(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】ガンマアミノ酪酸の新規製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/197 20060101AFI20230213BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20230213BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230213BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230213BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K9/22
A61K47/38
A61K47/02
A61P3/10
(21)【出願番号】P 2020516412
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 SE2018050855
(87)【国際公開番号】W WO2019059822
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516363950
【氏名又は名称】ダイアミド・メディカル・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】DIAMYD MEDICAL AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドクビスト,アントン
(72)【発明者】
【氏名】ハンネリウス,ウルフ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-088335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103054044(CN,A)
【文献】特開2010-189333(JP,A)
【文献】特開2008-074734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマアミノ酪酸(GABA)を含む経口剤形であって、30~50% GABA、30~40%微結晶性セルロースおよび15~20%リン酸二カルシウム、ならびに任意選択により、薬学的に許容される賦形剤を含む、経口剤形。
【請求項2】
ガンマアミノ酪酸(GABA)を含む経口剤形であって、30~50% GABA、23.5~28.5% 微結晶性セルロースおよび30~35% ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに任意選択により、薬学的に許容される賦形剤を含み、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、
a.
28~30%のメトキシ基置換度、および水中に2%、20℃で40~60mPa・sの粘性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、
ならびに
b.
19~24%のメトキシ基置換度、および水中に2%、20℃で80~120mPa・sの粘性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、
からなる群より選ばれる、経口剤形。
【請求項3】
100%の前記GABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で0.25~5時間以内に放出される、
請求項1又は請求項2に記載の経口剤形。
【請求項4】
少なくとも95%の前記GABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で4時間後に放出される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項5】
絶食状態におけるヒト患者に投与される場合のAUC(24時間)と比較して、
-30%内である摂食状態におけるヒト患者に投与される場合のAUC(24時間)を示す、請求項
1に記載の経口剤形。
【請求項6】
40% GABAを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項7】
対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための方法に使用するための、
請求項1から6のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項8】
対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための方法に使用するための、
請求項1から6のいずれか一項に記載の経口剤形の製造におけるGABAの使用。
【請求項9】
前記対象が18歳より下のヒトである、
請求項7に記載
の経口剤形。
【請求項10】
対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための前記方法が、GABAを200~1200mg/日の用量で投与することを含む、
請求項7または9に記載
の経口剤形。
【請求項11】
前記対象が18歳より下のヒトである、
請求項8に記載の使用。
【請求項12】
対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための前記方法が、GABAを200~1200mg/日の用量で投与することを含む、
請求項8または11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、医学および医薬製剤の分野に関する。特に、本発明は、ガンマアミノ酪酸を含む医薬製剤および代謝障害の処置におけるその使用に関する。
【0002】
背景
ガンマアミノ酪酸(GABA)は、4-アミノ酪酸(CAS登録番号56-12-2)としても知られる、中枢神経系(CNS)阻害活性を有する天然の神経伝達物質である。GABAは、食物サプリメントとして市販されているが、いくつかの国では医薬的物質として規制されている。ATC分類体系では、経口または非経口投与を介する1gの規定の1日用量で抗てんかん薬として分類されている。GABAは膵島細胞中でも産生され、ここでGABAはGABAA-受容体を介して膵臓細胞のホルモン分泌を制御する。
【0003】
GABAは、代謝症候群、例えば、1型糖尿病に関連する症状および障害の治療的または予防的な寛解における使用に提案されている(WO2012/050907を参照)。薬物を剤形から少なくとも6時間の期間にわたって放出させる持続性放出経口剤形が、この治療的または予防的な処置に使用されることが提案されている。
【0004】
Liおよび共同研究者(Liら、Frontiers in Pharmacology、(2015)第6巻:260)は、健常な志願者においてGABAの薬物動態および薬力学を試験した。GABAを、1日当たり1または3回2gの用量で絶食状態中に投与した。使用した医薬製剤のタイプは、特定されていない。食事とともに投与することに関連するデータは、示されていない。
【0005】
発明の概要
特に、糖尿病および/または代謝症候群の処置または予防に使用するための、ガンマアミノ酪酸の改善された製剤を提供することが、本発明の課題である。具体的には、製剤は、付随する食事とは無関係にGABAの匹敵するバイオアベイラビリティーを提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、ガンマアミノ酪酸(GABA)および薬学的に許容される賦形剤を含む経口剤形であって、100%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で0.25~5時間以内に放出される、経口剤形に関する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、ガンマアミノ酪酸(GABA)を含む経口剤形であって、30~50% GABA、1~35%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および薬学的に許容される賦形剤を含む、経口剤形に関する。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、ガンマアミノ酪酸(GABA)および薬学的に許容される賦形剤を含む経口剤形であって、絶食状態における患者に投与される場合のAUC(5時間)と比較して、+/-30%である摂食状態における患者に投与される場合のAUC(5時間)を示す、経口剤形に関する。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための方法に使用するための、本発明に従う経口剤形に関する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための方法に使用するための、本発明に従う経口剤形を製造する方法におけるGABAの使用に関する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、対象における糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための方法であって、本発明に従う経口剤形を前記対象に投与することを含む方法に関する。
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】いくつかのGABA製剤に関する溶解データを示す図である。
【
図2】いくつかのGABA製剤に関する薬物動態を試験するための研究プロトコルを示す図である。
【
図3-1】試験したGABA製剤に関するGABA血漿濃度曲線および溶解データを示す図である。
【
図3-2】試験したGABA製剤に関するGABA血漿濃度曲線および溶解データを示す図である。
【
図4】試験したGABA製剤に関するAUCを示す図である。
【
図5】先行技術の製剤に対する経時的なGABAの平均血清中濃度を示す図である。
【
図6】試験したGABA製剤および先行技術の製剤についてのAUCを示す図である。
【0013】
定義
AUC(xh):投与時間からx時間までの薬物血漿濃度曲線下の面積。すなわち、AUC(5時間)は、投与時間から5時間までの薬物血漿濃度曲線下の面積である。
Cmax:薬物の投与後に得られる最大薬物血漿濃度。
Tmax:最大薬物血漿濃度が薬物の投与後に得られる時間。
【0014】
別記しない限り、組成物と関連して全パーセンテージは、重量/重量(w/w)パーセンテージとして与えられる。
【0015】
詳細な説明
本発明者らは、経口的に投与されたGABAの取り込みが、使用される製剤によって有意に影響されること、またGABAを取り込んでいる患者の食物摂取に依存することを認識した。食物とともにおよび食物なしの両方で摂取することができ、付随する食事とは無関係にGABAの匹敵するバイオアベイラビリティーを提供する、製剤を有することが好ましい。このことは、かなりの期間、例えば月または年などで継続される治療レジメンでより一層好ましく、その理由は、詳細な投与の必要性(例えば、薬物を食事とともにまたは絶食状態で摂取する必要性)が、処方されたレジメンの遵守を減少させる傾向があり、また治療効果の欠如をもたらしうる。
【0016】
本発明者らは、GABAが、経口投与後最初の2~3時間の間のみ患者によって取り込まれることも認識した。
【0017】
したがって、本発明は、ガンマアミノ酪酸(GABA)および薬学的に許容される賦形剤を含み、それぞれ、摂食および絶食状態で患者に投与される場合に、AUCの点で匹敵するバイオアベイラビリティーを有する、経口剤形に関する。
【0018】
一実施形態では、AUCの点で匹敵するバイオアベイラビリティーは、剤形が、20mg/kgの用量を使用して、絶食状態における患者に投与される場合のAUC(5時間)と比較して、+/-30%内である摂食状態における患者に投与される場合のAUC(5時間)を示すことと規定される。
【0019】
本発明に従う剤形のAUCの点で匹敵するバイオアベイラビリティーは、100%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で0.25~5時間以内に放出される、経口剤形で達成されうる。したがって、一態様では、本発明は、ガンマアミノ酪酸(GABA)および薬学的に許容される賦形剤を含む経口剤形であって、100%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で0.25~5時間以内に放出される、経口剤形に関する。
【0020】
一実施形態では、少なくとも95%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で4時間後に放出される。
【0021】
一実施形態では、少なくとも95%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で3時間後に放出される。
【0022】
一実施形態では、少なくとも95%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で1時間後に放出される。
【0023】
GABAの放出は、1000mlの0.01M HCl中USP溶解装置2において測定することができ、ここで、経口剤形が37℃で50rpmのパドル速度を使用して混合される。100%のGABAが特定のタイムスパン内に放出されることは、100%未満のGABAが特定のタイムスパン前に放出されたことを意味すると解釈される。
【0024】
USP溶解装置2は、経口剤形に関する溶解特性を決定する装置である。装置および装置を使用する方法の両方は、米国、欧州、および日本の薬局方にわたって標準化および調和化され、本明細書中に参照によって組み込まれる、<711>章のDissolutionに広く記載されている。
【0025】
本発明に従う剤形のAUCの点で匹敵するバイオアベイラビリティーはまた、剤形が、30~50%GABA、50~60%フィラー材料、および、任意選択により、薬学的に許容される賦形剤を含む、経口剤形で達成されうる。したがって、一態様では、本発明は、30~50% GABA、50~60%フィラー材料、および、任意選択により、薬学的に許容される賦形剤を含む、剤形に関する。
【0026】
フィラー材料は、当分野において周知されており、セルロース(例えば、微結晶性セルロース、セルロースエーテル、植物ベースセルロース)、デンプン、リン酸二カルシウムを含む。フィラーとして有用なヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルは、Methocel(商標)(Dow Chemical Company)の商品名で市販されている。
【0027】
一実施形態では、本発明に従う剤形は、30~35%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0028】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、フィラー材料として、28~30%のメトキシ基置換度(methoxyl substitution grade)を有する。
【0029】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、水中に2%、20℃で80~120mPaの粘性を有する。
【0030】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、水中に2%および20℃で40~60mPa・sの粘性を有する。
【0031】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、水中に2%および20℃で2.5~5.0mPa・sの粘性を有する。
【0032】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、19~24%のメトキシ基置換度を有する。
【0033】
一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、28~30%のメトキシ基置換度を有する。
【0034】
一実施形態では、本発明に従う剤形は、40% GABA、30~35%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(28~30%のメトキシ基置換度および水中に2%、20℃で40~60mPa・sの粘性を有する)、23.5~28.5%微結晶性セルロース、および、任意選択により、さらに薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0035】
一実施形態では、本発明に従う剤形は、40% GABA、30%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(28~30%のメトキシ基置換度および水中に2%、20℃で2.5~5.0mPaの粘性を有する)、28.5%微結晶性セルロース、および、任意選択により、さらに薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0036】
一実施形態では、本発明に従う剤形は、40% GABA、30%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(19~24%のメトキシ基置換度および水中に2%、20℃で80~120mPaの粘性を有する)、28.5%微結晶性セルロース、および、任意選択により、さらに薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0037】
本発明の一実施形態では、フィラー材料は、微結晶性セルロースおよび/またはリン酸二カルシウムを含む。
【0038】
一実施形態では、剤形は、崩壊剤および、任意選択により、さらに薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0039】
一実施形態では、経口剤形は、30~40%微結晶性セルロース、および15~20%リン酸二カルシウムを含む。
【0040】
一実施形態では、経口剤形は、40% GABA、36.75%微結晶性セルロース、および16.75%リン酸二カルシウム、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、および、任意選択により、さらに薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0041】
一実施形態では、少なくとも95%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で4時間後に放出される。
【0042】
一実施形態では、少なくとも95%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で3時間後に放出される。
【0043】
一実施形態では、少なくとも95%のGABAが、0.01M HCl中37℃でUSP溶解装置2中で1時間後に放出される。
【0044】
本発明の一態様では、経口剤形は、40% GABAを含む。
本発明の一態様では、経口剤形は、200mg GABAを含む。
【0045】
薬学的に許容される賦形剤は、当分野において知られている、流動促進剤、滑沢剤、着色剤、風味剤、コーティング剤、味覚マスキング剤、崩壊剤などを含み得る。これらには、セルロース、微結晶性セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどが含まれる。
経口剤形は、固体経口剤形、例えば、錠剤、カプセルなどであってもよい。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病または代謝症候群の処置または予防の方法に使用するための、本発明に従う経口剤形に関する。糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、および成人期の潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)が含まれる。代謝症候群は、過剰腹部脂肪;アテローム性脂質異常症;高血圧症;高血糖;インスリン抵抗性;炎症誘発性状態;およびプロトロンビン状態を含む、循環器病および2型糖尿病に関する代謝性リスク因子のクラスターである。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病または代謝症候群の処置または予防のための、本発明に従う経口剤形の製造のための方法におけるGABAの使用に関する。
【0048】
一実施形態では、本発明に従う経口剤形での糖尿病または代謝症候群の処置または予防に供される患者は、子供、例えば18歳より下のヒト対象などである。
【0049】
一実施形態では、本発明に従う処置または予防の方法は、必要とする患者に200~1200mg/日、例えば、200、400、600、800、1000または1200mg/日のGABA1日用量を投与することを含む。
【0050】
本発明の実施では、当業者は、当分野における共通の一般的知識を提供するいくつかのテキストブック、例えば、参照によって本明細書に組み入れられる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st ed.、ISBN 0-7817-4673-6、およびPharmacology、Brenner&Stevens、3rd ed.2010(Saunders、Philadelphia、USA)などに頼ってもよい。
【実施例】
【0051】
実施例
本発明は、いくつかの実施例によってさらに説明される。実施例は、添付の特許請求の範囲の範囲である、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0052】
錠剤の製造
異なる放出特性を有するGABAの5つの製剤を、製造し、評価した。錠剤を、直接圧縮によって製造し、標的硬度110Nで500mg充填重量に圧縮した。10mmの円形凹状工具を、単一パンチFプレス上での圧縮のために使用した。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
製剤2~4を、異なる放出プロファイルを標的とする目的で開発した。2タイプのMethocel(商標)(HPMCP)を、評価した(タイプKおよびE)。タイプKは、タイプEよりも強いゲルを形成することが知られており、より遅い放出速度を標的とする制御放出マトリックスに適切である。2つのタイプに沿って、様々な粘性を評価した、Methocel(商標)には、より高い粘性が、より強いゲルバリアを形成する等級があり、拡散に関して、より遅い薬物放出速度をもたらす。ポリマーを制御する速度に加えて、微結晶性セルロースも、錠剤に含めて弾性を与えた。
【0059】
より弱いゲルを形成する、グレードE50 Methocel(商標)を使用する製剤において、製剤中のHPMCPのパーセンテージを、約35%に増加させることができた(製剤2bに示される)。これを、タイプE HPMCPのより低い粘稠性グレード、例えば、E3、E5、E6またはE15の導入とさらに組み合わせることができたが、HPMCPの相対量を剤形の30~35%に維持した。タイプK HPMCPグレードK4Mは、19~24%のメトキシ基置換度および水中に2%、20℃で2,663~4,970mPa・sの粘性を有する。タイプK HPMCPグレードK100LVは、19~24%のメトキシ基置換度および水中に2%、20℃で80~120mPa・sの粘性を有する。
【0060】
溶解速度
上記の通り製造された錠剤を使用する溶解速度を、1000mlの0.01M HCl中USP溶解装置2において測定し、錠剤を、37℃で50rpmのパドル速度を使用して混合した。
製剤1、2、3、および4についての溶解速度は、
図1に示される。
【0061】
薬物動態
上記に従う4つの製剤の経口投与後のイヌでのGABAの薬物動態プロファイルを評価した。
【0062】
1~6歳の8匹の雄性イヌを研究に含めた。イヌを各々2匹のイヌの4群に分けた。製剤についてのクロスオーバー投与スキームを、
図2に示される通り設計した。投与した用量レベルは、表1に提供される。
【0063】
【0064】
研究スケジュール
イヌ1匹当たり各時点当たり、血漿の以下のアリコートを調製した:
・K2EDTAチューブ:500μlの1アリコート(潜在的な血液分析に対して)
・ヘパリンリチウムチューブ:
o 200μlの1アリコート(潜在的なGLP-1分析に対して):血液採取(≒500μl血液)の直後(<30秒間)、適切な量のDPP-IV阻害剤(Merck)を、血漿分離前に製造者の指示に従って添加した。
o 200μlの5~7アリコートを、臨床生化学、GABA分析およびさらなる他のホルモン/分析に対して。
アリコートを、直接ドライアイス中で生物分析試験場に輸送またはさらなる分析まで凍結貯蔵した。
【0065】
尿サンプル(n=128)をアリコートに分けることは、採取した量(1チューブ当たり0.5mL)ならびにさらなる分析に従った貯蔵および/または輸送に応じた。
【0066】
血漿サンプル(n=320、全時点)をGABAのレベルに関して分析し、薬物動態(PK)パラメータを計算した。
【0067】
各サイクルに関して、動物1匹当たり5つの血漿サンプル(4、5、7、10および24時間後投与)を、毒性パラメータに関して、以下の通り分析した(すなわち、1サイクル当たり40サンプル、全160サンプル)。
【0068】
臨床生化学的パラメータ(縮小パネル):LDH、ALT、ALKPの量。1サンプル当たり必要とされる血漿の容量:ヘパリンリチウムチューブ中に200μl。
【0069】
インスリン(ELISA):1サンプル当たり必要とされる血漿の容量:ヘパリンリチウムチューブ中に150~200μl。
【0070】
処置
GABAを、
図2および表1に従って経口投与を介してt=0に投与した。カプセルを、消化管に直接置いた。絶食させたイヌに関して、GABAカプセルを食物なしで投与し、絶食させていないイヌに関して、GABAカプセルを食物(全ての動物に与えられた同じ量の食物)とともに投与した。イヌは晩に通常摂食させた。絶食させたイヌに関して、食物を実験前に晩に与えた。10時間での血液サンプル採取後、食物を全てのイヌに与えた。
【0071】
血液採取
血液採取に関して、5mlシリンジ(TERUMO)を使用し、血液サンプリングは頚静脈で直接的に採取した。血液サンプルを、以下の時点でK2-EDTAチューブおよびLi-ヘパリンチューブに採取した:
投与(1サイクル当たり全80サンプル)後、t=0(ベースライン/ブランク)、0.5、1、2、3、4、5、7、10および24時間。
各群に関して、血液を、全ての8匹のイヌから抜いた。
【0072】
尿採取
全尿を、4つの時点でカテーテルを介して採取した:投与(1サイクル当たり全32サンプル)後、t=0(ベースライン/ブランク)、ならびに次に4時間、8時間および12時間。サンプルをさらなる分析に従って凍結貯蔵および/または輸送した。
【0073】
血液サンプル調製
血液サンプルを、血漿分離のために1500g、4℃で10分間遠心分離した。血漿を、ピペットを使用して収集し、清浄な1.5ml Eppendorfチューブにただちに移し、輸送のためにドライアイス中に貯蔵し、ただちに輸送しない場合には、サンプルをフリーザーに貯蔵した。各バイアルを、日付、研究コード、イヌの番号およびグループならびに時点で標識した。
【0074】
血漿サンプルの分析
血漿サンプルを、GABAレベルについてLC/MS-MSによって分析した。また、いくつかのサンプルを、毒物学パラメータおよびホルモン:LDH、ALTおよびALKPならびにインスリンの量について分析した。
【0075】
結果
製剤1、2、3、および4のバイオアベイラビリティーを、経時的な血漿GABA濃度、それぞれ投与後5時間および24時間に対する血漿濃度曲線下面積(AUC)、ピーク血漿濃度(Cmax)およびピーク血漿濃度に対する時間(Tmax)の点で評価した。
経時的な血漿濃度は、
図3に示される。
AUC(24時間)値は、表2および
図4に示される。
【0076】
【0077】
製剤1、2、および3が望ましいバイオアベイラビリティー特性を、それらがAUC(24時間)の点で高いバイオアベイラビリティーを提供し、また食物とともにおよび食物なしの両方で摂取することができ、製剤1が付随する食事とは無関係にGABAの匹敵するバイオアベイラビリティーを提供することにおいて有することが見出された。
【0078】
先行技術製剤との比較
Liおよび共同研究者(Liら、Frontiers in Pharmacology、(2015)第6巻:260)によって提供された結果および粉末形態の標準的な市販の食物サプリメント(NOW Foods、Chicago、USA)で比較を行った。
AUC(24時間)データを、Liらの表1から取り込んだ。
【0079】
食物サプリメント製品に関するデータを、食物とともにまたは食物なしのいずれかで2g GABAを受けている4名の健常ヒト個体における研究から得た。血清を、ベースライン(t=0)および15分、30分、45分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間に得た。経時的なGABAの平均血清中濃度は、
図5に示される。
【0080】
食物サプリメント研究およびLiらにおけるヒト対象に与えられる用量は、Liらの場合には、平均62kgと測定された成人に対して2gであった。したがって、用量は、約32mg/kgであった。本開示の製剤のイヌの研究における用量は、約100mg/kgであった。これは、ヒトの等価用量の54mg/kg(Nair AB、Jacob S. A simple practice guide for dose conversion between animals and human. J Basic Clin Pharma 2016;第7巻:27~31)、(すなわち、約1.7倍高い)に相当する。種を横断してバイオアベイラビリティーを比較するために、イヌにおいて試験した新しい製剤に関するAUC(24時間)値を、それ故、1.7で割った。
AUC値は、表3および
図6中で比較される。
【0081】
【0082】
比較データから、製剤1、2、および3のバイオアベイラビリティーが、AUC(24時間)によって示される通り、バイオアベイラビリティーの点で現存の製剤に対して有意に改善され、製剤4に対しても優れていることが明らかである。
【0083】
1型糖尿病患者のβ細胞再生における経口GABA療法の効果を調査するための研究
以下のプロトコルを使用し、本発明の経口剤形を使用して、1型糖尿病患者のβ細胞再生における経口GABA療法の効果を調査することができる。
【0084】
課題:
主要な課題
主要な課題は、経口GABA処置の急性および長期安全性を評価することである。
【0085】
副次的な課題
副次的な課題は、2つの処置群間の効果の差を評価することである。ならびに、Cペプチドによって測定されるような内因性インスリン分泌の回復、全体的な糖尿病状態、処置の安全性、GABAの血清レベル、免疫系における効果、および患者の生活の質(QoL)における経口GABA処置の転帰を分析することである。
【0086】
研究デザイン:
研究の第1部は、6名の患者を含み、低(200mg)、中間(600mg)および高用量(1200mg)のGABAでの3ステップの安全性および用量漸増研究として実施される。安全性パラメータ、GABAの血漿濃度、インスリンおよび糖耐性が、次に評価される。安全性の懸念が生じない場合、この部分の研究に既に含められる対象は、次に主研究に登録される。
【0087】
主研究は、2群、オープンラベル、単一施設、臨床試験である。適格性がある患者は、2つの積極的な処置群の1つにランダム化され、経口GABA処置を6カ月受ける。患者は、割り当てられる処置群に応じて、全7~8カ月を追跡される。全ての患者は、全研究期間の間に彼らのかかりつけの医師から、看護および集中的なインスリン処置の彼らの通常の標準を継続的に受ける。
【0088】
患者の選択:
患者は≧18かつ≦50歳であるべきであり、彼らは25歳前に1型糖尿病(T1D)と診断されていなければならない。登録される適格性がある患者は彼らのT1D診断を≧5年有していなければならず、彼らの絶食Cペプチドレベルは検出不可能なレベルから<0.12nmol/Lまでの範囲にあるべきである。研究における除外基準は、妊娠の可能性がある女性、有効な避妊を使用していない男性、母乳栄養継続中、eGFR <60ml/分、既知のがん疾患、アラニンまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加した血漿濃度を有する肝疾患の徴候、膵炎または他の外分泌性膵臓障害の以前の病歴、HbA1c>90mmol/molである。
【0089】
予定される患者の数:およそ24患者が登録される。24患者が登録されることを保証するために、およそ35患者がスクリーニングされる。
【0090】
処置群の説明:
安全性および用量漸増研究:
6患者は、適格性を評価され、次に研究の安全性評価および用量漸増部分に含められる。患者は、低(200mg)、中間(600mg)および高用量(1200mg)のGABAを受け、薬物動態および安全性を評価される。GABA処置の安全性は、データ安全性監視委員会(DSMB)によって評価され、安全性の懸念が生じない場合、主研究が開始される。
【0091】
主研究:
患者は、訪問2(1日)の14から28日前のスクリーニング訪問(訪問1)に適格性を評価され、研究に適格性を有する患者は2処置群の1にランダム化される。
【0092】
・およそ12患者が、低用量(200mg)のGABAを6カ月受けることに割り当てられる。3カ月後、GABA処置の安全性が、DSMBによって評価される。安全性の懸念が生じない場合、処置がさらに3カ月継続され、処置群2が開始される。
およそ12患者が、高用量(600mg)の経口GABA処置を1カ月と7カ月(44日から225日)の間で受けることに割り当てられる。1カ月後、GABA処置の安全性が、DSMBによって評価される。安全性の懸念が生じない場合、処置がさらに5カ月継続される。
【0093】
エンドポイント:
主要なエンドポイント:
・GABA処置に多分または恐らく関連するAE/SAEの数
・経時的な検査パラメータ、身体検査およびバイタルサインにおける変化対ベースライン値
【0094】
副次的なエンドポイント:
・ベースラインと経口GABA処置の6カ月後の間の混合食事負荷試験(MMTT)の間のCペプチド(曲線下面積[AUC]平均0~120分)における差。
・ベースラインと処置の3および6カ月後の間ならびにベースラインとフォローアップ訪問の間のMMTTの間のCペプチド(曲線下面積[AUC]平均0~120分)における差。
【0095】
・ベースラインと処置の3および6カ月後の間ならびにベースラインとフォローアップ訪問の間のMMTTの間のCペプチド(曲線下面積[AUC]平均0~120分)における差。超高感度ELISAでの分析。
・ベースラインと処置の3および6カ月後の間ならびにベースラインとフォローアップ訪問の間のMMTTの間の最大刺激したCペプチドにおける差。
【0096】
・ベースラインと処置の3および6カ月後の間ならびにベースラインとフォローアップ訪問の間のMMTTの間の最大刺激したCペプチドにおける差。超高感度ELISAでの分析。
・処置の3および6カ月後の処置群1と処置群2の間ならびにベースラインとフォローアップ訪問の間のMMTTの間のCペプチド(曲線下面積[AUC]平均0~120分)における差。
【0097】
・ベースラインと処置の6カ月の間の低血糖クランプの間のグルカゴン(曲線下面積[AUC]平均0~120分)における差。
・処置群1と処置群2の間、ベースラインと処置の6カ月の間の低血糖クランプの間のグルカゴン(曲線下面積[AUC]平均0~120分)における差。
【0098】
・糖尿病状態を示す変数、例えば、血漿Cペプチド、グルカゴン、グルカゴン様-ペプチド1、脂質およびヘモグロビンA1c(HbA1c)。毎日の外因性インスリン消費、血糖の変動性、および低血糖の自己申告数。
・免疫系における効果を示す変数、例えば、GAD65およびIslet Antigen-2に対する血清自己抗体(およびアイソタイプ)ならびに血中の免疫細胞の一般的なプロファイリング。
【0099】
・処置の3および6カ月後ならびにフォローアップ訪問でのGABA血漿レベルの分析。
・DTSQアンケートによる患者QoLの測定。
・RAND-36アンケートによる患者QoLの測定。
【0100】
サンプルサイズ:
潜在的有効性を評価するために使用される主な副次的なエンドポイントは、処置後ベースラインからの改善を示す、2時間MMTTからのCペプチド値の比率である。本発明者らのアプローチは、分析に利用可能なデータポイントの数を最大化し、各120分間MMTTはCペプチド(0、15、30、60、90、120分間の時間での)の6つの測定値を産する観察を基にする。したがって、20対象の全サンプルサイズが、1.5%の有用率を検出する検出力80%を保証することが計画される。
【0101】
副次的なエンドポイント変数の分析:
MMTT間のCペプチド(曲線下面積[AUC]平均0~120分)におけるΔ変化は、対応のある両側スチューデントのt検定によって解析される。反復測定ANOVAを適用して、研究の過程で他のパラメータの変化を評価する。研究内で得られたQoLデータの分析は、RAND-36および糖尿病処置満足度アンケート(DTSQ)で評価される。
【0102】
治験デザイン
研究デザインおよび手順の説明
患者は、何らかの研究関連手順を実施する前に、書面でのインフォームドコンセントを提出する。研究の第1部は、6名の患者を含み、低(200mg)、中間(600mg)および高用量(1200mg)のGABAでの3ステップの安全性および用量漸増研究として実施される。安全性パラメータ、GABAの血漿濃度、インスリンおよび糖耐性が次に評価される。最初の患者が3つの用量漸増ステップを完了した後、DSMBが安全性データを再検討し、安全性の懸念が生じない場合、他の5患者の開始が許可される。
【0103】
処置スケジュールは、以下の表に与えられる。
全ての6患者が用量漸増研究を完了した場合、DSMBは安全性データを再度検討する。安全性の懸念が生じない場合、この部分の研究に既に含められる対象は、次に、少なくとも1カ月のウォッシュアウト期間後、主研究に登録される。
【0104】
主研究は、2群、オープンラベル、単一施設、臨床試験である。適格性がある患者は、2つの積極的な処置群の1つにランダム化され、経口GABA処置を6カ月受ける。患者は、割り当てられる処置群に応じて、全7~9カ月を追跡される。全ての患者は、全研究期間の間に彼らのかかりつけの医師から、看護および集中的なインスリン処置の彼らの通常の標準を継続的に受ける。
【0105】
1日(訪問2)、スクリーニング訪問(用量漸増研究に含められた患者は、スクリーニング訪問を行わないが、少なくとも1カ月のウォッシュアウト期間を有する)後2~4週に、研究に適格性を有する患者は、Cペプチドレベルによって1:1比にランダム化され:
1)200mgのGABAを6カ月(1日から181日)、
または
2)600mgのGABAを6カ月(44日から225日)を受ける。
【0106】
群1および群2に関して処置スケジュールは、以下の表に記載される。
スクリーニング訪問で、患者は、3桁の連続的なスクリーニング番号を割り当てられ、この番号は、3桁の患者識別(患者番号)、すなわち、XXXとして使用される。
【0107】
個々の患者は、GABAに6カ月曝露される。全ての患者は、全研究期間の間に彼らのかかりつけの医師から、集中的なインスリン処置を継続的に受ける。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】