(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】歯科修復物を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/09 20060101AFI20230213BHJP
C04B 35/486 20060101ALI20230213BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20230213BHJP
A61C 13/083 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A61C13/09
C04B35/486
A61C5/70
A61C13/083
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021014074
(22)【出願日】2021-02-01
(62)【分割の表示】P 2018534108の分割
【原出願日】2016-12-23
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】102015122865.3
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】504013395
【氏名又は名称】デグデント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ローター・フォルクル
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・フェチャー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0175801(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0221554(US,A1)
【文献】国際公開第2015/051095(WO,A1)
【文献】佐藤 次雄, 外1名,部分安定化ジルコニアの熱安定性,表面科学,日本,1989年,Vol. 10, No. 1,pp. 11-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/09
C04B 35/486
A61C 5/70
A61C 13/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる組成のセラミック材料の領域または層を有するブランクからの歯科修復物の作製のための方法であって、
a) 注ぎ込み可能な状態にある第1のセラミック材料の第1の層をモールド(310)内に充填することと、
b1) 表面上で見たときに前記第1の層が領域毎に高さに関して異なるように、隆起部、及び凹部又は谷部が形成されるように、前記第1の層を構造化する前に、前記第1の層の表面を滑らかにし、次いで、第2の層として、前記第1の層の組成と異なる組成を有する注ぎ込み可能な状態にある第2のセラミック材料を前記モールド内に充填すること、または、
b3) 前記第1の層を充填した後に、前記第1の層内に少なくとも1つの第1の開放空洞(318)を形成し、次いで、第2のセラミック材料を前記少なくとも1つの第1の開放空洞内に充填することと、
ここで、前記セラミック材料は、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO
2)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、前記第1の層(14)の前記
セラミック材料は、前記第2の層(24)の前記
セラミック材料と、室温において存在する安定した結晶形態の色および割合に関して異なるものであり、
c) ブランクを形成するために前記セラミック材料を加圧することと、
d) 前記モールドから前記ブランクを取り出すことと、
e) 前記ブランクを温度処理することと、
ここで、前記ステップa)+b1)、またはa)+b3)により、前記セラミック材料は、前記温度処理後の層および/または領域がデジタルデータセットとして利用可能である所定のコースを示すように前記モールド内に充填され、および/または前記モールド内で処理されるものであり、
f) 収縮を考慮して前記歯科修復物または前記歯科修復物に対応する形態を仮想的に設計することと、
g) 前記ブランクを仮想表現することと、
h)前記ブランクの仮想表現内で前記仮想表現された歯科修復物または前記形態を位置決めし、前記層および/または領域の材料特性を考慮することと、
i) 前記ブランク内の仮想的に配置構成された歯科修復物または前記形態の位置に対応する前記ブランクに対するデータを決定することと、
j) 前記歯科修復物または前記形態を前記ブランクから導出するため前記データを機械に転送することと、を備える方法。
【請求項2】
いくつかの第1の開放空洞(318)が前記第1のセラミック材料(314)の前記層内に形成され、前記第2のセラミック材料が前記第1の開放空洞内に充填されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の前記第1の開放空洞(318)のうちの少なくともいくつかは、異なる内部幾何学的形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも前記第2のセラミック材料は、群Pr、Er、Tb、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、好ましくはFe
2O
3、Er
2O
3、またはCo
3O
4からの要素の少なくとも1つの着色酸化物で着色されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および/または第2のセラミック材料(314、320)に使用される前記
セラミック材料は、前記第1の
セラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージが7.0wt%から9.5wt%であり、および/または前記第2のセラミック材料および/またはさらなるセラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージは、4.5wt%から7.0wt%であり、ここにおいて、前記第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの前記パーセンテージは、前記第2のセラミック材料またはさらなるセラミック材料中のパーセンテージより高い、材料であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる組成のセラミック材料の領域または層を有するブランクからの歯科修復物の作製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第8,936,848B2号では、歯牙交換品(tooth replacement)の作製のために使用され、異なる化学組成の多数の層からなる二酸化ジルコニウムのブランクを開示している。それによって、個別の層は、異なる割合の酸化イットリウムを有する。CAD(コンピュータ支援設計)/CAM(コンピュータ支援製造)の手順が、歯牙交換品を作製するために使用される。最良適合法による歯牙交換を備えるべき歯の残根を嵌合させるため多数の歯の形状のうちから選択が行われる。次いで、選択された歯に対するデジタルデータが、ブランクから歯牙交換品を作製するために数値制御フライス盤に供給される。
【0003】
二酸化ジルコニウムの本体部は、L*a*b*色空間内の直線に沿って色度の減少または増大を示す(米国特許出願公開第2014/0328746A1号)。
【0004】
国際公開第2014/062375A1号による歯科対象物の調製のための二酸化ジルコニウムのブランクは、異なる割合の正方結晶相および立方結晶相を有する少なくとも2つの材料領域を有し、ここにおいて、これらの領域の1つの領域では比は1より大きく、他の領域では比は1より小さい。
【0005】
欧州特許第2,371,344A1号は、表面から所望の深さのところまで安定化剤で富化されたセラミック本体部に関するものである。
【0006】
二酸化ジルコニウムは、歯科修復物を作製するためのセラミック材料として使用される。フレームワークは、たとえば、二酸化ジルコニウムのブランクからミリングされ得、次いで、焼結され得る。次の処理段階において、ベニヤが手作業でフレームワークに施され、ここにおいて、少なくとも1つの切歯材料が手作業で施され、融合される。これらの処理方策はすべて、時間がかかり、さらに、歯科修復物が要求条件を満たすことを確実にしない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、美観上の要求条件を満たし、さらに特に、大きな負荷のかかる領域内で高い強度を有する歯科修復物が骨の折れる後処理なしで利用可能にされるような前述のタイプの方法を開発することである。
【0008】
この目的を達成するために、異なる組成のセラミック材料の領域または層を有するブランクからの歯科修復物の作製のための方法が提案され、方法は、以下のステップ、すなわち、
a) 注ぎ込み可能な状態にある第1のセラミック材料の第1の層をモールド内に充填することと、
b1) 表面上で見たときに第1の層が領域毎に高さに関して異なるように第1の層を構造化し、次いで、第2の層として、第1の層の組成と異なる組成を有する注ぎ込み可能な状態にある第2のセラミック材料をモールド内に充填すること、または
b2) 第1の層(414)の充填後に、第1のセラミック材料と異なる、注ぎ込み可能な状態にあるさらなるセラミック材料のさらなる層(427)をモールド内に充填し、中間層(428)を形成するために第1の層の材料をさらなる層の材料と混合し、次いで、第2のセラミック材料をモールド内に充填すること、または
b3) 第1の層を充填した後に、第1の層内に少なくとも1つの第1の開放空洞(318)を形成し、次いで、第2のセラミック材料を少なくとも1つの第1の開放空洞内に充填することと、
ここにおいて、セラミック材料は、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO2)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、およびここにおいて、第1の層(14)の材料は第2の層(24)の材料と、室温において存在する安定した結晶形態の色および割合に関して異なる、
c) ブランクを形成するためにセラミック材料を加圧することと、
d) モールドからブランクを取り出すことと、
e) ブランクを温度処理することと、
ここにおいて、方法ステップa)+b1)、またはa)+b2)、またはa)+b3)により、セラミック材料は、温度処理後の層および/または領域がデジタルデータセットとして利用可能である所定のコースを示すようにモールド内に充填され、および/またはモールド内で処理される、
f) 収縮を考慮して歯科修復物または歯科修復物に対応する形態の仮想設計を行うことと、
g) ブランクを仮想表現し、ブランク内で仮想表現された歯科修復物または形態を位置決めし、層および/または領域の材料特性を考慮することと、
h) ブランク内の仮想的に配置構成された歯科修復物または形態の位置に対応するブランクに対するデータを決定することと、
i) 歯科修復物または形態をブランクから導出するためデータを機械に転送することとを備える。
【0009】
本発明によれば、特にミリングおよび/または研磨によって機械加工されるべき修復物は、最適に作製された、歯科修復物または歯牙交換品とも称される歯科用交換品が、特に半透明性および強度に関する要求条件を満たすような、異なる材料特性、特に異なる半透明性および強度の層または領域を有する、事前焼結されたブランク内に位置決めされる。歯牙交換品が事前焼結されたブランクから作製される場合、最終焼結時に発生する収縮は、輪郭削りにおいて、すなわち歯科用歯牙交換品の輪郭削りの際に考慮される。当然ながら、処理ステップd)の後に、対応する収縮率が考慮される必要がなくなるようにブランクが完全に焼結される可能性もある。
【0010】
本発明によれば、ブランクの光学的および機械的特性などの材料特性ならびに半透明性および強度などの所望の特性を保証するブランク内に存在する異なる組成の層または領域の外形はデータベース内に記憶され、そうすることで、ブランクが、たとえばモニター上に可視化されようにできる。ブランクのこの仮想表現において、たとえば歯科用CADソフトウェアを用いて設計された三次元歯牙交換品は、切縁またはその一部がブランクが所望のカラープロファイルおよび/または半透明性を有するブランクの領域内に延在するように、たとえば、切歯および象牙質領域がブランク内に位置決めされる状態で、留置される。次いで、象牙質部分は、ブランクの材料が必要な強度を有する隣接領域内に位置決めされ得る。
【0011】
本発明による教示では、これが行われるとしても手でベニヤが施されること、さらには釉薬の焼成を必ずしも必要としない。それと同時に、修復物が大きな負荷がかかっている領域内で高い強度を有することが確実にされる。
【0012】
特に、本発明では、第1のセラミック材料の第1の層がモールド内に充填された後に、層は、その表面に沿って見たときに、一方の領域から別の領域への間で高さが変わる、すなわち、一定の充填高さを有しないようにその表面上に構造化され、セラミック材料の組成に関して第1の層と異なる第2の層は、次いで、モールド内に充填されることを規定している。
【0013】
代替的に、第1の層が充填された後に、第1の層と異なるセラミック材料の中間層がモールド内に充填されること、第1の層の材料が中間層の材料と混合されること、および第2の層がモールド内に充填されることが可能である。特に、第1の層の自由表面から始まって中間層の高さの約2倍の高さまで、中間層の材料は第1の層の材料と混合されることが規定されている。さらに、特に、中間層の材料が第2の層の材料と同じであることが規定される。
【0014】
本発明の第1の代替的形態によれば、注ぎ込み可能な材料の第1の層がモールド内に充填される。たとえば、これは、たとえば1g/cm3から1.4g/cm3の間、特に1.15g/cm3から1.35g/cm3の範囲内にあるかさ密度を有する、歯の色をした二酸化ジルコニウム粒状物であってよい。40μmから70μmの間の粒径D50を有することができる、粒状物が充填された後、表面は、特に互いに平行であり、好ましくは同心円上にもしくは互いに平行に延在する隆起部および谷部が作製されるように構造が形成される前に滑らかにされる。この目的のために、特に、波状、くし状、または鋸歯状の部分を用いて第1の層の表面領域を特に構造化する、第1の層に関して、移動し、特に回転する要素によって構造が形成されることが規定される。構造を形成するための表面の仮想「レーキング(raking)」、すなわち、交互する隆起部および谷部がある。
【0015】
特に、隆起部の体積が凹部もしくは谷部の体積に等しいか、またはほぼ等しくなるように構造が形成されることが規定されている。
【0016】
好ましくは、鋸歯状要素は、対称的に形成され、フランクが15°から45°の間の角度を囲む、V字形歯を有しているべきである。隣接する歯と歯の間の距離、すなわち、頂点と頂点の間の距離は、1から4mmの間、好ましくは1mmから3mmの間であるべきである。
【0017】
次いで、谷部によって形成された構造のトラフから量が増大する、注ぎ込み可能な第2のセラミック材料がモールド内に充填され、それにより、結果として、隆起部の高さにわたって第2の層の割合の準連続的増大が生じる。表面が滑らかにされた後、層は加圧され、約3g/cm3の密度を生み出す。次いで、700℃から1100℃の間、特に800℃から1000℃の範囲の温度で、一定時間期間にわたり、たとえば、100分から150分の間、事前焼結が実行される。次いで、このようにして作製されたブランクは、二酸化ジルコニウムについては、たとえば、6.00g/cm3から6.1g/cm3の間、特に6.04g/cm3から6.09g/cm3の間である、最終密度が得られるまで、その後焼結される、たとえば、所望の歯科修復物をミリングおよび/または研磨により生み出すように加工される。
【0018】
たとえば10分から250分の間の時間をかけて、1300℃から1600℃の間の温度で、完全な焼結が実行される。完全な焼結は、いくぶん高い温度でも実行され得る。たとえば出発物質の製造業者によって指定されている温度よりも100℃高い温度で焼結が実行される場合、これは、過焼結と称され、ここにおいて、焼結時間は完全焼結の時間と同じである。
【0019】
特に、完全焼結は、1350℃から1550℃の範囲内で、達成可能な密度が6.03から6.1g/cm3、特に6.04から6.09/cm3の間にあるとして実行される。
【0020】
層の貫通の結果、異なる物理的および光学的特性がブランクの高さにわたって達成され得る利点が得られる。したがって、第1の層が必要な程度まで着色された後、完全焼結の後に、貫通する第1の層材料と第2の層材料とによって形成される遷移領域の端から端まで歯の色の強度が連続的に減少し、それと同時に半透明性が望ましい仕方で増大する、歯の色をした縁領域が得られ得る。次いで、歯科修復物が、層の輪郭を考慮して、特にミリングによってブランクから作製され、ここにおいて、歯科修復物は歯の切歯材料が第2の層の領域内に延在するようにブランク内に「横たえられる」。
【0021】
それとは無関係に、本発明の教示に基づき層の間の連続的遷移がもたらされる、すなわち、色が連続的に減少するかもしくは増加し、および/または半透明性が連続的に減少するかもしくは増加する。さらに、大きな負荷がかかる歯科修復物の領域がそれほど大きくない負荷かかる領域に比べて高い曲げ強度を有するように曲げ強度が調整され得る。この場合、いきなりの遷移はないが、述べたように、作製されるべき歯科修復物の高さにわたる連続的な、すなわち、準連続的な遷移はあり、可能性は従来技術からは知られない-異なる組成のいずれかの層は、他方の上に配置構成され、したがって、階段状の変化が結果として生じるか、または外面とは排他的に、材料特性の変化が、すなわち、歯科修復物全体にわたり、およびその高さにはわたらずにある。
【0022】
好ましい方式において、第1の層の表面から材料を変位させることによって波状もしくは鋸歯状構造を導出するために、要素を、特にモールドの縦軸に沿って延在する軸の周りに回転させることによって層材料を混合することが提案される。表面の方向で第1の層に作用し、特に、要素のメス型が第1の層の表面内に押し込まれるように間に延在する凹部を有する表面内に延在する突起部を有する、スタンプとも称される圧力要素を用いて構造を形成する可能性もある。次いで、上で説明されているように、第2の層のセラミック材料が充填され、次いで、層同士を排他的に加圧し、次いで加圧されている物体を事前焼結するために滑らかにされる。
【0023】
使用されるセラミック材料は、特に、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO2)を添加されるが、特に、酸化イットリウムを添加された二酸化ジルコニウムを含有するものであり、ここにおいて、第1の層の材料は第2の層の材料と、室温において安定化される色および/または結晶形態に関して異なる、
さらに、本発明は、群Pr、Er、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、Tb、好ましくはFe2O3、Er2O3、またはCo3O4の要素からの少なくとも1つの色付けする酸化物で着色されるべき第1および/または第2の層の材料を提示する。
【0024】
本発明は、第1および第2の層が第1および第2の層の全高の1/15から1/4、特に1/10から1/5である高さHにわたる重ね合わされた領域内に相互浸透させられることも特徴とする。
【0025】
第1の層は、第1および第2の層を合わせた厚さの1/2から2/3におおよそ対応する構造化されていない状態の高さを有するべきである。
【0026】
第1の層が高い強度を特徴とし、第2の層が望ましい程度の半透明性を有するために、本発明はさらなる開発において第1の層内の酸化イットリウムのパーセンテージを4.5wt%から7.0wt%とし、および/または第2の層内のパーセンテージを7.0wt%と9.5wt%の間とすることを規定し、ここにおいて、第1の層内の酸化イットリウムのパーセンテージは第2の層内のパーセンテージよりも小さい。
【0027】
さらに、二酸化ジルコニウムの正方相と立方相との比は事前焼結後に第1の層においてさらには第2の層において≧1であるべきである。
【0028】
特に、二酸化ジルコニウムは、第1の層において少なくとも95%の正方結晶形態を有する。第2の層において、正方結晶相は、51%から80%の間であるべきである。残り部分は、特に立方結晶相によって形成されるべきである。
【0029】
第1および第2の層に対する基材は、好ましくは、重量パーセントの次の組成を有する。
HfO2 < 3.0
Al2O3 < 0.3
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
第1の層:Y2O3 4.5から7.0
第2の層:Y2O3 7.0から9.5
色付けする酸化物:0~1.5
【0030】
【0031】
本発明は、特に、次の方策を特徴とする。第1に、もっぱら二酸化ジルコニウムからなる、第1の歯の色をしたセラミック材料がモールド内に充填される。充填する高さは、加圧前に1/2から2/3のブランク高さにおおよそ対応する。
【0032】
次いで、表面は、特別な構造の要素またはスタンプを通じて構造化され、ここにおいて、構造は、第1の材料から第2の材料への特性の連続的遷移を有するように設計され得る。また、第1の層の表面の幾何学的形状は、層材料の拡散係数により整合され得る。
【0033】
好ましくは、第1の層が配置されるモールド内まで下げられる回転する要素が使用され、次いで、必要な程度まで第1の層内に浸漬される。表面は、波状またはくし状の要素のような層側上に構造化されている、要素を回転させることによって選択的に構造化される。代替的に、表面は、好適な幾何学的形状を有するプレスプランジャによって構造化され得る。
【0034】
その後、モールドは、より高い半透明性、およびより高いY2O3含有量も有するべきである、第2の、特に色の薄いセラミック材料を充填される。次いで、セラミック材料の通常の加圧および事前焼結が行われる。
【0035】
好ましくは歯の色を生じるように着色され、もっぱら二酸化ジルコニウムである、第1の層の導入後に、中間層を形成するための材料が、次いでモールド内に充填される場合に、本発明からの逸脱もない。この材料は、第1の材料に比べて色が薄いものであるべきであり、また本質的に、酸化イットリウム含有量が第1の層よりも高い、二酸化ジルコニウムからなるべきである。中間層は、たとえば、モールド内に充填されるべき層の全高の1/10から1/5の高さを有するものとしてよい。次いで、中間層材料は、第1の層と混合される。この場合、少なくとも中間層の高さに対応する深さまで第1の層に浸透する要素との混合が行われる。次いで、より高い半透明性をもたらし、第1の層に比べて高い酸化イットリウム含有量を有するべきである、前に説明されている第2の層に対応する層がモールド内に充填される。次いで、上で説明されているように、セラミック材料は、ミリングにより特に歯科修復物を導出するように事前焼結されたブランクをもたらすように加圧される。さらなる処理ステップは、完全焼結である。中間層の材料は、第2の層の材料であるべきである。
【0036】
代替的に、第1のセラミック材料の層がモールド内に充填され、第1の開放空洞が層内に形成され、第2のセラミック材料が第1の開放空洞内に充填され、材料は一緒に加圧され、次いで熱処理されるという可能性がある。
【0037】
本発明によれば、注ぎ込み可能な材料の層がモールド内に最初に充填される。この材料は、たとえば、1g/cm3から1.4g/cm3の間、特に1.15g/cm3から1.35g/cm3の間にあるかさ密度を有する、着色していない二酸化ジルコニウム粒状材料であるものとしてよい。40μmから70μmの間の粒径D50を有することができる、粒状材料の充填後に、たとえばプレスプランジャを使用して開放中空空間が形成される。これは、たとえば、第1のセラミック材料の一部を変位させることによって、または軽く突き固めることで、実行される。次いで、第2のセラミック材料が、歯の残根または当接部の形状に幾何学的に整合されるべきである、クラウンもしくは部分的クラウンがブランクから形成される場合に、特に実質的に円錐状の幾何学的形状を有する、そのように形成された陥凹部もしくは空洞内に充填され、材料が一緒に加圧される。
【0038】
第1の開放空洞を充填する、第2のセラミック材料内に第2の開放空洞を形成することも可能である。このステップは、すべての材料の同時加圧が随伴するものとしてよい。
【0039】
圧縮は、好ましくは1000バールから2000バールの間にある圧力で、好ましくは実行される。約3g/cm3の範囲内の密度が、それによって達成される。次いで、700℃から1100℃の間、特に800℃から1000℃の範囲内の温度で、100分から150分の期間にわたって、脱脂および事前焼結が実行される。
【0040】
脱脂および事前焼結は、DIN ISO6872に従って測定された、10MPaから60MPaの間、特に10MPaから40MPaの間の引張強さを生じるような仕方で実行されるべきである。
【0041】
第2のセラミック材料内に第2の開放空洞が形成され、第3のセラミック材料が後者に充填される場合、その組成は、第2のセラミック材料の組成と異なるべきであり、特に第2または第1の材料より低い半透明性および/または高い曲げ強度を有するべきである。
【0042】
本発明は、特に、第1のセラミック材料の層内に形成されるべきいくつかの第1の開放空洞と、それらの中に充填されるべき第2のセラミック材料とを規定する。この結果、複数の離散的ブランク部分、いわゆるネストが得られ、それにより、いくつかの歯科修復物は、事前焼結した後、ミリングおよび/または研磨によって対応するブランクの部分から機械加工され得る。それによって、ブランク部分の寸法が、根側および/または象牙質側のそれぞれの材料領域の幾何学的配置構成も異なり得る、異なる幾何学的形状の修復物の作製を可能にするために互いに異なることも可能である。したがって、ネスト/ブランク部分の数およびその幾何学的形状に従って1つのブランクから異なる形状の歯を導出するという可能性がある。すでに説明されているように、第2の領域から象牙質芯が形成され、第1の領域から切縁が形成される。
【0043】
特に、本発明では、第2のセラミック材料の熱膨脹係数が第1のセラミック材料の熱膨脹係数よりも0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど高いと規定している。材料の熱膨脹係数が異なる結果、強度の増加を引き起こす、歯などのブランクから作られた修復物内の第1のセラミック材料、すなわち、切歯材料中に圧縮応力が発生させられる。
【0044】
さらに、セラミック材料を所望の程度まで、特に、切歯材料が第2のセラミック材料に比較して半透明性が高く色が薄い第1の領域に使用されるように着色することが可能である。
【0045】
歯科修復物または別のモールド本体部が好ましくは機械加工により事前焼結されたブランクから導出される場合、当然のことながら、ブランクが最初に完全焼結され、次いでモールド本体部を、特にミリングもしくは研磨により導出することも可能である。
【0046】
ブランクがいつ完全焼結されるかに関係なく、本発明では、特に、焼結が10分から250分の期間にわたって、1300℃から1600℃の温度範囲内で実行されることを規定している。焼結は、いくぶん高い温度でも実行され得る。
【0047】
製造業者によって推奨されているような時間期間中に、たとえば出発物質の製造業者によって与えられた温度よりも100℃高い、高温で完全焼結が実行される場合、これは、過焼結と称される。
【0048】
本値は、特に出発物質が実質的に、特に80wt%を超える二酸化ジルコニウムを含有する場合に適用される。
【0049】
二酸化ジルコニウムは、特に酸化イットリウムを添加されるが、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および/または酸化セリウムを添加されてもよい。
【0050】
セラミック材料が着色される場合、群Pr、Er、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、Tb、好ましくはFe2O3、Er2O3、またはCo3O4のうちから少なくとも1つの色付けする酸化物が使用される。
【0051】
したがって、本発明は、使用されるセラミック材料が、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO2)を添加されるが、特に、酸化イットリウムを添加された二酸化ジルコニウムを含有するものであることを特徴とするが、ここにおいて、第1のセラミック材料は第2のセラミック材料の材料と、室温において安定化される色および/または結晶形態に関して異なる。
【0052】
さらに、本発明では、使用される第1および/または第2のセラミック材料が、第2の材料中の酸化イットリウムのパーセンテージが4.5wt%から7.0wt%であり、および/または第1の材料中のパーセンテージが7.0wt%から9.5wt%であるようなものであると規定し、ここにおいて、第1のセラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージは、第2の材料中のパーセンテージよりも高い。
【0053】
第1、およびさらに第2の領域の材料は、事前焼結後に両方の領域の二酸化ジルコニウムの正方結晶相と立方結晶相との比が≧1となるように選択されるべきである。
【0054】
第1および第2のセラミック材料に対する出発物質は、好ましくは、重量パーセントの次の組成を有する。
HfO2 <3.0
Al2O3 <0.3
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
第1の層:Y2O3 7.0から9.5
第2の層:Y2O3 4.5から7.0
色付けする酸化物:0~1.5
【0055】
【0056】
結合剤をさらに加えるという可能性がある。これは、重量パーセントの上記の陳述において考慮されていない。
【0057】
本発明による教示は、完全焼結後に、ベニヤを張り付けなくてよい、モノリシック構造の歯科修復物をもたらすが、そうした場合でも、これは本発明からの逸脱ではない。
【0058】
結果として、本発明のさらなる詳細、利点、および特性は、請求項だけでなく、その特徴からも、これら単独でおよび/または組み合わせて、得られるが、図面に示されている好ましい例示的な実施形態の次の説明からも得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】方法のステップを実行するためのアセンブリの概略図。
【
図3】異なる材料特性の領域を有するブランクの図。
【
図4】異なる材料特性の領域を有するさらなるブランクの図。
【
図5】異なる材料特性の多数の領域を有するブランクの上面図。
【
図7】
図6によるブランクから導出される歯牙交換品の図。
【
図8】
図7による歯牙交換品に対応する仮想モデルと一緒の、
図6によるブランクの仮想モデルの図。
【
図10】アセンブリおよびそれと一緒に実行され得る方法ステップの概略図。
【
図13】
図12によりブランクから作製されるべきブリッジの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明による教示は、同じ要素は同じ参照記号を本質的に備える、図を参照することによって説明される。この教示に基づき、特に、歯科修復物が、すぐに使用できる、モノリシックな歯牙交換品が利用可能なようなモノリシック構造を有するセラミック材料から作製される。
【0061】
この目的のために、本発明は、修復に必要なような、特に光学的および機械的特性が得られるようにする、異なる組成およびしたがって特性を備えるセラミック材料の領域を有する作製されるべきブランクを規定している。したがって、たとえば、手および焼成で切縁を施す必要なく、完全焼結の直後にモノリシックになるように作製された歯科歯牙交換品を使用する可能性をもたらす。
【0062】
高い負荷が生じる領域内で所望の強度値を達成することも可能である。所望の光学的特性も、同様に達成可能である。
【0063】
歯科修復物が作製される際に使用するブランクの作製、例示的な実施形態では歯が、
図1から
図3を参照しつつ説明されている。
【0064】
したがって、重量パーセントによる次の組成を有し得る、特に酸化イットリウム-安定化二酸化ジルコニウムである、第1のセラミック材料14の形態の注ぎ込み可能な粒状材料は、最初に、加圧ツール12のモールド10内に充填される。
HfO2 <3.0
Al2O3 <0.3
Y2O3 7.0から9.5
色付けする酸化物:0~1.5
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
ZrO2 100-(Y2O3+Al2O3+HfO2+色付けする酸化物+技術的に引き起こされる不可避な成分)
結合剤も加えられてよく、上記の重量パーセント値では考慮されない。
【0065】
しかしながら、第1のセラミック材料14は高い半透明性が望ましいように切歯材料として使用されるので、特に、組成物は色付けする酸化物を含有しないか、またはそれらを少量のみ、たとえば、≦0.5重量%だけ含むことが規定される。酸化イットリウムのパーセンテージが比較的高いことは、正方結晶相の割合は、調製されたモールド部分、すなわち、歯科修復物において50から60%のみであり、残り部分は、立方および単斜晶相であることを保証する。
【0066】
次いで、材料14またはそれによって形成される層中でプレスプランジャ16を用いて開放空洞18が形成される。プレスプランジャを用いることで、材料14は変位させられるか、またはわずかに圧縮される。空洞18が形成された後(
図1b)、プレスプランジャ16が取り出され、重量パーセントの次の組成のうちの1つを有し得る、第2のセラミック材料20が空洞18内に充填される。
HfO
2 <3.0
Al
2O
3 <0.3
Y
2O
3 4.5から7.0
色付けする酸化物:0~1.5
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO
2、Fe
2O
3、Na
2Oなど)
ZrO
2 100-(Y
2O
3+Al
2O
3+HfO
2+色付けする酸化物+技術的に引き起こされる不可避な成分)
着色酸化物または酸化物画分は、作り出されるべき歯の象牙質が第2のセラミック材料20から形成されるので、所望の歯の色が結果として生じる程度で存在すべきである。Y
2O
3の含有率が比較的少ないことも、完全焼結された歯牙交換品は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%と高い正方相含有率を有することを確実にし、したがって、高い強度が結果として得られる。
【0067】
第2のセラミック材料20を空洞18(
図1c)内に充填した後、材料14、20、またはそれから形成される層もしくは領域は、次いで、圧縮がなされる際に使用される下側または上側プレスプランジャ22を用いてモールド内で加圧される。加圧の後、ブランク28は、約3g/cm
3の密度を有する。加圧は、1000バールから2000バールの間にある圧力で、好ましくは実行される。
【0068】
材料14、20に関して、これらは、1g/cm3から1.4g/cm3の間のかさ密度を有するべきである。加圧した後、密度は約3g/cm3である。
【0069】
図1b)の表現は、
図2により詳しく示されている。空洞18は、第1のセラミック材料14またはその材料からなる層内にプレスプランジャ16によって形成されることがわかる。底側では、モールド10がプレスプランジャ22によって境界を画定される。
【0070】
図3からわかるように、第2の空洞26は、プレスプランジャ22、24を用いた圧縮後に、または適切ならば、事前焼結後に、たとえば、ミリングを通じて、第2の材料20内に形成され得る。
【0071】
しかしながら、底側で開き、材料20を完全に充填される、空洞18において、
図1c)によれば、プレスプランジャ(図示せず)を用いて第2の空洞26を形成することも可能である。
【0072】
第2の空洞26が存在しているかいないかに関係なく、加圧に続いて、ブランク28の事前焼結が、特に800℃から1000℃の範囲内の温度で、100分から150分の時間期間にわたって実行される。このプロセスにおいて、最初に脱脂が行われ、続いて事前焼結が行われる。ブランク28の密度は、事前焼結の後、約3g/cm3である。事前焼結されたブランク28の破壊応力は、10MPaから60MPaの間であるべきである。
【0073】
ブランク28は、
図6から
図9を参照しつつ説明されているように、歯などの歯科修復物をブランク28から取得するために、ブランク28を、たとえばフライス盤または研削盤に固定するためのホルダー30を備える。作製されるべき歯は、切歯領域が第1のセラミック材料14によって形成される領域32内に延在し、象牙質領域が第2のセラミック材料20によって形成される第2の領域34内に延在するようにブランク28内に少なくとも仮想的に留置される。次いで、ブランク28の加工が、これらのデータを考慮して実行される。
【0074】
図4は、第1のセラミック材料14内の第1の空洞18を充填し、第2のセラミック材料20を空洞18内に充填した後に、第2の空洞36が、適切であれば、
図1b)による方法に従って形成され、第3のセラミック材料38は、そのように形成された空洞36内に充填され、前記セラミック材料38は特により高い強度が達成され得るような仕方で組成に関して第2のセラミック材料と異なる、ことを示している。空洞40は、
図3を参照しつつ説明されているように、第3のセラミック材料38内にも形成され得る。
【0075】
本発明による教示に基づき、第2のセラミック材料および場合によっては第3のセラミック材料からなり、異なる幾何学的形状の対応する歯を導出するための異なる幾何学的形状を有し得る、複数の領域52、54、56(
図5)を備えるブランク48を形成することが可能である。第2のセラミック材料20から形成されたいわゆる第2の領域52、54、56は、第1のセラミック材料50内に埋め込まれる、すなわち、これらは、特に図からもわかるように、第1のセラミック材料14によって囲まれている。第2の領域52、54、56は、基部側において覆われていない。
【0076】
特に
図2~
図4からわかるように、第2の領域は、底領域から、すなわち、基部領域35から始まるテーパーを有する外側幾何学的形状を有する。円錐状の幾何学的形状が取得され、外側輪郭は自由曲面である。
【0077】
基部領域35、または底部側でそれの範囲を画定する基部表面は、第1の領域32の下側または底面33と同一平面となるように合併する。
【0078】
ネストとも称される、ブランク部分52、54、56を作製するために、対応する開放空洞が、第1の材料14から作製され、第1の領域50として指定される、層内に必要であり、すでに説明されている方式で注ぎ込み可能なセラミック材料20を空洞内に充填し、その後、材料14、20を加圧して合わせる、すなわち、それらを突き固める。
【0079】
材料14、20の物理的特性に関して、異なる半透明性および強度に加えて、これらは、また、互いに異なる熱膨脹係数も有するべきである。特に、本発明は、完全焼結後に、第1のセラミック材料14が、第2のセラミック材料20から形成された第2の領域38、52、54、56より0.2μm/m*Kから0.8μm/m*K低い熱膨張率を有することを規定する。結果として、第1の領域50内に、すなわち、切歯材料内に、強度の増加をもたらす、圧縮応力が生じる。
【0080】
ブランク28、48は、たとえば寸法18×15×25mmの立方形形状、またはたとえば直径100mmの円盤形状を、それによって本発明による教示を制限することなく、有することができる。それによって、
図5を参照しつつ説明されているように、たとえば、複数の第2の領域52、54、56-いわゆる象牙質芯-が、たとえば、異なる幾何学的形状の修復物を作製する円盤形状のブランク内に、ただし、半透明性および強度に関して有利な層輪郭を有して、形成され得るという利点がある。
【0081】
異なる幾何学的形状を有し得る、1つまたは複数の第2の領域52、54、56、すなわちネストの位置は知られており、データセットとして記憶され得る。次いで、CADデータセットとして存在している、作製されるべき修復物は、歯牙交換品がミリングおよび/または研磨によってブランクから導出されるようにブランク部分に関して、ブランク部分内に位置決めされる。
【0082】
次の方法は、特にミリングおよび/または研磨を用いて、上で説明されているように、異なる組成の層もしくは領域を有するブランクから始まる、
図6から
図9を参照しつつより詳しく説明されている、本発明の教示に従って提供される。
【0083】
原理上
図3のブランクに対応するブランクが
図6に示されている。このことは、ブランク28が、空洞26が貫入する第1の領域32と第2の領域34とからなることを意味する。領域32は、領域34より高い半透明性を有し、ここにおいて、領域34内の強度は領域32内よりも高い。したがって、領域32は、CAM法によってブランク28から機械加工されるべき、
図7による歯144の切歯領域に対するものである。領域34は、次いで、象牙質領域に適している。
【0084】
領域または層32、34およびブランク28内の空洞26の輪郭は、層32、34の輪郭および位置がブランク28が仮想的に表示される際に基づくデータセット内に記憶されるように実行され、すでに定められている方法ステップに基づき知られる。
【0085】
好適なソフトウェア、いわゆるCADプログラムを使用することによって三次元で設計されている、歯144のデータも知られている。歯144をブランク28から形成するために、歯144の仮想モデル244は、
図8に示されているように、ブランク28の仮想モデル228内に位置決めされる。歯のモデル244は、
図8に原理として示されているように、それによって、必要ならば操作者の個別の活動を通じて、切歯部分が層32に対応する仮想層232および層34に対応する仮想層234内の象牙質部分に貫入するように、ブランクの仮想モデル228内に留置される。切歯領域135はクロスハッチングによって示され、象牙質領域137は単純なハッチングによって示されている。次いで、歯244の配置に対応するブランク228、すなわち、仮想ブランク228と仮想歯244との間の交差領域のデータは、次いで実ブランク28から、特にミリングまたは研磨を通じて歯144を作製する、数値制御処理機械にデータを受け渡すように決定される。作製は、CAM法による。
【0086】
図9は、
図8とは対照的に、仮想ブランク228の別の領域内に仮想歯244が留置されるという制限がある、
図8に対応する表現を示しており、ここにおいて、切歯材料の領域は領域232内に貫入し、象牙質の領域は層234の領域内に貫入する。仮想ブランク228内の仮想歯244の留置は、歯または作製されるべき修復物に課される要求条件に従って実行される。
【0087】
言い換えれば、ブランク28内の実領域32、34の輪郭について知ることで、例示的な実施形態において切歯および象牙質領域が仮想ブランクおよびしたがって歯144の作製時の実ブランクの領域もしくは層内に貫入し、それにより、作製された歯144の切歯および象牙質領域がたとえば必要な程度の半透明性および強度に関する要求条件を満たすように、仮想的に生成された歯244が置かれる仮想モデル228が生成される。
【0088】
原理上、後処理を必要としない、特に従来技術により切歯領域内にベニヤが必要とされない本発明による教示に基づきモノリシック修復物が利用可能にされる。
【0089】
本発明による教示に対応して、修復物は、
図5に示されているように、ブランク48の基本本体部の材料と異なる材料からなるネストを有するブランクからも作製され得る。
【0090】
しかしながら、上で説明されている方法から逸脱する形で、半透明性または強度などの、所望の特性を達成するために異なる組成を有する層または領域を有するブランクを作製することも可能である。したがって、第1の層の組成と異なる組成を有する第2の層が充填される前に、次いで表面が構造化される、第1の層をモールド内に充填することが可能である。材料それ自体は、特に、
図1から
図5に関して説明された材料である。対応するブランクは、第1の層の材料が連続的にまたは実質的に連続的に減少する中間層を有するが、第2の層のそれは増加する。
【0091】
第1の層が充填された後、セラミック材料のさらなる層が、第1の層のセラミック材料と異なるモールド内に充填されるという別の可能性もある。次いで、第1の層の材料は、中間層を形成するためにさらなる層の材料と混合される。その後、第1の層の組成と異なる、およびさらなる層に使用される材料に好ましくは対応する層が、次いで、そうして形成される中間層上に横たえられる。
【0092】
材料に関して、前の説明に対する参照もなされる。
【0093】
次に、対応するブランクの作製は、
図10から
図14を参照しつつ、より詳しく説明される。
【0094】
図10a)によれば、重量パーセントによる次の組成を有し得る、特に酸化イットリウムで安定化された二酸化ジルコニウムである、第1の材料314がプレス312のモールド310内に最初に充填される。
HfO
2 <3.0
Al
2O
3 <0.3
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO
2、Fe
2O
3、Na
2Oなど)
Y
2O
3 4.5から7.0
色付けする酸化物:0~1.5
【0095】
【0096】
その後、第2の層324がモールド310(
図10c)内に充填され、それによって、層314および324の全高は、本発明による教示の制限なしで、構造化されていない状態の層314の高さの2倍に等しい。第2の層は、重量パーセントで次の組成を有し得る。
HfO
2 <3.0
Al
2O
3 <0.3
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO
2、Fe
2O
3、Na
2Oなど)
Y
2O
3 7.0から9.5
色付けする酸化物:0~1.5
【0097】
【0098】
層の材料は、当然のことながら交換可能である、すなわち、上で説明されている第1の層の材料は、第2の層の材料であり、またその逆も言える。
【0099】
色付けする酸化物は、特に、群Pr、Er、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、Tb、好ましくはFe2O3、Er2O3、またはCo3O4からのものである。
【0100】
第1の層314が、好ましくは第1および第2の層314、324の全高Hの半分に対応する高さを有する場合、第1の層314の高さは、1/2Hから2/3Hであってもよく、したがって第2の層324の高さは1/3Hから1/2Hであってもよい。
【0101】
次いで、滑らかにされた表面はステップb)に従って構造化される。この目的のために、たとえば、例示的な実施形態において、層側に歯のある幾何学的形状を有し、それにより、対応するネガ構造が材料を変位させることによって層314の表面318内に形成される、円盤形状、板形状、またはクモの巣形状の要素316が使用される。この構造は、囲む谷部を持つ同心円状に延在する隆起部として現れる。隆起部(頂点)と谷部(凹部)との間の距離、すなわち、
図11による突出部320と谷底322との間の遮られない距離は、すべての層の高さの約1/5であるべきである。
【0102】
特に、隆起部の体積が凹部もしくは谷部の体積に等しいか、またはほぼ等しくなるように構造が形成されることが規定されている。
【0103】
第2の層324の材料は、層314の表面318における谷部326の基部内に貫通するので、層324、314が
図10d)により加圧された後に、層314の特性と層324の特性との間に連続する遷移がある。遷移または中間層は、
図10d)では参照番号328によって表されている。
【0104】
層324は、層314の材料と異なる材料からなる。この違いは、特に、着色添加物および酸化イットリウムのパーセンテージにある。これは、事前焼結の後の層324内の立方結晶相の割合が層314における割合より著しく大きくなるように選択される。層314において、正方結晶相の割合は85%より大きく、層324内の立方結晶相の割合は30%から49%の間である。残りは、本質的に正方結晶相である。
【0105】
これらの異なる結晶相の割合は、酸化イットリウムのパーセンテージが層314において4.5%から7%の間、および層324において7wt%から9.5wt%の間であり、これによって、第1の層314におけるパーセンテージは第2の層324におけるパーセンテージより低い、という事実から結果として生じる。
【0106】
層324内の色酸化物含有率は、層314と比較して減少し、0.0から0.5wt%の範囲内、好ましくは0.005から0.5wt%の間であるべきである。この方策の結果として、層314と324との間に連続的色遷移がある。酸化イットリウム含有率が高いので、層324は、曲げ強度が低く、また層314より半透明性が高い。
【0107】
層314は、ブランクから導出されるべき歯科修復物の高負荷領域が
図13に示されているようにブリッジの場合に特にコネクタ下部に配置されて、最高の強度を有する。
【0108】
層314、324は、ポンチ330を用いて加圧され、ここにおいて、加圧は1000バールから2000バールの間の圧力でなされる。
【0109】
注ぎ込み可能な材料、すなわち、これがモールド310内に充填されるその状態において、1g/cm3から1.4g/cm3の間のかさ密度を有する。加圧後、密度は約3g/cm3である。
【0110】
構造化は、層314および324が圧縮される前に第1および第2の層314、324の非混合領域の間の遷移領域内に最大2g/cm3までの密度を生み出す。遷移領域は、中間層328とも称され得る。
【0111】
加圧後に、作製されたブランク333がモールド310から排出され、800℃から1000℃の温度で、100分から150分の期間にわたって、通常の方式で事前焼結される。対応するブランクも、
図13に示されている。ブランク333は、圧縮された層314、圧縮された層324、および圧縮された中間層328、すなわち、遷移領域を有する。
【0112】
歯牙交換品、例示的な実施形態ではブリッジ334がブランク333からミリングされる場合、ミリングプログラムは、ブリッジ334の下側領域が特にコネクタ基部336の領域内で、最高の曲げ強度を持つ層314内に貫入するように設計される。ブリッジの切歯領域340は、その一方で、層324内に貫入する。
【0113】
層314と324との間の準連続的または連続的な遷移が生じる、遷移領域、すなわち、中間層328において、象牙質と切歯との間に遷移がある。象牙質は、領域314内に貫入する。
【0114】
本発明による教示の実質的な特徴は、
図12を参照しつつ再び説明される。したがって、ブランク333は、
図12に、層314および324、さらには遷移領域328とともに示されている。
【0115】
図12bは、酸化イットリウムの形態の安定化剤が、第1の層314内で約5wt%、および第2の層324内で約9wt%であること、ならびに本発明による中間層の形成に基づき、酸化イットリウムのパーセンテージが連続的に増大することを示すことを意図されている。値0.425Hおよび0.575Hは、これによって、
図10および
図11に示されている要素316が第1の層314内に、表面318より0.075H下の領域内の層314、324および表面318より0.075H上の領域内の隆起部もしくは頂点の全高Hに関して延在する谷部が形成するように浸漬され、これによって、述べたように、要素316の鋸歯形状の構造の頂点320と谷部322との間の距離は0.15Hとなる、ことを示す。
【0116】
DIN ISO6872により完全に焼結された層314および324の測定は、二酸化ジルコニウムの正方結晶相の80%超が存在する、層314内の曲げ強度σBが約1000MPaであることを示している。対照的に、30から49%の立方結晶相が存在する、層324内の曲げ強度は、約660MPaである。
【0117】
図12dは、層314、324の高さにわたって半透明性の変化を示している。
【0118】
図14を参照すると、半透明性および強度に関して、第1の層と第2の層との間に、または修復物の場合には、象牙質領域と切歯領域との間に、実質的に連続的な遷移を有するブランク/歯科修復物の作製のための、本発明による教示に従う、代替的方法が説明されている。
【0119】
したがって、
図14aによれば、
図10による層314の材料に対応すべきである、第1のセラミック材料が、最初にモールド310内に充填される。
図14の対応する層は、414で指定されている。この層の高さは、マトリックス310内に充填された層全体の高さの半分であるものとしてよい。次いで、例示的な実施形態において厚さが層の全高の1/10である層427が層414に張り付けられる。層427の材料は、
図10による第2の層324の材料に対応するものとしてよい。次いで、層427は、層427の厚さに対応する深さにわたって層414の表面領域と混合される。これは、層の全高の2/10の厚さを有する中間層428を形成する。次いで、
図10による第2の層324に対応する、さらなる層424が中間層428に張り付けられる。例示的な実施形態における層424の高さは、したがって全高Hの4/10である。その後、層424、428、414は、
図10の例示的な実施形態により全体として加圧され、上で説明されているように、事前焼結、加工、および完全焼結のステップが実行される。加工ステップは、当然のことながら、完全焼結の後、続いて行われるものとしてよい。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[C1]
異なる組成のセラミック材料の領域または層を有するブランクからの歯科修復物の作製のための方法であって、
a) 注ぎ込み可能な状態にある第1のセラミック材料の第1の層をモールド(310)内に充填することと、
b1) 表面上で見たときに前記第1の層が領域毎に高さに関して異なるように前記第1の層を構造化し、次いで、第2の層として、前記第1の層の組成と異なる組成を有する注ぎ込み可能な状態にある第2のセラミック材料を前記モールド内に充填すること、または
b2) 前記第1の層(414)の充填後に、前記第1のセラミック材料と異なる、注ぎ込み可能な状態にあるさらなるセラミック材料のさらなる層(427)を前記モールド内に充填し、中間層(428)を形成するために前記第1の層の材料を前記さらなる層の前記材料と混合し、次いで、第2のセラミック材料を前記モールド内に充填すること、または
b3) 前記第1の層を充填した後に、前記第1の層内に少なくとも1つの第1の開放空洞(318)を形成し、次いで、第2のセラミック材料を前記少なくとも1つの第1の開放空洞内に充填することと、
ここにおいて、前記セラミック材料は、酸化イットリウム(Y
2
O
3
)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO
2
)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、およびここにおいて、前記第1の層(14)の前記材料は前記第2の層(24)の前記材料と、室温において存在する安定した結晶形態の色および割合に関して異なるものであり、
c) ブランクを形成するために前記セラミック材料を加圧することと、
d) 前記モールドから前記ブランクを取り出すことと、
e) 前記ブランクを温度処理することと、
ここにおいて、方法ステップa)+b1)、またはa)+b2)、またはa)+b3)により、前記セラミック材料は、前記温度処理後の層および/または領域がデジタルデータセットとして利用可能である所定のコースを示すように前記モールド内に充填され、および/または前記モールド内で処理されるものであり、
f) 収縮を考慮して前記歯科修復物または前記歯科修復物に対応する形態の仮想設計を行うことと、
g) 前記ブランクを仮想表現し、前記ブランク内で前記仮想表現された歯科修復物または前記形態を位置決めし、前記層および/または領域の材料特性を考慮することと、
h) 前記ブランク内の仮想的に配置構成された歯科修復物または前記形態の前記位置に対応する前記ブランクに対するデータを決定することと、
i) 前記歯科修復物または前記形態を前記ブランクから導出するため前記データを機械に転送することと、を備える方法。
[C2]
いくつかの第1の開放空洞(318)が前記第1のセラミック材料(314)の前記層内に形成され、前記第2のセラミック材料が前記第1の開放空洞内に充填されることを特徴とする、C1に記載の方法。
[C3]
複数の前記第1の開放空洞(318)のうちの少なくともいくつかは、異なる内部幾何学的形状を有することを特徴とする、C1に記載の方法。
[C4]
少なくとも前記第2のセラミック材料は、群Pr、Er、Tb、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、好ましくはFe
2
O
3
、Er
2
O
3
、またはCo
3
O
4
からの要素の少なくとも1つの着色酸化物で着色されることを特徴とする、少なくともC1に記載の方法。
[C5]
前記第1および/または第2のセラミック材料(314、320)に使用される前記材料は、前記第1の材料中の酸化イットリウムのパーセンテージが7.0wt%から9.5wt%であり、および/または前記第2のおよび/またはさらなるセラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージは、4.5wt%から7.0wt%であり、ここにおいて、前記第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの前記パーセンテージは、前記第2またはさらなるセラミック材料中のパーセンテージより高い、材料であることを特徴とする、C1から4のいずれか一項に記載の方法。