(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】薄厚熱強化及び化学強化ガラス系物品
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20230213BHJP
C03B 27/04 20060101ALI20230213BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230213BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03B27/04
G09F9/00 302
G09F9/00 313
H05K5/02 J
(21)【出願番号】P 2021124270
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2018554656の分割
【原出願日】2017-01-11
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2016-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フィリップ フィンケルデー
(72)【発明者】
【氏名】リンダ ガスキル
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジョセフ レッジ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード オール マシュメイヤー
(72)【発明者】
【氏名】シャーリーン マリー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン リー ワッソン
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177253(JP,A)
【文献】米国特許第03287200(US,A)
【文献】国際公開第2013/001841(WO,A1)
【文献】特開2001-348245(JP,A)
【文献】特表2014-523389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0220761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03B 27/00 -27/04
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する、金属酸化物の濃度を有する第1の圧縮応力(CS)領域と、
前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、前記第1の表面から測定したとき、0.17・t以上の圧縮深さ(DOC)まで延びる領域を有し、
℃単位の軟化温度T
soft、℃単位のアニーリング温度T
anneal、及びTfsで示される
、ガラスシートの前記第1の表面で測定される表面仮想温度であって、℃単位及び(Tfs-T
anneal)/
(T
soft-T
anneal)で与えられる無次元の表面仮想温度パラメータθ
Sで表された場合の仮想温度を有するガラスを含み、前記パラメータθ
Sが0.20~0.9であり、
前記第1の表面が、10×10μmの領域にわたり、0.2~1.5nmのRa粗さを有する、物品。
【請求項2】
前記金属酸化物が、Na
2O、K
2O、Rb
2O、及びCs
2Oのいずれか1種を含む、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項3】
前記金属酸化物がK
2Oを含む、請求項2に記載のガラス系物品。
【請求項4】
前記金属酸化物がNa
2Oを含む、請求項2に記載のガラス系物品。
【請求項5】
中央張力(CT)領域を更に有し、前記第2のCS領域と前記CT領域の少なくとも一部が、同じガラス組成を有する、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項6】
前記金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、0・tを超え、0.17・t未満の範囲の深さまで、前記厚さの前記一部に沿って変化する、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項7】
前記金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、0.01・tを超え、0.1・tの範囲の深さまで、前記厚さの前記一部に沿って変化する、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項8】
前記厚さtが1.2mm未満である、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項9】
400MPa以上の表面CSを更に有する、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項10】
8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項11】
120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項12】
前記第1の表面で測定した前記表面仮想温度が、前記ガラスの転移温度より少なくとも50℃高い、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項13】
DOLにおいて、150MPa以上のCS値を更に有する、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項14】
ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する第1の金属酸化物の濃度、及び第2の金属酸化物を含む第1の圧縮応力(CS)領域と、
前記第1のCS領域の前記第2の金属酸化物を含み、前記第1の金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、前記第1の表面から測定したとき、0.17・t以上の圧縮深さ(DOC)まで延びる第2のCS領域を有し、
℃単位の軟化温度T
soft、℃単位のアニーリング温度T
anneal、及びTfsで示される
、ガラスシートの前記第1の表面で測定される表面仮想温度であって、℃単位及び(Tfs-T
anneal)/
(T
soft-T
anneal)で与えられる無次元の表面仮想温度パラメータθ
Sで表された場合の仮想温度を有するガラスを含み、前記パラメータθ
Sが0.20~0.9であり、
前記第1の表面が、10×10μmの領域にわたり、0.2~1.5nmのRa粗さを有する、物品。
【請求項15】
前記第1の金属酸化物が、第1の直径を有する第1の金属イオンを含み、前記第2の金属酸化物が、第2の直径を有する第2の金属イオンを含み、前記第2の直径が、前記第1の直径より小さい、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項16】
前記第1の金属酸化物がK
2Oを含み、前記第2の金属酸化物がNa
2Oを含む、請求項15に記載のガラス系物品。
【請求項17】
中央張力(CT)領域を更に有し、前記第2のCS領域と前記CT領域の少なくとも一部が同じガラス組成を有する、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項18】
前記第1の金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、0・tを超え、0.17・t未満の範囲の深さまで、前記厚さの一部に沿って変化する、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項19】
前記第1の金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、0.01・tを超え、0.1・tの範囲の深さまで、前記厚さの一部に沿って変化する、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項20】
前記厚さtが2mm未満である、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項21】
600MPa以上の表面CSを更に有する、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項22】
8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項23】
120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項24】
前記第1の表面で測定した前記表面仮想温度が、前記ガラスの転移温度より少なくとも50℃高い、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項25】
DOLにおいて、150MPa以上のCS値を更に有する、請求項14に記載のガラス系物品。
【請求項26】
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に、前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面又は該前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に設けられるように、前記ハウジングの前記前面又はその上方に設けられたカバー物品であって、前記カバ
ー物品が、熱強化及び化学強化され、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びるCS領域を有する
前記カバー物品を備え、
℃単位の軟化温度T
soft、℃単位のアニーリング温度T
anneal、及びTfsで示される
、ガラスシートの前記第1の表面で測定される表面仮想温度であって、℃単位及び(Tfs-T
anneal)/
(T
soft-T
anneal)で与えられる無次元の表面仮想温度パラメータθ
Sで表された場合の仮想温度を有するガラスを含み、前記パラメータθ
Sが0.20~0.9であり、
前記第1の表面が、10×10μmの領域にわたり、0.2~1.5nmのRa粗さを有し、
携帯電話、ポータブルメディアプレイヤー、ノート型コンピュータ、又はタブレットコンピュータである、電子製品。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2016年3月4日出願の米国仮特許出願第62/303608号、2016年1月29日出願の米国仮特許出願第62/288827号の優先権の利益を主張して2017年1月11日に出願された国際出願の日本国へ国内移行された特願2018-554656を親出願とする分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は、向上した薄厚の熱強化及び化学強化ガラス物品、及びガラス基体を強化する向上した方法に関し、より具体的には、深い圧縮深さと高い表面圧縮応力とを同時に示す薄厚ガラス物品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
熱強化ガラス物品は、ガラス基体をガラスの転移温度より高い温度に加熱し、ガラスの厚さによって絶縁され、かなり低い熱伝導率で基体内部領域がより遅い速度で冷却される間、基体の表面を急速に冷却する(「焼き入れする」)ことによって強化される。この冷却の差異によって、熱強化ガラス物品の表面領域に、その中央領域の残留引張応力に平衡する残留圧縮応力(CS)が生じる。
【0004】
熱強化は、イオン拡散等のプロセスによって、表面近傍領域のガラスの化学組成を変えることによって、表面圧縮応力を発生させる化学強化プロセスと区別される。一部のイオン拡散ベースのプロセスにおいて、表面近傍のより小さいイオンをより大きいイオンに交換して、表面上又は表面近傍にCS(負の引張応力とも称する)を与えることによって、得られたガラス物品の外側部分を強化することができる。
【0005】
熱強化及び化学強化プロセスは、2種類のガラスを組み合わせることによって、ガラス物品の外側部分が強化又は改質される、機械的ガラス強化プロセスと区別される。かかるプロセスにおいて、異なる熱膨張率を有するガラス組成の層が、熱いうちに、互いに結合又はラミネートされる。例えば、より低い熱膨張率(CTE)を有する溶融ガラス層間に、より高いCTEを有する溶融ガラスを挟むことによって、ガラスが冷えると、ガラス内部の正の張力が、ガラスの外側の層を圧縮し、ここでも表面にCSを形成して正の引張応力のバランスをとる。
【0006】
強化ガラス物品は、強化されていないガラス物品と比較して利点を有している。強化ガラス物品の表面圧縮応力は、非強化ガラスよりも大きな破砕耐性をもたらす。強度の増加は、概して表面の圧縮量に比例する。ガラス物品が、その厚さに対し強化が十分なレベルであれば、仮にシートが破砕した場合、シートが鋭いエッジを有する大きい又は細長い断片ではなく、鈍いエッジを有する小さい断片に分割される。確立された様々な標準に定義されているように、ガラスが十分に小さい破片又は「ダイス」に砕けるガラスは、安全なガラスとして知られており、しばしば「完全強化」ガラス、又ときには単に「強化」ガラスと呼ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
少なくとも熱強化ガラス物品において、強化の度合いが、ガラスシートの表面と中央との間の温度差に依存するため、所与の応力を得るためには、ガラスが薄ければ薄い程、より速い冷却速度が必要である。また、薄いガラスは、概して、破砕時において、小粒子にダイシングするためには、表面CS及び中央引張応力又は中央張力(CT)のより高い最終値を必要とする。従って、公知の熱強化プロセスを単独又は他の強化プロセスと組み合わせて使用して、薄いガラス物品(すなわち、約3mm以下の厚さを有する物品)において、所望のダイシング挙動を達成することは、不可能ではないにしても非常に困難であった。更に、かかる薄いガラス物品は、しばしば傷や亀裂核の形成及び/又は成長を防止する高い表面圧縮応力を示さない。従って、薄いガラス物品が、深い圧縮深さを示す一方、高い表面圧縮応力も示す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、熱強化及び化学強化ガラス系物品に関連している。本開示において、ガラス系基体は、概して強化されておらず、ガラス系物品は、概して(例えば、熱強化及び/又は化学強化によって)強化されたガラス系基体を意味する。
【0009】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、第1の表面及び第1の表面に対向し、厚さ(t)を画成する第2の表面を有している。第1及び第2の対向表面は、物品の対向主面を含むことができる。一部の実施形態において、ガラス系物品の厚さtは約2mm未満又は約1.2mm未満である。一部の実施例において、ガラス系物品は、ミリメートルで示される長さl、及びミリメートルで示される幅wを有し、厚さtは1未満かつw未満であり、l及びwは、各々少なくとも10mmである。一部の実施例において、l及びwのいずれか一方又は両方が、少なくとも40mmである。1つ以上の実施形態によれば、比l/t及び比w/tの各々が、10/1以上である。
【0010】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、非ゼロかつ厚さの一部に沿って変化する金属酸化物濃度を有する第1のCS領域、及び第2のCS領域を含んでいる。1つ以上の実施形態において、第1のCS領域において濃度が変化する金属酸化物が、指定された厚さの範囲に沿って応力を発生させる。一部の実施形態において、この金属酸化物は、ガラス系物品のすべての金属酸化物のうちの最大イオン径を有することができる。換言すれば、変化する濃度を有する金属酸化物は、ガラス系物品にイオン交換される金属酸化物であってよい。1つ以上の実施形態において、第2のCS領域は、一定の金属酸化物濃度領域を含むことができる、換言すれば、非ゼロかつ第1のCS領域に沿って変化する金属酸化物を実質的に含んでいない。本明細書において、「非ゼロかつ第1のCS領域に沿って変化する金属酸化物を実質的に含んでいない」とは、第2のCS領域に存在する金属酸化物が、約0.1モル%未満であることを意味する。一部の実施形態において、第2のCSの組成は、第2のCS領域の厚さ全体にわたって実質的に一定である。1つ以上の実施形態において、第2のCS領域は、第1のCS領域から圧縮深さ(DOC)まで延び、DOCは約0.17・t以上である。一部の実施形態において、金属酸化物の濃度は非ゼロかつ第1の表面から厚さの部分に沿って、約0・tより大きく約0.17・t未満、又は0.01・tより大きく約0.1・tの範囲の深さまで変化する。
【0011】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、第1の表面からDOCに延びる熱強化領域、及び第1の表面から層深さ(DOL)まで延びる化学強化領域を含んでいる。本明細書において、「熱強化領域」とは、主として熱強化プロセスに起因する圧縮応力を示す領域を含んでいる。かかる熱強化領域は、化学強化に起因する圧縮応力も示すことができる(例えば、ガラス系物品のより深い領域へ侵入する金属イオンは、ある程度の応力に寄与する可能性があるが、かかる応力は、領域の全圧縮応力に対する主要な寄与ではない)。本明細書において、「化学強化領域」は少なくとも部分的に化学強化プロセスによって発生する圧縮応力を示す領域を含んでいる。かかる化学強化領域は、熱強化プロセスに起因する圧縮応力もある程度示すことができる。一部の実施形態のDOCはDOLより大きく、DOCは約0.17・t以上である。
【0012】
本明細書において、DOCは、ガラス系物品の応力が、圧縮応力から引張応力に変化する深さを意味する。DOLは、化学強化の結果生じる応力を意味する。DOCにおいて、応力が圧縮応力から引張応力に交差するため応力値ゼロを示す。
【0013】
当技術分野で一般に使用されている慣習によれば、圧縮は負(<0)の応力として示され、張力は正(>0)の応力として示されるが、本明細書の説明を通し、CSは正又は絶対値、即ちCS=|CS|として示し、CTも絶対値、即ちCT=|CT|として示す。
【0014】
一部の実施形態において、ガラス系物品の表面CSは、約400MPa以上、又は約600MPa以上とすることができる。1つ以上の実施形態において、表面CSは、約1GPa以上とすることができる。一部の実施形態において、ガラス系物品は、約75MPa以上、更には80MPa以上の最大CTを示す。1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は約6J/m2以上又は約10J/m2以上の蓄積引張エネルギーを含んでいる。
【0015】
1つ以上の実施形態のガラス系物品は、DOLに等しい深さにおいて、150MPa以上のCS値を示すことができる。1つ以上の特定の実施形態において、CSが約150PMa以上であるDOLは、約10マイクロメートル以上(又は、約0.01・t以上)とすることができる。
【0016】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、第1の表面であって、第1の表面の任意の50mm以下の輪郭に沿って、100μmまでの芯振れ精度(TIR)で平坦である表面を有している。1つ以上の実施形態において、第1の表面は、10×10μmの領域にわたり、約0.2~1.5nmのRa粗さを有している。
【0017】
一部の実施形態において、ガラス系物品は、℃単位の軟化温度Tsoft、℃単位のアニーリング温度Tanneal、及びTfsで示される、第1の表面で測定される表面仮想温度であって、℃単位及び(Tfs-Tanneal)/Tsoft-Tanneal)で与えられる無次元の表面仮想温度パラメータθSで表された場合の仮想温度を有するガラスを含み、パラメータθSは0.20~0.9である。
【0018】
一部の実施形態において、第1の表面上で測定したTfsが、ガラスのガラス転移温度より少なくとも50℃高い。1つ以上の実施形態において、第1の表面上で測定したTfsが、ガラスのガラス転移温度より少なくとも75℃高い。
【0019】
本明細書に記載のガラス系物品は、P2O5、Li2O、B2O3又はP2O5、Li2O、B2O3の様々な組み合わせを含む組成を有することができる。
【0020】
本開示の第2の態様は、ガラス系シートを強化する方法に関連している。1つ以上の実施形態において、本方法は、転移温度を有するガラスシートを、固体又は液体物質を含まない間隙を横断する伝導によって、ガラスシートからヒートシンクに熱エネルギーを移動させ、転移温度より高い温度から転移温度より低い温度に冷却して、ガラスシートを熱強化し、次いで熱強化したガラスシートを化学強化するステップを含んでいる。1つ以上の実施形態において、本方法は、間隙を横断する伝導によって、ガラスシートを離れる熱エネルギーの20%超、30%超、40%超、又は50%超が、間隙を横断してヒートシンクによって受け取られるように、ガラスシートからヒートシンクに熱エネルギーを移動させるステップを含んでいる。
【0021】
1つ以上の実施形態において、本方法は、第1の表面と第1のヒートシンクとの間隙に供給されるガスの流れ又は圧力によって、第1の表面に、ガラス系シートの少なくとも一部を少なくとも部分的に支持するステップであって、シートは、転移温度を有するガラスを含み、シートはガラスの転移温度よりも高い温度にある、ステップと、ガラス系シートを、対流よりも熱伝導によってより多く、シートの第1の表面から、ガスを介してヒートシンクへ冷却して、熱強化ガラス系シートを形成するステップと、熱強化したガラス系シートを化学強化するステップと、を含んでいる。
【0022】
1つ以上の実施形態において、熱強化ガラス系シートは、熱強化ガラス系シートのいずれの部分も除去されずに化学強化される。一部の実施例において、熱強化ガラス系シートは、熱強化ガラス系シートの厚さの3%以上が除去されずに化学強化される。ガラス系シートを冷却するステップは、約-270℃/秒以上の速度で冷却するステップを含むことができる。
【0023】
1つ以上の実施形態において、熱強化したガラス系シートを化学強化するステップが、ガラス系の層の第1の表面から約10マイクロメートル(又は約0.01・t超)まで延びる、化学強化領域を生成するステップを含んでいる。一部の実施形態において、熱強化したガラス系シートを化学強化するステップは、KNO3、NaNO3、及びLiNO3のうちの任意の1種以上を含む溶融塩浴に、熱強化したガラス系シートを浸漬するステップを含んでいる。一部の実施形態において、溶融塩浴は、KNO3とNaNO3との組み合わせを含み、約380℃~430℃の温度を有している。
【0024】
本開示の第3の態様は、消費者向け電子製品に関連している。1つ以上の実施形態において、消費者向け電子製品は前面、背面、及び側面を有するハウジング、少なくとも部分的にハウジングの内部に、又はハウジングの内部に配置された電気部品、及びハウジングの前面又は前面の上に設けられたカバー物品を含むことができる。1つ以上の実施形態において、電気部品は、少なくとも、コントローラ、メモリ、及びハウジングの前面又は前面の近傍に配置されたディスプレイを含んでいる。一部の実施形態において、カバー物品は、ディスプレイ上に配置された、本明細書に記載の熱及び化学強化したガラス系物品である。1つ以上の実施形態において、消費者向け電子製品は、携帯電話、ポータブルメディアプレイヤー、ノート型コンピュータ、又はタブレットコンピュータである。
【0025】
本開示の第4の態様は、第1のガラス系基体、第2のガラス系基体、及び第1のガラス系基体と第2のガラス系基体との間に配置された中間層を含むラミネート体に関連している。1つ以上の実施形態において、第1及び第2のガラス系基体の一方又は両方が、本明細書に記載の熱及び化学強化したガラス物品である。
【0026】
ラミネート体の1つ以上の実施形態において、第1のガラス系基体及び第2のガラス系基体の一方が冷間成形される。
【0027】
ラミネート体の1つ以上の実施形態において、第1のガラス系基体は、複雑に湾曲し、ラミネート体の第1の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び第1の表面に対向する、ラミネート体の第2の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含んでいる。1つ以上の実施形態において、ラミネート体の第2のガラス系基体は、複雑に湾曲し、ラミネート体の第3の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び第3の表面に対向する、ラミネート体の第4の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、第3及び第4の表面は、それぞれCS値を有し第4の表面のCS値が第3の表面のCS値より大きい。一部の実施形態において、ラミネート体の第4の表面は、第4の表面が平坦な状態にあるときより大きいCS値を有し、ラミネート体は肉眼で見たとき光学的歪みがない。
【0028】
1つ以上の実施形態において、ラミネート体の第1のガラス系基体又は第2のガラス系基体の一方が、約0.2mm~約0.7mmの厚さを有している。
【0029】
ラミネート体の1つ以上の実施形態において、第2のガラス系基体の周辺部分が、中間層に圧縮力を加え、第2のガラス系基体の中央部分が中間層に対し引張力を加える。1つ以上の実施形態において、第2のガラス系基体は、第1のガラス系基体に適合し、仲介中間層によって埋められる、第2のガラス系基体の凸面と第1のガラス系基体の凹面との間に実質的に均一な距離をもたらす。
【0030】
本開示の第5の態様は、開口部及び開口部に配置された(本明細書に記載の)ラミネート体を備えた車両に関連している。
【0031】
更なる特徴及び効果は、これに続く詳細な説明に述べてあり、当業者はその記述から、一部は容易に明らかであり、これに続く詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付図面を含め、本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識できるであろう。
【0032】
前述の概要説明及び以下の詳細な説明は、単なる例示であって、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概要、及び枠組みの提供を意図したものであることを理解されたい。添付図面は、本開示について更なる理解が得られることを意図して添付したもので、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものである。図面は1つ以上の実施形態を示すもので、その説明と併せ、様々な実施形態の原理及び作用の説明に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ガラス物品の厚さを関数とする、公知の完全焼き戻し処理に必要な送風機電力のグラフ。
【
図2】ガラス物品の厚さを関数とする、古い公知のプロセス又はマシンO、及びより新しい公知のプロセス又はマシンNの「完全焼き戻し」に必要な送風機電力のグラフ。
【
図3】
図2の曲線O及び曲線Nが一致するように縮尺して、
図1のグラフに重畳したグラフ。
【
図4】公知の化学強化ガラス系基体の厚さ方向の断面図。
【
図5】本開示の1つ以上の実施形態による、ガラス系物品の厚さを関数とする、応力プロファイルを示すグラフ。
【
図6】例示的な実施形態による、熱強化及び化学強化したガラス系物品の斜視図。
【
図7】例示的な実施形態による、
図6熱強化及び化学強化したガラス系物品の模式部分断面図。
【
図8】1つ以上の実施形態によって取得した、仮想温度に関する無次元の表面仮想温度パラメータθsのプロット図。
【
図9】様々な組成について提案する強化パラメータΨに対してプロットした、様々なガラス組成のシミュレーションによって計算した表面CS値のプロット図。
【
図10】熱伝達率hを関数とする、パラメータP
1のグラフ。
【
図11】熱伝達率hを関数とする、パラメータP
2のグラフ。
【
図12】本開示の1つ以上の実施形態による、厚さtを関数とする、ガラス系物品の表面CS値のグラフ。
【
図13】厚さを関数とする、熱強化後のガラス系物品の選択した例示的な実施形態のCSを示すグラフ。
【
図14A】例示的な実施形態による、ガラス系物品の斜視図。
【
図14D】本開示の一部の実施形態による、例示的なガラス系物品の断面応力プロファイルを示す図。
【
図14E】本開示の一部の実施形態による、例示的なガラス系物品の断面応力プロファイルを示す図。
【
図15】層深さを関数するとする、実施例2のDOCを示すグラフ。
【
図16】温度を関数とする、実施例5のイオン交換拡散係数を示すグラフ。
【
図17】イオン交換時間及びDOLの平方根を関数とする、実施例6のDOCを示すグラフ。
【
図18】深さを関するとする、実施例7A-3のモル%で表したNaO
2及びK
2Oの濃度を示すグラフ。
【
図19】深さを関するとする、実施例7A-4のモル%で表したNaO
2及びK
2Oの濃度を示すグラフ。
【
図20】深さを関するとする、実施例7A-5のモル%で表したNaO
2及びK
2Oの濃度を示すグラフ。
【
図21】比較例7B-1及び実施例7B-5の応力プロファイルを示すグラフ。
【
図22】比較例7B-2及び実施例7B-6の応力プロファイルを示すグラフ。
【
図23】比較例7B-3及び実施例7B-7の応力プロファイルを示すグラフ。
【
図24】比較例7B-4及び実施例7B-8の応力プロファイルを示すグラフ。
【
図25】化学強化時間を関数とする、比較例8B-1~7B4、比較例7C1~7C-4、及び実施例7B-5~7B-8のCT値を示すグラフ。
【
図26】比較例7B-1と実施例7B-5、比較例7B-2と実施例7B-6、比較例7B-3と実施例7B-7、及び比較例7B-4と実施例7B-8との間のCTの変化をプロットしたグラフ。
【
図27】化学強化時間を関数とする、実施例7B-5~7B-8の各々の表面CS及びDOLにおけるCSをプロットしたグラフ。
【
図28】
図26のCTの変化と共に、化学強化時間を関数とする、実施例7B-5~7B-8のDOLにおけるCSを示すグラフ。
【
図29】実施例7B-5~7B-8の各々のDOLの変化を示すグラフ。
【
図30】化学強化時間を関数とする、比較例7C-2~7C7、及び実施例7B-5~7B-8の表面CSを示すグラフ。
【
図31】化学強化時間を関数とする、比較例7C-2~7C-7及び実施例7B-5~7B-8のDOLをプロットしたグラフ。
【
図32】化学強化時間を関数とする、比較例7C-2~7C-7及び実施例7B-5~7B-8の、DOLに等しい深さにおけるCS(又は膝応力)をプロットしたグラフ。
【
図33】溶融塩浴のNaNO
3の濃度を関数として示す、実施例8A-2~8A-4、実施例8B-2~8B-4、及び実施例8C-2~8C-4の測定CT値、及び比較例8A-1、8B-1、及び8C-1の3つのサンプルの各々の初期CT値を示す図。
【
図34】実施例8A-2~8A-4、8B-2~8B-4、及び8C-2~8C-4のCTの絶対的変化を示すグラフ。
【
図35】比較例8A-1と実施例8A-2~8A-4、比較例8B-1と実施例8B-2~8B-4、及び比較例8C-1と実施例8C-2~8C-4とのCTの変化をパーセントで示すグラフ。
【
図36】NaNO
3の濃度を関数とする、実施例8A-2~8A-3、実施例8B-2~8B-3、及び実施例8C-2~8C-3の表面CS及びDOLに等しい深さにおけるCS(又は膝CS)を示すグラフ。
【
図37】NaNO
3の濃度を関数としてプロットした、実施例8A-2~8A-3、実施例8B-2~8B-3、及び実施例8C-2~8C-3の測定DOL値を示すグラフ。
【
図38】実施例8B-2、8B-5、8C2、及び8C5の測定CT、表面CS、DOL、及びDOLにおけるCS(又は膝応力)を(左から右に)示す棒グラフ。
【
図39】実施例8B-2、8B-5、8C-2、及び8C-5の測定DOLを示すグラフ。
【
図40】NaNO
3の濃度を関数とする、実施例8B-5~8B-8、及び実施例8C-5~8C-8のCT及び表面CSを示すグラフ。
【
図41】CTを関数する、実施例8B-5~8B-8、及び実施例8C-5~8C-8の表面CSを示すグラフ。
【
図42】深さを関数とする、実施例8C-7、及び8C-8の測定応力、及び比較例8Dの応力プロファイルを示すグラフ。
【
図43】比較例9A、9B、及び実施例9Cの落下高さ試験結果を示すグラフ。
【
図44】4点曲げ破壊応力試験時の比較例9A、9B、及び実施例9Cの破壊確率を示すグラフ。
【
図45】リングオンリング破壊応力試験時の比較例9A、9B、及び実施例9Cの破壊確率を示すグラフ。
【
図46】リングオンリングの試験設定を示す概略図。
【
図47】SiC粒子を用いて、様々な圧力で摩耗させた後の比較例9A、9B、及び実施例9Cのリングオンリング破壊強度を示すグラフ。
【
図48】比較例10A、10B、及び実施例10Cの落下高さ試験結果を示すグラフ。
【
図49】4点曲げ破壊応力試験時の比較例10A、10B、及び実施例10Cの破壊確率を示すグラフ。
【
図50】リングオンリング破壊応力試験時の比較例10A、10B、及び実施例10Cの破壊確率を示すグラフ。
【
図51】SiC粒子を用いて、様々な圧力で摩耗させた後の比較例10A、10B、及び実施例10Cの破壊確率を示すグラフ。
【
図52】同じ熱伝達率(h)に関し、様々な初期温度(T
0)に対してCTをプロットした図。
【
図53】同じ溶融浴組成を用いた、様々なイオン交換時間及び温度に対してCSをプロットした図。
【
図54】同じ溶融浴組成を用いた、様々なイオン交換時間及び温度に対してDOLをプロットした図。
【
図55A】本明細書に開示の任意の強化物品を組み込んだ、例示的な電子装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
従来の熱ガラス強化方法は、強化の度合いが焼き入れ中のガラス物品の表面と中央との間に生じる温度差に依存するため、通常、より厚いガラス物品(一般に、シート)に限定される。従来の強化方法には熱伝導率の制限があり、一般に、薄いガラス物品全体を通して、比較的均一に冷却されるため、薄いガラス物品の表面と中央との間に顕著な温度差を得ることは困難である。更に、従来の熱強化ガラス物品は、DOC又は大きいCS領域を示すが、かかる物品は、特定の用途に必要な十分に高い表面CS値を示さない。具体的には、従来の熱強化ガラス物品は、かかる物品の厚さの約21%のDOC値を達成することができるが、一般に、示される表面CS値は、約200MPa未満である。
【0035】
ガラスを熱強化する従来の工業プロセスは、放射エネルギー炉又は対流炉(あるいは両方の技術を使用する「複合モード」炉)内のガラス基体(通常はシート)を所定の温度に加熱し、次いで、一般に、大量の周囲空気をガラス表面に対し、又はガラス表面に沿って、吹き付けることによる対流を介してガス冷却(「焼き入れ」)される。このガス冷却プロセスは、主に対流であって、これにより、ガスが熱いガラス基体から熱を運び去るときの熱伝達は、拡散及び移流を介した、流体の流れ運動(集団運動)によるものである。
【0036】
従来の熱強化プロセスにおいて、特定の要因によって、ガラス基体、特に薄いガラス基体の強化の程度が制限される可能性がある。1つには、強化物品のCS量は、焼き入れ中に得られる物品の表面と中央との間の温度差の大きさに直接関連するが、焼き入れ中の温度差が大き過ぎると、焼き入れ中にガラスが破砕する可能性があるため制限が存在する。より高い初期ガラス温度から焼き入れを開始することによって、所与の冷却速度に対して破砕を低減することができる。更に、より高い初期ガラス温度から焼き入れを開始することよって、より大きい強化を得ることがでるが、焼き入れ開始時の物品の温度を高くすると、物品が柔らかくなるにつれて、望ましくない物品の変形が過度に生じ得る。
【0037】
従来の熱強化プロセスにおいて、基体の厚さによっても焼き入れ中に達成可能な温度差に著しい制限が課される。焼き入れ中の所与の冷却速度に対し、基体が薄ければ薄い程、温度差は小さくなる。これは、中央を表面から断熱するためのガラスの厚さがより少ないためである。従って、薄いガラス基体の熱強化は、一般的に、(より厚いガラス基体の熱強化と比較して)より高い冷却速度を必要とし、従って、ガラスシートの内部部分と外側部分との差温強化レベルを生成するためには、ガラス基体の外面からの迅速な熱の除去は、一般に、大きなエネルギー消費を必要とする。
【0038】
一例として、
図1は、35年前に開発された業界標準の熱強化プロセスに基づく、周囲の空気を十分に吹き飛ばして、シート状のソーダライムガラス(「SLG」)基体を「完全に強化」するのに使用される送風機が必要とする、ミリメートル単位の厚さを関数とする、電力(ガラス基体面積1平方メートル当たりのキロワット単位)を示している。使用するガラスが薄くなるにつれ、必要な電力は指数関数的に増加する。従って、厚さ約3mmのガラス基体が、長年にわたり利用可能な最も薄い完全に熱強化された市販のガラスであった。
【0039】
対流ガスを用いた従来のガラス熱強化プロセスにおいて、空気流の速度を上昇させ、空気ノズルの開口部からガラスシート表面までの距離を短くし、(冷却開示時の)ガラスの温度を上昇させ、必要に応じ、冷却空気の温度を低下させることによって、より高い冷却速度が達成される。
【0040】
より最新の例として、最先端のガラス熱強化装置を用いた、
図2(先行技術)の性能曲線が発表された。この改良された装置は、ガラスの冷却に、引き続き伝統的なエアブロー対流プロセスを用いているが、加熱中のガラスの支持に用いられるローラーを、少なくとも最終加熱ステージ中において、空気を用いてガラスを支持するシステムに置換している。ローラーの接触がないため、焼き入れ前に、ガラスをより高い温度(及びより高い柔軟性/より低い粘度)に加熱することができ、報道によれば、完全に強化された厚さ2mmのガラスの製造が可能である。
図2に示すように、報道によれば、2mm厚のシートの強化に必要とされる送風機電力は、ローラーを用いた(曲線O)と比較して、空気を用いてガラスを支持することで可能になった高い温度(曲線N)によって1200kW/m
2~400kW/m
2に減少した。
【0041】
完全に強化された2mm厚のガラスを製造することができる進歩を示しているが、
図3(先行技術)に示すように、
図2の新旧の曲線O及びNの縮尺を
図1の縮尺に合わせると、最先端の対流強化プロセスによって達成される(
図2に示す)性能は、比較的小さく、単にガラスシートの対流強化におけるこれまでのエネルギー需要の理解の漸進的な変化に過ぎない。
図3において、
図2の新旧の曲線O及びNが、
図1のグラフに一致するように縮尺され、(旧の曲線Oの先端を240kW/m
2の頂点で断ち切り、新しい曲線Nを見やくして)
図3に重畳されている。曲線Nによって代表される技術は、ガラスの厚さを3mmから2mmに減少させる、対流ガス焼き入れプロセスの性能曲線を僅かに変化させるに過ぎないことが
図3から明らかである。高い動作点(厚さ2mmのガラスに対する、送風機出力400kW/m
2)は、この方法によって、より薄いガラスを処理するためには、極端に大きい電力が依然として必要である。空気流の急激な増加、従って必要な電力は、従来の対流ガス強化方法を用いて、約2mm未満の厚さを有する完全に強化されたガラスを提供することは、工学的慣行及び経済の両面から困難であることを示唆している。加えて、必要とされる非常に高い気流によって、より薄い基体の形状が変化する可能性もある。
【0042】
現在の商用対流ガス強化に対する代替熱強化方法も同様に試みられてきたが、対流ガス強化と比較して、それぞれが特定の欠点を有している。特に、より高い冷却速度を達成する代表的な代替熱強化方法は、一般にガス接触のみではなく、ガラス表面との少なくともいくらかの液体又は固体接触を必要としている。ガラス基体とのかかる接触は、ガラスの表面品質、ガラスの平坦性、及び/又は強化プロセスの均一性に悪影響を与える可能性がある。これ等の欠陥は、特に反射光で見た場合、人間の目によって知覚され得る場合がある。以下により詳しく説明するように、少なくとも一部の実施形態において、本開示の伝導熱強化システムは、かかる接触に関連する欠陥を低減又は排除する。
【0043】
液体浴又は流動液体に浸漬する形態、あるいは噴霧の形態の液体接触強化が、対流ガス強化よりも高い冷却速度を達成するために使用されてきたが、冷却プロセス中にシート全体にわたって過度の熱変動を生じさせるという欠点を有している。液体浸漬又は液体浸漬のような噴霧若しくは液体流において、液体浴又は液体流の中で自然に生じる対流によって、小面積にわたって大きい熱変動が生じる可能性がある。より微細な噴霧において、個々の噴霧液滴及びノズルの噴霧パターン効果によっても大きな熱変動が生じる。過度の熱変動によって、熱強化中に液体の接触によるガラスの破砕が生じる傾向があり、これは冷却速度を制限することによって緩和することができるが、冷却速度を制限することで得られる強度も低下する。更に、シートの必要な取り扱い(液体浴、液体流、又は液体スプレー中にシートを配置又は保持する)によっても、シートとの物理的接触による物理的応力及び過度の熱変動が生じて強化中に破砕が生じ、冷却速度及び得られる強度が制限される傾向にある。最後に、油浸による高速冷却速度焼き入れ、各種噴霧技術等、一部の液体冷却方法は、かかる冷却の間にガラスの表面が変化する可能性があり、満足のいく仕上げを得るためには、後でシートの表面からガラス材料を除去する必要がある。
【0044】
固体接触熱強化は、高温のガラス表面をより冷たい固体表面に接触させることを含んでいる。液体接触強化と同様に、焼き入れプロセス中に、液体接触強化で見られるような過度の熱変動が容易に生じ得る。ガラス基体の表面仕上げの不完全性、焼き入れ表面の不完全性、又は基体の厚さの一貫性における不完全性により、基体の一部の領域にわたり不完全な接触がもたらされ、この不完全な接触によって、処理中にガラスが破砕する傾向にある大きい熱変動が生じ得ると共に、シートが存続しても不要な複屈折が生じる可能性もある。加えて、高温のガラスシートを固体物に接触させると、欠け、割れ目、亀裂、擦傷等の表面欠陥の形成につながる可能性がある。ガラス基体の表面全体にわたり、良好な物理的接触を達成することも、シートの寸法が増大するにつれて益々困難になる。固体表面との物理的接触は、焼き入れ中のシートに機械的応力を与え、プロセス中にシートが破砕する可能性が高まる。更に、接触開始時の極端に速い温度変化によって、シート処理中に破砕が生じる可能性があるため、薄いガラス基板の接触冷却は、商業的に実行可能ではなかった。
【0045】
化学強化は、熱強化プロセスのように、ガラス系物品の厚さには制限されないが、周知の化学強化されたガラス系物品は、熱強化ガラス系物品の応力プロファイル(主面からの深さの厚さを関数とする応力)を示さない。化学強化(例えば、イオン交換プロセス)によって生成された応力プロファイルの例を
図4に示す。
図4において、化学強化ガラス系物品200は、第1の表面201、厚さt
2、及びCS210を有している。ガラス系物品200は、第1の表面201から本明細書において定義するDOC230まで、概して減少するCSを示し、その深さにおいて応力が圧縮応力から引張応力に変化し、最大CT220に達する。
図4に示すように、かかるプロファイルは、実質的に平坦なCT領域又はCT領域の少なくとも一部に沿って、一定又はほぼ一定の引張応力を有するCT領域を示す。公知の化学強化ガラス系物品は、公知の熱強化ガラス系物品と比較して、著しく低いDOC値を示し、多くの場合、より低い最大CT値を示し得る。より深いDOC値を取得することはできるが、それは長時間のイオン交換プロセスの後でのみ可能であって、応力緩和及び表面CS値を低下させることもあり得る。
【0046】
本開示の実施形態は、従来の熱強化プロセスを使用して熱強化した厚いガラス物品に匹敵、又は更にはそれを超えるDOCを示す一方、高い表面CSを示す(例えば、約200MPa超、約300MPa超、又は約400MPa超)薄いガラス系物品を含んでいる。高い表面CS値と深いDOCとの組み合わせは、公知の熱強化方法を単独で使用、又は化学強化と組み合わせて強化したガラス物品では示されない。より具体的には、本明細書に記載の熱強化プロセスは、ガラス系物品の深い傷の浸透及び疲労(即ち、繰り返し損傷)を防止する、深い放物線応力プロファイルを示す。加えて、その後の化学強化プロセスによって、熱強化では達成することができない、大きい又は高い表面圧縮が生成される。高い表面CS値は、表面の傷の形成及び浸透、擦傷、及び恐らく亀裂の開始を防止する。正しく実施された場合、本明細書に記載の熱強化プロセスと化学強化との組合せは、エッジの傷をカバーするのに十分な深さまで大きい表面圧縮をもたらす一方、熱強化プロセスによって、圧縮がガラス系物品の厚さの20%以上に及ぶことができ、繰り返し損傷の結果として傷の成長が防止される。更に、かかるガラス系物品は、本明細書に記載のプロセス及びシステムを用いて1分未満、更には30秒未満で熱強化し、約3時間以内で化学強化することができる。
【0047】
本開示は、前述の従来のプロセスに勝り、例えば、ガラスの表面を損傷せずに、複屈折を誘発することなく、不均一な強化を伴わず、及び/又は許容できない破砕を生じさせずに、等々、従来の熱強化プロセスにおいて一般的に見られる、様々な欠陥を生させずに、商業規模で、効果的、効率的、及び均一に熱強化し、化学強化した薄いガラス基体を得ることができる。
【0048】
本明細書に記載の熱強化システム及びプロセスは、良好な物理的制御及び穏やかなガラスの取り扱いによって、非常に高い熱伝達率(cal/cm2-s-℃単位のh)を正確に利用することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載の熱強化プロセス及びシステムは、薄いガラス基体を冷却開始時のより高い相対温度で処理することを可能にする、冷却/焼き入れセクション内の小間隙ガス支持体を利用して、より高い熱強化レベルをもたらす。以下に説明するように、この冷却/焼き入れセクション内の小間隙ガス支持体は、高い空気流に基づく対流冷却を使用するのではなく、間隙を横断したヒートシンクへの伝導熱伝達を介して、非常に高い熱伝達率を達成する。この高率の伝導熱伝達は、間隙内のガス支持体上にガラス基体を支持することによって、ガラスを液体又は固体材料に接触させることなく達成される。
【0049】
1つ以上の実施形態において、得られる熱強化ガラス系物品は、これまでに知られているものより高いレベルの恒久的熱誘起応力を示す。理論に束縛されることを望むものではないが、達成されたレベルの熱誘起応力は、複数の理由によって得られると考えられる。本明細書において詳述するプロセスにおける熱伝達の高い均一性により、ガラス中の物理的かつ望ましくない熱応力を低減又は排除することによって、ガラス基体を破砕せずにより高い熱伝達率で強化することができる。更に、本方法は、より低いガラス基体粘度(焼き入れ開始時のより高い初期温度)で実施することができる一方、依然として所望のガラスの平坦性及び形状を維持することができ、冷却プロセスにおいて、はるかに大きい温度変化が得られ、達成される熱強化レベルが向上する。
【0050】
次に、熱強化したガラス系物品を溶融塩浴において化学強化して高い表面CSを生成する。理論に束縛されるものではないが、化学強化プロセスは、得られたガラス系物品に、本明細書に記載の熱強化プロセスによって生成された深いDOCを補完する「スパイク」をもたらすように、又は表面若しくはその近傍の応力プロファイルの傾斜を増加させて高い表面CSが得られるように調整することができる。
【0051】
本明細書において、化学強化の実施形態はイオン交換プロセスを含んでいる。このプロセスにおいて、ガラス系物品又は熱強化したガラス系物品の表面又は表面近傍のイオンが、同じ価数又は酸化状態を有する、より大きいイオンに置換又は交換される。これ等の実施形態において、ガラス系物品又は熱強化したガラス系物品は、アルカリアルミノシリケートガラスを含み、ガラスの表面層のイオン及びより大きいイオンは、Li+(ガラス系基体又は熱強化ガラス系物品に存在する場合)、Na+、K+、Rb+、及びCs+等の一価のアルカリ金属カチオンである。別法として、表面層の一価のカチオンは、Ag+等、アルカリ金属カチオンを除く、一価のカチオンに置換することができる。
【0052】
イオン交換プロセスは、通常、ガラス系基体又は熱強化したガラス系物品のより小さいイオンと交換すべきより大きいイオンを含む、溶融塩浴(又は2つ以上の溶融塩浴)に、ガラス系基体又は熱強化したガラス系物品を浸漬することによって実施される。水性塩浴も使用できることに留意されたい。一部の実施例において、噴霧プロセスを使用して、ガラス系基体又は熱強化したガラスに、塩浴液を適用し、その後これを加熱してイオン交換を促進することができる。浴及び/又は溶液の組成は、2種類以上のより大きいイオン(例えば、Na+及びK+)又は1種類のより大きいイオンを含むことができる。浴/溶液の組成及び温度、浸漬時間、塩浴(又は複数の塩浴)に対するガラス系物品の浸漬回数、塩溶液の適用回数、複数の塩浴又は溶液の使用、及びアニーリング、洗浄等の追加のステップを含み、これに限定されないイオン交換のパラメータは、一般に、ガラス系基体及び/又は(物品の構造及び存在する任意の結晶相を含む)物品の組成、及び強化から得られるガラ系物品の所望のDOL、DOC、CT及び/又は表面CSによって決定されることは、当業者には明らかであろう。一例として、熱強化したガラス系物品のイオン交換は、大きなアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、塩化物を含みこれに限定されない、塩を含む少なくとも1つの溶融浴に、熱強化したガラス系物品を浸漬することによって達成される。代表的な硝酸塩には、KNO3、NaNO3、及びLiNO3、並びにこれ等の組み合わせが含まれる。溶融塩浴の温度は、通常、約380℃~約450℃、浸漬時間はガラスの厚さ、浴の温度、及びガラスの拡散率に依存し、10分~5時間(約10分~約1時間)である。
【0053】
1つ以上の実施形態において、約370℃~約480℃(例えば、410℃)の温度を有する、100%のKNO3溶融塩浴に、熱強化したガラス系物品を浸漬することができる。1つ以上の実施形態において、約370℃~約480℃(例えば、410℃)の温度を有する、100%のNaNO3溶融塩浴に、熱強化したガラス系物品を浸漬することができる。一部の実施形態において、約5%~約90%のKNO3及び約10%~約95%のNaNO3の溶融混合塩浴に、熱強化したガラス系物品を浸漬することができる。一部の実施例において、溶融混合塩浴は約50%~約100%のNaNO3を含み、(存在する場合には)残りはKNO3を含んでいる。混合塩浴は、約380℃~約420℃の温度を有することができる。一部の実施形態において、Na2SO4及びNaNO3を含み、幅広い温度範囲(例えば、500℃まで)を有する混合塩浴に、熱強化したガラス系物品を浸漬することができる。1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、第1の浴に浸漬した後、第2の浴に浸漬することができる。第2の浴における浸漬は、100%のKNO3を含む溶融塩浴に、15分~8時間浸漬することを含むことができる。
【0054】
1つ以上の実施形態において、NaNO3及びKNO3(例えば、49%のNaNO3/51%のKNO3、50%のNaNO3/50%のKNO3、51%のNaNO3/49%のKNO3、95%のKNO3/5%のNaNO3、90%のKNO3/10%のNaNO3、又は80%のKNO3/20%のNaNO3)を含み、約420℃未満(例えば、約400℃又は約380℃)の温度を有する溶融混合塩浴に、熱強化したガラス系物品を約5時間未満、更には約4時間以下浸漬することができる。
【0055】
一部の実施形態において、イオン注入プロセスによって化学強化を実施することができる。例えば、熱強化したガラス系物品を真空チャンバーに配置し、イオン注入プロセスを実施し、それによって、熱強化したガラス系物品に、強化イオン又はガラスに圧縮応力を発生させることができるイオンを注入することができる。注入深さは、本明細書に記載のDOL値と相互に関連している。1つ以上の実施形態において、強化イオンは、圧縮応力を発生させるクラウディング効果をもたらす任意のイオンであってもよい。
【0056】
本明細書に記載の熱強化プロセス、及びその後の化学強化プロセスよって生成された、結果として得られた応力プロファイルを
図5に示す。1つ以上の実施形態のガラス系物品は、熱強化によって誘起された応力を有する熱強化領域310、及び化学強化によって誘起された応力を有する化学強化領域320を含んでいる。表面CSは、熱強化によって誘起された応力と化学強化によって誘起された応力の組み合わせによって生成される。熱強化によって誘起された応力(熱強化領域)は312で示すDOCまで延びている。化学強化によって誘起された応力(化学強化領域)は、322で示すDOL(一部の実施例において、このDOLを応力プロファイルの「膝」と呼んでいる)まで延びている。CTは、応力プロファイルのCS部分のバランスをとる。
【0057】
一部の実施形態において、応力プロファイルは放物線状の形状を示す。1つ以上の実施形態において、放物線状の形状は、引張応力を示すガラス系物品の応力プロファイル領域又は深さに沿って示される。1つ以上の特定の実施形態において、応力プロファイルは、平坦な応力(即ち、圧縮若しくは引っ張り)部分、又は実質的に一定の応力(即ち、圧縮若しくは引っ張り)を示す部分を含んでいない。1つ以上の実施形態において、厚さ全体、又は約0・t~約0.2・tから0.8・t超える範囲(又は0・t~約0.3・tから0.7・t超える範囲)の応力プロファイル312のすべての点は、約-0.1MPa/マイクロメートル未満、又は約0.1MPa/マイクロメートルを超える接線を有している。一部の実施形態において、接線は約-0.2MPa/マイクロメートル未満、又は約0.2MPa/マイクロメートルを超える接線であってよい。一部のより具体的な実施形態において、接線は約-0.3MPa/マイクロメートル未満、又は約0.3MPa/マイクロメートルを超える接線であってよい。一部の更に具体的な実施形態において、接線は約-0.5MPa/マイクロメートル未満、又は約0.5MPa/マイクロメートルを超える接線であってよい。換言すれば、1つ以上の実施形態のこれ等の厚さの範囲(即ち、全厚さ、約0・t~約0.2・tから0.8・t超える範囲、又は0・t~約0.3・tから0.7・t超える範囲)に沿った応力プロファイルは、本明細書に記載の接線を有する点を排除している。理論に束縛されるものではないが、公知の誤差関数又は準線形応力プロファイルは、これらの厚さの範囲(約0・t~約2・tから0.8・t超える範囲、又は0・t~約0.3・tから0.7・t超える範囲)に沿って、
図4の220で示すように、かかる厚さの範囲のかなりの部分に沿って、平坦な接線又は傾きがゼロの応力プロファイルを含む点を有している。本開示の1つ以上の実施形態のガラス系物品は、
図5に示すように、これ等の厚さ範囲に沿って、かかる平坦又は傾斜がゼロの応力プロファイルを示さない。
【0058】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、最大接線及び最小接線を含む、約0.1・t~0.3・t、及び約0.7・t~0.9・tの厚さ範囲において、応力プロファイルを示す。一部の実施例において、最大接線と最小接線との差は約3.5MPa/マイクロメートル以下、約3MPa/マイクロメートル以下、約2.5MPa/マイクロメートル以下、又は約2MPa/マイクロメートル以下である。
【0059】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、ガラス系物品の深さ方向又は厚さtの少なくとも一部に沿って延びる、平坦な部分を実質的に含まない応力プロファイルを有している。換言すれば、応力プロファイルは、厚さtに沿って実質的に連続的に増加または減少する。一部の実施形態において、応力プロファイルは、約10マイクロメートル以上、約50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、又は約200μm以上の長さを有する深さ方向の平坦な部分を実質的に含んでいない。本明細書において、「平坦」という用語は、線形部分に沿って、約5MPa/マイクロメートル未満、又は約2MPa/マイクロメートル未満の大きさを有する傾きを意味する。一部の実施形態において、深さ方向に平坦な部分を全く含まない応力プロファイルの1つ以上の部分が、第1の表面又は第2の表面の一方又は両方から、ガラス系物品の約5マイクロメートル以上(例えば、10マイクロメートル以上、又は15マイクロメートル以上)の深さに存在している。例えば、第1の表面から約0マイクロメートル~約5マイクロメートル未満の深さに沿って、応力プロファイルは、線形部分含むことができるが、第1の表面から約5マイクロメートル以上の深さにおいて、応力プロファイルは実質的に平坦な部分を含んでいない。
【0060】
一部の実施形態において、応力プロファイルは、深さ約0t~約0.1tにおいて線形部分を含むことができ、深さ約0.1t~約0.4tにおいて、平坦な部分を実質的に含まないようにすることができる。一部の実施形態において、応力プロファイルは、約0t~約0.1tの厚さから、約20MPa/マイクロメートル~約200MPa/マイクロメートルの傾斜を有することができる。本明細書に記載のように、かかる実施形態は、浴が2種以上のアルカリ塩を含有するか又は混合アルカリ塩浴による単一のイオン交換プロセス、又は複数(例えば、2つ以上)のイオン交換プロセスを用いて形成することができる。
【0061】
一部の実施形態において、ガラス系物品は、本明細書に記載の応力プロファイルを示す一方、依然として深いDOC及び高い表面CSを示す。
【0062】
一部の実施形態において、化学的に誘起したCS領域を第1のCS領域と呼び、この領域は、非ゼロかつガラス系物品の厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を含んでいる。1つ以上の実施形態において、熱誘起されたCS領域を第2のCS領域と呼んでいる。
図5において、1つ以上の実施形態において、第1のCS領域304は、第1の表面301から第2のCS領域306に延びている。第2のCS領域306は第1のCS領域304からDOC312まで延びている。一部の実施例において、第2のCS領域306は、第1のCS領域304とCT領域308との間にある。一部の実施形態において、第2のCS領域の全体が、一定の金属酸化物濃度領域を含んでいる。一部の実施形態において、第2のCS領域の一部のみが一定の金属酸化物領域を含み、残りの部分は変化する金属酸化物濃度を有している。1つ以上の実施形態において、第1のCS領域及び/又は第2のCS領域の変化する濃度を有する金属酸化物が、指定された厚さ範囲に沿って又は金属酸化物の濃度が変化する指定された厚さ範囲を超えて応力を発生させる。換言すれば、化学的に誘起したCS領域に沿った応力プロファイルは、厚さの一部に沿って変化する非ゼロ濃度の金属酸化物に起因して生成することができる。一部の実施形態において、この金属酸化物は、ガラス系物品のすべての金属酸化物のうちの最大イオン径を有することができる。換言すれば、変化する濃度を有する金属酸化物は、ガラス系物品にイオン交換される金属酸化物であってよい。濃度が非ゼロかつ厚さの一部に沿って変化する金属酸化物は、ガラ系物品に応力を発生させるものとして説明することができる。
【0063】
前述の厚さ範囲に沿った金属酸化物の濃度変化は連続的であってよい。濃度変化は、約100マイクロメートルの厚さの一部に沿って、金属酸化物の濃度が約0.2モル%以上変化することを含むことができる。この変化は、マイクロプローブを含む、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。
【0064】
前述の厚さ範囲に沿った金属酸化物の濃度変化は連続的であってよい。一部の実施形態において、濃度変化は、約10マイクロメートル~約30マイクロメートルの厚さの一部に沿って連続とすることができる。一部の実施形態において、金属酸化物の濃度は、第1の表面から第1の表面と第2の表面との間の点まで低下する。
【0065】
金属酸化物の濃度は、1種を超える金属酸化物(例えば、Na2OとK2Oとの組み合わせ)を含むことができる。2種類の金属酸化物を使用し、各々のイオンの直径が互いに異なる一部の実施形態において、浅い深さにおいて、より大きい直径を有するイオンの濃度が、より小さい直径を有するイオンの濃度より高い一方、より深い深さにおいて、より小さい直径を有するイオンの濃度が、より大きい直径を有するイオンの濃度より高い。例えば、Na及びKを含有する単一の浴が、イオン交換プロセスに使用される場合、浅い深さにおいて、ガラス系物品のK+イオンの濃度が、Na+イオンの濃度より高い一方、より深い深さにおいて、Na+イオンの濃度が、K+イオンの濃度より高い。これは、一部には、イオンの大きさによるものである。かかるガラス系物品において、表面又はその近傍の領域は、より大きいイオン(即ち、K+イオン)を表面又はその近傍の領域により多く含んでいるため、より大きいCSを有している。このより大きいCSは、表面又はその近傍のより急峻な傾斜(即ち、表面における応力プロファイルのスパイク)を有する応力プロファイルによって示すことができる。
【0066】
1つ以上の金属酸化物の濃度勾配又は変化は、前述のように、ガラス系基体を化学強化して、ガラス系基体の複数種類の第1の金属イオンを、複数種類の第2の金属イオンに交換することによって生成されたものである(即ち、第2の金属イオンは、化学強化中にガラス系基体にイオン交換されたものである)。第1のイオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、及びルビジウムのイオンであってよい。第2の金属イオンは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムのうちの1種のイオンであってよいが、第2のアルカリ金属イオンが、第1のアルカリ金属イオンのイオン径より大きいイオン径を有することが条件である。イオン交換された第2の金属イオンは、化学強化後にその酸化物(例えば、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、又はこれ等の組み合わせ)としてガラス基体中に存在する。第2の金属イオンはガラス系物品に応力を発生させる。
【0067】
ガラス系物品に2種類の金属イオンが交換される場合(即ち、化学強化プロセス中に、混合塩浴又は複数の塩浴が用いられる場合)、第2のCS領域が、第1の金属イオン(又はその濃度勾配)を実質的に含まないように、第1の金属イオンが、第1のCS領域に沿って延びることができる一方、第2の金属イオンが、第1のCS領域及び第2のCS領域に沿って延びることができる。ガラス系物品において、この選択拡散は、第1のCS領域のみに沿った、第1の金属イオンの酸化物(即ち、第1の金属酸化物)の非ゼロかつ変化する濃度によって検出され、第2のCS領域は、第1の金属酸化物を実質的に含んでいない。この種の組成差を説明する1つの方法は、第1の金属イオンと第2の金属イオンの相対的な大きさを特徴付けることである。例えば、第1の金属イオンは、第2の金属イオンより大きい直径を有することがでると共に、ガラス系物品中のすべての金属イオンの中で最大の直径を有することができる。従って、第2のCS領域は、この最大直径を有する金属イオンを含まなくてよい。一部の実施形態において、第1のCS領域には、第1の金属イオン(又はその酸化物)及び第2の金属イオン(又はその酸化物)の両方が存在する一方、第2のCS領域は第2の金属イオン(又はその酸化物)のみを含んでいるため、第1のCS領域は、第2のCS領域と異なる組成を有することができる。一部の実施形態において、ガラス系物品は、同様に、第1のCS領域と異なる組成を有する、中央張力領域を含んでいる。一部の実施形態において、中央張力領域及び第2のCS領域は、第1のCS領域の組成と異なる互いに同じ組成を有している。かかる実施形態において、第1の金属酸化物は、Na2O、K2O、Rb2O、又はCsOを含むことができる一方、第2の金属酸化物は、第2の金属酸化物の第2の金属イオンが、第1の金属酸化物の第1の金属イオンよりも小さい直径を有する限り、Li2O、Na2O、K2O、又はRb2Oを含むことができる。
【0068】
1つ以上の実施形態において、変化し強化する金属酸化物の濃度は、約0.5モル%以上である。一部の実施形態において、金属酸化物の濃度は、ガラス系物品の全体の厚さに沿って、約0.5モル%以上(例えば、約1モル%)とすることができ、第1の面及び/又は第2の面で最も高く、第1の表面と第2の表面との間の点まで実質的に一定に減少する。ガラス系物品中の特定の金属酸化物の全濃度は、約1モル%~約20モル%とすることができる。
【0069】
金属酸化物の濃度は、そのような金属酸化物の濃度勾配を含むように化学強化する前のガラス系物品中の金属酸化物の基準量から決定することができる。
【0070】
公知の熱及び化学強化したガラス系物品は、後続の化学強化プロセスが、応力緩和又は解放を生じさせ、これによってDOCが減少するため、深いDOC値と高い表面CS値の組み合わせは示さない。理論に束縛されるものではないが、熱強化したガラス系物品のより高い仮想温度によって、より速い応力緩和が生じ、従って、後続の化学強化後にDOCの減少をもたらすと考えられる。驚くべきことに、本明細書に記載の熱強化プロセスは、(非常に高い熱伝達率を使用するため)熱強化ガラス系物品に更に高い仮想温度をもたらし、それによって、後続の化学強化後のDOCの維持を可能にする。従来の熱強化によって達成されるDOCは、本明細書に記載の熱強化方法によって達成されるほど大きくないため、公知の熱強化プロセスでは、得られるDOCレベルは、応力緩和によって後続の化学強化後に著しく減少することが示されている。一部の実施例において、本明細書に記載のように、熱強化後のガラス系物品の特性は、イオン浸透の深さを超えてガラス系基体中にDOCを生成することもできる。例えば、DOCは厚さの20%超又は約24%までであるのに対し、後続の化学強化によるイオンの浸透はDOCより小さい。一部の実施例において、一部のイオンがDOCまで浸透し、応力にいくらか寄与している可能性がある。
【0071】
本明細書に記載の熱強化によって得られたガラス物品の仮想温度が上昇し、(熱強化前のガラス基体と比較して)よりオープンな構造が生成される。これにより、化学強化(特にイオン交換)の速度が上昇し、より深いDOLが得られる。一部の実施形態において、より深いDOLは、化学強化によって生成される表面CSの低下を招く可能性があるが、この低い表面CSは、熱強化プロセスによって生成され存続している初期CSによって補償される。2つの強化メカニズムは、基本的に異なるプロセスで機能するため、互いに排他的ではなく、強化の効果を加算することができる。公知の熱及び化学強化ガラス物品では、強化メカニズムが互いに影響を及ぼし、後続の化学強化プロセスが、前の熱強化プロセスによって与えられた強度を低下させる。一部の実施形態において、本明細書に記載のガラス系物品が示す表面CSは、公知の化学強化プロセスのみによって生成される表面CSを超えることもできる。
【0072】
本明細書に記載のガラス系物品は、損傷に対してより高い耐性又は抵抗性も示す。特に、ガラス系物品は、本明細書に記載の熱強化プロセスを施した後、より高い仮想温度及びよりオープンな構造を示し、その各々又は両方によって、ガラス系物品の押し込み亀裂閾値が上昇する。一部の実施形態において、化学的強化プロセスは、かかる処理の間に仮想温度が著しく緩和されないように実施されるため、高い仮想温度の利点が、完成した熱強化及び化学強化ガラス系物品に引き継ぐことができる。
【0073】
更に、1つ以上の実施形態において、ガラス系物品は、公知の強化プロセスより大幅に低いコストで迅速に強化することができる。特に、本明細書に記載の熱強化プロセスによって、後続の化学強化プロセスにおいて、より速いイオン拡散が促進される。従って、はるかに短い化学強化プロセスによって、所望のDOLを得ることができる。加えて、ソーダライムシリケートガラス、又は一部のアルカリアルミノシリケートガラス等、化学強化プロセスに理想的であると一般には考えられていないガラスが、今では、所望の性能レベルまで化学強化することができる。例えば、69モル%のSiO2、8.5モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、1.2モル%のK2O、6.5モル%のMgO、0.5モル%のCaO、及び0.2モル%のSnO2の公称組成を有する、公知のアルカリアルミノシリケートガラスを十分に強化(得られるガラス系の物品が700MPaを超える表面CS及び約42マイクロメートル~約44マイクロメートルのDOLを示すように)するためには、420℃の溶融塩浴で5.5時間化学強化する必要がある。同じ厚さを有する同様のガラスを、本明細書に記載の方法を用いて、1つ以上の実施形態に従って、約15秒間熱強化し、次いで、410℃の溶融塩浴で化学強化することにより、5.5時間の化学強化だけを受けたガラス系物品と比較して、優れた強化及び性能を示すガラス系物品がもたらされる。
【0074】
図6及び7は、例示的な実施形態による、高い表面CS及び深いDOCを有する熱強化及び化学強化したガラス系物品を示す図である。
図6は熱強化及び化学強化したガラス系物品500の斜視図であり、
図7は1つ以上の実施形態による、熱強化ガラスシート500の模式部分断面図である。
【0075】
図6に示すように、熱強化及び化学強化したガラス系物品500(例えば、シート、ビーム、プレート)は、第1の表面510、第2の表面520(本明細書に開示のように、半透明であってよい、シート500の背面に向かう破線)、及びこれ等の間に延びる本体522を有している。第2の表面520は、第1の表面510に対し、本体522の反対側にあり、強化ガラス物品500の厚さtが、第1の表面と第2の表面との間の距離として定義され、厚さtは深さの寸法でもある。強化ガラス系物品500の幅wは、厚さtに直交する、第1又は第2の表面510、520の一方の第1の寸法として定義される。強化ガラス又はガラスセラミックシート500の長さlは、厚さt及び幅wの両方に直交する、第1又は第2の表面510、520の一方の第2の寸法として定義される。
【0076】
例示的な実施形態において、ガラス系物品500の厚さtは、ガラス系物品500の長さlより小さい。別の例示的な実施形態において、ガラス系物品500の厚さtは、ガラス系物品500の幅wより小さい。更に別の例示的な実施形態において、ガラス系物品500の厚さtは、ガラスシート500の長さl及び幅wのいずれよりも小さい。
図7に示すように、ガラス系物品500は、第1及び第2の表面510、520及び/又はその近傍に、DOC560まで延びる恒久的に熱誘起された領域CS530及びCS540、及び第1及び第2の表面510、520及び/又はその近傍に、DOL570まで延び、シートの中央部分の恒久的に熱誘起された引張応力(即ち、張力)の領域によってバランスされた、化学誘起された領域CS534及び544を更に有している。
【0077】
様々な実施形態において、ガラス系物品500の厚さは0.1mm~5.7又は6.0mmであって、終点の値に加え、0.2mm、0.28mm、0.4mm、0.5mm、0.55mm、0.7mm、1mm、1.1mm、1.5mm、1.8mm、2mm、及び3.2mmを含んでいる。企図する実施形態は、0.1mm~20mm、0.1mm~16mm、0.1mm~12mm、0.1mm~8mm、0.1mm~6mm、0.1mm~4mm、0.1mm~3mm、0.1mm~2mm、0.1mm~2mm未満、0.1mm~1.5mm、0.1mm~1mm、0.1mm~0.7mm、0.1mm~0.5mm、及び0.1mm~0.3mmの厚さtを有する熱強化ガラスシート500を含んでいる。
【0078】
一部の実施形態において、3mm以下の厚さのガラス系物品が使用される。一部の実施形態において、ガラス系物品の厚さは、約(プラスマイナス1%)8mm以下、約6mm以下、約3mm以下、約2.5mm以下、約2mm以下、約1.8mm以下、約1.6mm以下、約1.4mm以下、約1.2mm以下、約1mm以下、約0.8mm以下、約0.7mm以下、約0.6mm以下、約0.5mm以下、約0.4mm以下、約0.3mm以下、又は約0.28mm以下である。
【0079】
一部の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、高いアスペクト比を有している、即ち、長さ及び幅対厚さの比が大きい。本明細書に記載の熱強化プロセスは、高圧又は大量の空気に依存しないため、ガラス系物品の一方又は両方の主面が固体又は液体に接触せずに(例えば、ガラス系物品の一方又は両方の主面と固体又は液体との間に、固形物を有さず、又はガスを含む間隙を設けることによって)及び本明細書に記載の高熱伝達率システムの使用によって強化した後、望ましい表面粗さ及び平坦性を維持することができる。同様に、本明細書に記載の熱化学強化プロセスは、所望又は必要な形状を維持しつつ、アスペクト比の高いガラスシート(即ち、長さ対厚さの比、幅対厚さの比、又は両方の比が高いガラスシート)を強化することができる。具体的には、ガラス系物品は、長さ対厚さの比及び/又は幅対厚さの比(「アスペクト比」)が、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、及び1000:1を超えるまでのシートを含むことができる。企図する実施形態において、少なくとも200:1、少なくとも500:1、少なくとも1000:1、少なくとも2000:1、少なくとも4000:1のアスペクト比を有するシートを強化することができる。
【0080】
例示的な実施形態によれば、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の長さlは、幅w以上であり、例えば、幅wの2倍超、幅wの5倍超、及び/又は幅wの50倍以下である。一部のかかる実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の幅wは、厚さt以上であり、例えば、厚さtの2倍超、厚さtの5倍超、及び/又は厚さtの50倍以下である。
【0081】
一部の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の長さlは、少なくとも1cm、例えば、少なくとも3cm、少なくとも5cm、少なくとも7.5cm、少なくとも20cm、少なくとも50cm、及び/又は50m以下、例えば、10m以下、7.5m以下、5m以下である。一部のかかる実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の幅wは、少なくとも1cm、例えば、少なくとも3cm、少なくとも5cm、少なくとも7.5cm、少なくとも20cm、少なくとも50cm、及び/又は50m以下、例えば、10m以下、7.5m以下、5m以下である。
図6において、シート500の形態を成す熱強化及び化学強化したガラス系物品は、企図する実施形態において、5cm未満、例えば、2.5cm以下、1cm以下、5mm以下、2.5mm以下、2mm以下、1.7mm以下、1.5mm以下、1.2mm以下、更には1mm以下、例えば、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.28mm以下等の厚さtを有し、及び/又は厚さtは、少なくとも10μm、例えば、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも300μm等である。
【0082】
別の企図する実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、本明細書に開示した大きさ以外の大きさにすることができる。企図する実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品の長さl、幅w、及び厚さtは、より複雑な幾何学形状等に対し変化してもよく、本明細書に開示の寸法は、長さl、幅w、及び厚さtの上述の定義を相互に有する、対応するガラス又はガラスセラミック物品の態様に少なくとも適用される。
【0083】
一部の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の第1又は第2の表面510、520の少なくとも一方は、比較的大きい表面積を有している。様々な実施形態において、第1及び/又は第2の表面510、520は100mm
2以上、例えば約900mm
2以上、約2500mm
2以上、5000mm
2以上、約100cm
2以上、約500cm
2以上、約900cm
2以上、約2500cm
2以上、又は約5000cm
2以上の面積を有している。第1及び第2の表面510、520の上限には特に制限はない。一部の実施形態において、第1及び第2の表面510、520は、2500m
2以下、100m
2以下、5000cm
2以下、2500cm
2以下、1000cm
2以下、500cm
2以下、又は100cm
2以下の表面積を有することができる。従って、熱強化及び化学強化したガラス系物品500は比較的大きい表面積を有することができ、本明細書に開示の方法及びシステムを除き、特に本明細書に記載のガラスシートの厚さ、表面品質、及び/又は歪み均一性を有する物品を熱強化することは困難又は不可能であり得る。更に、本明細書に開示の方法及びシステムを除き、イオン交換に頼らず又はガラスの種類を変更せずに、応力プロファイル、特に応力プロファイルの負の引張応力部分(概して、
図5を参照)を達成することは困難又は不可能であり得る。
【0084】
前述のように、本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品は、驚くほど高い表面CS値、驚くほど高い中央引張応力、驚くほど深いDOC値、及び/又は独特の応力プロファイル(
図5参照)を有することができる。これは、特に、本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品が、薄厚であること及び/又は他の固有の物理特性(例えば、非常に低い粗さ、高い平坦性、様々な光学特性、仮想温度特性等)を考慮すると、特にそう言える。
【0085】
本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品のCS値は、(例えば、
図7の領域530、540において)、ガラスの厚さtの関数として変化することができる。様々な実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、3mm以下(例えば、2mm以下、1.2mm以下、1mm以下、0.9mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、又は0.28mm以下)の厚さ、及び約300MPa以上、約400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、更には約1GPa以上の表面CSを有することができる。表面CSの上限は約2GPaとすることができる。一部の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、DOLに等しい深さにおいて、約150MPa以上(例えば、約175MPa以上、約200MPa以上、又は約225MPa以上)のCS値(又は「膝応力」又は「膝CS」)を示す。かかる実施形態において、膝応力が150MPa以上であるDOLは、約10マイクロメートル以上(例えば、12マイクロメートル以上、14マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、17マイクロメートル以上、19マイクロメートル以上、21マイクロメートル以上、又は24マイクロメートル以上)である。膝応力が150MPa以上であるDOLは、ガラス系物品の厚さの関数として表すことができる。かかる実施形態において、膝応力が150MPa以上であるDOLは、約0.01・t以上である。CS及びDOLは、本明細書に記載のFSM技術を用いて測定することができる。
【0086】
様々な実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、約30MPa以上、約40MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、又は約80MPa以上のCTを有することができる。熱強化及び化学強化したガラス系物品が3mm以下(例えば、2mm以下、1.2mm以下、1mm以下、0.9mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、又は0.28mm以下)の厚さを有する一方で、これ等のCT値が存在することができる。本明細書において、CTとはガラス系物品の最大絶対CTを意味する。1つ以上の特定の実施形態において、ガラス系物品のCT値は、約100MPaを超えることができる。別の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品のCTは、400MPa未満、又は300MPa未満とすることができる。一部の実施形態において、CTは約30MPa~約300MPa、約60MPa~約200MPa、約70MPa~約150MPa、又は約80MPa~約140MPaとすることができる。本明細書に記載のシステム及び方法を介して、非常に速い熱伝達率を適用することができるため、厚さ0.3mm未満のSLGシートにおいて、例えば、少なくとも10MPa、更には少なくとも20MPaのCT値等の顕著な熱影響をもたらすことができる。事実、少なくとも0.1mmのシート等、非常に薄いシートを熱強化及び化学強化することができる。1つ以上の実施形態において、CT値は散乱光偏光器(SCALP)や当技術分野で公知の技術を用いて測定することができる。
【0087】
本開示に固有であると考える、本明細書に開示の熱強化及び化学強化したガラス系物品500の比較的大きい表面積及び/又は薄厚を考慮すると、応力プロファイル560の引張応力は、内部部分550の正の引張応力と、内部部分550の外側に隣接する部分530、540の負の引張応力との間で急激に遷移する。この急激な遷移は、応力の大きさ(例えば、100MPa、200MPa、250MPa、300MPa、400MPa、正負の引張応力のピーク値+σ、-σの差)を、変化が生じている厚さ中の距離、例えば、1mmの距離、500μmの距離、100μmの距離(これは変化率を定量化するために使用される距離であって、物品の厚さの一部であってよいが、必ずしも物品の幾何学形状の寸法ではない)で除したものとして表すことができる引張応力の変化率(即ち、傾斜)として理解することができる。企図する実施形態において、正負の引張応力のピーク値間の差は、少なくとも50MPa、例えば、少なくとも100MPa、少なくとも150MPa、少なくとも200MPa、少なくとも250MPa、少なくとも300MPa、少なくとも400MPa、少なくとも500MPa、及び/又は5GPa以下である。企図する実施形態において、ガラス系物品500は、少なくとも50MPa、例えば、少なくとも100MPa、少なくとも150MPa、少なくとも200MPa、少なくとも250MPa、少なくとも300MPa、少なくとも400MPa、少なくとも500MPaの大きさの負のピーク引張応力を有している。本明細書に記載のシステム及び方法によって生成される急峻な引張曲線の遷移が、熱強化及び化学強化された所定の厚さのガラス系物品の表面に、より大きい負の引張応力の大きさを達成する能力、及び/又は本明細書に開示のダイシングの断片化の可能性を達成する等、より薄いガラス物品をより高い負の引張応力に製造する能力を示すと考えられる。従来の熱強化手法は、かかる急峻な引張応力曲線を達成することができない可能性がある。
【0088】
例示的な実施形態によれば、引張応力の高変化率は、厚さの少なくも2%、例えば、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の厚さの少なくとも5%、厚さの少なくとも10%、厚さの少なくとも15%、又は厚さの少なくとも25%である応力プロファイル560の深さ方向の範囲にわたって維持される、前述又はそれより大きい大きさの少なくとも1つである。企図する実施形態において、引張応力の高い変化率を有する厚さ方向の範囲が、第1の表面から20%~80%の深さに中心を置くように、強化は、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の深くまで延びている。
【0089】
1つ以上の実施形態において、DOC(又は熱誘起応力領域)は、ガラス系物品の表面から、約0.1・t以上、0.12・t以上、0.14・t以上、0.15・t以上、0.16・t以上、0.17・t以上、0.18・t以上、0.19・t以上、0.20・t以上、0.21・t以上、0.22・t以上、又は0.23・t以上延びている。DOCの上限は約0.3・tであってよい。1つ以上の実施形態において、CT値は散乱光偏光器(SCALP)や当技術分野で公知の技術を用いて測定することができる。
【0090】
1つ以上の実施形態において、化学強化の結果生じるDOLは、ガラス系物品の表面から、約0.1tまでのゼロでない深さまで延びることができる。一部の実施形態において、DOLは、約0.05・t、0.06・t、0.07・t、0.08・t、0.09・t、又は0.095・tまでの非ゼロの深さを含むことができる。一部の実施形態において、DOLは、約0.001・t~約0.1・t、約0.001・t~約0.9・t、約0.001・t~約0.8・t、約0.001・t~約0.7・t、約0.001・t~約0.6・t、約0.001・t~約0.5・t、約0.001・t~約0.4・t、約0.01・t~約0.1・t、約0.015・t~約0.1・t、約0.02・t~約0.1・t、約0.03・t~約0.1・t、約0.04・t~約0.1・t、又は約0.05・t~約0.1・tであってよい。
【0091】
DOLは、マイクロプローブ、FSM技術(以下に記載)等の偏光法によって測定される、化学強化による最も大きい金属酸化物又は金属イオンが浸透する深さと定義される。一部の実施形態において、化学強化が、ガラス系物品へのナトリウムイオンの交換を含み、約0.5・tまでの深さにNa2Oが存在する場合、ナトリウムの浸透深さは、FSM技術によって容易に測定することはできないが、マイクロプローブ、SCALP、又は屈折近接場(RNF)法(参照により全内容が本明細書に援用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する米国特許第8,854,623号明細書に記載)によって測定することができる。一部の実施形態において、化学強化がガラス系物品へのカリウムイオンの交換を含む場合、従ってK2Oが存在する場合、カリウムの浸透深さは、FSM技術によって測定することができる。
【0092】
(表面CSを含む)圧縮応力は、(日本の)オリハラ工業(株)製のFSM-6000等の市販の機器を用いた表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力の測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存する。SOCは、参照により全内容が本明細書に援用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM標準C770-16に記載の手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。屈折近接場(RNF)法又はSCALPを用いて応力プロファイルを測定することができる。RNF法を用いて応力プロファイルを測定する場合には、SCALPによって与えられる最大CT値がRNFに使用される。特に、RNFによって測定された応力プロファイルは、力平衡であり、SCALP測定によって与えられる最大CT値に合わせて較正される。RNF法は、参照により全内容が本明細書に援用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する、米国特許第8,854,623号明細書に記載されている。具体的には、RNF法は、参照ブロックに隣接してガラス物品を配置するステップ、直交偏光間で1Hz~50Hzの速度で切り替えられる偏光切換光ビームを生成するステップ、偏光切換光ビームの電力量を測定するステップ、及び偏光切換基準信号を生成するステップを含み、各々の直交偏光における測定電力量は互いに50%以内である。この方法は、偏光切換光ビームをガラスサンプル及びガラスサンプルの異なる深さの基準ブロックに通すステップ、次いでリレー光学系を用いて透過した偏光切換光ビームを、偏光切換検出器信号を生成する、信号光検出器に中継するステップを更に備えている。この方法は検出器信号を基準信号で除算して正規化検出器信号を形成するステップ、及び正規化検出器信号からガラスサンプルのプロファイル特性を決定するステップも含んでいる。最大CT値は、当技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)によって測定される。
【0093】
少なくとも一部の企図する実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、厚さの少なくとも一部分に沿ったイオン含有量に関し、組成の変化を含んでいる。1つ以上の実施形態において、組成変化には、非ゼロかつ厚さの少なくとも一部、より具体的には、DOLの少なくとも一部又はDOL全体に沿って変化する金属酸化物の濃度変化が含まれる。一部の実施形態において、DOLは金属酸化物の濃度が変化する深さより大きい。一部の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、非ゼロかつ厚さの一部に沿って変化する、金属酸化物の濃度を含む第1のCS領域を含んでいる。一部の実施形態において、金属酸化物の濃度は、非ゼロかつ第1及び/又は第2の表面から、厚さの一部に沿って、約0・t超~約0.17・t未満、又は約0.01・t~約0.1・tの深さまで変化する。
【0094】
1つ以上の実施形態において、かかる実施形態における熱強化及び化学強化したガラス系物品500は、応力プロファイル560に影響を及ぼす交換イオン又は注入イオンを含んでいる。かかる実施形態の一部において、交換又は注入されたイオンは、熱強化及び化学強化したガラス系物品500の部分530、540を完全通り抜けて延びることはない、何故なら、かかる部分は化学強化ではなく、本明細書に記載の熱強化の結果として生じた部分であるからである。一部の実施形態において、DOLは交換又は注入イオンより深く延びている。一部の実施形態において、DOLは交換又は注入イオンの深さに等しい深さまで延びている。
【0095】
本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品の応力プロファイル及び応力プロファイルの属性は、物品の端部(即ち、主面ではなく副面に沿って)に存在又は現れることができる。
図6において、1つ以上の副面が、熱及び/又は化学強化プロセスに曝露されるように、主面510、520をマスク又は熱強化若しくは化学的強化プロセスに曝露されないように維持することができる。かかる副面上の応力プロファイルは、所望の性能又は最終用途に合わせて調整することができる。
【0096】
1つ以上の実施形態において、第1の表面510及び第2の表面520は、互いに異なる応力プロファイルを有することができる。例えば、第1の表面510の表面CS、DOLにおけるCS、DOL、又はDOCの任意の1つ以上が、第2の表面と異なることができる。例えば、一部の実施例において、第1の表面510が第2の表面520より大きい表面CS値を必要とする。別の実施例において、第1の表面510は、第2の表面520のDOC値より大きいDOC値を有している。一部の実施例において、第1の表面510と第2の表面520との間のかかる表面CS、DOLにおけるCS、DOL、又はDOCの任意の1つ以上の差異は、非対称応力プロファイルと表現することができる。かかる非対称性は、本明細書に記載のガラス系物品の形成に使用される熱強化、化学強化、又は熱強化及び化学強化の両方のプロセスを変更することによって与えることができる。以下に説明するように、応力プロファイルの非対称性は、本明細書に記載のガラス系物品を、湾曲したシート又は物品に冷間加工することによっても生成又は増大させることができる。
【0097】
本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品は、0J/m2超~約40J/m2の蓄積引張エネルギーを示すことができる。一部の実施例において、蓄積引張エネルギーは、約5J/m2~約40J/m2、約10J/m2~約40J/m2、約15J/m2~約40J/m2、約20J/m2~約40J/m2、約1J/m2~約35J/m2、約1J/m2~約30J/m2、約1J/m2~約25J/m2、約1J/m2~約20J/m2、約1J/m2~約15J/m2、約1J/m2~約10J/m2、約10J/m2~約30J/m2、約10J/m2~約25J/m2、約15J/m2~約30J/m2、約15J/m2~約25J/m2、約18J/m2~約22J/m2、約25J/m2~約40J/m2、又は約25J/m2~約30J/m2であってよい。1つ以上の実施形態の熱強化及び化学強化したガラス系物品は、約6J/m2以上、約10J/m2以上、約15J/m2以上、又は約20J/m2以上の蓄積引張エネルギーを示すことができる。蓄積引張エネルギーは、次式を用いて算出することができる。蓄積引張りエネルギー(J/m2)= [(1-ν)/E]∫(σ2)(dt)。ここで、νはポアソン比、Eはヤング率(単位MPa)、σは応力(単位MPa)、積分は、引張領域の厚さ(マイクロメートル単位)のみにわたって計算される。
【0098】
様々な実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品500は、本明細書に記載の応力プロファイル及び形成されたままの低い表面粗さを有している。本明細書に記載のプロセス及び方法は、形成された表面の表面粗さを増加させることなく、ガラス系物品(シート状であってもよい)を熱強化及び化学強化することができる。例えば、流入するフロートガラスの空気側表面及び流入する溶融成形ガラス表面を、処理前後に原子間力顕微鏡(AFM)によって特性を明かにした。流入する1.1mm厚のソーダライムフロートガラスのRa表面粗さは、1nm未満(0.6~0.7nm)であって、本プロセスによる熱強化によってRa表面粗さは増加しなかった。同様に、1.1mm厚のフュージョン成形されたガラスシートの0.3nm未満(0.2~0.3)のRa表面粗さは、本開示による熱強化及び/又は化学強化によって維持された。従って、1つ以上の実施形態による、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、少なくとも第1の表面において、少なくとも10×10μmの領域にわたり、0.2~1.5nmのRa粗さ、0.2~0.7nm、0.2~0.4nm、又は更に0.2~0.3nmの表面粗さを有している。表面粗さは、例示的な実施形態において、10×10μm、一部の実施形態において、15×15μmの領域にわたって測定することができる。
【0099】
別の実施形態において、本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品は、高い平坦度を有している。様々な実施形態において、本明細書に記載の強化システムは、制御されたガス支持体を使用して、移送中および加熱中にガラスベースの基板を支持し、一部の実施形態では、得られるガラス系物品の平坦度を制御及び/又は向上する支援に使用することができ、特に薄厚及び/又は高度に強化されたガラス系物品関し、これまでに取得可能なものより高い平坦度をもたらす。例えば、約0.6mm以上の厚さを有するシート状のガラス系物品は、強化後平坦性を向上させることができる。熱強化及び化学強化したガラス系物品の様々な実施形態の平坦度は、第1の表面又は第2の表面の一方に沿って、任意の50mmの長さに沿って、100μm以下の芯振れ精度(TIR)、第1の表面又は第2の表面の一方に沿って、長さ50mm以内において、300μm以下のTIR、第1の表面又は第2の表面の一方に沿って、長さ50mm以内において、200μm以下のTIR、100μm以下のTIR、又は70μm以下のTIRを有することができる。例示的な実施形態において、平坦度は、ガラス系物品の任意の50mm以下の輪郭に沿って測定される。企図する実施形態において、シートの形態であってよい、本明細書に開示の厚さを有するガラス系物品は、第1の表面又は第2の表面の一方の長さ20mm以内おいて、200μm以下のTIRの平坦度(例えば、100μm以下のTIRの平坦度、70μm以下のTIRの平坦度、又は50μm以下のTIRの平坦度)を有している。本明細書において、平坦度とは、コーニング社(コーニング、ニューヨーク)から入手可能なTropel(登録商標)FlatMaster(登録商標)で測定されたものである。
【0100】
企図する実施形態によれば、1つ以上の実施形態による熱強化及び化学強化したガラス系物品は、高い寸法の一貫性を有し、本体522(
図6)の1cmの長さ方向の範囲に沿った厚さtが、50μmを超えて、例えば、10μmを超えて、5μmを超えて、2μmを超えて変化しない。かかる寸法の一貫性は、本明細書に開示の負の引張応力の所定の厚さ、面積、及び/又大きさに対し、固体焼き入れでは、冷却プレートのアライメント及び/又は寸法を歪める可能性のある表面精度等の実際的な考慮事項のために、実現することはできない。
【0101】
企図する実施形態によれば、1つ以上の実施形態による、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、それに沿った1cmの長さ方向の輪郭が、直線から50μm以内、例えば、20μm、10μm、5μm、2μm等に留まるような平坦度、及び/又は1cmの幅方向の輪郭が、直線から50μm以内、例えば、20μm、10μm、5μm、2μm等に留まるような平坦度を有する少なくとも1つの表面(例えば、
図6の第1又は第2の表面510、520)を有している。かかる高い平坦度は、本明細書に開示の負の引張応力の所定の厚さ、面積、及び/又大きさに対し、液体焼き入れでは、対流及びそれに関連する液体の力に起因する、これ等のプロセスで強化されたガラスの反りや曲がり等の実際的な考慮事項のために、実現することはできない。様々な実施形態において、1つ以上の実施形態による熱強化及び化学強化したガラス系物品は、高い仮想温度を有している。様々な実施形態において、高い仮想温度が、得られるガラス系物品500の高いレベルの熱強化、高い中央引張応力、及び/又は高い表面圧縮応力に関連していることが理解されるであろう。表面仮想温度は、示差走査熱量測定、ブリルアン分光法、又はラマン分光法を含む任意の方法で測定することができる。
【0102】
例示的な実施形態によれば、1つ以上の実施形態による熱強化及び化学強化したガラス系物品は、第1及び/又は第2の表面510、520、又はその近傍等に、少なくとも500℃、少なくとも600℃、更には一部の実施形態において、少なくとも700℃等、特に高い仮想温度を有する部分を含んでいる。一部の実施形態において、かかる仮想温度を示すガラス系物品は、ソーダライムガラスを含むことができる。例示的な実施形態によれば、1つ以上の実施形態による熱強化及び化学強化したガラス系物品は、第1及び/又は第2の表面510、520、又はその近傍等に、同じ化学組成のアニールガラスと比較して、特に高い仮想温度を有する部分を含んでいる。例えば、一部の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、同じ化学組成のアニールガラス(即ち、本明細書に記載の方法に従って熱強化されていないガラス)の仮想温度より、少なくとも10℃高い、少なくとも30℃高い、少なくとも50℃高い、少なくとも70℃高い、更には少なくとも100℃高い仮想温度を示す。熱強化システムの高温ゾーンから冷却ゾーンへの急速な移行によって、高い仮想温度を達成することができる。理論に束縛されるものではないが、高い仮想温度を有するガラス系物品は損傷抵抗が増大する。
【0103】
表面仮想温度を測定する一部の方法において、仮想温度を妥当な精度で測定するために、ガラス系物品を破砕して熱強化プロセスによって誘起された「強化応力」を緩和する必要があり得る。ラマン分光法によって測定される特徴的構造バンドは、シリケートガラスの仮想温度及び加えられる応力の両方に関し、制御された方法でシフトすることがよく知られている。強化応力が既知であれば、このシフトを用いて、仮想温度を非破壊的に測定することができる。
【0104】
概して、
図8に、一部の例示的なガラス物品の仮想温度の測定結果を示す。シリカガラスのラマンスペクトルに対する応力の影響が、D.R. Tallant、T.A.Michalske、 及びW.L.Smithによる「The effects of tensile stress on the Raman spectrum of silica glass」J. Non-Crist. Solids、106、380-383(1988)に報告されている。65質量%以上のシリカ商用ガラスは実質的に同じ応答を有している。報告された応力応答は一軸応力であり、強化ガラスにおいて観察されるような二軸応力状態の場合には、σxx=σyy、一軸応力によって予想されるピークの2倍のシフトが予想される。ソータライムガラス及びガラス2の1090cm
-1近傍のピークが、シリカガラスで観察される1050cm
-1のピークに対応している。シリカの1050cm
-1及びSLG並びに他のシリカガラスの対応するピークに対する応力の影響は、MPa単位の応力σの関数として、式a)ω(cm
-1)=1054.93-0.00232・σで表すことができる。
【0105】
仮想温度を関数として、SLG及び別のガラスのラマンバンド位置の検量線を生成した。ガラス試験片は、T=10*η/ Gで算出された構造緩和時間より、2~3倍長い時間熱処理した、ここでηは粘度、Gは剪断弾性率である。熱処理後、ガラスを水中で焼き入れして仮想温度を熱処理温度に凍結した。次いで、442nmレーザー、10~30秒の照射時間、及び100%のパワーを使用して、200~1800cm-1の範囲にわたり、ガラス表面を倍率50倍及び1~2μmのスポットサイズの顕微ラマンにより測定した。1000~1200cm-1のピーク位置を、コンピュータソフトウェア、この場合、Renishaw WiRE、バージョン4.1を使用して適合させた。SLGの空気側で測定した1090cm-1の良好な適合は、仮想温度Tf(℃)の関数として、式b)(cm-1)=1110.66-0.0282・Tfで与えられる。ガラス2について、良好な適合は、式c)(cm-1)=1102.00-0.0231・Tfで与えられる。
【0106】
式a)、b)、及びc)で確立された関係を使用して、表面CSによる補正係数を用いて、測定したラマンピーク位置の関数として、ガラスの仮想温度を表すことができる。100MPaのCS、σcは、約15~20℃の仮想温度の減少に相当する位置に、ラマンバンド位置をシフトする。SLGには次の式が適用可能である。
【0107】
【0108】
ガラス2に適用可能な式は次のとおりである。
【0109】
【0110】
これ等の式において、ωは1090cm-1の近傍のピークに関して測定されたピーク波数、σcは、任意の適切な技術によって測定された表面CSであり、応力補正した℃単位の仮想温度が得られる。決定された仮想温度に関連して増大した損傷抵抗の実証するものとして、4つのガラスシートサンプルを用意した、そのうちの2つは従来の強化方法で約70~110MPaの表面CS(CS)まで強化した、6mm厚のソーダライムガラス(SLG)シートであり、2つは本開示の方法及びシステムによって約同等のCSレベルに強化した1.1mm厚のSLGシートであった。2つの更なるシートを追加し、各厚さの1つを対照として使用した。各試験シートの表面を標準のビッカース圧痕に曝露した。様々なレベルの力をそれぞれ15秒間加え、24時間待機した後、圧痕をそれぞれ精査した。表1に示すように、50%亀裂閾値(亀裂が開始する傾向がある圧子の4つの点のうち、現れる平均の亀裂数が2つであるときの荷重として定義される)を各サンプルについて求めた。
【0111】
表1は、従来の対流ガス強化によって処理されたSLG(6mmシートに反映)のビッカース亀裂開始閾値は、アニール又は供給されたままのシートの閾値と実質的同じであり、0~1ニュートン(N)の間から上昇し、約1ニュートン~2ニュートン未満まで上昇する。これは、従来の強化によって与えられる、ガラス転移温度(SLGに対し、Tg=550℃、η=1012-13.3 ポアズと定義)に対し、25~35℃の表面仮想温度(Tfs又はTfsurface)の比較的緩やかな上昇に相関していることを示している。対照的に、本方法及びシステムを用いた強化によって、ビッカース亀裂開始閾値は、10Nを超え、これは従来の強化によって付与されるビッカース損傷抵抗に対して10倍の向上である。具現化されたガラスにおいて、TfsマイナスTgは、少なくとも50℃、少なくとも75℃、少なくとも90℃、又は約75℃~100℃であった。低レベルの熱強化を含む実施形態であっても、具現化されたガラスは、例えば、5N等、依然として抵抗を増大させることが出来る。特定の企図する実施形態において、15秒ビッカース亀裂開始試験後の50%亀裂閾値は、5N、10N、20N、又は30N以上とすることができる。
【0112】
【0113】
以下の無次元の仮想温度パラメータθを使用して、生成された仮想温度によって熱強化プロセスの相対的性能を比較することができる。この場合、以下の表面仮想温度θSの観点から考える。
【0114】
【0115】
ここで、T
fsは表面仮想温度、T
anneal(η=10
13.2ポアズの粘度のときの、ガラスの温度)は、アニーリングポイント、T
soft(η=10
7.6ポアズの粘度のときの、ガラスの温度)は、ガラスシートの軟化点である。
図10は、2つの異なるガラスの熱強化中に適用された熱伝達率hを関数として、測定された表面仮想温度θ
Sをプロットした図である。
図10に示すように、2つの異なるガラスに関する結果は、互いにかなり接近している。このことは、パラメータθは、仮想温度の生成に必要な熱伝達率hに関連して、異なるガラスの仮想温度を直接比較する手段を与えることを意味する。各hにおける結果の垂直範囲は、焼き入れ開始時の初期温度であるT
0の値の変化に対応している。実施形態において、パラメータθ
Sは、約(例えば、プラスマイナス10%)0.2~約0.9、0.21~0.09、0.22~0.09、0.23~0.09、0.24~0.09、0.25~0.09、0.30~0.09、0.40~0.09、0.5~0.9、0.51~0.9、0.52~0.9、0.53~0.9、0.54~0.9、0.54~0.9、0.55~0.9、0.6~0.9、更には0.65~0.9を含んでいる。しかし、より高い熱伝達率(例えば、約800W/m
2K以上)では、ガラスの高温度、又は「液相線」CTEが強化性能に影響を与え始める。従って、かかる条件下において、粘度曲線わたって変化するCTE値の積分の近似に基づく、強化パラメータΨが有用であることが判明した。
【0116】
【0117】
ここで、αS
CTEは、1/℃(℃-1)で表された、低温線形CTE(ガラスの0~300℃の平均線形熱膨張率に相当)、αL
CTEは、1/℃(℃-1)で表された、高温線形CTE(ガラス転移点と軟化点との間のどこかで観察される高温プラトー値に相当)、Eは、GPa(MPaではない)(これは、(無次元の)パラメータΨの値が、概して0と1の間の範囲になることを可能にする)で表されるガラスの弾性率、Tstrainは、℃で表されるガラスの歪点温度(η=1014.7ポアズの粘度のときのガラスの温度)、Tsoftは、℃で表されるガラスの軟化点(η=107.6ポアズの粘度のときのガラスの温度)である。
【0118】
強化パラメータΨを決定するために、様々な特性を有するガラスについて、熱強化プロセス及び得られた表面CS値をモデル化した。108.2ポアズの同じ開始粘度及び様々な熱伝達係数でガラスをモデル化した。108.2ポアズにおける各ガラスの温度及びそれぞれの強化パラメータΨ計算値と共に、様々なガラスの特性を表2に示す。
【0119】
【0120】
表2の結果は、Ψがガラスの熱強化特性に比例することを示している。この相関を、高い熱伝達率(2093W/m
2K(0.05cal/s・cm
2・℃))及びガラスシート厚が僅か1mmの具現化した実施例を表す
図9に更に示す。図から分かるように、得られた7つの異なるガラスのCSの変化は、提案している強化パラメータΨの変化とよく相関している。
【0121】
別の態様において、任意のガラスについて、任意の所与の熱伝達係数の値h(cal/cm2-s-℃で表される)において、厚さt(mm単位)に対する表面CS(σCS、MPa)曲線が(0~6mmのtの範囲にわたり)双曲線に適合することができることを見出しており、ここでP1及びP2は、以下に示すようなhの関数である。
【0122】
【0123】
又はΨの式を代入すると、CSσCS(Glass、h、t)曲線は以下で与えられる。
【0124】
【0125】
ここで、(6)又は(7)のいずれかにおける、定数P1及びP2は、それぞれ、以下で与えられる、熱伝達率値hの連続関数である。
【0126】
【0127】
及び
【0128】
【0129】
定数P
1及びP
2を、hの関数として、それぞれ
図10及び11に示す。従って、所与のh及び対応するP
2に対し、式(6)又は(7)の同じhについて、P
1を用いることによって、厚さtの関数として、そのhで得られる表面CS(CS)に対応する曲線が特定される。
【0130】
一部の実施の形態において、同様の式を使用して、特に厚さが6mm以下、熱伝達係数が、例えば、800W/m2K以上の場合、2によるものと同じ伝導下で予測されたCSを単に除することによって、熱強化ガラスシートのCTを予測することができる。従って、予測されるCTは以下で与えることができる。
【0131】
【0132】
ここで、P1CT及びP2CTは以下で与えられる。
【0133】
【0134】
及び
【0135】
【0136】
一部の実施形態において、hとhCTは、熱強化の所与の物理的インスタンスに対し、同じ値を有することができる。しかし、一部の実施形態において、それらは異なることができ、別々の変数を提供し、それらの間の変化を許容することによって、記述的な性能曲線内において、CS/CTの典型的な比2:1が保持されないインスタンスを捕捉することができる。
【0137】
現在開示されているプロセス及びシステムの1つ以上の実施形態は、表3に示すすべての熱伝達率値(h及びhCT)で熱強化SLGシートを製造している。
【0138】
【0139】
一部の実施形態において、熱伝達率値(h及びhCT)は、約0.024~約0.15、約0.026~約0.10、又は約0.026~約0.075cal/s・cm2・℃とすることができる。
【0140】
図12は、前述の式6~9に従って選択されたhの値に対する、厚さt(mm単位)を関数とするC(h、t)・Ψ(SLG)グラフによる、ガラスシートの表面圧縮の新たに開かれたMPa単位の性能空間を示す図であって、Ψ(SLG)は、表2のSLGのΨの値に対応するものである。GCのラベルが付されたトレースは、0.02cal/s・cm
2・℃(又は840W/m
2K)~0.03cal/s・cm
2・℃、又は1250W/m
2Kのガス対流強化によって達成可能なSLGシートの薄さに対する最大応力の推定範囲を示すものであって、これらのレベルの熱伝達係数が、対流ガスプロセスの能力を上回る温度である10
8.2ポアズ又は約704℃の加熱されたガラス粘度で、プロセスに使用され得ると仮定したものである。
【0141】
ガス対流強化プロセスに基づく報告された最高のシートCS値の例は、凡例にガス対流と記された三角形のマーカーによって示されている。値601は、商用装置の宣伝製品性能能力を示し、値602はガラス加工会議における口頭の報告に基づいている。LCのラベルが付されたトレースは、熱伝導率hが0.0625cal/s・cm2・℃(又は約2600W/m2K)であると仮定した液体接触強化によって達成可能であると推定されるSLGシート薄さに対する最大応力を示すものであって、ここでも108.2ポアズの初期加熱ガラス粘度又は約704℃の処理を仮定したものである。液体接触強化プロセスに基づく、報告された最も高いシートCS値の例は、凡例に液体接触と記された丸印によって示されている。厚さ2mmにおける2つの値の高い方は、ホウケイ酸ガラスシート強化の報告に基づいており、達成された応力は、直接比較のために(ΨSLG)/(Ψborosilicate)で増減したものである。
【0142】
704のラベルが付されたトレースは、熱伝達率0.20cal/s・cm2・℃(又は約8370W/m2K)及び焼き入れ直前の704℃の初期温度で、現在開示されている方法及びシステムによって達成可能な応力を示している。このようにして達成可能なガラスシートの応力レベルは、液冷強化強度レベルに対して、液冷強化が従来の最先端のガス対流強化に対して示すのとほぼ同じ改善範囲を示している。しかし、704のラベルが付されたトレースは、上限ではなく、実施形態は、より高い温度(ガラスのより低い粘度で)で、小間隙ガス支持体熱強化により達成可能である形状及び平坦性の良好な制御によってこの値を超えて発展し得ることを示している。730のラベルが付されたトレースは、
ガラスの軟化点の非常に近く又は軟化点を超える730℃のSLGシートの開始温度で0.20cal/s・cm2・℃(又は約8370W/m2K)の熱伝達率によって達成される追加の強化性能のいくつかを示している。従って、CSの著しい改善、ひいてはガラスシートの強度向上は、タイトなガス支持体におけるシートの平坦性及び形状の良好な取り扱い及び制御によって可能になる、特に高い熱伝達率と高い初期温度の使用との組み合わせによって達成され、厚さ2mm以下における向上が特に著しい。
【0143】
図13は、前述の
図12の2mm以下におけるトレースを示しているが、本開示の1つ以上の実施形態による熱強化ガラス系物品の選択された例について、厚さを関数としてプロットしたCSであって、本開示によって可能になった熱強化レベルと薄さの極端な組み合わせを示している。
【0144】
1つ以上の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、低熱膨張率(CTE)のガラスを含んでいる。前述のように(例えば、式7及び10参照)、熱強化効果は、ガラスシートが構成されているガラスのCTEに大きく依存している。しかし、低CTEガラスの熱強化は、化学耐性の増大、又はアルカリ含有量が低いために電子装置とのより良好な適合性等、有益な特性を有する強化ガラス組成をもたらすことができる。65、60、55、50、45、40、更には35×10-6℃-1以下のCTEを有するガラスは、4mm未満、3.5mm未満、3mm未満、更には2mm以下の厚さにおいて、安全ガラス様の破断パターン(「ダイシング」)が可能である。40×10-6℃-1以下のCTEを有するガラスは、本明細書に記載のプロセスを使用して強化することができる。
【0145】
1つ以上の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、中~高CTEを有するガラス組成を含んでいる。例示的なガラスには、アルカリアルミノシリケート、ボロアルミノシリケート、及びソーダライムガラスが含まれる。一部の実施形態において、40、50、60、70、80、又は90×10-7/℃を超えるCTEを有するガラスを、本明細書に記載のように、熱強化及び化学強化することができる。かかるCTEの一部は、負の引張応力の程度が、50MPa以下及び/又は少なくとも10MPaである、本明細書に開示の熱強化にとって特に低い可能性がある。
【0146】
1つ以上の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、ヌープ引掻き閾値試験及び/又はビッカース亀裂開始閾値試験によって測定される優れた性能を示す。例えば、1つ以上の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、約8N以上(例えば、9N以上、10N以上、11N以上、12N以上、13N以上、又は14N以上)の(ヌープ引掻き試験で測定した)ヌープ引掻き閾値を示す。一部の実施例においてヌープ引掻きの上限は約20Nとすることができる。1つ以上の実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、約120N以上の(ビッカース亀裂開始閾値試験で測定した)ビッカース亀裂開始閾値を示す。例えば、ビッカース亀裂開始閾値は、約125N以上、130N以上、135N以上、140N以上、145N以上、150N以上、155N以上、又は約160N以上とすることができる。ビッカース亀裂開始閾値の上限は約180Nとすることができる。
【0147】
一部の用途及び実施形態において、熱強化及び化学強化したガラス系物品は、化学的耐久性持たせるように構成された組成を有することができる。かかる実施形態の一部において、組成は、少なくとも70質量%の二酸化ケイ素及び/又は少なくとも10質量%の酸化ナトリウム及び/又は少なくとも7質量%の酸化カルシウムを含んでいる。かかる組成の従来の物品は、深い深さまで化学強化することは困難であり得、及び/又は、不可能ではないにしても、薄厚に対し十分な大きさの負の表面引張応力まで従来のプロセスによって熱強化することは、脆弱性及び従来のプロセスの力によって困難であり得る。
【0148】
一部の企図する実施形態において、本明細書に記載のプロセス及びシステムによって強化されるガラス系物品(シート500等)は、非晶質基体、結晶質基体、又はそれらの組み合わせ、例えば、ガラスセラミック基体を含むことができる。本明細書に記載のプロセス及びシステムによって強化されるガラス系物品は、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、アルカリアルミニウムリンシリケートガラス、又はアルカリアルミノホウケイ酸ガラスを含むことができる。1つ以上の実施形態において、ガラス系基体は、モルパーセント(モル%で)約(例えば、プラスマイナス1%)40~約80モル%のSiO2、約10~約30モル%のAl2O3、約0~約10モル%のB2O3、約0~約20モル%のR2O、及び/又は約0~約15モル%のROを含むガラスを含むことができる。一部の企図する実施形態において、約0~約5モル%のZrO2及び約0~約15モル%のP2O5のいずれか一方又は両方を含むことができる。一部の企図する実施形態において、約0~約2モル%のTiO2が存在することができる。
【0149】
1つ以上の実施形態において、ガラス系物品又は基体は(本明細書に記載の化学強化する前に)、モル%で、約40~約80のSiO2、約10~約30のAl2O3、約0~約、10のB2O3、約0~約20のR2O、及び約0~約15のROを含むガラス組成を有することができる。本明細書において、R2Oは、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、及びCs2O等のアルカリ金属酸化物を意味する。また、本明細書において、ROは、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO等を意味する。一部の実施例において、組成は約0モル%~約5モル%のZrO2及び約0モル%~約15モル%のP2O5のいずれか一方又は両方を含むことができる。約0モル%~約2モル%のTiO2が存在することができる。
【0150】
一部の実施例において、ガラス組成は、モル%で、約45~約80、約45~約75、約45~約70、約45~約65、約45~約60、約45~約65、約45~約65、約50~約70、約55~約70、約60~約70、約70~約75、約70~約72、約50~約65、又は約60~約65のSiO2を含むことができる。
【0151】
一部の実施例において、ガラス組成は、モル%で、約5~約28、約5~約26、約5~約25、約5~約24、約5~約22、約5~約20、約6~約30、約8~約30、約10~約30、約12~約30、約14~約30、約15~約30、又は約12~約18のAl2O3を含むことができる。
【0152】
一部の実施例において、ガラス組成は、モル%で、約0~約8、約0~約6、約0~約4、約0.1~約8、約0.1~約6、約0.1~約4、約1~約10、約2~約10、約4~約10、約2~約8、約0.1~約5、又は約1~約3のB2O3を含むことができる。一部の実施例において、ガラス組成は実質的にB2O3を含んでいない。本明細書において、ガラス組成の成分に関し「実質的に含まない」とは、最初のバッチ化又はその後のイオン交換の間に、成分がガラス組成に積極的に又は意図的には添加されないが、不純物として存在している可能性があることを意味する。例えば、約0.1001モル%未満の量で成分が存在している場合、ガラスは成分を実質的に含まないと記述することができる。理論に束縛されるものではないが、ホウ素の添加により、ガラス組成の高温熱膨張率を増加させ、それによって、熱強化後に、より大きいCT値を示す熱強化及び化学強化したガラス系物品をもたらすことができる。一部の実施例において、このより大きいCT値は、化学強化後に、実質的に維持され、更には増大する。
【0153】
一部の実施形態において、ガラス組成は、MgO、CaO、及びZnO等の1種以上のアルカリ土類金属酸化物を含むことができる。一部の実施形態において、1種以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、非ゼロであって、約15モル%までとすることができる。1つ以上の特定の実施形態において、アルカリ土類金属酸化物のいずれかの総量は、非ゼロであって、約14モル%まで、約12モル%まで、約10モル%まで、約8モル%まで、約6モル%まで、約4モル%まで、約2モル%まで、又は約1.5モル%までとすることができる。一部の実施形態において、1種以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、モル%で、約0.01~10、約0.01~8、約0.01~6、約0.01~5、約0.05~10、約0.05~2、又は約0.05~1とすることができる。MgOの量は、約0モル%~約5モル%(例えば、0.001~約1、約0.01~約2、又は約2モル%~約4モル%)とすることができる。ZnOの量は、約0モル%~約2モル%(例えば、約1モル%~約2モル%)とすることができる。CaOの量は、約0モル%~約2モル%とすることができる。1つ以上の実施形態において、ガラス組成はMgOを含み、CaO及びZnOを実質的に含んでいなくてもよい。1つの変形例において、ガラス組成は、CaO又はZnOのいずれか一方を含み、MgO、CaO、及びZnOのうちの他を実質的に含んでいなくてもよい。1つ以上の特定の実施形態において、ガラス組成は、MgO、CaO、及びZnOのアルカリ土類金属酸化物のうちの2種のみを含み、第3の土類金属酸化物を実質的に含んでいなくてもよい。
【0154】
ガラス組成中のアルカリ金属酸化物R2Oの総量は,モル%で、約5~約20、約5~約18、約5~約16、約5~約15、約5~約14、約5~約12、約5~約10、約5~約8、約5~約20、約6~約20、約7~約20、約8~約20、約9~約20、約10~約20、約11~約20、約12~約18、又は約14~約18とすることができる。
【0155】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、約0モル%~約18モル%、約0モル%~約16モル%、約0モル%~約14モル%、約0モル%~約12モル%、約2モル%~約18モル%、約4モル%~約18モル%、約6モル%~約18モル%、約8モル%~約18モル%、約8モル%~約14モル%、約8モル%~約12モル%、又は約10モル%~約12モル%のNa2Oを含むことができる。一部の実施形態において、組成は約4モル%未満のNa2Oを含むことができる。
【0156】
一部の実施形態において、成形性とイオン交換性とをバランスさせるために、Li2O及びNa2Oを特定の量に又は比に制御される。例えば、Li2Oの量が増加するにつれ、液相粘度が低下し、一部の成形方法が使用できなくなる可能性があるが、かかるガラス組成は、本明細書に記載のより深いDOCレベルにイオン交換される。Na2Oの量は、液相粘度を変えることができるが、より深いDOCレベルのイオン交換を抑制する可能性がある。
【0157】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、5モル%未満、4モル%未満、3モル%未満、2モル%未満、又は1モル%未満のK2Oを含むことができる。1つ以上の別の実施形態において、ガラス組成は、K2Oを、本明細書の定義のように、実質的に含んでいなくてもよい。
【0158】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、約0モル%~約18モル%、約0モル%~約15モル%、約0モル%~約10モル%、約0モル%~約8モル%、約0モル%~約6モル%、約0モル%~約4モル%、又は約0モル%~約2モル%のLiO2を含むことができる。一部の実施形態において、ガラス組成は、約2モル%~約10モル%、約4モル%~約10モル%、約6モル%~約10モル%、又は約5モル%~約8モル%のLiO2を含むことができる。1つ以上の別の実施形態において、ガラス組成は、LiO2を、本明細書の定義のように、実質的に含んでいなくてもよい。
【0159】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、Fe2O3を含むことができる。かかる実施形態において、Fe2O3は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、及びその間のすべての範囲並びに部分範囲の量存在することができる。1つ以上の別の実施形態において、ガラス組成は、本明細書に定義したように、Fe2O3を実質的に含んでいなくてもよい。
【0160】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、ZrO2を含むことができる。かかる実施形態において、ZrO2は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、及びその間のすべての範囲並びに部分範囲の量存在することができる。1つ以上の別の実施形態において、ガラス組成は、ZrO2を、本明細書の定義のように、実質的に含んでいなくてもよい。
【0161】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、約0モル%~約10モル%、約0モル%~約8モル%、約0モル%~約6モル%、約0モル%~約4モル%、約0.1モル%~約10モル%、約0.1モル%~約8モル%、約2モル%~約8モル%、約2モル%~約6モル%、又は約2モル%~約4モル%のP2O5を含むことができる。一部の実施例において、ガラス組成は、P2O5を実質的に含んでいなくてもよい。
【0162】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成は、TiO2を含むことができる。かかる実施形態において、TiO2は、約6モル%未満、約4モル%未満、約2モル%未満、又は約1モル%未満の量存在することができる。1つ以上の別の実施形態において、ガラス組成は、TiO2を、本明細書の定義のように、実質的に含んでいなくてもよい。一部の実施形態において、TiO2は、約0.1モル%~約6モル%又は約0.1モル%~約4モル%の量存在している。
【0163】
一部の実施形態において、ガラス組成は、核剤を実質的に含んでいなくてもよい。代表的な核剤の例にはTiO2、ZrO2等がある。核剤は、ガラス中に微結晶の形成を開始することができる、ガラス構成成分であるという機能の観点から記述することができる。
【0164】
一部の企図する実施形態において、本明細書に記載のガラス系物品又は基体の組成は、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、As2O3、Sb2O3、及びSnO2のうちの1種以上から選択される、0~2モル%の少なくとも1種の清澄剤を用いてバッチ化することができる。1つ以上の実施形態によるガラス組成は、約0~約2モル%、約0~約1モル%、約0.1~約2モル%、約0.1~約1モル%、又は約1~約2モル%のSnO2を更に含むことができる。本明細書に開示のガラス系基体又は物品用のガラス組成は、一部の実施形態において、As2O3及び/又はSb2O3を実質的に含んでいなくてもよい。
【0165】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、具体的に、約62モル%~75モル%のSiO2、約10.5モル%~約17モル%のAl2O3、約5モル%~約13モル%のLi2O、約0モル%~約4モル%のZnO、約0モル%~約8モル%のMgO、約2モル%~約5モル%のTiO2、約0モル%~約4モル%のB2O3、約0モル%~約5モル%のNa2O、約0モル%~約4モル%のK2O、約0モル%~約2モル%のZrO2、約0モル%~約7モル%のP2O5、約0モル%~約0.3モル%のFe2O3、約0モル%~約2モル%のMnOx、及び約0.05モル%~約0.2モル%のSnO2を含むことができる。
【0166】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、約67モル%~74モル%のSiO2、約11モル%~約15モル%のAl2O3、約5.5モル%~約9モル%のLi2O、約0.5モル%~約2モル%のZnO、約2モル%~約4.5モル%のMgO、約3モル%~約4.5モル%のTiO2、約0モル%~約2.2モル%のB2O3、約0モル%~約1モル%のNa2O、約0モル%~約1モル%のK2O、約0モル%~約1モル%のZrO2、約0モル%~約4モル%のP2O5、約0モル%~約0.1モル%のFe2O3、約0モル%~約1.5モル%のMnOx、及び約0.08モル%~約0.16モル%のSnO2を含むことができる。
【0167】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、約70モル%~75モル%のSiO2、約10モル%~約15モル%のAl2O3、約5モル%~約13モル%のLi2O、約0モル%~約4モル%のZnO、約0.1モル%~約8モル%のMgO、約0モル%~約5モル%のTiO2、約0.1モル%~約4モル%のB2O3、約0.1モル%~約5モル%のNa2O、約0モル%~約4モル%のK2O、約0モル%~約2モル%のZrO2、約0モル%~約7モル%のP2O5、約0モル%~約0.3モル%のFe2O3、約0モル%~約2モル%のMnOx、及び約0.05モル%~約0.2モル%のSnO2を含むことができる。
【0168】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、約52モル%~65モル%のSiO2、約14モル%~約18モル%のAl2O3、約5.5モル%~約7モル%のLi2O、約1モル%~約2モル%のZnO、約0.01モル%~約2モル%のMgO、約4モル%~約12モル%のNa2O、約0.1モル%~約4モル%のP2O5、及び約0.01モル%~約0.16モル%のSnO2を含むことができる。一部の実施形態において、組成は、B2O3、TiO2、K2O、及びZrO2のうちのいずれか1種以上を実質的に含んでいなくてもよい。
【0169】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、少なくとも0.5モル%のP2O5、Na2O、及び任意としてLi2Oを含み、Li2O(モル%)/Na2O(モル%)<1である。加えて、これ等の組成はB2O3及びK2Oを実質的に含んでいなくてもよい。一部の実施形態において、組成はZnO、MgO、及びSnO2を含むことができる。
【0170】
一部の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、約58モル%~65モル%のSiO2、約11モル%~約19モル%のAl2O3、約0.5モル%~約3モル%のP2O5、約6モル%~約18モル%のNa2O、約0モル%~約6モル%のMgO、及び約0モル%~約6モル%のZnOを含むことができる。特定の実施形態において、組成は、約63モル%~65モル%のSiO2、約11モル%~約17モル%のAl2O3、約1モル%~約3モル%のP2O5、約9モル%~約20モル%のNa2O、約0モル%~約6モル%のMgO、及び約0モル%~約6モル%のZnOを含むことができる。
【0171】
一部の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、R2O(モル%)/Al2O3(モル%)<2の組成関係を有することができ、ここで、R2O=Li2O+Na2Oである。一部の実施形態において、65モル%<SiO2(モル%)+P2O5(モル%)<67モル%である。特定の実施形態において、R2O(モル%)+R’O(モル%)-Al2O3(モル%)+P2O5(モル%)>-3モル%であり、ここで、R2O=Li2O+Na2Oであり、R’Oは組成に存在する二価金属酸化物の総量である。
【0172】
企図する実施形態において、ガラス系基体又は物品は、アルカリアルミノシリケートガラス組成、又はアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成を含むことができる。1つの例示的なガラス組成は、SiO2、B2O3、及びNa2Oを含み、(SiO2+B2O3)≧66モル%、及び/又はNa2O≧9モル%である。実施例において、ガラス組成は、少なくとも6質量%の酸化アルミニウムを含んでいる。更なる実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品は、含有量が少なくとも5質量%になるように、1種以上のアルカリ土類酸化物を含有するガラス組成を含むことができる。一部の実施形態において、適切なガラス組成は、K2O、MgO、及びCaOのうちの少なくとも1種を更に含むことができる。特定の実施形態において、本明細書に記載の強化ガラス又はガラスセラミックシート若しくは物品に使用されるガラス組成は、61~75モル%のSiO2、7~15モル%のAl2O3、0~12モル%のB2O3、9~21モル%のNa2O、0~4モル%のK2O、0~7モル%のMgO、及び/又は0~3モル%のCaOを含むことができる。
【0173】
本明細書に記載のガラス系基体又は物品に適した更なる例示的なガラス組成は、60~70モル%のSiO2、6~14モル%のAl2O3、0~15モル%のB2O3、0~15モル%のLi2O、0~20モル%のNa2O、0~10モル%のK2O、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO2、0~1モル%のSnO2、0~1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、及び50ppm未満のSb2O3を含み、12モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦20モル%、及び/又は0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。本明細書に記載のガラス系基体又は物品に適した更に別の例示的なガラス組成は、63.5~66.5モル%のSiO2、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、0~5モル%のLi2O、8~18モル%のNa2O、0~5モル%のK2O、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO2、0.05~0.25モル%のSnO2、0.05~0.5モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、及び50ppm未満のSb2O3を含み、ここで、14モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦18モル%、及び/又は2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0174】
特定の企図する実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品に適したアルカリアルミノシリケートガラス組成は、アルミナ、少なくとも1種のアルカリ金属、一部の実施形態では、50モル%を超えるSiO2、別の実施形態では少なくとも58モル%のSiO2、更に別の実施形態では、少なくとも60モル%のSiO2を含み、比(Al2O3+B2O3)/Σ改質剤(即ち、改質剤の総量)が1より大きく、比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。特定の実施形態において、このガラス組成は、58~72モル%のSiO2、9~17モル%のAl2O3、2~12モル%のB2O3、8~16モル%のNa2O、及び/又は0~4モル%のK2Oを含み、比(Al2O3+B2O3)/Σ改質剤(即ち、改質剤の総量)が1より大きい。更に別の実施形態において、ガラス系基体又は物品は、64~68モル%のSiO2、12~16モル%のNa2O、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、2~5モル%のK2O、4~6モル%のMgO、及び0~5モル%のCaOを含む、アルカリアルミノシリケートガラス組成を含むことができ、ここで、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)-Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%、4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である。別の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品は、2モル%以上のAl2O3及び/又はZrO2、又は4モル%以上のAl2O3及び/又はZrO2を含む、アルカリアリミノシリケートガラス組成を含むことができる。
【0175】
1つ以上の実施形態において、ガラス基体は、約500℃以上の歪み点を示すことができる。例えば、歪み点は約550℃以上、約600℃以上、又は約650℃以上とすることができる。
【0176】
企図する実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品に適したガラスセラミックスの例には、Li2O-Al2O3-SiO2系(即ち、LAS系)ガラスセラミックス、MgO-Al2O3-SiO2系(即ち、MAS系)ガラスセラミックス、及び/又はβ-石英固溶体、β-スポジュメンss、コージェライト、及び二ケイ酸リチウムを含む、優勢な結晶相を含むガラスセラミックスが挙げられる。本明細書に記載のガラス系基体又は物品は、その形成方法によって特徴付けることができる。例えば、本明細書に記載の強化ガラス又はガラスセラミックシート若しくは物品は、フロート成形可能(即ち、フロート法によって形成される)、ダウンドロー可能、及び、特にフュージョンドロー可能又はスロットドロー可能(即ち、フュージョンドロー法又はスロットドロー法等のダウンドロー法によって形成される)として特徴付けることができる。
【0177】
フロート成形可能なガラス系基体又は物品は、滑らかな表面及び一定の厚さによって特徴付けられ、溶融金属、通常はスズのベッド上に溶融ガラスを浮遊させることによって形成される。例示的なプロセスでは、溶融スズ層の表面に供給される溶融ガラスは、浮遊ガラス又はガラスセラミックリボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるにつれ、ガラスリボンが固化し、スズからローラーに取り上げることができる固体ガラス基体になるまで、徐々に温度が低下する。浴から離れると、ガラ系基体が更に冷却され、アニールされて内部応力を低下させることができる。ガラス系物品がガラスセラミックの場合には、フロート法で形成されたガラス基体に対し、1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化処理を施すことができる。
【0178】
ダウンドロー法は、比較的清浄無垢な表面を有する一貫した厚さを有するガラス系基体を生成する。ガラス系基体の平均曲げ強度は、表面の傷の量及び大きさによって制御されるので、接触が最小限に抑えられた清浄無垢な表面は、より高い初期強度を有している。次に、この高強度のガラス系基体が、本明細書に記載のように更に強化されると、得られる強度は、ラッピングされ研磨された表面を有するガラス系基体の強度よりも高くなり得る。ダウンドローしたガラス系基体は、約2mm未満(例えば、1.5mm、1mm、0.75mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mm、0.075mm、0.050mm)の厚さに延伸することができる。加えて、ダウンドローしたガラス系基体は、高価な研削及び研磨をすることなく、最終用途に使用できる非常に平坦で滑らかな表面を有する。ガラス系基体がガラスセラミックの場合には、ダウンドロー法で形成されたガラス基体に対し、1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化処理を施すことができる。
【0179】
フュージョンドロー法は、例えば、溶融ガラス原料を受け取るチャネルを備えた延伸タンクを使用する。チャネルは、その両側の長さに沿って上に開いた堰を有している。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰をオーバーフローする。重力により、溶融ガラスは2つの流動するガラス膜として延伸タンクの外面を流れ下る。延伸タンクのこれ等の外面は、延伸タンク下方の縁部で合流するように、下方かつ内側に延びている。2つの流動するガラス膜は、この縁部で結合し融合して、単一の流動ガラス物品が形成される。フュージョンドロー法は、チャネル上を流れる2つのガラス膜が融合するため、得られるガラス物品の外側表面のいずれも装置のいずれの部分とも接触しないという利点を有している。従って、フュージョンドローしたガラス系基体の表面特性は、かかる接触の影響を受けない。ガラス系基体がガラスセラミックの場合には、フュージョン法で形成されたガラス基体に対し、1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化処理を施すことができる。
【0180】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法では、溶融原料ガラスが延伸タンクに供給される。延伸タンクの底部には、スロットの長さに沿って伸びるノズルを有する開放スロットがある。溶融ガラスはスロット/ノズルを通して流れ、連続ガラス系基体として下方に延伸されアニール領域に入る。ガラス系基体がガラスセラミックの場合には、スロットドロー法で形成されたガラス基体に対し、1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化処理を施すことができる。
【0181】
一部の実施形態において、ガラス系基体は、参照により全内容が本明細書に援用される、米国特許第8,713,972号明細書、米国特許第9,003,835号明細書、米国特許公開第2015/0027169号明細書、及び米国特許公開第20050099618号明細書に記載の薄厚圧延法を用いて形成することができる。より具体的には、ガラス又はガラスセラミック物品は、溶融ガラスの垂直流を供給し、約500℃以上又は約600℃以上の表面温度に維持された、一対の成形ロールで溶融ガラス又はガラスセラミックの供給流を成形して、成形厚を有する成形ガラスリボンを形成し、約400℃以下の表面温度に維持された一対のサイジングロールで、形成したガラスリボンをサイジングして、所望の厚さ及び所望の厚さの一貫性を有する、サイジングしたガラスリボンを生成することによって形成することができる。ガラスリボンの形成に使用される装置は、溶融ガラス供給流を供給するためのガラス供給装置、約500℃以上の表面温度に維持された一対の成形ロールであって、互いに間隔を空けて近接配置され、成形ロール間に、溶融ガラス供給流を受け取り、成形厚を有する成形ガラスリボンを形成する、ガラス供給装置の縦方向下方に位置するガラス成形間隙が画成された成形ロール、及び約400℃以下の表面温度に維持された一対のサイジングロールであって、互いに隣接配置され、サイジングロール間に、形成されたガラスリボンを受け取り、形成されたガラスリボンを薄くして所望の厚さ及び所望の厚さの一貫性を有する、サイジングされたガラスリボンを形成する、成形ロールの縦方向下方に位置するガラスサイジング間隙が画成された、サイジングロールを含むことができる。
【0182】
一部の実施例において、ガラスの粘度によって、フュージョン又はスロットドロー法が使用できない場合、薄厚圧延法を用いることができる。例えば、ガラスが100kP未満の液相粘度を示す場合、薄厚圧延法を使用してガラス又はガラスセラミック物品を形成することができる。ガラス又はガラスセラミック物品は、酸で研磨あるいは酸で処理して表面の傷の効果を除去又は減少させることができる。
【0183】
企図する実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品は、側面によって異なる組成を有している。ガラス又はガラスセラミックシート500の1つ側面の例示的な組成は、69~75質量%のSiO2、0~1.5質量%のAl2O3、8~12質量%のCaO、0~0.1質量%のCl、0~500ppmのFe、0~500ppmのK、0.0~4.5質量%のMgO、12~15質量%のNa2O、0~0.5質量%のSO3、0~0.5質量%のSnO2、0~0.1質量%のSrO、0~0.1質量%のTiO2、0~0.1質量%のZnO、及び/又は0~0.1質量%のZrO2である。本明細書に記載のガラス系基体又は物品の別の側面の例示的な組成は、73.16質量%のSiO2、0.076質量%のAl2O3、9.91質量%のCaO、0.014質量%のCl、0.1質量%のFe2O3、0.029質量%のK2O、2.792質量%のMgO、13.054質量%のNa2O、0.174質量%のSO3、0.001質量%のSnO2、0~0.01質量%のSrO、0.01質量%のTiO2、0.002質量%のZnO、及び/又は0.005質量%のZrO2である。
【0184】
別の企図する実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、SiO2を55~85質量%、Al2O3を0~30質量%、B2O3を0~20質量%、Na2Oを0~25質量%、CaOを0~20質量%、K2Oを0~20質量%、MgOを0~15質量%、BaOを5~20質量%、Fe2O3を0.002~0.06質量%、及び/又はCr2O3を0.0001~0.06質量%含んでいる。別の企図する実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体又は物品の組成は、SiO2を60~72モル%、Al2O3を3.4~8モル%、Na2Oを13~16モル%、K2Oを0~1モル%、MgOを3.3~6モル%、TiO2を0~0.2モル%、Fe2O3を0.01~0.15モル%、CaOを6.5~9モル%、及び/又はSO3を0.02~0.4モル%含んでいる。
【0185】
本開示の別の態様は、ガラス基体を強化する方法に関連している。1つ以上の実施形態において、本方法は、転移温度を有するガラス基体(シート状であってよい)を、固体又は液体物質を含まない間隙を横断する伝導によって、ガラスシートからヒートシンクに熱エネルギーを移動させることによって、転移温度より高い温度から転移温度より低い温度に冷却して、熱強化ガラス物品を生成し、次いで熱強化したガラス物品を化学強化するステップを含んでいる。1つ以上の実施形態において、本方法は、ガラスシートを離れる熱エネルギーの20%以上が、間隙を横断してヒートシンクに受け取られるように、ガラスシートからヒートシンクへ熱エネルギーを移動させて、ガラスシートを熱強化するステップを含んでいる。一部の実施例において、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、又は約60%以上の熱エネルギーが、伝導によって、間隙を横断して、ガラスシートからヒートシンクに移動する。一部の実施例において、冷却速度は、約-270℃/秒以上(例えば、-280℃/秒以上、-290℃/秒以上、-300℃/秒以上、-310℃/秒以上、又は-320℃/秒以上)とすることができる。
【0186】
1つ以上の実施形態において、熱強化したガラス物品は、熱強化したガラスシートのどの部分も除去せずに化学強化される。例えば、熱強化したガラス物品は、熱強化したガラス物品の厚さの3%以上(あるいは2%以上又は1%以上)を除去せずに化学強化される。
【0187】
一部の実施形態において、熱強化したガラス物品は厚さを有し、その厚さの0.17倍以上のDOCを有している。一部の実施例において、熱強化及び化学強化したガラス物品は厚さ及び厚さの0.17倍以上のDOCを示す。1つ以上の実施形態において、熱強化したガラス物品を化学強化するステップが、DOCを維持しつつ、約700MPa以上の表面CSを生成するステップを含んでいる。
【0188】
1つ以上の実施形態によれば、熱強化物品シートを化学強化するステップが、ガラス系層の第1の表面から、約10マイクロメートル以上であるDOLまで延びる、化学強化領域を生成するステップを含んでいる。
【0189】
1つ以上の実施形態の方法において、熱強化ガラス物品を化学強化するステップが、熱強化ガラスシートを、KNO3、NaNO3、及びLiNO3のうちの任意の1種以上を含む溶融塩浴に浸漬するステップを含んでいる。一部の実施形態において、溶融塩浴は、KNO3とNaNO3とを含み、約380℃~約430℃の温度を有している。
【0190】
本開示のもう1つの態様は、前面、背面、及び側面を有するハウジング、少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含む電気部品、及びカバー物品を含む消費者向け電子製品に関連している。1つ以上の実施形態において、電気部品はハウジングの内部に収容するか、少なくとも部分的にハウジングの内部に設けることができる。1つ以上の実施形態のディスプレイはハウジングの前面又は前面の近傍に配置することができる。一部の実施形態において、カバー物品は、ディスプレイ上のハウジングの前面又はその上方に設けられている。カバーガラス系物品は、本明細書に記載の熱強化及び化学強化したガラス系物品の1つ又は複数の実施形態を含むことができる。1つ以上の実施形態の消費者向け電子製品は、携帯電話、ポータブルメディアプレイヤー、ウェアラブル電子装置(例えば、時計、フィットネスモニタ)、ノート型コンピュータ、又はタブレットコンピュータであってよい。
【0191】
図14Aにおいて、1つ以上の実施形態のガラス系物品1310は、曲率及び/又は可変断面寸法Dを有している。かかる物品は、寸法Dの平均値として又は寸法Dの最大値として、本明細書に開示の厚さを有することができる。ガラス系物品1310は湾曲シートとして示してあるが、本明細書に開示のプロセスによって、複雑な形状等、他の形状を強化することができる。企図する実施形態において、ガラス系物品1310は自動車の窓(例えば、サンルーフ)、レンズ、コンテナ、又は他の用途として用いることができる。
【0192】
一部の実施形態において、本明細書に記載のガラス系物品は、ガラスシートを熱強化する前に、ガラス上に配置された1つ以上のコーティングを有している。本明細書に記載のプロセスは、1つ以上のコーティングを有する強化ガラスシートの生成に使用することができ、一部のかかる実施形態において、コーティングは熱強化の前にガラス上に設けられ、熱強化プロセスの影響を受けない。本開示のガラスシートに有益に維持される具体的なコーティングには、低Eコーティング、反射コーティング、反射防止コーティング、指紋防止コーティング、カットオフフィルター、熱分解コーティング等が挙げられる。
【0193】
本開示の別の態様は、本明細書に記載のガラス系物品を含むラミネート体に関連している。例えば、
図14Bに示すように、1つ以上の実施形態において、ラミネート体は、第1のガラス系シート16、第2のガラス系シート12、及び第1のガラス系シートと第2のガラス系シートとの間に配置された中間層14を含むことができ、第1のガラス系シート及び第2のガラス系シートの一方又は両方が、本明細書に開示の熱強化及び化学強化されている。
【0194】
1つ以上の実施形態において、第1のガラス系シート及び第2のガラス系シートの一方を冷間成形することができる。
図14Cに示す例示的な冷間成形方法において、比較的厚く屈曲したガラスシート12に、ガラスシート16をラミネートすることができる。この冷間成形ラミネーションの結果、中間層14に隣接する薄厚のガラスシート17の表面は、薄厚ガラスシートの対向表面19よりも圧縮レベルが低くなる。更に、この冷間成形ラミネーションプロセスは、表面19に高い圧縮応力レベルをもたらすことができ、この表面を摩耗による破壊に対する耐性を増加させると共に、より厚いガラスシート12の表面13に更に圧縮応力を加えることができ、この表面も摩耗による破壊に対する耐性が増加する。一部の非限定的な実施形態において、例示的な冷間成形プロセスは、中間層材料の軟化温度又はそれより僅かに高い温度(例えば、約100℃~約120℃)、即ち、個々のガラスシートの軟化温度より低い温度で実施することができる。かかるプロセスは、オートクレーブ又は別の適切な装置内の真空バッグ又はリングを使用して行うことができる。
図14D~14Eは、本開示の一部の実施形態による、例示的な内側ガラス層断面の応力プロファイルを示す図である。
図14Dにおいて、薄いガラスシート16の応力プロファイルは、中央張力領域と共に、実質的に対称な圧縮応力が、表面17、19示されていることが認められる。
図14Eにおいて、例示的な冷間成形された実施形態によれば、薄いガラスシート16の応力プロファイルは、圧縮応力のシフトをもたらす、即ち、中間層14に隣接する表面17は、対向する表面19と比較して、圧縮応力が低下することが観察できる。この応力の差は、以下の関係を用いて説明することができる。σ=Ey/ρ、ここで、Eはビーム材料の弾性係数、yは重心軸から関心のある点(ガラス表面)までの垂直距離を表し、ρはガラスシートの重心に対する曲率半径である。冷間成形による内部ガラス層16の曲げによって、中間層14に隣接する表面17に機械的引張応力又はガラスシート16の対向する表面19と比較して低い圧縮応力が誘起されることになる。
【0195】
1つ以上の実施形態において、ラミネート体は、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート、防音PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、アイオノマー、熱可塑性材料、及びこれ等の組み合わせを含み、これに限定されないポリマー材料を含む中間層を含んでいる。
【0196】
一部の実施形態において、第1のガラス系シートは複雑に湾曲し、ラミネート体の第1の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び第1の表面に対向する、ラミネート体の第2の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、その間に厚さを有し、第2のガラス系シートは複雑に湾曲し、ラミネート体の第3の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び第3の表面に対向する、ラミネート体の第4の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、その間に厚さを有している。かかる実施形態において、第3及び第4の表面は、各々CS値を有し、第4の表面のCS値が第3の表面のCS値より大きい。
【0197】
本明細書において、「複雑曲線」、「複雑に湾曲した」、「複雑湾曲基体」「複雑に湾曲した基体」は、展開不能形状とも呼ばれ、球面、非球面、トロイダル面を含みこれに限定されない、例えば、トロイダル形状、回転楕円体、及び楕円体であり得る、2つの直交軸の曲率(水平および垂直軸)が異なる、単純又は複合曲線を有する非平面形状を意味する。実施形態による複雑に湾曲したラミネート体は、かかる表面のセグメント又は部分を含んでいてよく、又はかかる曲線及び表面の組み合わせから構成されていてもよい。1つ以上の実施形態において、ラミネート体は、大半径と交差曲率を含む複合曲線を有することができる。実施形態による複雑に湾曲したラミネート体は、2つの独立した方向に異なる曲率半径を有することができる。1つ以上の実施形態によれば、複雑に湾曲したラミネート体は、所与の寸法に平行な軸に沿って湾曲すると共に、同じ寸法に垂直な軸に沿っても湾曲している「交差曲率」を有するとして特徴付けることができる。有意な最小半径を有意な交差曲率及び/又は屈曲の深さと組み合わせると、ラミネート体の曲率は更に複雑になり得る。一部のラミネート体は、平坦なガラス基体の長手方向の軸に垂直でない屈曲軸に沿った屈曲も含むことができる。非限定的な例として、自動車のサンルーフは、通常、約0.5m×1.0mであり、短軸に沿って2~2.5mの曲率半径を有し、長軸に沿って4~5mの曲率半径を有している。
【0198】
1つ以上の実施形態において、中間層は、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エチレンビニルアセテートコポリマー又はポリウレタン熱可塑性樹脂(TUP)を含むことができる。
【0199】
1つ以上の実施形態において、第1のガラス系基体又は第2のガラス系基体の一方が、約0.2mm~約0.7mmの厚さを有することができる。一部の実施形態において、ラミネート体の第4の表面は、第4の表面が平坦状態にあるときより大きいCSを有し、ラミネート体は光学的歪みを有さない。
【0200】
本開示の別の態様は、開口部及び開口部に配置された、本明細書に記載のラミネート体を有する車両に関連している。ラミネート体の厚さは、車両に応じて変えることができる。例えば、車両は大型トラックを含むことができ、ラミネート体は約3mmを超える厚さを有することができる。一部の実施形態において、車両は、乗用車又はトラックを含むことができ、約2.6mm以下の厚さを有することができる。
【0201】
実施例
以下の実施例によって、様々な実施形態が更に明らかになるであろう。以下の実施例において、特定の厚さtのガラス系基体を、所望の熱伝達率hで、所望の初期温度T0から熱強化した。
【0202】
熱強化装置は、ホットゾーン、遷移ゾーン、及び冷却又は焼き入れゾーンの3つのゾーンを有している。本装置は上部及び下部熱軸受け(又はヒートシンク)を含み、ホットゾーン及び焼き入れゾーンにおける、上部及び下部熱軸受け間の間隙は、所望の間隔にセットされる。ホットゾーン、遷移ゾーン、及び焼き入れゾーンにおけるガス流速は、空気ベアリング上のガラス基体の心出しが確実に行われるように設定される。ホットゾーンは、所望のT0に予熱され、この温度から、ガラス系基体が、その後高い熱伝達率(h、単位はcal/cm2-s-℃)で焼き入れされる。均一な加熱を保証するために、ガラス系基体はバッチ又は連続炉等の別の予熱装置で予熱される。ガラス系基体は、ホットゾーンに投入される前に、概して、5分を超えて予熱される。ソーダライムガラス系基体については、約450℃で予熱される。予熱段階の後、ガラス系基体はホットゾーンに投入され、ガラスが均一にT0に平衡化される。T0は所望の熱強化レベルによって決定することができるが、一般に、軟化点とガラス転移温度との範囲に保たれる。平衡するまでの時間は、少なくともガラス系基体の厚さに依存する。例えば、約1.1mm以下の厚さを有するシート状のガラス系基体は、約10秒で平衡する。シート状の3mm厚のガラス系基体は、約10秒~30秒で平衡する。約6mmまでのより厚いシートについては、平衡時間は約60秒であってよい。ガラス系基体がT0に平衡化された後、ガラス系基体は、遷移ゾーンを通して、空気ベアリング上を迅速に移動して、冷却又は焼き入れゾーンに入る。焼き入れゾーンにおいて、ガラス系基体は、ガラス転移温度Tgより低い温度に焼き入れされる。ガラス系基体は、所望の焼き入れの程度、及び/又は得られたガラス系基体を取り出す際の所望の温度に応じ、1秒、10秒、又は数分以上、任意の時間焼き入れゾーン内に保持することができる。取り出し後、必要に応じ、ガラス系基体を冷却してから取り扱うことができる。
【0203】
実施例が示すように、熱強化プロセス(即ち、選択された熱伝達係率h)によって課せられる制限を除き、厚さに制限はない。即ち、従来の熱強化プロセスにおいては、約1.5mmより大きい厚さに制限されているのに対し、以下の実施例は、本開示の実施形態が大幅に薄厚でよいことを実証している。以下の実施例において、初期温度T0は、一般に、ガラス系基体の軟化点と軟化点より約100℃低い温度との間で選択された。
【0204】
熱強化した後、ガラス系基体を溶融塩浴に浸漬することによって、化学強化処理を施した。溶融浴の組成及び浸漬時間を以下に示す。本明細書が実証するように、一部の実施形態において、化学強化処理は、熱強化処理によって生成されたCSをアニールアウト又は低減するほど高くないが、所望のDOLを得る及び所望のDOLを短時間で得るのに十分高い温度で実施される。熱強化されたガラス系物品は、非常に高い仮想温度を有しているため、ガラス系物品は平衡せず、高温での応力緩和は、平衡粘度曲線から予想されるよりも遥かに速く生じる。
【0205】
得られた熱強化及び化学強化されたガラス系物品は、2つの簡単な技術によって特徴付けることができる、即ち、1)表面CS、CS、及びDOLは、FSM技術を用いて測定することができ、2)CT及びDOCはSCALPで測定した。
【0206】
一部の実施形態において、本明細書に記載のガラス系基体の機械的性能に対する熱強化及び化学強化の効果は、落下試験、引掻き試験、押し込み試験、4点曲げを含みこれに限定されない、様々な方法で評価することができる。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のガラス系基体の性能は、示されたCS、CT、DOC、及び/又はDOL値によって予測することができる。例えば、表面CSが高いと、曲げ、引掻き、及び押し込み試験が大幅に向上する。仮想温度が高いと、押し込み及び引掻き試験において、損傷抵抗が向上する。落下試験は、損傷耐性試験であって、DOCや恐らく仮想温度にも強く影響を受ける。従って、本明細書に記載の熱強化プロセス及び化学強化プロセスを受けた1つ以上の実施形態のガラス系物品は、熱強化又は化学強化プロセス単独、又は公知の熱強化プロセスと化学強化プロセスとの組み合わせを用いて強化されたガラス系物品より性能が優れている。この向上した性能が、様々に異なるガラス系組成によって示される。
【実施例1】
【0207】
ガラス系基体を熱強化(又はかかる基体の仮想温度を上昇させるために強化した)後に達成可能な化学強化の向上を実証するために、69モル%のSiO2、8.5モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、1.2モル%のK2O、6.5モル%のMgO、0.5モル%のCaO、及び0.2モル%のSnO2の公称組成、並びに同じ厚さを有するガラス系物品を、約575℃~約725℃の様々な温度で仮想温度化した。換言すれば、ガラス系物品を、構造緩和時間の約3倍、約575℃~約725℃のT0に加熱し、次いで室温に焼き入れして高温状態を凍結した。
【0208】
表4に示すように、同じ公称組成及び厚さを有するガラス系基体も、800℃のT0に加熱すし、次いで、0.069cal/cm2-s-℃、0.028cal/cm2-s-℃、及び0.013cal/cm2-s-℃の熱伝達率(h)で焼き入れすることによって熱強化した。
【0209】
次に、得られた熱強化ガラス系物品を、約410℃の温度を有する100%のKNO3の溶融塩浴に、約8時間まで、様々な時間浸漬することによって、イオン交換による化学強化を実施した。熱強化及び化学強化した物品の各々をFSM技術で評価し、表4に示すように、イオン交換拡散係数を式DOL=2*1.4*SQRT(D*t) 又は2*1.4*√(D*t)で推定した、ここでDが拡散係数である。
【0210】
表4に示すように、熱強化及び化学強化したガラス系物品のイオン交換拡散係数が、高い仮想温度状態に対応していることが観察される。具体的には、より強く又は高度に熱強化されたガラス系物品は、より高い仮想温度、及びより高い拡散係数を示す。得られた熱強化ガラス系物品は、深いDOCを示し、従って、その後の化学強化によって(熱強化プロセスによって当初生成された)DOCが著しく低下してはいない。
【0211】
【実施例2】
【0212】
表5に示すように、実施例1のガラス基体と同じ組成を有し、約1.1mmの厚さを有するガラス基体を様々な熱伝達率で熱強化し、次いで化学強化した。
【0213】
具体的には、実施例2A-1は、約800℃のT0に加熱し、次いで、h=0.069cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス系物品を含み、実施例2B-1は、約800℃のT0に加熱し、次いで、h=0.028cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス系物品を含み、実施例2C-1は、約800℃のT0に加熱し、次いで、h=0.013cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス系物品を含んでいた。実施例2A-2~2A-5、2B-2~2B-5、及び2C-2~2C-5は、同様のガラス基体を含み、それぞれ実施例2A-1、2B-1、及び2C-1と同じ方法で熱強化したガラス物品であるが、次に410℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に10分~1時間の間で、表5に従った種々の時間浸漬するイオン交換によって化学強化したガラス物品を含んでいた。
【0214】
【0215】
比較例2Dは2A-1~2A-5、2B-1~2B-5、及び2C-1~2C-5と同様のガラス基体を含んでいたが、420℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬することを含む、公知の化学強化処理のみを施した(熱強化せず)。得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表6~8に示す。表6~8に示すように、比較例2Dは、約44マイクロメートルのDOL及び約750MPaの表面CSを示した。目下の化学強化条件を選択することにより、実施例2A~2Cの熱強化及び化学強化ガラス物品は、遥かに短い浸漬時間(又は化学強化時間)で、比較例2Dと同等の表面CS値を示す一方、化学強化プロセスだけで達成可能なDOCの数倍大きいDOCも示した。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
より高い熱伝達率で熱強化する(又はより強く熱強したガラス物品を生成する)ことにより、熱強化プロセスによって生成されたDOCを有意に減少させることなく、その後の化学強化によって高い表面CS値を生成することができる。
図6~8に示すように、より高い熱伝達率(即ちh=0.069cal/cm
2-s-℃)で熱強化したガラス物品は、化学強化した後にDOC値を維持している。DOC値の維持は
図15にも示してあり、図は高い熱伝達率で熱強化した実施例2Aのガラス物品が、DOLの増加に伴うDOCの傾斜が著しく浅い又は減少が少ないことを示している。
【0220】
(熱強化及び/又は化学強化する前の)実施例2のガラス基体、実施例2A-1、2B-1、及び2C-1の熱強化したガラス物品、実施例2A-2、2B-2及び2C-2の熱強化及び化学強化したガラス物品、及び比較例2Dの化学強化したガラス物品の機械的性能を比較した。具体的には、これ等のガラス基体又は物品のサンプルを(2種類のサンドペーパー落下面を使用して)漸増落下試験、4点曲げ試験、ビッカース押し込み閾値試験、及びヌープ引掻き試験にかけた。各々の試験結果を表9に示す。
【0221】
漸増落下試験において、約50mm×110mmの大きさにガラス基体又は物品を切断し、同様の携帯電話のハウジングに接着した。次いで、このアセンブリを、20cm~220cmまで、20cm間隔で、180グリットのサンドペーパー上にそれぞれ連続的に落下させた。ガラス基体又は物品がサンドペーパーに衝突するように、アセンブリを落下させた。220cmまでのすべての落下に耐えたガラスは、次に、同じ高さ間隔で、破壊するまで30グリットのサンドペーパー上に落下させた。平均の落下高を表9に示す。漸増落下試験は、繰り返し損傷が生じたときのガラス性能の大まかな評価が得られる。
【0222】
4点曲げ試験において、18mmの荷重スパンと36mmのサポートスパンを使用し、圧縮側にテープを用い、サンプルの張力側にテフロン(登録商標)表面を接触させ、各々のガラス基体又は物品のサンプルに5mm/分の曲げ荷重をかけ、破壊するまで試験した。ローディングナイフ下で破損したサンプルは考慮しなかった。
【0223】
ビッカース押し込み試験において、負荷を増加させながら、ガラス基体又は物品に繰り返しダイアモンドチップ(角度136°)を押し込んだ。各々の圧入は、各々の圧痕から放射状の亀裂を生じさせる可能性を有している。各々の圧入負荷における放射状の亀裂の平均数を計数することによって、圧入あたり平均2つの亀裂が生じる負荷によって亀裂閾値(又は50%亀裂閾値)を定義することができる。
【0224】
ヌープ引掻き試験において、ガラス基体及び物品のサンプルを、まず動的荷重又は傾斜荷重下においてヌープ圧子で引っ掻いて、サンプル母集団の横方向の亀裂発生荷重範囲を特定した。適用可能な荷重範囲を特定した後、一連の増加する一定荷重引掻き(1負荷当り最低3回以上)を実施して、ヌープ引掻きを特定した。ヌープ引掻きは、試験片を1)溝幅の2倍を超える持続的な側面亀裂がある、2)溝内に損傷が抑えられているが、肉眼で見える溝幅の2倍未満の側面亀裂損傷がある、3)溝幅の2倍を超える、大きい表面下側方亀裂が存在及び/又は引掻きの頂点にメジアン亀裂があるという、3つの破壊モードの1つと比較することによって決定することができる。
【0225】
【実施例3】
【0226】
表10に示すように、実施例1のガラス基体と同じ組成及び約0.7mmの厚さを有するガラス基体を様々な熱伝達率で熱強化し、次いで化学強化した。
【0227】
具体的には、実施例3A-1は、約800℃のT0で加熱し、次いで、h=0.073cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含んでいた。実施例3A-2~3A-4は実施例3A-1と同様のガラス基体を含み、実施例3A-1と同じ方法で熱強化したガラス物品であるが、次に410℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に10分~1時間の間で、表10に従った種々の時間浸漬するイオン交換によって化学強化したガラス物品を含んでいた。
【0228】
【0229】
比較例3Bは同様の基体を含んでいたが、420℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬することを含む、公知の化学強化処理のみを施した(熱強化せず)。得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表11に示す。表11に示すように、比較例3Bは、約45マイクロメートルのDOL及び約710MPaの表面CSを示した。目下の化学強化条件を選択することにより、実施例3A-1~3A-4の熱強化及び化学強化ガラス物品は、遥かに短い浸漬時間(又は化学強化時間)で、比較例3Bと同等の表面CS値を示す一方、化学強化プロセスだけで達成可能なDOCの数倍大きいDOCも示した。
【0230】
【0231】
(熱強化及び/又は化学強化する前の)実施例3のガラス基体、実施例3A-1及び3A-2の熱強化したガラス物品、実施例2A-2、2B-2及び2C-2の及び比較例3Bの化学強化したガラス物品の機械的性能を比較した。具体的には、これ等のガラス基体又は物品のサンプルを(2種類のサンドペーパー落下面を使用して)漸増落下試験、4点曲げ試験、ビッカース押し込み閾値試験、及びヌープ引掻き試験にかけた。各々の試験結果を表12に示す。
【0232】
【実施例4】
【0233】
表13に示すように、実施例1のガラス基体と同じ組成及び約0.55mmの厚さを有するガラス基体を、様々な熱伝達率で熱強化し、次いで化学強化した。
【0234】
具体的には、実施例4A-1は、約800℃のT0で加熱し、次いで、h=0.084cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含んでいた。実施例4A-2~4A-5は、実施例4A-1と同様のガラス基体を含み、実施例4-1と同じ方法で熱強化し、次に410℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に10分~1時間の間で、表14に従った種々の時間浸漬するイオン交換によって化学強化したガラス物品を含んでいた。
【0235】
【0236】
比較例4Bは同様の基体を含んでいたが、420℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬することを含む、公知の化学強化処理のみを施した(熱強化せず)。得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表14に示す。表14に示すように、比較例4Bは、約44マイクロメートルのDOL及び約750MPaの表面CSを示した。目下の化学強化条件を選択することにより、実施例4A-1~4A-5の熱強化及び化学強化ガラス物品は、遥かに短い浸漬時間(又は化学強化時間)で、比較例4Bと同等の表面CS値を示す一方、化学強化プロセスだけで達成可能なDOCの数倍大きいDOCも示した。
【0237】
【0238】
(熱強化及び/又は化学強化する前の)実施例4のガラス基体、実施例4A-1及び4A-2の熱強化したガラス物品、及び比較例4Bの化学強化したガラス物品の機械的性能を比較した。具体的には、これ等のガラス基体又は物品のサンプルをビッカース押し込み閾値試験、及びヌープ引掻き試験にかけた。各々の試験結果を表15に示す。
【0239】
【実施例5】
【0240】
表16に示すように、ソーダライムシリケート組成及び約1.1mmの厚さを有するガラス基体を、様々な熱伝達率で熱強化し、次いで化学強化した。
【0241】
具体的には、実施例5A-1は、約710℃のT0で加熱し、次いで、h=0.086cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含んでいた。実施例5A-2~5A-9は、実施例5A-1と同様のガラス基体を含み、実施例5-1と同じ方法で熱強化、次に約380℃~約420℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に30分~4時間の間で、表16に従った種々の時間、浸漬するイオン交換によって化学強化したガラス物品を含んでいた。
【0242】
【0243】
得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL及び、DOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表17に示す。目下の化学強化条件を選択することにより、実施例5A-2~5A-9の熱強化及び化学強化ガラス物品は、比較的短い浸漬時間(又は化学強化時間)で、高い表面CS値を示す一方、ガラス物品の厚さの19%、更には厚さの21%(即ち、0.19・t又は0.21・t)を超える総DOCも示した。
【0244】
【0245】
イオン交換拡散係数(単位cm
2/秒)は、FSMから取得した応力データ(及び表17のDOLの情報)を用いて、式DOL=2*1.4*SQRT(D*t)、又は2*1.4*√(D*t)で推定した、ここでDが拡散係数である。同様のガラス基体の熱強化前及びフロート時(約550℃のTf)におけるイオン交換拡散係数も同様の方法及び式によって推定した。比較の結果を表18及び
図16に示す。表18及び
図16に示すように、ソーダライムガラス基体のイオン交換拡散係数は、本明細書に記載の熱強化後に2倍に増加している。
【0246】
【実施例6】
【0247】
表19に示すように、57.5モル%のSiO2、16.5モル%のAl2O3、16モル%のNa2O、2.8モル%のMgO、及び6.5モル%のP2O5の公称組成、並びに約0.8mmの厚さを有するガラス基体を様々な熱伝達率で熱強化し、次いで化学強化した。
【0248】
具体的には、実施例6A-1は約830℃のT0に加熱し、次いで、h=0.025cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含み、実施例6B-1は約830℃のT0に加熱し、次いで、h=0.045cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含み、実施例6C-1は約830℃のT0に加熱し、次いで、h=0.080cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含んでいた。実施例6A-2~6A-4、6B-2~6B-4、6C-2~6C-4は同様のガラス基体を含み、それぞれ実施例6A-1、6B-1、及び6C-1と同じ方法で熱強化したガラス物品であるが、次に約390℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に、表19に従って、15分、30分、及び60分浸漬するイオン交換によって化学強化したガラス物品を含んでいた。
【0249】
【0250】
得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表20に示す。表20及び
図17に示すように、熱強化レベルが高ければ高い程、より深いDOCが得られ、ひいては、それがその後の化学強化の後であっても実質的に維持される。従って、より強く熱強化することによって、DOCを犠牲にすることなく、より深いDOL値及びより高い表面CS値を達成することができる。
【0251】
【0252】
イオン交換拡散係数(単位cm
2/秒)は、FSMから取得した応力データ(及び表19のDOLの情報)を用いて、式DOL=2*1.4*SQRT(D*t)、又は2*1.4*√(D*t)で推定した、ここでDが拡散係数である。ガラス転移温度で1時間アニールした(熱強化又は化学強化してない)同様のガラス系基体のイオン交換拡散係数も測定した。比較の結果を表21及び
図17に示す。表21及び
図17に示すように、所与の温度において、ガラス基体のイオン交換拡散係数は、ガラスが本明細書に記載の熱強化を受けた後、約2倍に増加している。
【0253】
【実施例7】
【0254】
表22に示すように、64モル%のSiO2、15.7モル%のAl2O3、11モル%のNa2O、6.25モル%のLi2O、1.2モル%のZnO、及び2.5モル%のP2O5の公称組成、並びに約0.8mmの厚さを有するガラス基体を様々な熱伝達率で熱強化し、次いで化学強化した。
【0255】
具体的には、実施例7A-1は約810℃のT0に加熱し、次いで、h=0.078cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含んでいた。実施例7A-2~7A-5は同様のガラス基体を含み、実施例7A-1と同じ方法で熱強化したガラス物品であるが、次に約380℃~約390℃の温度を有する100%KNO3の溶融塩浴に、表22に従って15分及び30分浸漬するイオン交換によって化学強化したガラス物品を含んでいた。
【0256】
【0257】
得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表23に示す。表23に示すように、適切な化学強化条件を選択することにより、1GPaを超える表面CS、及び厚さの20%を超えるDOCを達成することができる。加えて、得られた熱強化及び化学強化したガラス物品は、割れたとき細かく砕けることはなかった。
【0258】
【0259】
実施例7A-3、7A-4、及び7A-5の熱強化及び化学ガラス物品のK
2O、Na
2O及びLi
2Oの濃度を深さの関数としてマイクロプローブで分析した。その結果をそれぞれ
図18、19、20に示す。これ等の図は、約6マイクロメートル(
図18)、5.5マイクロメートル(
図19)、及び7.5マイクロメートル(
図20)まで減少する表面の高いK
2O濃度を示している。Na
2Oの濃度は、K
2Oの減少に対応して増加している。
【0260】
64モル%のSiO
2、15.7モル%のAl
2O
3、11モル%のNa
2O、6.25モル%のLi2O、1.2モル%のZnO、及び2.5モル%のP
2O
5の公称組成、並びに約0.8mmの厚さを有するガラス基体を、実施例7A-1と同じ条件に従って熱強化して、比較例7B-1~7B-4を形成した。実施例7B-5~7B-8は、同様のガラス基体を含み、比較例7B-1~7B-4と同じ方法で熱強化したガラス物品であるが、次に80%のKNO
3及び20%のNaNO
3を含み、390℃の温度を有する混合溶融塩浴において0.35時間(実施例7B-5を形成)、1時間(実施例7B-6を形成)、1.5時間(実施例7B-7を形成)、及び2時間(実施例7B-8を形成)化学強化したガラス物品である。比較例7B-1~7B-4、及び実施例7B-5~7B-8をSCALPで分析した結果を
図21~24に示す。
図21~24に示すように、熱強化ガラス物品を化学強化することによって、深いDOCを維持する(又はDOC減少を最小限に抑える)一方、100MPaを超えて表面CS値を増加させることができる。理論に束縛されるものではないが、熱強化したガラス物品の固有の特性により、かかる方法による化学強化及び応力プロファイルの観点(CS、CT、DOL、及びDOC)から得られる特性を可能にする。
【0261】
実施例7B-1~7B-8と同じ組成及び厚さを有するガラス基体を熱強化せずに、390℃の温度を有する、80%KNO
3及び20%NaNO
3の溶融塩浴に0.35時間(比較例7C-1)、1時間(比較例7C-2)、1.5時間(比較例7C-3)及び2時間(比較例7C-4)浸漬する化学強化のみを施した。得られたCTを、比較例7B-1~7B-4の熱強化サンプルのそれぞれ、及び熱強化及び化学強化した実施例7B-5~7B-8のそれぞれのCTと共に
図25にプロットした。
図26は比較例7B-1と実施例7B-5との間、比較例7B-2と実施例7B-6との間、比較例7B-3と実施例7B-7との間、及び比較例7B-4と実施例7B-8との間におけるCTの変化(又はデルタCT)を示している。
図26は、化学強化時間(又はイオン交換時間)を関数とした化学強化前後のCTの変化を示している。
【0262】
図27は、実施例7B-5~7B-8の各々の表面CS及びDOLにおけるCSを化学強化時間(又はイオン交換時間)の関数としてプロットした図である。
図28は、
図26のCTの変化と共に、実施例7B-5~7B-8の各々のDOLにおけるCSを化学強化時間(又はイオン交換時間)の関数としてプロットした図である。
図29は実施例7B-5~7B-8の各々のDOLの変化を示す図である。
【0263】
次に、タングステンカーバイドのスクライブを用い、実施例7B-5~7B-8を手で打撃して破砕した。実施例7B-6~7B-8は、実施例7B-6~7B-8より大幅に低いCTを有する実施例7B-5と比較して、小さいアスペクト比を有するより小さい断片に破砕された。
【0264】
実施例7B-1~7B-8と同じ組成及び厚さを有するガラス基体を熱強化せずに、390℃の温度を有する、80%KNO
3及び20%NaNO
3の溶融塩浴に4時間(比較例7C-5)、8時間(比較例7C-6)、及び16時間(比較例7C-7)浸漬する化学強化のみを施した。比較例7C-2~7C-7及び実施例7B-5~7B-8の表面CSを化学強化時間の関数として
図30にプロットした。比較例7C-2~7C-7及び実施例7B-5~7B-8のDOLを化学強化時間の関数として
図31にプロットした。比較例7C-2~7C-7及び実施例7B-5~7B-8のDOLにおけるCS(又は膝応力)を化学強化時間の関数として
図32にプロットした。
【実施例8】
【0265】
実施例7に使用された基体と同じ組成及び厚さを有するガラス基体を同じT0値(即ち、810℃)に加熱し、次いで、異なるh値(即ち、h=0.025cal/cm2-s-℃、h=0.050cal/cm2-s-℃、及びh=0.080cal/cm2-s-℃)で焼き入れして、高レベルに熱強化したガラス物品(比較例8A-1)、中レベルに熱強化したガラス物品(比較例8B-1)、及び低レベルに熱強化したガラス物品(比較例8C-1)を形成した。比較例8A-1、8B-1、及び8C-1の3つのサンプルの表面CS、膝CS、CT、及びDOCを評価した。表24に示すように、実施例8A-2~8A-4、実施例8B-2~8B-4、及び実施例8C-2~8C-4は、実施例7と同様のガラス基体を含み、それぞれ、比較例8A-1、8B-1、及び8C-1と同じ方法で熱強化し、その後、390℃の温度を有する混合溶融浴(様々な濃度のNaNO3及びKNO3を含む)に2時間浸漬して化学強化したものであった。
【0266】
【0267】
図33は、実施例8A-2~8A-4、実施例8B-2~8B-4、及び実施例8C-2~8C-4のCTの測定値(SCALPによって測定)を、溶融塩浴中のNaNO
3の濃度を関数として示す図である。
図33は、後に化学強化されて、実施例8A-2~8A-4、実施例8B-2~8B-4、及び実施例8C-2~8C-4が形成された、比較例8A-1、8B-1、及び8C-1の3つのサンプルの各々の初期CT値(SCALPによって測定)も含んでいるが、比較例8A-1、8B-1、及び8C-1は化学強化されてはいないが、「対照」値及び条件として示したものである。
【0268】
図34は比較例8A-1と実施例8A-2~8A-4との間、比較例8B-1と実施例8B-2~4との間、比較例8C-1と実施例8C-2~4との間におけるCTの変化(又はデルタCT)を示している。
図34及び35に示すように、実施例8C-2~4は、化学強化後のCTの変化率が最も大きい。これ等の物品は、低レベルの熱強化ガラス物品から形成されたものであった(比較例8C-1)。理論に束縛されるものではないが、仮想温度が最も低い熱強化ガラス物品は、その後化学強化したとき、表面圧縮応力を最大量増大させることができることを示している。
【0269】
実施例8A-2~8A-3、実施例8B-2~8B-3、及び実施例8C-2~8C-3の表面CS及びDOLにおけるCS(又は膝CS)を測定し、NaNO
3の濃度を関数として
図36に示す。
図36に示すように、化学強化に使用した溶融塩浴中のNaNO
3の濃度が上昇するにつれ、表面CSが低下する。
図36は、実施例8A-2、8B-2、及び8C-2間、及び実施例実施例8A-3、8B-3、及び8C-3間において表面CS値の類似性も示している。
【0270】
図37は、実施例8A-2~8A-3、実施例8B-2~8B-3、及び実施例8C-2~8C-3のDOLの測定値をNaNO
3の濃度を関数としてプロットした図である。
【0271】
実施例8A-2~8A-4、実施例8B-2~8B-4、及び実施例8C-2~8C-4のCT及び蓄積張力エネルギー値を表25に示す。
【0272】
【0273】
実施例8A-2~8A-4、実施例8B-2~8B-4、及び実施例8C-2~8C-4を実施例7で説明したのと同じ方法で破砕した。蓄積張力エネルギー値がより低い実施例は、より高いアスペクト比及び/又はより少ない破片の破砕を示した。理論に束縛されるものではないが、これ等の実施例は、破砕時のダイシングが少ないと言うことができる。
【0274】
実施例8B-5及び8C-5は、同様のガラス基体を含み、比較例8B-1及び8C-1と同様の方法で熱強化したものであるが、その後、20%のNaNO
3及び80%のKNO
3を含み、430℃の温度を有する混合溶融浴に1時間浸漬して化学強化したものであった。
図38は、実施例8B-2(390℃で2時間化学強化)、8B-5、8C-2(390℃で2時間化学強化)、及び8C-5の測定CT、表面CS、DOL、及びDOLにおけるCS(又は膝応力)を(左から右に)示す棒グラフである。これ等の値及び蓄積張力エネルギーを表26に示す。
【0275】
【0276】
表26に示すように、実施例8B-5及び8C-5のDOL値は、低温度(即ち、390℃)の浴を使用して化学強化した実施例8B-2及び8C-2より大きい
図39は、実施例8B-2(390℃で2時間化学強化)、8B-5、8C-2(390℃で2時間化学強化)、及び8C-5の測定DOLのみを示す図である。
【0277】
表27に示すように、実施例8B-6~8B-8、及び8C-6~8C-8は、同様のガラス基体を含み、比較例8B-1及び8C-1と同様の方法で熱強化したものであるが、その後、様々な濃度のNaNO3及びKNO3を含み、430℃の温度を有する混合溶融浴に1時間浸漬して(実施例8B-6~8B-8、及び8C-6~8C-8を形成するために)化学強化したものであった。
【0278】
【0279】
実施例8B-6~8B-8、及び実施例8C-6~8C-8の表面CT、蓄積張力エネルギー、表面CS、DOL、及びDOLにおけるCSを測定し、表28に示す。表28は、比較のために、430℃の温度を有する80%のKNO3及び20%のNaNO3の浴に1時間浸漬した、実施例8B-5及び8C-5の測定値も示している。
【0280】
【0281】
図40は、実施例8B-5~8B-8、及び実施例8C-5~8C-8のCT及び表面CSをプロットした図である。
図41はCTを関数とする表面CSのプロット図である。
図40及び41に示すように、NaNO
3の濃度が高い溶融塩浴を使用すると、表面CSが低下する一方CTが増加する。
【0282】
実施例8C-7及び8C-8の応力プロファイルをRNFで測定した。
図42は、実施例8C-7及び8C-8の熱強化及び化学強化したガラス物品の表面からガラス物品内に延びる測定応力を、深さを関数として示す図である。380℃の温度を有する、51%のKNO
3及び49%のNaNO
3の混合浴に3時間45分浸漬する(比較例8D)ことで化学強化のみをしたガラス物品の公知の応力プロファイルも
図42に示してある。
【実施例9】
【0283】
70.9モル%のSiO2、0.8モル%のAl2O3、13.2モル%のNa2O、1.1モル%のK2O、6.6モル%のMgO、8.2モル%のCaO、0.03モル%のFe2O3、及び0.22モル%のSO3の公称組成、並びに約0.73mmの厚さを有する、Glaverbel社のSLGを熱強化、事前の熱強化無しに化学強化、及び熱強化し、次いで化学強化した。
【0284】
比較例9Aは約690℃のT0に加熱し、次いで、h=0.051cal/cm2-s-℃で焼き入れし、化学強化を施さない熱強化ガラス物品を含んでいた。比較例9Bは熱強化を施さないが、420℃の温度を有する100%のKNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬して化学強化したガラス基体であった。実施例9Cは、実施例9Aと同様に熱強化し、その後420℃の温度を有する100%のKNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬して、即ち、比較例9Bと同じ条件で化学強化したガラス基体であった。表29を参照されたい。
【0285】
【0286】
得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表33に示す。表30に示すように、実施例9Cは、約10マイクロメートルのDOL及び約600MPaの表面CSを示した。適切な熱強化及び化学強化条件を選択することにより、実施例9Cのガラス物品は、実施例9Bより僅かに小さい表面CS(536MPa対604MPa)、僅かに良好なDOL値(11.7マイクロメート対10マイクロメート)を示すが、化学強化プロセス単独で達成可能な数倍の総DOC(144マイクロメートル対10マイクロメートル)を示す。即ち、熱調整され、その後、事前に熱処理が施されていないサンプルと同じイオン交換条件に晒したサンプルのDOLは増加する。加えて、適切な熱強化及び化学強化条件を選択することにより、実施例9Cの熱強化及び化学強化したガラス物品は、比較例9Aの熱強化のみを施した物品と同様のDOC(144マイクロメートル対154マイクロメートル)を示すが、比較例9Aより遥かに高い表面CS(即ち、536MPa対100MPa)を示す。
【0287】
【0288】
比較例9A、9B、及び実施例9Cのガラス基体の機械的性能を比較した。具体的には、これ等のガラス基体又は物品のサンプルを、前述の実施例2と同様に、ビッカース押し込み閾値試験、及びヌープ引掻き試験にかけた。各々の試験結果を表31に示す。表31から分かるように、熱強化及び化学的強化を用いれば、化学強化のみを施した基体と比較して、ビッカース押し込み閾値の改善につながる。表31から更に分かるように、熱強化及び化学的強化を用いれば、化学強化のみを施した基体と比較して、ヌープ引掻きの改善にもつながり、実施例9Cのヌープ値は比較例9Aのヌープ値よりも低く、比較例9Bで得られたヌープ値と同様である。また、比較例9Aは持続的な表面亀裂(即ち、破壊モード1)を有していたのに対し、比較例9B及び実施例9Cは、表面亀裂及び/又はメジアン亀裂(モード3)を有していたことが分かる。従って、熱強化及び化学強化を組み合わせると、熱強化又は化学強化のみを施したガラス基体と比較して、有益な特性を有するガラス基体が得られる。
【0289】
【0290】
比較例9A及び9B、並びに実施例9Cのように調製したガラス基体を、180グリットのサンドペーパー落下表面のみを使用したことを除き、実施例2に記載の漸増落下試験にかけると共に、実施例2に記載の(エッジ強度を試験するための)4点曲げ試験にかけた。落下試験の結果を
図43に示す一方、4点曲げ試験の結果を
図44に示す。(比較例9Aと同様に大部分のDOCを保持する)実施例9Cの物品は、比較例9Aの最高値ほど高くはないが、比較例9Bと比較して遥かに良好な落下性能を示すことが
図43から分かる。実施例9Cの物品は、比較例9Bの物品より表面CSが低いにも関わらず、より良いエッジ強度を有し、また比較例9Aのサンプルよりも良好なエッジ強度を有していることが
図44から分かる。
【0291】
更に、比較例9A及び9B、並びに実施例9Cのように調製したガラス基体を、表面強度を試験するリングオンリング試験にもかけた。試験前にサンプルを研磨しなかったことを除き、摩耗リングオンリング(AROR)試験に関し、以下に説明するリングオンリング試験を行った。リングオンリング試験結果を
図45に示す。
図45から分かるように、(最高の表面CSを有する)比較例9Bのサンプルが、予想どおり、最高の性能を発揮した。しかし、実施例9Bのサンプルより僅かに低い表面CSを有する実施例9Cのサンプルは、比較例9Aのサンプルより良好な表面強度を有し、比較例9Bのサンプルより僅かに低い表面強度を有していた。
【0292】
(引っかき傷を付ける等)既に損傷しているガラスサンプルの表面強度、即ち、損傷後の保持強度を試験するために、実際の使用条件下でガラスサンプルがどのように機能するかをより良く反映することができる、摩耗リングオンリング試験(AROR)を用いた。材料の強度は破砕が生じる応力であり、AROR試験は、平坦なガラス試験片を試験する、表面強度測定であり、「Standard Test Method for Monotonic Equibiaxia FlexuralStrength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」と題する、ASTM C1499-09(2013)が、本明細書に記載のAROR試験法の基礎を成している。ASTM C1499-09は、参照により、その全内容が本明細書に援用される。ガラス試験片は、リングオンリング試験の前に、「Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure (Determination of Modulus of Rupture)」と題する、ASTM C158-02(2012)の「abrasion Procedures」と題する、付属書A2に記載の方法及び装置を用いてガラスサンプルに送られる90グリットのシリコンカーバイド(SiC)粒子で研磨される。ASTM C158-02、及び特に付属書2は、参照により全内容が本明細書に援用される。
【0293】
リングオンリング試験の前に、ASTM C158-02の付属書2に記載されているように、ガラスサンプル表面上にスポットを研磨し、ASTM C158-02の
図A2.1に示されている装置を使用して、サンプルの表面欠陥状態を標準化及び/又は制御した。研磨スポットを形成するために、304kPa(約44psi)の空気圧を用いて、規定負荷(ここでは、
図47に示すように、例えば、5、15、30、及び45psi(それぞれ約34、103、207、及び310kPa))等様々な負荷を用いて)ガラス系物品の表面410aに研磨材料をサンドブラストする。空気流が確立した後、5cm
3の研磨材を漏斗に放出し、研磨材が導入された後、5秒間サンプルをサンドブラストした。研磨スポットは、直径約1cmであり、サンプルの中心に位置していた。試験中、研磨スポットはリングと同心に配置される。
【0294】
AROR試験において、
図46に示す表面410aに摩耗スポットを有するガラス系物品をサイズが異なる2つの同心のリング間に配置して、等二輪曲げ強度(即ち、材料が2つの同心リングの間で撓みを受けたとき維持できる最大応力)を測定した。AROR構成400において、直径D2を有する支持リング420によって、研磨されたガラス系物品410を支持した。ロードセル(図示せず)からの力Fが、直径D1を有するロードリング430によって、ガラス系物品の表面に加えられる。
【0295】
ローディングリングと支持リングとの直径比、D1/D2は0.2~0.5であってよい。ローディングリング及び支持リング430、420は、支持リングの直径D2の0.5%以内で同心に配置する必要がある。試験に用いるロードセルは、選択された範囲内の任意の負荷に対し±1%以内の精度を有している必要がある。試験は温度が23±2℃、相対湿度が40±10%において実施される。
【0296】
冶具の設計において、ローディングリング430の突起面の半径rは、h/2≦r≦3h/2であり、ここではhはガラス系物品410の厚さである。ローディングリング及び支持リング430、420は、硬度HRC>40の硬化鋼で構成されている。AROR冶具は市販されている。
【0297】
AROR試験において意図する破壊機構は、ローディングリング430内の表面430aから開始するガラス系物品410の破壊を観察することである。この領域、即ちローディングリング430と支持リングとの間、以外で発生する破壊は、データ解析から除外する。しかし、ガラス系物品410の薄厚及び高強度によって、試験片の厚さhの1/2を超える大きな撓みが観察される場合がある。従って、ローディングリング430の下側から高い割合で開始する破壊が観察されることは珍しいことではない。(ひずみゲージ解析によって収集された)リングの内側及び下側の両方で発生した応力と、各試験片の破壊の起源に関する知識がないと正確に応力を計算することはできない。従って、AROR試験は、測定応答として、破壊時のピーク負荷に焦点を当てている。
【0298】
ガラス系物品の強度は表面欠陥の存在に依存する。しかし、ガラスの強度が本質的に統計的であるため、所与のサイズの欠陥が存在する可能性を正確に予測することはできない。したがって、得られたデータを統計的に表現するものとして、確率分布を使用することができる。
【0299】
摩耗リングオンリング試験の結果を
図47に示す。
図47から分かるように、実施例9Cのサンプルは、比較例9Bのサンプルより良好な強度を保持していた。これは、比較例9Aのサンプルの保持強度ほど高くはないが、恐らくより深いDOCに起因するものである。そして、このことは、研磨粒子に使用される様々な圧力によって証明されるように、ある範囲の欠陥サイズにわたって事実であった。
【0300】
実施例9を要約すれば、ソーダライムガラスに熱強化及び化学強化を共に用いて、より高いDOL及びDOCを有し、僅かに低いCSを有する合成プロファイルを生成することができた。化学強化単独で達成されるプロファイルと比較して、合成プロファイルは深いDOL及びDOC、低い表面CS(強化ガラスの焼き戻しレベル及びイオン交換条件に依存して、常にそうであるとは限らない)、(180グリットのサンドペーパー落下面による)良好な落下性能、(4点曲げによる)エッジ強度の向上、 同等の撓み(Flatmasterの場合)、(リングオンリングによる)低い表面強度(これもまた、合成プロファイルにおいて達成され得る表面CSのレベルに依存して常に事実であるとは限らない)、(摩耗リングオンリングによる)良好な保持強度、ビッカース押し込み閾値の向上、及び同等のヌープ引掻き耐性を示した。
【実施例10】
【0301】
70.9モル%のSiO2、0.8モル%のAl2O3、13.2モル%のNa2O、1.1モル%のK2O、6.6モル%のMgO、8.2モル%のCaO、0.03モル%のFe2O3、及び0.22モル%のSO3の公称組成、並びに約1.08mmの厚さを有する、Glaverbel社のSLGを熱強化、事前の熱強化無しに化学強化、及び熱強化し、次いで化学強化した。
【0302】
具体的には、比較例10Aは、約690℃のT0に加熱し、次いで、h=0.035cal/cm2-s-℃で焼き入れし、化学強化を施さない熱強化ガラス物品を含んでいた。比較例10Bは熱強化を施さないが、420℃の温度を有する100%のKNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬して化学強化したガラス基体であった。実施例10Cは、比較例10Aと同様に熱強化し、その後420℃の温度を有する100%のKNO3の溶融塩浴に5.5時間浸漬して、即ち、比較例10Bと同じ条件で化学強化したガラス基体であった。表32を参照されたい。
【0303】
【0304】
得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表33に示す。表33に示すように、実施例10Cは、約11マイクロメートルのDOL及び約525MPaの表面CSを示した。適切な熱強化及び化学強化条件を選択することにより、実施例10Cの熱強化及び化学強化したガラス物品は、実施例10Bより僅かに小さい表面CS(525MPa対550MPa)、略同じDOL値(10.9マイクロメート対10.6マイクロメート)を示すが、化学強化プロセス単独で達成可能な数倍の総DOC(217マイクロメートル対約11マイクロメートル)を示す。加えて、適切な熱強化及び化学強化条件を選択することにより、実施例10Cの熱強化及び化学強化したガラス物品は、比較例10Aの熱強化のみを施した物品と同様のDOC(217マイクロメートル対230マイクロメートル)を示すが、比較例10Aより遥かに高い表面CS(即ち、525MPa対118MPa)を示す。
【0305】
【0306】
比較例10A、10B、及び実施例10Cのガラス基体の機械的性能を比較した。具体的には、これ等のガラス基体又は物品のサンプルを、前述の実施例2と同様に、ビッカース押し込み閾値試験、及びヌープ引掻き試験にかけた。各々の試験結果を表34に示す。表33から分かるように、熱強化及び化学的強化を用いれば、化学強化のみを施した基体と比較して、ビッカース押し込み閾値の改善につながる。表33から更に分かるように、熱強化及び化学的強化を用いれば、化学強化のみを施した基体と比較して、ヌープ引掻きの改善にもつながり、実施例10Cのヌープ値は比較例10Aのヌープ値よりも低く、比較例10Bで得られたヌープ値と同様である。また、比較例10Aは持続的な表面亀裂(即ち、破壊モード1)を有していたのに対し、比較例10B及び実施例10Cは、表面亀裂及び/又はメジアン亀裂(モード3)を有していたことが分かる。従って、熱強化及び化学強化を組み合わせると、熱強化又は化学強化のみを施したガラス基体と比較して、有益な特性を有するガラス基体が得られる。表34から更に分かるのは、ビッカース試験及びヌープ試験の値は、基体のスズ側及び基体の空気側(スズ側は「フロート」プロセスにおいて、ガラス基体の形成中にスズ浴に接触する側であり、空気側は、非スズ側である)で実施した場合に非常に類似していることである。
【0307】
【0308】
比較例10A及び10B、並びに実施例10Cのように調製したガラス基体を、180グリットのサンドペーパー落下表面のみを使用したことを除き、実施例2に記載の漸増落下試験にかけると共に、実施例2に記載の(エッジ強度を試験するための)4点曲げ試験にかけた。落下試験の結果を
図48に示す一方、4点曲げ試験の結果を
図49に示す。(比較例10Aと同様に大部分のDOCを保持する)実施例10Cの物品は、比較例10Aの最高値ほど高くはないが、比較例10Bと比較して僅かに良好な落下性能を示すことが
図48から分かる。実施例10Cの物品は、比較例10Bの物品より表面CSが低いにも関わらず、同様のエッジ強度を有していることが
図49から分かる。
【0309】
更に、比較例10A及び10B、並びに実施例10Cのように調製したガラス基体を、表面強度を試験するリングオンリング試験にもかけた。リングオンリング試験は、実施例9に関連して前述したように実施した。リングオンリング試験結果を
図50に示す。
図50から分かるように、(最高の表面CSを有する)比較例10Bのサンプルが、予想どおり、最高の性能を発揮した。しかし、比較例10Bのサンプルより僅かに低く、比較例10Aより高い表面CSを有する実施例10Cのサンプルは、比較例10Aより、予想以上に低い表面強度を有していた。実施例10Cの部品は、取扱いにおいて、この試験における性能に影響を与える傷が付いたと考えられる。
【0310】
(引っかき傷を付ける等)既に損傷しているガラスサンプルの表面強度、即ち、損傷後の保持強度を試験するために、実際の使用条件下でガラスサンプルがどのように機能するかをより良く反映することができる、摩耗リングオンリング試験(AROR)を用いた。摩耗リングオンリング試験の結果を
図50に示す。
図50から分かるように、実施例10Cのサンプルは、比較例10Bのサンプルより良好な強度を保持していた。これは、比較例10Aのサンプルの保持強度ほど高くはないが、恐らくより深いDOCに起因するものである。そして、このことは、研磨粒子に使用される様々な圧力によって証明されるように、ある範囲の欠陥サイズにわたって事実であった。
【0311】
実施例10を要約すれば、ソーダライムガラスに熱強化及び化学強化を共に用いて、より高いDOL及びDOCを有し、僅かに低いCSを有する合成プロファイルを生成することができた。化学強化単独で達成されるプロファイルと比較して、合成プロファイルは深いDOL及びDOC、低い表面CS(強化ガラスの焼き戻しレベル及びイオン交換条件に依存して、常にそうであるとは限らない)、(180グリットのサンドペーパー落下面による)良好な落下性能、(4点曲げによる)同等のエッジ強度、 同等の撓み、(リングオンリングによる)低い表面強度(これもまた、合成プロファイルにおいて達成され得る表面CSのレベルに依存して常に事実であるとは限らない)、同等のビッカース押し込み閾値、及び同等のヌープ引掻き耐性を示した。
【実施例11】
【0312】
実施例11の目的は、熱強化及び化学強化を用いて、所与の熱的に達成された表面CS(約70~約100MPa)、熱的に達成されたCT(約35~約50MPa)、化学的に達成された約800MPa以上の表面CS及びDOL(約12マイクロメートル以上)を特定のガラス組成に生成することができるか否かを調査することであった。ガラス組成は、61.9質量%のSiO2、3.9質量%のB2O3、19.7質量%のAl2O3、12.9質量%のNa2O、1.4質量%のMgO、及び0.22質量%のSO3の公称組成、並びに約0.7mmの厚さを有するCorning Code2320(コーニング、NYのコーニング社から入手可能)であった。更に、ガラスサンプルは70GPaのヤング率、約75.8×10-7の低温CTE(低温CTEは、約20~約300℃の範囲)、900℃の軟化点、及び約580℃の歪み点を有していた。ガラスのサンプルを熱強化し、次いで様々に異なる化学強化条件を用いて化学強化した。
【0313】
まず、ガラスサンプルをh=0.05cal/cm
2-s-℃を用い、800℃、810℃、820℃、830℃、及び840℃のT
0で熱処理した。これ等のサンプルをSCALPで測定してCT及びDOCを得た。CT値を温度の関数として
図52に示す。選択されたh、及び810℃以上の任意のT
0によって、約35MPa以上のCTが達成されるはずであることが
図52から分かる。DOC比較的変化せず、平均152マイクロメートルであった。
【0314】
上述の最初の実験から、更に調査を行うために、830℃及びh=0.05cal/cm2-s-℃を選択した。従って、T0=830℃及びh=0.05cal/cm2-s-℃を用いて、サンプルを熱強化し、次いで390℃~430℃の温度で、15分~1時間化学強化(100%のKNO3の溶融塩浴に浸漬するイオン交換による)を施した。FSMを用いてCS及びDOLの特徴付けを行った。また、化学強化後、サンプルをSCALPで測定してCT及びDOCを得た。化学強化条件、CS、CT、DOL、及び厚さに対するDOCの百分率を表35に示す。
【0315】
具体的には、比較例11Aは、約830℃のT0で加熱し、次いでh=0.05cal/cm2-s-℃で焼き入れした熱強化ガラス物品を含んでいた。実施例11B-1~11B-3、11C-1~11C-3、11D-1~11D-3、11E-1~11E-3、及び11F-1~11F-3は、同様のガラス基体を含み、比較例11Aと同じ方法で熱強化したガラス物品であるが、次に、表35に従って、約390℃、約400℃、約410℃、約420℃、及び約430℃の温度を有する100%のKNO3の溶融塩浴に、15分、30分、及び60分浸漬したガラス物品を含んでいた。
【0316】
【0317】
得られたすべてのガラス物品のCS、CT、DOL、及びDOC値の(絶対測定値及びガラス物品の厚さの百分率として)測定結果を表36に示す。イオン交換時間を関数とする平均のCSを示す
図53が示すように、約420℃未満のイオン交換浴温度では、CSが約15分~約60分の時間範囲において、約870MPaで比較的一定であることが分かる。イオン交換時間を関数とするDOLを示す
図54が示すように、15分以上の時間で、約410℃~約430℃の浴温度において、12マイクロメートル以上のDOLを達成することができ、約30分以上の時間で、約390℃以上、例えば約390℃~約430℃の浴温度において、12マイクロメートル以上のDOLを達成することができる。
図54に示すすべての場合において、CSは800MPaより大きかった。
【0318】
【0319】
従って、Corning Code2320ガラスでは、830℃以上のT0及び約0.05cal/cm2-s-℃のhの熱強化条件を用いて目標プロファイル(約70~約100MPaの熱的に達成された表面CS、約35~約50MPaの熱的に達成されたCT、約800MPaの化学的に達成された表面CS及び約12マイクロメートル以上のDOL)を達成することができる。これらの熱強化条件は、仮想温度がすべての条件に対して比較的一定であるため、化学強化挙動を大きく変化させない。(100%のKNO3溶融塩浴中における)その後の化学強化条件は、390℃の温度で30分超、400℃の温度で30分以上、410℃の温度で30分以上、420℃の温度で15分以上、又は430℃の温度で15分以上であってよい。得られるガラスの仮想温度は、例えば、約775℃、又はガラス転移温度より約150℃高い等、比較的高くなる。(本実施例11の前述の条件により例示した)化学強化前の熱強化の使用は、化学強化単独の場合と比較して、更なる擦過耐性の向上につながることが期待されている。
【0320】
本明細書に開示の強化物品は、ディスプレイを備えた物品(又はディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム等を含む消費者向け電子機器)、建築用物品、輸送用物品(例えば、自動車、電車、航空機、船舶等)、電気器具、又はある程度の透明性、耐擦過性、耐摩耗性、又はこれ等の組み合わせを必要とするあらゆる物品等、別の物品に組み込むことができる。本明細書に開示の任意の強化物品を組み込んだ例示的な物品を
図55A及び55Bに示す。具体的には、
図55A及び55Bは、前面5104、背面5106、及び側面5108を有するハウジング5102、少なくとも部分的又は完全にハウジングの内部に位置し、少なくともコントローラ、メモリ、及びハウジングの前面又は前面に隣接するディスプレイ5110を含む、電気部品(図示せず)、及びディスプレイ上に設けられるように、ハウジングの前面又はその上方に位置するカバー基体5112を含む、消費者向け電子装置5100を示している。一部の実施形態において、カバー基体5112は、本明細書に開示の任意の強化物品を含むことができる。
【0321】
本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な改良及び変形が可能であることは当業者には明らかであろう。また、本開示の様々な機能及び特徴は、以下の実施形態によって例示されるように、ありとあらゆる組み合わせが可能である。
【0322】
実施形態1。ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する、金属酸化物の濃度を有する第1の圧縮応力(CS)領域と、
前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、前記第1の表面から測定したとき、約0.17・t以上の圧縮深さ(DOC)まで延びる領域と、
を有する物品。
【0323】
実施形態2。前記金属酸化物が、Na2O、K2O、Rb2O、及びCs2Oのいずれか1種を含む、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0324】
実施形態3。前記金属酸化物がK2Oを含む、実施形態2に記載のガラス系物品。
【0325】
実施形態4。前記金属酸化物がNa2Oを含む、実施形態2に記載のガラス系物品。
【0326】
実施形態5。中央張力(CT)領域を更に有し、前記第2のCS領域と前記CT領域の少なくとも一部が同じガラス組成を有する、実施形態1~4いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0327】
実施形態6。前記金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0・tを超え、約0.17・t未満の範囲の深さまで、前記厚さの前記一部に沿って変化する、実施形態1~5いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0328】
実施形態7。前記金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0.01・tを超え、約0.1・tの範囲の深さまで、前記厚さの前記一部に沿って変化する、実施形態1~6いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0329】
実施形態8。前記厚さtが約2mm未満である、実施形態1~7いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0330】
実施形態9。前記厚さtが約1.2mm未満である、実施形態8に記載のガラス系物品。
【0331】
実施形態10。約400MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態1~9いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0332】
実施形態11。約600MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0333】
実施形態12。約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態1~11いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0334】
実施形態13。約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態1~12いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0335】
実施形態14。ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
前記第1の表面からDOCに延びる熱強化領域であって、前記第1の表面から層深さ(DOL)まで延びる化学強化領域を含む領域と、
を有し、
前記DOCが、前記DOLより大きく、前記DOCが約0.17t以上である、物品。
【0336】
実施形態15。前記厚さtが約2mm未満である、実施形態14に記載のガラス系物品。
【0337】
実施形態16。前記厚さtが約1.2mm未満である、実施形態15に記載のガラス系物品。
【0338】
実施形態17。約400MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態14~16いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0339】
実施形態18。約25MPa以上の最大CTを更に有する、実施形態17に記載のガラス系物品。
【0340】
実施形態19。約1GPa以上の表面CS、及び約75MPa以上の最大中央張力(CT)を有する、実施形態18に記載のガラス系物品。
【0341】
実施形態20。前記最大CTが約80MPa以上である、実施形態19に記載のガラス系物品。
【0342】
実施形態21。P2O5、Li2O、及びB2O3のいずれか1種以上を含む組成を有する、実施形態14~20いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0343】
実施形態22。P2O5、Li2O、及びB2O3のいずれか2種以上を含む組成を有する、実施形態14~21いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0344】
実施形態23。約6J/m2以上の蓄積張力エネルギーを有する、実施形態14~22いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0345】
実施形態24。前記蓄積張力エネルギーが約10J/m2以上である、実施形態23に記載のガラス系物品。
【0346】
実施形態25。前記DOLにおいて、約150MPa以上のCS値を更に有する、実施形態14~24いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0347】
実施形態26。前記DOLが約10マイクロメートル以上である、実施形態14~25いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0348】
実施形態27。約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態14~26いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0349】
実施形態28。約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態14~27いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0350】
実施形態29。ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する第1の金属酸化物の濃度、及び第2の金属酸化物を含む第1の圧縮応力(CS)領域と、
前記第1のCS領域の前記第2の金属酸化物を含み、前記第1の金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、前記第1の表面から測定したとき、約0.17・t以上の圧縮深さ(DOC)まで延びる第2のCS領域と、
を有する、物品。
【0351】
実施形態30。前記第1の金属酸化物が、第1の直径を有する第1の金属イオンを含み、前記第2の金属酸化物が、第2の直径を有する第2の金属イオンを含み、前記第2の直径が、前記第1の直径より小さい、実施形態29に記載のガラス系物品。
【0352】
実施形態31。前記第1の金属酸化物がK2Oを含み、前記第2の金属酸化物がNa2Oを含む、実施形態30に記載のガラス系物品。
【0353】
実施形態32。中央張力(CT)領域を更に有し、前記第2のCS領域と前記CT領域の少なくとも一部が同じガラス組成を有する、実施形態29~31いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0354】
実施形態33。前記第1の金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0・tを超え、約0.17・t未満の範囲の深さまで、前記厚さの一部に沿って変化する、実施形態29~32いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0355】
実施形態34。前記第1の金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0.01・tを超え、約0.1・tの範囲の深さまで、前記厚さの一部に沿って変化する、実施形態29~33いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0356】
実施形態35。前記厚さtが約2mm未満である、実施形態29~34いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0357】
実施形態36。前記厚さtが約1.2mm未満である、実施形態35に記載のガラス系物品。
【0358】
実施形態37。約400MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態29~36いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0359】
実施形態38。約600MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態37に記載のガラス系物品。
【0360】
実施形態39。約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態29~38いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0361】
実施形態40。約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態29~39いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0362】
実施形態41。化学強化ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
熱強化領域と、
を有し、
前記第1の表面が、該表面の任意の50mm以下の輪郭に沿って、100μmまでの芯振れ精度(TIR)で平坦であり、
℃単位の軟化温度Tsoft、℃単位のアニーリング温度Tanneal、及びTfsで示される、前記ガラスシートの前記第1の表面で測定される表面仮想温度であって、℃単位及び(Tfs-Tanneal)/Tsoft-Tanneal)で与えられる無次元の表面仮想温度パラメータθSで表された場合の仮想温度を有するガラスを含み、前記パラメータθSが0.20~0.9である、物品。
【0363】
実施形態42。mmで示される長さl、及びmmで示される幅wを有するガラスシートを含み、tはl未満かつw未満であり、l及びwが、各々少なくとも10mmである、実施形態41に記載のガラス系物品。
【0364】
実施形態43。l及びwのいずれか一方又は両方が、少なくとも40mmである、実施形態42に記載のガラス系物品。
【0365】
実施形態44。比l/t及び比w/tの各々が、10/1以上である、実施形態41又は42に記載のガラス系物品。
【0366】
実施形態45。前記第1の表面が、10×10μmの領域にわたり、0.2~1.5nmのRa粗さを有する、実施形態41~44いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0367】
実施形態46。tが2mm未満である、実施形態41~45いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0368】
実施形態47。tが約1.2mm以下である、実施形態41~46いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0369】
実施形態48。前記第1の表面で測定した前記表面仮想温度が、前記ガラスの転移温度より少なくとも50℃高い、実施形態41~47いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0370】
実施形態49。前記第1の表面で測定した前記表面仮想温度が、前記ガラスの転移温度より少なくとも75℃高い、実施形態48に記載のガラス系物品。
【0371】
実施形態50。前記第1の表面からDOLまで延びる化学強化領域を更に有し、前記熱強化領域が、前記第1の表面からDOCまで延び、前記DOCが前記DOLより大きく、前記DOCが約0.17t以上である、実施形態41~49いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0372】
実施形態51。約1GPa以上の表面CS、及び約75MPa以上の最大中央張力(CT)を更に有する、実施形態41~50いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0373】
実施形態52。前記最大CTが約80MPa以上である、実施形態51に記載のガラス系物品。
【0374】
実施形態53。P2O5を含む組成を有する、実施形態41~52いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0375】
実施形態54。Li2Oを含む組成を有する、実施形態41~53いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0376】
実施形態55。約6J/m2以上の蓄積張力エネルギーを有する、実施形態41~54いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0377】
実施形態56。約10J/m2以上の蓄積張力エネルギーを有する、実施形態55に記載のガラス系物品。
【0378】
実施形態57。前記DOLにおいて、約150MPa以上のCS値を更に有する、実施形態41~56いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0379】
実施形態58。前記DOLが、約10マイクロメートル以上である、実施形態41~57いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0380】
実施形態59。約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態41~58いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0381】
実施形態60。約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態41~59いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0382】
実施形態61。ガラスシートを強化する方法であって、
転移温度を有するガラスシートを、固体又は液体物質を含まない間隙を横断する伝導によって、前記ガラスシートを離れる20%を超える熱エネルギーが、間隙を横断してヒートシンクに受け取られるように、前記ガラスシートからヒートシンクに熱エネルギーを移動させ、前記転移温度より高い温度から前記転移温度より低い温度に冷却して、熱強化ガラス物品を形成するステップと、
前記熱強化ガラス物品を化学強化するステップと、
を備えた方法。
【0383】
実施形態62。前記熱強化ガラス物品が、前記熱強化ガラスシートのいずれの部分も除去されずに化学強化される、実施形態61に記載の方法。
【0384】
実施形態63。前記熱強化ガラス物品が、前記熱強化ガラスシートの厚さの3%以上除去されずに化学強化される、実施形態62に記載の方法。
【0385】
実施形態64。前記ガラスシートを冷却するステップが、約-270℃/秒以上の速度で冷却するステップを含む、実施形態61~63いずれか1つに記載の方法。
【0386】
実施形態65。前記熱強化ガラス物品が、厚さ及び該厚さの0.17倍以上のDOCを有する、実施形態61~64いずれか1つに記載の方法。
【0387】
実施形態66。前記熱強化ガラスシートを化学強化するステップが、前記DOCを維持しつつ、約700MPa以上の表面CSを生成するステップを含む、実施形態61~65いずれか1つに記載の方法。
【0388】
実施形態67。前記熱強化ガラス物品を化学強化するステップが、ガラス系層の第1の表面から、約10マイクロメートル以上であるDOLまで延びる、化学強化領域を生成するステップを含む、実施形態66に記載の方法。
【0389】
実施形態68。前記熱強化ガラス物品を化学強化するステップが、前記熱強化ガラスシートを、KNO3、NaNO3、及びLiNO3のうちの任意の1種以上を含む、溶融塩浴に浸漬するステップを含む、実施形態61~66いずれか1つに記載の方法。
【0390】
実施形態69。前記溶融塩浴が、KNO3とNaNO3とを含み、約380℃~約430℃の温度を有する、実施形態68に記載の方法。
【0391】
実施形態70。消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に、前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面又は該前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に設けられるように、前記ハウジングの前記前面又はその上方に設けられたカバー物品であって、前記カバーガラス系物品が、熱強化及び化学強化され、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びるCS領域を有するカバー物品と、
を備え、
携帯電話、ポータブルメディアプレイヤー、ノート型コンピュータ、又はタブレットコンピュータである、電子製品。
【0392】
実施形態71。消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面又は該前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に設けられるように、前記ハウジングの前記前面又はその上方に設けられたカバー物品であって、前記カバーガラス系物品が、実施形態1~60いずれか1つに記載のガラス系物品を含むカバー物品と
を含む、電子製品。
【0393】
実施形態72。第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含むラミネート体であって、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びる領域を有する、ラミネート体。
【0394】
実施形態73。前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態71に記載のラミネート体。
【0395】
実施形態74。第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含むラミネート体であって、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、実施形態1~60いずれか1つに記載のガラス系物品を含む、ラミネート体。
【0396】
実施形態75。前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態74に記載のラミネート体。
【0397】
実施形態76。開口部及び該開口部に配置されたラミネート体を含む車両であって、
前記ラミネート体が、第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含み、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びる領域を有する、車両。
【0398】
実施形態77。前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態76に記載の車両。
【0399】
実施形態78。前記第1のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第1の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第1の表面に対向し、前記ラミネート体の第2の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第2のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第3の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第3の表面に対向し、前記ラミネート体の第4の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第3及び第4の表面が、各々CS値を有し、前記第4の表面のCS値が、前記第3の表面のCS値より大きい、実施形態76又は実施形態77に記載の車両。
【0400】
実施形態79。前記第ガラス系基体又は第2のガラス系基体の一方が、約0.2mm~約0.7mmの厚さを有する、実施形態78に記載の車両。
【0401】
実施形態80。前記ラミネート体の前記第4の表面が、該表面が平坦状態にあるときより大きいCSを有し、前記ラミネート体が光学的歪みを有さない、実施形態78~79いずれか1つに記載の車両。
【0402】
実施形態81。前記第2のガラス系基体の周辺部分が、前記中間層に圧縮力を加え、前記第2のガラス系基体の中央部分が中間層に対し引張力を加える、実施形態80に記載の車両。
【0403】
実施形態82。前記第2のガラス系基体が、前記第1のガラス系基体に適合し、前記仲介中間層によって埋められる、前記第2のガラス系基体の前記凸面と前記第1のガラス系基体の前記凹面との間に実質的に均一な距離をもたらす、実施形態81に記載の車両。
【0404】
実施形態83。開口部及び該開口部に配置されたラミネート体を含む車両であって、
前記ラミネート体が、第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含み、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、実施形態1~60いずれか1つに記載のガラス系物品を含む、車両。
【0405】
実施形態84。前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態83に記載の車両。
【0406】
実施形態85。前記第1のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第1の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第1の表面に対向する、前記ラミネート体の第2の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第2のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第3の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第3の表面に対向する、前記ラミネート体の第4の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第3及び第4の表面が、各々CS値を有し、前記第4の表面のCS値が、前記第3の表面のCS値より大きい、実施形態83又は実施形態84に記載の車両。
【0407】
実施形態86。前記第1のガラス系基体又は第2のガラス系基体の一方が、約0.2mm~約0.7mmの厚さを有する、実施形態85に記載の車両。
【0408】
実施形態87。前記ラミネート体の前記第4の表面が、該表面が平坦状態にあるときより大きいCSを有し、前記ラミネート体が光学的歪みを有さない、実施形態83~86いずれか1つに記載の車両。
【0409】
実施形態88。前記第2のガラス系基体の周辺部分が、前記中間層に圧縮力を加え、前記第2のガラス系基体の中央部分が中間層に対し引張力を加える、実施形態87に記載の車両。
【0410】
実施形態89。前記第2のガラス系基体が、前記第1のガラス系基体に適合し、前記仲介中間層によって埋められる、前記第2のガラス系基体の前記凸面と前記第1のガラス系基体の前記凹面との間に実質的に均一な距離をもたらす、実施形態88に記載の車両。
【0411】
実施形態90。前記ガラス系物品の表面で測定したとき、約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態83~89いずれか1つに記載の車両。
【0412】
実施形態91。前記ガラス系物品の表面で測定したとき、約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態83~90いずれか1つに記載の車両。
【0413】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0414】
実施形態1
ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する、金属酸化物の濃度を有する第1の圧縮応力(CS)領域と、
前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、前記第1の表面から測定したとき、約0.17・t以上の圧縮深さ(DOC)まで延びる領域と、
を有する物品。
【0415】
実施形態2
前記金属酸化物が、Na2O、K2O、Rb2O、及びCs2Oのいずれか1種を含む、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0416】
実施形態3
前記金属酸化物がK2Oを含む、実施形態2に記載のガラス系物品。
【0417】
実施形態4
前記金属酸化物がNa2Oを含む、実施形態2に記載のガラス系物品。
【0418】
実施形態5
中央張力(CT)領域を更に有し、前記第2のCS領域と前記CT領域の少なくとも一部が、同じガラス組成を有する、実施形態1~4いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0419】
実施形態6
前記金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0・tを超え、約0.17・t未満の範囲の深さまで、前記厚さの前記一部に沿って変化する、実施形態1~5いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0420】
実施形態7
前記金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0.01・tを超え、約0.1・tの範囲の深さまで、前記厚さの前記一部に沿って変化する、実施形態1~6いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0421】
実施形態8
前記厚さtが約2mm未満である、実施形態1~7いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0422】
実施形態9
前記厚さtが約1.2mm未満である、実施形態8に記載のガラス系物品。
【0423】
実施形態10
約400MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態1~9いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0424】
実施形態11
約600MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0425】
実施形態12
約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態1~11いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0426】
実施形態13
約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態1~12いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0427】
実施形態14
ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
前記第1の表面からDOCまで延びる熱強化領域であって、前記第1の表面から層深さ(DOL)まで延びる化学強化領域を含む領域と、
を有し、
前記DOCが、前記DOLより大きく、前記DOCが約0.17t以上である、物品。
【0428】
実施形態15
前記厚さtが約2mm未満である、実施形態14に記載のガラス系物品。
【0429】
実施形態16
前記厚さtが約1.2mm未満である、実施形態15に記載のガラス系物品。
【0430】
実施形態17
約400MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態14~16いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0431】
実施形態18
約25MPa以上の最大CTを更に有する、実施形態17に記載のガラス系物品。
【0432】
実施形態19
約1GPa以上の表面CS、及び約75MPa以上の最大中央張力(CT)を有する、実施形態18に記載のガラス系物品。
【0433】
実施形態20
前記最大CTが約80MPa以上である、実施形態19に記載のガラス系物品。
【0434】
実施形態21
P2O5、Li2O、及びB2O3のいずれか1種以上を含む組成を有する、実施形態14~20いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0435】
実施形態22
P2O5、Li2O、及びB2O3のいずれか2種以上を含む組成を有する、実施形態14~21いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0436】
実施形態23
約6J/m2以上の蓄積張力エネルギーを有する、実施形態14~22いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0437】
実施形態24
前記蓄積張力エネルギーが約10J/m2以上である、実施形態23に記載のガラス系物品。
【0438】
実施形態25
前記DOLにおいて、約150MPa以上のCS値を更に有する、実施形態14~24いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0439】
実施形態26
前記DOLが約10マイクロメートル以上である、実施形態14~25いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0440】
実施形態27
約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態14~26いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0441】
実施形態28
約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態14~27いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0442】
実施形態29
ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する第1の金属酸化物の濃度、及び第2の金属酸化物を含む第1の圧縮応力(CS)領域と、
前記第1のCS領域の前記第2の金属酸化物を含み、前記第1の金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、前記第1の表面から測定したとき、約0.17・t以上の圧縮深さ(DOC)まで延びる第2のCS領域と、
を有する、物品。
【0443】
実施形態30
前記第1の金属酸化物が、第1の直径を有する第1の金属イオンを含み、前記第2の金属酸化物が、第2の直径を有する第2の金属イオンを含み、前記第2の直径が、前記第1の直径より小さい、実施形態29に記載のガラス系物品。
【0444】
実施形態31
前記第1の金属酸化物がK2Oを含み、前記第2の金属酸化物がNa2Oを含む、実施形態30に記載のガラス系物品。
【0445】
実施形態32
中央張力(CT)領域を更に有し、前記第2のCS領域と前記CT領域の少なくとも一部が同じガラス組成を有する、実施形態29~31いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0446】
実施形態33
前記第1の金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0・tを超え、約0.17・t未満の範囲の深さまで、前記厚さの一部に沿って変化する、実施形態29~32いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0447】
実施形態34
前記第1の金属酸化物の濃度が、非ゼロかつ前記第1の表面から、約0.01・tを超え、約0.1・tの範囲の深さまで、前記厚さの一部に沿って変化する、実施形態29~33いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0448】
実施形態35
前記厚さtが約2mm未満である、実施形態29~34いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0449】
実施形態36
前記厚さtが約1.2mm未満である、実施形態35に記載のガラス系物品。
【0450】
実施形態37
約400MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態29~36いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0451】
実施形態38
約600MPa以上の表面CSを更に有する、実施形態37に記載のガラス系物品。
【0452】
実施形態39
約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態29~38いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0453】
実施形態40
約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態29~39いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0454】
実施形態41
化学強化ガラス系物品であって、
第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面と、
熱強化領域と、
を有し、
前記第1の表面が、該表面の任意の50mm以下の輪郭に沿って、100μmまでの芯振れ精度(TIR)で平坦であり、
℃単位の軟化温度Tsoft、℃単位のアニーリング温度Tanneal、及びTfsで示される、前記ガラスシートの前記第1の表面で測定される表面仮想温度であって、℃単位及び(Tfs-Tanneal)/Tsoft-Tanneal)で与えられる無次元の表面仮想温度パラメータθSで表された場合の仮想温度を有するガラスを含み、前記パラメータθSが0.20~0.9である、物品。
【0455】
実施形態42
mmで示される長さl、及びmmで示される幅wを有するガラスシートを含み、tはl未満かつw未満であり、l及びwが、各々少なくとも10mmである、実施形態41に記載のガラス系物品。
【0456】
実施形態43
l及びwのいずれか一方又は両方が、少なくとも40mmである、実施形態42に記載のガラス系物品。
【0457】
実施形態44
比l/t及び比w/tの各々が、10/1以上である、実施形態41又は42に記載のガラス系物品
実施形態45
前記第1の表面が、10×10μmの領域にわたり、0.2~1.5nmのRa粗さを有する、実施形態41~44いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0458】
実施形態46
tが2mm未満である、実施形態41~45いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0459】
実施形態47
tが約1.2mm以下である、実施形態41~46いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0460】
実施形態48
前記第1の表面で測定した前記表面仮想温度が、前記ガラスの転移温度より少なくとも50℃高い、実施形態41~47いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0461】
実施形態49
前記第1の表面で測定した前記表面仮想温度が、前記ガラスの転移温度より少なくとも75℃高い、実施形態48に記載のガラス系物品。
【0462】
実施形態50
前記第1の表面からDOLまで延びる化学強化領域を更に有し、前記熱強化領域が、前記第1の表面からDOCまで延び、前記DOCが前記DOLより大きく、前記DOCが約0.17t以上である、実施形態41~49いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0463】
実施形態51
約1GPa以上の表面CS、及び約75MPa以上の最大中央張力(CT)を更に有する、実施形態41~50いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0464】
実施形態52
前記最大CTが約80MPa以上である、実施形態51に記載のガラス系物品。
【0465】
実施形態53
P2O5を含む組成を有する、実施形態41~52いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0466】
実施形態54
Li2Oを含む組成を有する、実施形態41~53いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0467】
実施形態55
約6J/m2以上の蓄積張力エネルギーを有する、実施形態41~54いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0468】
実施形態56
約10J/m2以上の蓄積張力エネルギーを有する、実施形態55に記載のガラス系物品。
【0469】
実施形態57
前記DOLにおいて、約150MPa以上のCS値を更に有する、実施形態41~56いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0470】
実施形態58
前記DOLが、約10マイクロメートル以上である、実施形態41~57いずれか1つに記載のガラス系物品
実施形態59
約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態41~58いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0471】
実施形態60
約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態41~59いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0472】
実施形態61
ガラスシートを強化する方法であって、
転移温度を有するガラスシートを、固体又は液体物質を含まない間隙を横断する伝導によって、前記ガラスシートを離れる20%を超える熱エネルギーが、間隙を横断してヒートシンクに受け取られるように、前記ガラスシートからヒートシンクに熱エネルギーを移動させ、前記転移温度より高い温度から前記転移温度より低い温度に冷却して、熱強化ガラス物品を形成するステップと、
前記熱強化ガラス物品を化学強化するステップと、
を備えた方法。
【0473】
実施形態62
前記熱強化ガラス物品が、前記熱強化ガラスシートのいずれの部分も除去されずに化学強化される、実施形態61に記載の方法。
【0474】
実施形態63
前記熱強化ガラス物品が、前記熱強化ガラスシートの厚さの3%以上除去されずに化学強化される、実施形態62に記載の方法。
【0475】
実施形態64
前記ガラスシートを冷却するステップが、約-270℃/秒以上の速度で冷却するステップを含む、実施形態61~63いずれか1つに記載の方法。
【0476】
実施形態65
前記熱強化ガラス物品が、厚さ及び該厚さの0.17倍以上のDOCを有する、実施形態61~64いずれか1つに記載の方法。
【0477】
実施形態66
前記熱強化ガラスシートを化学強化するステップが、前記DOCを維持しつつ、約700MPa以上の表面CSを生成するステップを含む、実施形態61~65いずれか1つに記載の方法。
【0478】
実施形態67
前記熱強化ガラス物品を化学強化するステップが、ガラス系層の第1の表面から、約10マイクロメートル以上であるDOLまで延びる、化学強化領域を生成するステップを含む、実施形態66に記載の方法。
【0479】
実施形態68
前記熱強化ガラス物品を化学強化するステップが、前記熱強化ガラスシートを、KNO3、NaNO3、及びLiNO3のうちの任意の1種以上を含む、溶融塩浴に浸漬するステップを含む、実施形態61~66いずれか1つに記載の方法。
【0480】
実施形態69
前記溶融塩浴が、KNO3とNaNO3とを含み、約380℃~約430℃の温度を有する、実施形態68に記載の方法。
【0481】
実施形態70
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に、前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面又は該前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に設けられるように、前記ハウジングの前記前面又はその上方に設けられたカバー物品であって、前記カバーガラス系物品が、熱強化及び化学強化され、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びるCS領域を有するカバー物品と、
を備え、
携帯電話、ポータブルメディアプレイヤー、ノート型コンピュータ、又はタブレットコンピュータである、電子製品。
【0482】
実施形態71
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面又は該前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に設けられるように、前記ハウジングの前記前面又はその上方に設けられたカバー物品であって、前記カバーガラス系物品が、実施形態1~60いずれか1つに記載のガラス系物品を含むカバー物品と
を含む、電子製品。
【0483】
実施形態72
第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含むラミネート体であって、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びる領域を有する、ラミネート体。
【0484】
実施形態73
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態71に記載のラミネート体。
【0485】
実施形態74
第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含むラミネート体であって、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、実施形態1~60いずれか1つに記載のガラス系物品を含む、ラミネート体。
【0486】
実施形態75
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態74に記載のラミネート体。
【0487】
実施形態76
開口部及び該開口部に配置されたラミネート体を含む車両であって、
前記ラミネート体が、第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含み、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、第1の表面及び該表面に対向して厚さ(t)を画成する第2の表面、非ゼロかつ前記厚さの一部に沿って変化する金属酸化物の濃度を有する第1のCS領域、前記第1のCS領域の前記金属酸化物を実質的に含まない第2のCS領域であって、前記第1のCS領域から、約0.17・t以上のDOCまで延びる領域を有する、車両。
【0488】
実施形態77
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態76に記載の車両。
【0489】
実施形態78
前記第1のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第1の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第1の表面に対向し、前記ラミネート体の第2の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第2のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第3の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第3の表面に対向し、前記ラミネート体の第4の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第3及び第4の表面が、各々CS値を有し、前記第4の表面のCS値が、前記第3の表面のCS値より大きい、実施形態76又は実施形態77に記載の車両。
【0490】
実施形態79
前記第ガラス系基体又は第2のガラス系基体の一方が、約0.2mm~約0.7mmの厚さを有する、実施形態78に記載の車両。
【0491】
実施形態80
前記ラミネート体の前記第4の表面が、該表面が平坦状態にあるときより大きいCSを有し、前記ラミネート体が光学的歪みを有さない、実施形態78~79いずれか1つに記載の車両。
【0492】
実施形態81
前記第2のガラス系基体の周辺部分が、前記中間層に圧縮力を加え、前記第2のガラス系基体の中央部分が中間層に対し引張力を加える、実施形態80に記載の車両。
【0493】
実施形態82
前記第2のガラス系基体が、前記第1のガラス系基体に適合し、前記仲介中間層によって埋められる、前記第2のガラス系基体の前記凸面と前記第1のガラス系基体の前記凹面との間に実質的に均一な距離をもたらす、実施形態81に記載の車両
実施形態83
開口部及び該開口部に配置されたラミネート体を含む車両であって、
前記ラミネート体が、第1のガラス系シート、第2のガラス系シート、及び前記第1のガラス系シートと前記第2のガラス系シートとの間に配置された中間層を含み、
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方又は両方が、実施形態1~60いずれか1つに記載のガラス系物品を含む、車両。
【0494】
実施形態84
前記第1のガラス系シート及び前記第2のガラス系シートの一方が、冷間形成されている、実施形態83に記載の車両。
【0495】
実施形態85
前記第1のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第1の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第1の表面に対向し、前記ラミネート体の第2の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第2のガラス系シートが複雑に湾曲し、前記ラミネート体の第3の表面を構成する少なくとも1つの凹面、及び前記第3の表面に対向し、前記ラミネート体の第4の表面を構成する少なくとも1つの凸面を含み、それらの間に厚さを有し、
前記第3及び第4の表面が、各々CS値を有し、前記第4の表面のCS値が、前記第3の表面のCS値より大きい、実施形態83又は実施形態84に記載の車両。
【0496】
実施形態86
前記第1のガラス系基体又は第2のガラス系基体の一方が、約0.2mm~約0.7mmの厚さを有する、実施形態85に記載の車両。
【0497】
実施形態87
前記ラミネート体の前記第4の表面が、該表面が平坦状態にあるときより大きいCSを有し、前記ラミネート体が光学的歪みを有さない、実施形態83~86いずれか1つに記載の車両。
【0498】
実施形態88
前記第2のガラス系基体の周辺部分が、前記中間層に圧縮力を加え、前記第2のガラス系基体の中央部分が中間層に対し引張力を加える、実施形態87に記載の車両。
【0499】
実施形態89
前記第2のガラス系基体が、前記第1のガラス系基体に適合し、前記仲介中間層によって埋められる、前記第2のガラス系基体の前記凸面と前記第1のガラス系基体の前記凹面との間に実質的に均一な距離をもたらす、実施形態88に記載の車両。
【0500】
実施形態90
前記ガラス系物品の表面で測定したとき、約8N以上のヌープ引掻き閾値を更に示す、実施形態83~89いずれか1つに記載の車両。
【0501】
実施形態91
前記ガラス系物品の表面で測定したとき、約120N以上のビッカース亀裂開始閾値を更に示す、実施形態83~90いずれか1つに記載の車両。
【符号の説明】
【0502】
12、16 ガラスシート
14 中間層
301 第1の表面
304 第1のCS領域
306 第2のCS領域
308 CT領域
310 熱強化領域
312 DOC
320 化学強化領域
322、570 DOL
410 ガラス系物品
410a 表面
420 支持リング
430 ローディングリング
500、1310 ガラス系物品
510 第1の表面
520 第2の表面
550 内部部分
560 応力プロファイル
5100 電子装置
5102 ハウジング
5110 ディスプレイ
5112カバー基体