IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼーヴ・ボンゾンの特許一覧 ▶ コーネリア・ウェンガーの特許一覧 ▶ キャサリン・テンペル−ブラミの特許一覧 ▶ ハダス・ヘルシュコヴィッチの特許一覧 ▶ モシェ・ギラディの特許一覧

特許7225373異なる繰返し時間を有する2つのMRI画像から導出される低周波数(<1MHz)交流導電率推定
<>
  • 特許-異なる繰返し時間を有する2つのMRI画像から導出される低周波数(<1MHz)交流導電率推定 図1
  • 特許-異なる繰返し時間を有する2つのMRI画像から導出される低周波数(<1MHz)交流導電率推定 図2A
  • 特許-異なる繰返し時間を有する2つのMRI画像から導出される低周波数(<1MHz)交流導電率推定 図2B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】異なる繰返し時間を有する2つのMRI画像から導出される低周波数(<1MHz)交流導電率推定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 390
A61B5/055 ZDM
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504591
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 IB2019052931
(87)【国際公開番号】W WO2019197999
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】62/655,670
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518150725
【氏名又は名称】ゼーヴ・ボンゾン
(73)【特許権者】
【識別番号】520393772
【氏名又は名称】コーネリア・ウェンガー
(73)【特許権者】
【識別番号】520393783
【氏名又は名称】キャサリン・テンペル-ブラミ
(73)【特許権者】
【識別番号】520393794
【氏名又は名称】ハダス・ヘルシュコヴィッチ
(73)【特許権者】
【識別番号】520169476
【氏名又は名称】モシェ・ギラディ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼーヴ・ボンゾン
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア・ウェンガー
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・テンペル-ブラミ
(72)【発明者】
【氏名】ハダス・ヘルシュコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・ギラディ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0120041(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0017749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0043268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0113959(US,A1)
【文献】Eric Michel, et al.,Electrical Conductivity and Permittivity Maps of Brain Tissues Derived from Water Content Based on T1-Weighted Acquisition,Magnetic Resonance in Medicine,2017年,77,pp.1094-1103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体上に配置される複数の電極の位置を最適化する方法であって、前記電極が、所与の周波数における解剖学的体積内の標的組織内に電場を課すために使用され、前記方法が、
前記解剖学的体積の第1のMRI画像を取得するステップであって、前記第1のMRI画像が、関連する第1の繰返し時間を有する、ステップと、
前記解剖学的体積の第2のMRI画像を取得するステップであって、前記第2のMRI画像が、前記第1の繰返し時間とは異なる関連する第2の繰返し時間を有する、ステップと、
前記解剖学的体積内の各ボクセルについて、前記第2のMRI画像内の対応するボクセルの強度に対する前記第1のMRI画像内の対応するボクセルの強度の比IRを計算するステップと、
前記解剖学的体積内の各ボクセルに関する前記計算されたIRを、前記所与の周波数における導電率または抵抗率の3Dモデルの対応するボクセルにマッピングするステップであって、前記所与の周波数が、1MHz未満である、ステップと、
前記解剖学的体積内の前記標的組織の位置を識別するステップと、
前記マッピングするステップにおいて生成された前記所与の周波数における前記導電率または抵抗率の3Dモデルと、前記識別するステップにおいて識別された前記標的組織の前記位置とに基づいて、前記3Dモデルの前記標的組織の中心に双極子を配置することによって前記電極の位置を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記所与の周波数が、100kHz~300kHzの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所与の周波数が、180kHz~220kHzの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のMRI画像が、T1画像であり、前記第2のMRI画像が、T1画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のMRI画像が、T1画像であり、前記第2のMRI画像が、プロトン密度画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の繰返し時間が、400ミリ秒~800ミリ秒の間であり、前記第2の繰返し時間が、2秒~5秒の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記解剖学的体積が、脳の白質および灰白質を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記解剖学的体積が、脳であり、
前記電極の位置の前記決定が、一定の導電率を有する少なくとも1つのシェルのモデルによって前記脳の前記導電率または抵抗率の3Dモデルが囲まれている複合モデルに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記解剖学的体積が、脳脊髄液によって囲まれている脳であり、
前記電極の位置の前記決定が、一定の導電率を有する少なくとも1つのシェルのモデルによって前記脳の前記導電率または抵抗率の3Dモデルが囲まれている複合モデルに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記導電率または抵抗率の3Dモデルが、導電率の3Dモデルである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国仮出願第62/655,670号(2018年4月10日出願)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療フィールド、またはTTフィールドは、中間周波数範囲(100~300kHz)内の低強度(例えば、1~3V/cm)交流電場である。この非侵襲的治療は、固形腫瘍を標的とし、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第7,565,205号に記載されている。TTフィールドは、多形性膠芽腫の治療に対して承認されており、例えば、患者の剃毛された頭部上に配置されるトランスデューサアレイを備えるOptune(商標)システムを介して送達され得る。TTフィールドは、典型的には、治療される腫瘍内に垂直フィールドを生成する2対のトランスデューサアレイを介して送達される。より具体的には、Optuneシステムの場合、一方の対の電極は、腫瘍の左右(LR)に配置され、他方の対の電極は、腫瘍の前後(AP)に配置される。
【0003】
生体内研究および生体外研究は、電場の強度が増加するにつれて、TTフィールド治療の効能が増加することを示している。したがって、脳の病変部位内の強度を増加させるために患者の頭皮上のアレイ配置を最適化することは、Optuneシステムのための標準作業である。改善された治療のために、トランスデューサの位置は、患者固有の頭部の解剖学的構造と腫瘍の位置とに応じて適合され得る。トランスデューサの位置、ならびに脳組織の電気的特性(EP)は、TTフィールドが頭部内でどのように分布しているかを決定するために使用され得る。アレイ配置の最適化は、NovoTal(商標)システムを使用して、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第10,188,851号に記載の手法を使用して、頭皮上のアレイを腫瘍のできるだけ近くに配置するなどの、様々な従来の手法を使用して行われ得る。
【0004】
米国特許第10,188,851号は、拡散強調イメージング(DWI)または拡散テンソルイメージング(DTI)を使用してMRIに基づいて解剖学的体積において導電率測定値を取得し、続いて、解剖学的体積を組織タイプにセグメント化することなく、取得された導電率または抵抗率の測定値から直接脳の導電率の3Dマップを生成することによって、電極の位置が最適化され得ることを説明している。この手法は、いくつかの利点を有するが、比較的低速で、典型的には、比較的少数のスライスを有する画像を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7,565,205号
【文献】米国特許第10,188,851号
【非特許文献】
【0006】
【文献】E.Michel、D.Hernandez、およびS.Y.Lee、「Electrical conductivity and permittivity maps of brain tissues derived from water content based on T1-weighted acquisition」、Magn.Reson. Med.、vol.77、1094~1103ページ、2016年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、1MHz未満の所与の周波数における解剖学的体積の交流導電率または抵抗率の3Dモデルを作成する第1の方法に向けられている。第1の方法は、解剖学的体積の第1および第2のMRI画像を、それぞれ関連する第1および第2の繰返し時間で取得するステップを含む。第1および第2の繰返し時間は、異なる。解剖学的体積内の各ボクセルについて、第2のMRI画像内の対応するボクセルの強度に対する第1のMRI画像内の対応するボクセルの強度の比IRが計算される。解剖学的体積内の各ボクセルについて計算されたIRは、次いで、所与の周波数における交流導電率または抵抗率の3Dモデルの対応するボクセルにマッピングされる。
【0008】
第1の方法のいくつかの例では、所与の周波数は、100kHz~300kHzの間である。第1の方法のいくつかの例では、所与の周波数は、180kHz~220kHzの間である。第1の方法のいくつかの例では、第1のMRI画像は、T1画像であり、第2のMRI画像は、T1画像である。第1の方法のいくつかの例では、第1のMRI画像は、T1画像であり、第2のMRI画像は、プロトン密度画像である。第1の方法のいくつかの例では、第1の繰返し時間は、400ミリ秒~800ミリ秒の間であり、第2の繰返し時間は、2秒~5秒の間である。
【0009】
第1の方法のいくつかの例では、解剖学的体積は、脳の白質および灰白質を備える。第1の方法のいくつかの例では、交流導電率または抵抗率の3Dモデルは、交流導電率の3Dモデルである。
【0010】
本発明の別の態様は、被験者の身体上に配置される複数の電極の位置を最適化する第2の方法に向けられており、電極は、1MHz未満の所与の周波数における解剖学的体積内の標的組織内に電場を課すために使用される。第2の方法は、解剖学的体積の第1および第2のMRI画像を、それぞれ関連する第1および第2の繰返し時間で取得するステップを含む。第1および第2の繰返し時間は、異なる。解剖学的体積内の各ボクセルについて、第2のMRI画像内の対応するボクセルの強度に対する第1のMRI画像内の対応するボクセルの強度の比IRが計算される。解剖学的体積内の各ボクセルについて計算されたIRは、次いで、所与の周波数における交流導電率または抵抗率の3Dモデルの対応するボクセルにマッピングされる。第2の方法はまた、解剖学的体積内の標的組織の位置を識別するステップと、導電率または抵抗率の3Dマップと標的組織の位置とに基づいて、電極の位置を決定するステップとを含む。
【0011】
第2の方法のいくつかの例では、所与の周波数は、100kHz~300kHzの間である。第2の方法のいくつかの例では、所与の周波数は、180kHz~220kHzの間である。第2の方法のいくつかの例では、第1のMRI画像は、T1画像であり、第2のMRI画像は、T1画像である。第2の方法のいくつかの例では、第1のMRI画像は、T1画像であり、第2のMRI画像は、プロトン密度画像である。第2の方法のいくつかの例では、第1の繰返し時間は、400ミリ秒~800ミリ秒の間であり、第2の繰返し時間は、2秒~5秒の間である。
【0012】
第2の方法のいくつかの例は、決定された位置において被験者の身体に電極を固定するステップと、標的組織内に電場を課すために、固定された電極間に電気信号を印加するステップとをさらに含む。
【0013】
第2の方法のいくつかの例では、解剖学的体積は、脳の白質および灰白質を備える。第2の方法のいくつかの例では、解剖学的体積は、脳であり、電極の位置の決定は、一定の導電率を有する少なくとも1つのシェルのモデルによって脳の導電率または抵抗率の3Dモデルが囲まれている複合モデルに基づく。
【0014】
第2の方法のいくつかの例では、解剖学的体積は、脳脊髄液によって囲まれている脳であり、電極の位置の決定は、一定の導電率を有する少なくとも1つのシェルのモデルによって脳の導電率または抵抗率の3Dモデルが囲まれている複合モデルに基づく。
【0015】
第2の方法のいくつかの例では、導電率または抵抗率の3Dモデルは、導電率の3Dモデルである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】頭部のモデルを作成し、そのモデルを使用して電場を最適化するための一例のフローチャートである。
図2A】200kHzの周波数における生体内導電率推定マップの図である。
図2B】1MHzの周波数における生体内導電率推定マップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願は、米国特許第10,188,851号に記載の従来技術の手法よりもはるかに計算効率がよく、より高い解像度を提供する、TTフィールドをシミュレートするための現実的な頭部モデルを作成するための手法を説明する。より具体的には、DWIまたはDTIに基づいて解剖学的体積内の各ボクセルの導電率を決定する代わりに、各ボクセルの導電率は、異なる繰返し時間を有する2つのMRI画像に基づいて決定される。(例えば、700ミリ秒の繰返し時間でキャプチャされたT1 MRI画像の第1のセット、および4秒の繰返し時間でキャプチャされたT1 MRI画像の第2のセット。)
【0018】
単一のDTI画像スライスを形成するために必要なフレームの数が、単一のT1画像スライスを形成するために必要なフレーム数よりもはるかに多いので、(‘851特許におけるように)DWIまたはDTI画像の代わりに2つのMRI画像間の画像比を使用することは、改善された結果を提供する。結果として、DTI画像は、(患者がMRIマシン内で同じ量の時間を費やしたと仮定して)T1画像よりもはるかに少ないスライスを含むことになる。
【0019】
この説明は、2つの部分に分割され、パート1は、最小限のユーザ介入でMRIデータからTTフィールドシミュレーションのための現実的な頭部モデルを作成するための方法の詳細な説明を提供する。パート2は、パート1において作成されたモデルを使用してTTフィールドアレイ位置をどのように最適化するかについて詳細な説明を提供する。
【0020】
図1は、(ステップS11~S14において)モデルを作成し、そのモデルを使用して電場を最適化する(ステップS21~S24)ための一例のフローチャートである。
【0021】
パート1: MRIデータからの現実的な計算ファントムの作成。
【0022】
正確な計算ファントムを作成することは、計算ファントム内の各点における電気的特性(例えば、導電率、抵抗率)を正確にマッピングすることを含む。
【0023】
すべての点における電気的特性は、それらがセグメンテーション中に割り当てられた組織タイプからではなく、MRIから直接定義されるので、MRIシーケンスを使用して電気的特性を直接マッピングすることは、(時間がかかり、労働集約的なタスクである)正確な組織セグメンテーションの必要性を低減する。したがって、セグメンテーションプロセスは、計算ファントムの精度を損なうことなく、単純化され得、または排除さえされ得る。本明細書で説明した実施形態は、導電率をマッピングすることについて論じているが、代替実施形態は、抵抗率などの異なる電気的特性をマッピングすることによって同様の結果を提供することができることに留意されたい。
【0024】
図1のステップS11~S14は、MRI導電率測定値に基づいて患者を表す計算ファントムを生成するために使用され得るステップのセットの一例を示す。
【0025】
ステップS11は、画像取得ステップである。このステップでは、構造データと、導電率マップが計算され得るデータの両方が取得される。構造データは、例えば、標準的なTおよびT MRIシーケンスから取得され得る。以下で説明するように、導電率マップは、異なる繰返し時間を有する2つのMRIシーケンスから生成される。したがって、画像取得ステップS11は、異なる繰返し時間での、問題の解剖学的体積の第1および第2のMRI画像の取得を含まなければならない。一例では、解剖学的体積の第1のMRI画像は、700ミリ秒の繰返し時間でのT1画像であり得、解剖学的体積の第2のMRI画像は、4秒の繰返し時間でのT1画像であり得る。別の例では、解剖学的体積の第1のMRI画像は、700ミリ秒の繰返し時間でのT1画像であり得、解剖学的体積の第2のMRI画像は、2秒~3秒の間の繰返し時間での標準的なプロトン密度(PD)画像であり得る。
【0026】
良好な計算ファントムを作成するために、高解像度画像が取得されるべきである。構造画像と導電率関連画像の両方について少なくとも1mm×1mm×1mmの解像度が好ましい。これらのタイプの画像の一方または両方について、より低い解像度の画像が使用され得るが、より低い解像度は、より低い精度のファントムをもたらすことになる。
【0027】
オプションで、データセットは、検査され得、大きいアーティファクトによって影響を受ける画像が除去され得る。スキャナ固有の前処理が適用され得る。例えば、画像が、DICOMフォーマットからNIFTIに変換され得る。前処理の異なるステップは、すべての画像を標準的な空間(例えば、Montreal Neurological Institute(MNI)空間)に登録することであり得る。これは、限定はしないが、FSL FLIRT、およびSPMを含むすぐに利用可能なソフトウェアパッケージを使用して行われ得る。
【0028】
ステップS12は、構造画像を処理するステップである。上記のように、ここで示すワークフローは、計算ファントムを作成するためにMRIベースの導電率測定値を利用する。しかしながら、構造画像は、頭部の境界を識別するため、ならびにMRI測定値から導出されない典型的な導電率値を割り当てることが有利であり得る脳内の特定の組織に属する領域を識別するために依然として使用され得る。例えば、含水率は、頭蓋骨および頭皮において比較的低いので、本明細書で説明した手法は、それらの領域内の導電率を決定するのに正確ではない。この欠点を回避するために、画像内の頭蓋骨および頭皮を手動または自動で識別およびセグメント化し、これらの層に対応する領域に典型的な(しかし、以下に説明するように、脳に対応する領域のMRIベースの測定値に依然として依存する)導電率値を割り当てることが有利であり得る。
【0029】
例えば、外側組織のシェルまたは凸包は、頭蓋骨および頭皮のモデルとして使用され得る。外層の大まかなセグメンテーションが利用可能な場合、対応する凸包の作成は、とるに足りず、標準的なアルゴリズムおよびソフトウェアを使用して実行され得る。別のオプションは、ユーザが、構造画像の推定を通じて代表的な領域(トランスデューサアレイが配置される可能性がある領域)における外層の厚さを測定することである。これらの測定値は、頭蓋骨と頭皮とを表す同心のシェルまたは層を作成するために使用され得る。これらの層は、頭皮セグメンテーションのデフォルトの凸包であり得るデフォルトの楕円形構造を変形することによって取得され得る。
【0030】
含水率ベースのEPトモグラフィ(wEPT)は、T緩和値(T1)と含水率(WC)とEPとの間の経験的に導出された関係に基づいて電気的特性(EP)をマッピングするために、異なる繰返し時間(TR)での2つのT1強調画像の比を利用する方法である。wEPTは、経験的モデルを導出するために、文献において報告されている健康な組織の典型的なWC値とEP値とを使用して128MHzにおける健康な脳のEPをマッピングするために適用されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、E.Michel、D.Hernandez、およびS.Y.Lee、「Electrical conductivity and permittivity maps of brain tissues derived from water content based on T-weighted acquisition」、Magn.Reson. Med.、vol.77、1094~1103ページ、2016年を参照されたい。Michelは、「超高周波数(UHF)範囲に近づけるにつれて、[組織の]EPは、含水率によってほぼ完全に決定される」ことと、これらの周波数(例えば、Michelにおいてテストされた128MHz周波数)において、以下の方程式、
【0031】
【数1】
【0032】
は、異なるTRでの2つのT1強調MRI画像の画像比(IR)から含水率を決定するために使用され得、以下の方程式、
【0033】
【数2】
【0034】
は、含水率から導電率を決定するために使用され得ることとを説明している。
【0035】
驚いたことに、本発明者らは、200kHzの周波数(これは、Michelにおいて開示された128MHz周波数よりも500倍以上低い)においてさえ、方程式2が、脳組織内のTTフィールドの強度をシミュレートする際のその後の使用のために十分に良好な導電率に関する実行可能な近似を依然として提供することを実験的に決定している。発明者らの実験のうちの2つについて、すぐ下で説明する。
【0036】
1つの実験において、3つの異なる健康な子牛の脳からの32個の組織サンプル、および2匹のブタの脳脊髄液(CSF)サンプルが分析された。異なるTRでの2つのT1強調MRI画像の画像比が計算され、インピーダンスメータのAg/AgCl電極を各サンプルに接続し、平行平板法を利用してサンプルの誘電特性を測定することによって、サンプルのEPが測定された。サンプルの含水率は、サンプルの湿重量と乾燥重量との間の差を測定することによって推定された。
【0037】
これらの測定値を用いたカーブフィッティングは、IRをWC(方程式「1」の係数)に接続する経験的モデルと、WCを200kHzおよび1MHzに関する導電率の推定値(方程式「2」の係数)に接続する経験的モデルとをもたらす。2つのT1強調画像のTRの組み合わせの最適な選択は、TRshort=700ミリ秒およびTRlong=4000ミリ秒であると推定された。
【0038】
別の実験において、200kHzにおける方程式2の適用可能性が、4つのラット脳腫瘍モデルを使用して調査された。イメージングは、Bruker 1Tアイコンスキャナにおいて実行された。各ラットについて、合計20スライスを有する生体内画像(短い繰返し時間でのT1 MRIシーケンスと、長い繰返し時間でのT1 MRIシーケンスと、サンプルのセグメンテーション用のT2 MRIシーケンスとを含む)における3Dが、動物を安楽死させる前に取得される。次いで、WCと200kHzおよび1MHzにおける導電率とをマッピングするために、カーブフィッティングが使用された。200kHzにおける導電率近似および1MHzにおける導電率近似の使用可能なマップが取得された。
【0039】
続いて、サンプルの各々の電気的特性における含水率を測定することによって、合計35個の切除されたサンプルが調査された。各サンプルについて、測定された値は、T2画像に対して実行されたセグメンテーションに従ってMRIから生成された導電率マップの対応するボクセルにおけるWCおよびEPの中央値と比較された。これらの生体内MRIベースの導電率推定値の比較について、モデル係数は、より低い生体外温度において測定されたT1値およびEP値の差を説明するように適合された。
【0040】
実験的測定値は、両方のモデルにおいて3.1%のMRIベースの含水率推定値に関する平均誤差を明らかにした。実験的測定値はまた、(それぞれ、2つの異なるモデルに関する)200kHzにおいて22.8%および24.3%、(それぞれ、2つの異なるモデルに関する)1MHzにおいて26.4%および23.9%のMRIベースの導電率推定値に関する平均誤差とを明らかにした。測定誤差は、WCに関して約1%、MRIベースの導電率推定値に関して約10%であると推定される。また、導電率推定値におけるこのレベルの精度は、以下のパート2で説明するTTフィールドシミュレーションを実行するのに十分である。
【0041】
解剖学的構造および腫瘍が、結果として生じた導電率推定マップにおいて明確に見えた。例えば、それぞれ、図2Aおよび図2Bに示す生体内200kHz導電率推定マップおよび1MHz導電率推定マップを参照されたい。
【0042】
解剖学的体積の低周波数(例えば、200kHz)における導電率の3DマップがMRIデータから直接生成され得ることを示すこれらの実験結果に鑑みて、MRIを組織タイプにセグメント化することなく、MRIデータから個々の人間の頭部の導電率の3Dマップを生成し、(パート2において以下で説明するように、3Dマップを使用してシミュレーションを実行することによって)200kHzのTTフィールドを人間の頭部に印加するために使用される電極の位置を最適化するために、導電率のその3Dマップをその後に使用することが可能になる。
【0043】
図1に戻り、ステップS13およびS14は、ステップS11において以前に取得された短い繰返し時間および長い繰返し時間を有するMRI画像から3D導電率マップを全体として作成する。より具体的には、ステップS13において、第2のMRI画像内の対応するボクセルの強度に対する第1のMRI画像内の各ボクセルの強度の比IRが、解剖学的体積内の各ボクセルについて計算される。次いで、ステップS14において、解剖学的体積内の各ボクセルについて計算されたIRは、解剖学的体積を組織タイプにセグメント化することなく、所与の周波数における導電率の3Dマップの対応するボクセルにマッピングされる。
【0044】
所与のMRIマシンのための設定の任意の所与のセットについて、画像比IRと含水率との間の最良の適合を提供する上の方程式1についての係数w1およびw2のセットが決定され得る。加えて、TTフィールドが最終的に使用されることになる任意の所与の周波数について、含水率と導電率の推定値との間の最良の適合を提供する上の方程式2の係数c1、c2、およびc3のセットが決定され得る。
【0045】
上の方程式1は、IRからWCを計算するために使用され、上の方程式2は、WCから導電率の推定値を計算するために使用され、そして、係数w1、w2、c1、c2、およびc3は、MRIマシンの既知の設定と、TTフィールドが印加されることになる既知の周波数とに基づいて、すべて事前に決定され得るので、任意の所与のピクセルにおけるIRをそのピクセルの導電率の推定値にマッピングするルックアップテーブルを生成することが可能になる。そのようなルックアップテーブルが使用される場合、ステップS14は、S13において計算された画像比を取得し、それをルックアップテーブルに埋め込み、そしてルックアップテーブルから導電率推定値を取得することによって簡単に実施され得る。代替的には、ステップS14におけるマッピングは、上の方程式1および2を使用するカーブフィッティングによって数学的に実施され得る。代替的には、ステップS14におけるマッピングは、カーブフィッティング方程式の異なるセット(例えば、方程式1に現れる指数関数の代わりに多項式関数へのフィッティング)を使用して数学的に実施され得る。
【0046】
解剖学的体積の導電率マップがステップS14において生成された後、結果として生じた導電率マップは、(ステップS12に関連して上で説明した)解剖学的体積を囲むシェルの導電率とマージされ得る。例えば、脳のコンテキストにおいて、灰白質、白質、およびそれらに含まれる任意の腫瘍の初期導電率マップが、ステップS14において生成されることになる。そして、頭部のモデルを完成させるために、CSF、頭蓋骨、および頭皮を表す一定の導電率のシェルが、初期の導電率マップに追加される。代替的に、CSFの含水率は、十分に高いので、ステップS14において生成された初期の導電率マップは、灰白質、白質、それらに含まれる任意の腫瘍、およびCSFをカバーすることができる。この状況では、頭部のモデルを完成させるために、頭蓋骨と頭皮とを表す一定の導電率のシェルが、脳およびCSFの初期の導電率マップに追加される。
【0047】
オプションで、異方性比率(fractional anisotropy)(または、導電率データから導出され得る任意の他の尺度)が見つけられ、次いで、外れ値を回避するために(例えば、WMの内部で識別されたGM点を排除するために)、隣接する要素が好ましくはチェックされる。
【0048】
パート2:現実的な頭部モデルを使用するTTフィールドアレイ位置の最適化
【0049】
アレイレイアウトの最適化は、患者の脳の病変部位(腫瘍)内の電場を最適化するアレイレイアウトを見つけることを意味する。この最適化は、次の4つのステップを実行することによって、すなわち、(S21)現実的な頭部モデル内の治療のための標的とされる体積(標的体積)を識別すること、(S22)トランスデューサアレイを現実的な頭部モデル上に自動的に配置し、境界条件を設定すること、(S23)アレイが現実的な頭部モデル上に配置され、境界条件が設定されたら、現実的な頭部モデル内で発生する電場を計算すること、および(S24)標的体積内で最適な電場分布をもたらすレイアウトを見つけるために最適化アルゴリズムを実行することによって実施され得る。これらの4つのステップを実施するための詳細な例を以下に提供する。
【0050】
ステップS21は、現実的な頭部モデル内に標的体積を配置する(すなわち、関心領域を定義する)ことを含む。患者の身体内に最適な電場分布をもたらすレイアウトを見つける際の第1のステップは、電場が最適化されるべき場所および標的体積を正しく識別することである。
【0051】
いくつかの実施形態では、標的体積は、肉眼的腫瘍体積(GTV: gross tumor volume)または臨床的標的体積(CTV: clinical target volume)のいずれかとなる。GTVは、腫瘍の全体的な実証可能な範囲および場所であるのに対し、CTVは、存在する場合は実証された腫瘍と、推定される腫瘍を有する任意の他の組織とを含む。多くの場合、CTVは、GTVを包含する体積を定義し、GTVの周囲に事前定義された幅を有するマージンを追加することによって見つけられる。
【0052】
GTVまたはCTVを識別するために、MRI画像内の腫瘍の体積を識別することが必要である。これは、ユーザによって手動で、自動的に、またはユーザ支援アルゴリズムが使用される半自動的手法を使用して実行され得る。このタスクを手動で実行する場合、MRIデータは、ユーザに提示され得、ユーザは、データ上のCTVの体積の輪郭を描くように求められ得る。ユーザに提示されるデータは、構造的MRIデータ(例えば、T1、T2データ)であり得る。様々なMRIモダリティが相互に登録され得、ユーザは、任意のデータセットを見て、CTVの輪郭を描くオプションを提示され得る。ユーザは、MRIの3D体積表現においてCTVの輪郭を描くことを求められ得、またはデータの個々の2Dスライスを見て、各スライスにおいてCTV境界線をマークするオプションを与えられ得る。各スライスにおいて境界線がマークされると、解剖学的体積内(したがって現実的なモデル内)のCTVが見つけられ得る。この場合、ユーザによってマークされた体積は、GTVに対応することになる。いくつかの実施形態では、CTVは、次いで、事前定義された幅のマージンをGTVに追加することによって見つけられ得る。同様に、他の実施形態では、ユーザは、同様の手順を使用してCTVをマークするように求められ得る。
【0053】
手動手法の代替は、CTVを見つけるために自動セグメンテーションアルゴリズムを使用することである。これらのアルゴリズムは、構造的MRIデータを使用してCTVを識別するために自動セグメンテーションアルゴリズムを実行する。
【0054】
オプションで、MRIデータの半自動セグメンテーション手法が実施され得る。これらの手法の一例では、ユーザは、アルゴリズムへの入力(例えば、画像上の腫瘍の位置、腫瘍の境界線を大まかにマークすること、腫瘍が位置する関心領域の境界を画定すること)を繰り返し提供し、入力は、次いで、セグメンテーションアルゴリズムによって使用される。ユーザは、次いで、頭部内のCTVの位置および体積のよりよい推定を得るために、セグメンテーションを改良するオプションを与えられ得る。
【0055】
自動的手法または半自動的手法のいずれを使用するかにかかわらず、識別された腫瘍体積は、GTVに対応することになり、CTVは、次いで、事前定義された量だけGTV体積を拡張する(例えば、腫瘍の周囲の20mm幅のマージンを包含する体積としてCTVを定義する)ことによって自動的に見つけ得られ得る。
【0056】
場合によっては、ユーザが、ユーザが電場を最適化したい関心領域を定義することで十分である場合があることに留意されたい。この関心領域は、例えば、腫瘍を包含する解剖学的体積内の箱体積、球形体積、または任意の形状の体積であり得る。この手法が使用される場合、腫瘍を正確に識別するための複雑なアルゴリズムが必要とされない場合がある。
【0057】
ステップS22は、所与の繰返しについて現実的な頭部モデル上のアレイの位置および向きを自動的に計算することを含む。Optune(商標)デバイスにおいてTTフィールドの送達のために使用される各トランスデューサアレイは、医療用ゲルの層を介して患者の頭部に結合されたセラミックディスク電極のセットを備える。実際の患者にアレイを配置すると、ディスクは、自然に皮膚と平行に整列し、医療用ゲルが身体の輪郭に一致するように変形するので、アレイと皮膚との間の良好な電気的接触が発生する。しかしながら、仮想モデルは、厳密に定義された幾何学的形状で構成される。したがって、アレイをモデル上に配置することは、アレイが配置されるべき位置におけるモデル表面の向きおよび輪郭を見つけるため、ならびに、モデルアレイと現実的な患者モデルとの良好な接触を確実にするために必要なゲルの厚さ/幾何学的形状を見つけるための正確な方法を要求する。フィールド分布の完全に自動化された最適化を可能にするために、これらの計算は、自動的に実行されなければならない。
【0058】
このタスクを実行するための様々なアルゴリズムが使用され得、1つのそのようなアルゴリズムが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第10,188,851号に記載されている。
【0059】
ステップS23は、所与の繰返しについて頭部モデル内の電場分布を計算することを含む。頭部ファントムが構築され、フィールドを印加するために使用されることになるトランスデューサアレイ(すなわち、電極アレイ)が現実的な頭部モデル上に配置されると、有限要素(FE)法分析に適した体積メッシュが作成され得る。次の境界条件がモデルに適用され得る。使用され得る境界条件の例は、トランスデューサアレイにおけるDirichlet境界(定電圧)条件、トランスデューサアレイにおけるNeumann境界条件(定電流)、または電流密度の法線成分の積分が指定された振幅に等しくなるようにその境界における電位を設定する浮遊電位境界条件を含む。モデルは、次いで、適切な有限要素ソルバ(例えば、低周波数準静的電磁ソルバ)を用いて、または代替的には有限差分(FD)アルゴリズムを用いて解決され得る。メッシュ化、境界条件の強要、およびモデルの解決は、Sim4Life、Comsol Multiphysics、Ansys、またはMatlabなどの既存のソフトウェアパッケージを用いて実行され得る。代替的には、FE(またはFD)アルゴリズムを実現するカスタムコンピュータコードが記述され得る。このコードは、(メッシュを作成するための)C-Gal、またはFREEFEM++(迅速なテストおよび有限要素シミュレーションのためのC++で記述されたソフトウェア)などの、既存のオープンソースソフトウェアリソースを利用することができる。モデルの最終的な解決策は、所与の反復に関する計算ファントム内の電場分布または電位などの関連する量を記述するデータセットとなる。
【0060】
ステップS24は、最適化ステップである。両方の印加方向(前述のようにLRおよびAP)について患者の脳(腫瘍)の病変部位への電場送達を最適化するアレイレイアウトを見つけるために、最適化アルゴリズムが使用される。最適化アルゴリズムは、自動アレイ配置のための方法と、最適なアレイレイアウトを見つけるために明確に定義されたシーケンスにおいて頭部モデル内の電場を解決するための方法とを利用することになる。最適なレイアウトは、電場が印加される両方の方向を考慮して、脳の病変部位内の電場のなんらかの目標関数を最大化または最小化するレイアウトとなる。この目的関数は、例えば、病変部位内の最大強度または病変部位内の平均強度であってもよい。他の目標関数を定義することも可能である。
【0061】
患者にとって最適なアレイレイアウトを見つけるために使用され得るいくつかの手法が存在し、そのうちの3つについて以下に説明する。1つの最適化手法は、徹底的な検索である。この手法では、テストされるべき有限数のアレイレイアウトを有するバンクを含むことになる。オプティマイザは、(例えば、各レイアウトについてステップS22~S23を繰り返すことによって)バンク内のすべてのアレイレイアウトのシミュレーションを実行し、腫瘍内に最適なフィールド強度をもたらすアレイレイアウトを選び取る(最適なレイアウトは、最適化目標関数、例えば、腫瘍に送達される電場強度に関する最高(または最低)値をもたらすバンク内のレイアウトである)。
【0062】
別の最適化手法は、反復検索である。この手法は、最低降下最適化(minimum-descent optimization)法およびシンプレックス検索最適化などのアルゴリズムの使用をカバーしている。この手法を使用して、アルゴリズムは、頭部上の様々なアレイレイアウトを繰り返しテストし、各レイアウトについて腫瘍内の電場に関する目標関数を計算する。したがって、この手法は、各レイアウトについてステップS22~S23を繰り返すことも含む。各繰返しにおいて、アルゴリズムは、前の繰返しの結果に基づいてテストする構成を自動的に選び取る。アルゴリズムは、腫瘍内のフィールドに対して定義された目的関数を最大化(または最小化)するように収束するように設計される。
【0063】
さらに別の最適化手法は、モデル内の腫瘍の中心に双極子を配置することに基づく。この手法は、様々なアレイレイアウトに関するフィールド強度を解決することに依存しないので、他の2つの手法とは異なる。むしろ、アレイの最適な位置は、モデル内の腫瘍の中心に予想されるフィールドの方向に整列された双極子を配置し、電磁ポテンシャルを解決することによって見つけられる。電位(またはおそらくは電場)が最大になる頭皮上の領域は、アレイが配置される位置となる。この方法の論理は、双極子が、腫瘍の中心において最大である電場を生成することになるというものである。相互関係により、計算がもたらした頭皮上のフィールド/電圧を生成することができた場合、(双極子が配置された)腫瘍の中心において最大であるフィールド分布を取得することが予想される。現在のシステムを用いてこれに実際に到達することができる最も近いものは、頭皮上の双極子によって誘発される電位が最大になる領域内にアレイを配置することである。
【0064】
脳の病変部位内の電場を最適化するアレイレイアウトを見つけるために代替の最適化方式が使用され得ることに留意されたい。例えば、前述の様々な手法を組み合わせるアルゴリズム。これらの手法がどのように組み合わされ得るかについての一例として、上で論じた第3の手法(すなわち、モデル内の腫瘍の中心において双極子を配置すること)と第2の手法(すなわち、反復検索)とを組み合わせるアルゴリズムを検討する。この組み合わせにより、腫瘍手法の中心における双極子を使用して、アレイレイアウトが最初に見つけられる。このアレイレイアウトは、最適なレイアウトを見つける反復検索への入力として使用される。
【0065】
(例えば、本明細書で説明した手法のいずれかを使用して)患者の脳の病変部位内の電場を最適化するレイアウトが決定されると、電極は、決定された位置に配置される。次いで、疾患を治療するために、(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,565,205号に記載されているように)交流電圧が電極に印加される。
【0066】
本明細書で説明した概念は、凸包としての外層(頭皮、頭蓋骨、CSF)の表現に限定されず、MRIデータを大まかに近似するために他の方法が使用され得ることにも留意されたい。例は、楕円体、球体、卵型形状構造などの単純な幾何学的形状、または組織のエンベロープを作成するための他の方法も含む。加えて、本明細書で説明した概念は、外層の近似に限定されず、すなわち、頭皮、頭蓋骨、およびCSF層はまた、MRIの従来のセグメンテーションを介して取得され得る。
【0067】
頭皮、頭蓋骨、およびCSFのセグメンテーションを使用する代わりに、これらの外層の近似が使用されてもよいことにも留意されたい。例えば、ユーザは、典型的な領域における頭皮、頭蓋骨、およびCSFの厚さを測定するように求められ得る。これらの組織は、次いで、ユーザが測定した脳の周囲の厚さを有する(頭皮、球体、楕円体などのデフォルトの凸包に類似する)同心の幾何学的エンティティとして近似される。この近似は、耳、鼻、口、および顎などの特徴を無視して、頭部を(ほぼ)卵型形状構造としてシミュレートする。しかしながら、アレイおよび治療は、頭部のテント上領域にのみ送達されるので、この近似は、正当化されるように思われる。いくつかの実施形態では、3つの組織タイプのうちの2つ以上を1つの層に組み合わせ、その層に単一の導電率値を割り当てることも可能であり得る。例えば、頭皮および頭蓋骨は、単一の導電率(およびオプションで均一な厚さ)を有する1つの層として導入され得る。
【0068】
このように構築された計算ファントムは、頭部内の電場および/または電流分布を計算することが有用であり得る他の用途にも使用され得る。これらの用途は、限定はしないが、直流および交流電流経頭蓋刺激、埋込み刺激電極フィールドマップのシミュレーション、埋込み刺激電極の配置を計画すること、ならびにEEGにおけるソース位置特定を含む。
【0069】
最後に、この出願は、頭部上のアレイレイアウトを最適化するための一方法を説明しているが、胸部または腹部などの他の身体領域の治療のためのアレイレイアウトを最適化するために拡張され得る可能性がある。
【0070】
本発明は、特定の実施形態を参照して開示されているが、添付の特許請求の範囲において定義されているように、本発明の分野および範囲から逸脱することなく、多数の変形、修正、および変更が、説明した実施形態に対して可能である。したがって、本発明は、説明した実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲およびその均等物の文言によって定義される全範囲を有することが意図される。
図1
図2A
図2B