(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】耐引掻性及び耐傷性のある自動車用コーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20230213BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20230213BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230213BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D201/02
C09D7/63
C09D163/00
(21)【出願番号】P 2020531538
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2018083989
(87)【国際公開番号】W WO2019110808
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ターレイ,ケヴィン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サンキ,パラグクマール
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ガジャナン
(72)【発明者】
【氏名】アム ラマンナ,プラサッド
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ドナルド エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャン,バーラティ
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-512427(JP,A)
【文献】特開2006-219648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2K溶媒型コーティング系であって、
以下を含むエポキシ成分(A)
i)
側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂、
ii) 溶媒、
iii) 式(I)
[(ER)
x(R’O)
y(HO)
z(R’’)
t(SiO
(4-x-y-z-t))]
m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)及び
iv) 任意に、少なくとも1種の添加剤、及び
以下を含む酸性樹脂成分(B)、
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に、少なくとも1種の触媒、
そして、
任意に、少なくとも1種の添加剤
を含む、2K溶媒型コーティング系。
【請求項2】
式(I)の少なくとも1種の化合物が、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)
(ER)
x(R’O)
ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)、
(R’O)
ySi (Ib)
(式中、yは4である)、
(R’O)
y(R‘‘)
tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の2K溶媒型コーティング系。
【請求項3】
酸性樹脂成分(B)が少なくとも1種の触媒を含み、前記触媒がビスマスネオデカノエート、ジブチルスズラウレート(DBTL)、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択される、請求項1に記載の2K溶媒型コーティング系。
【請求項4】
前記
側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂が、(メタ)アクリルモノマーと、グリシジル基含有不飽和モノマーとの共重合
体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の2K溶媒型コーティング系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング系の成分(A)及び(B)を組み合わせる及び混合することによって得られる2K溶媒型コーティング組成物であって、
側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂、
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に、触媒
任意に、添加剤、及び
式(I)
[(ER)
x(R’O)
y(HO)
z(R’’)
t(SiO
(4-x-y-z-t))]
m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、
を含み、式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%が、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である、2K溶媒型コーティング組成物。
【請求項6】
式(I)の少なくとも1種の化合物が、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)
(ER)
x(R’O)
ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)、
(R’O)
ySi (Ib)
(式中、yは4である)、
(R’O)
y(R‘‘)
tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項5に記載の溶媒型コーティング組成物。
【請求項7】
基材、
任意に、前記基材上のプライマーコーティング、
ウェットベースコートコーティング、及び
前記ウェットベースコート上の溶媒型2Kクリアコートウェットコーティング
を含み、
前記溶媒型2Kウェットコーティングが請求項5又は6に記載の溶媒型コーティング組成物である、ウェットコーティングした基材。
【請求項8】
式(I)の少なくとも1種の化合物が、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)
(ER)
x(R’O)
ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)、
(R’O)
ySi (Ib)
(式中、yは4である)、
(R’O)
y(R‘‘)
tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載のウェットコーティングした基材。
【請求項9】
式(Ia)の化合物を含み、式(Ia)の化合物が、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項7に記載のウェットコーティングした基材。
【請求項10】
式(Ib)の化合物を含み、式(Ib)の化合物が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラヘキソキシシランからなる群から選択される、請求項7に記載のウェットコーティングした基材。
【請求項11】
前記基材が金属を含むか又は熱可塑性ポリマーを含む、請求項7に記載のウェットコーティングした基材。
【請求項12】
請求項7のウェットコーティングした基材を乾燥及び硬化させることによって得られる、耐引掻性及び耐傷性のあるコーティングした基材であって、
任意に、前記基材上の乾燥及び硬化させたプライマーコーティング、
乾燥及び硬化させたベースコート、及び
乾燥及び硬化させたクリアコートを含み、前記乾燥及び硬化させたクリアコートが、
側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂とカルボン酸樹脂の架橋樹脂反応生成物を含み、
ここで架橋樹脂が、カルボン酸樹脂のカルボキシル基又は
側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂のエポキシ基と式(I)
[(ER)
x(R’O)
y(HO)
z(R’’)
t(SiO
(4-x-y-z-t))]
m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そして
m=1である)の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)との反応によって得られる、シラニルヒドロキシエステル基の側鎖単位を含み、そして
前記乾燥及び硬化させたクリアコートが、架橋性シリケート基をさらに含む、耐引掻性及び耐傷性のあるコーティングした基材。
【請求項13】
式(I)の少なくとも1種の化合物が、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)
(ER)
x(R’O)
ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)、
(R’O)
ySi (Ib)
(式中、yは4である)、
(R’O)
y(R‘‘)
tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項12に記載の耐引掻性及び耐傷性のあるコーティングした基材。
【請求項14】
基材をコーティングする方法であって、
i)以下の成分を含むエポキシ成分(A):
側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂、
溶媒、
式(I):
[(ER)
x(R’O)
y(HO)
z(R’’)
t(SiO
(4-x-y-z-t))]
m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及び
任意に、少なくとも1種の添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に、少なくとも1種の触媒、及び
任意に、少なくとも1種の添加剤
を組み合わせて混合することによって2Kコーティング組成物を調製する工程、
ii) 前記2Kコーティング組成物を基材に適用する工程、及び
iii) 前記基材に適用した組成物を乾燥及び硬化させる工程
を含む、基材をコーティングする方法。
【請求項15】
前記2Kコーティング組成物をウェットベースコート組成物上に適用し、前記ベースコート及び2Kコーティング組成物を同時に乾燥及び硬化させる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン又はシリケート成分を含有し、引掻及び傷に対する感受性が低減された自動車用クリアコート組成物に関するものであり、コーティングを適用する方法に関するものであり、及びコーティングを含む物品、特に自動車及び他の車両に関するものである。硬化したコーティングは、エポキシ酸架橋樹脂のクリアコートを有し、さらなる架橋性官能基を提供するシラン及び/又はシリケート成分を含む。
【背景技術】
【0002】
典型的な自動車用コーティングでは、4つ以上の層が車両の金属表面に適用される。従来の方法は適切であり、自動車産業において商業的に世界中で使用されているものの、コーティングの改善された耐候性、耐傷性及び耐引掻性を含む寿命延長に対して高まり続ける需要が原因で、これらパラメータの改善を獲得するための研究開発が行われている。さらに、引掻又は傷の発生後にコーティングを処理し、そのコーティング品質の一部又はすべてを復元する、改善されたリフロー特性を有するコーティングが求められている。
【0003】
従来、車両のコーティングプロセスは、車体基材の前処理、腐食防止層、シーラー層、プライマー及びトップコートの適用を含む。前処理により、表面が除去及び洗浄されて、電析操作で適用される腐食保護層の結合が可能となる。次に、腐食防止、水漏れの排除、チッピングの最小化を目的として、シーラーを適用する。次いでプライマーを適用して、表面と、トップコートの成分として適用されるベースコートとの間の接着を促進する。プライマーは、後続の層により滑らかな表面を付与し、硬化したコーティングのチッピング防止特性を支持する。最後に、ベースコートとクリアコートとを含むトップコートが適用される。ベースコートは一般に色成分を含有する層であり、一方でクリアコートは光沢、滑らかさ、そして耐候性及び耐傷性と耐引掻性を含む表面安定性を提供する。
【0004】
従来のクリアコーティング組成物は、1成分(1K)系又は2成分(2K)系として利用可能である。用いられる樹脂には、アクリルメラミン型、ポリウレタン型及びエポキシ酸型が含まれる。
【0005】
トップコーティング組成物は、UV分解、水染み、引掻及び傷に対する耐性性能を高めるために、種々の添加剤又は化学修飾を含むことがある。例えば、日光退色及びUV分解に対する耐性を付与するために、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び紫外線吸収剤(UVA)の組み合わせが添加されることがある。
【0006】
環境による表面のエッチングにより表面外観の品質は低下し、クリアコート表面に水染み及び変形又はくぼみなどの外観不良をもたらす。耐引掻性は、経時的に、そして曝露を介して、車両表面の外観に影響を及ぼすもう1つの要因である。一例として、細かい引掻又は傷は、度重なる洗車の結果として生じることがあり、このような処理によって表面が機械的な摩耗を受けることがある。このような細かい引掻は、表面の光の反射に影響するのみであるが、輝き又は光沢を損失させるおそれがある。しかしながら、他の引掻が原因でクリアコート層が壊れてベースコートが露出し、実際にはさらに大きな損傷につながるおそれがある。
【0007】
クリアコート組成物の1つの重要な特性は、耐衝撃性又は耐引掻性に加え、塑性流動に対する耐性である。熱の影響下におけるコーティングの塑性流動は、表面に「自己修復」特性をもたせることがあり、表面コーティングのリフローによって、細かい引掻及び他の表面欠陥は最小化されるか、又はさらには取り除かれる。よって表面の光沢特性は、リフローの発生により少なくとも部分的に復元されることがある。様々な種類のコーティング組成物が、樹脂の化学的性質、用いる硬化剤及び存在する他の添加剤に応じて、種々のリフロー特性を有する。
【0008】
記述した実施形態の記載内で、用語「トップコート」は、この層を説明するために使用されていても、コーティングの特性を改善するためにさらなる層がクリアコートトップコートにしばしば適用される場合があることに留意されたい。
【0009】
コーティング産業及び特に自動車産業は、延び続ける寿命のために、良好な表面外観、保護、光沢を提供する表面コーティングを調製する努力を続けている。さらに、「自己修復」するリフロー特性を有する表面も求められている。
【0010】
U.S.5,814,703(Yamayaら)は、有機樹脂及び3~100のSi単位のシリコーンオリゴマーを含有するコーティング組成物を記載している。Si単位の一部は、基材又は有機樹脂と相互作用してコーティングの親水性を高め、環境からの汚染物質による汚染を防ぐ官能基を含有する炭化水素基を有する。存在する官能基には、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル及びアルケニル基が含まれる。
【0011】
U.S.5,470,616(Uenishiら)は、コロイドシリカと、官能基含有成分を有する加水分解性シラン化合物の少なくとも1つの種類との混合物の、共加水分解及び縮合によって得られるシリカ重縮合物表面コーティングを有する、成形品を記載している。記載されている官能基には、ビニル基、メルカプト基、アミノ基及びエポキシ基が含まれる。
【0012】
U.S.2003/0186066(Monkiewiczら)は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル樹脂モノマー、アクリルモノマーに基づくコポリマー、エポキシモノマーに基づくコポリマー、及びアミノアルキルシランを含有し、アクリル樹脂の官能性アクリレート基に対するアミノアルキルシランのアミノ基のモル比が7:1未満である、水を含まない組成物を記載している。組成物は、ケイ酸エステル及び少なくとも1種のアルキルシリケート、及び/又はオルガノシランをさらに含有してよい。コーティングは、主にアルミニウム基材のコーティングを対象とした空気乾燥配合物である。
【0013】
U.S.2006/0079637(Yaun)は、a)脂環式又はポリ脂環式エポキシ化合物、b)アルコキシシラン又はシリケート反応性希釈剤、及びc)硬化触媒を含有するプライマー組成物を記載している。この開示によると、硬化反応は、大気水分及び酸の存在下における、(a)のエポキシ構造と(b)に形成されたシラノール基との間の開環重合反応を含む。
【0014】
U.S.6,316,572(Nambuら)は、(A)エポキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物の混合により得られる樹脂及び/又はエポキシ基含有及びカルボキシル基含有ビニルコポリマーに基づく樹脂、(B)式(I):
【化1】
のポリマー鎖の炭素原子に結合した加水分解性シリル基を有するビニルコポリマー、
及び(C)式(VII):
【化2】
のケイ素化合物、
及び/又はその部分的加水分解縮合物を含有する、トップコーティング組成物を記載している。式(I)及び(VII)のすべてのR基は、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリール基である。
【0015】
U.S.6,265,073(Nakamuraら)は、(A)エポキシ基を有する樹脂、(B)カルボキシル基を有する樹脂、及び(C)式(I):
【化3】
(式中、R基は水素、アルキル、アリール、又はアラルキル基であり、aは0~2である)のケイ素化合物を含有する、トップコーティング組成物を記載している。
【0016】
U.S.7,790,236(Vijverbergら)は、エポキシ官能性バインダー及びエポキシ基に反応性の架橋剤を有するコーティング組成物を記載している。光沢損失は、動的機械熱分析の実行において、架橋密度、ガラス転移温度(Tg)及びバインダーTgのプロファイル(幅)の関数であると示されている。光沢損失は、コーティングのこれらの特性、及び3つの特性の特定の程度のバランスのとれた相互作用に関連していた。さらに、3つの異なる種類の引掻(弾性、可塑性、及び脆性)が識別され、可塑性引掻は光沢損失の最大の原因と見なされている。可塑性引掻は、架橋密度に反比例し、可塑性引掻は、開始Tgが低いバインダーを用いることによって、そして鎖が延長された可撓性の架橋基を含めることによって低減されることが見出された。該記載はエポキシ官能性バインダー、及び酸官能性架橋剤、アミノ官能性架橋剤、及びブロック化イソシアネート官能性架橋剤のうちの1種以上にのみ適用された。
【0017】
耐候性、耐引掻性及び耐傷性を提供する改善された安定性、及びリフロー性能を有するクリアコートコーティング組成物の製造は、コーティング製造業者にとって挑戦的な課題であり続ける。
【0018】
エポキシポリマーとさらにカルボン酸ポリマーで架橋したクリアコートの耐引掻性は弱い可能性がある。耐引掻性は、最終的なクリアコートの架橋密度と強く関連している。これは触媒を追加することで改善できる一方で、クリアコートの保存に対する安定性が維持されるように注意しなければならない。この不安定性の問題は、架橋性基の反応性が低温で顕著になるときに生じる。これは、製品の噴霧性、外観及びポッピング耐性に影響を与える可能性がある。それは典型的には、保管後の粘度増加によって測定される。適切な保存安定性を有する改善された架橋密度を提供するために、共反応性酸性樹脂及びエポキシ樹脂は、適用の直前まで別々にすることができる。このような2成分クリアコートは自動車産業で既知であり、個々の成分の保存安定性を維持したまま改善された耐引掻性を提供することができる。その耐引掻性は、より低い触媒レベル(すなわち、1成分系)のクリアコートに対して改善されている一方で、さらにより良好な耐引掻性が望まれている。
【0019】
シラン官能性ポリマー又はオリゴマーの添加、又はシリケートの添加も、クリアコートの耐引掻性を改善することが知られている。これらのシラン基は、他のシラン基と反応して架橋を形成する。シランが酸又はエポキシ樹脂に反応性の基を含有する場合、さらなる架橋が可能である。しかしながら、そのような系は、商業的に実行可能な製品の提供に必要である保存安定性が不足している。
【0020】
自動車OEM産業では、耐引掻性の評価に2種類の試験法が使用される。オペル洗車試験法などの「ウェット(wet)」法では、試験表面に適用されるこすり数の指標に対する光沢保持率を測定しながら、度重なる洗車が模倣される。乾式耐引掻性試験では、表面を所定の時間、グリットが明確な紙(3M社が供給する9ミクロン紙など)による摩耗作用にかける。最初の摩耗させていない表面の光沢と比較した、摩耗させた表面の光沢保持率が測定される。
【0021】
自動車用コーティングにとって特に重要なさらなる特性は、コーティングの「リフロー」特性である。この特性によれば、クリアコートトップコートは、熱にさらされたときにコーティングが塑性流動を呈し、傷又は細かい引掻を含有する表面が良好なリフロー特性を有する場合、光沢回復が観察されるような特性を有することがある。よって望ましい自動車用のコーティングは、引掻及び摩耗を防ぐために高い表面硬度を有する一方で、同時に傷の付いた表面がその元の光沢の少なくとも有意な部分を回復するような高いリフロー特性を同時に有する。
【0022】
一般に、表面硬度の特性と高リフローの特性は相反するものであり、2つの特性のうち1つで良好な性能を獲得すると、他方の特性の性能が不十分になると考えられている。よって、硬化したときに耐引掻性及び耐傷性を提供する、棚での安定性のあるクリアコート組成物を見出すことが望ましいであろう。さらに、コーティングの元の光沢を復元させる良好なリフロー特性を有するコーティングが、非常に望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】U.S.5,814,703(Yamayaら)
【文献】U.S.5,470,616(Uenishiら)
【文献】U.S.2003/0186066(Monkiewiczら)
【文献】U.S.2006/0079637(Yaun)
【文献】U.S.6,316,572(Nambuら)
【文献】U.S.6,265,073(Nakamuraら)
【文献】U.S.7,790,236(Vijverbergら)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
よって本発明の1つの目的は、ベースコートに適用して硬化させたときに、耐引掻性及び耐傷性を有すると共に自己修復リフロー特性を有する高光沢の表面を提供する、保存安定性のある2Kトップコート系を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、ベースコート及びクリアコートを同時に硬化させて、耐引掻性及び耐傷性と共に自己修復リフロー特性を有する高光沢の表面を得る、自動車表面コーティングのためのトップコート層を製造する方法を提供することである。
【0026】
さらなる目的は、耐引掻性及び耐傷性と共に自己修復リフロー特性を有するクリアコート組成物でコーティングされた自動車基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの及び他の目的は本発明により提供され、その第1の実施形態は、以下の成分を含む2K溶媒型コーティング系を含む:
以下の成分を含むエポキシ成分(A):
i)エポキシ樹脂、ii)溶媒、iii)式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及びiv)任意に、少なくとも1種の添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、溶媒、任意に、少なくとも1種の触媒、
及び任意に、少なくとも1種の添加剤。
【0028】
第1の実施形態の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)の化合物を含む。
第1の実施形態の別の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物を含む。
第1の実施形態のさらなる態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物を含む。
第2の実施形態は、2K溶媒型コーティング組成物を含む。組成物は、エポキシ樹脂、カルボン酸樹脂、溶媒、任意に触媒、任意に添加剤、及び式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含み、式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%は、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である。
【0029】
この第2の実施形態の態様において、式(I)の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)の化合物を含む。
第2の実施形態のさらなる態様において、式(I)の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物を含む。
第2の実施形態のさらなる態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物を含む。
別の実施形態において、本発明は、基材、任意に基材上のプライマーコーティング、ウェットベースコートコーティング、及び
ウェットベースコート上の溶媒型2Kクリアコートのウェットコーティングを含む、ウェットコーティングした基材を含み、
ここで、溶媒型2Kウェットコーティングが、エポキシ樹脂、カルボン酸樹脂、溶媒、任意に触媒、任意に添加剤、及び式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含み、式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%は、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である。
【0030】
ウェットコーティングの実施形態の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)の化合物を含む。
ウェットコーティングの実施形態のさらなる態様において、式(I)の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物を含む。
ウェットコーティングの実施形態のさらなる態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物を含む。
第1の方法の実施形態において、本発明は、基材をコーティングする方法であって、
i)以下の成分を含むエポキシ成分(A):
エポキシ樹脂、溶媒、式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及び任意に、少なくとも1種の添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、溶媒、任意に少なくとも1種の触媒、及び任意に少なくとも1種の添加剤を組み合わせて混合することによって2Kコーティング組成物を調製する工程、ii)2Kコーティング組成物を基材に適用する工程、及びiii)基材に適用した組成物を乾燥及び硬化させる工程を含む、基材をコーティングする方法を含む。
【0031】
さらなる方法の実施形態において、本発明は、基材をコーティングする方法であって、
以下の成分を含むエポキシ成分(A):
i)エポキシ樹脂、溶媒、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の少なくとも1種の化合物、及び任意に、少なくとも1種の非触媒性添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、溶媒、任意に、少なくとも1種の触媒、及び任意に、少なくとも1種の添加剤を組み合わせて混合することによって2Kコーティング組成物を調製する工程、ii)2Kコーティング組成物を基材に適用する工程、及びiii)基材に適用した組成物を乾燥及び硬化させる工程を含む、基材をコーティングする方法を含む。
【0032】
上記の方法の実施形態の一態様において、2Kコーティング組成物をウェットベースコート組成物上に適用し、ベースコート及び2Kコーティング組成物を同時に乾燥及び硬化させる。
【0033】
この方法の実施形態のさらなる態様において、基材は金属を含み、金属基材は金属表面上に電着コーティング層を含む。ベースコートを電着コーティング層に適用し、続いて、2K組成物をウェットベースコート組成物に適用して、ベースコート及び2K組成物のウェットオンウェット層を得、そしてウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる方法も含まれる。
【0034】
前述の説明は、本発明の全体的な紹介及び要約の提供を意図しており、特に明記しない限り、その開示の限定は意図していない。現在の好ましい実施形態は、さらなる利点と共に、以下の詳細な説明及び実施例を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示の記載内で、著者、共同著者、又は譲受人組織のメンバーに帰属している引用文献、特許、出願、出版物及び記事はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。数値の制限又は範囲が記載されている場合、エンドポイントが含まれる。また、数値の制限又は範囲内のすべての値及び部分範囲は、明示的に記載されているかのように具体的に含まれる。本明細書で使用する単語「a」及び「an」などは、「1種以上」の意味を有する。「からなる群から選択される」、「から選択される」などの語句は、特定される材料の混合物を含む。「含有する」などの用語は、特に明記されていない限り、「少なくとも含む」を意味する開かれた用語である。本発明による「保存安定性」という用語は、粘度が実質的に増加することなく、かつ固体が沈降することなく、組成物が周囲温度で6ヶ月間保管可能であることを表す。さらに、保存中のpH変化は1pH単位以下である。本明細書で使用する(メタ)アクリレートという用語は一般的であり、アクリレート構造とメタクリレート構造の両方を含む。他のすべての用語は、当業者によって理解される従来の意味に従って解釈される。
【0036】
シラン成分を含有するクリアコート組成物の改善された安定性の問題に取り組む場合、シラン又はシリケート基が他のシラン又はシリケート基と反応するので、2成分の手法が成功することは予想されない。しかしながら、発明者らは驚くべきことに、これらのシラン又はシリケート基を2成分酸とさらにエポキシクリアコートのエポキシ成分に組み入れることにより、改善された耐引掻性及び安定性が得られることを見出した。
【0037】
第1の実施形態において、本発明は、以下の成分を含む保存安定性のある2K溶媒型コーティング系を提供する:
以下の成分を含むエポキシ成分(A):
i)エポキシ樹脂、ii)溶媒、iii)式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及びiv)任意に、少なくとも1種の添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、溶媒、任意に、少なくとも1種の触媒、
及び任意に、少なくとも1種の添加剤。
【0038】
本発明の2Kクリアコート組成物(A)及び(B)は溶媒型組成物であり、従来から知られている如何なる溶媒も含有してよい。適した溶媒としては、芳香族溶媒、例えばトルエン、キシレン、ナフサ、及び石油留分;脂肪族溶媒、例えばヘプタン、オクタン、及びヘキサン;エステル系溶媒、例えばブチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、及び2-エトキシエチルアセテート;ケトン溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン;低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル;グリコールエーテルエステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテート;ラクタム、例えばN-メチルピロリドン(NMP);及びそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、溶媒はVOC除外溶媒、例えばクロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12~18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、アセトン、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、及び2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンであってよい。
【0039】
エポキシ組成物(A)の溶媒及び酸性樹脂組成物(B)の溶媒は、同じでもよく、又は相互に適合性のある溶媒の任意の組み合わせであってもよい。低級アルコール及び低級アルコールの組み合わせは、良好な揮発性及び低コストが理由で、好ましい溶媒である。
【0040】
エポキシ組成物(A)のエポキシ樹脂成分は、商業取引において従来から知られている如何なるエポキシ樹脂でもよい。例えば、側鎖にエポキシ基を有するアクリル樹脂は、(メタ)アクリルモノマーと、グリシジル基含有不飽和モノマーとの共重合により得てもよい。エポキシ基含有不飽和モノマーの例として、限定するものではないが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが挙げられる。
【0041】
エポキシ基含有不飽和モノマー(b)は、独立していてよく、又は、2種類以上の混合物でもよい。コモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルメタクリレートのうちの1種以上を含む。
【0042】
2K系のエポキシ樹脂成分は、式(I)
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含む。
【0043】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)の化合物でよい。式(Ia)の化合物の例として、限定するものではないが、エポキシド化合物、例えばガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリメトキシシラン、及びガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0044】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物でよい。式(Ib)の化合物の例として、限定するものではないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペントキシシラン及びテトラヘキソキシシランが挙げられる。
【0045】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物でよい。
【0046】
式(Ic)の化合物の例として、限定するものではないが、アルキル又はアルケニル置換シラン、例えばメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシランが挙げられる。当業者は、シランの加水分解性基が、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はSi結合から容易に置き換えることが可能な他の基のうちの任意でよいことを認識している。さらに、R’’は、ポリエチレンオキシ又はポリブチレンオキシなどのアルキレンオキシドエーテル鎖でよい。
【0047】
これらの例は、式(Ic)のR’’単位を介することがある可能な置換の例示であり、当業者は、用いるR’’基の官能性、疎水性又は親水性に応じて、コーティングの表面特性が修正又は変更される場合があることを認識している。
【0048】
さらに、さらなるオリゴマー又はポリマー化合物が式(I)に含まれ、部分的加水分解及び縮合が、エポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供する。
【0049】
式(I)による組成物は、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)による化合物の複数の組み合わせを含有してよいことが理解されよう。
【0050】
エポキシ樹脂成分(A)は、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤を含む1種以上の添加剤をさらに含有してよい。好ましい態様において、添加剤は、シラン成分又はエポキシ基の加水分解及び/又は縮合を触媒できない。
【0051】
特別な一態様において、エポキシ成分は、耐引掻性及び耐傷性の改善に寄与する疎水性ヒュームドシリカを含有してよい。一般に、対象のヒュームドシリカは、99.8質量%のSiO2含有量、90~245m2/gのBET表面積、4質量%水性分散液として3.0~7.5のpH、及び約50~約200g/lのタップ密度を有する。特別な一組成物では、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有するヒュームドシリカが、エポキシ成分に含まれる。エポキシ成分中のヒュームドシリカの含有量は、エポキシ成分(A)の総質量に基づいて、0~30質量%、好ましくは5~26質量%、そして最も好ましくは10~22質量%でよい。
【0052】
酸性樹脂組成物(B)は、エポキシド基に対して反応性の官能基を有する少なくとも1種の樹脂を含有する。従来から知られているこのような如何なる樹脂も用いてよい。特定の実施形態において、エポキシド基に対して反応性の官能基を有する樹脂は、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレートポリマー又はポリエステルポリマーであってよい。このような樹脂の例として、限定するものではないが、共重合モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸及びイタコン酸を含有する(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
【0053】
酸官能基を有するポリエステルは、(a)ポリカルボン酸又はそのエステル化可能な誘導体を(b)ポリオールと、及び任意に他の修飾成分と、カルボキシル基の数がヒドロキシル基の数を超えるような比率で反応させることによって調製してよい。ポリカルボン酸及びそのエステル化可能な誘導体の例として、限定するものではないが、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロフタル酸、例えばテトラクロロフタル酸又はテトラブロモフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、及びシクロブタンテトラカルボン酸が挙げられる。脂環式ポリカルボン酸は、そのシス型、又はトランス型のどちらか、又は前記2種の型の混合物として用いてよい。これらのポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体は、それらの1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、又は4個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルコールとの単一又は複数のエステル、好ましくはメチル及びエチルエステル、並びにそれらが存在する場合は、これらのポリカルボン酸の無水物を含む。ポリオールの例としては、限定するものではないが、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び天然油由来のポリオールが挙げられる。
【0054】
酸性樹脂組成物(B)は、架橋及び硬化操作においてエポキシ基及びカルボン酸樹脂基の反応を促進するための触媒を任意に含有してよい。金属触媒は、従来から知られており、脂肪族ビスマスカルボキシレート、例えばビスマスエチルヘキサノエート、ビスマスサブサリチレート(実験式C7H5O4Biを有する)、ビスマスヘキサノエート、ビスマスエチルヘキサノエート又はビスマスジメチロールプロピオネート、ビスマスオキサレート、ビスマスアジペート、ビスマスラクテート、ビスマスタータレート、ビスマスサリチレート、ビスマスグリコレート、ビスマススクシネート、ビスマスホルメート、ビスマスアセテート、ビスマスアクリレート、ビスマスメタクリレート、ビスマスプロピオネート、ビスマスブチレート、ビスマスオクタノエート、ビスマスデカノエート、ビスマスステアレート、ビスマスオレエート、ビスマスエイコンサノエート、ビスマスベンゾエート、ビスマスマレート、ビスマスマレエート、ビスマスネオデカノエート、ビスマスフタレート、ビスマスシトレート、ビスマスグルコネート;ビスマスアセチルアセトネート;ビス-(トリオルガノスズ)オキシド、例えばビス(トリメチルスズ)オキシド、ビス(トリエチルスズ)オキシド、ビス(トリプロピルスズ)オキシド、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ビス(トリアミルスズ)オキシド、ビス(トリヘキシルスズ)オキシド、ビス(トリヘプチルスズ)オキシド、ビス(トリオクチルスズ)オキシド、ビス(トリ-2-エチルヘキシルスズ)オキシド、ビス(トリフェニルスズ)オキシド、ビス(トリオルガノスズ)スルフィド、(トリオルガノスズ)(ジオルガノスズ)オキシド、スルホキシド、及びスルホン、ビス(トリオルガノスズ)ジカルボキシレート、例えばビス(トリブチルスズ)アジペート及びマレエート;ビス(トリオルガノスズ)ジメルカプチド、トリオルガノスズ塩、例えばトリオクチルスズオクタノエート、トリブチルスズホスフェート;(トリオルガノスズ)(オルガノスズ)オキシド;トリアルキルアルキルオキシスズオキシド、例えばトリメチルメトキシスズオキシド、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジラウレート;トリオクチルスズオキシド、トリブチルスズオキシド、ジアルキルスズ化合物、例えばジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジステアレート、ジプロピルスズジオクトエート及びジオクチルスズオキシド;モノアルキルスズ化合物、例えばモノブチルスズトリオクタノエート、モノブチルスズトリアセテート、モノブチルスズトリベンゾエート、モノブチルスズトリオクチレート、モノブチルスズトリラウレート、モノブチルスズトリミリステート、モノメチルスズトリホルメート、モノメチルスズトリアセテート、モノメチルスズトリオクチレート、モノオクチルスズトリアセテート、モノオクチルスズトリオクチレート、モノオクチルスズトリラウレート;モノラウリルスズトリアセテート、モノラウリルスズトリオクチレート、及びモノラウリルスズトリラウレート;亜鉛オクトエート、亜鉛ナフテネート、亜鉛タレート、カルボキシレート基に約8~14個の炭素を有する亜鉛カルボキシレート、亜鉛アセテート;リチウムカルボキシレート、例えばリチウムアセテート、リチウム2-エチルヘキサノエート、リチウムナフテネート、リチウムブチレート、リチウムイソブチレート、リチウムオクタノエート、リチウムネオデカノエート、リチウムオレエート、リチウムバーサテート(lithium versatate)、リチウムタレート、リチウムオキサレート、リチウムアジペート、リチウムステアレート;水酸化リチウム;ジルコニウムアルコラート、例えばメタノラート、エタノラート、プロパノラート、イソプロパノラート、ブタノラート、tert-ブタノラート、イソブタノラート、ペンタノラート、ネオペンタノラート、ヘキサノラート及びオクタノラート;ジルコニウムカルボキシレート、例えばホルメート、アセテート、プロピオネート、ブタノエート、イソブタノエート、ペンタノエート、ヘキサノエート、シクロヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート、2-エチルヘキサノエート、ノナノエート、デカノエート、ネオデカノエート、ウンデカノエート、ドデカノエート、ラクテート、オレエート、シトレート、ベンゾエート、サリチレート及びフェニルアセテート;ジルコニウム1,3-ジケトネート、例えばアセチルアセトネート(2,4-ペンタンジオネート)、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオネート(ジベンゾイルメタネート)、1-フェニル-1,3-ブタナンジオネート及び2-アセチルシクロヘキサノエート;ジルコニウムオキシネート;ジルコニウム1,3-ケトエステラート、例えばメチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、エチル-2-メチルアセトアセテート、エチル-2-エチルアセトアセテート、エチル-2-ヘキシルアセトアセテート、エチル-2-フェニル-アセトアセテート、プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、tert-ブチルアセトアセテート、エチル-3-オキソ-バレレート、エチル-3-オキソ-ヘキサノエート、及び2-オキソ-シクロヘキサンカルボン酸エチルエステレート;ジルコニウム1,3-ケトアミデート、例えばN,N-ジエチル-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ジブチル-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ビス-(2-エチルヘキシル)-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ビス-(2-メトキシエチル)-3-オキソ-ブタンアミデート、N,N-ジブチル-3-オキソ-ヘプタンアミデート、N,N-ビス-(2-メトキシエチル)-3-オキソ-ヘプタンアミデート、N,N-ビス-(2-エチルヘキシル)-2-オキソ-シクロペンタンカルボキサミデート、N,N-ジブチル-3-オキソ-3-フェニルプロパンアミデート、N,N-ビス-(2-メトキシエチル)-3-オキソ-3-フェニルプロパンアミデート;及び前述の金属触媒の組み合わせから選択される有機金属化合物であってよい。
【0055】
特定の態様において、酸性樹脂成分(B)は、ビスマスネオデカノエート、ジブチルスズラウレート(DBTL)、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択される少なくとも1種の触媒を含有してよい。
【0056】
酸性樹脂成分(B)は、二酸化チタン、沈降シリカ、焼成(ヒュームド)シリカ、タルク、マイカ、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含有してよい。
【0057】
酸性樹脂成分(B)に対するエポキシ樹脂成分の成分として、先に記載した疎水性ヒュームドシリカを含めることが有用な場合がある。
【0058】
別の実施形態において、エポキシ成分(A)及び酸性樹脂成分(B)を組み合わせて混合することにより得られる2K溶媒型コーティング組成物が含まれる。溶媒型組成物は、エポキシ樹脂、カルボン酸樹脂、溶媒、任意に触媒、任意に添加剤、及び式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含み、式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%は、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である。
【0059】
コーティング組成物の成分は、先に記載したとおりである。
【0060】
2K溶媒型コーティング組成物の特定の態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)、(Ib)及び(Ic):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物の1種以上を含んでよい。
【0061】
組成物の溶媒は、先に記載したもののうち1種以上であってよく、特定の実施形態において、トルエン、キシレン、ナフサ、ヘプタン、オクタン、ヘキサン;ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、2-エトキシエチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテート、N-メチルピロリドン(NMP)、クロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12~18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、及び2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0062】
ある特定の選ばれた実施形態において、溶媒は、極性有機溶媒である。例えば、溶媒は、極性脂肪族溶媒又は極性芳香族溶媒であってよい。有用な溶媒の中には、ケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド、及び非プロトン性アミン溶媒が含まれる。具体的な有用な溶媒の例として、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、及びミネラルスピリット(mineral spirits)、エーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル、アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール、窒素含有化合物、例えばN-メチルピロリドン及びN-エチルピロリドン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
コーティング組成物中の溶媒は、約0.01質量パーセント~約99質量パーセントの量で、又は約10質量パーセント~約60質量パーセントの量で、又は約30質量パーセント~約50質量パーセントの量で存在してよい。
【0064】
溶媒型2Kコーティング組成物の触媒は、2Kコーティング系について先に記載した如何なるものでもよく、特定の実施形態において、触媒は、ジブチルスズラウレート(DBTL)、ビスマスネオデカノエート、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択される1種以上の化合物を含有してよい。
【0065】
存在する場合、溶媒型クリアコート組成物に含まれる金属触媒の量は、コーティング組成物中の固体の総質量に基づいて、0.01~10質量パーセント、好ましくは0.05~7.5質量パーセント、そしてより好ましくは1.0~5.0質量パーセントでよい。触媒含有組成物の適合性及び安定性は、当業者によって決定されるように、触媒を組み込むための特別な技術が必要となることがある。
【0066】
溶媒型コーティング組成物の添加剤は、二酸化チタン、沈降シリカ、焼成シリカ、タルク、マイカ、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0067】
成分(A)及び(B)のいずれか又は両方が疎水性ヒュームドシリカを含有する場合、これは溶媒型クリアコート組成物中に存在し、含有量に応じて溶媒型クリアコート組成物の0~25質量%の間の種々であってよい。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、基材、任意に、基材上のプライマーコーティング、ウェットベースコートコーティング、及びウェットベースコート上の溶媒型2Kクリアコートウェットコーティングを含む、ウェットコーティングした基材(「ウェットオンウェットコーティング」と称することがある)を含み、ここで、溶媒型2Kウェットコーティングが、エポキシ樹脂、カルボン酸樹脂、溶媒、任意に触媒、任意に添加剤、及び式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含み、式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%は、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である。
【0069】
コーティングした基材は、金属、金属合金、金属化合物及び熱可塑性ポリマーのうちの1種以上を含有してよい。金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、鋼合金、マグネシウム及びマグネシウム合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属であってよいか、又はこれらを含んでよい。これらの酸化物、窒化物及び炭化物も存在してよい。特定の態様において、基材は裸鋼、リン酸塩処理鋼、又は亜鉛メッキ鋼であってよい。
【0070】
基材が金属合金又は金属化合物である特定の態様において、基材表面は電着コーティング層を含んでよい。
【0071】
基材は、最初に電析(電着コーティング)プライマーで下塗りしてもよい。電析組成物は、従来から知られているか、又は例えば自動車車両のコーティング操作で使用される如何なる電析組成物であることも可能である。電着コーティング組成物の非限定的な例として、BASF社から販売されている電着コーティング組成物が挙げられる。電析コーティング浴は通常、水又は水と有機共溶媒の混合物中にイオン安定化(例えば、塩アミン基)を有する主要な膜形成エポキシ樹脂を含む水性分散液又はエマルジョンを含む。主要な膜形成樹脂で乳化されているのは、熱の適用などの適切な条件下で主要な樹脂の官能基と反応することができ、そうしてコーティングを硬化させることができる架橋剤である。架橋剤の適した例として、限定するものではないが、ブロックポリイソシアネートが挙げられる。電析コーティング組成物は通常、1種以上の顔料、触媒、可塑剤、凝集助剤、消泡助剤、流動制御剤、湿潤剤、界面活性剤、UV吸収剤、HALS化合物、酸化防止剤、及び他の添加剤を含む。
【0072】
電析コーティング組成物は、10~35μmの乾燥膜厚で適用してよい。コーティングは、適切な条件下で、例えば、約135℃~約190℃で約15~約60分間、ベークすることにより、硬化させてよい。
【0073】
基材材料として用いられる熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、及びEPDMゴムからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーでよい。このようなポリマー基材は、従来から知られているように繊維を充填するか又は繊維強化してもよく、又は着色のために顔料を入れてもよい。さらに、ポリマー基材は、当技術分野で知られているように、プライマーコーティング組成物でコーティングしてもよい。
【0074】
ウェットオンウェットコーティングの特定の態様において、2K溶媒型クリアコートコーティングの式(I)の化合物は、先に記載した式(Ia)、(Ib)及び(Ic):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物の1種以上を含んでよい。
【0075】
溶媒型2Kクリアコートウェットコーティングの溶媒は、先に記載したもののうち1種以上であってよく、特定の実施形態において、トルエン、キシレン、ナフサ、ヘプタン、オクタン、ヘキサン;ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、2-エトキシエチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテート、N-メチルピロリドン(NMP)、クロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12~18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、及び2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0076】
ある特定の選ばれた実施形態において、溶媒は、極性有機溶媒である。例えば、溶媒は、極性脂肪族溶媒又は極性芳香族溶媒であってよい。有用な溶媒の中には、ケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド、及び非プロトン性アミン溶媒が含まれる。具体的な有用な溶媒の例として、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、及びミネラルスピリット、エーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル、アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール、窒素含有化合物、例えばN-メチルピロリドン及びN-エチルピロリドン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
ウェットオンウェットコーティングのクリアコートに添加剤が存在する場合、従来から知られ、用いられている如何なるものも使用してよい。特定の態様において、添加剤は、二酸化チタン、沈降シリカ、焼成シリカ、タルク、マイカ、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される1種以上の添加剤であってよい。
【0078】
先に記載したように、特別な一態様は、ウェットオンウェットコーティングのクリアコートが疎水性ヒュームドシリカを含有する場合である。この特別な態様の好ましい形態において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0079】
含まれてよい慣例のコーティング添加剤として、例えば、界面活性剤、安定剤、湿潤剤、分散剤、接着促進剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサラニリド;フリーラジカルスカベンジャー;スリップ添加剤;消泡剤;従来技術からの常識である種類の反応性希釈剤;湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素化合物、カルボン酸モノエステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びそれらのコポリマー、例えばポリブチルアクリレート、又はポリウレタン;接着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;流動制御剤;膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;レオロジー制御添加剤、例えば特許WO94/22968、EP-A-0276501、EP-A-0249201又はWO97/12945から既知の添加剤;架橋ポリマーマイクロ粒子、例えばEP-A-0008127に開示されているもの;無機フィロシリケート、例えばアルミニウム-マグネシウムシリケート、モンモリロナイト型のナトリウム-マグネシウム及びナトリウム-マグネシウム-フッ素-リチウムフィロシリケート;Aerosils(登録商標)などのシリカ;又はイオン性及び/又は会合性基を含有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン-無水マレイン酸コポリマー又はエチレン-無水マレイン酸コポリマー及びそれらの誘導体、又は疎水的に修飾されたエトキシル化ウレタン又はポリアクリレート;及び難燃剤が挙げられる。当業者に認識されるように、添加剤の組み合わせを用いて、組成物又は硬化させたコーティングの目標とする性能特性を得ることができる。
【0080】
ウェットオンウェットコーティングのクリアコートに触媒が存在する場合、先に記載した又は従来から知られている如何なる触媒も使用してよい。特定の態様において、触媒は、ジブチルスズラウレート(DBTL)、ビスマスネオデカノエート、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択してよい。
【0081】
上記のように、ベースコートは、色及び他の特殊効果が基材に適用される層である。よってベースコート組成物は、着色剤、特殊効果顔料を含む、顔料及び充填剤を含有してよい。ベースコートに使用される特殊効果顔料の非限定的な例は、メタリック、真珠光沢、及び色可変(color-variable)効果フレーク顔料を含む。メタリックベースコート色は、アルミニウムフレーク顔料、コーティングしたアルミニウムフレーク顔料、銅フレーク顔料、亜鉛フレーク顔料、ステンレス鋼フレーク顔料、及び青銅フレーク顔料のようなメタリックフレーク顔料を使用して、及び/又は二酸化チタンコーティングしたマイカ顔料、及び酸化鉄コーティングしたマイカ顔料のような処理したマイカを含む真珠光沢フレーク顔料を使用して製造されていてよく、異なる角度で見た場合に、コーティングに異なる外観(反射率又は色の程度)を与える。金属フレークは、コーンフレーク型、レンズ状型、又は耐循環(circulation-resistant)であってよく;マイカは、天然、合成、又は酸化アルミニウム型であってよい。フレーク顔料は、典型的には、低せん断下の撹拌によって十分に分散する。フレーク顔料又は複数の顔料の含有量は、各場合とも組成物の総固形分質量に基づいて、0.01質量%~約0.3質量%、又は約0.1質量%~約0.2質量%の量でよい。
【0082】
1Kベースコート組成物に使用してよい、他の適切な顔料及び充填剤の非限定的な例として、無機顔料、例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、オーカー、シエナ、アンバー、ヘマタイト、リモナイト、赤色酸化鉄、透明赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化クロムグリーン、ストロンチウムクロメート、亜鉛ホスフェート、フュームドシリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、タルク、バライト、フェロシアン化第二鉄アンモニウム(プルシアンブルー)、及びウルトラマリン、及び有機顔料、例えば金属化及び非金属化アゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリーリド(monoarylide)及びジアリーリド(diarylide)イエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムに基づくナノ粒子等が挙げられる。顔料(複数可)及び任意の充填剤(複数可)は、好ましくは顔料分散剤と共に、既知の方法に従って分散される。一般に、顔料及び分散樹脂、ポリマー又は分散剤は、顔料凝集体を一次顔料粒子に分解し、顔料粒子の表面を分散樹脂、ポリマー又は分散剤で濡らすのに十分に高いせん断下で接触される。凝集体の分解、及び一次顔料粒子の濡らしは、顔料安定性及び発色現像(color development)のために重要である。顔料及び充填剤は、典型的には、コーティング組成物の総質量に基づいて、約60質量%以下の量で使用してよい。使用される顔料の量は、顔料の性質、色の深さ及び/又はそれが引き起こそうとする効果の強さ、及び着色コーティング組成物中の顔料の分散性に依存する。顔料の含有量は、いずれの場合も着色コーティング組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%~50質量%、さらに好ましくは1質量%~30質量%、非常に好ましくは2質量%~20質量%、そしてさらに特に2.5質量%~10質量%である。
【0083】
ベースコート組成物中に存在してよい他の添加剤として、安定剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤が挙げられる。コーティング配合者が求める性能特性に応じて、そのような添加剤の任意の1種以上が含まれてよい。存在する場合、添加剤は、組成物中の固体の総質量に基づいて、0.1~5質量パーセント、好ましくは0.5~4質量パーセント、そしてより好ましくは0.5~2.5質量パーセントの量で存在してよい。
【0084】
さらなる実施形態において、本発明は、先に記載したウェットコーティングした基材を乾燥及び硬化させることによって得られるコーティングした基材を含む。一態様において、硬化したコーティングは、任意に、基材上の乾燥及び硬化したプライマーコーティング、乾燥及び硬化したベースコート、そして乾燥及び硬化したクリアコートを含み、この乾燥及び硬化したクリアコートは、エポキシ樹脂とカルボン酸樹脂の架橋樹脂反応生成物を含有し、ここで架橋樹脂は、カルボン酸樹脂のカルボキシル基又はエポキシ樹脂のエポキシ基と、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式I(b)の化合物、式(Ic)の化合物及び式(Id)の化合物からなる化合物の群から選択される化合物との反応によって得られる、シラニルヒドロキシエステル基の側鎖単位を含む。
【0085】
特別な一態様において、コーティングの硬化したクリアコートが疎水性ヒュームドシリカを含有する場合がある。この特別な態様の好ましい形態において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。表2のデータに示されるように、発明者らは驚くべきことに、硬化したクリアコート中のヒュームドシリカの存在によって、リフロー後の光沢保持率が著しく増加したコーティングがもたらされることを発見した。データは、ヒュームドシリカを含有するこのような組成物で、予想されなかったであろう相乗効果が得られることを示している。
【0086】
別の実施形態において、本発明は、基材をコーティングする方法であって、
i)以下の成分を含むエポキシ成分(A):
エポキシ樹脂、溶媒、式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、xは0~2の数であり、yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、tは0~2の数であり、x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そしてm=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及び任意に、少なくとも1種の非触媒性添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、溶媒、任意に少なくとも1種の触媒、
及び任意に少なくとも1種の添加剤を組み合わせて混合することによって2Kコーティング組成物を調製する工程、
ii)2Kコーティング組成物を基材に適用する工程、及び
iii)基材に適用した組成物を乾燥及び硬化させる工程を含む、基材をコーティングする方法を提供する。
【0087】
コーティング方法のための基材は先に記載しており、その記載は、本発明のコーティング方法に関して参照され含まれる。
【0088】
さらに、先に記載したように、式(I)の化合物は、式(Ia)、(Ib)及び(Ic):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物の1種以上であってよいか、又はそれらを含んでよい。
【0089】
さらに、本方法の特別な一態様において、エポキシ成分(A)、酸性樹脂成分(B)又は成分(A)及び(B)の両方は、疎水性ヒュームドシリカを含有してよい。この特別な態様の好ましい形態において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0090】
コーティング方法の一態様において、2Kコーティング組成物は、ウェットベースコート組成物上に適用してよく、ベースコート及び2Kコーティング組成物は、同時に乾燥及び硬化させてよい。
【0091】
さらなる態様において、コーティング方法は、ベースコート層を電着コーティング層に適用する工程、2K組成物をウェットベースコート組成物に適用してベースコート及び2K組成物のウェットオンウェット層を得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程を含む。
【0092】
コーティング方法の追加のさらなる態様は、プライマーコーティング、ベースコート及びクリアコートをウェット層として適用し、その後、3つのウェットオンウェット層を同時に硬化させる、3ウェット積層プロセスを含んでよい。この方法は、水ベースのプライマー及びベースコート、又は溶媒ベースのプライマー及びベースコートを用いて行ってよい。水ベースのプライマー及びベースコートを用いる本方法によれば、ベースコートを適用する前に、水ベースのプライマーを任意に加熱フラッシュしてよい。水ベースのプライマー及びベースコートコーティングは、クリアコートを適用する前に、任意に熱フラッシュに曝露してもよい。溶媒プライマー及びベースコートは、周囲温度でフラッシュしてよい。
【0093】
コーティング組成物は、例えば、噴霧コーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング、展着(spreading)、流し込み(pouring)、浸漬、含浸、散水(trickling)、又はローリング(rolling)等を含む、既知の任意の従来技術によって適用してよい。自動車のボディパネル用には、噴霧コーティング法、例えば圧縮空気噴霧、エアレス噴霧、高速回転、静電噴霧適用を単独で、又は例えば、高温空気噴霧等の高温噴霧適用と組み合わせて用いてよい。
【0094】
コーティング組成物は、一段階、及び多段階コーティング法の両方において、特に顔料入りベースコート又はモノコートコーティング層が、コーティングされていない、又は予備コーティングした基材に最初に適用され、その後、顔料入りの膜がベースコートのコーティングである場合に、別のコーティング層が任意に適用される方法において、適用してよい。
【0095】
適用されたコーティング組成物は、一定の静止時間(rest time)、又は「一瞬の(flash)」期間の後、硬化させてよい。静止時間は、例えば、コーティング膜の平滑化及び液化(devolatilization)に、又は溶媒等の揮発成分の蒸発に役立つ。静止時間は、高温の適用又は低減された湿度によって、例えば、これが早過ぎる完全架橋等のコーティング膜へのいかなる損傷又は変質も伴わないという条件で、補助するか、又は短縮してもよい。コーティング組成物の熱硬化は、強制空気オーブン中での加熱、又はIRランプの照射等の従来の方法によって達成してよい。熱硬化は段階的に行ってもよい。別の好ましい硬化方法は、近赤外(NIR)放射による硬化方法である。種々の硬化方法が使用できるが、熱硬化が好ましい。一般に、熱硬化は、コーティングした物品を、主に放射熱源によって供給される高温に曝すことで達成される。適用後、適用されたコーティング層又はウェットオンウェット層が、例えば、30~200℃、又は40~190℃、又は50~180℃の温度で、1分間~10時間以下、さらに好ましくは2分間~5時間以下、及び特に3分間~3時間の期間、硬化させてよい。
【0096】
この態様の一形態において、基材は金属を含んでよく、金属基材は、先に記載したように金属表面上に電着コーティングしてよい。
【0097】
基材が熱可塑性ポリマーを含む第2のさらなる態様において、コーティング方法は、熱可塑性基材の表面にプライマーコーティングを適用する工程、任意に、熱可塑性基材上のプライマーコーティングを乾燥及び硬化させる工程、プライマーコーティング層にベースコート層を適用する工程、ウェットベースコート組成物に2K組成物を適用してベースコートのウェットオンウェット層、2K組成物及び任意にプライマーコーティングを得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程を含んでよい。これは、先に記載したように、3-ウェットコーティング法をさらに含んでよい。
【0098】
記載した実施形態及びその態様のそれぞれ及びすべてにおいて、本発明により得られるコーティングは、自動車のOEMコーティングにおける使用に特に有用であり、従来のエポキシ酸クリアコートコーティングと比較して、著しく改善された耐引掻性及び耐傷性を有する最終コーティングを提供する。
【0099】
自動車OEM産業では、耐引掻性及び耐傷性の評価に2種類の試験法が使用される。オペル洗車試験法などの「ウェット」法では、試験表面に適用されるこすり数の指標に対する光沢保持率を測定しながら、度重なる洗車が模倣される。乾式耐引掻性試験では、表面を所定の時間、グリットが明確な紙(3M社が供給する9ミクロン紙など)による摩耗作用にかける。最初の摩耗させていない表面の光沢と比較した、摩耗させた表面の光沢保持率が測定される。
【0100】
自動車用コーティングにとって特に重要なさらなる特性は、コーティングの「リフロー」特性である。この特性によれば、クリアコートトップコートは、熱にさらされたときにコーティングが塑性流動を呈し、傷又は細かい引掻を含有する表面が良好なリフロー特性を有する場合、光沢回復が観察されるような特性を有することがある。よって望ましい自動車用のコーティングは、引掻及び摩耗を防ぐために高い表面硬度を有する一方で、同時に傷の付いた表面がその元の光沢の少なくとも有意な部分を回復するような高いリフロー特性を同時に有する。
【0101】
これらの特性の試験に用いられる実際の試験法は、実施例のセクションで記載する。
【0102】
実施例の試験結果は、本発明の実施形態によるコーティングが、式Iの化合物に由来する成分を含有しないコーティングよりも高いTukon硬度を有し、そしてさらに、より高いリフロー光沢回復を有することを示している。このように高度及びリフローが同時に増加することで、本明細書に記載の実施形態によるコーティングの表面特性の著しい改善がもたらされる。実験データを表1及び2に示す(エクセルファイルからの白色ベースコート及び黒色ベースコートのデータ)。
【0103】
表2に示すことから有意であるように、発明者らは、式(I)、(Ia)、(Ib)及び(Ic)によるエポキシ成分とシラン成分の混合物、及び式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含むコーティング配合物により、相乗効果が得られると考える。よって、表2において、3-GPTMS単独の場合の64%及びTEOS単独の場合の58%と比較すると、触媒を含まない3-GPTMSとTEOSの混合物である例5は、70%の光沢の保持を示す。同様に、リフロー後の光沢保持率は、3-GPTMS単独の場合の86%及びTEOS単独の場合の80%と比較すると、例5の混合成分は89%であった。
【0104】
さらに、例10に示すように、実施形態によるクリアコート組成物にヒュームドシリカが含まれる場合、光沢保持率及びリフロー後の光沢保持率の大幅な改善(98%)が得られる。この相乗的な改善効果は予測できなかったものであり、予期せぬ重要な特性である。
【0105】
本発明の実施形態による実施例では、触媒が含まれる場合、光沢保持率及びリフロー後の光沢保持率が増加する。この場合も、相乗効果が観察されることがある。よって、表2において、3-GPTMS(Silquest A-187(ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)とTEOS(テトラエトキシシラン)の触媒との混合物である例8は、3-GPTMS単独の場合の70%及びTEOS単独の場合の71%と比較すると、72%の光沢の保持を示している。同様に、リフロー後の光沢保持率は、3-GPTMS単独の場合の91%及びTEOS単独の場合の86%と比較すると、例8の混合成分は91%であった。
【0106】
式(I)、(Ia)、(Ib)及び(Ic)による複数の成分と、式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含む混合組成物により得られるこの相乗効果は、この研究の前に予測できなかったものであり、従って予期せぬものである。さらに、光沢保持率と、特に触媒が含まれていない場合のリフロー後の光沢保持率との相乗的増加は、著しい改善である。
【0107】
理論に縛られることを望むものではないが、発明者らは、式Ia、Ib及び/又はIc及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)のこのような組み合わせが、複数の架橋構造をもたらし、得られる硬度とリフロー特性の組み合わせを高めると考える。
【0108】
よって、本発明の特定の実施形態及び種々の態様は、以下の要素を含む。
【0109】
第1の実施形態において、本発明は、以下の成分を含む2K溶媒型コーティング系を提供する:
以下の成分を含むエポキシ成分(A):
i)エポキシ樹脂、
ii)溶媒、
iii)式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そして
m=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及び
iv)任意に、少なくとも1種の添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に、少なくとも1種の触媒、及び
任意に、少なくとも1種の添加剤。
【0110】
第1の実施形態の第1の態様において、本発明は、式(I)の少なくとも1種の化合物が、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、
yは2又は3であり、そして
x+y=4である)の化合物を含む、2K溶媒型コーティング系を提供する。
【0111】
第1の態様のさらなる記載では、式(Ia)の化合物は、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のエポキシド化合物を含む。
【0112】
第1の実施形態の第2の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物を含む。
【0113】
第2の態様のさらなる記載では、式(Ib)の化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラヘキソキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を含む。
【0114】
第1の実施形態の第3の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物を含む。
【0115】
第1の実施形態の特別な一態様において、エポキシ成分(A)及び酸性樹脂成分(B)のうち少なくとも1つは、疎水性ヒュームドシリカを含有する。
【0116】
この特別な態様のさらなる部分において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0117】
第1の実施形態のさらなる記載では、エポキシ成分(A)の溶媒及び/又は酸性樹脂成分(B)の溶媒は、トルエン、キシレン、ナフサ、ヘプタン、オクタン、ヘキサン;ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、2-エトキシエチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテート、N-メチルピロリドン(NMP)、クロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12~18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、及び2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0118】
第1の実施形態のさらなる記載では、エポキシ樹脂成分(A)は非触媒性添加剤を含み、非触媒性添加剤は、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される。
【0119】
第1の実施形態のさらなる記載では、酸性樹脂成分(B)は触媒を含み、触媒は、ビスマスネオデカノエート、ジブチルスズラウレート(DBTL)、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択される。
【0120】
第1の実施形態のさらなる記載では、酸性樹脂成分(B)は添加剤を含み、添加剤は、二酸化チタン、沈降シリカ、焼成シリカ、タルク、マイカ、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される。
【0121】
第2の実施形態において、本発明は、2K溶媒型コーティング組成物であって、以下の成分:
エポキシ樹脂、
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に、触媒、
任意に、添加剤、及び
式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、
x+y+z+t=4であり、そして
m=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含み、
式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%が、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である、2K溶媒型コーティング組成物を提供する。
【0122】
第2の実施形態の第1の態様において、式(I)の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、
xは1又は2であり、
yは2又は3であり、そして
x+y=4である)の化合物を含む。
【0123】
第2の実施形態の第1の態様のさらなる記載では、式(Ia)の化合物は、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のエポキシド化合物を含む。
【0124】
第2の実施形態の第2の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物を含む。
【0125】
第2の実施形態の第2の態様のさらなる記載では、式(Ib)の化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラヘキソキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を含む。
【0126】
第2の実施形態の第3の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物を含む。
【0127】
第2の実施形態の特別な態様において、2K溶媒型コーティング組成物は、疎水性ヒュームドシリカを含む。この特別な態様の好ましい形態において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0128】
第2の実施形態のさらなる記載では、溶媒は、トルエン、キシレン、ナフサ、ヘプタン、オクタン、ヘキサン;ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、2-エトキシエチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテート、N-メチルピロリドン(NMP)、クロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12~18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、及び2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0129】
第2の実施形態のさらなる記載では、添加剤は、二酸化チタン、沈降シリカ、焼成シリカ、タルク、マイカ、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0130】
第2の実施形態の第4の態様において、2K溶媒型コーティング組成物は触媒を含み、触媒は、ビスマスネオデカノエート、ジブチルスズラウレート(DBTL)、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択される。
【0131】
第3の実施形態において、本発明は、
基材、
任意に、基材上のプライマーコーティング、
ウェットベースコートコーティング、及び
ウェットベースコート上の溶媒型2Kクリアコートウェットコーティングを含む、ウェットコーティングした基材を提供する。
【0132】
ここで、溶媒型2Kウェットコーティングは、
エポキシ樹脂、
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に、触媒、
任意に、添加剤、及び
式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、
R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そして
m=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)を含み、
式(I)の少なくとも1種の化合物の全質量含有%が、溶媒型コーティング組成物の全固形分質量の5~50%である。
【0133】
第3の実施形態の第1の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)の化合物を含む。
【0134】
第3の実施形態の第1の態様のさらなる記載では、式(Ia)の化合物は、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のエポキシド化合物を含む。
【0135】
第3の実施形態の第2の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物を含む。
【0136】
第3の実施形態の第2の態様のさらなる記載では、式(Ib)の化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラヘキソキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物を含む。
【0137】
第3の実施形態の第3の態様において、式(I)の少なくとも1種の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物を含む。
【0138】
第3の実施形態の特別な一態様において、溶媒型2Kクリアコートウェットコーティングは、疎水性ヒュームドシリカを含有する。
【0139】
この特別な態様のさらなる部分では、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0140】
第3の実施形態のさらなる記載では、溶媒は、トルエン、キシレン、ナフサ、ヘプタン、オクタン、ヘキサン;ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、イソブチレンイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、2-エトキシエチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、3-メトキシn-ブチルアセテート、N-メチルピロリドン(NMP)、クロロブロモメタン、1-ブロモプロパン、C12~18n-アルカン、t-ブチルアセテート、ペルクロロエチレン、ベンゾトリフルオリド、p-クロロベンゾトリフルオリド、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、ジメトキシメタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン、2-(ジフルオロメトキシメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、及び2-(エトキシジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0141】
第3の実施形態のさらなる記載では、添加剤は、二酸化チタン、沈降シリカ、焼成シリカ、タルク、マイカ、安定剤、可溶化剤、希釈剤、湿潤剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、消泡剤、分散剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び接着促進剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0142】
第3の実施形態の第4の態様において、2K溶媒型コーティング組成物は触媒を含み、触媒は、ビスマスネオデカノエート、ジブチルスズラウレート(DBTL)、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、アクリル酸、ギ酸、酢酸、酸性ホスフェート、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムのキレート、チタンのキレート、及びジルコニウムのキレートからなる群から選択される。
【0143】
第3の実施形態の第5の態様において、基材は金属を含むか、又は熱可塑性ポリマーを含む。
【0144】
第5の態様のさらなる記載では、基材は金属を含み、金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼、鋼合金、マグネシウム及びマグネシウム合金からなる群から選択される。
【0145】
第5の態様のさらなる記載では、金属基材は、金属表面上に電着コーティング層を含む。
【0146】
第5の態様のさらなる記載では、基材は熱可塑性ポリマーを含み、熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、及びEPDMゴムからなる群から選択される。
【0147】
第5の態様のさらなる記載では、熱可塑性基材は、基材の表面にプライマーコーティングを含む。
【0148】
第4の実施形態において、本発明は、第3の実施形態のウェットコーティングした基材を乾燥及び硬化させることによって得られる、以下を含む耐引掻性及び耐傷性のあるコーティングした基材を提供する:
任意に、基材上の乾燥及び硬化させたプライマーコーティング、
乾燥及び硬化させたベースコート、及び
乾燥及び硬化させたクリアコート(この乾燥及び硬化させたクリアコートは、
エポキシ樹脂とカルボン酸樹脂の架橋樹脂反応生成物を含み、
ここで架橋樹脂は、カルボン酸樹脂のカルボキシル基又はエポキシ樹脂のエポキシ基と式(I)
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そして
m=1である)の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)との反応によって得られる、シラニルヒドロキシエステル基の側鎖単位を含み、そして
乾燥及び硬化させたクリアコートは、架橋性シリケート基をさらに含む)。
【0149】
第4の実施形態の第1の態様において、架橋樹脂は、カルボン酸樹脂のカルボキシル基又はエポキシ樹脂のエポキシ基と式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、
yは2又は3であり、そして
x+y=4である)の化合物との反応によって得られるシラニルヒドロキシエステル基の側鎖単位を含む。
【0150】
第4の実施形態の第2の態様において、架橋樹脂は、カルボン酸樹脂のカルボキシル基又はエポキシ樹脂のエポキシ基と式(Ib)
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の化合物との反応によって得られるシラニルヒドロキシエステル基の側鎖単位を含む。
【0151】
第4の実施形態の第3の態様において、架橋樹脂は、カルボン酸樹脂のカルボキシル基又はエポキシ樹脂のエポキシ基と式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の化合物との反応によって得られるシラニルヒドロキシエステル基の側鎖単位を含む。
【0152】
第4の実施形態の特別な態様において、クリアコートは、疎水性ヒュームドシリカを含む。この特別な態様の好ましい形態において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0153】
明示的な態様において、第4の実施形態による耐引掻性及び耐傷性のあるコーティングした基材は、乾燥及び硬化させたクリアコートが100グラム/リットルを超えるタップ密度を有するヒュームドシリカをさらに含む。
【0154】
第5の実施形態において、本発明は、基材をコーティングする方法であって、
i)以下の成分を含むエポキシ成分(A):
エポキシ樹脂、
溶媒、
式(I):
[(ER)x(R’O)y(HO)z(R’’)t(SiO(4-x-y-z-t))]m (I)
(式中、
ERはエポキシド基で置換したアルキル基又はエポキシド基で置換したシクロアルキル基であり、R’は1~6個の炭素原子のアルキル基であり、
R’’は直鎖状、分岐状又は環状であってよい1~20個の炭素原子のアルキル基であり、
xは0~2の数であり、
yは0~4の数であり、
zは0~3の数であり、
tは0~2の数であり、
x及びyのうち少なくとも1つは0より大きく、x+y+z+t=4であり、そして
m=1である)の少なくとも1種の化合物、及び/又は式(I)の化合物のオリゴマー又はポリマー化合物(ここで、部分的加水分解及び縮合がエポキシ側鎖(ER)を含有する構造を提供し、前記構造は5000以下のモノマー単位mを含有する)、及び
任意に、少なくとも1種の非触媒性添加剤、及び
以下の成分を含む酸性樹脂成分(B):
カルボン酸樹脂、
溶媒、
任意に少なくとも1種の触媒、及び
任意に、少なくとも1種の添加剤
を組み合わせて混合することによって2Kコーティング組成物を調製する工程、
ii)2Kコーティング組成物を基材に適用する工程、及び
iii)基材に適用した組成物を乾燥及び硬化させる工程を含む、基材をコーティングする方法を提供する。
【0155】
第5の実施形態の特別な態様において、2K溶媒型コーティング組成物のエポキシ樹脂成分(A)、酸性樹脂成分(B)又は樹脂成分(A)及び(B)は、疎水性ヒュームドシリカを含む。この特別な態様の好ましい形態において、疎水性ヒュームドシリカは、150~190m2/gのBET表面積、3.0~5.0のpH、及び100g/lを超える、好ましくは150g/lを超える、そして最も好ましくは180g/lを超えるタップ密度を有する。
【0156】
第5の実施形態の第1の態様において、2Kコーティング組成物をウェットベースコート組成物上に適用し、ベースコート及び2Kコーティング組成物を同時に乾燥及び硬化させる。
【0157】
第5の実施形態のさらなる記載では、基材は金属を含み、金属基材は金属表面上に電着コーティング層を含む。さらに、このさらなる記載によれば、方法は、ベースコート層を電着コーティング層に適用する工程、2K組成物をウェットベースコート組成物に適用してベースコート及び2K組成物のウェットオンウェット層を得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程を含む。
【0158】
第5の実施形態のさらなる記載では、基材は熱可塑性ポリマーを含み、方法は、
熱可塑性基材の表面にプライマーコーティングを適用する工程、
任意に、熱可塑性基材上のプライマーコーティングを乾燥及び硬化させる工程、
プライマーコーティング層にベースコート層を適用する工程、
ウェットベースコート組成物に2K組成物を適用してベースコートのウェットオンウェット層、2K組成物及び任意にプライマーコーティングを得る工程、そして、
ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程をさらに含む。
【0159】
第5の実施形態の第2の態様及び第5の実施形態の先に記載した態様において、式(I)の化合物は、式(Ia):
(ER)x(R’O)ySi (Ia)
(式中、xは1又は2であり、yは2又は3であり、そしてx+y=4である)の少なくとも1種の化合物である。
【0160】
第5の実施形態の第2の態様のさらなる記載では、2Kコーティング組成物をウェットベースコート組成物上に適用し、ベースコート及び2Kコーティング組成物を同時に乾燥及び硬化させる。
【0161】
第5の実施形態の第2の態様のさらなる記載では、基材は金属を含み、金属基材は金属表面上に電着コーティング層を含む。このさらなる記載によれば、方法は、ベースコート層を電着コーティング層に適用する工程、2K組成物をウェットベースコート組成物に適用してベースコート及び2K組成物のウェットオンウェット層を得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程をさらに含む。
【0162】
第5の実施形態の第2の態様のさらなる記載では、熱可塑性ポリマーを含み、方法は、熱可塑性基材の表面にプライマーコーティングを適用する工程、任意に、熱可塑性基材上のプライマーコーティングを乾燥及び硬化させる工程、プライマーコーティング層にベースコート層を適用する工程、ウェットベースコート組成物に2K組成物を適用してベースコートのウェットオンウェット層、2K組成物及び任意にプライマーコーティングを得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程をさらに含む。
【0163】
第5の実施形態の第3の態様及び第5の実施形態の先に記載した態様において、式(I)の化合物は、式(Ib):
(R’O)ySi (Ib)
(式中、yは4である)の少なくとも1種の化合物である。
【0164】
第5の実施形態の第3の態様のさらなる記載では、2Kコーティング組成物をウェットベースコート組成物上に適用し、ベースコート及び2Kコーティング組成物を同時に乾燥及び硬化させる。
【0165】
第5の実施形態の第3の態様のさらなる記載では、基材は金属を含み、金属基材は金属表面上に電着コーティング層を含む。さらに、この方法は、ベースコート層を電着コーティング層に適用する工程、2K組成物をウェットベースコート組成物に適用してベースコート及び2K組成物のウェットオンウェット層を得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程を含む。
【0166】
第5の実施形態の第3の態様のさらなる記載では、基材は熱可塑性ポリマーを含み、方法は、
熱可塑性基材の表面にプライマーコーティングを適用する工程、
任意に、熱可塑性基材上のプライマーコーティングを乾燥及び硬化させる工程、
プライマーコーティング層にベースコート層を適用する工程、
ウェットベースコート組成物に2K組成物を適用してベースコートのウェットオンウェット層、2K組成物及び任意にプライマーコーティングを得る工程、そして、
ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程をさらに含む。
【0167】
第5の実施形態の第4の態様において、式(I)の化合物は、式(Ic):
(R’O)y(R‘‘)tSi (Ic)
(式中、yは2又は3であり、そしてtは1又は2である)の少なくとも1種の化合物である。
【0168】
第5の実施形態の第4の態様において、2Kコーティング組成物をウェットベースコート組成物上に適用し、ベースコート及び2Kコーティング組成物を同時に乾燥及び硬化させる。
【0169】
第5の実施形態の第4の態様のさらなる記載では、基材は金属を含み、金属基材は金属表面上に電着コーティング層を含む。さらに、この方法は、ベースコート層を電着コーティング層に適用する工程、2K組成物をウェットベースコート組成物に適用してベースコート及び2K組成物のウェットオンウェット層を得る工程、そして、ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程を含む。
【0170】
第5の実施形態の第4の態様のさらなる記載では、基材は熱可塑性ポリマーを含み、方法は、
熱可塑性基材の表面にプライマーコーティングを適用する工程、
任意に、熱可塑性基材上のプライマーコーティングを乾燥及び硬化させる工程、
プライマーコーティング層にベースコート層を適用する工程、
ウェットベースコート組成物に2K組成物を適用してベースコートのウェットオンウェット層、2K組成物及び任意にプライマーコーティングを得る工程、そして、
ウェットオンウェット層を乾燥及び硬化させる工程をさらに含む。
【実施例】
【0171】
試験法:
ポリマー分子量測定
GPCでポリマーの分子量を測定するために、ポリマー試料の完全に溶解した分子を多孔性カラム固定相で分画した。0.1mol/lのテトラヒドロフラン(THF)酢酸溶液を溶離液として使用した。固定相は、Waters Styragel HR5、HR4、HR3、及びHR2カラムの組み合わせであった。5ミリグラムの試料を1.5mLの溶出溶媒に加え、0.5μmフィルターでろ過した。ろ過後、100μlのポリマー試料溶液を1.0ml/分の流速でカラムに注入した。分離は、溶離液中に形成されたポリマーコイルの大きさに応じて行った。小さな分子は、大きな分子よりも頻繁にカラム材料の細孔中に拡散するので、遅延が大きくなる。よって、大きな分子は小さな分子よりも早く溶出する。ポリマー試料の分子量分布、平均Mn及びMw、及び多分散性Mw/Mnは、さまざまな分子量の一連の非分岐ポリスチレン標準を含むEasyValid検証キット(Polymer Standards Service社から入手可能)で生成された検量線を利用したクロマトグラフィーソフトウェアを使用して計算した。
【0172】
エポキシ当量の測定
エポキシ樹脂のエポキシ含有量に関するASTM D1652標準試験法
固体含有量の測定
コーティングの揮発性含有量に関するASTM D2369標準試験法
酸価の測定
特定のアルカリ可溶性樹脂の酸価に関するASTM D3643標準試験法
TUKONマイクロ硬度
コーティングした基材のTukonマイクロ硬度を評価するために、Wolpert Wilson Tukon 2100を使用した。コーティングした基材を、Tukon圧子の下にある装置の段に置いた。圧子は、ピラミッド型のダイヤモンドチップを使用して、コーティングした基材の表面に25gの荷重を18±0.5秒間適用する。この装置は、糸線接眼測微計(filar micrometer eyepiece)を有する顕微鏡も備えていた。圧痕完了後、顕微鏡を使用して痕の長さを測定した。装置により、次の式からKnoop硬度値(KHN)を算出した。
【0173】
【0174】
式中:
.025= 圧子に適用した荷重、kg
L= 圧痕の長対角線の長さ、mm
Cp= 圧子定数=7.028×10(-2)
【0175】
クロックメーター乾式耐引掻性
耐引掻性及び耐傷性を評価するため、Atlas M38BB Electric Crockmeterを使用した。2インチ×2インチの9ミクロン3M 281Q WETODRY(商標)研磨紙を、クロックメーターの可動アームの円筒形アクリルフィンガーにワイヤークランプで取り付けた。コーティングした4インチ×12インチの鋼製試験パネルを、可動アームの下に磁石で固定した。摩耗がパネル表面に対して滑らかであることを確認した後、前後の10サイクル(又は二重こすり)を行った。試験していない領域にパネルをスライドさせた後、新しい3Mペーパーを使用して、同じ手順を同じパネルで2度繰り返した。試験完了時に、BYK社製のマイクロ-TRI-光沢計を使用して、パネルの試験済み領域と試験していない領域の両方で20°光沢を測定した。光沢保持率は、2つの試験領域の光沢の平均を取り、試験していない領域の光沢で割ることによって算出した。コーティングのリフロー特性を試験するために、パネルをオーブンで176°F(80℃)に1時間加熱した。冷却後、光沢保持率を再度算出して、光沢の回復が観察されるかどうかを測定した。
【0176】
保存安定性
安定性を評価するために、Brookfield CAP-1000+粘度計を使用して、ウェットコーティング試料の高せん断粘度を経時的に監視した。粘度測定は、25.0℃及び100RPMで行った。試料を用意し、ソルベントナフサ160/180でパッケージの粘度まで下げた。最初の粘度測定を行った後、試料を裏地のない1パイントの蓋付きブリキ缶に保管した。室温で7日間保管した後、試料を缶から取り出し、同じ手順を使用して粘度を測定した。試料の最終粘度と最初の粘度の商から、粘度増加率を計算した。
【0177】
オペル洗車:
湿潤耐引掻性を評価するために、Erichsen社のモデル494MC洗浄性及びスクラブ耐性試験機を使用した。ASTM標準のナイロンブラシ(やはりErichsen社から入手可能)に、5gの炭酸カルシウム粉末(Sigma Aldrich社製)と2.5gの脱イオン水から作られたペーストを入れた。コーティングした4インチ×18インチの鋼製試験パネルを洗車試験機に固定し、帯電ブラシをパネル表面の上にあるそのホルダーに置いた。ブラシホルダーワイヤーをホルダーに取り付けた後、パネルの長さにわたって2つの別々の経路で、試験の合間にブラシを再充電せずに(ブラシはパネル間で再充電した)、パネル上で25回及び200回の前後のサイクルを行った。試験完了時に、パネルを脱イオン水で洗浄し、布で軽く拭いて乾かした。BYK社製のマイクロ-TRI-光沢計を使用して、パネルの試験済み領域と試験していない領域の両方で20°光沢を測定した。光沢保持率は、2つの試験領域の光沢を取り、それぞれ試験していない領域の光沢で割ることによって算出した。コーティングのリフロー特性を試験するために、パネルをオーブンで80℃に1時間加熱した。冷却後、光沢保持率を再度算出して、光沢の回復が観察されるかどうかを測定した。
【0178】
タップ密度
タップ密度は、ISO787-11:1981に従って測定した。本発明の意味において、「タップ密度」及び「タンプ密度」という用語は交換可能である。
【0179】
実施例1
コーティングした基材の用意
4インチ×12インチの冷間圧延鋼試験パネルを基材として使用した。パネルは、Bondrite(登録商標)958亜鉛ホスフェート前処理で前処理し、Parcolene(登録商標)90後すすぎで洗浄した(どちらもHenkel社から入手可能)。パネルをBASF Cathoguard(登録商標)800電着コーティングの0.7~0.8milの層で電着コーティングし、350°F(176.7℃)で20分間ベークした。パネルに2.5~3.0milのBASF G27AM242灰色粉末プライマー層を噴霧し、340°F(171.1℃)で20分間ベークした。パネルは、1.0~1.2milのBASF E54WW310W(2つのコーティングでパネルに適用された白色の水性ベースコート)の層でコーティングされた。ベースコートでコーティングした後、パネルに5分の周囲フラッシュと150°F(65.6℃)で6分の加熱フラッシュを適用した。その後、1.8~2.0milの溶媒型2成分クリアコート層をパネルに2つのコーティングで適用した。クリアコートを適用した後、パネルに10分の周囲フラッシュと260°F(126.7℃)の温度で20分のベークを施した。
【0180】
表1に、用意して基材に適用した2成分のクリアコート組成物を示す。
【0181】
【0182】
2成分クリアコート組成物は一般に、噴霧の直前に混合した成分A及び成分Bを含んでいた。成分Aは一般に、GMAアクリル樹脂、エポキシ官能性アクリルコポリマー(エポキシモノマーとしてグリシジルメタクリレートを使用)を含み、質量平均分子量は3500、エポキシ当量は283、そして固形分は58質量%であった。成分Aは、GMAアクリル樹脂中に分散させた疎水性ヒュームドシリカ、GMAアクリル樹脂中に分散させたポリアミドワックス、高イミノメラミン樹脂、30質量%溶液中の固体UV吸収剤(Tinuvin(登録商標)928)、液体ヒンダードアミン光安定剤(Tinuvin(登録商標)123)、ホスファイト酸化防止剤、2種のポリアクリレートフロー添加剤、ポリアクリレートポップ防止添加剤、及び溶媒(ソルベントナフサ160/180)をさらに含む。さらに、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、Coat-o-Sil MP200(事前に加水分解させた3-GPTMS)、及びテトラエチルオルトシリケートを成分Aに加えた。成分Bは一般に、酸官能性アクリル樹脂、カルボン酸基含有コポリマーを含み、質量平均分子量は3500、酸価は145、固形分は55%、そして酸官能性ポリエステル樹脂、カルボン酸基含有ポリエステルを有し、質量平均分子量は1850、酸価は180、固形分は62%であった。成分Bは、第3級アミン触媒(ジメチルドデシルアミン)、ビスマスカルボキシレート触媒(King Industries社製K-KAT(登録商標)XK-651)、及び溶媒(ソルベントナフサ160/180)をさらに有する。
【0183】
実施例2
コーティングした基材のTukon硬度及びクロックメーター乾式耐引掻性
実施例1のコーティングした基材のTukon硬度及びクロックメーター耐引掻性及び耐傷性について評価した。
【0184】
表2は、実施例1のコーティングした基材のTukonマイクロ硬度及びクロックメーター乾式耐引掻性の試験結果をまとめたものである。
【0185】
【0186】
実施例3
クリアコート組成物の調製
クリアコート組成物を調製して、密閉された裏地のないブリキ缶に保管し、棚保管安定性を評価した。調製したクリアコート組成物は、クリアコート成分A単独、クリアコート成分B単独、及びクリアコート成分A及びBを混合した試料を含んでいた。
【0187】
表3は、保存安定性試験に用意したクリアコート組成物を示す。
【0188】
【0189】
保存安定性を評価するため、すべての試料の目標粘度を、ソルベントナフサ160/180を使用し、成分AとBの混合試料及び成分B単独の試料については60cP、成分A単独の試料については40cPに下げた。すべての粘度測定は、Brookfield CAP-1000+粘度計で行った。粘度測定は、25.0℃及び100RPMで行った。
【0190】
実施例4
クリアコート組成物の保存安定性
実施例3のクリアコート組成物について、1週間の棚保管期間後の安定性を評価した。
【0191】
表4に、実施例3からのコーティング組成物の室温安定性試験結果を要約する。
【0192】
【0193】
示すように、本開示の2成分クリアコート組成物は、コーティングした基材の硬度及び耐引掻性及び耐傷性を増加させるのに適している。さらに、そして予期せぬことに、本開示の2成分クリアコート組成物は、コーティングした基材の硬度及び耐引掻性及び耐傷性を高めるのに適している一方で、コーティング組成物の成分Aの反応性シラン成分を単離することによって、長期保存安定性の選択肢も提供する。
【0194】
よって、前述の考察は、本開示の単なる例示的な実施形態を開示及び記載する。当業者によって理解されるように、本開示は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。よって本発明の開示は、例示を意図したものであり、開示の範囲及び他の請求項を限定するものではない。本明細書の教示の容易に識別可能な変形を含む開示は、一部には、発明の主題が開放されないように、前述の請求項の用語の範囲を定義する。