例6]
片面が黒化処理された厚み7μmの銅箔を、黒化処理面とは異なる面と基材PETフィルムとが接するような向きで重ね、基材PETフィルムと銅箔とを重ねた積層体の上下を厚み100μmのPTFEフィルムで挟み、150℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させて、PTFEフィルム/PETフィルム/銅箔/PTFEフィルムの積層体を得た。PTFEを剥離することによって、剥離層のないPETフィルム/銅箔を得た後、実施例1と同様にして、フォトリソグラフィの手法により、導電層を得た。なお、このとき導電構造の一部に抜けが見られた。次に、導電層上に樹脂層(2)としてポリビニルアセタール樹脂層PVB-aを重ね、積層体の上下を厚み100μmのPTFEフィルムで挟み、120℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させた後、PTFEフィルムと、PETフィルムを剥離することにより、導電層/樹脂層(2)の積層体を得た。導電層上に樹脂層(4)としてポリビニルアセタール樹脂層PVB-Iを重ねることにより、樹脂層(2)/導電層/樹脂層(4)の積層体(発熱性導電層含有フィルム)得た。その後、実施例1と同様の方法により、ガラス/樹脂層(4)/導電層/樹脂層(2)/ガラスの順に積層された合わせガラスを作製した。
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
実施例1~13で得られた積層体は、導電層の変形、断線、及び剥離がなく、かつ合わせガラス形成後に優れた発熱製を有するとともに、ヘイズが低く、優れた視認性を有することが確認された。さらに実施例1~8及び10~13で得られた合わせガラスは導電層の変形、断線、及び剥離がなかった。これに対して、比較例1~6で得られた積層体は、導電層の変形、断線、及び剥離の少なくともいずれかが生じており、合わせガラス形成後にヘイズ及び発熱性の少なくとも一方で良好な結果が得られなかった。また、比較例1~6で得られた合わせガラスは、導電層の変形、断線、及び剥離の少なくともいずれかが生じていた。
【符号の説明】
【0153】
1…主バスバー、2…主導電細線、3…副導電細線、4…2つの主バスバーに接する領域、5…他の8つの領域、20…主導電細線の投影断面積、30…副導電細線の投影断面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7