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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】医療用具
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20230213BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20230213BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20230213BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20230213BHJP
   A61L 29/02 20060101ALI20230213BHJP
   A61L 29/00 20060101ALI20230213BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230213BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230213BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230213BHJP
   C08K 3/18 20060101ALI20230213BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230213BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20230213BHJP
   C08G 18/74 20060101ALI20230213BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20230213BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C08L75/04
A61L29/06
A61L29/12
A61L29/14 100
A61L29/02
A61L29/00
C08L27/06
C08L83/04
C08K5/10
C08K3/18
C08K3/013
C08G18/50 003
C08G18/74
C08G18/73
C08G18/32
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020527792
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082018
(87)【国際公開番号】W WO2019101771
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】17203351.6
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディ ニコロ, エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッチ, シルヴィア リータ
(72)【発明者】
【氏名】カンパネッリ, パスクヮーレ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラミン, マルコ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506932(JP,A)
【文献】特開2003-048947(JP,A)
【文献】特開平02-063464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/04
A61L 29/06
A61L 29/12
A61L 29/14
A61L 29/02
A61L 29/00
C08L 27/06
C08L 83/04
C08K 5/10
C08K 3/18
C08K 3/013
C08G 18/50
C08G 18/74
C08G 18/73
C08G 18/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ポリ(塩化ビニル)(PVC)及びシリコーンからなる群の中から選択される、少なくとも1種の溶融加工可能なポリマーと、
(II):
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族、又は脂環式ジイソシアネート;及び
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式又は芳香族ジオール;
に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種のフッ素化ポリウレタンポリマー[F-TPUポリマー]とを含む組成物[組成物(C)]であって、
前記溶融加工可能なポリマーが前記F-TPUポリマーと異なっている、組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記組成物(C)が、前記組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも60重量%及び最大で99.99重量%の量の前記溶融加工可能なポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
- 前記少なくとも1種のモノマー(b)は、ヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー]、すなわち、2つの鎖末端(一方又は両方の鎖末端は、少なくとも1個の-OH基で終端する)を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(RPF)]を含むポリマーであり、
- 前記少なくとも1種のモノマー(c)は、4,4’-メチレン-ジフェニレン-ジ-イソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサン-ジイソシアネート(HDI)、2,4-トルエン-ジイソシアネート、2,6-トルエン-ジイソシアネート、キシリレン-ジイソシアネート、ナフタレン-ジイソシアネート、パラフェニレン-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシル-メタン-ジイソシアネート、及びシクロヘキシル-1,4-ジイソシアネートを含む、好ましくはこれらからなる群の中で選択され、
- 前記少なくとも1種のモノマー(d)は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、N,N-ジエタノールアミン及びN,N-ジイソプロパノールアニリンを含む、好ましくはこれらからなる群において選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記F-TPUポリマーが、[モノマー(a)]ポリエーテル型ジオール、ポリエステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオール及びポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオールに由来する繰り返し単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物(C)が、前記組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%及び最大で40重量%の量の前記F-TPUポリマーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物(C)が、ジ-2-エチル-ヘキシル-フタレート(DEHP)、ビス(2-エチル-ヘキシル)アジペート(DEHA)、ジ-オクチルアジペート(DOA)、ブチリル-トリヘキシル-シトレート(BTHC)、アセチル-トリブチル-シトレート(ATBC)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、ジブチル-セバケート(DBS)、ジ-イソノニル-エステル(DINCH)、ジ-イソノニル-フタレート(DINP)、ジ(2-エチル-ヘキシル)-テレフタレート(DEHT)、トリス(2-エチル-ヘキシル)トリメリテート(TOTM)及びそれらの混合物などの可塑剤;次炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン及び硫酸バリウムなどの放射線不透過性材料;顔料;並びに染料を含む群の中で選択される追加の成分を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
れぞれの前記追加の成分が、前記組成物(C)の100重量%に基づいて約0.01重量%から5重量%までの量で使用される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に定義される組成物[組成物(C)]から得ることができる物品。
【請求項9】
内面及び外面;近接端部;遠位端部;並びに少なくとも1つのルーメンを有する少なくとも1つの細長いチューブ構造物を好ましくは含む、医療用チュービングである、請求項に記載の物品。
【請求項10】
前記医療用チュービングが、血液の輸送及び供給のためのカテーテル、透析チュービング、経腸栄養システム、酸素チュービング、ドレナージチュービング、蠕動ポンプチュービング;より詳しくは、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC又はPICライン)、動脈ライン、ポート、腎注入システム、ドレナージカテーテル及び血液透析カテーテルを含む、好ましくはからなる群の中で選択される、請求項に記載の物品。
【請求項11】
医療物質をヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管に投与するためか;又は前記ヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管の外科手術を行うための;又は患者の体液の体外処理における、請求項9又は10に定義される医療用チュービングの使用。
【請求項12】
医療物質をヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管に投与するための方法であって、請求項9又は10に定義される医療用チュービングの使用を含む方法。
【請求項13】
ト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管の外科手術を行うための方法であって、請求項9又は10に定義される医療用チュービングの使用を含む方法。
【請求項14】
患者の体液の、好ましくは血液の体外処理のための方法であって、請求項9又は10に定義される医療用チュービングの使用を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2017年11月23日出願の欧州特許出願第17203351.6号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全体内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、少なくとも1種の(ペル)フルオロポリエーテルポリマーを含む組成物から製造される、医療用具、その製造のための方法、及び医学におけるそれらの用途及び適用に関する。
【背景技術】
【0003】
医療用チュービング(「カテーテル」とも称される)は、体に挿入されて病気を治療又は外科手術を行うか、或いは患者の体液の体外処理において使用されるかのどちらかであり得る、医療銘柄材料から製造される薄いチューブである。確かに、一方では、医療用チュービングは、流体又は気体のドレナージ又は投与、及び外科用器具によるアクセスを可能にするために、一時的又は永久的のどちらかで、体腔、管又は血管内に挿入されるように設計される。他方では、体外処理のために、医療用チュービングは、患者の血液を透析デバイスに抽出する、外部システムを接続するように設計される。
【0004】
医療用チュービングの製造用の材料及び方法は、チュービングが意図される最終用途に基づいて、選択及び調整される。典型的に使用されるポリマー材料には、シリコーンゴム、ナイロン、水素化ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ラテックス及び熱可塑性エラストマーが含まれる。
【0005】
シリコーンゴムが最も一般的な選択であり、それらは体液に不活性及び非反応性である。しかしながら、それらの機械的性質は弱く、医療用チュービングが使用される時に破損が生じ得る。
【0006】
医療用チュービングを使用する際の、とりわけ長時間使用される場合の欠点の1つは、それらの表面上の血小板の凝集であり、それは血栓を形成することがあり、従って血流感染(STREAM INFECTION)及び血栓症などの合併症をもたらすことがある。
【0007】
体液との医療用チュービングの生体適合性の改良、並びにトロンビン形成の低下に研究努力が向けられている。例えば、医療用チュービングが製造されるポリマー材料の表面を永久結合することができる生物活性分子が研究されている。
【0008】
国際公開第97/06195号パンフレット(SANTERRE PAUL J.)には、ポリマー、好ましくはポリウレタンと、(I)少なくとも1つの極性硬質セグメントを含むセグメント化ブロックオリゴマーコポリマーの中央部、及び(II)末端ポリフルオロオリゴマー基を有する高分子であって、耐酵素分解性を改良するために表面改質性として作用する高分子とを含む組成物が開示されている。
【0009】
米国特許第8603070号明細書(ANGIODYNAMICS,INC.)は、好ましくは、末端ポリフルオロオリゴマー基を特徴とするフルオロアルキルフルオロポリマーである、フルオロポリマー添加剤を含むカテーテル組成物を提供する。
【0010】
上記の文献の両方が、式(H-(OCHCH-(CF-CF(式中、Nは1~10の範囲であり、Mは1~20の範囲である))のオリゴマーフルオロ-アルコールを開示している。
【0011】
米国特許第20160310641号明細書(INTERFACE BIOLOGICS INC.;ANGIODYNAMICS,INC.)は、熱可塑性ポリウレタンベースポリマーとフッ素化添加剤とを含む混合剤、及びカテーテルなどの医療用具の製造におけるそれらの使用に関する。フッ素化添加剤は、(I)硬質セグメントジイソシアネートを軟質セグメントジオールと反応させてプレポリマーを形成する工程と(II)プレポリマーをポリフルオロアルキルアルコールと反応させる工程とによって形成され得る。ポリフルオロアルキルアルコールは、例えば1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-デカノール;1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノール;1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール;及び1H,1H-ペルフルオロ-1-ブタノールから選択され得る。この文献において開示される混合剤は、血液適合性を表面に付与するために及び/又は血栓形成性が低減された保圧装置に表面を提供するために有用であると言われている。
【0012】
欧州特許出願公開第1864685A号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)には、医療用インプラントの製造方法が開示されており、前記方法は、
- ヒドロキシル末端基を含む非官能性、一官能性及び二官能性ペルフルオロポリエーテルと適した反応体との混合物を反応させて熱可塑性エラストマーを製造する工程と;
- そのように得られた熱可塑性エラストマーを成形して医療用インプラントの少なくとも一部をもたらす工程とを含む。医療インプラントはとりわけ、血管補綴、心臓手術装置、血管形成術装置、血管以外の身体通路のための管腔内補綴、輸液療法装置、血液透析インプラント及び創傷包帯装置から選択される。
【0013】
しかしながら、この文献は、熱可塑性エラストマーが添加剤として使用される組成物を開示も示唆もしない。
【0014】
米国特許第4935480号明細書(ZDRAHALA RICHARD J.ら著)には、熱可塑性フッ素化ポリエーテルウレタン、その調製方法及びこの材料から製造される医療用具が開示されている。この文献において説明されるフッ素化モノマーは、好ましくは、1~12個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基を含むポリエーテルグリコールである。この文献は、ポリエーテルウレタンポリマーの製造のためのモノマーとして(ペル)フルオロポリエーテルポリマー(PFPE)の使用を開示も提案もしない。
【0015】
国際公開第2018/029133号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)には、とりわけポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)ポリマー及び芳香族スルホンポリマーから選択される、少なくとも1種の芳香族ポリマー、少なくとも1種のフッ素化ポリウレタンポリマー、及び少なくとも1つの追加の成分を含む組成物が開示されている。この文献はまた、上記の組成物が緻密なフィルム及び多孔性膜の製造のために有用であることを開示する。
【0016】
国際公開第2018/029131号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY,S.P.A.)には、少なくとも1種のフッ素化ポリウレタンポリマーを含む組成物から調製される多孔性膜が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
良い機械的性質を示しながら生体適合性である、患者の体内で及び患者の体外の生物流体の処理用の両方で用いるために適した、医療用具、とりわけ医療用チュービング(以下に「カテーテル」とも称される)の製造に適した組成物を提供する問題に本出願人は直面した。
【0018】
上記問題は、溶融加工可能なポリマーと、(ペル)フルオロポリエーテル部分を含む少なくとも1種のフッ素化熱可塑性ポリウレタンポリマー(F-TPU)とを含む組成物によって解決できることを本出願人は驚くべきことに見出した。
【0019】
したがって、第1の態様では、本発明は、
(I)少なくとも1種の溶融加工可能なポリマーと、
(II)
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族、又は脂環式ジイソシアネート;及び
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式又は芳香族ジオール;
に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1種のフッ素化ポリウレタンポリマー[F-TPUポリマー]とを含む組成物[組成物(C)]であって、
前記溶融加工可能なポリマーが前記F-TPUポリマーと異なっている、組成物[組成物(C)]に関する。
【0020】
好ましい実施形態によると、前記F-TPUポリマーは、[モノマー(a)]ポリエーテル型ジオール、ポリエステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオール及びポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオールに由来する繰り返し単位をさらに含む。
【0021】
好ましい実施形態によると、前記少なくとも1種の溶融加工可能なポリマーは非フッ素化ポリマーである。
【0022】
より好ましい実施形態によると、前記少なくとも1種の溶融加工可能なポリマーは、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリオレフィン及びシリコーン(ポリシロキサンとも称される)を含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択される。
【0023】
第2の態様において、本発明は、上で定義した組成物(C)から製造される物品に関する。
好ましい実施形態によると、前記物品は医療用具、とりわけ医療用チュービングである。
【0024】
第3の態様において、本発明は、
- 医療物質をヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管に投与するためか、又は
- ヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管の外科手術を行うための、又は
- 患者の体液の体外処理における、本発明による医療用チュービングの使用に関する。
【0025】
第4の態様において、本発明は、医療物質をヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管に投与するための方法であって、本発明による医療用チュービングの使用を含む方法に関する。
【0026】
第5の態様において、本発明は、ヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管の外科手術を行うための方法であって、本発明による医療用チュービングの使用を含む方法に関する。
【0027】
第6の態様において、本発明は、患者の体液の、好ましくは血液の体外処理のための方法であって、本発明による医療用チュービングの使用を含む方法に関する。
【0028】
驚くべきことに、とりわけ医療用チュービングなどの医療用具の製造において典型的に使用される溶融加工可能なポリマーと混合してF-TPUポリマーが提供されるとき、最終的な医療用具の抗血栓性が悪影響を及ぼされないことを本出願人は見出した。いかなる理論にも拘束されなければ、これは、医療用具の表面にF-TPUポリマーによって提供される撥水性及び撥油性の性質のためであると本出願人は考える。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書の及び以下の請求項の目的のためには:
- 化合物、化学式又は式の一部を特定する記号又は数字の前後の括弧の使用は、それらの記号又は数字を本文の残りから区別し易くする目的を有しているに過ぎず、そのため前記括弧は省略される場合もあり得;
- 「溶融加工可能な」という表現は、そのガラス転移温度(T)よりも高い温度で造形品(例えばチューブ、パイプ等)に加工(すなわち、製造)され得るポリマーを示すことが意図されており、「溶融加工可能なポリマー」という表現は、本明細書では、(A)硬化工程前のエラストマーポリマー、(B)(半)結晶性ポリマー、並びに(C)エラストマーセグメントと半結晶性セグメントの両方を含むポリマーを含むことが意図されており、
- 「エラストマー」という用語は、非晶質ポリマー、又は結晶化度が低く(結晶相が20体積%未満)ASTM D3418に従って測定される室温未満のガラス転移温度値(T)を有するポリマーを指すことが意図されており、より好ましくは、本発明によるエラストマーは、ASTM D-3418に従って測定される10℃未満、更により好ましくは5℃未満のTを有し、
- 「(ペル)フルオロポリエーテル」という用語は、「完全に若しくは部分的にフッ素化されたポリエーテル」ポリマーを示すことを意図し、
- 「(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖」という表現は、部分的に又は完全にフッ素化された直鎖又は分岐のポリオキシアルキレン鎖を示すことが意図され、
- 「カテーテル」という用語は「医療用チュービング」の同義語として使用され、それは、体に挿入されて病気を治療又は外科手術を行うか、或いはは患者の体液の体外処理において使用されるかどちらかであり得る、中空円筒の形態の、好ましくは細長い形態の医療用具を示すことが意図される。
【0030】
好ましくは、溶融加工可能なポリマーが硬化工程の前の(A)少なくとも1種の弾性ポリマーであるとき、それは、ポリオレフィン系エラストマー(POBE)及びシリコーン(ポリシロキサン)を含む、より好ましくはそれらからなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、溶融加工可能なポリマーが(B)少なくとも1種の(半)結晶性ポリマーであるとき、それは、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を含む、より好ましくはそれらからなる群から選択される。
【0032】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、及びさらにより好ましくは少なくとも85重量%の量の前記溶融加工可能なポリマーを含む。
【0033】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量に基づいて最大で99.99重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、及びさらにより好ましくは最大で96重量%の量の前記溶融加工可能なポリマーを含む。
【0034】
好ましくは、F-TPUポリマーは、ブロックコポリマー、すなわちブロック(「セグメント」とも称される)を含み、各ブロックが、上で定義されたとおりの、任意選択のモノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)又はモノマー(d)に由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0035】
好ましくは、前記F-TPUポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)技術によって測定されるとき30,000~約150,000DAの重量平均分子量を有する。
【0036】
有利には、F-TPUポリマーの高い分子量は、ポリマーが体液と接触する時にフッ素化分子を放出しないことを保証する。
【0037】
好ましくは、前記F-TPUポリマーは、約120℃~約240℃の融点(T)を有する。
【0038】
存在しているとき、前記少なくとも1種のモノマー(a)は、500~4,000DA、より好ましくは1,000~4,000DAの数平均分子量を有する。
【0039】
好ましくは、前記任意選択の少なくとも1種のモノマー(a)は、ポリ(エチレン)グリコール、ポリ(プロピレン)グリコール、ポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(エタンジオール-1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(1,6-ヘキサンジオール-ネオペンチル)グリコールアジペート、ポリ-カプロラクトン-ジオール(PCL)及びポリカーボネート-ジオールを含む群の中で選択される。ポリ(テトラメチレン)グリコール、ポリ-カプロラクトン-ジオール及びポリカーボネート-ジオールが、特に好ましい。
【0040】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(b)は、ヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー]、すなわち、2つの鎖末端(一方又は両方の鎖末端は、少なくとも1個の-OH基で終端する)を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(RPF)]を含むポリマーであり、
好ましくは、前記鎖(RPF)の少なくとも1つの鎖末端は、式:
-CH(OCHCH-OH (I)
(式中、
Tは0、又は1~5である)
の基で終端する。
【0041】
より好ましくは、前記鎖(RPF)の両方の鎖末端が、上で定義されたとおりの式(I)の基で終端する。
【0042】
好ましくは、前記鎖(RPF)は、下記式:
-O-D-(CFXZ1-O(R)(CFXZ2-D-O-
[式中、
Z1及びZ2は、互いに等しいか又は異なり、1以上であり;X及びXは、互いに等しいか又は異なり、-F又は-CFであり、但し、Z1及び/又はZ2が1を超える場合、X及びXは、-Fであり;
D及びDは、互いに等しいか又は異なり、1~6個、更により好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1個のペルフルオロアルキル基で任意選択により置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は独立して、
(I)-CFXO-(式中、XはF又はCFである)、
(II)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現ごとに等しいか又は異なり、F又はCFであり、ただし、Xの少なくとも1つは、-Fであることを条件とする);
(III)-CFCFCWO-(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Wのそれぞれは、F、CL、Hである);
(IV)-CFCFCFCFO-;
(V)-(CF-CFZ-O-(式中、Jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R(F-A)-Tの基であり、R(F-A)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-(Xのそれぞれのそれぞれは、独立して、F又はCFである)の中から選択され、Tは、C~Cペルフルオロアルキル基である)
からなる群から選択される。
【0043】
より好ましくは、鎖(R)は、以下の式(R-A)~式(R-C):
(R-A) -(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)
(式中、M、N、P、Qは、0、又は鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、但し、P及びQが同時に0である場合、Nは0でなく、Mが0以外の場合、M/N比は好ましくは0.1~20であり、(M+N)が0以外の場合、(P+Q)/(M+N)は好ましくは0~0.2であることを条件とする);
(R-B) -(CFCF(CF)O)(CFCFO)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、A、B、C、Dは0、又は鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、但し、A、C及びDの少なくとも1つは0でなく、Bが0以外の場合、A/Bは、好ましくは0.1~10であり、(A+B)が0以外の場合、(C+D)/(A+B)は、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.01~0.2であることを条件とする);
(R-C) -(CFCF(CF)O)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、E、F、Gは、0、又は鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、Eが0以外の場合、(F+G)/Eは好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.01~0.2である)
から選択される。
【0044】
鎖(R)が、P及びQが0である、上で定義されたとおりの式(R-A)に適合するPFPEポリマーが、本発明で特に好ましい。
【0045】
好ましい実施形態においては、前記PFPEポリマーは、以下の式(PFPE-I):
HO-(CHCHO)-CH-(RPF)-CH(OCHCH-OH(PFPE-I)
(式中、
T及びUはそれぞれ独立に0又は1~5であり、
PFは上で定義されたとおりである)
に適合する。
【0046】
好ましくは、前記PFPEポリマーは、400~10,000DA、より好ましくは1,000~5,000の数平均分子量を有する。
【0047】
好ましい実施形態では、モノマー(a)とモノマー(b)との間のモル比は、2~20、より好ましくは2~10である。
【0048】
好ましい実施形態では、モノマー(b)の量は、F-TPUポリマーが、F-TPUポリマーの重量に基づいて1~80重量%、好ましくは1~70重量%のフッ素を含むようなものである。
【0049】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(c)は、500DA以下、好ましくは10~500DAの数分子量を有する。
【0050】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(c)は、4,4’-メチレン-ジフェニレン-ジ-イソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサン-ジイソシアネート(HDI)、2,4-トルエン-ジイソシアネート、2,6-トルエン-ジイソシアネート、キシリレン-ジイソシアネート、ナフタレン-ジイソシアネート、パラフェニレン-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシル-メタン-ジイソシアネート、及びシクロヘキシル-1,4-ジイソシアネートを含む、好ましくはこれらからなる群の中で選択される。
MDI及びHDIが、特に好ましい。
【0051】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(d)は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、N,N-ジエタノールアミン及びN,N-ジイソプロパノールアニリンを含む群において、好ましくはこれらからなる群において選択される。BDO及びHDOが、特に好ましい。
【0052】
好ましい実施形態においては、モノマー(c)及びモノマー(d)に由来するブロックの合計は、F-TPUポリマーの総重量に基づいて10~60重量%である。
【0053】
当業者は、存在する場合モノマー(b)及び存在する場合モノマー(a)に由来する繰り返し単位を含むブロックがゴム様ブロックである一方で、モノマー(c)及びモノマー(d)に由来する繰り返し単位を含むブロックが硬いブロックであることを容易に理解する。
【0054】
好ましい実施形態では、前記モノマー(b)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックB]の少なくとも80%は、それらの末端の少なくとも1つで、モノマー(c)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックC]を介してモノマー(a)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックA]に結合される。
言い換えれば、ブロックBの少なくとも80%は、以下のタイプ:-[A-C-B-C]-
の配列に含まれる。
【0055】
有利には、F-TPUポリマーは、当技術分野で公知の方法、例えば、上で定義されたモノマーの溶液の押出し、射出成形、キャスティングに従って、又は米国特許第5332798号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に開示された手順に従って調製され得る。
【0056】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、更により好ましくは少なくとも4重量%の量の前記F-TPUポリマーを含む。
【0057】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量に基づいて最大で40重量%、より好ましくは最大で20重量%、及びさらにより好ましくは最大で15重量%の量の前記F-TPUポリマーを含む。
【0058】
組成物(C)は任意選択により、医療用チュービングの最終使用目的に基づいて選択され得る、追加の成分を含み、生体適合性である。
【0059】
前記追加の成分は、ジ-2-エチル-ヘキシル-フタレート(DEHP)、ビス(2-エチル-ヘキシル)アジペート(DEHA)、ジ-オクチルアジペート(DOA)、ブチリル-トリヘキシル-シトレート(BTHC)、アセチル-トリブチル-シトレート(ATBC)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、ジブチル-セバケート(DBS)、ジ-イソノニル-エステル(DINCH)、ジ-イソノニル-フタレート(DINP)、ジ(2-エチル-ヘキシル)-テレフタレート(DEHT)、トリス(2-エチル-ヘキシル)トリメリテート(TOTM)などの可塑剤、及びそれらの混合物;次炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、三酸化ビスマス、タングステン及び硫酸バリウムなどの放射線不透過性材料;顔料;及び染料を含む群の中で選択される。
【0060】
前記生体適合性成分のそれぞれは、前記組成物(C)の100重量%に基づいて約0.01重量%から5重量%までの量において使用され得る。
【0061】
本発明による医療用チュービングは、射出成形及び(同時)押出法など、様々な方法を使用して製造され得る。
【0062】
典型的に、本発明による医療用チュービングは、内面及び外面;近接端部;遠位端部;並びに少なくとも1つのルーメンを有する、上で定義した組成物(C)から製造される少なくとも1つの細長いチューブ構造物を含む。
【0063】
好ましくは、前記医療用チュービングは、1つ、2つ、3つ以上のルーメンを含む。
【0064】
前記少なくとも1つのルーメンは有利には、本発明による組成物(C)でコートされ得る。
【0065】
好ましくは、前記医療用チュービングは、0.1~1.5MMの壁厚-前記ルーメンと前記外面との間の距離として測定される-を有する。
【0066】
好ましくは、少なくとも1つのルーメンは、より好ましくは1.9CM未満、さらにより好ましくは1.5CM未満の内径を有する、円形断面を有する。
【0067】
本発明による適した医療用チュービングには、血液の輸送及び供給のためのカテーテル、透析チュービング、経腸栄養システム、酸素チュービング、ドレナージチュービング、蠕動ポンプチュービング;より詳しくは、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入中心カテーテル(PICC又はPICライン)、動脈ライン、ポート、腎注入システム、ドレナージカテーテル及び血液透析カテーテルを含む、好ましくはそれらからなる群の中で選択されるカテーテルが含まれる。
【0068】
上記のとおり、本発明による医療用チュービングは、患者の体の外側にあるままであり且つ縫合翼によって前記少なくとも1つの細長いチューブ構造物に接続されている、少なくとも1つのエクステンションチューブをさらに含むことができる。縫合翼は典型的に、例えば縫合又は他の適した手段によって患者の皮膚に付着されるために設計される。
【0069】
本発明による医療用チュービングがPICCであるとき、それは典型的に、前記エクステンションチューブの自由端においてクランプ及びルアーテーパーを含む。
【0070】
有利には、本発明による医療用チュービングは、医療物質を投与するためか又はヒト又は動物の体の少なくとも1つの体腔、管又は血管の外科手術を行うためのどちらかで使用される。
【0071】
ヒト又は動物の体の体腔の例は、心腔、膀胱、腹腔、肺、子宮を含む。
【0072】
ヒト又は動物の体の管又は血管の例は、動脈、静脈、尿管、硬膜上腔、クモ膜下腔を含む。
【0073】
有利には、本発明による医療用チュービングは、患者の体液の、好ましくは全血液又は血漿の体外処理において使用される。
【0074】
有利には、本発明による医療用チュービングは、とりわけΓ線、電子ビーム放射線及びエチレンオキシド滅菌などの適した物理的及び化学的方法によって滅菌され得る。
【0075】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0076】
本発明は、本明細書で以下、次の実験の部に報告される実施例によってより詳細に例示される。実施例は単に例示のためのものであり、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【実施例
【0077】
材料及び方法
モノマー(a)
PTMG 1000ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール- 約1,000の分子量(MW)及び約107~118MGKOH/Gのヒドロキシル価を有する、両方の末端にヒドロキシル基を有する直鎖ポリエーテルグリコール。
【0078】
式:
H(OCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHO(CHCHO)Hを有するモノマー(b)
P=1.6であり、比M/N>1及び約1,700のMW。
モノマー(c):ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)
モノマー(d):1,4-ブタンジオール(BDO)
触媒:ネオデカン酸亜鉛
溶剤(テトラヒドロフランなど)及び添加剤は、SIGMA-ALDRICHから得られた。
【0079】
(ショアーA=74を有する)ペレットの形態のカテーテル用のPVC医療銘柄がTPV COMPOUND S.R.L.(イタリア)から得られた。
【0080】
市販のPVC血液ライン(以下に「カテーテル」と称される)が購入され、そのままで使用された。
【0081】
F-TPUポリマーの重量平均分子量は以下の技術によるゲル透過クロマトグラフィー(GPC)技術によって定量された:F-TPUポリマーの溶液は、テトラヒドロフラン(THF)中0.5%WT./VOLの濃度で調製された。次に、SORVALL RC-6PLUS遠心分離機を使用して溶液を20,000RPMで60分間室温で遠心分離し、上澄み液をGPC装置に注入した。滞留時間及び分子量を相関させるために、検量線は、1,700~4,000,000DAの分子量を有するポリスチレンの狭い標準から計算された。
【0082】
F-TPUポリマーの調製
F-TPUポリマー試験片1及び比較用H-TPU1は、上述のモノマーから出発し、上で引用した米国特許第5332798号明細書(AUSIMONT S.P.A.)の実施例15に詳述されたのと同じ手順に従って調製した。
【0083】
モノマーは、以下の表1に報告されるモル比で使用した。
【0084】
【0085】
混合物の調製
ペレットの形態の9GのPVC及び上に開示されたように調製された1GのF-TPU1を磁気撹拌下で40GのTHFに添加した。
【0086】
60℃で1.5時間後に、均質な溶液が得られた(以下に‘混合物1’と称される)。
【0087】
同じ手順を使用して、10GのPVCペレットを40GのTHFに溶解し、このように比較用混合物2を得た。
【0088】
フィルムの調製
(約35ミクロンの厚さを有する)平らな均質なフィルムが、上に開示されたように得られた混合物1及び混合物2のそれぞれを自動キャスティングナイフによって適した平滑なガラス支持体の上に薄く覆うことによって調製された。キャスティング後に、溶媒を1時間40℃での真空オーブン中で蒸発させた。
【0089】
本発明による混合物1から得られたフィルム1。
比較用フィルム2Cは比較用混合物2(高純度PVC)から得られた。
【0090】
コートされたカテーテルの作製
PVCカテーテルは、THF中10重量%のF-TPU1の混合物にそれを浸漬して、それを40℃の炉内で1時間の間乾燥させることによってコートされた(カテーテル1)。
【0091】
比較として、PVCカテーテル2Cは、コーティングせずに、得られたまま使用された。
【0092】
実施例1-接触角(SCA)の測定
水(HO)及びヘキサデカン(C16)に対する接触角をASTM D5725-99に従ってDSA10計測器(ドイツのKRUESS GMBH製)を使用して25℃で上に記載されたように得られたフィルム上で及びカテーテル上で評価した。
【0093】
結果は次の表2に報告されている。
【0094】
【0095】
本発明によるフィルム1及びカテーテル1が両方とも、高純度PVCで製造された、フィルム2C()及びカテーテル2C()よりも疎水性及び疎油性であることを上記の結果は示す。
【0096】
実施例2 - 機械的性質の評価
フィルム1及びフィルム2C()の機械的特性は、ASTM D 638標準手順(タイプV、グリップ距離=25.4MM、初期長さLO=21.5MM)に従って、室温(23℃)で評価した。速度は、1~50MM/分に設定された。
【0097】
上に開示されたように調製されたフィルム1及びフィルム2Cについて得られた平均の結果を以下の表3に記載する。
【0098】
【0099】
上記の結果は、本発明によるフィルム1が高純度PVCで製造されたフィルム2C()よりも改良された機械的性質を有することを示す。
【0100】
実施例3-摩擦係数(COF)の測定
LF PLUS LLOYDダイナモメーターを使用して、ASTM D1894に従う摩擦係数(COF)試験を混合物1及び混合物2のそれぞれから出発して上に記載されたように調製されたフイルム上で実施した。
3つの異なった測定を行ない、それぞれのフィルムの平均値を評価した。
【0101】
静的及び動的COFの結果を以下の表4に記録する。
【0102】
【0103】
上記の結果は、本発明によるフィルム1はフィルム2C()と比較して大きく低減されたCOFの値を有することを示した。
【0104】
実施例4- 生体適合性試験
上に記載されたように得られたF-TPU1の生体適合性を以下のようにヒトの血漿を使用して評価した:
- ISO 10993-5:2009に従う溶出試験による、細胞毒性(定性的及び定量的評価);
- ASTM F756-13に従う溶血性(直接及び間接接触の両方);
- PT(プロトロンビン時間)、UPTT(部分トロンボプラスチン時間)及びフィブリノゲンを評価する、EN ISO10993-4:20017に従う血栓形成性。
【0105】
F-TPU1は細胞毒性ではなく、溶血性でないと考えられなければならず、ヒトの血漿の変化をもたらさないことを結果は実証した。