(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】中間弾性率炭素繊維の製造
(51)【国際特許分類】
D01F 9/22 20060101AFI20230213BHJP
D01F 6/18 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
D01F9/22
D01F6/18 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020146472
(22)【出願日】2020-09-01
(62)【分割の表示】P 2017566607の分割
【原出願日】2016-02-15
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2015-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クック, ジョン デズモンド
(72)【発明者】
【氏名】テイラー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ, ギリッシュ ヴィシュヌカント
(72)【発明者】
【氏名】タン, ロンコイ
(72)【発明者】
【氏名】ミース, バリー ドウェイン
(72)【発明者】
【氏名】クロフォード, スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】チウ, シャオ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーモン, ビリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, アラン
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/143680(WO,A1)
【文献】特開2010-053468(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102766989(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101494(US,A1)
【文献】国際公開第2015/016199(WO,A1)
【文献】特開平03-097918(JP,A)
【文献】国際公開第1999/010572(WO,A1)
【文献】特開平04-257313(JP,A)
【文献】特開2002-266172(JP,A)
【文献】特許第6817970(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00~6/96
9/00~9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70
重量%~85
重量%のジメチルスルホキシドおよび15
重量%~30
重量%の水の凝固浴濃度、かつ0℃~10℃の凝固浴温の凝固浴で、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリマー19%~24%の濃度を有す
るPANポリマー溶液を紡糸し、それによって炭素繊維前駆体繊維を形成する工程と;
前記炭素繊維前駆体繊維を延伸して溶媒を繊維から除去するために、前記凝固浴から出る前記炭素繊維前駆体繊維を、1つもしくは複数のドロー浴および洗浄浴を通して、100~400メートル/分のスピードでドローする工程であって、前記炭素繊維前駆体繊維をドローする前記工程後に前記炭素繊維前駆体繊維が、500ppm以下の溶媒を有する、ドローする工程と;
前記炭素繊維前駆体繊維を安定させ、炭化する工程と、を含む、炭素繊維の製造方法であって、
前記PANポリマーが
、
アクリロニトリルモノマーと、唯一のコモノマーとしてのイタコン酸及び/又はメタクリル酸並びに溶媒とを混合して溶液を形成すること;
溶液を40℃から85℃の範囲の温度に加熱すること;及び
溶液に開始剤を添加して重合反応を開始すること;
により形成されるコポリマーであり、前記PANポリマーが、120,000~180,000の重量平均分子量(M
w
)を有し、
前記凝固浴からの前記炭素繊維前駆体繊維が、80%~120%の膨潤度、および30%~70%の気孔率で0.01μm~0.03μmの平均細孔径を有し、
前記炭素繊維前駆体繊維が、1100℃~1500℃の温度で炭化され
る、
炭素繊維の製造方法。
【請求項2】
前記PANポリマー溶液が、エアギャップ紡糸によって紡糸される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
紡糸口金の面から前記凝固浴の表面までのエアギャップ間隔が、2.0~10.0mmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つもしくは複数のドロー浴および洗浄浴の浴温が、40℃~100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドローする工程において、前記炭素繊維前駆体繊維を延伸することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素繊維前駆体繊維を安定させる工程が、0.80~1.35の延伸比で200℃~300℃の酸化温度で空気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素繊維前駆体繊維がポリアクリロニトリルベースのポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアクリロニトリルベースのポリマーが、4%までのコポリマー含有量および96%以上のアクリロニトリル含有量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝固浴が82.3重量%~84.02重量%のジメチルスルホキシドを含有し、前記凝固浴温が4.5℃~8.5℃であり、
前記凝固浴からの前記炭素繊維前駆体繊維が、92%~110%の膨潤度、および46.29~56.01%の気孔率で0.0125μm~0.0145μmの平均細孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本特許出願は、2015年3月12日出願の係属米国特許出願第62/132137号に対する優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は概して、高い引張強度および弾性率を有する炭素繊維、ならびにそのような炭素繊維の製造方法に関する。
【0003】
炭素繊維は、高い強度および剛性、高い耐化学薬品性ならびに低い熱膨張などの、それらの望ましい特性のために多種多様な用途に使用されてきた。例えば、炭素繊維は、同等特性の金属構成要素よりも著しく軽い重量を持ちながら、高い強度と剛性とを組み合わせている構造部品へ成形することができる。ますます、炭素繊維は、とりわけ、航空宇宙および自動車用途向けの複合材料における構造成分として使用されつつある。特に、炭素繊維が樹脂またはセラミックマトリックス中の強化材料として働く複合材料が開発されてきた。
【0004】
様々な産業、特に航空宇宙の厳しい要求を満たすために、高い引張強度(約800ksi以上)および高い弾性率(約40Msi以上)を両方とも有する、ならびに表面傷も内部欠陥もまったく持たない新規炭素繊維を絶えず開発することが必要である。個々により高い引張強度および弾性率を有する炭素繊維は、より低い強度の炭素繊維よりも少ない量で使用することができ、それでもやはり所与の炭素繊維強化複合部品について同じ総強度を達成する。結果として、炭素繊維を含有する複合部品は、重さが軽くなる。構造重量の減少は、それが、そのような複合部品を組み込んでいる航空機または自動車の燃料効率および/または載荷能力を高めるので航空宇宙および自動車産業にとって重要である。
【0005】
アクリロニトリルからの炭素繊維は一般に、一連の製造工程または段階によって製造される。アクリロニトリルモノマーが先ず、それを1つもしくは複数のコモノマー(例えば、イタコン酸、メタクリル酸、メチルアクリレートおよび/またはメチルメタクリレート)と混合し、混合物を、従来型溶液重合または懸濁法で触媒を使って反応させてポリアクリロニトリル(PAN)ポリマー溶液を(紡糸「原液」)を形成する。PANは現在、炭素繊維のもっとも幅広く使用される前駆体である。
【0006】
重合するとすぐに、PAN紡糸原液は、幾つかの異なる方法の1つを用いて紡糸されて前駆体(アクリル)繊維になる。一方法(乾式紡糸)では、加熱紡糸原液は、紡糸口金のとても小さい穴を通して加熱不活性ガスの塔またはチャンバへポンプ送液(濾過)され、そこで溶媒は蒸発し、固体繊維を残す。
【0007】
別の方法(湿式紡糸)では、加熱ポリマー溶液(「紡糸原液」)は、紡糸口金のとても小さい穴を通して凝固浴へポンプ送液され、そこで紡糸原液は凝固し、固化して繊維になる。湿式紡糸は、(1)紡糸口金が凝固浴に沈められている、湿式ジェット紡糸;(2)ポリマーが紡糸口金から噴出して抜け出て、凝固浴に接触する前に小さいエアギャップ(典型的には2~10mm)を通過する、エアギャップまたは乾式ジェット紡糸;および(3)紡糸原液が熱的に誘導されて流体溶液からゲルネットワークへの相変化する、ゲル紡糸というマイナープロセスの1つへとさらに分けることができる。乾式および湿式紡糸法の両方で、繊維は、その後洗浄され、一連の1つもしくは複数の浴を通して延伸される。
【0008】
前駆体繊維の紡糸および延伸後に、ならびにそれらが炭化される前に、繊維は、それらの線状分子配列をより熱的に安定した分子はしご型構造に変換するために化学変化させられることが必要である。これは、繊維を空気中で約200~300℃(約390~590°F)に約30~120分間加熱することによって成し遂げられる。これは、繊維に、酸素分子を空気からピックアップさせ、それらの原子結合パターンを再配置させる。この酸化または熱安定化工程は、繊維を、一連の加熱チャンバを通してドローするか、または繊維を、ホットローラ上を通過させるなどの、様々な方法によって起こり得る。
【0009】
酸化後に、安定化前駆体繊維は、酸素を含まないガス混合物で満たされた1つもしくは2つの炉中で数分間約1000~3000℃(約1800~5500°F)の最高温度まで加熱(炭化)される。繊維が加熱されるにつれて、それらは、それらの非炭素原子を、水蒸気、シアン化水素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素などの様々なガスの形態で失い始める。非炭素原子が追い出されるにつれて、残る炭素原子は、繊維の長軸に平行に配列する堅く結合した炭素結晶を形成する。
【0010】
結果として生じた炭素繊維は、複合材料に使用されるエポキシおよび他の材料と十分に結合しない表面を有する。繊維により良好な結合特性を与えるために、それらの表面は、わずかに酸化される。表面への酸素原子の追加は、より良好な化学結合特性を提供し、また弱く結合した結晶子を、より良好な機械的結合特性のために除去する。
【0011】
酸化されるとすぐに、炭素繊維は、巻取りまたは織り中にそれらを損傷から守るためにコートされる(「サイジング処理される」)。繊維に塗布されるサイジング材料は典型的には、複合材料を形成するために使用されるエポキシと相溶性であるように選ばれる。典型的なサイジング材料には、エポキシ、ポリエステル、ナイロン、ウレタンなどが含まれる。
【0012】
炭素繊維の高い弾性率は、高い結晶化度および繊維方向における結晶子の高い連帯度に由来し、一方、炭素繊維の高い強度は主として、繊維中の欠陥の排除および結晶性モルフォロジの成長によって達成される。より大きい、かつ、配向した黒鉛構造を成長させるための熱処理温度の上昇は、ヤング率を向上させることができ、一方、傷の除去は、繊維強度を向上させる可能性を有する。
【0013】
引張強度および弾性率を高める幾つかの方法が、先行技術において探索されている。例えば、弾性率が炭化温度を上げることによって高め得ることは一般に公知である。しかしながら、炭化温度の上昇は、圧縮および剪断強度の減少をもたらす。結果として、この方法は一般に、向上した弾性率ならびに圧縮および剪断強度を両方とも有する炭素繊維の有効な製造手段を提供しない。
【0014】
他の方法は、前駆体繊維を炭素繊維に変換するプロセスの前にまたはプロセス中に前駆体繊維を延伸することに焦点を合わせてきた。炭素繊維の弾性率が、ポスト紡糸工程、酸化工程、炭化工程、またはそれらの組み合わせにおいて繊維を延伸することによって向上させ得ることは、先行技術においてこれまで認められてきた。しかしながら、一般通例によれば、酸化工程における延伸の量が、PAN前駆体繊維の熱的に誘導される環化および/または酸化架橋などの、化学反応の開始に応じて成長する繊維中の張力レベルによって限定されると考えられる。張力の蓄積は、繊維に、標準酸化条件(例えば、180℃超)下に比較的低い延伸で破壊させる。結果として、PAN繊維を酸化中に延伸するという先行試みは一般に、最大量の延伸にまたは単一の連続延伸に限定されてきた。ポスト前駆体プロセスにおける過度の延伸は、より低い圧縮および剪断強度を有するより低い直径の炭素繊維をもたらす。
【0015】
樹脂含浸ストランドとしての炭素繊維の引張強度を向上させるための従来技法は、例えば、炭素繊維を構成する単一フィラメント内に存在する不純物を減少させるための、または単一フィラメント内に形成されるマクロボイドの生成を防ぐための、および単一フィラメントの表面上に発生する欠陥を減少させるための、マクロ欠陥の減少に関係していた。内部不純物を減少させる試みは、モノマーまたはポリマー紡糸原液の濾過の改善を包含している。表面欠陥は、前駆体繊維の製造プロセスに使用される繊維ガイドの形状を制御することによって減少させられてきた。
【0016】
凝固浴の条件を最適化することによるアンドローン繊維の高密度化もまた公知である。この技法は、95重量%以上のアクリロニトリルを含有する特有のアクリロニトリルポリマーを溶媒としてのジメチルホルムアミドに溶解させる工程と、結果として生じた紡糸原液を湿式紡糸する工程と、結果として生じた前駆体繊維をドローし、洗浄する工程と、洗浄された繊維を酸化し、炭化する工程とによって高い引張強度および弾性率を有する炭素繊維を得る。しかしながら、過度の高密度化は、安定させられた場合に繊維中への酸素透過性を低くし、この方法によって得られた炭素繊維の樹脂含浸ストランドとして表される引張強度の低下をもたらす傾向がある。
【0017】
したがって、高い圧縮強度および高い弾性率を両方とも有する炭素繊維、ならびにそのような炭素繊維の製造方法が必要とされている。さらに、樹脂含浸した場合に高い引張強度および高い弾性率を両方とも有する炭素繊維が必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、向上した強度および弾性率を有する炭素繊維、ならびに炭素繊維を製造するために用いることができる方法を提供する。本発明による炭素繊維前駆体繊維は、約100,000~約300,000の重量平均分子量Mwおよび2.0~3.0の多分散度Mw/Mn(式中、Mnは、ポリマーの数平均分子量である)を有するポリマーから製造された。好ましくは、炭素繊維前駆体繊維を製造するために使用されるポリマーの多分散度Mw/Mnは、2.1~2.6である。本発明による凝固炭素繊維前駆体繊維は、約30~約70%の気孔率範囲を有することができる。
【0019】
本発明は、炭素繊維の製造方法をさらに提供する。本発明によれば、約19%~約24%ポリマーの濃度を有するポリマー溶液が、約70%~約85%溶媒および約15%~約30%水の凝固浴濃度での凝固浴で紡糸され、それによって炭素繊維前駆体繊維を形成する。凝固浴は、約0℃~約10℃の浴温を有することができる。一実施形態では、凝固浴溶媒はジメチルスルホキシド(「DMSO」)である。
【0020】
一実施形態では、ポリマーは、ポリアクリロニトリルベースのポリマーである。一実施形態では、ポリアクリロニトリルベースのポリマーは、アクリロニトリルと、イタコン酸、メタクリル酸、メタクリレートおよびそれらの組み合わせから選ばれるコモノマーとのコポリマーである。一実施形態では、ポリマーは、約4%までのモノマー構成要素と約96%以上のアクリロニトリル含有量とのコポリマー含有量を有する。ポリマーは、約100,000~約300,000;より好ましくは、約120,000~約180,000の重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0021】
一実施形態では、ポリマー溶液は、エアギャップ紡糸によって紡糸される。紡糸口金の面から凝固浴の表面までのエアギャップ間隔は約2mm~約10mmであり得る。
【0022】
凝固浴からの炭素繊維前駆体繊維は、約30%~約70%の気孔率で0.01μm~約0.03μmの平均細孔径を有する。凝固浴からの炭素繊維前駆体繊維はまた、約80%~約120%の膨潤度を有することができる。
【0023】
紡糸繊維は次に、延伸し、溶媒を繊維から除去するために1つもしくは複数のドローおよび洗浄浴を通して引きドローされる。1つもしくは複数のドロー浴の浴温は、約40℃~約100℃である。一実施形態では、炭素繊維前駆体繊維は、約100~約400メートル/分のスピードで紡糸され、ドローされる。炭素繊維前駆体繊維は、浴を通して繊維をドローした後に溶媒を実質的に含まない。「溶媒を実質的に含まない」とは、炭素繊維前駆体繊維は約500ppm以下の残留溶媒を有する。
【0024】
炭素繊維前駆体繊維は次に、安定させられ、約1100℃~約1500℃の最高温度で炭化される。好ましくは、炭素繊維前駆体繊維は、約0.80~約1.35の延伸比で約200℃~約300℃の酸化温度で、空気中で安定させられる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明はこれから、本明細書で以下より十分に説明される。これらの発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく;むしろ、これらの実施形態は、本開示が当てはまる法規定を満たすであろうように提供される。類似の数字は、全体にわたって類似の要素を意味する。
【0026】
一態様では、本発明は、向上した引張強度および弾性率を有する炭素繊維を指向する。別の態様では、本発明は、それらの炭素繊維の製造方法を指向する。本明細書に記載される方法に従って製造された炭素繊維は、800ksiに近いおよびそれを超える引張強度ならびに40Msiに近いおよびそれを超える弾性率を有することができる。
【0027】
中間弾性率(IM)繊維の製造のために開発された方法が本発明の根拠である。本発明方法は、約830~約870ksi引張強度および約43~約44Msi引張弾性率の引張特性を持った炭素繊維を製造する。
【0028】
以下により詳細に考察されるように、本発明に従った炭素繊維は、ポリマー紡糸原液を、高い凝固濃度(約70重量%以上の溶媒および約30重量%までの水)で凝固させて緻密質前駆体繊維構造を成長させることによって製造することができる。この緻密質構造は、酸化およびプレ炭化によって高い延伸を可能にし、中間弾性率引張特性が約1450℃以上の典型的な炭化温度よりもむしろ約1400℃未満の炭化温度で成長させられることを可能にする。緻密質前駆体繊維構造は、炭化がより低い温度で行われることを可能にするので、繊維の改善された表面官能性は、表面が1450℃以上のより高い温度で製造された炭素繊維表面よりも黒鉛性が少ないように提供され得る。本発明との関連で、用語「繊維」は、単一フィラメントまたは、「トウ」とも言われる、一緒に束ねられている複数のフィラメントを包含する。トウまたは束は、約1,000~50,000の個別のフィラメントを含んでもよい。
【0029】
本発明との関連で、用語「前駆体繊維」は、十分な熱を適用すると、重量で、約90%以上、特に約95%である炭素含有量を有する炭素繊維へ変換することができるポリマー材料を含む繊維を意味する。前駆体繊維は、アクリロニトリル(AN)のホモポリマーおよびコポリマーを両方とも含むことができ、メチルアクリレート(MA)、メタクリル酸(MAA)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMAS)、イタコン酸(ITA)、臭化ビニル(VB)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、およびそれらの組み合わせなどのコポリマーを含んでもよい。
【0030】
重合
PANポリマーは、溶液重合または懸濁重合によって製造することができる。溶液重合では、アクリロニトリル(AN)モノマーは、溶液を形成するために溶媒、および1つもしくは複数のコモノマーと混合される。溶液重合用の好適な溶媒には、とりわけ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)が含まれる。PANポリマーの合成に好適なコモノマーの例としては、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、およびイタコン酸(ITA)などの1つもしくは複数のビニルベースの酸;メタクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピッルメタクリレート、ブチルメタクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソプロピルアセテート、ビニルアセテート(VA)、およびビニルプロピオネートなどのビニルベースのエステル;他のビニル誘導体(例えば、ビニルイミダゾール(VIM)、アクリルアミド(AAm)、およびジアセトンアクリルアミド(DAAm)などのビニルアミド);ならびにアリルクロリド、臭化ビニル、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル);ビニル化合物のアンモニウム塩およびスルホン酸のナトリウム塩(例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMS)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(SAMPS))などが挙げられる。好ましくは、コモノマーは、イタコン酸および/またはメタクリル酸である。溶液は次に、室温よりも上(すなわち、25℃超)の温度に、例えば、約40℃~約85℃の温度に加熱される。
【0031】
加熱後に、開始剤が、重合反応を開始させるために溶液に添加される。PAN重合は、アゾ系の化合物(例えば、アゾ-ビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシアノ吉草酸(ACVA)、および2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチル)バレロニトリル(ABVN)など)または有機過酸化物(例えば、ジラウロイルペルオキシド(LPO)、ジtert-ブチルペルオキシド(TBPO)、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート(IPP)など)の開始剤(または触媒)によって開始させることができる。重合が完了するとすぐに、未反応ANモノマーは、(例えば、高真空下の脱気によって)取り除かれ、結果として生じたPANポリマー溶液は冷却される。この段階で、PANポリマーは、溶液形態か、またはいつでも紡糸できる状態の紡糸原液形態にある。好ましくは、PANポリマーは、溶液重合によって製造される。
【0032】
PANポリマーはまた、懸濁重合によって製造することができる。この方法によって紡糸液を製造するために、結果として生じたPANを、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、エチレンカーボネート(EC)、塩化亜鉛(ZnCl2)/水およびチオシアン酸ナトリウム(NaSCN)/水などの溶媒に溶解させて紡糸液を形成することができる。
【0033】
好ましい実施形態によれば、PAN重合は、次の処方(重量による%(重量%))に基づいて実施される:成分の総重量を基準として、90%超のANモノマー;5%未満のコモノマー;1%未満の開始剤;および16重量%~28重量%、好ましくは、19重量%~24重量%の最終PANポリマーを含有する溶液を形成するのに十分な量の溶媒。
【0034】
紡糸
PAN前駆体繊維を製造するために、PANポリマー溶液(すなわち、紡糸「原液」)は、真空によって気泡を除去した後、従来型湿式紡糸および/またはエアギャップ紡糸にかけられる。紡糸原液は、溶液の総重量を基準として、約16重量%~約28重量%、好ましくは約19重量%~約24重量%のポリマー濃度を有することができる。湿式紡糸では、紡糸原液は、フィラメントを形成するために液体凝固浴中へ紡糸口金(典型的には金属製)の穴を通して濾過され、押し出される。紡糸口金穴は、PAN繊維の所望のフィラメント番手を決定する(例えば、3K炭素繊維用には3,000穴)。エアギャップ紡糸では、1~50mm、好ましくは2~10mmの垂直エアギャップが、紡糸口金と凝固浴との間に提供される。この紡糸法では、ポリマー溶液は、紡糸口金から空気中で濾過され、押し出され、次に押し出されたフィラメントは、凝固浴中で凝固させられる。エアギャップ紡糸が好ましい。
【0035】
本方法に使用される凝固液は、溶媒と非溶媒との混合物である。水またはアルコールが典型的には、非溶媒として使用される。好適な溶媒には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、チオシアン酸ナトリウムおよび塩化亜鉛が含まれる。ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドが好ましく、ジメチルスルホキシドがとりわけ好ましい。溶媒と非溶媒との比および浴温が、押し出された発生期フィラメントの凝固における固化速度を調整するために用いられる。
【0036】
凝固条件は、前駆体繊維および炭素繊維の構造および引張特性に大きい影響を及ぼすことができる。本発明によれば、間隙の少ない、緻密質凝固繊維を得るために、前駆体繊維は、約70重量%以上の溶媒および約30重量%までの水の凝固浴濃度で凝固させられる。好ましくは、約70重量%~約85重量%溶媒および約15重量%~約30重量%水の凝固浴濃度。より好ましくは、約75重量%~約85重量%溶媒および約15重量%~約25重量%水の凝固浴濃度。凝固浴の温度は、約0℃~約10℃である。
【0037】
紡糸フィラメントは次に、過剰の溶媒を除去するために1つもしくは複数の洗浄浴を通してローラーによって凝固浴から引き出され、繊維径を制御する第1工程として分子配向をフィラメントに付与するために、ホット(例えば、40℃~100℃)水浴中で延伸される。延伸フィラメントは次に、例えば、乾燥ロール上で乾燥させられる。乾燥ロールは、直列におよび蛇行形態に配置された複数の回転可能なロールからなることができ、ロール上をフィラメントが、ロールからロールへ順次、および十分な張力下に通過して、ロール上でフィラメントに延伸または緩和を提供する。ロールの少なくともいくつかは、内部をもしくはロールを通って循環する、加圧スチーム、またはロールの内部の電気加熱素子によって加熱される。仕上げオイルは、フィラメントが下流プロセスにおいて互いに粘着することを防ぐために、乾燥前に延伸繊維上へ塗布することができる。
【0038】
処理条件(紡糸液および凝固浴の組成、全浴の量、延伸、温度、およびフィラメントスピードなどの)は、所望の構造およびデニールのフィラメントを提供するために相互に関係している。
【0039】
酸化
PAN前駆体繊維を炭素繊維に変換するために、PAN前駆体繊維は、酸化および炭化にかけられる。酸化段階中に、PAN繊維は、その中へ加熱空気が供給される、1つもしくは複数の特殊化オーブンを通して張力下に供給される。酸化は、約200℃~約300℃のオーブン温度で実施することができる。酸化プロセスは、空気からの酸素分子をPAN繊維と化合させ、ポリマー鎖に架橋を開始させ、それによって繊維密度を1.3g/cm3~1.4g/cm3に増加させる。酸化プロセスでは、繊維に適用される張力は一般に、0.8~1.35、好ましくは1.0~1.2の延伸比でドローされるかまたは縮められる繊維を制御するためである。延伸比が1である場合には、延伸はまったくない。そして延伸比が1よりも大きい場合には、適用される張力は、繊維が延伸されることを引き起こす。そのような酸化されたPANは、不溶融性のはしご型芳香族分子構造を有し、いつでも炭化処理できる状態である。
【0040】
炭化
炭化は、1つもしくは複数の特別に設計された炉内で不活性(酸素を含まない)雰囲気中で起こる。好ましい実施形態では、炭化は2つの工程で実施することができる。ここで、酸化された繊維は先ず、繊維を不活性ガス(例えば、窒素)に曝しながら約300℃~約800℃の加熱温度にかけるプレ炭化炉を通過させられる。このプレ炭化に次に、繊維を、不活性ガスに曝しながら約700℃~約1500℃のより高い温度に加熱された炉を通過させることによる炭化が続く。最高炭化温度は1100℃~1500℃である。好ましくは、繊維張力は、プレ炭化および炭化プロセスの全体にわたって加えられる。プレ炭化において、適用される繊維張力は、延伸比が0.9~1.2の範囲内にあるように制御するのに十分なものである。炭化において、用いられる張力は、0.9~1.05の延伸比を与えるのに十分なものである。炭化は、炭素分子の結晶化をもたらし、その結果として90パーセント超の炭素含有量を有する完成炭素繊維を生成する。
【0041】
マトリックス樹脂と炭素繊維との間の接着は、炭素繊維強化ポリマー複合材における重要な判断基準である。本方法に従って製造された前駆体繊維は非常に緻密質であるので、炭化は、より低い温度で行うことができる。これは、より少ない黒鉛化が起こり、マトリックス樹脂と反応するためのより多い表面官能性を持った炭素繊維をもたらすので有利である。
【0042】
表面処理
炭素繊維の製造中に、表面処理が、樹脂マトリックスと炭素繊維との間の接着性をさらに高めるために酸化および炭化後に行われてもよい。表面処理は、炭化繊維を、重炭酸アンモニウムまたは硫酸などの、電解質を含有する電解浴を通して引っ張ることを含むことができる。電解浴の化学薬品は、界面の繊維/マトリックス結合を向上させ、また弱く結合した結晶子を、より良好な機械的結合特性のために除去する反応性化学基を繊維表面上に追加する。
【0043】
次に、炭素繊維は、サイズコーティング(例えば、エポキシ系コーティング)が繊維上に塗布される、サイジング処理にかけることができる。サイジング処理は、繊維を、液体コーティング材料を含有するサイズ浴を通過させることによって実施することができる。サイジング処理は、ハンドリング中に、ならびに乾燥布帛およびプレプレグなどの、中間形態への加工中に炭素繊維を保護する。サイジング処理はまた、けばを減少させ、加工性を向上させ、繊維とマトリックス樹脂との間の界面剪断強度を高めるために、フィラメントを個々のトウで一緒に保持する。
【0044】
サイジング処理後に、コートされた炭素繊維は、乾燥させられ、次にロビン上へ巻き付けられる。
【0045】
上記のPANポリマーから製造された炭素繊維は、ASTM D 4018試験方法によって次の機械的特性を有することが分かった:700Ksi(4826MPa)超の引張強度および38Msi(262GPa)超の引張初期弾性率。
【0046】
以下の実施例は、本発明の態様を例示するために提供され、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に明記しない限り、実施例に言及されるすべての弾性率測定は、ASTM D 4018に従って行われた。繊維弾性率値は、それぞれ、0.1%および0.6%の下方および上方歪み限度間で測定された樹脂含浸トウストランドの引張コードモデュラスを意味する。さらに、引張強度は、ASTM D 4018に従って測定された。
【実施例】
【0047】
実施例1-紡糸用原液の合成
PANポリマーは、表1に示されるPAN重合のための処方に従って製造した。DMSOおよびAIBNを、それぞれ、溶液重合溶媒および触媒のために使用した。
【0048】
【0049】
溶液重合中に、DMSOおよびANを反応器へ計量供給した。窒素パージしながら、コモノマー(ITAまたはMAA)およびAIBNを、40℃~85℃の所望の温度で反応器へ添加した。反応は、約8~24時間を要した。反応後に、反応剤を次に冷却し、排出した。気泡を真空によって除去した後、ポリマー溶液(または紡糸「原液」)を紡糸するためにポンプ送液した。
【0050】
実施例2-PAN前駆体繊維の製造
上の表1に記載されたような処方1~3から製造されたPANポリマーを使用して炭素繊維前駆体(または白筋線維)を、2~10mmのエアギャップ間隔で、エアギャップ紡糸法によって形成した。凝固浴パラメータを、下の表2に示されるように各ランについて変えた。
【0051】
【0052】
白色前駆体繊維の特性を、以下の通り測定した。
【0053】
ポロシメトリー
凝固浴を出る繊維試料を-60℃で凍結乾燥させ、凍結乾燥試料を、気孔率および多孔質構造解析のために水銀侵入ポロシメーターによって試験した。水銀侵入ポロシメトリーは、材料の気孔率を、水銀中に浸漬された試料に様々なレベルの圧力をかけることによって特性評価する。それは、500μm~35nmの範囲の細孔サイズを測定することができる。それは、非反応性の、非濡れ液体が、その進入を押し進めるのに十分な圧力がかけられるまで細孔に侵入しないであろうという物理的原理に基づいている。この場合、水銀は、ほとんどの固体に対して高い接触角で、ほとんどすべての物質にとって非濡れ液体である。水銀は、毛管作用によって細孔に侵入しないであろうし、細孔空間へ進入するためには力を必要とする。Washburn(ウォッシュバーン)の方程式を考えると、細孔空間への進入は、細孔開口部サイズに反比例して圧力をかけることを必要とする。水銀が円形横断面を有する細孔開口部と接触するとき、水銀の表面張力は、円の外周に等しい長さについて接触の円に沿って作用する。これは、円筒形細孔を仮定している。この仮定に基づいて、水銀が細孔に進入することに抵抗する力は、-πDγcosθ(ここで、Dは細孔径であり、γは表面張力であり、θは接触角である)に等しい。(負号は、θ>90°について、この項が本質的に負であるので導入される。)外部印加圧力による力は、接触している円(細孔)のエリアにわたって作用し、πD
2P/4(ここで、Pは印加圧力である)として表される。平衡状態で、次の方程式が真である:
【0054】
この方程式の簡略版は、Washburn Equation(ウォッシュバーン方程式)として知られている:
【0055】
これに基づいて、細孔(および間隙空間)中へ押し込まれる水銀の容積は、圧力の増加とともに直接増加する。印加圧力を設定範囲にわたって増加させることによって、独特の圧力-容積曲線をプロットすることができる。細孔サイズ分布が次に容易に得られる。増分および累積の細孔容積対細孔径もまた計算することができる。
【0056】
この測定のために、既知重量の凍結乾燥試料を、既知重量の透過度計アセンブリに入れ、密封する。「粉末」試料バルブを用いて、繊維がステムへ引き込まれるのを防ぐ。試料を、空気および残留水分を除去するために真空が適用される、ポロシメーターの低圧ポートへ入れる。試料セルを次に水銀で満たし、0.54psiaの圧力が得られる。嵩密度測定値をこの時点で計算する。透過度計は次に大気圧に戻り、それは取り除かれ、試験を完了させるために高圧ポートに入れられる。高圧ポートにおいて、試料セルを油圧流体で取り囲み、圧力を60,000psiaまでだんだんと増加させる。各圧力ポイントで、侵入した水銀の容積を、膨張計ステム中の水銀のカラムと、透過度計アセンブリのステムを取り巻く同軸金属シートとの間の電気容量の変化によって測定する。最終圧力に達するとすぐに、骨格密度を計算する。圧力-容積曲線および細孔サイズ分布を示す報告書を次に作成する。細孔サイズ分布データが得られるとすぐに、幾つかのデータ修正を行って最重要のおよび正確なデータを計算した。第1修正は、5μmよりも大きい細孔の排除であった。対数微分侵入容積対細孔サイズプロットに基づいて、フィラメント間細孔/間隔を説明し、内部細孔構造を反映しない5μmよりも上の独特の領域がある。これらの測定値は、フィラメント内/内部細孔だけを得るために除去した。第2修正は、5μmよりも下の侵入容積、および1.17g/ccの設定骨格密度に基づいて再計算されたパーセント気孔率に対してであった。
【0057】
膨潤度
膨潤度については、凝固浴から採取された試料を先ず、3000rpmで15分間遠心分離してフィラメント表面から付着液体を除去した。集められた試料を次に、脱イオン水(DIW)を含有するガラスビーカー/フラスコに沈め、最低15分間「洗浄した」。この洗浄工程を次に、新鮮なDIWでさらに2回繰り返して試料が完全に凝固させられ、溶媒が除去されることを確実にした。最終洗浄が完了するとすぐに、試料を、3,000rpmで15分間再び遠心分離し、秤量してWa(洗浄後)重量を得た。試料を次に、空気循環オーブンに110℃で3時間入れた。乾燥後に、試料をオーブンから取り出し、デシケーターに最低10分間入れた。乾燥し、デシケーターに入れた試料を再秤量し、最終重量をWfとして記録した。膨潤度を次に、次式を用いて計算した:
膨潤度(%)=(Wa-Wf)×(100/Wf)
【0058】
表2からのラン4~6をベースとするPAN繊維は、膨潤度試験および水銀侵入ポロシメトリーによって測定されるように低気孔率およびマクロボイドなしの良好な構造を有することが分かった。結果として、これらの低気孔率前駆体からのその後の炭素繊維は、778~829ksiの範囲の引張強度をもたらした。
【0059】
炭素繊維への白筋線維の変換
ラン1~6から製造された炭素繊維前駆体を、多段オーブンを用いて酸化した。総延伸は10%未満であった。オーブン温度は、200℃~300℃の範囲にあった。総滞留時間は150分未満であった。酸化された繊維を多段炉で炭化した。より低い温度の炉(プレ炭化炉と言われる)は、300℃~800℃の温度範囲で動作した。総延伸は10%未満であった。高温炉(炭化炉と言われる)は、700℃~1500℃の温度範囲で動作した。最高炭化温度は、1100℃~1500℃であった。トータルリラックスは5%未満であった。炭化繊維を次に、表面処理し、エポキシ相溶性サイズ剤でサイジング処理した。
【0060】
結果として生じた炭素繊維の引張強度および引張弾性率を測定し、表3に示す。
【0061】
【0062】
炭素繊維引張強度および初期引張弾性率は、ASTM D4018およびSRM 16によって測定した。密度試験は、ASTM D3800およびSRM 15に基づいた。
【0063】
本発明は、好ましい実施形態に関連して記載されてきたが、様々な変更が行われ得るし、同等のものが本発明の範囲から逸脱することなくその要素について置き換えられ得ることは当業者によって理解されるであろう。さらに、多くの修正が、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況または材料に適応するために本発明の教示に行われてもよい。それ故、本発明は、この発明を実施するために考えられる最良のモードとして開示された特定の実施形態に限定されないこと、しかし本発明は、添付のクレームの範囲内に入るすべての実施形態を包含するであろうことが意図される。