(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/15 20060101AFI20230213BHJP
B25D 9/14 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F15B11/15
B25D9/14
(21)【出願番号】P 2020502425
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2018069435
(87)【国際公開番号】W WO2019016231
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IE
(73)【特許権者】
【識別番号】516001856
【氏名又は名称】ミンコン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MINCON INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ケスキニヴァ マルック
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-241506(JP,A)
【文献】米国特許第04196780(US,A)
【文献】特開昭51-079060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/15
B25D 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧パーカッションデバイスは:
シリンダ内で往復運動するように取り付けられ、ツールに衝撃を与えるピストンと;
前記ピストンの往復運動を制御するための制御バルブと;
前記ピストンの最大シール直径よりも小さい直径を有する当該ピストンの部分に配置されているアンダーカットであって、前記ピストンの後端部に設けられているアンダーカットと;
前記シリンダ内の前記ピストンの位置に基づいて前記制御バルブを切り替えるように構成されたバルブパイロットラインであって、
前記シリンダの第1ポートを介して前記アンダーカットに接続され、かつ、前記ピストンの往復運動によって、
前記第1ポート、前記アンダーカット及び前記シリンダの第2ポートを介して
低圧ラインと、前記第1ポート、前記アンダーカット及び前記シリンダの第3ポートを介して高圧ラインとに交互に接続され
、かつ、前記第2ポートが前記第1ポートの後方にあり、かつ、前記第3ポートが前記第1ポートの前方にあるバルブパイロットラインと、を備え、ことを特徴とする、液圧パーカッションデバイス。
【請求項2】
前記アンダーカットが、最小直径を有する前記ピストンの部分に設けられている、請求項
1に記載の液圧パーカッションデバイス。
【請求項3】
前記アンダーカットが、ピストンサイクル全体にわたって後部チャンバの後方にある、前記ピストンの部分に設けられている、請求項
1または
2に記載の液圧パーカッションデバイス。
【請求項4】
前記アンダーカットが、ピストンサイクル全体にわたって前記ピストンと前記シリンダとの間に配置された後部シールの前方にある、前記ピストンの部分に設けられている、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の液圧パーカッションデバイス。
【請求項5】
前記
第2ポートが、前記ピストンと前記シリンダとの間に配置されたシールにシール排水をさらに提供する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の
液圧パーカッションデバイス。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の液圧パーカッションデバイスと;パーカッションビットと、を備える、液圧ダウンザホールハンマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧式パーカッションデバイス、特には液圧式ダウンザホールハンマの制御バルブまたはシャトルバルブパイロット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧駆動のパーカッション機構は、ドリルロックを使用する様々な機器に採用されている。
図1aに示すような液圧式パーカッションデバイスは、通常、少なくともシリンダ1と、該シリンダ内で往復運動するように取り付けられ、デバイスの前端部に配置されたパーカッションビットまたはツール3に衝撃を与えるピストン2と、該ピストンの往復運動を制御するための制御バルブまたはシャトルバルブ4と、を含む。制御バルブは、ピストンの往復運動を引き起こすために、ピストンの後部駆動チャンバ6を、デバイスの高圧および低圧ラインP,Tに交互に接続する。制御バルブの切り替えは、ピストンの位置、すなわち位置フィードバッグ制御によって制御される。
【0003】
図1bは、戻りストロークにある
図1aのデバイスを示している。ここでは、ピストンは、矢印で示される方向にツールから離れるように駆動されている。バルブパイロットライン7は、ピストン2のアンダーカット8を介して、高圧ラインPに接続されている。バルブに作用する液圧力によりバルブが右に移動し、これにより、後部チャンバ6が低圧ラインTに接続される。前部チャンバ5は、ピストンがツール3から離れるように駆動されるように、高圧ラインに連続的に接続されている。
【0004】
図1cは、ピストンのアンダーカット8がバルブパイロットライン7を低圧ラインTに接続する位置にあるピストンを示している。ここでは、バルブ4が左位置に強制的に切り替えられ、これにより、後部チャンバ6が高圧ラインPに接続される。後部チャンバのピストン面積は前部チャンバのそれよりも大きいため、正味の液圧力によって、ピストンがツール3に向かって駆動される。ピストンがツールに衝突する直前に、バルブパイロットラインが再び高圧ラインに接続されて制御バルブが右に移動し、サイクルが繰り返される。
【0005】
図2aおよび2bは、
図1a~1cと同様のコンセプトを示しているが、前部チャンバ5もまた、後部チャンバと同様に、高圧および低圧ラインに交互に接続される。バルブは、
図1a~1cに関連して説明した方法とまったく同じ方法で操縦(パイロット)される。
【0006】
図1a~1cおよび
図2a,2bに関連して上述したようなバルブパイロット装置を備えたパーカッションデバイスは、実質的な内部漏れに悩まされ得る。バルブの操縦を制御するアンダーカットは、前部チャンバと後部チャンバとの間の、ピストンの最大直径部分にあるが、漏れは、ピストンの直径に正比例する。さらに、ピストンの中心のランニングクリアランスh
cは、ピストンの焼き付きを避けるために、前部および後部のベアリングにおけるベアリングクリアランスh
bよりも大きい。圧力がシリンダを半径方向に拡大させる傾向があるため、高圧下におけるシリンダの変形はクリアランスをさらに増大させる。典型的な漏れを
図3に示す。ピストンのアンダーカットでの漏れに加えて、前部および後部チャンバからシール排水ライン9への漏れもある。シール排水ラインは、そうでなければシール10が高圧にさらされることになるため、該シールの寿命を改善するために提供されている。
【0007】
これらの要因の結果、内部漏れによる効率性の損失なしに、高圧で操作できる大型の液圧式パーカッションを製造することは困難である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によれば、液圧式パーカッションデバイスは:
シリンダ内で往復運動するように取り付けられ、パーカッションビットなどのツールに衝撃を与えるピストンと;
当該ピストンの往復運動を制御するための制御バルブと;
シリンダ内のピストンの位置に基づいて制御バルブを切り替えるように構成されたバルブパイロットラインであって、ピストンの往復運動によって、当該ピストンのアンダーカットを介して高圧および低圧ラインに交互に接続されるバルブパイロットラインと、を備え、該アンダーカットが、ピストンの最大シール直径よりも小さい直径を有するピストンの部分に配置されていることを特徴とする。
【0009】
したがって、アンダーカットの両側のピストンの直径は、ピストンの最大シール直径よりも小さい。ここで、ピストンの最大シール直径は、デバイスの通常の動作中にシリンダとシール構成を形成するピストンの最大直径である。この構成の利点は、アンダーカットが、ピストンの最大シール直径に比べて小さい直径を有するピストンの部分に配置されているため、漏れが減少することである。
【0010】
一実施形態において、アンダーカットは、ピストンの後端部(後方の端部)に設けられている。アンダーカットは、ピストンサイクル全体にわたって後部チャンバの後方にある、ピストンの部分に設けられていてもよい。アンダーカットは、ピストンサイクル全体にわたって後部シールの前方にある、ピストンの部分に設けられていてもよい。
【0011】
通常、ピストンの後端部では、ピストン直径が最小である。また、通常、ピストンの後端部では、ランニングクリアランスも最小である。この領域では、ピストン直径が小さくなっており、通常、シリンダの壁厚が増しているため、周囲の構造がより硬い。これは、圧力下においてクリアランスが増加しにくいことを意味する。さらに、バルブパイロットラインを低圧ラインに接続するために使用されるシリンダポートを使用してシール排水を提供するため、専用のシール排水ポートは必要ない。このように、ピストンの後端部にアンダーカットを設けることにより、漏れを最小限に抑えることができる。
【0012】
別の実施形態では、アンダーカットは、ピストンの前端部(前方の端部)に設けられる。ピストンの前端部もまた、ピストンの中央部分と比較して直径が小さく、それによって漏れが減少する。
【0013】
本明細書で使用するとき、「前方の」という用語は、パーカッションビットに最も近い、ピストンのデバイスの方向または端部をいう。「後方の」という用語は、パーカッションビットから最も遠いデバイスまたはピストンの方向または端部を示すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】従来の液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット構成の概略図である。
【
図1b】戻りストロークにある、
図1aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【
図1c】トップストロークにある、
図1aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【
図2a】デバイスが戻りストロークにある、従来の液圧式パーカッションデバイスの別のバルブパイロット構成の概略図である。
【
図2b】トップストロークにある、
図2aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【
図3】典型的な漏れを示す、
図1aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【
図4a】本発明の第1の実施形態による、戻りストロークにある、液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット構成の概略図である。
【
図4b】トップストロークにある、
図4aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【
図5a】戻りストロークにある、本発明の第2の実施形態による、液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット構成の概略図である。
【
図5b】トップストロークにある、
図5aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【
図6a】戻りストロークにある、本発明の第3の実施形態による、液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット構成の概略図である。
【
図6b】トップストロークにある、
図6aの液圧式パーカッションデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図4aおよび4bは、本発明の第1の実施形態による、液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット構成を示している。デバイスは、シリンダ101と、該シリンダ内で往復運動するように取り付けられ、デバイスの前端部に位置するパーカッションビットまたはツール103に衝撃を与えるピストン102と、該ピストンの往復運動を制御するための制御バルブまたはシャトルバルブ104と、を含む。制御バルブは、ピストンの後部駆動チャンバ105,106をデバイスの高圧ラインPおよび低圧ラインTに交互に接続して、該ピストンの往復運動を引き起こす。制御バルブの切り替えは、ピストンの位置によって、すなわち位置フィードバック制御によって制御される。バルブパイロットライン107は、シリンダ内のピストンの位置に基づいて制御バルブを切り替えるように配置されている。
【0016】
図4aは、ピストンが、矢印で示される方向にツールから離れるように駆動される、戻りストロークにあるデバイスを示している。バルブパイロットライン107は、バルブの右側114と、ピストン102の後端部、すなわちピストンテール111のアンダーカット108と、の間に接続されている。バルブの左側115は、ライン116によって、高圧ラインPに接続されている。
図4aに示すように、アンダーカット108が設けられたピストンの部分は、ピストンの最大シール直径Mよりも小さい、最小ピストン直径mを有している。
【0017】
図4aでは、バルブパイロットライン107は、アンダーカット108およびシリンダポート117,118を介して、高圧ラインPに接続されている。高圧が作用するバルブの右側の面積は、バルブの左側の面積よりも大きいため、バルブに作用する液圧力がバルブを左に動かし、これにより、後部チャンバ106が低圧ラインTに接続される。ピストンがツール103から離れるように駆動されるように、前部チャンバ105は高圧に連続的に接続されている。
【0018】
ピストンが右に移動すると、アンダーカットは、バルブパイロットラインを高圧ラインPに接続する位置から、バルブパイロットラインを低圧ラインTに接続する位置に移動する。
図4bは、ピストンのアンダーカット108が、バルブパイロットライン107を、シリンダポート117および119を介して低圧ラインTに接続する位置にあるピストンを示している。バルブの左側115が高圧ラインPに接続されているため、バルブ104は右位置に強制的に切り替えられ、これにより、後部チャンバ106が高圧ラインPに接続される。後部チャンバのピストン面積112は、前部チャンバのピストン面積113よりも大きいため、正味の液圧力がピストンをツール103に向けて駆動する。ピストンがツールに衝突する直前に、バルブパイロットラインが再び高圧ラインに接続されて制御バルブが左に移動し、サイクルが繰り返される。
【0019】
図4aおよび4bに示すように、アンダーカット108は、ピストンサイクル全体にわたって後部チャンバ106の後方にある、ピストンの部分に設けられている。アンダーカット108は、ピストンサイクルにわたって後部シール110の前方にある、ピストンの部分に設けられている。シリンダポート119は、後部シール110にシール排水を提供するため、専用のシール排水ポートは不要である。
【0020】
図5aおよび5bは、本発明の第2の実施形態による、液圧式パーカッションデバイスのバルブパイロット構成を示している。ここでは、前部および後部チャンバの両方が交互の圧力を有している。バルブは、
図4aおよび4bに関連して説明したのとまったく同じ方法で操縦(パイロット)される。
【0021】
図6aおよび6bは、本発明の第3の実施形態を示している。この実施形態では、アンダーカット208は、ピストンの前端部に配置されている。
図6aおよび6bに示すように、アンダーカットは、ピストンの最大シール直径Mよりも小さい、直径Dを有するピストンの部分に配置されている。バルブパイロットライン107は、バルブの左側115と、ピストン102の前端部のアンダーカット208と、の間に接続されている。バルブ114の右側は、ライン116によって高圧ラインPに接続されている。
【0022】
図6aは、ピストンが、矢印によって示される方向にツールから離れるように駆動される、戻りストロークにあるデバイスを示している。バルブパイロットライン107は、ピストン102の前端部のアンダーカット208およびシリンダポート120,121を介して低圧ラインTに接続されている。バルブに作用する液圧力により、バルブが左へ移動し、これにより、後部チャンバ106が低圧ラインTに接続される。前部チャンバ105は、ピストンがルーツ103から離れるように駆動されるように、連続的に高圧に接続される。
【0023】
図6bは、ピストンのアンダーカット208が、シリンダポート120および前部チャンバを介して、バルブパイロットライン107を高圧ラインPに接続し、バルブを強制的に右位置に切り替え、これにより、後部チャンバ106が高圧ラインPに接続される配置にあるピストンを示している。後部チャンバのピストン面積112は、前部チャンバのピストン面積113よりも大きいため、正味の液圧力がピストンをツール103に向けて駆動する。ピストンがツールに衝突する直前に、バルブパイロットラインが再び低圧ラインに接続されて制御バルブが左に移動し、サイクルが繰り返される。
【0024】
シリンダポート121は、前部シール110にシール排水を提供するため、専用のシール排水ポートは不要である。
【0025】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「備える/備えている」という用語および「有する/含む」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定するために使用されるが、1つまたは複数の別の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0026】
明確性のために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解されよう。逆に、簡潔性のために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴もまた、別個に、あるいは任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。