(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】炭水化物が増大している非常に強力な酸性アルファ-グルコシダーゼ
(51)【国際特許分類】
A61K 38/47 20060101AFI20230213BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230213BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20230213BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20230213BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20230213BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
A61K38/47 ZNA
A61K45/00
A61P21/00
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P43/00 105
A61K31/445
C12N9/26
C12N15/56
C12N15/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020161470
(22)【出願日】2020-09-25
(62)【分割の表示】P 2017516917の分割
【原出願日】2015-09-30
【審査請求日】2020-10-23
(32)【優先日】2014-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴッシャル, ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ドー, フン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-523648(JP,A)
【文献】大橋 十也 Toya Ohashi,リソソーム蓄積症の遺伝子治療 Gene therapy for lysosomal storage diseases,日本臨床(増刊)遺伝子診療学(第2版) ,第68巻,株式会社日本臨牀社 河内 秀明
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の組織、筋肉、筋繊維、筋細胞、リソソーム、オルガネラ、細胞内コンパートメント又は細胞質中のグリコーゲンを代謝するか、分解するか、除去するか、又はそれ以外により低減させるための、組み換えヒト酸α-グルコシダーゼ(rhGAA)を含む組成物を含む医薬であって、rhGAA上のN-グリカンの40%~60%が複合型N-グリカンであり、rhGAAがrhGAA1mol当たり3.0~5.0molのマンノース-6-リン酸(M6P)残基を含む、医薬。
【請求項2】
rhGAAが、rhGAA1mol当たり3.0~4.0molのM6Pを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
rhGAAが、rhGAA1mol当たり4.0~5.0molのM6Pを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
rhGAA上のN-グリカンの45%~55%が複合型N-グリカンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
rhGAA上のN-グリカンの50%が複合型N-グリカンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
rhGAAが、rhGAA1分子当たり少なくとも1個のビス-リン酸化N-グリカンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
rhGAAが、
(a)rhGAA1mol当たり2.0~8.0molのシアル酸、又は
(b)rhGAA1mol当たり少なくとも4molのシアル酸
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
薬学的シャペロン、対象のrhGAAに対する免疫応答を低減する薬剤、又はこれらの組み合わせをさらに含み、
(a)組成物が、薬学的シャペロン、薬剤、又はこれらの組み合わせと共に製剤化される、又は
(b)組成物が、薬学的シャペロン、薬剤、又はこれらの組み合わせと共投与される
請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
薬学的シャペロンが、N-ブチル-デオキシノジリマイシン、又は薬学的に許容され得るその塩である、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
心筋、平滑筋又は横紋筋
の筋肉、筋繊維、筋細胞、リソソーム、オルガネラ、細胞内コンパートメント又は細胞質からグリコーゲンを分解するか、低減させるか、また除去するための医薬である、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
横紋筋の筋肉、筋繊維、筋細胞、リソソーム、オルガネラ、細胞内コンパートメント又は細胞質からグリコーゲンを分解するか、低減させるか、また除去するための医薬であり、横紋筋が、
小指外転筋(足)、小指外転筋(手)、母趾外転筋(abductor halluces)、短母指外転筋、長母指外転筋、短内転筋、母趾内転筋、長内転筋、大内転筋、母指内転筋、肘筋、肘関節筋、膝関節筋(articularis genu)、披裂喉頭蓋筋(aryepiglotticus)、アリヨルダニクス(aryjordanicus)、耳介筋、上腕二頭筋、大腿二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、頬筋、球海綿体筋、下咽頭の収縮筋、中咽頭の収縮筋、上咽頭の収縮筋、烏口腕筋、皺眉筋、精巣挙筋、輪状甲状筋、肉様膜、深会陰横筋(deep transverse perinei)、三角筋、口角下制筋、下唇下制筋、横隔膜、二腹筋、二腹筋(前面像)、脊柱起立筋-棘筋、脊柱起立筋-腸肋筋、脊柱起立筋-最長筋、短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、小指伸筋(手)、指伸筋(手)、短指伸筋(足)、長指伸筋(足)、長母趾伸筋、示指伸筋、短母指伸筋、長母指伸筋、外腹斜筋(external oblique abdominis)、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、短小指屈筋(足)、短小指屈筋(手)、短指屈筋、長指屈筋(足)、深指屈筋、浅指屈筋、短母趾屈筋、長母趾屈筋、短母指屈筋、長母指屈筋、前頭筋、腓腹筋、下双子筋、上双子筋、オトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、薄筋、舌骨舌筋、腸骨筋、下斜筋、下直筋、棘下筋、外肋間筋、最内肋間筋、内肋間筋、内腹斜筋(internal oblique abdominis)、手の背側骨間筋、足の背側骨間筋、手の掌側骨間筋、足の底側骨間筋、棘間筋、横突間筋、舌の内在筋、坐骨海綿体筋、外側輪状披裂筋、外側翼突筋、外側直筋、広背節、口角挙筋、肛門挙筋-尾骨、肛門挙筋-腸骨尾骨筋、肛門挙筋-恥骨尾骨筋、肛門挙筋-恥骨直腸筋、肛門挙筋-恥骨膣筋、上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、上眼瞼挙筋、肩甲挙筋、口蓋帆挙筋、肋骨挙筋、頭長筋、頚長筋、足の中様筋(4)、手の中様筋、咬筋、内側翼突筋、内直筋、オトガイ筋、口蓋垂筋、顎舌骨筋、鼻筋、斜披裂筋、下頭斜筋、上頭斜筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋(A)、内閉鎖筋(B)、肩甲舌骨筋、小指対立筋(手)、母指対立筋、眼輪筋、口輪筋、舌口蓋筋、口蓋咽頭筋、短掌筋、長掌筋、恥骨筋、大胸筋、小胸筋、短腓骨筋、長腓骨筋、第三腓骨筋、梨状筋(A)、梨状筋(B)、足底筋、広頚筋、膝窩筋、後輪状披裂筋、鼻根筋、方形回内筋、円回内筋、大腰筋、小腰筋、錐体筋、大腿方形筋、腰方形筋、足底方形筋、腹直筋、前側頭直筋、外側頭直筋、大後頭直筋、小後頭直筋、大腿直筋、大菱形筋、小菱形筋、笑筋、耳管咽頭筋、縫工筋、前斜角筋、中斜角筋、最小斜角筋、後斜角筋、半膜様筋、半腱様筋、前鋸筋、下後鋸筋、上後鋸筋、ヒラメ筋、肛門括約筋、尿道括約筋、頭板状筋、頚板状筋、アブミ骨筋、胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、茎突舌筋、茎突舌骨筋、茎突舌骨筋(前面像)、茎突咽頭筋、鎖骨下筋、肋下筋、肩甲下筋、浅会陰横筋、上斜筋、上直筋、回外筋、棘上筋、側頭筋、側頭頭頂筋、大腿筋膜張筋、鼓膜張筋、口蓋帆張筋、大円筋、小円筋、甲状披裂筋および声帯筋、甲状喉頭蓋筋、甲状舌骨筋、前脛骨筋、後脛骨筋、横披裂筋、横突棘筋-多裂筋、横突棘筋-回旋筋、横突棘筋-半棘筋、腹横筋、胸横筋、僧帽筋、三頭筋、中間広筋、外側広筋、内側広筋、大頬骨筋、小頬骨筋、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
筋繊維が、1型(緩徐収縮)筋繊維又は2型(速収縮)筋繊維である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
rhGAAがM6Pとは異なるターゲティング部分にさらにコンジュゲートされている、請求項1~
12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
rhGAAが配列番号4に90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項15】
少なくとも1の薬学的に許容される担体または添加剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
薬学的に許容される担体が水である、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
組成物が凍結乾燥粉末の形態である、請求項15に記載の医薬。
【請求項18】
マンニトールを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
ポリソルベート80を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
pH緩衝剤を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/057,842号明細書、2014年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/057,847号明細書、2015年2月5日に出願された米国仮特許出願第62/112,463号明細書および2015年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/135,345号明細書に対する優先権の利益を主張し、これらはそれぞれ、その全体が参照により援用される。
【0002】
本発明は、医学、遺伝学および組み換え糖タンパク質生化学の分野を含み、具体的には、マンノース6-リン酸担持グリカンの総含有量がより高い組み換えヒトアルファグルコシダーゼ(rhGAA)組成物に関し、このマンノース6-リン酸担持グリカンは筋細胞上のCIMPRを効率的に標的にし、かつその後にrhGAAをリソソームへ送達し、このリソソームにおいて、rhGAAは、異常に高レベルの蓄積グリコーゲンを分解することができる。本発明のrhGAAは、従来のrhGAA製品と比較して筋細胞への優れたターゲティングおよびその後のリソソームへの送達を示し、かつポンペ病を有する対象の酵素補充療法に対して本発明のrhGAAを特に有効とするその他の薬物動態特性を示す。
【背景技術】
【0003】
ポンペ病用の既存の酵素補充療法では、M6P担持グリカンおよびビス-M6P担持グリカンの総含有量が低い従来のrhGAA製品が使用される。従来の製品は、Lumizyme(登録商標)、Myozyme(登録商標)およびアルグルコシダーゼアルファという名称で知られている。「Lumizyme」および「Myozyme」は、Genzymeにより生物製剤として製造または市販され、かつ米国食品医薬品局により承認されている従来型のrhGAAであり、Physician’s Desk Reference(2014)(これは参照により本明細書に援用される)を参照してまたは2014年10月1日時点においてFDAにより米国内での使用に承認された「Lumizyme(登録商標)」または「Myozyme(登録商標)」という名称の製品で説明される。アルグルコシダーゼアルファは、化学名[199-アルギニン,223-ヒスチジン]プレプロ-α-グルコシダーゼ(ヒト);分子式、C4758H7262N1274O1369S35;CAS番号420794-05-0として同定されている。これらの製品は、グリコーゲン貯蔵症II型(GSD-II)または酸性マルターゼ欠損症としても知られているポンペ病を有する対象に投与される。酵素補充療法は、rhGAAを投与してリソソーム中において欠損しているGAAを置き換え、それによりリソソームグリコーゲンを分解する細胞の能力を回復させることにより、ポンペ病を処置しようとする。
【0004】
ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)活性の欠乏に起因する遺伝性のリソソーム貯蔵症である。ポンペ病の罹患者は、グリコーゲンを分解する酵素である酸性アルファ-グルコシダーゼ(GAA)と、身体がエネルギー源として使用する物質とを欠いているか、またはこれらのGAAおよび物質のレベルが低下している。この酵素欠乏により、リソソーム中において過剰なグリコーゲン蓄積が起こり、このリソソームは、グリコーゲンとその他の細胞残屑または老廃物とを通常分解する酵素を含む細胞内オルガネラである。ポンペ病を有する対象のある種の組織(特に筋肉)中でのグリコーゲン蓄積により、正常に機能する細胞の能力が損なわれる。ポンペ病では、グリコーゲンは適切に代謝されず、リソソーム中に次第に蓄積し、特に骨格筋細胞中に次第に蓄積し、乳児発症型の疾患では心筋肉細胞中に次第に蓄積する。グリコーゲンの蓄積により、筋細胞および神経細胞が損傷し、その他の患部組織中の細胞も損傷する。
【0005】
従来、発症年齢に応じて、ポンペ病は早期乳児型または後期発症型のいずれかとして臨床的に認識される。発症年齢は、ポンペ病を引き起こす遺伝子変異の重症度に対応する傾向がある。最も重症の遺伝子変異は、乳児期の早発性疾患として現れるGAA活性の完全な喪失を引き起こす。GAA活性を低下させるが完全には排除しない遺伝子変異は、発症および進行が遅延しているポンペ病の形態と関連している。乳児発症性ポンペ病は出生直後に現れ、筋力低下、呼吸不全および心不全を特徴とする。未処置の場合、通常は2年以内に死亡する。若年発症性および成人発症性のポンペ病は後年に現れ、通常は乳児発症性疾患と比べて緩やかに進行する。この形態の疾患は概して心臓に影響を及ぼさないが、骨格筋と呼吸に関与する骨格筋との衰弱により死に到ることもある。
【0006】
現在のポンペ病の非対症療法的処置として、Lumizyme(登録商標)またはMyozyme(登録商標)等の組み換えヒトGAA(rhGAA)を使用する酵素補充療法(ERT)が挙げられる。このrhGAAは、ポンペ病を有する対象中において欠如または欠損しているGAAを置き換えるためにまたは補充するために投与される。しかしながら、従来のrhGAA製品中のrhGAAの大部分は筋組織を標的としないことから、rhGAAは投与後に非生産的に除去される。
【0007】
これは、rhGAA分子の標的を標的筋細胞上のCIMPRに設定する(rhGAA分子はその後に細胞のリソソーム中へと運ばれる)M6P担持グリカンおよびビス-M6P担持グリカンの総含有量が従来のrhGAAでは高くないために起こる。酵素補充療法のためのrhGAAのこの細胞取り込みは、後の外因性酵素のリソソームへの送達のために細胞表面上に存在するカチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(CIMPR)に結合する特定の炭水化物(マンノース-6-リン酸(M6P))によって促進される。
【0008】
rhGAA上には7種の潜在的なN結合グリコシル化部位が存在する。存在するN結合オリゴ糖(N-グリカン)のタイプでは各グリコシル化部位が不均一であることから、rhGAAは、タンパク質と、M6P受容体およびその他の炭水化物受容体に対する様々な結合親和性を有するN-グリカンとの複合混合物からなる。1個のM6P基(モノ-M6P)を有する高マンノースN-グリカンを含むrhGAAは、低い(約6,000nM)親和性でCIMPRに結合するが、同一のN-グリカン上に2個のM6P基(ビス-M6P)を含むrhGAAは、高い(約2nM)親和性で結合する。非リン酸化グリカン、モノ-M6Pグリカンおよびビス-M6Pグリカンの代表的な構造を
図1Aに示す。マンノース-6-P基を
図1Bに示す。リソソーム内に入ると、rhGAAは蓄積グリコーゲンを酵素的に分解することができる。しかしながら、従来のrhGAAはM6P担持グリカンおよびビス-M6P担持グリカンの総レベルが低く、そのため、標的筋細胞はリソソームへのrhGAAの下位送達(inferior delivery)を生じにくい。これらの従来の製品中のrhGAA分子の大部分はリン酸化N-グリカンを有しておらず、そのためCIMPRに対する親和性を欠如している。非リン酸化高マンノースグリカンはマンノース受容体によっても除去され得、ERTの非生産的クリアランスが起こる(
図2)。
【0009】
rhGAA上には、ガラクトースおよびシアル酸を含む複合炭水化物であるその他のタイプのN-グリカンも存在する。複合体N-グリカンはリン酸化されていないことから、この複合体N-グリカンはCIMPRに対する親和性を有しない。しかしながら、露出しているガラクトース残基を有する複合型N-グリカンは、肝臓の肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体に対する中~高の親和性を有し、rhGAAの迅速な非生産的クリアランスが起こる(
図2)。
【0010】
GAAまたはrhGAAのグリコシル化は、M6P基を生成するために、Canfieldらの米国特許第6,534,300号明細書で説明されているホスホトランスフェラーゼおよび露出酵素(uncovering enzyme)によりin vitroで酵素的に改変され得る。酵素的グリコシル化を適切に制御することはできず、望ましくない免疫学的特性および薬理学的特性を有するrhGAAが生じる。酵素的改変rhGAAは、全てがホスホトランスフェラーゼ/露出酵素によりin vitroで潜在的におよび酵素的にリン酸化され得る高マンノースN-グリカンのみを含む場合があり、1個のGAA当たり平均5~6個のM6P基を含む場合がある。GAAのin vitroでの酵素的処理によって生じるグリコシル化パターンは、付加的な末端マンノース残基(特に非リン酸化末端マンノース残基)が改変rhGAAの薬物動態に悪影響を及ぼすことから問題である。そのような酵素的改変産物がin vivoで投与される場合、このマンノース基は、GAAの非生産的クリアランスを増加させ、免疫細胞による酵素的改変GAAの取り込みを増加させ、心筋または骨格筋の筋細胞等の標的組織に到達するGAAの少なさに起因してrhGAAの治療効果を低下させる。例えば、末端非リン酸化マンノース残基は、酵素的改変rhGAAの迅速なクリアランスおよびrhGAAの標的組織へのターゲティングの低下をもたらす肝臓および脾臓中でのマンノース受容体用のリガンドとして知られている。更に、末端非リン酸化マンノース残基を有する高マンノースN-グリカンを有する酵素的改変GAAのグリコシル化パターンは、この酵素的改変rhGAAに対する免疫応答またはアレルギー応答(例えば、命に関わる重度のアレルギー(アナフィラキシー)反応または過敏性反応)を引き起こすリスクを増大させる酵母、カビおよび機能内で起こる糖タンパク質のグリコシル化パターンに類似している。
【0011】
上記で説明したように、Lumizyme(登録商標)のような従来のrhGAA製品は、モノリン酸化グリカンのレベルが低く、ビスリン酸化グリカンは更に低い。ポンペ病の治療が有効であるには、rhGAAを筋細胞中のリソソームへと送達する必要がある。従来のrhGAAでのモノ-M6Pターゲティング基およびビス-M6Pターゲティング基の低い総量により、CIMPRによる細胞取り込みおよびリソソーム送達が制限され、そのため、従来の酵素補充療法が非効率になる。例えば、20mg/kg以上の用量での従来のrhGAA製品はポンペ病の一部の態様を寛解させるが、多くの標的組織(特に骨格筋)中の蓄積グリコーゲンを十分に低減させて疾患の進行を逆転させることはできない。
【0012】
従来の酵素補充療法のリソソームへの送達の非効率性に起因して、そのような療法は、GAAに対する免疫応答の発生等のその他の問題を伴うことが多い。従来のrhGAA中のGAAの大部分は、モノ-M6Pまたはビス-M6Pを担持するグリカンを含まず、このグリカンはrhGAAの標的を筋細胞に設定する。対象の免疫系は、この過剰な非リン酸化GAAに曝露されており、GAAを認識する有害な免疫応答を生じ得る。標的組織に侵入せず、かつリソソームに送達されない非リン酸化GAAに対する免疫応答の誘導により、投与されたrhGAAの免疫学的不活性化に起因する処置失敗のリスクが増大し、患者がrhGAA処置に対する有害な自己免疫反応またはアレルギー反応を経験するリスクが増大する。本発明に係るrhGAAは、この標的が設定されていない非リン酸化rhGAAを有意に少なく含み、そのため、この非リン酸化rhGAAへの患者の免疫系の曝露が低減する。
【0013】
ロジスティック的に、より大きい用量は、対象者およびこの対象者を処置する医療専門家に更なる負担(例えば、rhGAAを静脈内投与するのに必要な注入時間が延びる)をかける。これは、従来のrhGAAが、筋細胞上のCIMPRを標的としない非リン酸化rhGAAをより高い含有量で含むからである。筋細胞上のCIMPRに結合してリソソームに侵入しないrhGAAは、リソソームでグリコーゲンを酵素的に分解しない。従来のrhGAAおよび本発明に係るrhGAAを同じ用量で投与する場合、本発明に係る組成物中のより多くのrhGAAが筋細胞上のCIMPRに結合し、次いでリソソームに送達される。本発明のrhGAAは、より少ない量のrhGAAを投与するが、同じまたはより多いrhGAAをリソソームに送達する選択肢を医師に提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
Myozyme(登録商標)、Lumizyme(登録商標)またはアルグルコシダーゼアルファ等の従来のrhGAAの製造に使用される現在の製造プロセスでは、細胞炭水化物の処理が当然のことながら複雑であり、操作することが極度に困難であることから、M6Pまたはビス-M6Pの含有量は有意に増加しなかった。従来のrhGAA製品のこれらの欠点を考慮して、本発明者らは、効率的にrhGAAの標的を筋細胞に設定してrhGAAをリソソームへ送達し、投与されたrhGAAの非生産的クリアランスを最小化し、その結果、より生産的にrhGAAの標的を筋組織に設定する方法を探すことに努め、それを特定した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来の形態のrhGAAのターゲティングおよび投与と関連する問題ならびにそのように良好に標的設定された形態のrhGAAの製造と関連する困難に対して、本発明者らは、従来のrhGAA組成物と比べてM6Pグリカンおよびビス-M6Pグリカンの含有量が高いことにより、筋組織中においてより効率的にCIMPRを標的とし、かつリソソームに送達されるrhGAAを製造するための手段を研究および開発した。更に、本発明のrhGAAは、非標的組織によるrhGAAの非生産的クリアランスを最小化する、十分に処理された複合型N-グリカンを有する。
【0016】
Lumizyme(登録商標)等の従来のrhGAA製品を使用する現在の酵素補充処置と関連する問題を考慮して、熱心な研究および調査を経て、本発明者らは、筋細胞上のCIMPRを標的とし、かつ次いでrhGAAをリソソームに送達するモノ-M6Pグリカンおよびビス-M6Pグリカンの総含有量が有意に高いCHO細胞中でrhGAAを製造する方法を開発した。
【0017】
この方法により製造されたrhGAAはまた、ポンペ病を有する対象への投与後に標的組織取り込みを増加させ、かつ非生産的クリアランスを低減させるrhGAAの全体的なグリコシル化パターンによる有利な薬物動態学的特性も有する。本発明者らは、ATB-200と表されるrhGAAにより例示されるように、本発明のrhGAAが、Lumizyme(登録商標)等の従来のrhGAAと比べて骨格筋組織の標的化でより強力であり、より効率的であることを示す。本発明に係るrhGAAは、ポンペ病を有する患者において筋組織を生産的に標的とし、
図2に示すようにrhGAAの非生産的クリアランスを低減させる優れた能力を有する。
【0018】
本発明に係る優れたrhGAAをシャペロンにより更に完成させることができ、またはシャペロンと組み合わせることができ、またはIGF2におけるCIMPRに結合する部分等の筋組織中のCIMPRを標的とするその他の基にコンジュゲートさせることができる。下記の実施例は、本発明のrhGAA(ATB-200 rhGAAにより例示される)が、従来のrhGAA製品Lumizyme(登録商標)を使用する既存のレジメンと比較して骨格筋中で有意に良好なグリコーゲンクリアランスを提供することにより、酵素補充療法の既存の標準治療を超えることを示す。
【0019】
本出願のファイルは、カラーで制作された少なくとも1つの図面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、非リン酸化高マンノースグリカン、モノ-M6Pグリカンおよびビス-M6Pグリカンを示す。
図1Bは、M6P基の化学構造を示す。
【
図1B】
図1Aは、非リン酸化高マンノースグリカン、モノ-M6Pグリカンおよびビス-M6Pグリカンを示す。
図1Bは、M6P基の化学構造を示す。
【
図2A】
図2Aは、M6Pを担持するグリカンによるrhGAAの標的組織(例えばポンペ病を有する対象の筋組織)への生産的ターゲティングを示す。
図2Bは、非標的組織(例えば肝臓および脾臓)に対する非生産的薬剤クリアランスまたは非標的組織への非M6Pグリカンの結合による非生産的薬剤クリアランスを説明する。
【
図2B】
図2Aは、M6Pを担持するグリカンによるrhGAAの標的組織(例えばポンペ病を有する対象の筋組織)への生産的ターゲティングを示す。
図2Bは、非標的組織(例えば肝臓および脾臓)に対する非生産的薬剤クリアランスまたは非標的組織への非M6Pグリカンの結合による非生産的薬剤クリアランスを説明する。
【
図3A】
図3Aは、CIMPR受容体(IGF2受容体としても知られている)およびこの受容体のドメインを図示する。
図3Bは、ビス-M6Pを担持するグリカンおよびモノ-M6Pを担持するグリカンのCIMPRに対する結合親和性(nモル濃度)、高マンノース型グリカンのマンノース受容体に対する結合親和性、ならびに脱シアル化複合体グリカンのアシアロ糖タンパク質受容体に対する結合親和性を示す表である。M6Pを担持するグリカンおよびビス-M6Pを担持するグリカンを有するrhGAAは、筋肉の標的細胞上のCIMPRに生産的に結合することができる。高マンノースグリカンおよび脱シアル化グリカンを有するrhGAAは、対応する受容体を担持する非標的細胞に非生産的に結合する可能性がある。
【
図3B】
図3Aは、CIMPR受容体(IGF2受容体としても知られている)およびこの受容体のドメインを図示する。
図3Bは、ビス-M6Pを担持するグリカンおよびモノ-M6Pを担持するグリカンのCIMPRに対する結合親和性(nモル濃度)、高マンノース型グリカンのマンノース受容体に対する結合親和性、ならびに脱シアル化複合体グリカンのアシアロ糖タンパク質受容体に対する結合親和性を示す表である。M6Pを担持するグリカンおよびビス-M6Pを担持するグリカンを有するrhGAAは、筋肉の標的細胞上のCIMPRに生産的に結合することができる。高マンノースグリカンおよび脱シアル化グリカンを有するrhGAAは、対応する受容体を担持する非標的細胞に非生産的に結合する可能性がある。
【
図4A】
図4Aおよび
図4Bはそれぞれ、Lumizyme(登録商標)およびMyozyme(登録商標)のCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示す。破線はM6P溶出勾配を意味する。M6Pによる溶出により、M6P含有グリカンを介してCIMPRに結合したGAA分子が置き換えられる。
図4Aに示すように、Lumizyme(登録商標)ではGAA活性の78%がM6Pの添加前に溶出した。
図4Bは、GAA Myozyme(登録商標)活性の73%がM6Pの添加前に溶出したことを示す。Lumizyme(登録商標)またはMyozymeのそれぞれにおいて、rhGAAのわずか22%または27%がM6Pにより溶出した。これらの図は、これら2種の従来のrhGAA製品中のrhGAAの大部分が、標的筋組織中のCIMPRを標的とするのに必要なM6Pを有するグリカンを欠くことを示す。
【
図4B】
図4Aおよび
図4Bはそれぞれ、Lumizyme(登録商標)およびMyozyme(登録商標)のCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示す。破線はM6P溶出勾配を意味する。M6Pによる溶出により、M6P含有グリカンを介してCIMPRに結合したGAA分子が置き換えられる。
図4Aに示すように、Lumizyme(登録商標)ではGAA活性の78%がM6Pの添加前に溶出した。
図4Bは、GAA Myozyme(登録商標)活性の73%がM6Pの添加前に溶出したことを示す。Lumizyme(登録商標)またはMyozymeのそれぞれにおいて、rhGAAのわずか22%または27%がM6Pにより溶出した。これらの図は、これら2種の従来のrhGAA製品中のrhGAAの大部分が、標的筋組織中のCIMPRを標的とするのに必要なM6Pを有するグリカンを欠くことを示す。
【
図5】rhGAAをコードするDNAによるCHO細胞の形質転換用のDNA構築物である。rhGAA(配列番号4)をコードするDNA構築物でCHO細胞を形質転換させた。
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、MyozymeおよびATB-200 rhGAAのCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示す。
図6Bから明らかなように、ATB-200 rhGAA中のrhGAAの約70%がM6Pを含んでいた。
【
図6B】
図6Aおよび
図6Bは、MyozymeおよびATB-200 rhGAAのCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示す。
図6Bから明らかなように、ATB-200 rhGAA中のrhGAAの約70%がM6Pを含んでいた。
【
図7A】ATB-200 rhGAAの精製、実施形態1および2である。
【
図7B】ATB-200 rhGAAの精製、実施形態1および2である。
【
図8】Lumizyme(登録商標)およびATB-200.rhGAAのPolywax溶出プロファイルである。
【
図9】BP-rhGAA、ATB200-1およびATB200-2として識別されたATB-200 rhGAAの3種の異なる調製物と比較したLumizyme(登録商標)のN-グリカン構造の概要である。
【
図10A】
図10Aは、ATB-200 rhGAAのCIMPR結合親和性(左側の線)とLumizyme(登録商標)のCIMPR結合親和性(右側の線)とを比較する。
図10Bは、Lumizyme(登録商標)およびATB-200 rhGAAのビス-M6P含有量を説明する。
【
図10B】
図10Aは、ATB-200 rhGAAのCIMPR結合親和性(左側の線)とLumizyme(登録商標)のCIMPR結合親和性(右側の線)とを比較する。
図10Bは、Lumizyme(登録商標)およびATB-200 rhGAAのビス-M6P含有量を説明する。
【
図11A】
図11Aは、様々なGAA濃度において正常な線維芽細胞中でATB-200 rhGAA活性(左側の線)とLumizyme(登録商標)rhGAA活性(右側の線)とを比較する。
図11Bは、様々なGAA濃度においてポンペ病を有する対象からの線維芽細胞中でATB-200 rhGAA活性(左側の線)とLumizyme(登録商標)rhGAA活性(右側の線)とを比較する。
図11Cは、正常な対象からの線維芽細胞の(K
uptake)とポンペ病を有する対象からの線維芽細胞の(K
uptake)とを比較する。
【
図11B】
図11Aは、様々なGAA濃度において正常な線維芽細胞中でATB-200 rhGAA活性(左側の線)とLumizyme(登録商標)rhGAA活性(右側の線)とを比較する。
図11Bは、様々なGAA濃度においてポンペ病を有する対象からの線維芽細胞中でATB-200 rhGAA活性(左側の線)とLumizyme(登録商標)rhGAA活性(右側の線)とを比較する。
図11Cは、正常な対象からの線維芽細胞の(K
uptake)とポンペ病を有する対象からの線維芽細胞の(K
uptake)とを比較する。
【
図11C】
図11Aは、様々なGAA濃度において正常な線維芽細胞中でATB-200 rhGAA活性(左側の線)とLumizyme(登録商標)rhGAA活性(右側の線)とを比較する。
図11Bは、様々なGAA濃度においてポンペ病を有する対象からの線維芽細胞中でATB-200 rhGAA活性(左側の線)とLumizyme(登録商標)rhGAA活性(右側の線)とを比較する。
図11Cは、正常な対象からの線維芽細胞の(K
uptake)とポンペ病を有する対象からの線維芽細胞の(K
uptake)とを比較する。
【
図12A】
図12Aは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのアルグルコシダーゼアルファまたは5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の心筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。
図12Bは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのLumizyme(登録商標)または5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の四頭筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。
図12Cは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのLumizyme(登録商標)または5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の三頭筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。ATB-200 rhGAAは、陰性コントロールおよびLumizyme(登録商標)と比較して四頭筋および三頭筋中で有意なグリコーゲン低減を生じた。
【
図12B】
図12Aは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのアルグルコシダーゼアルファまたは5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の心筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。
図12Bは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのLumizyme(登録商標)または5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の四頭筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。
図12Cは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのLumizyme(登録商標)または5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の三頭筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。ATB-200 rhGAAは、陰性コントロールおよびLumizyme(登録商標)と比較して四頭筋および三頭筋中で有意なグリコーゲン低減を生じた。
【
図12C】
図12Aは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのアルグルコシダーゼアルファまたは5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の心筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。
図12Bは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのLumizyme(登録商標)または5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の四頭筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。
図12Cは、ビヒクル(陰性コントロール)、20mg/mlのLumizyme(登録商標)または5、10もしくは20mg/kgのATB-200 rhGAAとの接触後の三頭筋中のタンパク質に対するグリコーゲンの量を示す。ATB-200 rhGAAは、陰性コントロールおよびLumizyme(登録商標)と比較して四頭筋および三頭筋中で有意なグリコーゲン低減を生じた。
【
図13A】ATB-200 rhGAAの安定性がシャペロンAT2221の存在下で改善される。
図13Aにおける最初の左側の線は、pH7.4(血液pH)での様々な温度における折り畳まれていないATB-200 rhGAAタンパク質の割合を示す。最後の右側の線は、pH5.2(リソソームpH)での様々な温度における折り畳まれていないATB-200 rhGAAタンパク質の割合を示す。3本の中間の線は、10μg、30μgまたは100μgのAT2221シャペロンのタンパク質折り畳みへの効果を示す。これらのデータは、コントロールサンプルと比較して血液pHでATB-200 rhGAAのアンフォールディングをAT2221が防ぐことを示す。AT2221による中性pHでのTmの改善を
図13Bにまとめる。
【
図13B】ATB-200 rhGAAの安定性がシャペロンAT2221の存在下で改善される。
図13Aにおける最初の左側の線は、pH7.4(血液pH)での様々な温度における折り畳まれていないATB-200 rhGAAタンパク質の割合を示す。最後の右側の線は、pH5.2(リソソームpH)での様々な温度における折り畳まれていないATB-200 rhGAAタンパク質の割合を示す。3本の中間の線は、10μg、30μgまたは100μgのAT2221シャペロンのタンパク質折り畳みへの効果を示す。これらのデータは、コントロールサンプルと比較して血液pHでATB-200 rhGAAのアンフォールディングをAT2221が防ぐことを示す。AT2221による中性pHでのTmの改善を
図13Bにまとめる。
【
図14】ATB-200 rhGAAとシャペロンAT2221との組合せにより、Lumizyme(登録商標)およびAT2221による処置、またはAT2221シャペロンなしのLumizyme(登録商標)もしくはATB200 rhGAAのいずれかのコントロールによる処置と比べて、GAAノックアウトマウスにおいて有意に良好なグリコーゲンクリアランスが生じることを示す表である。
【
図15】Lumizyme、ATB-200 rhGAA、またはATB-200 rhGAAおよび様々な濃度のAT2221シャペロンによる処置後の四頭筋中の残留グリコーゲンである。
【
図16A】ATB-200+ミグルスタット(AT2221)で処置したマウスにおける骨格筋病理の、ERTのみで処理したマウスを超える改善である。従来のrhGAAまたはATB-200 rhGAAとミグルスタット(AT-2221)とで処置したGAA KOマウスからの筋組織のPASグリコーゲン染色(
図16A)およびEM(
図16B)である。
図16C;LAMP-1マーカーによるリソソーム増殖の評価である。
図16Dは、I型筋繊維およびII型筋繊維の同定である。
【
図16B】ATB-200+ミグルスタット(AT2221)で処置したマウスにおける骨格筋病理の、ERTのみで処理したマウスを超える改善である。従来のrhGAAまたはATB-200 rhGAAとミグルスタット(AT-2221)とで処置したGAA KOマウスからの筋組織のPASグリコーゲン染色(
図16A)およびEM(
図16B)である。
図16C;LAMP-1マーカーによるリソソーム増殖の評価である。
図16Dは、I型筋繊維およびII型筋繊維の同定である。
【
図16C】ATB-200+ミグルスタット(AT2221)で処置したマウスにおける骨格筋病理の、ERTのみで処理したマウスを超える改善である。従来のrhGAAまたはATB-200 rhGAAとミグルスタット(AT-2221)とで処置したGAA KOマウスからの筋組織のPASグリコーゲン染色(
図16A)およびEM(
図16B)である。
図16C;LAMP-1マーカーによるリソソーム増殖の評価である。
図16Dは、I型筋繊維およびII型筋繊維の同定である。
【
図16D】ATB-200+ミグルスタット(AT2221)で処置したマウスにおける骨格筋病理の、ERTのみで処理したマウスを超える改善である。従来のrhGAAまたはATB-200 rhGAAとミグルスタット(AT-2221)とで処置したGAA KOマウスからの筋組織のPASグリコーゲン染色(
図16A)およびEM(
図16B)である。
図16C;LAMP-1マーカーによるリソソーム増殖の評価である。
図16Dは、I型筋繊維およびII型筋繊維の同定である。
【
図17A】ATB-200+ミグルスタット(AT2221)で処置したマウスにおける骨格筋病理の、ERTのみで処置したマウスを超える改善である。従来のrhGAAまたはATB-200 rhGAAとミグルスタット(AT-2221)とで処置したGAA KOマウスからの筋組織のPASグリコーゲン染色(
図17A)である。
図17B;LAMP-1マーカーによるリソソーム増殖の評価である。
【
図17B】ATB-200+ミグルスタット(AT2221)で処置したマウスにおける骨格筋病理の、ERTのみで処置したマウスを超える改善である。従来のrhGAAまたはATB-200 rhGAAとミグルスタット(AT-2221)とで処置したGAA KOマウスからの筋組織のPASグリコーゲン染色(
図17A)である。
図17B;LAMP-1マーカーによるリソソーム増殖の評価である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義:本明細書で使用する用語は、概して、本発明に関連しておよび各用語が使用される具体的な文脈において、当技術分野でのその用語の通常の意味を有する。本発明の組成物および方法ならびに本発明の組成物の製造方法および使用方法の説明において当業者に更なるガイダンスを提供するために、ある特定の用語を下記でまたは本明細書の別の箇所で論じる。
【0022】
用語「GAA」は、リソソームグリコーゲンのα-1,4-グリコシド結合およびα-1,6-グリコシド結合の加水分解を触媒する酵素であるヒト酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、ならびにGAAアミノ酸配列およびより長いGAA配列の酵素活性を発揮する断片の挿入多様体、関係多様体(relational variant)または置換多様体を意味する。用語「rhGAA」を、GAAをコードするDNAによるCHO細胞の形質転換により産生されるGAA等の合成GAAまたは組み換え産生GAAから内在性GAAを区別するために使用する。GAAをコードする例示的なDNA配列は、参照により援用されるNP_000143.2(配列番号4)である。GAAおよびrhGAAは、様々なグリコシル化パターンを有するGAA分子の混合物(例えば、グリカン上にモノ-M6P基またはビス-M6P基を担持するrhGAA分子とM6Pまたはビス-M6Pを担持しないGAA分子との混合物)を含む組成物中に存在することができる。GAAおよびrhGAAを、シャペロン等のその他の化合物により完成させることもでき、またはGAAコンジュゲートもしくはrhGAAコンジュゲート中のその他の部分に結合させることもでき、例えば、このコンジュゲートの標的をCIMPRに設定し、その後、このコンジュゲートをリソソームに送達するIGF2部分に結合させることもできる。
【0023】
グリコーゲンの蓄積を伴う障害を有するその他の動物および非ヒト動物も処置することができるが、「対象」または「患者」は好ましくはヒトである。対象は、ポンペ病またはその他のグリコーゲン貯蔵障害もしくはグリコーゲン蓄積障害を有する胎児、新生児、小児、若年または成人であることができる。処置する個体の一例は、GSD-II(例えば、乳児型GSD-II、若年型GSD-IIまたは成人発症型GSD-II)を有する個体(胎児、新生児、小児、若年、青年または成人)である。この個体は残留GAA活性を有する可能性がある、または測定可能な活性を有しない可能性がある。例えば、GSD-IIを有する個体は、正常なGAA活性の約1%未満であるGAA活性(乳児型GSD-II)、正常なGAA活性の約1~10%であるGAA活性(若年型GSD-II)、または正常なGAA活性の約10~40%であるGAA活性(成人型GSD-II)を有する可能性がある。
【0024】
用語「処置する」および「処置」は、本明細書で使用する場合、疾患と関連する1種もしくは複数種の症状の寛解、疾患の1種もしくは複数種の症状の発症の予防もしくは遅延、および/または疾患の1種もしくは複数種の症状の重症度もしくは頻度の緩和を意味する。例えば、処置は、心臓の状態の改善(例えば、拡張末期および/もしくは収縮末期の容積の増加、または典型的にはGSD-IIで見られる進行性心筋症の低減、寛解もしくは予防)または肺機能の改善(例えば、ベースライン活量を超える啼泣時肺活量の増加および/もしくは啼泣中の酸素飽和度の正常化);神経発達および/または運動技能の改善(例えばAIMSスコアの上昇);疾患を患う個体の組織中のグリコーゲンレベルの低下;またはこれらの効果の任意の組合せを意味することができる。好ましい一実施形態では、処置は心臓の状態の改善を含み、特にGSD-II関連心筋症の軽減または予防における心臓の状態の改善を含む。
【0025】
用語「改善する」、「増加させる」または「低減させる」は、本明細書で使用する場合、本明細書で説明する処置の開始前の同じ個体での測定値または本明細書で説明する処置の非存在下でのコントロール個体(もしくは複数のコントロール個体)での測定値等のベースライン測定値と相対的な値を示す。コントロール個体とは、処置する個体と同じ形態のGSD-II(乳児発症、若年発症または成人発症のいずれか)に罹患している個体のことであり、この個体は、(処置する個体における疾患のステージとコントロール個体における疾患のステージとが同等であることを保証するために)処置する個体とほぼ同じ年齢である。
【0026】
用語「精製された」は、本明細書で使用する場合、単離される物質が得られる天然の物質を含む無関係な物質(即ち夾雑物)の存在を低減または除去する条件下で単離されている物質を意味する。例えば、精製されたタンパク質は、この精製されたタンパク質が細胞中で関連するその他のタンパク質または核酸を好ましくは実質的に含まず、精製された核酸分子は、この精製された核酸分子が細胞内で共に見出されるタンパク質またはその他の無関係の核酸分子を好ましくは実質的に含まない。本明細書で使用する場合、用語「実質的に含まない」を、物質の分析試験との関係において操作的に(operationally)使用する。好ましくは、夾雑物を実質的に含まない精製物質は少なくとも95%純粋であり、より好ましくは少なくとも97%純粋であり、より好ましくは更に少なくとも99%純粋である。純度を、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、イムノアッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、酵素アッセイおよび当技術分野で既知のその他の方法により評価することができる。具体的な実施形態では、精製されたとは、夾雑物のレベルが、ヒトまたは非ヒト動物への安全な投与のために規制当局にとって許容可能なレベルを下回ることを意味する。クロマトグラフィーサイズ分離、アフィニティークロマトグラフィー、または陰イオン交換クロマトグラフィーによる等の当技術分野で既知の方法を使用して、CHO細胞から組み換えタンパク質を単離または精製することができる。
【0027】
用語「遺伝子改変された」または「組み換え」は、特定の遺伝子産物(例えばrhGAAまたはATB-200 rhGAA)をコードするコード配列を、このコード配列の発現を制御する調節エレメントと一緒に含む核酸の導入後に、この特定の遺伝子産物を発現する細胞(例えばCHO細胞)を意味する。核酸の導入を、遺伝子ターゲティングおよび相同組み換え等の当技術分野で既知の任意の方法により達成することができる。本明細書で使用する場合、この用語はまた、例えば遺伝子活性化技術により、通常は発現しない内在性の遺伝子または遺伝子産物を発現または過剰発現するように操作されている細胞も含む。
【0028】
「ポンペ病」は、リソソームグリコーゲン代謝を損なう不十分な酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)活性を特徴とする常染色体劣性LSDを意味する。酵素欠乏によりリソソームグリコーゲンが蓄積し、その結果、骨格筋の衰弱が進行し、心機能が低下し、呼吸不全が起こり、および/または疾患の後期ではCNS機能障害が起こる。GAA遺伝子における遺伝子変異により、発現の低下、または最終的には疾患に到る安定性および/もしくは生物学的活性の変更を有する酵素の変異型の生成のいずれかが起こる。(一般に、Hirschhorn R,1995,Glycogen Storage Disease Type II:Acid α-Glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,Scriver et al.,eds.,McGraw-Hill,New York,7th ed.,pages 2443-2464を参照されたい)。ポンペ病の3種の認識された臨床形態(乳児、若年および成人)は、残留α-グルコシダーゼ活性のレベルと相関関係にある(Reuser A J et al.,1995,Glycogenosis Type II(Acid Maltase Deficiency),Muscle&Nerve Supplement 3,S61-S69)。乳児型ポンペ病(I型またはA型)は最も一般的で最も重度であり、生後2年以内での発育不全、全身性の筋緊張低下、心肥大および心肺不全を特徴とする。若年型ポンペ病(II型またはB型)は中間の重症度であり、心拡大がない優性の筋肉症状を特徴とする。若年型ポンペの個体は通常、呼吸不全により20歳に達する前に死亡する。成人型ポンペ病(III型またはC型)は、10代または60代の後半で緩徐進行性のミオパシーとして現れることが多い(Felicia K J et al.,1995,Clinical Variability in Adult-Onset Acid Maltase Deficiency:Report of Affected Sibs and Review of the Literature,Medicine 74,131-135)。ポンペでは、α-グルコシダーゼが、グリコシル化、リン酸化およびタンパク質分解処理により翻訳後に広範囲にわたって改変されることが分かっている。最適なグリコーゲン触媒作用には、リソソーム中におけるタンパク質分解により110キロダルトン(kids)の前駆体の76および70kidsの成熟型への変換が必要である。本明細書で使用する場合、用語「ポンペ病」は全てのタイプのポンペ病を意味する。本明細書で開示する製剤および投与レジメンを、例えばI型、II型またはIII型のポンペ病の処置に使用することができる。
【0029】
本発明の非限定的実施形態
モノ-マンノース-6-リン酸(M6P)またはビス-M6Pを担持するN-グリカンを含むrhGAAを、Lumizyme(登録商標)(アルグルコシダーゼアルファ;CAS420794-05-0)により例示される従来のrhGAAと比べて多量に含む、CHO細胞に由来するrhGAA組成物。本発明に係る例示的rhGAA組成物は、実施例で説明するATB-200(ATB-200、ATB-200またはCBP-rhGAAと表される場合もある)である。本発明のrhGAA(ATB-200)は、高い親和性(KD約2~4nM)でCIMPRに結合し、ポンペ線維芽細胞および骨格筋筋芽細胞によって効率的に内在化される(Kuptake約7~14nM)ことが分かっている。ATB-200がin vivoで特性決定され、現在のrhGAA ERT(t1/2約60分)と比べて見かけ上の血漿中半減期が短い(t1/2約45分)ことが分かった。
【0030】
rhGAAのアミノ酸配列は、配列番号1、3または4に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、95%もしくは99%同一であることができ、または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個もしくはより多くの欠失、置換もしくは付加を含むことができる。本発明のGAAまたはrhGAAのいくつかの実施形態、例えばATB-200 rhGAAでは、GAAまたはrhGAAは、配列番号1または3の野生型GAAアミノ酸配列等の野生型GAAアミノ酸配列を含むことができる。その他の非限定的実施形態では、rhGAAは、野生型GAA中に存在するアミノ酸残基の一部を含み、この一部は、野生型GAAにおいて基質結合用および/または基質還元用の活性部位を形成するアミノ酸残基を含む。一実施形態では、rhGAAは、この遺伝子の9種の観測したハプロタイプの内の最も優性なものでコードされるグルコシダーゼアルファ(ヒト酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA)である)である。ATB-200 rhGAA等の本発明のrhGAAは、受託番号AHE24104.1(GI:568760974)で示され、かつ米国特許第8,592,362号明細書を参照することにより援用されるアミノ酸配列(配列番号1)等のヒトアルファグルコシダーゼのアミノ酸配列またはNP_000143.2のアミノ酸配列(配列番号4)と90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。GAAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列もそれぞれ配列番号2および3で示す。このアミノ酸配列の多様体として、下記のGAAアミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはより多くのアミノ酸の欠失、挿入または置換を有するものも挙げられる。GAAおよびそのような多様体ヒトGAAをコードするポリヌクレオチド配列も考えられ、このポリヌクレオチド配列を、本発明に係るrhGAAを組み換えにより発現するために使用するこができる。
【0031】
様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはアラインメントプログラム(例えば、GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin,Madison,Wis.)の一部として利用可能であり、例えばデフォルト設定で使用することができるFASTAまたはBLAST)を使用して、2種の配列間の同一性を算出することができる。例えば、本明細書で説明する特定のポリペプチドと少なくとも70%、85%、90%、95%、98%または99%の同一性を有し、かつ好ましくは実質的に同じ機能を示すポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが考えられる。別途指定しない限り、類似性スコアはBLOSUM62の使用に基づくであろう。BLASTPを使用する場合、類似性の割合はBLASTP陽性スコアに基づき、配列同一性の割合はBLASTP同一性スコアに基づく。BLASTP「同一性」は、同一である高スコア配列対における総残基の数および割合を示し、BLASTP「陽性」は、アラインメントスコアが正の値を有し、かつ互いに類似している残基の数および割合を示す。本開示は、本明細書で開示するアミノ酸配列に対するこれらの程度の同一性もしくは類似性または任意の中程度の同一性もしくは類似性を有するアミノ酸配列を意図し、かつ包含する。類似のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列は遺伝暗号を使用して推定され、このポリヌクレオチド配列を従来の手段により得ることができ、特に、遺伝暗号を使用するアミノ酸配列の逆翻訳により得ることができる。
【0032】
好ましくは、本発明に係る組成物中の総rhGAAの70、65、60、55、45、40、35、30、25、20、15、10または5%以下が、M6Pもしくはビス-M6Pを担持するN-グリカンを欠いているか、またはカチオン非依存性マノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合する能力を欠いている。あるいは、この組成物中のrhGAAの30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99%、<100%またはより多くが、M6Pを担持するN-グリカンおよび/もしくはビス-M6Pを担持するN-グリカンを少なくとも1個含むか、またはCIMPRに結合する能力を有する。
【0033】
本発明のrhGAA組成物中のrhGAA分子は、このrhGAAb分子のグリカン上に1個、2個、3個または4個のM6P基を有することができる。例えば、rhGAA分子上の少なくとも1個のN-グリカンがM6Pを担持することができる(モノ-リン酸化)か、単一のN-グリカンが2個のM6P基を担持することができる(ビス-リン酸化)か、または同じrhGAA分子上の2個の異なるN-グリカンが共通のM6P基を担持することができる。このrhGAA組成物中のrhGAA分子はまた、M6P基を担持していないN-グリカンも有することができる。別の実施形態では、平均して、N-グリカンは3mol/mol超のM6Pと4mol/mol超のシアル酸とを含む。平均してrhGAA上の総グリカンの少なくも約3、4、5、6、7、8、9または10%がモノ-M6Pグリカンの形態であることができ、例えば総グリカンの約6.25%が単一のM6P基を担持することができ、平均してrhGAA上の総グリカンの少なくとも約0.5、1、1.5、2.0、2.5、3.0%がビス-M6Pグリカンの形態であり、平均して本発明の総rhGAAの25%未満が、CIMPRに結合するリン酸化グリカンを含まない。
【0034】
本発明に係るrhGAA組成物は、M6Pを担持するN-グリカンの平均含有量が0.5~7.0mol/mol rhGAAの範囲であることができ、または0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5もしくは7.0mol/mol rhGAA等の部分範囲のあらゆる中間値を有することができる。実施例で示すように、本発明のrhGAAを分画してrhGAA上のM6P担持グリカンまたはビス-M6P担持グリカンの平均数が異なるrhGAA組成物を生成し、それにより、特定の画分を選択することにより、または様々な画分を選択的に組み合わせることにより、標的組織中のリソソームへのrhGAAターゲティングの更なるカスタマイズを可能にすることができる。
【0035】
rhGAA上のN-グリカンの最大60%が完全にシアル化され得、例えば、このN-グリカンの最大10%、20%、30%、40%、50%または60%が完全にシアル化され得る。いくつかの実施形態では、rhGAA組成物中の総N-グリカンの4~20%が完全にシアル化されている。
【0036】
その他の実施形態では、rhGAA上のN-グリカンの5%、10%、20%または30%以下が、シアル酸と末端Galとを担持する。この範囲は全ての中間値および部分範囲を含み、例えば、本組成物中のrhGAA上の総N-グリカンの7~30%がシアル酸と末端Galとを担持することができる。
【0037】
更にその他の実施形態では、rhGAA上のN-グリカンの5、10、15、16、17、18、19または20%以下は末端Galのみを有してシアル酸を含まない。この範囲は全ての中間値および部分範囲を含み、例えば、本組成物中のrhGAA上の総N-グリカンの8~19%が末端Galのみを有することができてシアル酸を含まない。
【0038】
本発明のその他の実施形態では、本組成物中のrhGAA上の総N-グリカンの40、45、50~60%が複合型N-グリカンであり、または本組成物中のrhGAA上の総N-グリカンの1、2、3、4、5、6、7%以下がハイブリッド型N-グリカンであり、本組成物中のrhGAA上の高マンノース型N-グリカンの5、10または15%以下が非リン酸化型であり、本組成物中のrhGAA上の高マンノース型N-グリカンの少なくとも5%または10%がモノ-M6Pリン酸化型であり、および/または本組成物中のrhGAA上の高マンノース型N-グリカンの少なくとも1または2%がビス-M6Pリン酸化型である。これらの値は全ての中間値および部分範囲を含む。本発明に係るrhGAA組成物は、上記で説明した含有量範囲の内の1つまたは複数を満たすことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明のrhGAA組成物は平均して、1molのrhGAA当たり2.0~8.0個のシアル酸残基を担持することができる。この範囲は、2.0個、2.5個、3.0個、3.5個、4.0個、4.5個、5.0個、5.5個、6.0個、6.5個、7.0個、7.5個および8.0個の残基/mol rhGAA等の全ての中間値および部分範囲を含む。シアル酸残基は、アシアロ糖タンパク質受容体による非生産的クリアランスを防ぐことができる。
【0040】
好ましくは、本発明のrhGAA組成物は、CHO細胞株GA-ATB-200等のCHO細胞によりまたはそのようなCHO細胞培養物の継代培養物もしくは派生物により産生される。GAAの対立遺伝子多様体またはその他の多様体GAAのアミノ酸配列、例えば配列番号1と少なくとも90%、95%または99%同一であるアミノ酸配列を発現するDNA構築物を構築してCHO細胞中で発現させることができる。当業者は、そのようなDNA構築物の産生用のCHO細胞の形質転換に適した別のベクターを選択することができる。
【0041】
本発明者らは、CIMPRおよび細胞リソソームを標的とする優れた能力ならびにin vivoでのrhGAAの非生産的クリアランスを低減させるグリコシル化パターンを有するrhGAAを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を使用して産生し得ることを発見した。この細胞は、従来のrhGAA製品と比べて総M6Pおよび総ビス-M6Pのレベルが有意に高いrhGAAを発現するように誘導され得る。例えば実施例で説明するrhGAA ATB-200により例示されるように、この細胞により産生される組み換えヒトGAAは、筋細胞ターゲティングM6P基および筋細胞ターゲティングビス-M6P基がLumizyme(登録商標)等の従来のGAAと比べて有意に多く、CIMPRに効率的に結合して骨格筋および心筋により効率的に取り込まれることが分かっている。この組み換えヒトGAAは、有利な薬物動態プロファイルを提供し、かつin vivoでの非生産的クリアランスを低減させるグリコシル化パターンを有することも分かっている。
【0042】
本発明に係るrhGAAを医薬組成物として製剤化することができ、またはポンペ病もしくはGAAの欠乏に関連するその他の状態の処置用の薬剤の製造で使用することができる。本組成物を、生理学的に許容される担体または添加剤と共に製剤化することができる。この担体および組成物は無菌であることができ、その他に投与様式に適合することができる。
【0043】
薬学的に許容される適切な担体として、水、塩溶液(例えばNaCl)、生理食塩水、緩衝生理食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアガム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロースまたはデンプン、糖、例えばマンニトール、スクロース等、ブドウ糖、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等ならびにこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。医薬調製物を必要に応じて補助剤と混合することができ、例えば、ポリソルベート80のようなポリソルベート等の界面活性剤、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香味料および/または芳香物質等と混合することができ、これらは活性化合物と有害に反応しない。好ましい実施形態では、静脈内投与に適した水溶性担体が使用される。
【0044】
本組成物または薬剤は、必要に応じて少量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤を含むこともできる。本組成物は、液体溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤または粉末であることができる。本組成物を、従来の結合剤および担体(例えばトリグリセリド)と共に坐薬として製剤化することもできる。経口製剤は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含むことができる。好ましい実施形態では、IV注入によりrhGAAを投与する。
【0045】
本組成物または薬剤を、ヒトへの投与に適した医薬組成物として通常の手順に従って製剤化することができる。例えば、好ましい実施形態では、静脈内投与用の組成物は無菌等張水性緩衝液の溶液である。必要に応じて、本組成物は、注射の部位での痛みを和らげるために可溶化剤および局所麻酔薬を含むこともできる。通常、成分は別々にまたは単位剤形中で一緒に混合されて供給され、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたは小袋等の密封された容器中の凍結乾燥粉末または水フリー濃縮物として供給される。本組成物を注入により投与する場合、本組成物を、無菌の医薬グレードの水、生理食塩水またはブドウ糖/水を含む注入ボトルにより分注することができる。本組成物を注射により投与する場合、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルを、投与前に成分が混合され得るように提供することができる。
【0046】
rhGAAを中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩として、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するもの等の遊離アミノ基により形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するもの等の遊離カルボキシル基により形成される塩が挙げられる。
【0047】
rhGGA(またはGAAを含む組成物もしくは薬剤)を適切な経路により投与する。一実施形態では、GAAを静脈内投与する。その他の実施形態では、GAAを、心臓または骨格筋(例えば筋肉内)等の標的組織または神経系(例えば脳中、脳室内、髄腔内への直接注射)に直接投与する。必要に応じて、複数の経路を同時に使用することができる。
【0048】
rhGAA(またはGAAを含む組成物もしくは薬剤)を、治療上有効な量(例えば、規則的な間隔で投与する場合、上記で説明したように、例えば疾患に関連する症状を改善することにより、疾患の発症を予防するもしくは遅延させることにより、および/または疾患の症状の重症度もしくは頻度も低下させることにより、疾患を処置するのに十分である投薬量)で投与する。疾患の処置において治療上有効であろう量は、疾患の影響の性質および程度に依存し得、標準的な臨床技術により決定され得る。加えて、in vitroまたはin vivoでのアッセイを任意選択で用いて、適切な投薬量範囲を容易に明らかにすることができる。用いる正確な用量は、投与経路および疾患の重症度にも依存し得、当業者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。効果的な用量を、in vitroまたは動物モデルの試験系に由来する用量応答曲線から推定することができる。好ましい実施形態では、治療上有効な量は、個体の体重1kg当たり20mg以下の酵素であり、好ましくは体重1kg当たり約1~10mgの酵素の範囲であり、更により好ましくは体重1kg当たり約10mgの酵素または体重1kg当たり約5mgの酵素である。特定の個体に有効な用量を、個体の必要性に応じて経時的に変える(増加または低減させる)ことができる。例えば、身体的疾病もしくはストレスの際には、または抗GAA抗体が存在もしくは増加するようになる場合、または疾患の症状が悪化した場合、この量を増加させることができる。
【0049】
治療上有効な量のGAA(またはGAAを含む組成物もしくは薬剤)を、疾患の影響の性質または程度に応じて規則的な間隔でかつ継続的に投与する。「規則的な間隔」での投与は、本明細書で使用する場合、治療上有効な量を(1回の用量と区別して)定期的に投与することを示す。この間隔を標準的な臨床技術により決定することができる。好ましい実施形態では、GAAを1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、1週間に1回、1週間に2回、または毎日投与する。単一の個体のための投与間隔は固定された間隔である必要はなく、個体の必要性に応じて経時的に変動され得る。例えば、身体的疾病もしくはストレスの際には、抗GAA抗体が存在もしくは増加するようになる場合、または疾患の症状が悪化した場合、用量間の間隔を短縮することができる。いくつかの実施形態では、5、10、20、50、100または200mg酵素/kg体重である治療上有効な量を、1週間に2回、1週間に1回または隔週でシャペロンと共にまたはシャペロンなしで投与する。
【0050】
本発明のGAAまたはrhGAAを後の使用のために調製することができ、例えば、単位用量のバイアルもしくはシリンジ中または静脈内投与用のボトルもしくは袋中で調製することができる。GAAまたはrhGAAと、任意選択的な添加剤またはシャペロン等のその他の活性成分またはその他の薬剤とを含むキットを包装材中に封入することができ、ポンペ病を有する患者等の処置を必要とする対象を処置するための再構成、希釈または投薬に関する説明書を添付することができる。
【0051】
GAA(またはGAAを含む組成物もしくは薬剤)を、単独でまたはシャペロン等のその他の薬剤と共に投与することができる。モノ-M6Pもしくはビス-M6Pによるグリコシル化の程度が異なるrhGAAを投与することができ、またはM6Pグリコシル化もしくはビスM6Pグリコシル化の程度が異なるrhGAAの組合せを投与することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明のrhGAA組成物を、AT2200またはAT-2221等のシャペロンと複合体化させることができ、またはこのシャペロンと混合することができる。シャペロン(「薬理学的シャペロン」と称される場合がある)とは、rhGAAと複合体化された場合またはrhGAAと共投与された場合にrhGAAの薬物動態およびその他の薬理学的特性を変更する化合物のことである。本明細書で例示する代表的なシャペロンとして、AT2221(ミグルスタット、N-ブチル-デオキシノジリマイシン)およびAT2220(ドゥボグルスタット(duvoglustat)HCl、1-デオキシノジリマイシン)が挙げられる。そのような複合体化または混合は体外または体内で生じることができ、例えば、rhGAAおよびシャペロンの別々の投薬量を投与する。例えば、本発明の活性rhGAA、この活性rhGAAの画分または誘導体のCIMPRへのターゲティングおよびその後の細胞リソソームへのターゲティングを、この活性rhGAAをドゥボグルスタット-HCl(AT2220、デオキシノジリマイシン、AT2220)またはミグルスタット(AT2221、N-ブチル-デオキシノジリマイシン)と組み合わせることにより改善することができる。下記の実施例は、シャペロンと組み合わせて本発明の良好に標的設定されたrhGAAを投与したGAAノックアウトマウスの重要な骨格筋中における有意なグリコーゲン基質低減を示す。
【0053】
本発明の別の態様は、本発明に係るrhGAAを産生するCHO細胞またはその誘導体またはその他の均等物に関係する。そのようなCHO細胞株の一例は、本明細書で説明するrhGAA組成物を産生するGA-ATB-200またはその継代培養物である。そのようなCHO細胞株は、GAAをコードするポリヌクレオチドからなる遺伝子の複数のコピー(例えば、5、10、15もしくは20またはより多くのコピー)を含むことができる。
【0054】
GAAをコードするDNA構築物でCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を形質転換させることにより、本発明の高M6P rhGAAおよび高ビス-M6P rhGAA(例えばATB-200 rhGAA)を産生することができる。CHO細胞はrhGAAの製造に既に使用されているが、CIMPRを標的とするM6Pグリカンおよびビス-M6Pグリカンの含有量が高いrhGAAを産生するように形質転換CHO細胞を培養して選択し得ることが認識されていなかった。
【0055】
驚くべきことに、本発明者らは、CHO細胞株を形質転換させ、CIMPRを標的とするM6Pまたはビス-M6Pを担持するグリカンを高含有量で含むrhGAAを産生する形質転換体を選択し、この高M6P rhGAAを安定的に発現することが可能であることを発見した。そのため、本発明の関連態様は、このCHO細胞株を製造する方法を対象とする。この方法は、GAAまたはGAA多様体をコードするDNAでCHO細胞を形質転換させることと、GAAをコードするDNAをCHO細胞の染色体に安定的に組み込み、かつGAAを安定的に発現するCHO細胞を選択することと、M6Pまたはビス-M6Pを担持するグリカンの含有量が高いGAAを発現するCHO細胞を選択することと、任意選択で、シアル酸含有量が高いN-グリカンを有し、かつ/または非リン酸化高マンノース含有量が低いN-グリカンを有するCHO細胞を選択することとを含む。
【0056】
このCHO細胞株を培養し、CHO細胞の培養物から本発明に係るrhGAA組成物を回収することにより、このCHO細胞株を使用して本発明に係るrhGAAおよびrhGAA組成物を製造することができる。
【0057】
本発明のrhGAA組成物またはその画分もしくは誘導体を有利に使用して、このrhGAA組成物を投与することにより、不十分なリソソームGAAに関連する状態、障害または疾患を有する対象を処置する。処置を必要とする対象として、グリコーゲン貯蔵症II型(ポンペ病)を有する対象、ならびにrhGAAの投与により利益を得るであろうその他の状態、障害または疾患を有する対象が挙げられる。
【0058】
下記の実施例は、本発明のrhGAA(ATB-200)が、従来のrhGAA製品と比べて有意に低い投薬量で投与された場合、骨格筋細胞に取り込まれ、CIMPRに結合し、骨格筋細胞からグリコーゲンを効率的に除去することを示す。ATB-200の静脈内投与の隔週レジメンを使用するGAAノックアウトマウスでは、骨格筋筋芽細胞中のグリコーゲンの最大75%の低減が達成された。この低減は同量のLumizyme(登録商標)によりもたらされる低減を上回っており、これは、M6Pを担持するN-グリカンおよびビス-M6Pを担持するグリカンの含有量が増大している本発明のrhGAAによりグリコーゲン基質の優れた低減がもたらされたことを示す。ターゲティングの改善に起因して、Lumizyme(登録商標)またはMyozyme(登録商標)等の従来rhGAA製品と比べて低い投薬量で本発明のrhGAA組成物の薬理および薬物動態を与えることができる。
【0059】
本発明のrhGAAを使用して、心筋、平滑筋または横紋筋からグリコーゲンを分解するか、低減させるか、また除去することができる。処置対象の骨格筋または横紋筋の例として、小指外転筋(足)、小指外転筋(手)、母趾外転筋(abductor halluces)、短母指外転筋、長母指外転筋、短内転筋、母趾内転筋、長内転筋、大内転筋、母指内転筋、肘筋、肘関節筋、膝関節筋(articularis genu)、披裂喉頭蓋筋(aryepiglotticus)、アリヨルダニクス(aryjordanicus)、耳介筋、上腕二頭筋、大腿二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、頬筋、球海綿体筋、下咽頭の収縮筋、中咽頭の収縮筋、上咽頭の収縮筋、烏口腕筋、皺眉筋、精巣挙筋、輪状甲状筋、肉様膜、深会陰横筋(deep transverse perinei)、三角筋、口角下制筋、下唇下制筋、横隔膜、二腹筋、二腹筋(前面像)、脊柱起立筋-棘筋、脊柱起立筋-腸肋筋、脊柱起立筋-最長筋、短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、小指伸筋(手)、指伸筋(手)、短指伸筋(足)、長指伸筋(足)、長母趾伸筋、示指伸筋、短母指伸筋、長母指伸筋、外腹斜筋(external oblique abdominis)、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、短小指屈筋(足)、短小指屈筋(手)、短指屈筋、長指屈筋(足)、深指屈筋、浅指屈筋、短母趾屈筋、長母趾屈筋、短母指屈筋、長母指屈筋、前頭筋、腓腹筋、下双子筋、上双子筋、オトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、薄筋、舌骨舌筋、腸骨筋、下斜筋、下直筋、棘下筋、外肋間筋、最内肋間筋、内肋間筋、内腹斜筋(internal oblique abdominis)、手の背側骨間筋、足の背側骨間筋、手の掌側骨間筋、足の底側骨間筋、棘間筋、横突間筋、舌の内在筋、坐骨海綿体筋、外側輪状披裂筋、外側翼突筋、外側直筋、広背節、口角挙筋、肛門挙筋-尾骨、肛門挙筋-腸骨尾骨筋、肛門挙筋-恥骨尾骨筋、肛門挙筋-恥骨直腸筋、肛門挙筋-恥骨膣筋、上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、上眼瞼挙筋、肩甲挙筋、口蓋帆挙筋、肋骨挙筋、頭長筋、頚長筋、足の中様筋(4)、手の中様筋、咬筋、内側翼突筋、内直筋、オトガイ筋、口蓋垂筋、顎舌骨筋、鼻筋、斜披裂筋、下頭斜筋、上頭斜筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋(A)、内閉鎖筋(B)、肩甲舌骨筋、小指対立筋(手)、母指対立筋、眼輪筋、口輪筋、舌口蓋筋、口蓋咽頭筋、短掌筋、長掌筋、恥骨筋、大胸筋、小胸筋、短腓骨筋、長腓骨筋、第三腓骨筋、梨状筋(A)、梨状筋(B)、足底筋、広頚筋、膝窩筋、後輪状披裂筋、鼻根筋、方形回内筋、円回内筋、大腰筋、小腰筋、錐体筋、大腿方形筋、腰方形筋、足底方形筋、腹直筋、前側頭直筋、外側頭直筋、大後頭直筋、小後頭直筋、大腿直筋、大菱形筋、小菱形筋、笑筋、耳管咽頭筋、縫工筋、前斜角筋、中斜角筋、最小斜角筋、後斜角筋、半膜様筋、半腱様筋、前鋸筋、下後鋸筋、上後鋸筋、ヒラメ筋、肛門括約筋、尿道括約筋、頭板状筋、頚板状筋、アブミ骨筋、胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、茎突舌筋、茎突舌骨筋、茎突舌骨筋(前面像)、茎突咽頭筋、鎖骨下筋、肋下筋、肩甲下筋、浅会陰横筋、上斜筋、上直筋、回外筋、棘上筋、側頭筋、側頭頭頂筋、大腿筋膜張筋、鼓膜張筋、口蓋帆張筋、大円筋、小円筋、甲状披裂筋および声帯筋、甲状喉頭蓋筋、甲状舌骨筋、前脛骨筋、後脛骨筋、横披裂筋、横突棘筋-多裂筋、横突棘筋-回旋筋、横突棘筋-半棘筋、腹横筋、胸横筋、僧帽筋、三頭筋、中間広筋、外側広筋、内側広筋、大頬骨筋および小頬骨筋からなる群からから選択される少なくとも1種の筋肉が挙げられる。
【0060】
本発明のGAA組成物を、1型(緩徐収縮)筋繊維もしくは2型(速収縮)筋繊維もしくはそのような筋繊維中でグリコーゲンを蓄積している対象に投与することもでき、または本発明のGAA組成物を使用して、1型(緩徐収縮)筋繊維もしくは2型(速収縮)筋繊維もしくはそのような筋繊維中でグリコーゲンを蓄積している対象を処置することができる。I型(緩徐収縮)筋または赤筋は、毛細管が密集しており、ならびにミトコンドリアおよびミオグロビンに富んでおり、筋組織に特徴的な赤色が付与される。I型筋は、より多くの酸素を担持することができ、燃料として脂肪または炭水化物を使用して有酸素活動を持続することができる。緩徐収縮繊維は、長期にわたるが小さい力で収縮する。II型(速収縮)筋は、収縮速度および生じる力の両方が異なる3種の主要なサブタイプ(IIa、IIxおおびIIb)を有する。速収縮繊維は急速かつ強力に収縮するが非常に急激に疲労し、筋収縮が有痛性になる前に無酸素性の爆発的活動を短期間だけ維持する。速収縮繊維は筋力に最も寄与し、質量の増加の可能性をより高める。IIb型は、ミトコンドリアおよびミボグロビンがわずかに密集している無酸素性で糖分解性の「白」筋である。小動物(例えば齧歯動物)ではIIB型が主要な速筋型であり、この小動物の肉の浅色を説明する。
【0061】
本発明のrhGAA組成物、その画分または誘導体を、例えば静脈内(IV)注入により全身投与することができ、または所望の部位(例えば心筋、もしくは四頭筋、三頭筋等の骨格筋、もしくは横隔膜)中に直接投与することができる。本発明のrhGAA組成物を筋細胞に投与することができ、特に筋組織、筋肉または筋群に投与することができる。例えば、そのような処置では、このrhGAA組成物を対象の四頭筋または三頭筋または横隔膜中に直接、筋肉内投与することができる。
【0062】
上述したように、本発明のrhGAA組成物、その画分または誘導体を、AT-2220(ドゥボグルスタットHCl、1-デオキシノジリマイシン)もしくはAT-2221(ミグルスタット、N-ブチル-デオキシノジリマイシン)またはこれらの塩等のシャペロンと複合体化させ、またはこのシャペロンと混合し、rhGAA投与の薬物動態を改善することができる。rhGAAおよびシャペロンを一緒にまたは別々に投与することができる。同時に投与する場合、この組成物中のGAAにシャペロンを予め組み込むことができる。あるいは、GAAおよびシャペロンを同時にまたは異なる時間で別々に投与することができる。
【0063】
AT2221の代表的な投薬量は0.25~400mg/kgの範囲であり、好ましくは0.5~200mg/kgの範囲であり、最も好ましくは2~50mg/kgの範囲である。AT2221の具体的な投薬量として、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45および50mg/kgが挙げられる。これらの投薬量を、15:1~150:1の範囲のAT2221対rhGAAのモル比でrhGAA(例えばATB-200 rhGAA)と組み合わせることができる。具体的な比として、15:1、20:1、25:1、50:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、100:1、125:1および150:1が挙げられる。rhGAAおよびAT2221を、これらの量またはモル比で、同時に、順次にまたは別々に共投与することができる。上記の範囲は、この範囲の端点の間の全ての整数値等の全ての中間の部分範囲および値を含む。
【0064】
AT2220の代表的な投薬量は0.1~120mg/kgの範囲であり、好ましくは0.25~60の範囲であり、最も好ましくは0.6~15mg/kgの範囲である。AT2220の具体的な投薬量として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25および30mg/kgが挙げられる。これらの投薬量を、15:1~150:1の範囲のAT2220対rhGAAのモル比でrhGAA(例えばATB-200 rhGAA)と組み合わせることができる。具体的な比として、15:1、20:125:1、50:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、100:1、125:1および150:1が挙げられる。rhGAAおよびAT2220を、これらの量またはモル比で、同時に、順次にまたは別々に共投与することができる。上記の範囲は、この範囲の端点の間の全ての整数値等の全ての中間の部分範囲および値を含む。
【0065】
本発明のrhGAA組成物、その画分または誘導体を使用して、組織、筋肉、筋繊維、筋細胞、リソソーム、オルガネラ、細胞内コンパートメントまたは細胞質中のグリコーゲンを代謝するか、分解するか、除去するか、またはその他に低減させることもできる。任意選択で、シャペロンまたはrhGAAに対する免疫応答を低減させる薬剤と共に、このrhGAA組成物を対象に投与することによる。
【0066】
この使用方法の別の実施形態では、本発明のrhGAA、その画分または誘導体を、任意選択でシャペロンとの組合せにおいて、または任意選択で別のターゲティング部分とのコンジュゲートとして、細胞中におけるリソソームの増殖、自食作用または開口分泌の調節を必要とする細胞、組織または対象に投与することにより、本発明のrhGAAを使用して細胞中におけるリソソームの増殖、自食作用または開口分泌を調節することができる。自食作用とは、細胞が、この細胞のリソソームの作用によりグリコーゲンまたはその他の不必要なもしくは機能不全の細胞成分を分解することを可能にする異化メカニズムのことである。この方法はまた、処置を必要とする対象にGAA組成物を全身投与または局所投与することも含むことができる。
【0067】
本発明に係るrhGAA(Lumizyme(登録商標)およびMyozymeと比較してモノ-M6Pおよびビス-M6Pが富化されており、このrhGAAのグリコシル化パターンにより付与された有利な薬物動態特性を有する)を、複合炭水化物の分解を必要とするその他の状態の処置に使用することもでき、例えば、グリコーゲンまたはrhGAAにより分解されるその他の炭水化物がリソソーム中にまたはrhGAAがアクセス可能な細胞のその他の部分(例えば細胞質)中に蓄積しているその他の障害(例えばグリコーゲン貯蔵症III型)の処置に使用することもできる。本発明に係るrhGAAを非治療目的にも使用することができ、例えば、デンプンおよびグリコーゲン等の複合炭水化物のこのモノマーへの分解を必要とする食品、飲料品、化学製品および医薬品の製造に使用することもできる。
【実施例】
【0068】
下記の非限定的な実施例は本発明の態様を例証する。
【0069】
第I節:ATB-200 rhGAAおよびその特性
既存のMyozyme(登録商標)rhGAA製品およびLumizyme(登録商標)rhGAA製品の限界
ポンペ病用に現在承認されている唯一の処置剤であるMyozyme(登録商標)およびLumizyme(登録商標)におけるrhGAAの能力を評価するために、これらのrhGAA調製物をCIMPRカラム(M6P基を有するrhGAAに結合する)上に注入し、その後に遊離M6勾配で溶出させた。画分を96ウェルプレート中に回収し、4MU-α-グルコース基質でGAA活性をアッセイした。結合したrhGAAおよび結合していないrhGAAの相対量をGAA活性に基づいて決定し、全酵素の割合として報告した。
【0070】
図5は、従来のERT(Myozyme(登録商標)およびLumizyme(登録商標))に関連する問題を説明しており、Myozyme(登録商標)中のrhGAAの73%(
図5B)およびLumizyme(登録商標)中のrhGAAの78%(
図5A)がCIMPRに結合しなかった(各図の左端のピークを参照されたい)。わずかにMyozyme(登録商標)中のrhGAAの27%およびLumizyme(登録商標)中のrhGAAの22%が、rhGAAの標的を筋細胞上のCIMPRに生産的に設定することができるM6Pを含んだ(生産的薬剤ターゲティングおよび非生産的薬剤クリアランスを説明する
図2を参照されたい)。
【0071】
Myozyme(登録商標)およびLumizyme(登録商標)の有効用量は、筋細胞上のCIMPRを標的とするM6Pを含むrhGAAの量に対応する。しかしながら、これら2種の従来製品中のrhGAAの大部分は、標的筋細胞上のCIMPR受容体を標的としない。rhGAAの大部分が筋細胞を標的としない従来のrhGAAの投与により、標的が設定されていないrhGAAに対するアレルギー反応または免疫の誘導のリスクが増大する。
【0072】
モノ-M6P担持N-グリカンまたはビス-M6P担持N-グリカンの含有量が高いATB-200 rhGAAを産生するCHO細胞の調製
rh-GAAを発現するDNAでCHO細胞をトランスフェクトした後、rhGAAを産生する形質転換体を選択した。rh-GAAをコードするDNAによるCHO細胞の形質転換用のDNA構築物を
図5に示す。rh-GAAを発現するDNAでCHO細胞をトランスフェクトした後、rhGAAを産生する形質転換体を選択した。
【0073】
トランスフェクション後、安定的に組み込まれたGAA遺伝子を含むDG44 CHO(DHFR-)細胞をヒポキサンチン/チミジン欠乏(-HT)培地)で選択した。この細胞中でのGAA発現の増幅を、メトトレキサート処理(MTX、500nM)により誘発した。GAAを多量に発現する細胞プールをGAA酵素活性アッセイにより同定し、この細胞プールを使用して、rhGAAを産生する個々のクローンを確立した。個々のクローンを半固体培地プレート上で生成し、ClonePixシステムで採取し、24ディープウェルプレートに移した。個々のクローンをGAA酵素活性に関してアッセイし、高レベルでGAAを発現するクローンを同定した。GAA活性を測定するための条件培地は、4-MU-α-グルコシダーゼ基質を使用した。GAA酵素アッセイで測定した場合にGAAをより高いレベルで産生するクローンを、生存率、増殖能、GAA産生力、N-グリカン構造および安定的なタンパク質発現に関して更に評価した。この手順を使用して、モノ-M6P N-グリカンまたはビス-M6P N-グリカンが増大しているrhGAAを発現するCHO細胞株(例えばCHO細胞株GA-ATB-200)を単離した。
【0074】
rhGAA ATB-200 rhGAAの精製
CHO細胞株GA-ATB-200を使用して、本発明に係るrhGAAの複数のバッチを振とうフラスコ中でおよび潅流バイオリアクタ中で製造し、CIMPR結合を測定した。様々な製造バッチからの精製されたATB-200 rhGAAに関して、
図6Bおよび
図7に示すCIMPR受容体結合と同様のCIMPR受容体結合(約70%)を観測し、これは、ATB-200 rhGAAが常に産生され得ることを示す。
図6Aおよび
図6Bに示すように、Myozyme(登録商標)およびLumizyme(登録商標)のrhGAAは、ATB-200 rhGAAと比べて有意に少ないCIMPR結合を示した。
【0075】
ATB-200とLumizymeとの分析比較
弱陰イオン交換(「WAX」)液体クロマトグラフィーを使用して、末端リン酸塩に従ってATB-200 rhGAAを分画した。塩の量を増加させてERTを溶出させることにより、溶出プロファイルを作成した。このプロファイルをUV(A280nm)でモニタリングした。ATB-200 rhGAAをCHO細胞から得て精製した。Lumizyme(登録商標)を商業的供給源から得た。Lumizyme(登録商標)は、その溶出プロファイルの左側で高いピークを示した。ATB-200 rhGAAは、Lumizyme(登録商標)の右側に溶出する4つの突出したピークを示した(
図8)。このことから、ATB-200 rhGAAがLumizyme(登録商標)と比べて大きい程度までリン酸化されたことが確認される。なぜなら、この評価は、CIMPR親和性ではなく末端電荷によるからである。
【0076】
ATB-200 rhGAAのオリゴ糖の特性決定
精製されたATB-200 rhGAAおよびLumizyme(登録商標)のグリカンをMALDI-TOFで評価し、各ERT上で見出される個々のグリカン構造を決定した(
図9)。ATB-200サンプルは、Lumizyme(登録商標)と比べて非リン酸化高マンノース型N-グリカンをわずかに低い量で含むことが分かった。ATB-200中のM6Pグリカンの含有量はLumizyme中と比べて高いことから、ATB-200 rhGAAの標的が筋細胞により効率的に設定される。MALDIにより決定したモノ-リン酸化構造およびビス-リン酸化構造の高い割合は、CIMPR受容体へのATB-200の有意に高い結合を示したCIMPRプロファイルと一致する。MALDI-TOF質量分析によるN-グリカン分析から、平均して、各ATB200分子は少なくとも1個の天然ビス-M6P N-グリカン構造を含むことを確認した。ATB-200 rhGAAに関するより高いビス-M6P N-グリカン含有量は、M6P受容体プレート結合アッセイでのCIMPRへの高親和性結合(K
D約2~4nM)(
図10A)と直接相関した。
【0077】
ATB-200のCIMPR親和性の特性決定
CIMPRに結合することができるrhGAAをより高い割合で有することに加えて、この相互作用の質を理解することが重要である。CIMPRプレート結合アッセイを使用して、Lumizyme(登録商標)およびATB200 rhGAAの受容体結合を測定した。簡潔に言うと、CIMPR被覆プレート使用してGAAを捕捉した。固定した受容体に様々な濃度のrhGAAを塗布し、結合していないrhGGAを洗い落とした。残存するrhGAAの量をGAA活性により測定した。
図10Aに示すように、ATB-200 rhGAAは、Lumizymeと比べて有意に多くCIMPRに結合した。
【0078】
図10Bは、従来のrhGAAであるLumizyme中のビス-M6Pグリカンおよび本発明に係るATB-200中のビス-M6Pグリカンの相対含有量を示す。Lumizyme(登録商標)の場合、平均してわずか10%の分子がビス-リン酸化グリカンを有する。これとは対照的に、ATB-200では、平均して全てのrhGAA分子が少なくとも1個のビス-リン酸化グリカンを有する。
【0079】
ATB-200 rhGAAは、線維芽細胞によりLumizymeと比べて効率的に内在化された。
正常な線維芽細胞株およびポンペ線維芽細胞株を使用して、ATB-200およびLumizyme(登録商標)のrhGAAの相対的な細胞取り込みを比較した。比較には、5~100nMの本発明に係るATB-200 rhGAAと、10~500nMの従来のrhGAA Lumizyme(登録商標)とを含めた。16時間のインキュベーション後、外部のrhGAAをTRIS塩基で不活性化し、細胞をPBSで3回洗浄した後に回収した。内在化されたGAAを4MU-α-グルコシド加水分解により測定して総細胞タンパク質に対してグラフ化し、結果を
図11に示す。
【0080】
ATB-200 rhGAAはそれぞれの細胞中に効率的に内在化されることも分かり(
図11Aおよび
図11B)、これは、ATB-200 rhGAAが正常な線維芽細胞およびポンペ線維芽細胞の両方に内在化されること、ならびに従来のLumizyme(登録商標)のrhGAAと比べて大きい程度まで内在化されることを示す。ATB-200 rhGAAは約20nMで細胞受容体を飽和させるが、Lumizyme(登録商標)では約250nMが必要である。これらの結果から推定される取り込み効率定数(K
uptake)は、
図11Cに示すように、ATB-200の場合には2~3nmであり、Lumizyme(登録商標)の場合には56nMである。これらの結果は、ATB-200 rhGAAがポンペ病を目的とした良好な標的化処置であることを示唆する。
【0081】
第II節:前臨床研究
優れたグリコシル化を有するATB-200 rhGAAは、GAA KOマウスの骨格筋におけるグリコーゲンクリアランスに関して、標準的な治療ERTと比べ有意に良好であった
上記で説明したように、組み換えヒトGAA(rhGAA)を使用する酵素補充療法(ERT)は、ポンペ病に利用可能な唯一の承認された処置である。このERTには、細胞取り込みおよびその後の細胞カチオン非依存性M6P受容体(CIMPR)によるリソソームへの送達のために、特殊な炭水化物マンノース6-リン酸(M6P)が必要である。しかしながら、現在のrhGAA ERTが含むM6Pは少量であり、そのため薬剤ターゲティングと疾患関連組織中での有効性とが制限される。本発明者らは、薬物ターゲティングの改善のために、従来のrhGAAと比べて(特に高親和性ビス-M6P N-グリカン構造と比べて)優れたグリコシル化および高いM6P含有量を有するrhGAA(ATB-200 rhGAAと表す)が得られる産生用細胞株および製造方法を開発した。ATB-200 rhGAAは高親和性(KD約2~4nM)でCI-MPRに結合し、ポンペ線維芽細胞および骨格筋筋芽細胞によりに効率的に内在化された(Kuptake約7~14nM)。
【0082】
ATB-200 rhGAAは、骨格筋中においてLumizyme(登録商標)と比べて有意に良好にグリコーゲンを除去する。GAA KOマウスにおけるグリコーゲンクリアランスに関するLumizyme(登録商標)およびATB-200 rhGAAの投与の効果を評価した。動物に2回IVボーラス投与し(隔週)、最後の用量から2週後に組織を摘出してGAA活性およびグリコーゲン含有量に関して分析した(
図12)。ATB-200 rhGAAおよびLumizyme(登録商標)rhGAAは、心臓中のグリコーゲンの除去に関して同等に有効であった(
図12A)。
図12Bおよび
図12Cに示すように、5mg/kgでのATB-200 rhGAAは、骨格筋中のグリコーゲンの低減に関して20mg/kgでのLumizyme(登録商標)rhGAAと同等であり、10および20mg/kgで投与したATB-200は、骨格筋中のグリコーゲンの除去に関してLumizyme(登録商標)と比べて有意に良好であった。
【0083】
ATB-200 rhGAAとAT2221との共投与の理論的根拠(CHART技術)
シャペロンはrhGAA ERTに結合して安定化させ、活性酵素の組織中への取り込みを増加させ、忍容性を改善し、免疫原性を潜在的に軽減する。上記に示すように、CHART(商標)を使用して、好ましくない条件下でのERTのタンパク質安定性を大幅に改善した。CHART:シャペロン改良型補充療法、参照により援用するhttp://_www.amicusrx.com/chaperone.aspx(最終アクセス2015年9月22日)を参照されたい。
図13Aおよび
図13Bに示すように、AT2221(ミグルスタット、N-ブチル-デオキシノジリマイシン)によりATB-200の安定性が有意に改善した。中性(pH7.4-血漿環境)緩衝液または酸性(pH5.2-リソソーム環境)緩衝液中での熱変性により、rhGAAタンパク質の折り畳みを37℃でモニタリングした。AT2220は、中性pH緩衝液中において24時間を超えてrhGAAタンパク質を安定化させた。
【0084】
ATB-200 rhGAAとAT2221(ミグルスタット)との共投与と比較した、Myozyme(登録商標)とミグルスタットとの共投与
12週齢のGAA KOマウスをLumizyme(登録商標)またはATB200(20mg/kg IVの隔週での4回注射)で処置し、適応がある場合にrhGAAの30分前にミグルスタットを10mg/kgのPOで共投与した。グリコーゲン測定のために、最後の酵素用量の14日後に組織を採取した。
図14は、四頭筋および三頭筋の骨格筋中のグリコーゲンの相対的低減を示す。
【0085】
薬理学的シャペロンAT2221(ミグルスタット)と共投与したATB-200 rhGAAによる組織グリコーゲンの低減
薬理学的シャペロンとATB-200 rhGAAとの組合せがin vivoでグリコーゲンクリアランスを増強することが分かった。GAA KOマウスに、隔週で20mg/kgにおいてrhGAAを2回IVボーラス投与した。薬理学的シャペロンAT2221を0、1、2および10mg/kgの投与量でrhGAAの30分前に経口投与した。ERTの最後の用量の2週後に組織を摘出し、GAA活性、グリコーゲン含有量、細胞特異的グリコーゲンおよびリソソーム増殖に関して分析した。
【0086】
図15に示すように、ATB200+シャペロンAT2221を投与した動物は、四頭筋からのグリコーゲンクリアランスの増強を示した。ATB-200 rhGAA(20mg/kg)は同じ用量のLumizyme(登録商標)と比べてグリコーゲンを低減させ、ATB-200 rhGAAを10mg/kgのAT2220と組み合わせた場合、筋肉中のグリコーゲンの正常付近のレベルを達成した。
【0087】
図16Aおよび
図16Bに示すように、グリコーゲン低減の制限を示した(大量の点状のPASシグナルで示す)従来のrhGAAとは異なり、ATB-200rhGAA単独でPASシグナルの有意な低減を示した。10mg/kgのミグルスタットとの共投与により、基質の大幅な更なる低減が起きた。TEMから、膜結合した電子密度の高い物質としてリソソーム中のグリコーゲンの大部分が明らかとなり、これらは点状のPASシグナルに対応する。ATB-200 rhGAAとミグルスタットとの共投与により、基質含有リソソームの数、サイズおよび密度が低減し、これは、ATB-200 rhGAAの筋細胞を標的とした送達およびその後のリソソームを標的とした送達を示唆する。
【0088】
上記に示した研究(2回のIVボーラス隔週注射)から、組織を、LAMP1マーカーを使用してリソソーム増殖に関して処理し、この上方制御はポンペ病の別の特徴である。LAMP:リソソーム関連膜タンパク質。上記に示した研究(2回のIVボーラスEOW注射)から、ヒラメ筋組織を、隣接区画においてLAMP1染色に関しておよび隣接区画においてI型繊維特異的抗体(NOQ7.5.4D)に関して処理し
図16Cおよび
図16D)、ATB-200 rhGAAは、従来のrhGAAと比較して大幅なLAMP1低減を生じ、WT動物で見られるレベルまで低減した
図16C)。
【0089】
加えて、効果がI型繊維(緩徐収縮、アスタリスクで印を付けている)にほとんど限定されているrhGAAとは異なり、ATB-200 rhGAAではII型(速収縮)繊維(赤色の矢頭)の一部においてもLAMP1シグナルが有意に低減した(
図16D)。重要なことに、ミグルスタットとの共投与により、II型繊維の大部分において、LAMP1増殖のATB-200により媒介される低減が更に改善された(
図16Cおよび
図16D)。結果として、LAMP1シグナルのレベルで繊維型に特異的で有意な差異は見られなかった。同様の結論が四頭筋および横隔膜から得られた(データを示さない)。
【0090】
同様に設計された別の研究では、4回の隔週IVボーラス注射により、より長い期間にわたりATB-200±AT2221の効果を調べた。心臓では、rhGAAまたはATB-200のいずれかの反復投与により、心筋細胞での主なグリコーゲン貯蔵が野生型(WT)動物で見られるレベルまで容易に除去された(
図17A)。しかしながら、心臓の平滑筋細胞中の基質は好ましくはATB-200 rhGAAにより除去されるように思われ、これは、rhGAAと比較してATB-200の潜在的に広域な生体内分布を示唆する(アスタリスクは心臓の血管の管腔を示す)。重要なことに、ミグルスタットとの共投与により、LAMP1増殖のATB-200により媒介される低減が更に改善された。
【0091】
これらの結果から、ATB-200 rhGAA(このN-グリカン上のM6Pおよびビス-M6Pのレベルがより高い)は骨格筋中のCIMPRを効率的に標的にすることが分かる。ATB-200 rhGAAはまた、in vivoでの非生産的クリアランスを最小化する、十分に処理された複合型N-グリカンも有し、in vivoでの使用に適した薬物動態特性も有し、in vivoでの重要な筋組織への良好なターゲティングも示す。これらから、ATB-200 rhGAAは筋組織中のグリコーゲンの低減に関して従来の標準的治療Lumizymeと比べて良好であること、およびATB-200 rhGAAとシャペロンAT2221との組合せにより、標的組織からのグリコーゲンの除去が更に改善されて筋肉病理が改善されることも分かる。
<本発明の更なる実施態様>
[実施態様1]
モノ-マンノース-6-リン酸(M6P)またはビス-M6Pを担持するN-グリカンを含むrhGAAを、Lumizyme(登録商標)(アルグルコシダーゼアルファ;CAS420794-05-0)により例示される従来のrhGAAと比べて多量に含む、CHO細胞に由来するrhGAA組成物。
[実施態様2]
前記rhGAAが、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様3]
前記rhGAAの30%以上がカチオン非依存性マノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合するか、または前記rhGAAの30%以上が、モノ-M6Pもしくはビス-M6Pを担持するN-グリカンを含む、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様4]
前記rhGAAの50%以上がカチオン非依存性マノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合するか、または前記rhGAAの50%以上が、モノ-M6Pもしくはビス-M6Pを担持するN-グリカンを含む、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様5]
前記rhGAAの90%~100%がカチオン非依存性マノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合するか、または前記rhGAAの90%~100%もしくはより多くが、モノ-M6Pもしくはビス-M6Pを担持するN-グリカンを含む、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様6]
M6Pを担持するN-グリカンの平均含有量が0.5~7.0mol/mol rhGAAの範囲である、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様7]
M6Pを担持するN-グリカンの平均含有量が1.0~4.0mol/mol rhGAAの範囲である、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様8]
M6Pを担持するN-グリカンの平均含有量が5.0~6.0mol/mol rhGAAの範囲である、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様9]
平均して、前記N-グリカンが3mol/mol超のM6Pと4mol/mol超のシアル酸とを含む、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様10]
平均して、前記rhGAA上の前記N-グリカンの40~60%が複合型N-グリカンであり、前記rhGAA上のN-グリカンの6.5%以下がハイブリッド型N-グリカンであり、前記rhGAA上の高マンノース型N-グリカンの15%以下が非リン酸化型であり、前記rhGAA上の前記高マンノース型N-グリカンの少なくとも10%がモノ-M6Pリン酸化型であり、および/または前記rhGAA上の前記高マンノース型N-グリカンの少なくとも2%がビス-M6Pリン酸化型である、実施態様1に記載のrhGAA組成物。
[実施態様11]
前記rhGAAが平均して、1molのrhGAA当たり2.0~8.0個のシアル酸残基を担持する、実施態様1に記載の組成物。
[実施態様12]
前記rhGAAがCHO細胞株ATB200-001-X5-14によりまたはその継代培養物により産生される、実施態様1に記載の組成物。
[実施態様13]
シャペロンを更に含む、実施態様1に記載の組成物。
[実施態様14]
実施態様1に記載の組成物を製造する方法であって、CHO細胞株を培養することと、前記CHO細胞の培養物から前記組成物を回収することとを含む方法。
[実施態様15]
実施態様1に記載の組成物を産生するCHO細胞株。
[実施態様16]
実施態様1に記載の組成物を産生するCHO細胞株GA-ATB-200またはその継代培養物。
[実施態様17]
実施態様15に記載のCHO細胞株を製造する方法であって、rhGAAをコードするDNAでCHO細胞を形質転換させることと、前記rhGAAをコードするDNAを前記CHO細胞の染色体に安定的に組み込み、かつrhGAAを安定的に発現するCHO細胞を選択することと、M6Pまたはビス-M6Pを担持するグリカンの含有量が高いrhGAAを発現するCHO細胞を選択することと、任意選択で、シアル酸含有量が高いN-グリカンを有するおよび/または非リン酸化高マンノース含有量が低いN-グリカンを有するCHO細胞を選択することとを含む方法。
[実施態様18]
不十分なリソソームrhGAAに関連する状態、障害または疾患を処置する方法であって、実施態様1に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
[実施態様19]
前記対象がグリコーゲン貯蔵症II型(ポンペ病)を有する、実施態様18に記載の方法。
[実施態様20]
前記組成物を前記対象の心筋に投与することを含む、実施態様18に記載の方法。
[実施態様21]
前記組成物を前記対象の四頭筋、三頭筋またはその他の骨格筋に投与することを含む、実施態様18に記載の方法。
[実施態様22]
前記組成物を前記対象の横隔膜に投与することを含む、実施態様18に記載の方法。
[実施態様23]
前記組成物が薬理学的シャペロンと組み合わされるか、それと共投与されるか、またはそれと共に別々に投与される、実施態様18に記載の方法。
[実施態様24]
前記組成物がAT2220もしくはその塩と組み合わされるか、それと共投与されるか、またはそれと共に別々に投与される、実施態様18に記載の方法。
[実施態様25]
前記組成物がAT2221もしくはその塩と組み合わされるか、それと共投与されるか、またはそれと共に別々に投与される、実施態様18に記載の方法。
[実施態様26]
組織、筋肉、筋繊維、筋細胞、リソソーム、オルガネラ、細胞内コンパートメントまたは細胞質中のグリコーゲンを代謝するか、分解するか、除去するか、またはその他に低減させる方法であって、任意選択でシャペロンまたはrhGAAに対する免疫応答を低減させる薬剤と共に、実施態様1に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
[実施態様27]
細胞中におけるリソソームの増殖、自食作用または開口分泌を調節する方法であって、任意選択でシャペロンとの組合せにおいて、実施態様1に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【配列表】