(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】鉛203を単離するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
G21G4/08 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021080487
(22)【出願日】2021-05-11
(62)【分割の表示】P 2016562955の分割
【原出願日】2015-04-15
【審査請求日】2021-06-09
(32)【優先日】2014-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508240937
【氏名又は名称】ランセウス メディカル イメージング, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】キース・アール・オールワイン
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04011307(US,A)
【文献】国際公開第98/08481(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/174949(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 4/08
B01D 59/00 - 59/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
203
Pbを含有する組成物であって、
該組成物は、金属不純物としてNi、CuまたはZnの少なくとも1つを含んでなり、
(i)該組成物中のNiの存在量は0.1μg/mCi Niより少なく;
(ii)該組成物中のCuの存在量は0.1μg/mCi Cuより少なく;
(iii)該組成物中のZnの存在量は0.5μg/mCi Znより少ない、
組成物。
【請求項2】
組成物がさらに金属不純物としてFeを含んでなり、Feの存在量が0.25μg/mCi Feより少ない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物がさらに金属不純物としてTlを含んでなり、Tlの存在量が0.05μg/mCi Tlより少ない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物がさらに0.5Mの塩酸を含んでなる、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
組成物のpHが5~6である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、その内容全体が本願明細書の一部を構成する米国仮出願第61/979,957(出願日:2014年4月15日)に基づく優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの金属元素の放射性同位体は、疾患の診断および治療において潜在的用途を有する。例えば、約52時間の半減期を有し電子捕獲によって崩壊する鉛203同位体(203Pb)は、医療診断において非常に有望である。結果として、放射免疫療法およびペプチド標的化放射線療法の最近の進歩により、203Pbに対する大きな需要が生まれた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
203Pbは、ある特定の医療用途では重要な同位体である。例えば、比較的短い半減期(約52時間)と減衰スキーム(279KeVのガンマ線エネルギー、ベータ放出なし)のため、203Pbは、画像ベースの診断と放射免疫療法での応用に特に適している。このような医療用途では、203Pb源が望ましくない不純物を含まないことが重要である。しかし、203Pbは、通常、サイクロトロンにより副産物として201Pbとタリウム-201(201T1)を生じる。その結果、銅、ニッケル、鉄、亜鉛などの金属不純物を含むサイクロトロン廃棄物ストリームから単離する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、特定の条件下でサイクロトロン廃棄物ストリームからほぼ例外なく203Pbを溶離できるという驚くべき発見に基づいて、効率的な手段を提供する。結果として、他の金属不純物が取り残された状態で、203Pbが医療用および他の用途でのさらなる使用に適した形態で得られる。
【0005】
一態様では、本発明は、イミノ二酢酸を含むキレート樹脂を、Pbを含む溶液と接触させ、キレート樹脂に結合したPbを、Pbの選択的な溶出に適した温度に加熱した水酸化ナトリウム溶液で溶出させることを含む方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、加熱された水酸化ナトリウム溶液の温度は約85~95℃である。
【0007】
別の態様では、本発明は、イミノ二酢酸を含むキレート樹脂を、Pbを含む溶液と接触させ、加熱した水酸化ナトリウム溶液でキレート樹脂に結合したPbを溶出させることを含む方法であって、水酸化ナトリウムの温度が約90℃である、方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、結合したPbをキレート樹脂から選択的に溶出させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、キレート樹脂はイミノ二酢酸を含む。いくつかの実施形態において、結合したPbは、約85~95℃の温度の水酸化ナトリウム溶液を用いて溶出される。いくつかの実施形態では、結合したPbを約85℃以上の温度の水酸化ナトリウム溶液を用いて溶出させる。
【0009】
別の態様では、本発明は、約85~95℃の温度の水酸化ナトリウム溶液を用いてキレート樹脂から結合したPbを選択的に溶出することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、キレート樹脂はイミノ二酢酸を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、Pbは203Pbである。いくつかの実施形態では、Ni、Cu、Zn、Feおよび/またはThも樹脂に結合し得る。
【0011】
別の態様では、本発明は、Pbは203と、0.1μg/mCiよりも少ないNi、および/または0.1μg/mCiよりも少ないCu、および/または0.5μg/mCiよりも少ないZn、および/または0.25μg/mCiよりも少ないFe、および/または0.05μg/mCiよりも少ないTlを含有する組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は水酸化ナトリウムをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、加熱した(約80~90℃)0.5M水酸化ナトリウム(最初の分離でのPb溶出;◆)および1M硝酸(最終の分離でのPb溶出;■)を用いて、Chelex 100樹脂から溶出した鉛の量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
鉛(Pb)の放射性同位元素は、治療用および診断用放射性医薬品として有望な用途を有する。例えば、212Pbは有望なα粒子放出源であり、標的化α粒子療法は、この放射の短い光路長(50~80μm)と高い線エネルギー遷移(100KeV・μm-1)の組み合わせによって、癌治療において多くの利点がある。212Pbで前臨床実験を行うことに関連する1つの課題は、コストが高いこととは別に、212Pb放射性標識治療薬の正確な生体内分布と標的化のアッセイを実行することある。したがって、実行可能な代替策は、そのような実験において代用核種として203Pbを使用することである。203Pbは、好ましい半減期(約52時間)を有し、279keVで80.1%γ線を放出して崩壊し、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)に適合している。これのことにより、この放射性核種は、212Pbをターゲットとする放射性核種療法に適した放射性核種トレーサとして理想的である。従って、203Pbはイメージング、組織分布試験、線量測定データの取得、化学交換の研究に有用である。
【0014】
放射性核種を生成するための1つの方策は、寿命の長い親放射性核種を使用して、放射性崩壊により、より寿命の短い目的の娘放射性核種を連続的に生成することである。所望の娘放射性核種は、イオン交換クロマトグラフィー等の化学的手段によって選択的に分離し、得ることができる。例えば、212Pb\212Bi(ビスマス-212)および213Bi(ビスマス-213)は、それぞれ、寿命の長い親放射性核種232Th(トリウム232)および233U(ウラニウム233)の崩壊系列のメンバーであり、ジェネレーターにより生成することができる。
【0015】
逆に、203Pbは、水銀またはタリウムの荷電粒子衝撃でのみ生成することができる。例えば、203Pbは、サイクロトロン内の203T1(p、3n)201Pb-201T1反応の副産物として生成する。しかし、サイクロトロン副生成物である203Pbは、問題となる量のニッケル、銅、鉄、亜鉛などの金属不純物を含んでいる。したがって、このような不純物が望ましくない場合は、医薬品または医療用途には直接適さない。さらに、キレート樹脂を用いる現在の203Pbの単離方法は、樹脂が他の金属にも同様の親和性で結合することができるため、金属不純物を選択的かつ有意に低減する有効な手段ではない。例えば、Pb+2とNi+2は、硝酸塩または塩化物溶液中Chelex 100樹脂にほぼ等しい親和力を有しており、いずれか一方の金属を選択的に溶出することが困難である。
【0016】
したがって、本開示の態様は、加熱された水酸化ナトリウム溶液が、キレート樹脂から他の金属に対してPb(例えば、203Pb)を選択的に溶出することができるという驚くべき発見に基づく。キレート樹脂は、Chelex 100樹脂等のイミノ二酢酸を含有するキレート樹脂であってよい。鉛(Pb)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の混合物をChelex 100を含むカラムに通して結合させた「コールドな」(例えば非放射線性の)Pb単離または分離モデルを用いて、加熱した水酸化ナトリウム(例えば0.5~1.0M、約90℃)が、CuとNiが結合したままPbを溶出することができることを発見した。上記のとおり、NiとPbは、特定の条件下で、Chelex 100などのイミノ二酢酸含有キレート樹脂に同等の親和性を有するため、このことは驚くべきことであった。さらに、本明細書に記載するように、さらなる実験により、加熱した水酸化ナトリウム溶液が、Chelex 100カラムなどの樹脂から「ホットな」(例えば、放射性の)Pb(例えば、203Pb)を同様に選択的に溶出することができることが示された。したがって、この知見は、例えば、203Tl(p,3n)201Pb-201Tlサイクロトロン反応の副産物廃棄物ストリーム中に典型的に見られるような他の金属からの、203Pbの選択的な単離のための効果的な手段を明らかにするものである。
【0017】
したがって、本発明のいくつかの態様は、鉛(Pb)をPb含有溶液から単離する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Pb含有溶液は、Pb同位体、例えば、200Pb、201Pb、202Pb、203Pb、204Pb、205Pb、206Pb、207Pb、208Pb、209Pb、210Pb、211Pb、212Pb、213Pb、および/または214Pbを包含してなる。いくつかの実施形態では、Pb含有溶液は、203Pbを含む。いくつかの実施形態では、溶液は、PbまたはPb同位体を含み、さらに、例えば、サイクロトロン反応の廃棄物ストリーム中に典型的にみられるもの(例えば、タリウム(Ti)、Ni、Cu、鉄(Fe)、亜鉛(Zn))を含み得る。PbまたはPb同位体は、本明細書に記載した方法に従って、そこからPbまたはPb同位体を分離することが望ましいさらなる成分を含む任意の溶液から単離することができることを理解されたい。「溶液」とは、一緒に混合され均一に分散された2つ以上の物質の液体組成物を意味し、最も一般的には固体、液体、気体を液体中に溶解させた結果である。例えば、Pb(および/またはPb同位体)およびさらなる化合物または金属は、液体に溶解することができ、このような液体は溶液である。
【0018】
いくつかの態様において、Pbおよび/またはPb同位体を単離するための方法では、キレート樹脂、例えばイオン交換樹脂を使用する。いくつかの実施形態では、キレート樹脂はイミノ二酢酸を含む。イミノ二酢酸、HN(CH2CO2H)2、あるいは「IDA」はジカルボン酸アミンである。イミノ二酢酸アニオンは、三座配位子として、2つの縮合5員キレート環を有する金属錯体を形成することができる。窒素原子上のプロトンが、スチレン-ジビニルベンゼンなどのポリマーの炭素原子で置き換わり、キレート樹脂(例えば、イオン交換樹脂)を生成することができる。そのような樹脂の例は、Chelex 100である。いくつかの実施形態では、IDAを含む任意のキレート試薬または樹脂を、本明細書に記載した方法に従って使用してもよい。いくつかの実施形態では、キレート樹脂は、Chelex 100の任意の形態である。Chelex 100樹脂は、商業的に入手可能である(Bio-Rad、Hercules、CA)。
【0019】
いくつかの実施形態において、Pbおよび/またはPb同位体を単離する方法では、水酸化ナトリウムを含む溶液を用いてIDAを含む樹脂を含むイオン交換樹脂に結合したPbおよび/またはPb同位体を溶離する。溶液を樹脂に通過させ、それにより結合したPbおよび/またはPb同位体を溶出させる。
【0020】
いくつかの実施形態では、溶液は、少なくとも0.01モル濃度(M)、少なくとも0.05M、少なくとも0.10M、少なくとも0.15M、少なくとも0.20M、少なくとも0.25M、少なくとも0.30M、少なくとも0.35M、少なくとも0.40M、少なくとも0.45M、少なくとも0.50M、少なくとも0.55M、少なくとも0.60M、少なくとも0.65M、少なくとも0.70M、少なくとも0.75M、少なくとも0.80M、少なくとも0.85M、少なくとも0.90M、少なくとも0.95M、少なくとも1.00M、少なくとも1.05M、少なくとも1.10M、少なくとも1.15M、少なくとも1.20M、少なくとも1.25M、少なくとも1.50M、少なくとも1.75M、少なくとも2.00M、少なくとも2.25M、少なくとも2.50M、少なくとも3.00M、少なくとも3.50M、少なくとも4.00M、少なくとも4.5M、または少なくとも5.00Mの水酸化ナトリウムである。
【0021】
いくつかの実施形態では、Pbおよび/またはPb同位体を溶出するために用いる水酸化ナトリウム溶液を加熱する。いくつかの実施形態では、結合したPbおよび/またはPb同位体を含む樹脂と接触する前に、水酸化ナトリウム溶液は、最初に溶液を沸騰させることによって加熱し、次いで約90℃に冷却する。
【0022】
いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウム溶液の温度は、Pbの選択的溶出に適した温度である。例えば、Pbの選択的溶出に適した温度は、約99℃、約98℃、約97℃、約96℃、約95℃、約94℃、約93℃、約92℃、約91℃、約90℃、約89℃、約88℃、約87℃、約86℃、約85℃、約84℃、約83℃、約82℃、約81℃、または約80℃の温度を意味する。いくつかの実施形態では、Pbの選択的溶出に適した温度は、約80~100℃、85~95℃、96~94℃、87~93℃、88~92℃、または約89~91℃の間の任意の温度を意味する。いくつかの実施形態では、Pbの選択的溶出に適した温度は、約80~90℃の間の任意の温度を意味する。Pbの選択的溶出に適した温度は、約75~95℃の間の任意の温度を意味する。
【0023】
いくつかの実施形態では、「選択的溶出」は、Pbと共に溶出する更なる金属(例えば、Ni、Cu、Zn、Fe、Tlなど)の百万分率(ppm)が、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、250、300、400、500、750または1000以下であることを意味する。組成物中の金属(例えば、Pb溶出液中の金属不純物)の量を測定する方法は、当技術分野において公知であり、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)(例えば、微量金属の検出)や高純度ゲルマニウム検出器(HPGe)分析(例えば、放射性不純物の検出)が挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、選択的溶出とは、例えば、Pb同位体(例えば、203Pb)の溶出に関して、溶出したPb同位体1mCiあたりのNiの溶出が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50μgよりも少ないことを意味する。
【0025】
いくつかの実施形態では、選択的溶出とは、溶出したPb同位体1mCiあたりのCuの溶出が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50μgよりも少ないことを意味する。Pb同位体は203Pbであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、選択的溶出とは、溶出したPb同位体1mCiあたりのZnの溶出が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、または1.50μgよりも少ないことを意味する。Pb同位体は203Pbであり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、選択的溶出とは、溶出したPb同位体1mCiあたりのFeの溶出が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、または1.50μgよりも少ないことを意味する。Pb同位体は203Pbであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、選択的溶出とは、溶出したPb同位体1mCiあたりのTlの溶出が、約0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50μgよりも少ないことを意味する。Pb同位体は203Pbであり得る。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、Pbおよび/またはPb同位体(例えば、203Pb)を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は本明細書に記載した方法、例えば加熱した水酸化ナトリウムを用いてキレート樹脂からPbおよび/またはPb同位体を溶出することによって、製造される。
【0030】
いくつかの実施形態では、組成物は、Pb同位体(例えば、203Pb)を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、Pb同位体1mCiあたり、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50μgよりも少ないNiを含有する。Pb同位体は、203Pbであり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物は、Pb同位体1mCiあたり、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50μgよりも少ないCuを含有する。Pb同位体は、203Pbであり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物は、Pb同位体1mCiあたり、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、または1.50μgよりも少ないZnを含有する。Pb同位体は、203Pbであり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物は、Pb同位体1mCiあたり、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.10、1.20、1.30、1.40、または1.50μgよりも少ないFeを含有する。Pb同位体は、203Pbであり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、組成物は、Pb同位体1mCiあたり、約0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、または0.50μgよりも少ないTlを含有する。Pb同位体は、203Pbであり得る。
【実施例】
【0036】
本発明を下記実施例によって具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されないことを理解すべきである。
【0037】
実施例1:天然の鉛は、加熱された水酸化ナトリウムを用いてChelex 100樹脂から選択的に溶出される
鉛(Pb)が放射線(例えば203Pbからの)の非存在下で加熱した水酸化ナトリウムを用いて選択的に溶出できるかどうかを調べるため、各約5mgの銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびPbのICP標準を用いてコールド法を実施した。標準液を一緒にプールし、希釈して、タリウム(Tl)なしでターゲット溶液をシミュレートした。
【0038】
Chelex 100カラム(Bio-Rad、アンモニウム型、樹脂床14ml)を約25mlの1M硝酸アンモニウムを用いてコンディショニングした。
【0039】
シミュレートされたターゲット溶液を、濃水酸化アンモニウムおよび1M硝酸を用い、最終値pH5~6の間までpH調整した。調整した溶液を準備したChelex 100アンモニウム型カラムに充填した。約75mlの0.5M水酸化ナトリウムをホットプレート上で沸騰するまで加熱した。水酸化ナトリウムを10~20mlずつカラムに添加して、天然の鉛をカラムからストリップまたは除いた。水酸化ナトリウムの温度は、各ストリップ部分について80~90℃の間であると測定された。背圧のためにストリップ中に軽い空気圧(約0.5PSI)をカラムにかけた。目視検査によってCuおよびNiはカラム上に残っていた。
【0040】
得られた天然鉛溶液を同じ方法で、別のChelexカラムに通した。1M硝酸を10~20mlずつ用いて鉛を第2のカラムから除去した。
【0041】
ロードしたスルーストリップからのフラクションはそれぞれ、誘導結合プラズマ(ICP)分析用に個別に保存した。
図1は各Chelexカラムにロードした溶出プロファイルを示す。特に、加熱された(例えば、約80~90℃)0.5M水酸化ナトリウムの2つの10~20mlの増分(ストリップ)が、CuおよびNiが結合したまま、結合したPbを溶出するのに有効であった(
図1、およびデータは示さず)。
【0042】
実施例2:
203
Pbは、加熱された水酸化ナトリウムを用いてChelex 100樹脂から選択的に溶出される
サイクロトロン照射された天然タリウムターゲットを一連の3つのターゲットで使用して、それぞれわずかな改変を加え上記の方法によって、6つの203Pb溶出プロセスを実施した。
【0043】
最初の3回の実験は2カラムシステムを用いて行った。カラム速度を上げ、カラムからの203Pbのストリッピングを助けるために、プロセスセル内に軽く気圧(0~2PSI)をかけた。TbをPb同位体から最初に分離する際のカラムの充填は、空気圧をカラムに加えずに(重力によって)行った。
【0044】
203Pbを熱い(約90℃)0.5M水酸化ナトリウムを用いてカラムから脱離した。203Pbを1M硝酸で第2のカラムから脱離した。硝酸画分を乾燥させ、0.5M塩酸中にストックした。溶液が乾燥に達すると、有意な固体(塩)の証拠が観察された。
【0045】
ストック溶液を、用量キャリブレーターにて希釈しアッセイした。放射性核種純度サンプル(HPGe分析)を、ストック溶液からの連続希釈によって調製した。分析のために較正時にICPサンプルを1mCi/mlに調製した。表2にシリーズ1ターゲットのICPデータを示す。
【0046】
第2シリーズの一連のターゲットは、3カラム系を用いて実施した。
【0047】
第3のカラムは、シリーズ1のターゲットで観察される金属不純物を減少させるために追加した。第3のカラムでは、ビーカー乾燥時に観察される塩を最小限にするため、203Pbをストリッピングする前にカラムを精製水でリンスした。
【0048】
シリーズ2のターゲットに対する追加の変更として、0.5M硝酸中でのロットをストックした。表4において、シリーズ1(2カラム) vs シリーズ2(3カラム)システムについて値を比較する。
【0049】
203Pb分離後のカラムの性能を第6のプロセスで分析した。分析は、1Mの硝酸を用いてカラムから全ての金属を脱離することによって行った。得られた溶液を、金属についてはICP、放射性核種濃度についてはHPGeにより分析した。表1は、ICP分析についての値をカラムから脱離した総マイクログラム数で示す。
【0050】
実施例3:
203
Pbの分離
目的:以下は、天然のタリウムターゲットおよび存在する他の金属、例えばTl(p、3n)201Pb-201Tlサイクロトロン反応から203Pbを単離するためのプロトコルの例を記載する。
【0051】
材料および器具:ガラスウール、ガラスビーカー(必要に応じた種々のサイズ)、カラムスタンド、ホットプレート/スターラー、ポリボトル(必要に応じた種々のサイズ)、ピペット(必要に応じた種々のサイズ)、必要に応じ隔壁を備えた10cc容のバイアル、必要に応じ1本のスクリューキャップ付きドラムバイアル、必要に応じ20ml容のLSCバイアル、分析天びん、pHメーター、Capintecイオン化チャンバー、1/2インチのピッグ(pig)、プロセスセル、エッチング容器。
【0052】
試薬:1N硝酸アンモニウム、1.0M水酸化ナトリウム、0.5M塩酸(0.5M HCl)、0.5M硝酸(0.5M HNO3)、Bio-Rad Chelex 100カラム(アンモニウム型)、pH4緩衝液、pH7緩衝液、ICPグレードの水、1M硝酸。
【0053】
天然タリウムターゲットからの
203
pbの初期分離
各ステップを実行する際に0~2PSIの空気圧をカラムに適用することができる。ロードする際には空気圧を0.5PSI未満とする。
1)25mlの硝酸アンモニウム(カラム1)でChelex 100カラムを調製。
2)ガラスウールカラムを準備。
3)pHメーターを較正。
4)プロセスセルにガラスウールカラムとエッチング容器を設置。
5)エッチング容器を慎重に取り外し、新しいエッチング治具を装置に挿入。
6)調製したChelexカラム、ビーカーおよび試薬をプロセスセルに設置。
7)照射された天然タリウムターゲットを得、ターゲット上の放射能を推定する:放射能レンジ=0.5mCi/uAmp時間×uAmp時間~1.5mCi/uAmp時間×uAmp時間
8)ホットプレート上で約110~120mlの硝酸を加熱し沸騰させる。沸騰したら、エッチングジグに約90mlを注ぐ。
9)タリウムが完全に溶解するまで、熱1M硝酸中でターゲットをエッチングする。
10)エッチング溶液をガラスウールカラムに通し微粒子を除去。
11)ターゲットとガラスウールカラムを約20mlの熱硝酸でリンス。
12)ガラスウールカラムを廃棄。
13)濃水酸化アンモニウムを用いてエッチング溶液をpH5~6に調整。必要に応じ1M硝酸で逆滴定。
14)ChelexカラムにpH調整した溶液をロード。
15)Chelexカラムを150~175mlの1M硝酸アンモニウムで洗浄。
16)150mlのビーカーをホットプレート上に置き、100mlの1M水酸化ナトリウムを加熱し沸騰させる。水酸化ナトリウムが沸騰したらホットプレートを切る。
17)203Pbがカラムから脱離するまで、加熱した水酸化ナトリウム(約90℃の温度)を10-20mlずつ加えカラムから203Pbをストリップ。
18)カラムを廃棄。
19)203Pbストリップ溶液の測定値を取得。セル内イオンチャンバーでカラムを測定することにより完全な脱離を確認。
【0054】
203
Pb最終精製
1)約25mlの硝酸アンモニウムで第2のChelexカラムを調製し、調製したカラムをプロセスセル(カラム2)内に設置。
2)203Pbストリップ溶液を、濃水酸化アンモニウムを用いてpH5~6に調整。必要に応じ1M硝酸で逆滴定。
3)ChelexカラムにpH調整した溶液をロード。
4)Chelexカラムを150~175mlの1M硝酸アンモニウムで洗浄。
5)150mlのビーカーをホットプレート上に設置し、100mlの1M水酸化ナトリウムを沸騰するまで加熱。水酸化ナトリウムが沸騰したらホットプレートを切る。
6)203Pbがカラムから脱離するまで、加熱した水酸化ナトリウムを10~20mlずつ加えカラムから203Pbをストリップ。
7)約25mlの硝酸アンモニウムで第3のChelexカラムを調製し、調製したカラムをプロセスセル内に設置。
8)濃水酸化アンモニウムを用いて第2の203Pbストリップ溶液をpH5~6に調整。必要に応じ1M硝酸で逆滴定。
9)pH調整した溶液をChelexカラムにロード。
10)Chelexカラムを150~175mlの1M硝酸アンモニウムで洗浄。
11)硝酸アンモニウムの溶出が完了したら、カラムを精製水60で洗浄。
12)カラムから203Pbが脱離するまで、1M硝酸を10~20mlずつ加えカラムをストリップ。
【0055】
単離した
203
Pbのストック
1)回収した203Pb溶液を250mL容ガラスビーカー内で蒸発させてホットプレート上で乾燥させる。下記条件を記録。
2)10ccセプタ「S」バイアルの風袋重量を求め、記録。
3)Sバイアルを0.22μmフィルタースタンドに設置し、セプタを取り外す。
4)コンディショニングされたフィルター付き30ccシリンジをスタンドおよびSバイアルに設置。プランジャーを取り外す。
5)きれいなプラスチックピペットを用いて2~3mLの0.5N HNO3をビーカー内の203Pbに添加。蒸気が発生するまでホットプレート上で加熱し、シリンジに移す。フィルターを通して移送された容積をSバイアルに押し込む。
6)203Pbが約10mlストックされるまで、ステップ(5)を2~4回繰り返す。
【0056】
203
Pb放射能のアッセイ
1)単離した203Pbをストックした後、Sバイアルの総重量を計り、空のSバイアルの風袋重量を差し引いた正味重量を求める。
2)「S1」と記された追加のSバイアルの風袋重量を計る。
3)1mlのピペットを用いてSバイアルの内容物を完全に混合する。1mLのピペットを用いて、「S」バイアルから約0.5mLを取り、「S1」バイアルに移す。総重量を計った後、S1風袋重量を差し引いて正味重量を求める。
4)S1バイアルを1/2インチのピッグ(pig)に設置。
5)S1バイアルを圧着し、Capintecイオン化チャンバーステーションに移す。
6)イオン化チャンバーの「放射能レンジ」ダイアルをオートレンジに設定。Capintecのポテンショメータ設定を203Pbの推奨設定である344に設定。バックグラウンドを記録。トングを用いてS1バイアルをCapintecホルダーに移し、チャンバー内の全部を下ろす。総放射能を記録し、バックグラウンドを差し引いて正味のmCiを求める。
7)上で決定した放射能およびSおよびS1バイアルの正味の重量を用いて、Sバイアル濃度(mCi/g)を計算する。
【0057】
【0058】
等価物および範囲
当業者であれば、本明細書に記載された特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、常套的な実験を用いて確認することができるであろう。本発明の範囲は上記の記載に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載するとおりである。
【0059】
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」等は、文脈から逆のまたはそうでないことが明らかでない限り、1またはそれ以上を意味する。群の1つまたは複数のメンバーとの間に「または」を含む請求項または発明の詳細な説明は、文脈から逆のまたはそうでないことが明らかでない限り、
特定の製品またはプロセスにおいて採用されるまたは関連する、群のメンバーの1つ、1以上またはすべてが満足するものとされる。本発明は、群の厳密に1つのメンバーが、特定の製品またはプロセスにおいて存在する、採用されるあるいは関連する実施形態を含む。本発明は、群の厳密に1以上のまたはすべてのメンバーが、特定の製品またはプロセスにおいて存在する、採用されるあるいは関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、記載された請求項の1またはそれ以上からの1つまたはそれ以上の限定、要素、句、記述的用語などが別の請求項に組み込まれる、すべての変形、組み合わせおよび置換を包含するものと理解される。例えば、別のクレームに依存する請求項は、同じ基本請求項に従属する他の請求項に見られる1以上の限定を含むように改変することができる。さらに、特許請求の範囲が組成物を記載する場合、特に記載しない限り、または当業者には矛盾または矛盾が生じることが明らかでない限り、本明細書に開示された目的のために組成物を使用する方法が含まれるものと理解され、また、本明細書に開示された方法または当分野において知られた他の方法にしたがって組成物を製造する方法が含まれるものと理解される。
【0060】
要素がリストとして、例えばマーカッシュグループ形式で、記載される場合、要素の各サブグループもまた開示され、また、任意の要素がグループから除かれ得ることは理解される。本発明または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むと言及される場合、一般的に、本発明の特定の態様または本発明の実施形態は、そのような要素、特徴などから、構成されるまたは本質的に構成されるものと理解される。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書においては言葉通り(in haec verba)に具体的に記載されてはいない。用語「含む(comprising)」は、開かれている(open)ことを意図しており、追加の要素またはステップを含むことが可能であることにも留意されたい。
【0061】
範囲が指定されている場合は端点を含む。さらに、特に記載しない限り、あるいは文脈からおよび当業者の理解からそうでないことが明らかでない限り、範囲として表される値は、本明細書に記載される種々の実施形態において、その範囲の下限の10分の1まで、記載された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を取ることができると理解される。
【0062】
さらに、先行技術に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、1つまたは複数の請求項から明白に除外され得ることが理解されるべきである。当業者にはそのような実施形態が分かると判断されるので、除外が明示的にここに記載されていなくても除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関係なく、何らかの理由で、任意の1以上の請求項から除外されることがある。
【0063】
特許、公開された特許出願および刊行物を含む、本明細書中に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。