(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】多材料分解のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
A61B6/03 350X
A61B6/03 350F
A61B6/03 ZDM
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021082000
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】サティシュ・ラマニ
(72)【発明者】
【氏名】ミンイェ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ・デ・マン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エディック
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158714(JP,A)
【文献】特開2016-193174(JP,A)
【文献】特開2009-261942(JP,A)
【文献】特開2020-072772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像システム(200)を介して、複数のX線スペクトルについて投影データを取得するステップ(305)と、
前記撮像システム(200)の前記投影データおよび較正データ
への逆関数探索に基づいて、複数の材料の経路長を推定するステップ(310)と、
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて、前記推定された経路長を反復的に精緻化するステップ(315)と、
前記反復的に精緻化された推定された経路長から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップ(320)と、
を含む方法(300、400、1000)。
【請求項2】
前記撮像システム(200)の前記投影データおよび前記較正データに基づいて前記複数の材料の経路長を推定するステップ(310)は、前記撮像システム(200)の物理をモデル化することなく、前記投影データおよび前記較正データに基づいて前記複数の材料の前記経路長を推定するステップを含み、
前記較正データは、既知の材料および既知の経路長を含むファントムを使用して較正スキャン中に取得された測定値を含み、前記撮像システム(200)の前記物理は、前記複数のX線スペクトルおよび前記撮像システム(200)の検出器のスペクトル応答を含む、請求項1に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項3】
撮像システム(200)を介して、複数のX線スペクトルについて投影データを取得するステップ(305)と、
前記撮像システム(200)の前記投影データおよび較正データに基づいて、複数の材料の経路長を推定するステップ(310)と、
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて、前記推定された経路長を反復的に精緻化するステップ(315)と、
前記反復的に精緻化された推定された経路長から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップ(320)とを含み、
前記撮像システム(200)の前記投影データおよび前記較正データに基づいて前記複数の材料の経路長を推定するステップ(310)は、前記投影データに対応する前記複数の材料の経路長の第1の推定値を生成するために、前記較正データへの逆関数探索を実行するステップ(410)を含む
、方法(300、400、1000)。
【請求項4】
前記撮像システム(200)の前記投影データおよび前記較正データに基づいて前記複数の材料の経路長を推定するステップ(310)は、前記較正データから構築された順モデルの線形近似を生成するステップ(415)と、前記複数の材料の経路長の予備推定値を取得するために、前記線形近似に基づいて線形方程式系を解くステップ(420)と、をさらに含む、請求項3に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項5】
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて前記推定された経路長を反復的に精緻化するステップ(315)は、経路長の前記予備推定値を初期推定値として用いて前記複数の材料の各材料の経路長の最終推定値を反復的に計算するステップ(315)を含み、前記材料密度画像は、前記複数の材料の各材料の経路長の前記最終推定値から再構築される、請求項4に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項6】
前記投影データに対応する前記複数の材料の経路長の前記第1の推定値を生成するために前記較正データへの前記逆関数探索を実行するステップ(410)は、各サイノグラムビンについて、前記較正データから構築された順モデルに入力されたときに前記投影データのしきい値距離内の結果をもたらす前記較正データ内の材料経路長の候補ベクトルを選択するステップと、各サイノグラムビンについて、前記候補ベクトルの加重和から経路長の前記第1の推定値を計算するステップと、を含む、請求項3に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項7】
前記投影データの強度測定値に基づいて前記加重和の重みを選択するステップをさらに含み、より高い強度はより高い重みに対応する、請求項6に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項8】
前記順モデルの前記線形近似を生成するステップ(415)は、各材料の既知の経路長の行列と乗算したときに既知の投影測定値の対応する行列をもたらす係数行列を計算する
ステップを含み、前記較正データは、前記既知の経路長および前記既知の投影測定値を含む、請求項4に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項9】
前記複数の材料の経路長の前記予備推定値を取得するために前記線形近似に基づいて前記線形方程式系を解くステップ(420)は、前記係数行列と乗算したときに前記投影データの投影測定値の対応する行列をもたらす前記複数の材料の経路長の前記予備推定値の行列を計算するステップを含む、請求項8に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項10】
前記投影データおよび前記較正データに基づいて少なくとも2つの単色サイノグラムを推定するステップ(1010)と、前記少なくとも2つの単色サイノグラムから少なくとも2つの単色画像を再構築するステップ(1015)と、をさらに含む、請求項1
乃至9のいずれかに記載の方法(300、400、1000)。
【請求項11】
前記複数の材料の各材料について前記材料密度画像を再構築するステップ(320)は
、前記少なくとも2つの単色サイノグラムから再構築された前記少なくとも2つの単色画像から前記複数の材料密度画像を推定するステップを含む、請求項10に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項12】
撮像システム(200)を介して、複数のX線スペクトルについて投影データを取得するステップと、
前記複数のX線スペクトルおよび前記複数のX線スペクトルに対する検出器応答を含む前記撮像システム(200)の物理をモデル化することなく、前記撮像システム(200)の前記投影データおよび較正データに基づいて、複数の材料の経路長の予備推定値を計算するステップ
であって、前記較正データは、既知の材料および既知の経路長を含むファントムを使用して較正スキャン中に取得された測定値を含む、前記ステップと、
前記複数の材料の経路長の最終推定値を取得するために、前記複数の材料の経路長の前記予備推定値を反復的に更新するステップと、
前記複数の材料の経路長の前記最終推定値から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップと、
を含む、方法(300、400、1000)。
【請求項13】
前記複数の材料の経路長の前記予備推定値を計算するステップは、前記較正データへの逆関数探索に基づいて経路長の第1の推定値を計算するステップと、前記複数の材料の経路長の前記予備推定値の線形方程式系を解くステップと、を含み、前記線形方程式系は、前記較正データの順モデルの線形近似に基づいて構築される、請求項12に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項14】
前記複数の材料の経路長の前記最終推定値を取得するために、前記複数の材料の経路長の前記予備推定値を反復的に更新するステップは、前記複数の材料の経路長の前記最終推定値を決定するために、前記複数の材料の経路長の前記予備推定値で初期化された、前記投影データおよび前記較正データを入力として統計関数を反復的に最小化するステップを含む、請求項12に記載の方法(300、400、1000)。
【請求項15】
システム(100、200)であって、
対象物(112)に向かってX線ビーム(106)を生成するように構成されたX線源(104)と、
前記対象物(112)によって減衰された前記X線ビーム(106)を検出するように構成された複数の検出器素子(202)を含む検出器アレイと、
前記X線源(104)および前記検出器アレイに通信可能に結合され、非一時的なメモ
リ内に命令を有するように構成されたコンピューティングデバイス(216)と、を含み、前記命令は、実行されると前記コンピューティングデバイス(216)に、
異なるエネルギーレベルで複数のX線ビーム(106)を用いて前記対象物(112)をスキャンして投影データを取得するように前記X線源(104)および前記検出器アレイを制御させ、
前記X線源(104)および前記検出器アレイの前記投影データおよび較正データ
への逆関数探索に基づいて複数の材料の経路長を推定させ、
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて、前記推定された経路長を反復的に精緻化させ、
前記反復的に精緻化された推定された経路長から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築させる、システム(100、200)。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイス(216)は、前記非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、前記命令は、実行されると、前記コンピューティングデバイス(216)に、前記X線源(104)および前記検出器アレイの物理をモデル化することなく、前記投影データおよび前記較正データに基づいて前記複数の材料の前記経路長を推定さ
せ、前記較正データは、既知の材料および既知の経路長を含むファントムを使用して較正スキャン中に取得された測定値を含む、請求項15に記載のシステム(100、200)。
【請求項17】
システム(100、200)であって、
対象物(112)に向かってX線ビーム(106)を生成するように構成されたX線源(104)と、
前記対象物(112)によって減衰された前記X線ビーム(106)を検出するように構成された複数の検出器素子(202)を含む検出器アレイと、
前記X線源(104)および前記検出器アレイに通信可能に結合され、非一時的なメモ
リ内に命令を有するように構成されたコンピューティングデバイス(216)と、を含み、前記命令は、実行されると前記コンピューティングデバイス(216)に、
異なるエネルギーレベルで複数のX線ビーム(106)を用いて前記対象物(112)をスキャンして投影データを取得するように前記X線源(104)および前記検出器アレイを制御させ、
前記X線源(104)および前記検出器アレイの前記投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定させ、
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて、前記推定された経路長を反復的に精緻化させ、
前記反復的に精緻化された推定された経路長から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築させ、
前記コンピューティングデバイス(216)は
さらに、前記非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、前記命令は、実行されると、前記コンピューティングデバイス(216)に、前記投影データに対応する前記複数の材料の経路長の第1の推定値を生成するために前記較正データへの逆関数探索を実行させ、前記較正データから構築された順モデルの線形近似を生成させ、前記複数の材料の経路長の予備推定値を取得するために前記線形近似に基づいて線形方程式系を解かせる
、システム(100、200)。
【請求項18】
システム(100、200)であって、
対象物(112)に向かってX線ビーム(106)を生成するように構成されたX線源(104)と、
前記対象物(112)によって減衰された前記X線ビーム(106)を検出するように構成された複数の検出器素子(202)を含む検出器アレイと、
前記X線源(104)および前記検出器アレイに通信可能に結合され、非一時的なメモ
リ内に命令を有するように構成されたコンピューティングデバイス(216)と、を含み、前記命令は、実行されると前記コンピューティングデバイス(216)に、
異なるエネルギーレベルで複数のX線ビーム(106)を用いて前記対象物(112)をスキャンして投影データを取得するように前記X線源(104)および前記検出器アレイを制御させ、
前記X線源(104)および前記検出器アレイの前記投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定させ、
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて、前記推定された経路長を反復的に精緻化させ、
前記反復的に精緻化された推定された経路長から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築させ、
前記コンピューティングデバイス(216)は
さらに、前記非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、前記命令は、実行されると、前記コンピューティングデバイス(216)に、前記推定された経路長を初期推定値として用いて前記複数の材料の各材料について前記推定された経路長を反復的に精緻化させる
、システム(100、200)。
【請求項19】
システム(100、200)であって、
対象物(112)に向かってX線ビーム(106)を生成するように構成されたX線源(104)と、
前記対象物(112)によって減衰された前記X線ビーム(106)を検出するように構成された複数の検出器素子(202)を含む検出器アレイと、
前記X線源(104)および前記検出器アレイに通信可能に結合され、非一時的なメモ
リ内に命令を有するように構成されたコンピューティングデバイス(216)と、を含み、前記命令は、実行されると前記コンピューティングデバイス(216)に、
異なるエネルギーレベルで複数のX線ビーム(106)を用いて前記対象物(112)をスキャンして投影データを取得するように前記X線源(104)および前記検出器アレイを制御させ、
前記X線源(104)および前記検出器アレイの前記投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定させ、
前記較正データから導出された線形化モデルに基づいて、前記推定された経路長を反復的に精緻化させ、
前記反復的に精緻化された推定された経路長から前記複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築させ、
前記コンピューティングデバイス(216)は
さらに、前記非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、前記命令は、実行されると、前記コンピューティングデバイス(216)に、前記投影データおよび前記較正データに基づいて少なくとも2つの単色サイノグラムを推定させ、前記少なくとも2つの単色サイノグラムから少なくとも2つの単色画像を再構築させる
、システム(100、200)。
【請求項20】
前記コンピューティングデバイス(216)は、前記非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、前記命令は、実行されると、前記コンピューティングデバイス(216)に
、前記少なくとも2つの単色サイノグラムから再構築された前記少なくとも2つの単色画像から前記複数の材料密度画像を推定させる、請求項19に記載のシステム(100、200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題の実施形態は、コンピュータ断層撮影(CT)撮像に関し、より具体的には、CT撮像のための多材料分解に関する。
【背景技術】
【0002】
二重または多重エネルギースペクトルコンピュータ断層撮影(CT)撮像システムは、物体における異なる材料の密度を明らかにし、複数の単色X線エネルギーレベルに対応する画像を生成することができる。CT撮像システムは、スペクトル内の光子エネルギーの少なくとも2つの領域、例えば、入射X線スペクトルの低エネルギー部分および高エネルギー部分からの信号に基づいて、異なる単色エネルギーレベルでの挙動を導出することができる。スキャンされる対象物が患者である医療用CTの所与のエネルギー領域では、2つの物理的プロセス、すなわちコンプトン散乱および光電効果がX線減衰プロセスを支配する。2つのエネルギー領域から検出された信号は、撮像される材料のエネルギー依存性を解決するのに十分な情報を提供する。2つのエネルギー領域から検出された信号は、2つの仮想材料で構成される物体の相対的な構造を決定するのに十分な情報を提供する。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、方法は、撮像システムを介して、複数のX線スペクトルについて投影データを取得するステップと、撮像システムの取得された投影データおよび較正データに基づいて、複数の材料の経路長を推定するステップと、推定された経路長から複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップと、を含む。以下、「経路長」という用語は、X線源を個々の検出器素子に接続する線に沿った材料密度画像の線積分を指定するために使用される。撮像システムの物理をモデル化することなくこのように経路長推定値を決定することにより、正確な材料分解をより迅速に、システムの物理の変化に対する感度を低くして実行することができ、さらに、3つ以上の材料に拡張することができる。
【0004】
上記の簡単な説明は、詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供されていることを理解されたい。特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することは意図されておらず、その主題の範囲は詳細な説明に続く特許請求の範囲によって一義的に定義される。さらに、特許請求される主題は、上述の欠点または本開示の任意の部分に記載される欠点を解決する実施態様に限定されない。
【0005】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下の非限定的な実施形態の説明を読むことからよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態による、撮像システムの図である。
【
図2】一実施形態による、例示的な撮像システムのブロック概略図である。
【
図3】一実施形態による、多材料分解のための例示的な方法を示す高レベルフローチャートである。
【
図4】一実施形態による、較正データに基づいて複数の材料の経路長の予備推定値を計算するための例示的な方法を示す高レベルフローチャートである。
【
図5】一実施形態による、複数の材料の経路長を最初に推定するための例示的な多次元表面を示す一組のグラフを示す図である。
【
図6】一実施形態による、複数の材料の経路長の初期推定値を精緻化するための例示的な線形モデルを示す一組のグラフを示す図である。
【
図7】一実施形態による、材料の例示的な推定サイノグラムおよびグラウンドトゥルースサイノグラムを示すグラフである。
【
図9】一実施形態による、
図7の推定サイノグラムとグラウンドトゥルースサイノグラムとの差を示すグラフである。
【
図10】一実施形態による、単色サイノグラムを推定するための例示的な方法を示す高レベルフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明は、スペクトルコンピュータ断層撮影(CT)撮像の様々な実施形態に関する。特に、スペクトルCT撮像における多材料分解のための方法およびシステムが提供される。本技法に従って画像を取得するために使用され得るCT撮像システムの例が、
図1および
図2に示されている。CT撮像システムは、材料分解を介して材料を識別する忠実度を提供する光子計数検出器などのエネルギー識別検出器で構成することができる。材料分解は、投影領域または画像領域で、または再構築と一緒に実行されてもよい。しかしながら、結合材料分解-再構築手法は通常、投影領域手法と画像領域手法の両方と比較して計算コストが高い。さらに、多材料分解(すなわち、2つ以上の材料の材料分解)のための投影領域法は、通常、一般にX線スペクトルと検出器スペクトル応答との組み合わせである有効X線スペクトルのいくつかのモデルの知識などの、撮像システムの事前知識に依存する。そのような事前知識は、特に検出器スペクトル応答が検出器アレイにわたって変化する場合、および/または放射されたX線スペクトルがX線管の寿命と共に変化する場合、高い精度で実際に得ることが困難である。
図3に示す方法などの多材料分解のための方法は、較正データのみに基づいて、多重エネルギーCT撮像システムの物理の知識を必要とせずに多材料経路長を推定することによって、これらの以前の手法の課題を克服する。本方法は、2ステップ技法を含み、予備推定値は、較正データおよび取得された投影データに基づいて最初に取得され、次いで、予備推定値は、統計的な意味での多材料経路長の精度をさらに高めるために統計的基準を最適化する反復方式を初期化するために使用される。
図4に示すように、多材料経路長の予備推定値を取得する方法は、関数逆探索手法と局所的多重線形適合手法との組み合わせを含む。そのような予備推定値を計算するプロセスは、
図5および
図6のシミュレートされたデータで示されている。
図7~
図9に示すさらなるシミュレーションの結果は、予備推定値が非常に正確であることを示しており、反復方式は、わずか数回の反復でさらに高い精度まで多材料経路長の最終推定値を得ることができる。多材料経路長を直接推定するための本明細書に記載の方法は、
図10に示すように、複数のエネルギーで単色サイノグラムを推定するように適合させることもできる。
【0008】
図1は、CT撮像用に構成された例示的なCTシステム100を示している。特に、CTシステム100は、患者、無生物、1つまたは複数の製造部品、ならびに/あるいは体内に存在する歯科用インプラント、ステント、および/または造影剤などの異物などの対象物112を撮像するように構成される。一実施形態では、CTシステム100は、ガントリ102を含むことができ、ガントリ102は、テーブル114上に横たわる対象物112の撮像に使用するためのX線放射(
図2を参照)のビーム106を投射するように構成された少なくとも1つのX線源104をさらに含む。具体的には、X線源104は、X線放射ビーム106をガントリ102の反対側に位置決めされた検出器アレイ108に向けて投影するように構成される。
図1は単一のX線源104のみを示しているが、特定の実施形態では、複数のX線源および検出器を使用して、患者に対応する異なるエネルギーレベルで投影データを取得するために複数のX線放射ビーム106を投影することができる。いくつかの実施形態では、X線源104は、急速なピークキロ電圧(kVp)スイッチングによって二重エネルギースペクトル撮像を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、使用されるX線検出器は、異なるエネルギーのX線光子を区別することが可能な光子計数検出器である。他の実施形態では、2組のX線源および検出器が、二重エネルギー投影を生成するために使用され、一方の組は低kVpにあり、他方の組は高kVpにある。したがって、本明細書に記載の方法は、様々な多重スペクトル取得技術で実施することができ、特定の記載された実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0009】
ある特定の実施形態では、CTシステム100は、逐次近似または解析的画像再構築方法を使用して、対象物112のターゲットボリュームの画像を再構築するように構成された画像プロセッサユニット110をさらに含む。例えば、画像プロセッサユニット110は、フィルタ補正逆投影(FBP)などの解析的画像再構築手法を使用して、患者のターゲットボリュームの画像を再構築することができる。別の例として、画像プロセッサユニット110は、対象物112のターゲットボリュームの画像を再構築するために、高度統計的逐次近似再構築(ASIR)、共役勾配(CG)、最尤期待値最大化(MLEM)、モデルベース逐次近似再構築(MBIR)などの逐次近似画像再構築手法を使用することができる。本明細書でさらに説明するように、いくつかの例では、画像プロセッサユニット110は、逐次近似画像再構築手法に加えて、FBPなどの解析的画像再構築手法の両方を使用してもよい。
【0010】
いくつかのCT撮像システム構成では、X線源は、デカルト座標系のX-Y-Z平面内にあるようにコリメートされ、一般に「撮像面」と呼ばれる円錐形のX線放射ビームを投影する。X線放射ビームは、患者または対象物などの撮像される物体を通過する。X線放射ビームは、物体によって減衰された後に、検出器素子のアレイに衝突する。検出器アレイで受け取られる減衰されたX線放射ビームの強度は、対象物による放射ビームの減衰に依存する。アレイの各々の検出器素子が、検出器の場所におけるX線ビームの減衰の測定値である別個の電気信号を生成する。すべての検出器素子からの減衰測定値が個別に取得されて、透過プロファイルを生成する。
【0011】
いくつかのCTシステムでは、X線源および検出器アレイは、放射線ビームが物体と交差する角度が絶えず変化するように、撮像平面内および撮像される物体の周りでガントリと共に回転する。1つのガントリ角度での検出器アレイからのX線放射減衰測定値、例えば投影データのグループは、「ビュー」と呼ばれる。対象物の「スキャン」は、X線源および検出器の1回転の間に異なるガントリ角度またはビュー角度で行われた一組のビューを含む。本明細書で説明される方法の利点はCT以外の医用撮像モダリティにも生じると考えられるので、本明細書で使用される「ビュー」という用語は、1つのガントリ角度からの投影データに関して上述の使用に限定されない。「ビュー」という用語は、CT撮像システムからか、または多重スペクトル減衰測定値を取得する別の撮像システムからか、にかかわらず、異なる角度からの複数のデータ取得があるときはいつでも1つのデータ取得を意味するために使用される。
【0012】
投影データは、物体を通って取得された2次元スライスに対応する画像、または投影データが複数の検出器列または複数のガントリ回転からのデータを含むいくつかの例では、物体の3次元ボリューム表現を再構築するために処理される。一組の投影データから画像を再構築するための1つの方法は、当技術分野では、フィルタ補正逆投影技法と呼ばれる。透過型および放出型断層撮影再構築技法はまた、最尤期待値最大化(MLEM)および順序付きサブセット期待値再構築技法、ならびに逐次近似再構築技法などの統計的逐次近似方法を含む。このプロセスは、スキャンからの減衰測定値を、表示装置上の対応する画素の輝度を制御するために使用される「CT番号」または「ハウンズフィールド単位」に変換する。
【0013】
総スキャン時間を短縮するために、「ヘリカル」スキャンを実施することができる。「ヘリカル」スキャンを実行するために、規定数のスライスのデータが取得されている間に、テーブル114を使用して患者が移動される。そのようなシステムは、コーンビームのヘリカルスキャンから単一のらせんを生成する。コーンビームによってマッピングされたらせんは、各所定のスライス内の画像を再構築することができる投影データを生成する。
【0014】
本明細書で使用する場合、「画像を再構築する」という語句は、画像を表すデータが生成されるが可視画像は生成されない本発明の実施形態を除外することを意図しない。したがって、本明細書で使用する場合、「画像」という用語は、可視画像と可視画像を表すデータの両方を広く指す。しかしながら、多くの実施形態は、少なくとも1つの可視画像を生成する(あるいは、生成するように構成される)。本明細書で使用される場合、画像という用語は、2次元画像ならびに3次元以上の画像ボリュームを指すことができる。
【0015】
図2は、
図1のCTシステム100と同様の例示的な撮像システム200を示す。本開示の態様によれば、撮像システム200は、対象物204(例えば、
図1の対象物112)を撮像するように構成される。一実施形態では、撮像システム200は、検出器アレイ108(
図1を参照)を含む。検出器アレイ108は、対応する投影データを取得するために対象物204(患者など)を通過するX線放射ビーム106(
図2を参照)を共に検知する複数の検出器素子202をさらに含む。したがって、一実施形態では、検出器アレイ108は、セルまたは検出器素子202の複数の行を含むマルチスライス構成で製作される。そのような構成では、検出器素子202の1つまたは複数の追加の行が、投影データを取得するための並列構成に配置される。
【0016】
ある特定の実施形態では、撮像システム200は、所望の投影データを取得するために、対象物204の周りの異なる角度位置を横切るように構成される。したがって、ガントリ102およびそれに取り付けられた構成要素は、例えば、異なるエネルギーレベルで投影データを取得するために、回転中心206を中心に回転するように構成することができる。あるいは、対象物204に対する投影角度が時間の関数として変化する実施形態では、搭載されている構成要素は、円弧に沿ってではなく、一般的な曲線に沿って移動するように構成されてもよい。
【0017】
X線源104および検出器アレイ108が回転すると、検出器アレイ108は、減衰されたX線ビームのデータを収集する。検出器アレイ108によって収集されたデータは、データを調整するための前処理および較正を受けて、スキャンされた対象物204の減衰係数の線積分を表す。処理後のデータは、投影と一般的に呼ばれる。
【0018】
いくつかの例では、検出器アレイ108の個々の検出器または検出器素子202は、個々の光子の相互作用を1つまたは複数のエネルギービンに記録するエネルギー弁別光子計数検出器を含むことができる。本明細書で説明される方法は、エネルギー積分検出器によって実現されてもよいことを理解されたい。
【0019】
取得された投影データの組を、基底材料分解(BMD)に使用することができる。BMD中、測定された投影は、一組の材料-密度投影に変換される。材料密度投影は、材料密度マップまたは画像のペアまたは組、すなわち、骨、軟組織、および/または造影剤マップなどの各それぞれの基礎材料のマップまたは画像を形成するように再構築することができる。次に、密度マップまたは画像を関連付け、基底材料、例えば、骨、軟組織、および/または造影剤のボリュームレンダリングを撮像されたボリューム内に形成することができる。
【0020】
再構築されると、撮像システム200によって作成された基底材料画像は、2つの基底材料の密度で表された、対象物204の内部特徴を明らかにする。密度画像は、これらの特徴を示すために表示され得る。病状などの医学的状態、より一般的には医学的事象の診断のための従来の手法では、放射線技師または医師は、密度画像のハードコピーまたは表示を検討し、特徴的な関心特徴を識別する。そのような特徴は、特定の解剖学的構造または器官の病変、サイズ、および形状、ならびに個々の開業医のスキルおよび知識に基づいて画像において識別可能な他の特徴を含むことができる。
【0021】
一実施形態では、撮像システム200は、ガントリ102の回転およびX線源104の動作などの構成要素の移動を制御する制御機構208を含む。特定の実施形態では、制御機構208は、電力およびタイミング信号をX線源104に提供するように構成されたX線コントローラ210をさらに含む。加えて、制御機構208は、撮像要件に基づいてガントリ102の回転速度および/または位置を制御するように構成されたガントリモータコントローラ212を含む。
【0022】
特定の実施形態では、制御機構208は、検出器素子202から受信されたアナログデータをサンプリングし、後の処理のためにアナログデータをデジタル信号に変換するように構成されたデータ収集システム(DAS)214をさらに含む。DAS214は、
図2に示すように、制御機構208の構成要素、または別個の構成要素を含むことができる。DAS214を、本明細書でさらに説明するように、検出器素子202のサブセットからのアナログデータをいわゆるマクロ検出器に選択的に集約するようにさらに構成することができる。DAS214によってサンプリングされデジタル化されたデータは、コンピュータまたはコンピューティングデバイス216に送信される。一例では、コンピューティングデバイス216は、データを記憶装置または大容量記憶装置218に格納する。記憶装置218は、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク読み出し/書き込み(CD-R/W)ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、および/またはソリッドステート記憶ドライブを含んでもよい。
【0023】
加えて、コンピューティングデバイス216は、データ取得および/または処理などのシステム動作を制御するために、コマンドおよびパラメータをDAS214、X線コントローラ210、およびガントリモータコントローラ212の1つまたは複数に提供する。特定の実施形態では、コンピューティングデバイス216は、オペレータ入力に基づいてシステムの動作を制御する。コンピューティングデバイス216は、コンピューティングデバイス216に動作可能に結合されたオペレータコンソール220を介して、例えば、コマンドおよび/またはスキャンパラメータを含むオペレータ入力を受け取る。オペレータコンソール220は、オペレータがコマンドおよび/またはスキャンパラメータを指定することを可能にするキーボード(図示せず)またはタッチスクリーンを含むことができる。
【0024】
図2は、1つのオペレータコンソール220のみを示しているが、2つ以上のオペレータコンソールを撮像システム200に結合し、例えば、システムパラメータを入力もしくは出力すること、試験を要求すること、データをプロットすること、および/または画像を閲覧することができる。さらに、特定の実施形態では、撮像システム200は、インターネットおよび/または仮想プライベートネットワーク、無線電話ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク、有線ローカルエリアネットワーク、無線ワイドエリアネットワーク、有線ワイドエリアネットワーク、などの1つまたは複数の構成可能な有線および/または無線ネットワークを介して、例えば施設内または病院内の現場または遠方に位置し、あるいはまったく異なる場所に位置する複数のディスプレイ、プリンタ、ワークステーション、および/または同様のデバイスに接続されてもよい。
【0025】
一実施形態では、例えば、撮像システム200は、画像保管通信システム(PACS)224を含むか、またはそれに結合される。例示的な実施態様では、PACS224は、放射線科情報システム、病院情報システム、および/または内部もしくは外部ネットワーク(図示せず)などの遠隔システムにさらに結合され、異なる場所にいるオペレータがコマンドおよびパラメータを供給すること、および/または画像データへのアクセスを得ることを可能にする。
【0026】
コンピューティングデバイス216は、オペレータ供給のおよび/またはシステム定義のコマンドおよびパラメータを使用してテーブルモータコントローラ226を動作させ、テーブルモータコントローラ226は、電動テーブルであり得るテーブル114を制御することができる。具体的には、テーブルモータコントローラ226は、対象物204のターゲットボリュームに対応する投影データを取得するために、ガントリ102内で対象物204を適切に位置決めするためにテーブル114を移動させることができる。
【0027】
前述のように、DAS214は、検出器素子202によって取得された投影データをサンプリングしてデジタル化する。その後に、画像再構築器230が、サンプリングおよびデジタル化されたX線データを使用して、高速再構築を実行する。
図2は画像再構築器230を別個のエンティティとして示しているが、特定の実施形態では、画像再構築器230は、コンピューティングデバイス216の一部を形成してもよい。あるいは、画像再構築器230は、撮像システム200に存在しなくてもよく、代わりに、コンピューティングデバイス216が、画像再構築器230の1つまたは複数の機能を実行してもよい。さらに、画像再構築器230は、局所的にまたは遠隔に位置してもよく、有線または無線ネットワークを使用して撮像システム200に動作可能に接続されてもよい。特に、1つの例示的な実施形態は、画像再構築器230のための「クラウド」ネットワーククラスタ内の計算資源を使用することができる。
【0028】
一実施形態では、画像再構築器230は、再構築された画像を記憶装置218に格納する。あるいは、画像再構築器230は、診断および評価のための有用な患者情報を生成するために、再構築された画像をコンピューティングデバイス216に送信することができる。特定の実施形態では、コンピューティングデバイス216は、再構築された画像および/または患者情報を、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230に通信可能に接続されたディスプレイまたは表示装置232に送信することができる。いくつかの実施形態では、再構築された画像を、短期または長期の保管のために、コンピューティングデバイス216または画像再構築器230から記憶装置218へ送信することができる。
【0029】
本明細書でさらに説明する様々な方法およびプロセス(例えば、
図3、
図4、および
図10を参照して以下に説明する方法)は、撮像システム200内のコンピューティングデバイス(またはコントローラ)上の非一時的メモリに実行可能命令として格納することができる。一実施形態では、画像再構築器230は、そのような実行可能命令を非一時的メモリに含むことができ、スキャンデータから画像を再構築するために本明細書で説明される方法を適用することができる。別の実施形態では、コンピューティングデバイス216は、命令を非一時的メモリに含むことができ、画像再構築器230から再構築された画像を受信した後に、少なくとも部分的に、本明細書で説明される方法を再構築された画像に適用することができる。さらに別の実施形態では、本明細書で説明される方法およびプロセスは、画像再構築器230およびコンピューティングデバイス216にわたって分散されてもよい。
【0030】
一実施形態では、ディスプレイ232は、オペレータが撮像された解剖学的構造を評価することを可能にする。ディスプレイ232はまた、オペレータがその後のスキャンまたは処理のために、例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して関心ボリューム(VOI)を選択すること、および/または患者情報を要求することを可能にすることができる。
【0031】
図3は、一実施形態による多材料分解のための例示的な方法300を示す高レベルフローチャートを示す。特に、方法300は、入射X線スペクトルおよび/または検出器応答のモデルなどの撮像システムの物理の知識に基づくのではなく、較正データに基づいて投影領域で多材料分解を実行することに関する。方法300は、
図1および
図2のシステムおよび構成要素に関して説明されているが、方法300は、本開示の範囲から逸脱することなく、他のシステムおよび構成要素で実装することができることを認識されたい。方法300は、例えば、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230の非一時的メモリ内の実行可能命令として実施することができ、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230のプロセッサによって実行されて、本明細書に記載の動作を実行することができる。
【0032】
方法300は、305で開始する。305で、方法300は、強度測定値を取得して投影データを生成するために対象物のスキャンを実行する。スキャンは、対象物の二重エネルギーCTスキャンまたは多重エネルギーCTスキャンを含む。その目的のために、方法300は、例えば、X線源104を駆動して2つ以上のエネルギーレベルでX線を放射するようにX線コントローラ210を制御する一方で、ガントリモータコントローラ212およびテーブルモータコントローラ226を制御してガントリ102およびテーブル114の位置をそれぞれ調整し、それにより、X線を生成しながら、スキャンされる対象物204に対するX線源104の位置が調整される。方法300は、例えばDAS214を介して、検出器アレイ108の検出器素子202などの光子計数検出器を含むエネルギー弁別検出器によって測定された投影データをさらに取得する。投影データは、例えば、異なるエネルギーの光子の測定値が所定のエネルギービンに分類される、多重エネルギー光子計数測定値を含む。
【0033】
310で、方法300は、較正データおよび投影データに基づいて、複数の材料の経路長の予備推定値を計算する。較正データは、撮像システムを用いて、既知の材料および既知の経路長を含むファントムの較正スキャン中に取得される、撮像システムを較正するための較正データを含む。方法300は、投影データの観測された多重エネルギー測定値をもたらす較正データに基づいて、複数の材料の経路長の予備推定値を計算する。その目的のために、方法300は、較正データへの逆関数探索を実行して、観測された多重エネルギー測定値をもたらすであろう多材料経路長の初期推定値を取得し、初期推定値に基づいて構築された線形方程式系を解くことによって初期推定値を精緻化する二段階推定を実行することができる。較正データに基づいて複数の材料の経路長の予備推定値を計算するための例示的な方法は、
図4に関して本明細書でさらに説明される。
【0034】
315で、方法300は、予備推定値を初期推定値として用いて、複数の材料の各材料の経路長の最終推定値を反復的に計算する。例えば、方法300は、以下の方程式を、m∈Ωmを条件として、反復的に解くことによって最終推定値mfinalを計算することができる。
【0035】
【数1】
ここで、Ω
mは(物理的に)実現可能な材料経路長ベクトルの集合を含み、Fは最適化されたときに多材料経路長の(物理的に)意味のある推定値を生成する統計的基準(例えば、対数尤度)であり、f
calは補間または多項式モデルを使用して、既知の材料経路長を対応する既知の投影値(p値)またはX線強度(I値)にマッピングする微分可能な順モデルを含み、p
measは305で測定されたp値を含み、I
measは305で測定されたX線強度を含む。上記の式はサイノグラム全体(すなわち、すべてのサイノグラムビンi)に適用されるが、Fの成分に応じて、最終推定値m
finalの上記の式はサイノグラムビンiで分離可能であり、したがって並列に解くことができることを理解されたい。
【0036】
上記の統計的問題は、所望の多材料経路長に対して最尤(または最大事後)推定器を設定することとして理解され得る。一例では、関数Fは、以下のようなポアソン対数尤度関数を含むことができる。
【0037】
【数2】
ここで、添字iはサイノグラムビンを示し、添字kはエネルギービンを示し、測定されたX線強度
【0038】
【数3】
は、材料が存在しない場合の空気スキャンに対応し、
【0039】
【数4】
は、既知の材料経路長を既知の正規化されたX線強度
【0040】
【数5】
にマッピングする微分可能な順モデルであり、
【0041】
【0042】
【数7】
は、材料が存在しない場合の較正強度測定値および空気スキャンにそれぞれ対応する。別の例では、関数Fは、以下のような重み付き最小二乗基準関数を含むことができる。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【数11】
は既知の経路長を既知のp値にマッピングする微分可能な順モデルであり、添字iはサイノグラムビンを示す。Fに対してポアソン対数尤度関数を使用する利点は、この関数が、測定されたX線強度I
measが低く(または光子計数検出器の場合は0、またはエネルギー積分検出器の場合は電子ノイズに起因する負でさえある)、p
measを計算する際に-log(・)の適用を妨げるシナリオにおいてより効果的であることであり、ここで、サイノグラムビンの添字iおよびエネルギービンの添字kに対応するp
measの成分
【0047】
【0048】
【0049】
320で、方法300は、経路長の最終推定値に基づいて各材料の材料密度画像を再構築する。例えば、各材料の経路長の最終推定値は、材料ベースの投影を含み、したがって、方法300は、材料の最終経路長推定値から各材料の材料密度画像を再構築する。325で、方法300は材料密度画像を出力する。例えば、方法300は、表示装置232などの表示装置に材料密度画像を出力することができる。それに加えてまたはその代わりに、方法300は、材料密度画像を、記憶のための大容量記憶装置218および/または遠隔レビューのためのPACS224に出力することができる。
【0050】
330で、方法300は、材料密度画像に基づいて複数のエネルギーで単色画像を生成する。例えば、方法300は、材料密度画像を選択的に組み合わせて、所与のエネルギーで単色画像を生成することができ、それは所与のエネルギーでのみ光子を放出するX線源を使用して取得をエミュレートする。方法300は、材料密度画像から異なるエネルギーで複数の単色画像を生成することができる。335で、方法300は単色画像を出力する。例えば、方法300は、単色画像を表示装置232などの表示装置に出力することができる。それに加えてまたはその代わりに、方法300は、材料密度画像を、記憶のための大容量記憶装置218および/または遠隔レビューのためのPACS224に出力することができる。その後、方法300は最初に戻る。
【0051】
図4は、一実施形態による、較正データに基づいて複数の材料の経路長の予備推定値を計算するための例示的な方法400を示す高レベルフローチャートを示す。特に、方法400は、較正データに基づいて経路長の第1の推定値を決定し、第1の推定値における順モデルの局所線形近似に対応する線形方程式系を解くことによって第1の推定値を精緻化することに関する。方法400は、
図1および
図2のシステムおよび構成要素に関して説明されているが、方法400は、本開示の範囲から逸脱することなく、他のシステムおよび構成要素で実装することができることを認識されたい。方法400は、例えば、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230の非一時的メモリ内の実行可能命令として実施することができ、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230のプロセッサによって実行されて、本明細書に記載の動作を実行することができる。方法400は、方法300のサブルーチンを含むことができ、具体的には、較正データおよび投影データに基づいて複数の材料の経路長の予備推定値を計算する動作310を含むことができる。
【0052】
方法400は、405で開始する。405で、方法400は投影データをロードする。例えば、方法400は、上述のように305で取得された投影データをロードする。投影データは、例えば、異なるエネルギーの光子の測定値が所定のエネルギービンに分類される、多重エネルギー光子計数測定値を含む。
【0053】
続いて410で、方法400は、投影データに対応する経路長の第1の推定値を得るために、較正データへの逆関数探索を実行する。較正データは、既知の材料および既知の経路長を含むファントムを使用して撮像システムを較正するための較正スキャン中に取得された測定値を含む。例えば、較正データは、集合Scalとして非一時的メモリに格納されてもよい。
【0054】
【0055】
【数15】
は、L個の材料の既知の経路長のL×1ベクトルであり、各ベクトル
【0056】
【数16】
は、k=1,...,Kのエネルギービンに対応する既知のp値(対数正規化強度値)のK×1ベクトルであり、iはサイノグラムビンの添字であり、jは異なる実験が異なる材料の組み合わせに対応する実験の添字である。第iのサイノグラムビンの微分可能な順モデル
【0057】
【数17】
は、材料経路長mをp値にマッピングする較正集合S
calに基づいて、非一様有理Bスプラインまたはラグランジュ補間などの補間を使用して、
【0058】
【0059】
【0060】
次いで、所与のKエネルギービン対数正規化測定ベクトル
【0061】
【0062】
それぞれのX線強度測定ベクトル、
【0063】
【数21】
について、サイノグラムビンiに対応して(すなわち、1つのX線投影線に対応して)、方法400は、較正データS
calから、測定値ベクトル
【0064】
【0065】
【0066】
【数24】
を見いだす。例えば、方法400は次式を決定することができ、
【0067】
【数25】
ここで、関数1
(.)は、括弧内の条件が満たされる場合には1(すなわち、1)であり、そうでなければ0であり、3≦K
sub≦Kであり、T
pは、
【0068】
【0069】
【数27】
への近さの所定のしきい値であり、関数dist(a、b)は、その引数aとbとの間の距離を測定する関数である。いくつかの例では、関数dist(a、b)は、絶対差関数または二乗差関数を含んでもよい。結果として得られる探索結果の集合、
【0070】
【数28】
は、したがって、方法400が所望の多材料経路長の大まかな推定値を取得する材料ベクトルの集合を含む。例えば、方法400は、材料ベクトルの単純な加重和を実行することによって初期推定値を計算する。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【数32】
により高い優先度を与える重みを含む。数値的近さは、ベクトル
【0075】
【0076】
【数34】
の真の価値に依存し、これは次に強度測定ベクトル
【0077】
【0078】
【数36】
に基づいて決定され、強度が高いほど信頼性が高くなる。したがって、重み付けモデルは、より高い検出されたX線強度を有するエネルギービンにより高い重みを与えることによって統計的に関連する推定を提供する。
【0079】
415で、方法400は、経路長の第1の推定値に基づいて順モデルの線形近似を生成する。例えば、方法400は、第1の推定値
【0080】
【0081】
【数38】
の局所的多重線形近似モデリングを実行することによって、第1の推定値
【0082】
【数39】
をさらに精緻化することができる。この多重線形近似モデルは、以下のように表すことができる線形方程式系をもたらす。
【0083】
【0084】
【0085】
【数42】
の各材料に1つずつ、多重線形基底ベクトルとして積み重ねられた既知の経路長(すなわち、
【0086】
【0087】
【0088】
【数45】
の集合について上記線形系を解くことによって得られる線形モデルの係数を含む。以下の段落では、ベクトルm
iおよびp
iは、ここで、探索ステップによって定義された動作点の周りの線形化を表すことに留意されたい。係数行列を決定した後に、方法400は、次に、以下のように、測定されたp値のベクトル
【0089】
【数46】
に対して同様の線形系を設定することによって、経路長の第1の推定値に基づいて順モデルの線形近似を生成する。
【0090】
【数47】
続いて420で、方法400は、線形近似に基づいて線形方程式系を解き、経路長の予備推定値を得る。例えば、経路長の予備推定値
【0091】
【数48】
について上記で確立された線形系を解くために、方法400は、以下を計算する。
【0092】
【0093】
【0094】
【数51】
に比例して、測定されたX線強度がより高いエネルギービンに比較的良好な重み付けを与える。
【0095】
経路長の第1の推定値に基づいて構築された順モデルの局所的線形モデルの例示的な例は、
図6に関して本明細書でさらに説明される。
【0096】
425で、方法400は、経路長の予備推定値を出力する。例えば、方法400は、経路長の予備推定値をメモリに出力することができ、その結果、方法300は、上述したように、予備推定値を初期推定値として各材料の経路長の最終推定値を反復的に計算することができる。その後、方法400は最初に戻る。
【0097】
図5は、一実施形態による複数の材料の経路長を最初に推定するための例示的な多次元表面を示す一組のグラフ500を示す。一組のグラフ500は、複数のエネルギービン、具体的には図示する例ではK=8個のスペクトルエネルギービンの各エネルギービンについてのグラフを含み、第1のエネルギービンについての第1のグラフ510、第2のエネルギービンについての第2のグラフ520、第3のエネルギービンについての第3のグラフ530、第4のエネルギービンについての第4のグラフ540、第5のエネルギービンについての第5のグラフ550、第6のエネルギービンについての第6のグラフ560、第7のエネルギービンについての第7のグラフ570、および第8のエネルギービンについての第8のグラフ580を含む。一組のグラフ500の各グラフは、材料経路長(例えば、
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
例えば、第1のグラフ510は、材料経路長を光子計数CT撮像システムの第1のエネルギービン(例えば、k=1である)の対数正規化較正データPij1にマッピングする順モデルの第1の表面511を示す。具体的には、第1の表面511は、水(W)およびヨウ素(I)の二つの材料の材料経路長を較正データにマッピングする。第1の表面511を含む各表面上の黒いドットは、測定値513(例えば、
【0102】
【0103】
【数56】
に対応する。[W,I]平面上のドット516および517は、[W,I]経路長の可能性のある推定値
【0104】
【数57】
を表し、これは、例えば、S
lookup基準を使用して、プロット510、520、530、540、550、560、570、および580から一緒に導出され、そこから上記の測定値
【0105】
【数58】
(すなわち、図示する例におけるp値の8×1ベクトル)に対応するX線経路に沿った材料の[W,I]経路長の第1の推定値515(例えば、
【0106】
【数59】
)が上述したように導出される。ドット519は、グラウンドトゥルースまたは材料の実際の経路長を示す。
【0107】
予備推定値515は、[W,I]平面内にあり、測定値
【0108】
【数60】
に対応する推定された水およびヨウ素経路長を表す。したがって、予備推定値515は、例示目的のために、すべてのプロット520、530、540、550、560、570、および580で複製される。3つ以上の材料の順モデルの次元を2次元表現で示すことは困難であるため、説明を容易にするために、水およびヨウ素の2つの材料が示されていることを理解されたい。それにもかかわらず、図示した方法は、2つ以上の材料に適用可能である。
【0109】
図5に示す順モデルの表面から得られた第1の推定値を改善するために、表面の局所的な結合線形モデルを構築することができる。例示的かつ非限定的な例として、
図6は、
図5の一組のグラフ500に示す複数の材料の経路長の初期推定値を精緻化するための例示的な線形モデルを示す一組のグラフ600を示す。
【0110】
一組のグラフ600は、第1のエネルギービンについての第1のグラフ610、第2のエネルギービンについての第2のグラフ620、第3のエネルギービンについての第3のグラフ630、第4のエネルギービンについての第4のグラフ640、第5のエネルギービンについての第5のグラフ650、第6のエネルギービンについての第6のグラフ660、第7のエネルギービンについての第7のグラフ670、および第8のエネルギービンについての第8のグラフ680を含む。一組のグラフ600の各グラフは、第1の表面511を含む一組のグラフ500に示す順モデル
【0111】
【0112】
図5に示すように得られた各エネルギービンの各推定値に基づいて、各表面の局所的な結合線形モデルが構築され、第1の推定値よりも改善された推定値を得るために解くことができる線形方程式系が得られる。例えば、第1の推定値515に基づいて、第1の表面511の線形モデル613は、上述したように線形モデル613を構築するために使用される[W,I]平面の領域611に対応するように構築される。線形モデル613は、620、630、640、650、660、670、および680の線形モデルと共に、第1の推定値515に対する経路長のプロット610(例えば、
【0113】
【数62】
)に示すより良好な予備推定値615を見つけるために解くことができる結合線形方程式系をもたらす。予備推定値615は、[W,I]平面内にあり、推定された水およびヨウ素の経路長を表すことに留意されたい。したがって、予備推定値615は、例示目的のために、すべてのプロット620、630、640、650、660、670、および680で複製される。特に、予備推定値615は、第1の推定値515よりもグラウンドトゥルース519に近い。
【0114】
あるいは、第1の推定値(例えば、
【0115】
【0116】
【数64】
)の両方は、それぞれ強度領域較正および測定データ
【0117】
【0118】
【数66】
を使用するために上記の方法400を適切に変更することにより既知の材料経路長を既知のX線強度値
【0119】
【0120】
【数68】
を使用することによって、得ることができる。強度領域での作業は、特に
【0121】
【数69】
が不十分な信号対雑音比を有する場合、または
【0122】
【0123】
このようにして得られた予備推定値は、経路長推定値をさらに改善するために反復オプティマイザを(例えば、
図3に関して上述したように)初期化するために使用される。いくつかの例では、このようにして得られた経路長の予備推定値はグラウンドトゥルースに実質的に近いため、経路長の予備推定値は、材料基底画像を再構築するために直接使用され得る。すなわち、いくつかの例では、予備推定値で初期化された経路長推定値の反復最適化は、多重エネルギー材料分解から省略されてもよい。さらに、反復最適化が実行される例では、反復方法は、より少ない反復でより高い精度で経路長の最終推定値に収束する。第1の推定値を計算するために逆関数探索を実行し、第1の推定値に基づいて順モデルの線形近似を生成するステップは計算負荷ではないので、複数のエネルギーに対する材料分解の全体的な計算複雑度が低減される。さらに、本明細書で提供されるシステムおよび方法によれば、撮像システムの物理または複数のエネルギーおよび複数の材料のX線スペクトルをシミュレートまたはモデル化する必要なしに、正確な材料分解を実行することができる。
【0124】
本明細書で提供される多重エネルギー材料分解のための技術の有効性を示すために、
図7は、一実施形態による材料の推定サイノグラムにおける例示的なプロファイル705および710ならびに対応するグラウンドトゥルースプロファイル715を示すグラフ700を示す。特に、グラフ700は、予備推定値(例えば、上記の方法400に従って計算される)に対応する推定サイノグラムにおける例示的なプロファイル705と、最適化された推定値(例えば、上記のように315で反復的に計算される)に対応する推定サイノグラムにおける例示的なプロファイル710と、を示す。
【0125】
図示するように、推定サイノグラム内の例示的なプロファイル705、710、および715は、
図7では区別できないほど十分に類似している。推定サイノグラムにおける例示的なプロファイル705、710、715の間の差を示すために、
図8は、グラフ700の領域725の拡大図を示すグラフ800を示す。この図では、最終的な最適化されたサイノグラム推定値における例示的なプロファイル710からの推定サイノグラムにおける例示的なプロファイル705によって示される予備推定値の偏差がより視認可能である。しかしながら、推定サイノグラム内の例示的なプロファイル710によって示される最終推定値は、グラウンドトゥルースサイノグラム内の対応するプロファイル715と依然として実質的に区別できない。
【0126】
グラウンドトゥルースサイノグラム内の対応するプロファイル715からの推定サイノグラム内の例示的なプロファイル705および710の間の差を定量化するために、
図9は、グラウンドトゥルースサイノグラム内の対応するプロファイル715からの推定サイノグラム内の例示的なプロファイル705および710の差を示すグラフ900を示す。特に、グラフ900は、グラウンドトゥルースサイノグラム内の対応するプロファイル715からの予備推定サイノグラム内の例示的なプロファイル705の差905、ならびにグラウンドトゥルースサイノグラム内の対応するプロファイル715からの最終推定サイノグラム内の例示的なプロファイル710の差910を示すプロットを示す。図示するように、予備推定値の誤差または差905は、最終推定値の誤差または差910よりも大きい。
【0127】
差910は、グラウンドトゥルースと比較して0.01g/cm2未満であり、これは水密度の最大積分(この例では40g/cm2)に対して0.025%の誤差に相当し、一方、差905はグラウンドトゥルースと比較して0.16g/cm2未満であり、これは水密度の最大積分に対して0.4%の誤差に相当する。したがって、予備推定値は比較的効果的であるが、材料ベースの画像が予備推定値から直接再構築される場合には、差905から何らかの画像アーチファクトが生じる可能性があるが、最適化された最終推定値を使用してそのような画像アーチファクトを効果的に排除することができる。さらに、予備推定値はグラウンドトゥルースに実質的に近いので、経路長推定値を反復的に計算するための初期推定値として予備推定値を使用することは、所定の初期推定値またはモデルベースの手法から導出された初期推定値を使用することよりも大幅に改善する。
【0128】
上述した方法は、多材料経路長を直接推定するが、多材料経路長の代わりに複数の単色エネルギー(keV)で単色サイノグラムを推定するように上記の方法を適合させることが可能である。例えば、上述した方法は、変数の単純な置換によって単色サイノグラムを推定するように適合させることができる。例示的な例として、
図10は、一実施形態による単色サイノグラムを推定するための例示的な方法1000を示す高レベルフローチャートを示す。特に、方法1000は、ノイズ共分散を適応的に低減するために、較正データに基づいて複数のエネルギーで単色サイノグラムを推定することに関する。方法1000は、
図1および
図2のシステムおよび構成要素に関して説明されているが、方法1000は、本開示の範囲から逸脱することなく、他のシステムおよび構成要素で実装することができることを認識されたい。方法1000は、例えば、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230の非一時的メモリ内の実行可能命令として実施することができ、コンピューティングデバイス216および/または画像再構築器230のプロセッサによって実行されて、本明細書に記載の動作を実行することができる。
【0129】
方法1000は、1005で開始する。1005で、方法1000は、投影データを取得するために対象物のスキャンを実行する。スキャンは、対象物の二重エネルギーCTスキャンまたは多重エネルギーCTスキャンを含む。その目的のために、方法1000は、例えば、X線源104を駆動して2つ以上のエネルギーレベルでX線を放射するようにX線コントローラ210を制御する一方で、ガントリモータコントローラ212およびテーブルモータコントローラ226を制御してガントリ102およびテーブル114の位置をそれぞれ調整し、それにより、X線を生成しながら、スキャンされる対象物204に対するX線源104の位置が調整される。方法1000は、例えばDAS214を介して、検出器アレイ108の検出器素子202などの光子計数検出器を含むエネルギー弁別検出器によって測定された投影データをさらに取得する。投影データは、例えば、異なるエネルギーの光子の測定値が所定のエネルギービンに分類される、多重エネルギー光子計数測定値を含む。
【0130】
1010で、方法1000は、投影データおよび較正データに基づいて複数のkeVにおける単色サイノグラムを推定する。例えば、単色減衰の線積分のベクトルμが以下のように表される場合には、
μ=[μkeV1,...,μkeVN]
較正データ内の変数の変化を適用することができる。例えば、較正データの順モデルfcalは、以下のように表すことができる。
【0131】
fcal(μ)=fcal(Q×m)
ここで、μ=Q×mは、材料経路長mから単色サイノグラムへの変換を表す。したがって、方法300および400に関して順モデルfcal(m)が上記で使用される場合はいつでも、引数は、fcal(Q-1×μ)のように等価的に置換され得る。この場合の未知のものは、単色サイノグラムのベクトルμである。例えば、反復最適化は、単色サイノグラムの最終推定ベクトルμfinalがμ∈Ωμを条件として次式であるように再表現されてもよい。
【0132】
【数71】
これは
図3に関して上述したように解くことができる。単色サイノグラムの最終推定ベクトルμ
finalが取得されると、材料経路長m
finalの最終推定値は、以下を計算することによって取得することができる。
【0133】
mfinal=Q-1×μfinal
あるいは、材料経路長mfinalの最終推定値は、m∈Ωmを条件として、以下のより単純な最適化によって得ることができる。
【0134】
【数72】
ここで、W
μは、統計的利益のために適切にμの異なる成分を重み付けするμに依存する行列であり、prior(m)は、材料経路長mに関する事前情報を課す関数を含む。材料分解プロセスは、上述のようにμ
finalを計算することによって既に達成されているため、m
finalの上記式は画像領域で実装されてもよく、したがって、単色サイノグラムの最終推定ベクトルμ
finalのビーム硬化誤差が潜在的に除去されることを理解されたい。例えば、方法1000が画像空間におけるm
finalについて解く場合、関数prior(m)は、様々な画像処理、機械学習、および深層学習ベースのペナルティ関数を含むことができる。
【0135】
1015で、方法1000は、推定された単色サイノグラムから単色画像を再構築する。例えば、方法1000は、複数のkeVでそれぞれの単色画像を生成するために、単色サイノグラムの最終推定ベクトルμfinalを用いて画像再構築を実行する。次に、1020で、方法1000は、単色画像を出力する。例えば、方法300は、単色画像を表示装置232などの表示装置に出力することができる。それに加えてまたはその代わりに、方法300は、材料密度画像を、記憶のための大容量記憶装置218および/または遠隔レビューのためのPACS224に出力することができる。
【0136】
さらに、いくつかの例では、1025で、方法1000は、任意選択で単色画像を材料密度画像に変換する。例えば、方法1000は、画像領域における直接線形変換を介して単色画像を材料密度画像に変換することができる。そのような例では、1030で、方法1000は、任意選択で、材料密度画像を出力することができる。例えば、方法1000は、材料密度画像を、表示装置232、および/または格納用の大容量記憶装置218、および/または遠隔レビュー用のPACS224などの表示装置に出力することができる。したがって、材料密度画像を取得し、材料密度画像から単色画像を生成するのではなく、本明細書で提供されるシステムおよび方法は、投影データおよび較正データから単色画像を推定し、単色画像から材料密度画像を生成することを可能にする。その後、方法1000は最初に戻る。
【0137】
本開示の技術的効果は、複数の材料についての材料ベースの画像の再構築を含む。本開示の別の技術的効果は、材料経路長を計算するための計算複雑度の低減を含む。本開示の別の技術的効果は、2つ以上の材料に対する材料分解の精度の向上を含む。本開示のさらに別の技術的効果は、物理モデリングを使用せずに投影データから生成された3つ以上の材料の材料ベースの画像の表示を含む。本開示の別の技術的効果は、材料ベース画像からではなく投影データから直接2つ以上の単色画像を再構築することを含む。
【0138】
一実施形態では、方法は、撮像システムを介して、複数のX線スペクトルについて投影データを取得するステップと、撮像システムの投影データおよび較正データに基づいて、複数の材料の経路長を推定するステップと、較正データから導出された線形化モデルに基づいて、推定された経路長を反復的に精緻化するステップと、反復的に精緻化された推定された経路長から複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップと、を含む。
【0139】
方法の第1の例では、撮像システムの投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定するステップは、撮像システムの物理をモデル化することなく、投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定するステップを含み、撮像システムの物理は、複数のX線スペクトルおよび撮像システムの検出器のスペクトル応答を含む。任意選択で第1の例を含む方法の第2の例では、撮像システムの投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定するステップは、投影データに対応する複数の材料の経路長の第1の推定値を生成するために、較正データへの逆関数探索を実行するステップを含む。任意選択で第1および第2の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第3の例では、撮像システムの投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定するステップは、較正データから構築された順モデルの線形近似を生成するステップと、複数の材料の経路長の予備推定値を取得するために、線形近似に基づいて線形方程式系を解くステップと、をさらに含む。任意選択で第1から第3の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第4の例では、較正データから導出された線形化モデルに基づいて推定された経路長を反復的に精緻化するステップは、経路長の予備推定値を初期推定値として用いて複数の材料の各材料の経路長の最終推定値を反復的に計算するステップを含み、材料密度画像は、複数の材料の各材料の経路長の最終推定値から再構築される。任意選択で第1から第4の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第5の例では、投影データに対応する複数の材料の経路長の第1の推定値を生成するために較正データへの逆関数探索を実行するステップは、各サイノグラムビンについて、順モデルに入力されたときに投影データのしきい値距離内の結果をもたらす較正データ内の材料経路長の候補ベクトルを選択するステップと、各サイノグラムビンについて、候補ベクトルの加重和から経路長の第1の推定値を計算するステップと、を含む。任意選択で第1から第5の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第6の例では、本方法は、投影データの強度測定値に基づいて加重和の重みを選択するステップをさらに含み、より高い強度はより高い重みに対応する。任意選択で第1から第6の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第7の例では、順モデルの線形近似を生成するステップは、各材料の既知の経路長の行列と乗算したときに既知の投影測定値の対応する行列をもたらす係数行列を計算するステップを含み、較正データは、既知の経路長および既知の投影測定値を含む。任意選択で第1から第7の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第8の例では、複数の材料の経路長の予備推定値を取得するために線形近似に基づいて線形方程式系を解くステップは、係数行列と乗算したときに投影データの投影測定値の対応する行列をもたらす複数の材料の経路長の予備推定値の行列を計算するステップを含む。任意選択で第1から第8の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第9の例では、本方法は、投影データおよび較正データに基づいて少なくとも2つの単色サイノグラムを推定するステップと、少なくとも2つの単色サイノグラムから少なくとも2つの単色画像を再構築するステップと、をさらに含む。任意選択で第1から第9の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第10の例では、複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップは、少なくとも2つの単色サイノグラムの線形変換、および画像領域事前情報を使用する反復方式のうちの少なくとも一方を含む純粋画像領域技術を使用して、少なくとも2つの単色サイノグラムから再構築された少なくとも2つの単色画像から複数の材料密度画像を推定するステップを含む。
【0140】
別の実施形態では、方法は、撮像システムを介して、複数のX線スペクトルについて投影データを取得するステップと、複数のX線スペクトルおよび複数のX線スペクトルに対する検出器応答を含む撮像システムの物理をモデル化することなく、撮像システムの投影データおよび較正データに基づいて、複数の材料の経路長の予備推定値を計算するステップと、複数の材料の経路長の最終推定値を取得するために、複数の材料の経路長の予備推定値を反復的に更新するステップと、推定された経路長から複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築するステップと、を含む。
【0141】
方法の第1の例では、複数の材料の経路長の予備推定値を計算するステップは、較正データへの逆関数探索に基づいて経路長の第1の推定値を計算するステップと、複数の材料の経路長の予備推定値の線形方程式系を解くステップと、を含み、線形方程式系は、較正データの順モデルの線形近似に基づいて構築される。任意選択で第1の例を含む方法の第2の例では、複数の材料の経路長の最終推定値を取得するために、複数の材料の経路長の予備推定値を反復的に更新するステップは、複数の材料の経路長の最終推定値を決定するために、複数の材料の経路長の予備推定値で初期化された、投影データおよび較正データを入力として統計関数を反復的に最小化するステップを含む。任意選択で第1および第2の例のうちの1つまたは複数を含む方法の第3の例では、複数の材料は少なくとも3つの材料を含む。
【0142】
さらに別の実施形態では、システムは、対象物に向かってX線ビームを生成するように構成されたX線源と、対象物によって減衰されたX線ビームを検出するように構成された複数の検出器素子を含む検出器アレイと、X線源および検出器アレイに通信可能に結合され、非一時的なメモリ内に命令を有するように構成されたコンピューティングデバイスと、を含み、命令は、実行されるとコンピューティングデバイスに、異なるエネルギーレベルで複数のX線ビームを用いて対象物をスキャンして投影データを取得するようにX線源および検出器アレイを制御させ、X線源および検出器アレイの投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定させ、較正データから導出された線形化モデルに基づいて、推定された経路長を反復的に精緻化させ、反復的に精緻化された推定された経路長から複数の材料の各材料について材料密度画像を再構築させる。
【0143】
システムの第1の例では、コンピューティングデバイスは、非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、命令は、実行されると、コンピューティングデバイスに、X線源および検出器アレイの物理をモデル化することなく、投影データおよび較正データに基づいて複数の材料の経路長を推定させる。任意選択で第1の例を含むシステムの第2の例では、コンピューティングデバイスは、非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、命令は、実行されると、コンピューティングデバイスに、投影データに対応する複数の材料の経路長の第1の推定値を生成するために較正データへの逆関数探索を実行させ、較正データから構築された順モデルの線形近似を生成させ、複数の材料の経路長の予備推定値を取得するために線形近似に基づいて線形方程式系を解かせる。任意選択で第1および第2の例のうちの1つまたは複数を含むシステムの第3の例では、コンピューティングデバイスは、非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、命令は、実行されると、コンピューティングデバイスに、初期推定値として経路長の予備推定値を用いて複数の材料の各材料の経路長の最終推定値を反復的に計算させ、材料密度画像を再構築するための推定経路長は経路長の最終推定値を含む。任意選択で第1から第3の例のうちの1つまたは複数を含むシステムの第4の例では、コンピューティングデバイスは、非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、命令は、実行されると、コンピューティングデバイスに、投影データおよび較正データに基づいて少なくとも2つの単色サイノグラムを推定させ、少なくとも2つの単色サイノグラムから少なくとも2つの単色画像を再構築させる。任意選択で第1から第4の例の1つまたは複数を含むシステムの第5の例では、システムは、コンピューティングデバイスに通信可能に結合された表示装置をさらに含み、コンピューティングデバイスは、実行されると、コンピューティングデバイスに、表示のために材料密度画像を表示装置に出力させる非一時的メモリ内の命令を有するようにさらに構成される。任意選択で第1から第5の例のうちの1つまたは複数を含むシステムの第6の例では、コンピューティングデバイスは、非一時的メモリ内に命令を有するようにさらに構成され、命令は、実行されると、コンピューティングデバイスに、少なくとも2つの単色サイノグラムの線形変換、および画像領域事前情報を使用する反復方式のうちの少なくとも一方を含む純粋画像領域技術を使用して、少なくとも2つの単色サイノグラムから再構築された少なくとも2つの単色画像から複数の材料密度画像を推定させる。
【0144】
本明細書で使用する場合、単数形で列挙され、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語に続けられる要素またはステップは、除外することが明示的に述べられない限り、複数の前記要素またはステップを除外しないと理解されたい。さらに、本発明の「一実施形態」への言及は、この実施形態で言及される特徴をやはり含むさらなる実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図していない。さらに、明示的に反対の記載がない限り、特定の性質を有する要素または複数の要素を「備える(comprising)」、「含む(including)」、または「有する(having)」実施形態は、その性質を有さない追加のそのような要素を含むことができる。「含む(including)」および「ここで(in which)」という用語は、それぞれの用語「備える(comprising)」および「ここで(wherein)」の平易な言葉での同等物として使用される。さらに、「第1の」、「第2の」、および「第3の」などの用語は、単にラベルとして使用され、それらの物体に数値的要件または特定の位置的順序を課すことを意図しない。
【0145】
本明細書は、最良の態様を含めて本発明を開示すると共に、いかなる当業者も、任意の装置またはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実施を含め、本発明を実践することを可能にするために実施例を使用する。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義されると共に、当業者に想起される他の実施例を含んでもよい。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言から実質的には相違しない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0146】
100 CTシステム
102 ガントリ
104 X線源
106 X線放射ビーム
108 検出器アレイ
110 画像プロセッサユニット
112 対象物
114 テーブル
200 撮像システム
202 検出器素子
204 対象物
206 回転中心
208 制御機構
210 X線コントローラ
212 ガントリモータコントローラ
214 データ収集システム(DAS)
216 コンピューティングデバイス
218 大容量記憶装置
220 オペレータコンソール
224 画像保管通信システム(PACS)
226 テーブルモータコントローラ
230 画像再構築器
232 表示装置/ディスプレイ
300 方法
400 方法
500 一組のグラフ
510 第1のグラフ/プロット
511 第1の表面
513 測定値
515 第1の推定値
516 ドット
517 ドット
519 ドット/グラウンドトゥルース
520 第2のグラフ/プロット
530 第3のグラフ/プロット
540 第4のグラフ/プロット
550 第5のグラフ/プロット
560 第6のグラフ/プロット
570 第7のグラフ/プロット
580 第8のグラフ/プロット
600 一組のグラフ
610 第1のグラフ/プロット
611 領域
613 線形モデル
615 予備推定値
620 第2のグラフ/プロット
630 第3のグラフ/プロット
640 第4のグラフ/プロット
650 第5のグラフ/プロット
660 第6のグラフ/プロット
670 第7のグラフ/プロット
680 第8のグラフ/プロット
700 グラフ
705 プロファイル
710 プロファイル
715 プロファイル
725 領域
800 グラフ
900 グラフ
905 差
910 差
1000 方法